JP5564770B2 - 電気推進システムの保護方法 - Google Patents
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Description
図9において、蓄電池B1と発電機G1とから第1系統のハイブリッド電源が構成されているとともに、蓄電池B2と発電機G2とから第2系統のハイブリッド電源が構成されている。
給電電路S1,S2は、それぞれ第1,第2系統のハイブリッド電源から推進電動機(M1,M2)に給電する電路である。給電電路S1,S2には、それぞれ保護装置CB1,CB2が設けられており、保護装置CB1,CB2の電池B1,B2側には補機への分岐母線が保護装置CB5,CB6を介して接続されているとともに、推進電動機(M1,M2)側には発電機G1,G2への分岐母線が保護装置CB3,CB4を介して接続されている。
このような電気推進システムの運転では、発電機を運転して得た発電機電力を電池に充電電力として供給しながら推進電動機および複数系統の補機類へ電力供給する発電機運転モードと、発電機を停止し電池から全ての負荷に電力を供給する電池運転モードとがある。
発電機運転モードは、発電機電力(PGとする)を図9の点線で示す経路で、各負荷への供給電力(PLとする)として給電する運転モードである。この運転モードでは、負荷電力PLが発電機の出力容量PGLよりも小さく、PGL>PLの状態で運転されるので、2系統の給電電路に配置した遮断器等の保護装置CB1またはCB2の何れかが、機器の誤作動など何らかの要因でトリップ(開路)するか、または誤操作によりトリップ(開路)させたとき、例えばCB2がトリップの場合には電池充電電流(+IB2)および補機への給電(電流IAX2)が断たれるが、発電機G1,G2の負荷が減少するのみで、推進電動機への電力供給は何ら変わらないため、船舶の運転に支障をきたすようなことは無い。
電池運転モードは、電池放電電力(PB)を図9の実線で示す経路で各負荷への供給電力(PL)として給電する運転モードである。この運転モードでは、電池放電電力PBは負荷電力PLと等しくなるように(PB=PL)運転されるので、2系統の給電電路に配置した保護装置CB1またはCB2の何れか、例えばCB2が何らかの要因でトリップすると、推進電動機M1,M2に供給される電流IMB2が断たれ、電池B1から健全給電電路(この場合は給電電路S1)を介して推進電動機M1,M2に電力が供給されるため、保護装置CB1を流れる電流は(IMB1+IMB2)の大きさの電流となり、正常運転時の2倍の電流(IMFB1)になる。このため、保護装置CB1の過電流検出機能が作動してCB1トリップとなるため、推進電動機M1,M2への電力供給が断たれて船舶の推進が停止し、操船不能になる。
いま、2系統の給電電路S1,S2における一方の保護装置CB2がトリップするまで回転速度100%で運転中であった場合、時刻t1でCB2がトリップしたとすると、給電電路S2の電流IMB2が即流れなくなるから、健全給電電路S1の電流IMB1は2倍(200%)のIMFB1に増加する。このとき、保護装置CBの保護特性が図10に実線で示すような特性であれば、電流IMFB1(200%)により、例えば図10の時刻tp2 でトリップする。すなわち、図4(b)の時刻t2でCB1がトリップして推進電動機M1,M2への給電が断たれ、ブラックアウトすることになる。例えば船舶の危険回避のための運転中にこのようなブラックアウトが発生すれば、危険が回避されないため重大な状態を招く。
また、特許文献2〜3に記載の保護システムに適用可能な高速の電流遮断装置の構成が特許文献4に示されている。
前記各給電電路にそれぞれ推進電動機へ供給する電力を変換制御して船舶の推進器を可変速制御する電力変換器を設け、
