JP5568174B1 - コンタクトレンズパッケージ、およびコンタクトレンズ用パッケージング液 - Google Patents

コンタクトレンズパッケージ、およびコンタクトレンズ用パッケージング液 Download PDF

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Abstract

【課題】複雑な処理を行うことなく、レンズに対するタンパク質の吸着を抑制することができるコンタクトレンズ用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】コンタクトレンズと、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有するコンタクトレンズ用パッケージング液とが、包装容器に収容されていることを特徴とするコンタクトレンズパッケージである。
【選択図】なし

Description

本発明は、コンタクトレンズ用組成物に関し、特に、コンタクトレンズを容器に密閉してパッケージング(包装)する際に、コンタクトレンズとともに包装容器に封入されるパッケージング溶液(包装溶液)を用いたコンタクトレンズパッケージ(パッケージングされたコンタクトレンズ製品)に関する。さらに、本発明は、コンタクトレンズの製造方法に関する。
コンタクトレンズは、直接、目に挿入する医療用具であるため、装用中に、涙液や眼脂に起因するタンパク質などがコンタクトレンズに吸着して汚れが生じる。
そして、このようなコンタクトレンズの汚れは、レンズの透明性の低下を引き起こし、レンズ表面の濡れ性を悪化させる。また、汚れが生じたコンタクトレンズを使用すると、眼に刺激を与えて異物感が発生し、炎症や障害を引き起こす原因となる。
そこで、このようなタンパク質の吸着による汚れを抑制するためのコンタクトレンズが提案されている。より具体的には、例えば、コンタクトレンズの表面でホスホリルコリン基含有モノマーを重合させるのではなく、ホスホリルコリン基含有化合物を眼用レンズ材料に反応させる後処理によって、ホスホリルコリン基を眼用レンズ材料表面に共有結合させたコンタクトレンズ用材料が開示されている。そして、このような材料を用いてコンタクトレンズを製造することにより、十分なホスホリルコリン基を導入することができるため、優れたタンパク質吸着防止効果を有するコンタクトレンズを提供することができると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
また、コンタクトレンズの表面にエチレンオキサイド誘導体が固定化された表面処理コンタクトレンズが開示されている。そして、このようなコンタクトレンズを使用することにより、長期間にわたり、高い親水性とタンパク質抑制効果を得ることができると記載されている(例えば、特許文献2参照)。
特許第3715308号公報 特開2005−309228号公報
しかし、上記特許文献1に記載のコンタクトレンズ用材料では、コンタクトレンズ用材料を重合する工程とは別に、導入するホスホリルコリン基含有化合物を製造する工程、コンタクトレンズの表面にプラズマ処理を施し水酸基を導入する工程、及びコンタクトレンズの水酸基にホスホリルコリン基を導入する工程が必要になるため、コンタクトレンズの製造工程が複雑になるという問題があった。
また、上記特許文献2に記載のコンタクトレンズにおいても、コンタクトレンズにエチレンオキサイド誘導体を接触させた状態で放射線照射を行う必要があるため、コンタクトレンズの製造工程が複雑になるという問題があった。
また、上記特許文献1に記載のコンタクトレンズにおいては、ホスホリルコリン基含有化合物が電荷を有しているため、カチオン性の涙液中蛋白質であるリゾチームの吸着を促進してしまい、タンパク質の吸着を効果的に抑制することが困難であるという問題があった。また、コンタクトレンズ装用中の点眼や、コンタクトレンズ装用後の消毒洗浄を行う場合に、点眼剤や消毒剤のカチオンやアニオンが吸着し、眼障害のリスクファクターとなる。
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、複雑な処理を行うことなく、レンズに対するタンパク質の吸着を抑制することができるコンタクトレンズ用パッケージング液およびそれを用いたコンタクトレンズパッケージを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のコンタクトレンズパッケージは、未使用の(新品の)コンタクトレンズと、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有するコンタクトレンズ用パッケージング液とが、包装容器に収容されていることを特徴とする(但し、コンタクトレンズ用パッケージング液として、レンズケア溶液中に溶解または分散する一重項酸素発生試薬を含有し、コンタクトレンズを消毒及び/又は洗浄するためのレンズケア溶液を除く)
同構成によればコンタクトレンズ用パッケージング液が、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有しているため、本発明のコンタクトレンズパッケージを使用することにより、複雑な処理を行うことなく、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着抑制効果を高めることが可能になる。また、コンタクトレンズ用点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用ケア剤などの形態で使用する場合においても、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着を抑制することが可能になる。
特に、涙液のごとく、タンパク質と脂質が共存する場合であっても、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着抑制効果を高めることが可能になる。
本発明によれば、複雑な処理を行うことなく、レンズに対するタンパク質の吸着を抑制することが可能になる。
また、本発明によれば、コンタクトレンズに対する脂質の吸着を抑制することが可能になる。また、本発明によれば、眼表面におけるコンタクトレンズの摩擦を抑制することが可能になる。また、本発明によれば、コンタクトレンズ装用時の乾燥感、瞬目時の上下瞼のひっかかる感じ、レンズが引きあがる感じ、異物感等の不快感を改善し、装用後長時間にわたって潤い、快適な使用感を奏するコンタクトレンズを提供することが可能になる。さらに、本発明によれば、角膜上皮における膜型ムチンの発現を促進し、コンタクトレンズ装用に起因する乾燥感や不快感を軽減させ、コンタクトレンズ装用時の潤い感を向上させることが可能になる。
本発明のコンタクトレンズ用組成物を使用したコンタクトレンズパッケージの製造工程を説明するための図である。
本発明のコンタクトレンズ用組成物は、コンタクトレンズを容器に密閉してパッケージング(包装)する際に、コンタクトレンズとともに包装容器に封入されるパッケージング溶液(包装溶液)として使用される。
本発明のコンタクトレンズ用組成物は、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有することを特徴とし、さらに清涼化剤、界面活性剤、又は緩衝剤を含有することが好ましい。
(酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体)
本発明においては、下記式(1)で示される酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体が使用される。
Figure 0005568174
(式中、nは20〜1200の整数であり、mは40〜1600整数である。)
このような酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を使用することにより、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着抑制効果を高めることが可能になる。
特に、涙液のごとく、タンパク質と脂質が共存する場合であっても、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着抑制効果を高めることが可能になる。
また、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体における酢酸ビニル/ビニルピロリドンの比率(質量比率)は、特に限定されないが、上限値としては、90/10以下が好ましく、80/20以下がより好ましく、70/30以下が特に好ましい。また、下限値としては、10/90以上が好ましく、20/80以上がより好ましく、30/70以上が特に好ましい。
本発明では、これらの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
具体的な酢酸ビニル/ビニルピロリドンの比率(質量比率)としては、90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは80/20〜30/70に設定することができる。特に、タンパク吸着抑制効果を高める観点、水やエタノール等の溶媒に対する溶解性を高める観点から、80/20〜20/80が例示される。
また、コストを向上させることなく、タンパク質の吸着抑制効果を確実に発揮させるとの観点から、コンタクトレンズ用組成物中の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体の濃度は、下限値としては、0.0001(w/v)%以上であり、0.001(w/v)%以上が好ましく、0.01(w/v)%以上がより好ましく、0.05(w/v)%以上が特に好ましい。上限値としては、10(w/v)%以下であり、3(w/v)%以下が好ましく、1(w/v)%以下がより好ましく、0.1(w/v)%以下が特に好ましい。
そして、本発明では、これらの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
具体的な濃度範囲としては、0.0001〜10(w/v)%であり、0.001〜3(w/v)%が好ましく、0.01〜3(w/v)%がより好ましく、0.01〜1(w/v)%がさらに好ましく、0.05〜1(w/v)%がさらにより好ましく、0.05〜0.1(w/v)%が最も好ましい。
また、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、コンタクトレンズ素材のマトリックスに入り込み、かつタンパク質が吸着しやすい基を被覆する分子サイズを有するとの観点から、5000〜500000が好ましく、10000〜200000が更に好ましく、20000〜100000がより好ましい。
なお、ここで言う「重量平均分子量」とは、GPC−MALSを用いて測定される重量平均分子量であり、測定条件は下記の通りである。
カラム:TSKgel GMPWXL 2本
溶離液 :0.1mol/L硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=8/2
また、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
(清涼化剤)