電池のみで推進電動機および補機類へ電力を供給して運転する電池運転モード時においては、保護装置が閉路している健全側給電電路の系統数q(qは1以上、かつ、p以下の整数)が1ないし(p−1)である各場合について、それぞれ、健全側給電電路が過負荷にならないようにするための推進電動機回転速度の制限値を予め定めておき、少なくとも1系統の給電電路の保護装置が開路したとき、開路前の推進電動機回転速度が開路後における健全側給電電路の系統数に対応する制限値を超える回転速度であった場合には、前記電力変換器を停止させ、電力変換器が停止した遊転状態で推進電動機の回転速度が低下して、このときの健全側給電電路の系統数に対応する制限値以下の回転速度値になったときに、電力変換器の運転を再開させるとともに、推進電動機の回転速度上限値を、このときの健全側給電電路の系統数に対応する制限値に制限して運転を行うことを特徴とする。
従来と同一の構成要素については、同一の符号を付け、重複する説明は省略する。なお、この発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
図1は、この発明の第1の実施形態を示す概要図である。図1における主回路構成は、図9と同様であり、B1,B2は蓄電池、CB1~CB6は保護装置(遮断器)、S1, S2は給電電路、SW1, SW2はスイッチ、INV1,INV2は電力変換器(インバータ)、M1,M2は推進電動機である。給電電路S1,S2から保護装置CB3,CB4を介して分岐された発電機への分岐母線には、図示されていないが、図9と同様に、整流器RE1,RE2を介して、原動機DE1,DE2により駆動される発電機G1,G2が接続されている。給電電路(S1,S2)にスイッチSW1, SW2を介して接続された電力変換器(インバータ)INV1,INV2は、蓄電池B1,B2と発電機G1,G2とよりなる各ハイブリッド電源から推進電動機M1,M2に供給される電力を変換制御して、推進電動機M1,M2により駆動される電気推進船舶の推進機(プロペラ)を可変速制御する。
図1では、図示のように、図9に示す従来例に対し、推進電動機制御装置SCを設け、ここに保護装置CB1またはCB2がトリップ(開路)したことをトリップ信号(信号a1,a2)として取り込むとともに、速度検出器TDから速度検出値n、速度設定器VRNから速度設定値Nをそれぞれ入力するようにしている。
いま、時刻t1で保護装置CB2がトリップしたとすると、CB1側給電電路S1の電流IMB1は2倍(200%)に増加する。一方、CB2トリップ信号により、推進電動機制御装置SCから停止指令(c1,c2信号)を発信して電力変換器INV1, INV2を停止させる。その結果、プロペラ回転速度=推進電動機回転速度は図2にFrで示す遊転回転速度に低下する。
このとき、保護装置CB2がトリップして電力変換器INV1, INV2が停止するまでの遅れ時間(t1〜t2)中の健全側給電電路S1の電流は200%(IMFB1)であるが、この間に保護装置CB1がトリップしないように、保護装置CB1に例えば図10に示すような動作遅れ時間tp2を設定しておき、このtp2より早く電力変換器INV1, INV2を停止させれば保護装置CB1のトリップ動作は発生しないことになる。
なお、健全側給電電路が過負荷にならないようにするための推進電動機回転速度の制限値(上限値)として、上述の75%速度は余裕を見た回転速度値であって好適であるが、上記の制限値(上限値)は、75%速度に限定されるものではなく、健全側給電電路が過負荷にならないようにするため、推進電動機電力が1/2となる回転速度79.4%以下の回転速度値であればよい。
この場合も、1つの系統の推進電動機,電力変換器 が過負荷にならないよう、予め1/2出力を上限として制限するとともに、1つの系統の故障を検出したら、回転速度指令値NSCを75%に制限し、また、回転速度指令値NSCが75%以下で運転されている場合には、回転速度指令値NSCを変更することなく、そのまま運転を続行させれば良い。
1)給電電路で短絡事故が発生した場合
図1の給電電路(S1,S2)における保護装置CB1、CB2間の直流給電回路で短絡事故が発生した場合、2台の電池B1、B2から短絡点に短絡電流が流れ、2系統の給電電路の保護装置CB1、CB2がトリップ(開路)することが考えられるが、保護装置CB1、CB2が両方ともトリップすると、この第1の実施形態の構成では対応できない。しかしながら、上述の特許文献2あるいは特許文献3に記載の保護システムの構成を適用することにより、1台の保護装置はトリップするも、2台ともトリップすることを防ぐことができ、この発明による動作で対応できるようになる。特許文献2あるいは特許文献3に記載の保護システムの構成を適用した構成例については第3の実施形態として後述する。