本発明のコンタクトレンズ用組成物は、清涼化剤をさらに含有することが好ましい。清涼化剤は、一般に、眼に清涼感を与えるものであるが、本発明の清涼化剤は、レンズ装用時の異物感や痒みなどを解消する役割も有する。本発明においては、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、及びこれらの誘導体等のテルペノイドが使用される。なお、これらの化合物はd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
また、これらの清涼化剤のうち、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、及びゲラニオール等のテルペノイドが好ましく、これらを含有する精油としてクールミント、ペパーミント油、ハッカ油、樟脳油、ローズ油等が例示される。
より具体的には、メントール、またはカンフルを使用する場合は、l−メントール、dl−メントール、d−カンフル及びdl−カンフルを使用することが好ましく、l−メントール及びd-カンフル、dl-カンフルがさらに好ましく、l-メントールが特に好まし
い。
また、眼への刺激を抑制して、清涼感を確保するとの観点から、コンタクトレンズ用組成物中の清涼化剤の濃度は、総量で0.0001〜0.1(w/v)%が好ましく、0.0001〜0.05(w/v)%がより好ましく、0.0002〜0.02(w/v)%がさらに好ましく、0.0005〜0.005(w/v)%が特に好ましい。なお、テルペノイドを含む精油を使用する場合は、水性組成物中に含有される精油中のテルペノイドが上記含有量を満たすように設定することができる。
なお、清涼化剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、一般に、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着量に比例して、乾燥感が生じ易くなるが、本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、上述の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体により、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着が抑制されて、乾燥感が軽減され、更に、清涼化剤を配合することにより、乾燥感がより一層軽減されることになる。
また、ムチンは眼表面粘膜上に発現しているムコ多糖であり、脂溶性の細胞表面と涙液の親和性を高めることで、眼表面の濡れ性を高める機能があり、ドライアイ患者にもムチン発現が低下している症例が見られることから、ムチン発現の低下は乾燥感と相関していることが広く一般に知られている。
また、コンタクトレンズの装用は、眼表面に形成された涙液構造を破壊することから、涙液蒸散が亢進するため、乾燥感などの不快感の原因となっている。従って、ムチン発現の上昇は、コンタクトレンズ装用時の不快感を軽減する観点から重要であると言える。
そして、本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、上述の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体とメントール等のテルペノイドにより、ムチンの発現量が飛躍的に増加されるため、この観点からも、眼の乾燥感を軽減することができる。
(界面活性剤)
本発明のコンタクトレンズ用組成物は、界面活性剤をさらに含有することが好ましい。界面活性剤は、コンタクトレンズの製造工程において、乾燥状態のコンタクトレンズ素材を膨潤させると共に、レンズ成型用型からの離型性を向上させるためのものである。また、界面活性剤は、包装容器を形成する樹脂に対するコンタクトレンズの付着を防止し、コンタクトレンズ装用時における潤滑性と湿潤性を高め、かつコンタクトレンズ用組成物に使用される成分の溶解性を高めるためのものである。本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、又は陰イオン性界面活性剤が使用される。
より具体的には、非イオン性界面活性剤としては、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類や、ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPブロックコポリマー類、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油類、POE(35)ヒマシ油、POE(10)ヒマシ油等のPOEヒマシ油、POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類、POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE−POPアルキルエーテル類、及びPOE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類、ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、上述のPOEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレンを示し、上述の括弧内の数字は付加モル数を示す。
また、両性界面活性剤としては、アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられ、陽イオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。また、陰イオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α−スルホメチルエステル、及びα−オレフィンスルホン酸等が挙げられる。
また、コンタクトレンズの製造工程における十分な膨潤性と、装用時の十分な潤滑性を付与するとの観点から、界面活性剤としては非イオン性界面活性剤が好ましく、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、POE・POPブロックコポリマー類(例えば、ポロクサマー407等)、POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)、ステアリン酸ポリオキシル40が更に好ましく、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)、ポロクサマー407が特に好ましい。また、同様の観点から、コンタクトレンズ用組成物中の界面活性剤の濃度は、0.005〜5(w/v)%が好ましく、0.01〜2(w/v)%がより好ましく、0.05〜0.5(w/v)%が特に好ましい。
なお、界面活性剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
(緩衝剤)
本発明のコンタクトレンズ用組成物は、緩衝剤をさらに含有することが好ましい。緩衝剤は、眼科用組成物に対して緩衝作用を付与するとともに、製剤安定性を付与するためのものであり、本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤等を使用することができる。
より具体的には、ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸、又はホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩を使用することができ、リン酸緩衝剤としては、例えば、リン酸、又はリン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。
また、コンタクトレンズ用組成物中の緩衝剤の濃度は、緩衝剤の種類や、酢酸ビニル−ビニルピロリドン等の他の配合成分の種類等により、適宜変更することができるが、本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、0.01〜10(w/v)%が好ましく、0.05〜5(w/v)%がより好ましく0.1〜2(w/v)%が特に好ましい。
なお、緩衝剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、上述の緩衝剤を使用して、pHを約5.5〜8.5の範囲に調整する。
(他の配合成分)
本発明のコンタクトレンズ用組成物は、上述の各成分の他に、等張化剤、薬物、増粘剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、水等の水性溶媒を配合することができる。これらの成分は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
例えば、等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、プロピレングリコール、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂等が挙げられる。また、コンタクトレンズ素材の膨潤を制御しつつ涙液を等張にするとの観点から、等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムが好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。また、同様の観点から、コンタクトレンズ用組成物中の等張化剤の濃度は、0.05〜10(w/v)%が好ましく、0.2〜5(w/v)%がより好ましく、0.5〜2(w/v)%が特に好ましい。
増粘剤としては、アラビアゴム末、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ソルビトール、デキストラン70、トラガント末、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、マクロゴール4000等が挙げられる。
キレート剤としては、エデト酸、エデト酸塩類(エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム)、ニトリロ三酢酸及びその塩、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ヘキサメタリン酸ソーダ、クエン酸等が挙げられる。
安定化剤としては、上述のエデト酸及びエデト酸塩類や、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。
pH調節剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、硫酸、酢酸等が挙げられる。
(製造方法)
本発明のコンタクトレンズ用組成物の製造方法としては、特に限定されず、当業者が一般的に実施する方法で行う。例えば、滅菌した精製水等に、上述した各成分を所定の濃度となるように添加して均一に溶解し、pHを調整することにより得ることができる。その後、ポリエチレンやポリプロピレン等により形成された包装容器(ブリスターパック)にコンタクトレンズと共に充填し、オートクレーブによる滅菌処理等を行う。
(コンタクトレンズ)
本発明のコンタクトレンズ用組成物が適用されるコンタクトレンズは、特に限定されず、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用可能である。特に、ソフトコンタクトレンズは、ハイドロゲルを使った含水性ソフトコンタクトレンズ(ハイドロゲルコンタクトレンズ)でもよく、ブチルアクリレートとブチルメタクリレートの共重合体を使用した水分を含まない非含水性ソフトコンタクトレンズでもよい。
また、ハイドロゲルコンタクトレンズについては、ハイドロゲルにシリコーンを配合したシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズでもよく、シリコーンを配合していない非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズでもよい。
また、ハイドロゲルコンタクトレンズとしては、ハイドロゲルとして2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含有するレンズが好ましい。
また、本発明のコンタクトレンズ用組成物は、米国食品医薬品局(FDA)基準によるソフトコンタクトレンズ分類におけるグループI〜IVに分類されるいずれのソフトコンタ
クトレンズにも適用することができる。
具体的なコンタクトレンズの例としては、アルファフィルコン(alphafilcon)、アスモフィルコン(asmofilcon)、バラフィルコン(balafilcon)、エタフィルコン(etafilcon)、ヘフィルコン(hefilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)、リドフィルコン(lidofilcon)、ロトラフィルコン(lotrafilcon)、メタフィルコン(methafilcon)、ネルフィルコン(nelfilcon)、オキュフィルコン(ocufilcon)、オマフィルコン(omafilcon)、フェムフィルコン(phemfilcon)、ポリマコン(polymacon)、テフィルコン(tefilcon)、テトラフィルコン(tetrafilcon)、ヴァサフィルコン(vasurfilcon)、ビフィルコン(vifilcon)、セノフィルコン(senofilcon)、ガリフィルコン(galyfilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、コムフィルコン(comfilcon)、ナラフィルコン(narafilcon)、デレフィルコン(delefilcon)、エフロフィルコン(efrofilcon)、FILICON II 3などが例示される。
特に、米国食品医薬品局(FDA)基準によるソフトコンタクトレンズ分類グループII(含水率が50%以上、非イオン性)に属するコンタクトレンズ(例えば、米国認証名(United States Approved Names)におけるオマフィルコンA、アルファフィルコンA、ヒラフィルコンA、B、ネルフィルコンA、ヴァサフィルコンA)や、ソフトコンタクトレンズ分類グループIV(含水率が50%以上、イオン性)に属するコンタクトレンズ(例えば、米国認証名(United States Approved Names)におけるエタフィルコンA、メタフィルコンA、メタフィルコンB、オキュフィルコンA、オキュフィルコンB、オキュフィルコンC、オキュフィルコンD、オキュフィルコンE、フェムフィルコンA、ビフィルコンA)は、本発明の効果がより顕著に奏されるため、好ましく使用することができる。特に好ましくは、オマフィルコンA、エタフィルコンAである。
ここで、イオン性とは、コンタクトレンズにおけるイオン性成分の含有率が1mol%以上であることを言い、非イオン性とは、コンタクトレンズにおけるイオン性成分の含有率が1mol%未満であることを言う。
また、別の観点から、本発明のコンタクトレンズ用組成物は、コンタクトレンズに対する脂質の吸着を抑制する効果を奏するため、脂質が吸着しやすいシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに対して好適に使用することができる。また、本発明の効果の1つである、コンタクトレンズ表面における摩擦抑制効果を効果的に発現できるという観点からも、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが好ましい。
また、シリコーンハイドロゲルレンズの中でも、本願の効果がより顕著に奏されるとの観点から、セノフィルコン、ガリフィルコン、ロトラフィルコン、バラフィルコン、エンフィルコン、コムフィルコン、ナラフィルコン、デレフィルコン、エフロフィルコン、アスモフィルコン、FILICON II 3が好ましく、セノフィルコン、ガリフィルコン、ロトラフィルコン、バラフィルコン、エンフィルコン、コムフィルコン、ナラフィルコンがさらに好ましく、セノフィルコン、ロトラフィルコン、バラフィルコンが特に好ましい。
また、脂質吸着効果を顕著に奏するとの観点から、セノフィルコン、ガリフィルコン、ナラフィルコン、FILICON II 3が好ましく、セノフィルコン、ガリフィルコン、ナラフィルコンがさらに好ましく、セノフィルコンAが特に好ましい。
また、摩擦抑制効果を顕著に奏するとの観点から、セノフィルコン、ガリフィルコン、ロトラフィルコン、バラフィルコン、エンフィルコン、コムフィルコン、ナラフィルコン、FILICON II 3が好ましく、ロトラフィルコン、バラフィルコン、エンフィルコン、コムフィルコンが好ましく、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、バラフィルコンAが特に好ましい。
また、本発明のコンタクトレンズ用組成物が適用されるコンタクトレンズの種類の一例は、ワンデーディスポーザブルコンタクトレンズ(1日使い捨てレンズ)、頻回交換レンズ(例えば14日間ごと)、連続装用ディスポーザブルコンタクトレンズ(例えば1週間ごと)などのディスポーザブルコンタクトレンズ、従来型レンズ(定期交換ソフトコンタクトレンズを含む)のいずれであってもよい。特に、本発明の方法においては、低コストで所望の効果を得ることができることから、コンタクトレンズとして、製造コストを抑える必要性が特に高いディスポーザブルコンタクトレンズが好ましく、ワンデーディスポーザブルコンタクトレンズ、頻回交換レンズが更に好ましく、ワンデーディスポーザブルコンタクトレンズが特に好ましい。
(コンタクトレンズの製造方法)
次に、コンタクトレンズ用組成物を使用したコンタクトレンズパッケージの製造方法の一例を説明する。図1は、本発明のコンタクトレンズ用組成物を使用したコンタクトレンズパッケージの製造工程を説明するための図であり、コンタクトレンズ用組成物がコンタクトレンズ用パッケージ液として使用される場合の一例である。
なお、コンタクトレンズの製造方法は、以下に示す方法に限定されず、従来公知の方法であれば、どのような方法であっても良い。
まず、原材料であるモノマー(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、トリスおよびビス(トリメチルシリルオキシ)シリルアルキルグリセロールメタクリレート)と、架橋剤(例えば、エチレングリコールジメタクリレート、4−ビニルベンジルメタクリレート)と、重合開始剤(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、メチルオルソベンゾイルベンゾエート)と、着色剤(例えば、アントラキノン系着色剤、フタロシアニン系着色剤)と、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)とを混合して、コンタクトレンズ用の配合物を調製する。
次に、図1(b)に示すように、雌型成形用型2と雄型成形用型3からなるレンズ成形用型4を用意し、図1(a)に示すように、雌型成形用型2に形成された凹面2aに、調製したコンタクトレンズ用の配合物5を注入する。なお、レンズ成形用型4としては、例えば、ポリプロピレン製の型を使用することができる。
次に、図1(b),(c)に示すように、雌型成形用型2と雄型成形用型3との型合わせを行い、雌型成形用型2の凹面2aと雄型成形用型3の凸面3aとの間に形成されたキャビティにコンタクトレンズ用の配合物5を配置する。
次に、図1(c)に示すように、レンズ成形用型4に対して、例えば、水銀ランプ等を使用して紫外線6を照射して光重合を行うことにより、コンタクトレンズを製造する。
なお、紫外線照射による光重合を行う代わりに、レンズ成形用型4を炉内に入れて、所定の温度で所定時間、加熱処理を行うことにより、コンタクトレンズを製造する構成としてもよい。
次に、図1(d)に示すように、雌型成形用型2と雄型成形用型3とを分離するとともに、雌型成形用型2からコンタクトレンズ1を分離する。この際、上述のポリプロピレン製の型を使用することにより、コンタクトレンズ1を容易に分離することができる。また、多量の未反応モノマーが存在すると、コンタクトレンズ1の分離が困難になる場合があるため、例えば、過剰量の包装液、または生理食塩水に浸漬する等の方法により、未反応モノマーを除去してもよい。
次いで、例えば、滅菌した精製水等に、上述した酢酸ビニル−ビニルピロリドン、清涼化剤、界面活性剤、及び緩衝剤等を添加して溶解するとともに、pHを調整した本発明のコンタクトレンズ用組成物7を、図1(e)に示すように、ポリプロピレン等により形成された包装容器8に充填する。
そして、上述のコンタクトレンズ1を包装容器8のコンタクトレンズ用組成物7に浸漬し、コンタクトレンズ1とコンタクトレンズ用組成物7を接触させ、包装容器8内のコンタクトレンズ1及びコンタクトレンズ用組成物7を、例えば、アルミフィルムにより被覆して密封する。
そして、オートクレーブによる滅菌処理等を行うことにより、本発明のコンタクトレンズ用組成物を使用したコンタクトレンズパッケージが製造される。
なお、コンタクトレンズの成形方法は、上述の雌型成形用型2と雄型成形用型3を使用する方法(モールディング)に限定されず、例えば、レースカッティングやスピンキャスティング等の他の成形方法を採用することができる。
また、上述の方法と同様の方法により成形したコンタクトレンズ(硬化レンズ、非水和レンズ)を、直接、本願のコンタクトレンズ用組成物に浸漬した後、密封して高圧蒸気滅菌処理(オートクレーブ等)を行うことにより、本発明のコンタクトレンズ用組成物を使用したコンタクトレンズパッケージを製造してもよい。
また、硬化レンズを、本願のコンタクトレンズ用組成物とは別の溶液(例えば、界面活性剤含有の水溶液等)で水和させた後、この水和レンズを本願のコンタクトレンズ用組成物に浸漬し、その後、同様に密封・滅菌処理を行うことにより、本発明のコンタクトレンズ用組成物を使用したコンタクトレンズパッケージを製造してもよい。
なお、コンタクトレンズの原材料として、酢酸ビニルモノマー及びビニルピロリドンモノマーを使用することも考えられるが、N−ビニルピロリドンを重合させるのみでは、十分なタンパク質吸着抑制効果が得られず、また、酢酸ビニル基は疎水性が高いため、酢酸ビニルと他の親水性モノマーが均一に混合されないことに起因して、均一な重合体が得られず、結果として、均一で滑らかな表面を有し、装用感に優れるコンタクトレンズが得られないという不都合が生じる。また、視力補正機器に必要な性能として要求される優れた光学特性が得られないという不都合が生じる。
即ち、コンタクトレンズの原材料を重合した後に、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着抑制に最適な酢酸ビニルとビニルピロリドンの比率を有する共重合体を吸着させる本発明の方が、タンパク質の吸着抑制という観点から有利であると言える。