保護装置CB1,CB2のうち、一方の保護装置を誤操作によりトリップさせた場合は、この発明による動作が有効である。
3)保護装置の開閉信号回路の断線または接触不良による誤信号が発生した場合
上記2)項の場合と同様この発明による動作が有効である。この場合は、保護装置の開閉信号回路の断線または接触不良であって給電の停止ではないから、この発明による動作が行われた後に通常運転に復帰させれば良い。
図5は、この発明の第2の実施形態による電気推進システムの保護方法の動作を説明するための波形図である。第2の実施形態では、第1の実施形態と同じ図1の回路構成において、第1の実施形態による図4(a)の動作とは異なる図5(a)の動作を行う。なお、図5(b)の動作パターンは、対比用として従来方式の動作を示すものであり、図4(b)と同じものである。
図5(a)の動作は、電池のみで推進電動機および補機類へ電力を供給して運転する電池運転モード時であって75%を超える推進電動機回転速度で運転中に、1系統の給電電路の保護装置が開路したときは、推進電動機の回転速度上限値を75%に制限し、保護装置が閉路している健全側給電電路が過負荷とならないようにする点では、図4(a)の動作と同様であるが、次の点で図4(a)とは異なるものである。
また、第2の実施形態による図5(a)の動作では、上述の回生電流により、健全側給電電路(例えばS1)の系統の電池(例えばB1)を充電することができる。
また、図5(a)において、一方の給電電路の保護装置CB2がトリップしたとき(時刻t1)に回転速度指令値NSCを75%速度にステップ的に低下させた後、時刻t2以降も回転速度フィードバック制御に対する回転速度指令値NSCが75%速度あるいはそれ以下の速度値に維持されるように推進電動機制御装置SCで制限することにより、速度設定器VRNの設定値Nが75%を超える値のままであっても回転速度が75%を超えることは無く、推進電動機の回転速度上限値を75%に制限した運転を行うことができる。
以上では、第2の実施形態を、給電電路の系統が2系統の場合について説明したが、3以上の複数系統の場合についても、健全側給電電路が過負荷とならないようにするための推進電動機の回転速度制限値(上限値)を全系統数と健全系統数に応じて定めるようにすることにより、上記と全く同様に実施することができる。
次に、図6はこの発明の第3の実施形態を示す回路構成図である。第3の実施形態は、図6に示すように、給電電路S1と給電電路,S2との結合点の近傍における給電電路S1側および給電電路,S2側にそれぞれ保護装置(遮断器)CB7およびCB8を設けている点で、第1の実施形態(図1)とは回路構成が異なっているが、2系統の給電電路(S1,S2)の保護装置(CB1,CB2)のいずれか一方がトリップ(開路)した場合における保護装置(例えばCB1)が閉路している方の健全側給電電路(例えばS1)が過負荷とならないようにするための保護動作としては、第1の実施形態(図4(a))あるいは第2の実施形態(図5(a))と同様な動作を行う。
図6の直流給電回路における各保護装置として図7に示す構成の遮断部を用いる。具体的には、保護装置CB1〜CB6として、遮断器21(気中遮断器など)と超限流遮断器22とが直列に設けられてなる遮断部(図7(a))を設けるとともに、保護装置CB7〜CB8としては、超限流遮断器22だけからなる遮断部(図7(b))を設ける。
そして、図6の直流給電回路における例えばr2点など各位置に図示されない電圧検出器を設けるとともに、電圧検出器の検出結果に基づいて直流給電回路における電圧低下から短絡点を検出し、その検出した短絡点に基づいて各保護装置の遮断動作を制御し、前記電圧低下に基づいて短絡点近傍の保護装置を遮断動作させ、それ以外の保護装置の遮断動作を禁止する選択遮断制御装置を設けておく。この構成では、短絡発生時の短絡点の電圧が短絡発生から極めて短時間に極めて小さい値に急下降することに基づき、短絡発生から短時間に保護装置を速やかに遮断動作させることができる。また、各保護装置とも高速な電流遮断が可能な超限流遮断器22を備えているので、各保護装置の遮断動作の遅れは小さい。したがって、電気推進船舶用の電気推進システムにおけるような電路インピーダンスの小さい直流給電回路であっても、短絡事故が発生したときに、2系統の給電電路(S1,S2)における保護装置CB1,CB2,CB7,CB8のうち、短絡点(例えばr2点)近傍の必要最小限の保護装置(例えばCB2,CB8)だけを選択的に遮断動作させることができるようになる。
短絡保護方式1と同様に、図6の直流給電回路における各保護装置として図7に示す構成の遮断部を用いる。具体的には、保護装置CB1〜CB6として、遮断器21(気中遮断器など)と超限流遮断器22とが直列に設けられてなる遮断部(図7(a))を設けるとともに、保護装置CB7〜CB8としては、超限流遮断器22だけからなる遮断部(図7(b))を設ける。
以上では、第3の実施形態を、給電電路の系統が2系統の場合について説明したが、3以上の複数系統の場合についても、健全側給電電路が過負荷とならないようにするための推進電動機の回転速度制限値(上限値)を全系統数と健全系統数に応じて定めるようにすることにより、上記と全く同様に実施することができる。
Claims (3)
- 電池と、この電池を充電する発電機とからなるハイブリッド電源をp(pは2以上の整数)系統備えるとともに、各ハイブリッド電源から推進電動機に給電するp系統の給電電路を備え、各給電電路にそれぞれ保護装置を設けてなる電気推進システムにおいて、
前記各給電電路にそれぞれ推進電動機へ供給する電力を変換制御して船舶の推進器を可変速制御する電力変換器を設け、
電池のみで推進電動機および補機類へ電力を供給して運転する電池運転モード時においては、保護装置が閉路している健全側給電電路の系統数q(qは1以上、かつ、p以下の整数)が1ないし(p−1)である各場合について、それぞれ、健全側給電電路が過負荷にならないようにするための推進電動機回転速度の制限値を予め定めておき、少なくとも1系統の給電電路の保護装置が開路したとき、開路前の推進電動機回転速度が開路後における健全側給電電路の系統数に対応する制限値を超える回転速度であった場合には、前記電力変換器を停止させ、電力変換器が停止した遊転状態で推進電動機の回転速度が低下して、このときの健全側給電電路の系統数に対応する制限値以下の回転速度値になったときに、電力変換器の運転を再開させるとともに、推進電動機の回転速度上限値をこのときの健全側給電電路の系統数に対応する制限値に制限して運転を行うことを特徴とする電気推進システムの保護方法。 - 前記電気推進システムが、前記ハイブリッド電源を2系統備えるとともに各ハイブリッド電源から推進電動機に給電する2系統の給電路を備え、各ハイブリッド電源から推進電動機に供給される電力を変換制御して船舶の推進機を可変速制御する電力変換器を備えてなる電気推進船舶用の電気推進システムであり、
電池のみで推進電動機および補機類へ電力を供給して運転する電池運転モード時であって75%を超える推進電動機回転速度で運転中に1系統の給電電路の保護装置が開路したときは、前記電力変換器を停止させ、電力変換器が停止した遊転状態で推進電動機の回転速度が低下して75%以下の回転速度値になったときに、電力変換器の運転を再開させるとともに、推進電動機の回転速度上限値を75%に制限して運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の電気推進システムの保護方法。 - 給電電路の保護装置が開路してから電力変換器に停止指令を与えて電力変換器が停止するまでの間は、過大電流が流れている健全側給電電路の保護装置がトリップしないように、保護装置の電流−時間特性を設定しておくことを特徴とする請求項1または2に記載の電気推進システムの保護方法。
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