また、コンタクトレンズの表面に、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体をグラフト重合等によりコーティングすることも考えられるが、このような表面コーティングでは、コンタクトレンズ内部に存在し、タンパク質が吸着しやすい基を被覆することができないため、タンパク質の吸着抑制効果がコーティング層のあるコンタクトレンズ表面のみに限定され、十分なタンパク質吸着抑制効果が得られないという不都合が生じる。
即ち、コンタクトレンズの内部にまで入り込める適切な分子量を有した酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を吸着させる本発明の方が、タンパク質の吸着抑制という観点から有利であると言える。
また、本発明のコンタクトレンズ用組成物は、上記パッケージング液として使用できる他、コンタクトレンズ用点眼剤、コンタクトレンズ用洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用剤(例えば、コンタクトレンズ用保存液、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等として使用することもできる。
また、本発明のコンタクトレンズ用組成物は、上述のコンタクトレンズ製造工程において、重合、成形したコンタクトレンズ(硬化レンズ)を水和させるための水和液の形態としても使用できる。
即ち、本発明のコンタクトレンズ用組成物の使用形態の一例である「パッケージング溶液」とは、コンタクトレンズ製造工程において、重合、成形した直後の、もしくは成形後のレンズを水和させた直後のコンタクトレンズ(即ち、未使用のレンズ)を浸漬させる(その後、必要に応じて、オートクレーブなどの滅菌処理を行う)ための溶液のことをいい、既に使用済みのコンタクトレンズのケアにのみ用いられるコンタクトレンズ洗浄消毒保存剤(マルチ・パーパス・ソリューション:MPS)や、組成物中にコンタクトレンズを浸漬させる工程がなく、コンタクトレンズに1〜数滴、滴下して用いるコンタクトレンズ装着液とは異なるものである。
また、本発明のコンタクトレンズ用組成物を、上記パッケージング液として使用する場合、コンタクトレンズ1枚のパッケージあたり用いられるコンタクトレンズ用組成物の容量としては、通常、0.01〜10mlであり、その中でも0.1〜5mlが好ましく、0.4〜2mlがより好ましい。
さらに、本発明のコンタクトレンズ用組成物を、上記パッケージング液として使用する場合、コンタクトレンズパッケージは密封後、高圧蒸気滅菌等の滅菌処理を行って製造されるものであることから、コンタクトレンズ用組成物は、防腐剤を含有しないことが好ましい。これは、パッケージング液のように、コンタクトレンズが長期間、浸漬される形態においては、防腐剤がコンタクトレンズに吸着する場合があるためである。
以上に説明した本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有しているため、本発明のコンタクトレンズ用組成物を、コンタクトレンズとともに包装容器に封入されるパッケージング溶液として使用することにより、複雑な処理を行うことなく、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着抑制効果を高めることが可能になる。
(2)特に、涙液のごとく、タンパク質と脂質が共存する場合であっても、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着抑制効果を高めることが可能になる。
(3)また、酢酸ビニル/ビニルピロリドンの比率が80/20〜20/80である酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体有しているため、水やエタノール等の溶媒に対する溶解性を高めることが可能になる。
(4)また、コンタクトレンズ用組成物中の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体の濃度を0.0001〜10(w/v)%とすることにより、コストを向上させることなく、タンパク質の吸着抑制効果を確実に発揮させることが可能になる。
(5)また、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体の重量平均分子量が、5000〜500000であるため、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体が、容易に、コンタクトレンズ素材のマトリックスに入り込み、かつタンパク質が吸着しやすい基を被覆することが可能になる。
(6)また、本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、上述の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体により、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着が抑制されるため、眼の乾燥感が軽減され、潤い感を向上させることが可能になる。
(7)また、本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、上述の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体により、コンタクトレンズの角結膜表面における摩擦が抑制されるため、コンタクトレンズの装用感を向上することができる。
(8)また、本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、テルペノイドを含有しているため、コンタクトレンズ装着後の清涼感を付与することができるとともに、眼の乾燥感がより一層軽減され、潤い感を向上させることが可能になる。また、瞬目による上下眼瞼や、角結膜との摩擦抵抗を抑制することができる。更に、コンタクトレンズ装用自体による乾燥感を抑制し、潤い感を向上させることができるとともに、異物感を抑制することができる。
(9)また、本発明のコンタクトレンズ用組成物は、特に、ソフトコンタクトレンズに対するタンパク質の吸着を抑制することが可能になる。
(10)また、本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体とテルペノイドを含有しているため、ムチンの発現量が飛躍的に増加され、眼の乾燥感を飛躍的に軽減することができる。
(11)また、本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有しているため、本発明のコンタクトレンズ用組成物を、コンタクトレンズとともに包装容器に封入されるパッケージング溶液として使用することにより、複雑な処理を行うことなく、コンタクトレンズに対する脂質の吸着抑制効果を高めることが可能になる。この効果は特に、コンタクトレンズがシリコーンハイドロゲルレンズの場合に顕著に奏される。
なお、上述の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体の代わりに、下記式(2)で示されるポリビニルカプロラクタムを使用してもよい。
Figure 0005568174
(式中、nは400〜700の整数である。)
このようなポリビニルカプロラクタムを使用することにより、上述の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体と同様に、複雑な処理を行うことなく、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着抑制効果を高めることが可能になる。
また、本発明のコンタクトレンズの製造方法は、上述のごとく、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有するコンタクトレンズ用組成物とコンタクトレンズとを接触させる工程を含む。
また、本発明のコンタクトレンズの製造方法は、上述のごとく、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有するコンタクトレンズ用組成物とコンタクトレンズとを接触させる工程と、コンタクトレンズ用組成物とコンタクトレンズとを密封する工程を含む、パッケージングされたコンタクトレンズの製造方法を包含する。
更に、本願は、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有するコンタクトレンズ用組成物とコンタクトレンズとを接触させる工程と、コンタクトレンズ用組成物とコンタクトレンズとを密封する工程を含む方法により製造された、コンタクトレンズパッケージ(
コンタクトレンズ製品)を包含する。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを発明の範囲から除外するものではない。
[試験1 タンパク吸着性試験]
(実施例1−1)
(コンタクトレンズ用組成物の作製、および試験用コンタクトレンズの作製)
滅菌した精製水100gに、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーンM、分子量約70000)2g(濃度:1(w/v)%)、緩衝剤であるリン酸水素ナトリウム12水和物(和光純薬(株)製)0.5993g(濃度:0.5993(w/v)%)、リン酸2水素ナトリウム2水和物(和光純薬(株)製)0.0528g(濃度:0.0528(w/v)%)、及び等張化剤である塩化ナトリウム(和光純薬(株)製)0.83g(濃度:0.83(w/v)%)を添加して溶解させて、コンタクトレンズ用組成物を作製した。なお、作製したコンタクトレンズ用組成物のpHは7.4であった。
次に、市販のオマフィルコンAレンズ(クーパービジョン社製、商品名:プロクリアワンデー)を用意した。次に、このコンタクトレンズを包装容器から取り出し、取り出したコンタクトレンズをリン酸緩衝剤含有生理食塩水(塩化ナトリウム濃度:0.83(w/v)%、リン酸水素ナトリウム12水和物濃度:0.5993(w/v)%、リン酸二水素ナトリウム2水和物濃度:0.0528(w/v)%)で洗浄した後、十分量のリン酸緩衝剤含有生理食塩水に浸漬させ、一晩放置した。
次に、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)容器に、作製したコンタクトレンズ用組成物(4ml)を入れた。リン酸緩衝剤含有生理食塩水からコンタクトレンズを取り出し、このコンタクトレンズを、リン酸緩衝剤含有生理食塩水で濯いだ後、リントフリーの不織布を使用してコンタクトレンズの水分を除去した。
次に、このコンタクトレンズをコンタクトレンズ用組成物に浸漬して、コンタクトレンズとコンタクトレンズ用組成物を接触させるとともに、コンタクトレンズとコンタクトレンズ用組成物とを密封してオートクレーブ処理(121℃、20分)を行い、室温で120時間、放置し、試験用コンタクトレンズを作製した。
(タンパク質吸着性試験)
次に、バッファー溶液(塩化ナトリウム濃度:0.9(w/v)%、リン酸二水素ナトリウム12水和物濃度:0.045(w/v)%、塩化カルシウム2水和物濃度:0.015(w/v)%、1Mの水酸化ナトリウム溶液を使用して、pHを7に調製したもの)に、卵白由来の塩化リゾチームを0.3(w/v)%になるように添加するとともに、脂質としてのオレイン酸を0.003(w/v)%、リノール酸を0.003(w/v)%、トリパルミチンを0.0405(w/v)%、セタノールを0.01(w/v)%、パルミチン酸を0.003(w/v)%、スパームアセチを0.0405(w/v)%、コレステロールを0.004(w/v)%、パルミチン酸コレステロールを0.004(w/v)%、及びレシチン卵由来を0.1415(w/v)%になるように添加して、脂質を含有す
るリゾチーム溶液を調製した。
次に、調製したリゾチーム溶液をろ過した後、バイアル瓶(ガラス製、容量:10ml)に2ml注いだ。
次に、コンタクトレンズ用組成物からコンタクトレンズを取り出し、リン酸緩衝剤含有生理食塩水を使用してこのコンタクトレンズを2回、洗浄した後、リントフリーの不織布を使用してコンタクトレンズの水分を除去した。
次に、コンタクトレンズをリゾチーム溶液に浸漬し、シェーカーを使用して、34℃で7時間、コンタクトレンズを振動(120回/分)させることにより、コンタクトレンズにタンパク質を吸着させた。
次に、リゾチーム溶液からコンタクトレンズを取り出し、リン酸緩衝剤含有生理食塩水を使用してこのコンタクトレンズを2回、洗浄し、リントフリーの不織布を使用してコンタクトレンズの水分を除去した。
次に、このコンタクトレンズを、新しいバイアル瓶(ガラス製、容量:10ml)に注いだタンパク質抽出用の溶液(ドデシル硫酸ナトリウム濃度:1(w/v)%、炭酸ナトリウム濃度:1(w/v)%)2mlに浸漬した。
次に、シェーカーを使用して、34℃で14時間、コンタクトレンズを振動(120回/分)させることにより、コンタクトレンズに吸着しているタンパク質を抽出した。
次に、タンパク質濃度測定用の試薬(サーモサイエンティフィック(株)製、商品名:Micro BCA Protein Assay Kit)を使用して、タンパク質抽出用の溶液中のタンパク質の
定量を行い、得られた値から、コンタクトレンズ1枚に対するタンパク質の吸着量を算出した。以上の結果を表1に示す。
(実施例1−2)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:PVA−6450、分子量約70000)を2g(濃度:1(w/v)%)使用したこと以外は、上述の実施例1−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製し、さらに試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表1に示す。
(実施例1−3)
上述の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体の代わりに、ポリビニルカプロラクタム(BASFジャパン(株)製、商品名:ルビスコールPlus、分子量:70000〜80000)を2.5g(濃度:1(w/v)%)使用したこと以外は、上述の実施例1−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製し、さらに試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表1に示す。
(実施例1−4)
まず、上述の実施例1−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、リゾチーム溶液として、上述の脂質を含有しないリゾチーム溶液を使用したこと以外は、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表2に示す。
(実施例1−5)
まず、上述の実施例1−2と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、リゾチーム溶液として、上述の脂質を含有しないリゾチーム溶液を使用したこと以外は、上述の実施例1−2と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表2に示す。
(実施例1−6)
まず、上述の実施例1−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製した。その後、市販のコンタクトレンズとして、エタフィルコンA(etafilcon A)レンズ(ジョン
ソン&ジョンソン社製、商品名:2ウィークアキュビュー)を使用したこと以外は、上述の実施例1−1と同様にして試験用コンタクトレンズを作製し、さらに上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表3に示す。
(実施例1−7)
まず、上述の実施例1−2と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製した。その後、市販のコンタクトレンズとして、エタフィルコンAレンズ(ジョンソン&ジョンソン社製、商品名:2ウィークアキュビュー)を使用して試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表3に示す。
(実施例1−8)
まず、上述の実施例1−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製した。その後、市販のコンタクトレンズとして、エタフィルコンAレンズ(ジョンソン&ジョンソン社製、商品名:2ウィークアキュビュー)を使用して試験用コンタクトレンズを作製し、さらにリゾチーム溶液として、上述の脂質を含有しないリゾチーム溶液を使用したこと以外は、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表4に示す。
(実施例1−9)
まず、上述の実施例1−2と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製した。その後、市販のコンタクトレンズとして、エタフィルコンAレンズ(ジョンソン&ジョンソン社製、商品名:2ウィークアキュビュー)を使用して試験用コンタクトレンズを作製し、さらにリゾチーム溶液として、上述の脂質を含有しないリゾチーム溶液を使用したこと以外は、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表4に示す。
(比較例1−1)
作製したコンタクトレンズ用組成物の代わりに、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない上述のリン酸緩衝剤含有生理食塩水を使用して試験用コンタクトレンズを作製し、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表1に示す。
(比較例1−2)
作製したコンタクトレンズ用組成物の代わりに、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない上述のリン酸緩衝剤含有生理食塩水を使用して試験用コンタクトレンズを作製するとともに、リゾチーム溶液として、上述の脂質を含有しないリゾチーム溶液を使用し、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表2に示す。
(比較例1−3)
作製したコンタクトレンズ用組成物の代わりに、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない上述のリン酸緩衝剤含有生理食塩水を使用するとともに、市販のコンタクトレンズとして、エタフィルコンA(etafilcon A)レンズ(ジョンソン&ジョンソン社製、商品名:2ウィークアキュビュー)を使用して試験用コンタクトレンズを作製し、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表3に示す。
(比較例1−4)
作製したコンタクトレンズ用組成物の代わりに、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない上述のリン酸緩衝剤含有生理食塩水を使用して試験用コンタクトレンズを作製するとともに、市販のコンタクトレンズとして、エタフィルコンA(etafilcon A)レンズ(ジョンソン&ジョンソン社製、商品名:2ウィークアキュビュー)を使用し、更にリゾチーム溶液として、上述の脂質を含有しないリゾチーム溶液を使用し、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表4に示す。
Figure 0005568174
Figure 0005568174
Figure 0005568174
Figure 0005568174
表1に示すように、実施例1−1〜1−3のいずれのコンタクトレンズ用組成物も、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体、又はポリビニルカプロラクタムを含有していない比較例1−1に比し、約30〜80%のタンパク質の吸着を抑制することができることが判る。
また、表2に示すように、実施例1−4〜1−5のいずれのコンタクトレンズ用組成物も、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない比較例1−2に比し、約20%のタンパク質の吸着を抑制することができることが判る。
また、表3に示すように、実施例1−6〜1−7のいずれのコンタクトレンズ用組成物も、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない比較例1−3に比し、約80%のタンパク質の吸着を抑制することができることが判る。
更に、表4に示すように、実施例1−8〜1−9のいずれのコンタクトレンズ用組成物も、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない比較例1−4に比し、約10〜20%のタンパク質の吸着を抑制することができることが判る。
また、実施例1−1〜1−9より、本発明のコンタクトレンズ用組成物は、米国食品医薬品局(FDA)基準によるソフトコンタクトレンズ分類においてグループIIに分類されるソフトコンタクトレンズ(オマフィルコンAレンズ)、及びグループIVに分類されるソフトコンタクトレンズ(エタフィルコンAレンズ)のどちらのレンズに対しても、優れたタンパク質吸着抑制効果を発揮することできることが判る。
特に、実施例1−6〜1−7から判るように、本発明のコンタクトレンズ用組成物は、グループIVに分類されるソフトコンタクトレンズ(エタフィルコンAレンズ)レンズに対して、極めて優れたタンパク質吸着抑制効果を発揮することできることが判る。
これは、グループIVに分類されるソフトコンタクトレンズにおいては、コンタクトレンズ内部における隙間が大きいため、タンパク質がコンタクトレンズの内部にまで入り込むが、本発明のコンタクトレンズ用組成物においては、コンタクトレンズの内部にまで入り込める適切な分子量を有した酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有するため、コンタクトレンズ表面のみならず、コンタクトレンズの内部においても、優れたタンパク質の吸着抑制効果が発揮されたためであると考えられる。
更に、実施例1−1〜1−3, 1−6〜1−7より、本発明のコンタクトレンズ用組成物は、特に、タンパク質と脂質が共存する場合に、コンタクトレンズに対するタンパク質の吸着抑制効果を高めることができることが判る。
これは、実施例1−1〜1−3, 1−6〜1−7においては、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(または、ポリビニルカプリラクタム)を含有しているため、コンタクトレンズを構成する材料における電荷を有する基(例えば、4級アンモニウム基、リン酸基、カルボキシル基)、及び疎水基(例えば、シロキサン基)を、電荷を有しない酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(または、ポリビニルカプリラクタム)が被覆し、コンタクトレンズ表面におけるタンパク質の吸着が抑制されたためであると考えられる。
(実施例1−10)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーン
M、分子量約70000)0.2g(濃度:0.1(w/v)%)を使用し、界面活性剤であるポリソルベート80(0.1g、濃度:0.1(w/v)%)をさらに含有させたこ
と以外は、上述の実施例1−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製した。その後、市販のコンタクトレンズとして、エタフィルコンAレンズ(ジョンソン&ジョンソン社製、商品名:ワンデーアキュビュー)を使用し、オートクレーブ処理を行わないこと以外は実施例1−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表5に示す。
(実施例1−11)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーン
M、分子量約70000)0.02g(濃度:0.01(w/v)%)を使用し、界面活性剤であるポリソルベート80(0.1g、濃度:0.1(w/v)%)をさらに含有させ
たこと以外は、上述の実施例1−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製した。その後、市販のコンタクトレンズとして、エタフィルコンAレンズ(ジョンソン&ジョンソン社製、商品名:ワンデーアキュビュー)を使用し、オートクレーブ処理を行わず、室温保存時間を48時間としたこと以外は実施例1−1と同様にして試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表5に示す。
(実施例1−12)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(BASFジャパン(株)製、商品名:Luvi
skol64P、分子量50000〜60000)0.01g(濃度:0.01(w/v)%)を使用し、界面活性剤であるポリソルベート80(0.1g、濃度:0.1(w/v)%)をさらに含有させたこと以外は、上述の実施例1−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製した。その後、市販のコンタクトレンズとして、エタフィルコンAレンズ(ジョンソン&ジョンソン社製、商品名:ワンデーアキュビュー)を使用し、オートクレーブ処理を行わず、室温保存時間を48時間としたこと以外は実施例1−1と同様にして試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表5に示す。
(実施例1−13)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(BASFジャパン(株)製、商品名:Luvi
skol73E、分子量40000〜60000)0.02g(濃度:0.01(w/v)%)を使用し、界面活性剤であるポリソルベート80(0.1g、濃度:0.1(w/v)%)をさらに含有させたこと以外は、上述の実施例1−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製した。その後、市販のコンタクトレンズとして、エタフィルコンAレンズ(ジョンソン&ジョンソン社製、商品名:ワンデーアキュビュー)を使用し、オートクレーブ処理を行わず、室温保存時間を48時間としたこと以外は実施例1−1と同様にして試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表5に示す。
(比較例1−5)
作製したコンタクトレンズ用組成物の代わりに、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有せず、界面活性剤であるポリソルベート80(0.1g、濃度:0.1(w/v)%)を含有させた上述のリン酸緩衝剤含有生理食塩水を使用するとともに、市販のコンタクトレンズとしてエタフィルコンAレンズ(ジョンソン&ジョンソン社製、商品名:ワンデーアキュビュー)を使用し、オートクレーブ処理を行わず、室温保存時間を48時間としたこと以外は実施例1−1と同様にして試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表5に示す。
Figure 0005568174
表5に示すように、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体の濃度が0.1もしくは0.01(w/v)%の場合であっても、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない比較例1−5に比し、約20〜60%のタンパク質の吸着を抑制することができることが判る。
また、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体における酢酸ビニル/ビニルピロリドンの比率(質量比率)が異なる場合であっても、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない比較例1−5に比し、約15〜20%のタンパク質の吸着を抑制することができることが判る。
(実施例1−14)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーン
M)0.2g(濃度0.1(w/v)%、分子量約70000)を使用し、界面活性剤であるポリソルベート80(0.1g、濃度:0.1(w/v)%)をさらに含有させたこと以外は、上述の実施例1−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製し、オートクレーブ処理を行わず、室温保存時間を48時間としたこと以外は実施例1−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表6に示す。
(実施例1−15)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーンM
、分子量約70000)0.02g(濃度0.01(w/v)%)を使用し、界面活性剤であるポリソルベート80(0.1g、濃度:0.1(w/v)%)をさらに含有させたこと以外は、上述の実施例1−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製し、オートクレーブ処理を行わず、室温保存時間を48時間としたこと以外は実施例1−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表6に示す。
(比較例1−6)
作成したコンタクトレンズ用組成物の代わりに、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない上述のリン酸緩衝剤含有生理食塩水にさらに、界面活性剤であるポリソルベート80(0.1g、濃度:0.1(w/v)%)を含有させたものを使用し、オートクレーブ処理を行わず、室温保存時間を48時間としたこと以外は実施例1−1と同様にして試験用コンタクトレンズを作成した。その後、上述の実施例1−1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。以上の結果を表6に示す。
Figure 0005568174
表6に示すように、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体の濃度が0.1もしくは0.01%の場合であっても、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない比較例1−6に比し、約10%のタンパク質の吸着を抑制することができることが判る。
[試験2 脂質吸着性試験]
(実施例2−1)
(コンタクトレンズ用組成物の作製、および試験用コンタクトレンズの作製)
滅菌した精製水100gに、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーンM、分子量約70000)1g(濃度:0.5(w/v)%)、界面活性剤であるポリソルベート80(0.1g、濃度:0.1(w/v)%)、緩衝剤であるリン酸水素ナトリウム12水和物(和光純薬(株)製)0.5993g(濃度:0.5993(w/v)%)、リン酸2水素ナトリウム2水和物(和光純薬(株)製)0.0528g(濃度:0.0528(w/v)%)、及び等張化剤である塩化ナトリウム(和光純薬(株)製)0.83g(濃度:0.83(w/v)%)を添加して溶解させて、コンタクトレンズ用組成物を作製した。なお、作製したコンタクトレンズ用組成物のpHは7.4であった。
次に、シリコーンハイドロゲルレンズである市販のセノフィルコンA(Senofil
conA)レンズ(ジョンソン&ジョンソン社製、商品名:アキュビューオアシス)を包
装容器から取り出し、取り出したコンタクトレンズを上述のリン酸緩衝剤含有生理食塩水で洗浄した後、十分量のリン酸緩衝剤含有生理食塩水に浸漬させ、一晩放置した。次に、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)容器に、レンズ1枚あたり4mlのコンタクトレンズ用組成物に浸漬させ、室温で72時間放置して、試験用コンタクトレンズを作製した。
(脂質吸着性試験)
まず、脂質懸濁液を作製した。より具体的には、オレイン酸0.06g、リノール酸0.06g、トリパルミチン0.81g、セタノール0.2g、パルミチン酸0.06g、スパームアセチ0.81g、コレステロール0.08g、パルミチン酸コレステロール0.08g、及びレシチン卵由来2.83gを秤量するとともに混合して、約70℃で加熱溶解した。
次に、リン酸・ホウ酸緩衝液(塩化ナトリウム0.9(w/v)%、リン酸二水素カリウム0.5(w/v)%、ホウ砂1.19(w/v)%)を作製し、加熱溶解状態の脂質混合成分5gと、リン酸・ホウ酸緩衝液1Lを、ホモディスパーを用いて攪拌(70℃、5000rpm、10分)した後、ろ過し、さらにリン酸にてpH7.0に調整したものを脂質懸濁液とした。
この脂質懸濁液をガラス製バイアル(容量10ml)に2mlずつ入れ、試験用コンタクトレンズを、十分量のリン酸緩衝剤含有生理食塩水で濯いだ後に浸漬させ、37℃で16時間振とうさせた。
次に、レンズを取り出し、約100mlのリン酸緩衝剤含有生理食塩水で濯いだあと、2ml容量のエッペンチューブの底部に入れ、減圧乾燥機(15mmHg)中で、室温で一昼夜乾燥させた。
次に、脂質抽出液(エタノール:エーテル=3:1)1ml中に乾燥させたレンズを入れて10分以上浸漬し、レンズに吸着している脂質を抽出させた。脂質抽出液0.5mlを取り、新しい15mlの遠沈管(PP製)に入れ、約70℃で加温しながら窒素ガスで溶媒を除去させた。
次に残留物に0.05mlの無水エタノール及び、2.5mlの濃硫酸を加えて、90℃の湯浴で30分間処理した。
室温まで放冷した後、0.4mlを採取し、新しい遠沈管(PP製)に移し、6mlのバニリン溶液(0.6(w/v)%のバニリン水溶液:リン酸=1:4)を加えて、37℃の湯浴で遮光下15分間処理し、このサンプルを96wellマルチプレートに200μlずつアプライし、分光光度計にて540nmにおける吸光度を測定した。
なお、0.6(w/v)%のバニリン水溶液は、バニリン0.6gを8mlの無水エタノールで溶解したものを、蒸留水で100mlにメスアップしたものである。
次いで、同様の手順でオリーブ油を指標物質として作製した検量線を使用して、コンタクトレンズへの脂質の吸着量を求めた。以上の結果を表7に示す。
(実施例2−2)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーンM、分子量約70000)を0.2g(濃度:0.1(w/v)%)使用したこと以外は、上述の実施例2−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例2−1と同様にして、脂質吸着試験を行った。以上の結果を表7に示す。
(実施例2−3)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を(BASFジャパン(株)製、商品名:Luviskol64P、分子量約50000〜60000)0.1g(濃度:0.1(w/v)%)使用したこと以外は、上述の実施例2−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例2−1と同様にして、脂質吸着試験を行った。以上の結果を表7に示す。
(実施例2−4)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(BASFジャパン(株)製、商品名:Luviskol73E、分子量40000〜60000)1g(濃度:0.5(w/v)%)を使用したこと以外は、上述の実施例2−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例2−1と同様にして、脂質吸着試験を行った。以上の結果を表7に示す。
(実施例2−5)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(BASFジャパン(株)製、商品名:Luviskol73E、分子量40000〜60000)を0.2g(濃度:0.1(w/v)%)使用したこと以外は、上述の実施例2−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例2−1と同様にして、脂質吸着試験を行った。以上の結果を表7に示す。
(比較例2−1)
作製したコンタクトレンズ用組成物の代わりに、上述の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない組成物を使用し、上述の実施例2−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の実施例2−1と同様にして、脂質吸着試験を行った。以上の結果を表7に示す。
Figure 0005568174
表7に示すように、実施例2−1〜2−5のいずれのコンタクトレンズ用組成物においても、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない比較例2−1に比し、約10〜30%の脂質の吸着を抑制することができることが判る。
また、実施例2−1〜2−5のいずれのコンタクトレンズ用組成物も、脂質が特に付着しやすいシリコーンハイドロゲルレンズに対して、極めて優れた脂質吸着抑制効果を発揮することができることが判る。
[試験3 摩擦試験]
(実施例3−1)
(コンタクトレンズ用組成物の作製、および試験用コンタクトレンズの作製)
滅菌した精製水100gに、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーンM、分子量約70000)0.2g(濃度:0.1(w/v)%)、界面活性剤であるポリソルベート80(0.1g、濃度:0.1(w/v)%)、緩衝剤であるリン酸水素ナトリウム12水和物(和光純薬(株)製)0.5993g(濃度:0.5993(w/v)%)、リン酸2水素ナトリウム2水和物(和光純薬(株)製)0.0528g(濃度:0.0528(w/v)%)、及び等張化剤である塩化ナトリウム(和光純薬(株)製)0.83g(濃度:0.83(w/v)%)を添加して溶解させて、コンタクトレンズ用組成物を作製した。なお、作製したコンタクトレンズ用組成物のpHは7.4であった。
次に、市販のオマフィルコンA(omafilconA)レンズ(クーパービジョン社製、商品名:プロクリアワンデー)を使用し、オートクレーブ処理を行わないこと以外は実施例1−1と同様の処理を行い、試験用コンタクトレンズを作製した。
(摩擦試験)
次に、静動摩擦測定機であるトライボマスター(トリニティーラボ(株)製、商品名:TL201S)を用いて、試験用コンタクトレンズの動摩擦係数を測定した。
具体的には、接触子に試験対象のコンタクトレンズを固着させ、移動テーブルに人工皮革を貼付し、さらに、その上に生理食塩水(大塚製薬工場(株)製)を約15ml滴下した。そして、その上にコンタクトレンズを固着させた接触子を固定し、摩擦感テスターを50gの荷重を加えた状態で、2.0mm/秒の速度で移動させ、移動開始から10秒後の動摩擦係数を測定した。なお、接触子としてはR接触子を使用した。
そして、測定したデータを、Condition catcher Model(九州共販(株)製、商品名:
MPL−10A−128)を用いてコンピュータへ転送し、動摩擦係数の平均値を求めた。以上の結果を表8に示す。(N=3)
なお、動摩擦係数の平均値は、上記コンタクトレンズの角結膜表面における摩擦の度合いを示しており、摩擦が高いほど装用感が悪化することを示す。
(比較例3−1)
作製したコンタクトレンズ用組成物の代わりに、上述の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない組成物を使用し、上述の実施例3−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の3−1と同様にして、摩擦試験を行った。以上の結果を表8に示す。
(実施例3−2)
上述の実施例3−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製した。その後、市販のコンタクトレンズとして、バラフィルコンA(BalafilconA)レンズ(ボシュロム社製、商品名:メダリストフレッシュフィット)を使用して試験用コンタクトレンズを作製したこと以外は、上述の実施例3−1と同様にして、摩擦試験を行った。以上の結果を表9に示す。
(比較例3−2)
作製したコンタクトレンズ用組成物の代わりに、上述の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない組成物を使用するとともに、市販のコンタクトレンズとして、バラフィルコンA(BalafilconA)レンズ(ボシュロム社製、商品名:メダリストフレッシュフィット)を使用したこと以外は実施例3−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後上述の3−1と同様にして、摩擦試験を行った。以上の結果を表9に示す。
(実施例3−3)
上述の実施例3−1と同様にして、コンタクトレンズ用組成物を作製した。その後、市販のコンタクトレンズとして、ロトラフィルコンB(LotrafilconB)レンズ(チバビジョン社製、商品名:エアオプティクスアクア)を使用して試験用コンタクトレンズを作製したこと以外は、上述の実施例3−1と同様にして、摩擦試験を行った。以上の結果を表10に示す。
(比較例3−3)
作製したコンタクトレンズ用組成物の代わりに、上述の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない組成物を使用するとともに、市販のコンタクトレンズとして、ロトラフィルコンB(LotrafilconB)レンズ(チバビジョン社製、商品名:エアオプティクスアクア)を使用して試験用コンタクトレンズを作製したこと以外は実施例3−1と同様にして、試験用コンタクトレンズを作製した。その後、上述の3−1と同様にして、摩擦試験を行った。以上の結果を表10に示す。
Figure 0005568174
Figure 0005568174
Figure 0005568174
表8〜表10に示すように、実施例3−1〜3−3のいずれのコンタクトレンズに適用した場合においても、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していることによって、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない比較例3−1〜3−3に比し、約15〜35%の摩擦を抑制することができることが判る。
特に、実施例3−1から判るように、本発明のコンタクトレンズ用組成物は、グループIIに分類されるソフトコンタクトレンズ(オマフィルコンAレンズ)レンズに対して、極めて優れた摩擦抑制効果を発揮することが判る。
[試験4 ヒト装用時の使用感評価及び、ヒト装用後レンズの摩擦試験]
(実施例4)
(コンタクトレンズ用組成物の作製、および試験用コンタクトレンズの作製)
滅菌した精製水100gに、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーンM、分子量約70000)0.02g(濃度:0.01(w/v)%)、清涼化剤であるl−メントール0.002g(濃度:0.002(w/v)%)、界面活性剤であるステアリン酸ポリオキシル40(0.1g、濃度:0.1(w/v)%)及びプルロニックP123(0.1g、0.1(w/v)%)、緩衝剤であるリン酸水素ナトリウム12水和物(和光純薬(株)製)0.5993g(濃度:0.5993(w/v)%)、リン酸2水素ナトリウム2水和物(和光純薬(株)製)0.0528g(濃度:0.0528(w/v)%)、及び等張化剤である塩化ナトリウム(和光純薬(株)製)0.83g(濃度:0.83(w/v)%)を添加して溶解させて、コンタクトレンズ用組成物を作製した。なお、作製したコンタクトレンズ用組成物のpHは7.4であった。
次に、市販のオマフィルコンA(omafilconA)レンズ(クーパービジョン社製、商品名:プロクリアワンデー)を用意した。次に、このコンタクトレンズを包装容器から取り出し、取り出したコンタクトレンズを、リン酸緩衝剤含有生理食塩水(フィルター滅菌済み)で洗浄したあと、コンタクトレンズを、十分量のリン酸緩衝剤含有生理食塩水(フィルター滅菌済み)に浸漬させ、一晩放置した。
次に、上記のコンタクトレンズ用組成物を乾熱滅菌したバイアル(ガラス製、容量10ml)に2ml充填し、リン酸緩衝剤含有生理食塩水から取り出したコンタクトレンズを
浸漬させた。そして、バイアル瓶を密封し、室温にて168時間保存し、試験用コンタクトレンズを作製した。
(比較例4)
作製したコンタクトレンズ用組成物の代わりに、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体及びl−メントールを含有していない組成物を使用したこと以外は、上述の実施例4と同様にして、試験用コンタクトレンズ用組成物を作製した。
(ヒト装用方法)
次に、3名の健常人に対して、右眼に実施例4において作製した試験用コンタクトレンズを装用させるとともに、左眼に比較例4において作製した試験用コンタクトレンズを装用させた。また、翌日、同じ健常人に対して、右眼に比較例4において作製した試験用コンタクトレンズを装用させるとともに、左眼に実施例4において作製した試験用コンタクトレンズを装用させた。
(使用感評価)
装用直後、及び装用して8時間経過後に、VAS法(Visual Analogue
Scale:視覚的評価スケール)を使用して、下記の評価項目(乾燥感、上瞼にひっ
かかる感じ、下瞼にひっかかる感じ、レンズが引きあがる感じ、レンズが張り付く感じ、及び異物感)について評価した。具体的には、評価時点において、被験者が感じられる上記の各評価項目について、それぞれ118mmの線が引いてある自覚症状調査シートに、感じられない場合を0mm、感じられる場合を59mm、強く感じられる場合を118mmとして、被験者が感じた症状の部分にチェックしてもらい、自覚症状のスコアとして、この長さ(mm)を測定し、これを各症状のスコアとした。
評価は、試験日の2日間実施し、評価項目毎に3名(6眼)のスコア平均値を算出することにより、各症状の評価を行った。以上の結果を表11に示す。
Figure 0005568174
(摩擦試験)
上述の試験3(摩擦試験)と同様の方法で、ヒトが8時間装用した後の試験用コンタクトレンズについて、動摩擦係数を求めた。その結果を表12に示す。
Figure 0005568174
表11に示すように、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体及びl−メントールを含有している実施例4は、装用直後及び、装用して8時間後のいずれの場合も、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない比較例4に比し、評価対象である全ての項目において、自覚症状スコアが低下し、自覚症状を改善することができることが判る。
特に、装用直後のみならず、装用して8時間経過後であっても、装用によって発生する装用感の悪化を顕著に低下させ、優れた装用感を持続させることができることが判る。
さらに、表12に示すように、実際にヒトが装用したコンタクトレンズを用いて摩擦を評価した場合も、コンタクトレンズ表面における摩擦が優位に改善されていた(n=6、
P<0.05、paired t test)。このことから、ヒトがコンタクトレンズ
を装用する場合においても、長時間にわたって摩擦が発生しにくく、優れた装用感を保つことができることが判る。
[試験5 角膜上皮細胞におけるムチン発現評価]
(実施例5−1)
(試料調製)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーンM、分子量約70000)を濃度:0.01(w/v)%となるようにDMEM/F1
2(Invitrogen社)培地に溶解した。
(ムチン産生評価)
角膜上皮細胞株HCE−T(理化学研究所 バイオリソースセンター)を、6 wel
l plate(コーニング社)に3.0×10細胞/ウェルで播種し、37℃、5%CO、湿度90%の条件でコンフルエントになるまで培養した。
次に、上記で調製した試料を、培養した角膜上皮細胞株に2mlずつ添加して、37℃、5%CO、湿度90%の条件にて24時間保存した。
その後、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて細胞内のtotal RNAを単離した。そして、膜型ムチン(MUC16)のmRNA発現量を、ABI PRISM7000 Sequence Detection System(アプライドバイオシステムズ社)を用いて、定量的リアルタイムPCR法により定量した。以上の結果を表13に示す。
(実施例5−2)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーンM、分子量約70000)を濃度:0.01(w/v)%、l−メントール(予めDMSOで濃度:1(W/V)%となるように溶解したもの)をl−メントールの濃度が0.0002(
W/V)%となるようにDMEM/F12(Invitrogen社)培地に溶解した。
この試料を用いて上述の実施例5−1と同様にして、膜型ムチン(MUC16)のmRNA発現量の定量を行った。以上の結果を表13に示す。
(実施例5−3)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体(大阪有機化学工業(株)製、商品名:アコーンM、分子量約70000)を濃度:0.01(w/v)%、l−メントール(予め、DMSOで濃度:1(w/v)%となるように溶解したもの)をl−メントールの濃度が0.0
02(w/v)%となるようにDMEM/F12(Invitrogen社)培地に溶解した。
この試料を用いて上述の実施例5−1と同様にして、膜型ムチン(MUC16)のmRNA発現量の定量を行った。以上の結果を表13に示す。
(比較例5)
酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体及びl−メントールを含有しない角膜上皮細胞株を使用したこと以外は、上述の実施例5−1と同様にして、膜型ムチン(MUC16)のmRNA発現量の定量を行った。以上の結果を表13に示す。
Figure 0005568174
表13に示すように、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有している実施例5-1では、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有していない比較例5に比し、膜型ムチンの発現量が増加していることが判る。
また、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体とl−メントールを含有している実施例5−2〜5―3においては、膜型ムチンの発現量が飛躍的に増加していることが判る。
以上に説明したように、本発明は、コンタクトレンズとともに包装容器に封入されるパッケージング溶液として用いられるコンタクトレンズ用組成物およびそれを用いたコンタクトレンズパッケージに、特に、有用である。
1 コンタクトレンズ
2 雌型成形用型
2a 凹面
3 雄型成形用型
3a 凸面
4 レンズ成形用型
5 コンタクトレンズ用の配合物
6 紫外線
7 コンタクトレンズ用組成物
8 包装容器

Claims (14)

  1. 未使用のコンタクトレンズと、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有するコンタクトレンズ用パッケージング液とが、包装容器に収容されていることを特徴とするコンタクトレンズパッケージ(但し、コンタクトレンズ用パッケージング液として、レンズケア溶液中に溶解または分散する一重項酸素発生試薬を含有し、コンタクトレンズを消毒及び/又は洗浄するためのレンズケア溶液を除く)
  2. コンタクトレンズ用パッケージング液中の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体における酢酸ビニル/ビニルピロリドンの比率が80/20〜20/80であることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズパッケージ。
  3. コンタクトレンズ用パッケージング液中の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体の濃度が、0.0001〜10(w/v)%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンタクトレンズパッケージ。
  4. コンタクトレンズ用パッケージング液中の酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体の重量平均分子量が、5000〜500000であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のコンタクトレンズパッケージ。
  5. コンタクトレンズ用パッケージング液中にテルペノイドを更に含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のコンタクトレンズパッケージ。
  6. テルペノイドが、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、及び酢酸リナリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載のコンタクトレンズパッケージ。
  7. コンタクトレンズが、ソフトコンタクトレンズであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のコンタクトレンズパッケージ。
  8. 未使用のコンタクトレンズに使用されるコンタクトレンズ用パッケージング液であって、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体を含有するコンタクトレンズ用パッケージング液(但し、レンズケア溶液中に溶解または分散する一重項酸素発生試薬を含有し、コンタクトレンズを消毒及び/又は洗浄するためのレンズケア溶液を除く)
  9. 未使用のコンタクトレンズを、酢酸ビニル−ビニルピロリドンを含有するコンタクトレンズ用パッケージング液に浸漬することによる、該コンタクトレンズへのタンパク質付着抑制方法(但し、コンタクトレンズ用パッケージング液として、レンズケア溶液中に溶解または分散する一重項酸素発生試薬を含有し、コンタクトレンズを消毒及び/又は洗浄するためのレンズケア溶液を除く)
  10. 未使用のコンタクトレンズを、酢酸ビニル−ビニルピロリドンを含有するコンタクトレンズ用パッケージング液に浸漬することによる、該コンタクトレンズへの脂質吸着抑制方法(但し、コンタクトレンズ用パッケージング液として、レンズケア溶液中に溶解または分散する一重項酸素発生試薬を含有し、コンタクトレンズを消毒及び/又は洗浄するためのレンズケア溶液を除く)
  11. 未使用のコンタクトレンズを、酢酸ビニル−ビニルピロリドンを含有するコンタクトレンズ用パッケージング液に浸漬することによる、該コンタクトレンズ表面に摩擦低減作用を付与する方法(但し、コンタクトレンズ用パッケージング液として、レンズケア溶液中に溶解または分散する一重項酸素発生試薬を含有し、コンタクトレンズを消毒及び/又は洗浄するためのレンズケア溶液を除く)
  12. 未使用のコンタクトレンズを、酢酸ビニル−ビニルピロリドンを含有するコンタクトレンズ用パッケージング液に浸漬することによる、該コンタクトレンズ装用時の乾燥感低減作用を該コンタクトレンズに付与する方法(但し、コンタクトレンズ用パッケージング液として、レンズケア溶液中に溶解または分散する一重項酸素発生試薬を含有し、コンタクトレンズを消毒及び/又は洗浄するためのレンズケア溶液を除く)
  13. 未使用のコンタクトレンズを、酢酸ビニル−ビニルピロリドンを含有するコンタクトレンズ用パッケージング液に浸漬することによる、該コンタクトレンズ装用時の潤い感向上作用を該コンタクトレンズに付与する方法(但し、コンタクトレンズ用パッケージング液として、レンズケア溶液中に溶解または分散する一重項酸素発生試薬を含有し、コンタクトレンズを消毒及び/又は洗浄するためのレンズケア溶液を除く)
  14. 未使用のコンタクトレンズを、酢酸ビニル−ビニルピロリドンを含有するコンタクトレンズ用パッケージング液に浸漬することによる、該コンタクトレンズ装用時の不快感低減作用を該コンタクトレンズに付与する方法(但し、コンタクトレンズ用パッケージング液として、レンズケア溶液中に溶解または分散する一重項酸素発生試薬を含有し、コンタクトレンズを消毒及び/又は洗浄するためのレンズケア溶液を除く)。
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