JP5561859B2 - 蓄圧式燃料噴射装置及び潤滑用燃料の温度調節方法 - Google Patents

蓄圧式燃料噴射装置及び潤滑用燃料の温度調節方法 Download PDF

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Description

本発明は、蓄圧式燃料噴射装置及び潤滑用燃料の温度調節方法に関する。特に、低圧ポンプによって圧送された燃料の一部を高圧ポンプの潤滑用燃料として用いるとともに、余剰の燃料を低圧ポンプの上流側に循環させる構成の蓄圧式燃料噴射装置、及びそのような蓄圧式燃料噴射装置における潤滑用燃料の温度調節方法に関する。
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関において気筒内へ燃料を噴射する装置として、高圧の燃料を一時的に蓄積し、複数の燃料噴射弁に対して高圧の燃料を供給するコモンレールを備えた蓄圧式燃料噴射装置が用いられている。
この蓄圧式燃料噴射装置は、燃料タンクから燃料を吸い上げて圧送する低圧ポンプと、低圧ポンプによって圧送される燃料をさらに加圧してコモンレールに圧送する高圧ポンプとを備えている。低圧ポンプが内燃機関の動力によって駆動される機械式ポンプの場合、吐出量は機関回転数に応じて決められる。また、低圧ポンプが内燃機関の動力によらずに駆動される電動ポンプ等の場合であっても、吐出量が燃料噴射量に対応することなく所定の値に決められる場合がある。
また、低圧ポンプと高圧ポンプの加圧室との間には、加圧室に導入する燃料の流量を調節するための調量弁が備えられる。この調量弁は、コモンレールの目標圧力(以下「目標レール圧」と称する。)に応じて制御が行われる。低圧ポンプによって圧送される燃料の流量と調量弁の通過流量との差分である余剰の燃料は、調量弁の上流側からオーバーフローバルブを介して導出される。このとき、燃料タンクから吸い上げられた燃料中の異物を捕集するための燃料フィルタの寿命を長くすること等を目的として、オーバーフローする燃料を、燃料フィルタの下流側、かつ、低圧ポンプの上流側に循環させるように構成される場合がある。
また、高圧ポンプは、プランジャやタペット、カムに代表されるように、部品同士が当接ないし摺動する部分を有している。このような摺動部分等での焼き付きや磨耗を防止するために高圧ポンプ内に潤滑油が保持されるが、この潤滑油として噴射用燃料の一部を利用する燃料潤滑方式の蓄圧式燃料噴射装置がある。上述したような、調量弁の上流側でオーバーフローする燃料を低圧ポンプの上流側に循環させる構成の蓄圧式燃料噴射装置において燃料潤滑方式を採用する場合に、調量弁の上流側で余剰の燃料の一部を高圧ポンプの内部に導くように構成される場合がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2010−7564号公報 (段落[0042]、図1)
ところで、調量弁の通過流量を調節することによってコモンレールの圧力(以下「レール圧」と称する。)の制御が実施される場合において、燃料噴射弁による燃料噴射量がゼロあるいは極く少量のときには、調量弁の通過流量もゼロあるいは極く少量になる。このとき、特許文献1に記載された構成の蓄圧式燃料噴射装置においては、一部の燃料が潤滑用燃料として高圧ポンプ内部に導かれるものの、低圧ポンプによって圧送される燃料の大部分が低圧ポンプの上流側に循環させられ、燃料タンクから新たに吸入される燃料の割合が低下する(以下、本明細書においては、循環する燃料を「循環燃料」といい、新たに吸入される燃料を「新規吸入燃料」という。)。
低圧ポンプによって圧送される燃料は、低圧ポンプの駆動による発熱や、燃料が加圧されることによる発熱によって温められやすい。したがって、低圧ポンプによって圧送される燃料のうち循環燃料の割合が高い場合には、相対的に温度が低い新規吸入燃料が混合されることによる燃料温度の冷却効果が低下するとともに、燃料が繰返し循環することによって繰返し温められて、燃料温度が徐々に上昇する。
ここで、図7に示すように、燃料は、温度が高くなるにつれて粘度が低下する特性を有しており、潤滑用燃料として高圧ポンプの内部に導かれる燃料の温度が高い場合には、潤滑性を発揮させることが困難になる。そのため、燃料の一部を潤滑用燃料として利用する構成の蓄圧式燃料噴射装置においては、循環燃料の温度が高温になると、高圧ポンプ内部の潤滑性が低下し、磨耗や焼付きを生じやすくなる。また、燃料温度の上昇や、燃料の粘度の低下は、低圧ポンプ自体の耐久性を低下させるおそれもある。
そこで、本発明の発明者は鋭意努力し、調量弁の上流側で燃料の一部が高圧ポンプの潤滑用燃料として高圧ポンプの内部に導かれるとともに、余剰の燃料が低圧ポンプの上流側に循環させられる構成の蓄圧式燃料噴射装置において、潤滑用燃料の温度に相関する燃料温度、すなわちリターン通路内の燃料温度が所定の閾値以上になったときに、高圧ポンプによって圧送された燃料の一部を燃料タンクに戻すように制御を行うことにより、このような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、潤滑用燃料の温度の過上昇を抑えて、高圧ポンプ及び低圧ポンプの耐久性の低下を防止することができる蓄圧式燃料噴射装置及び潤滑用燃料の温度調節方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、燃料タンク内の燃料を吸入して圧送する低圧ポンプと、低圧ポンプによって圧送される燃料を加圧室内でさらに加圧してコモンレールに圧送する高圧ポンプと、コモンレールの目標圧力に応じて高圧ポンプの加圧室に導入する燃料の流量を調節する調量手段と、調量手段よりも上流側で燃料の一部を潤滑用燃料として高圧ポンプの内部に導く潤滑用燃料通路と、潤滑用燃料通路から分岐して設けられて余剰の燃料を低圧ポンプの上流側の燃料通路に循環させる循環通路と、高圧ポンプの内部を経由した潤滑用燃料を燃料タンクに導くリターン通路と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置において、リターン通路内の燃料温度を検出するための燃料温度検出手段と、高圧ポンプによって圧送された燃料の一部を燃料タンクに戻すための燃料排出手段と、燃料温度が所定の閾値以上になったときに燃料排出手段によって燃料の一部を排出する制御を実行する制御手段と、を備えることを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置を構成するにあたり、燃料タンクから新たに吸入される燃料の温度を検出するための吸入燃料温度検出手段を備え、制御手段は、燃料温度が所定の閾値以上になったときに、新たに吸入される燃料の温度が所定の閾値以上である場合には、制御を実行しないようにすることが好ましい。
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置を構成するにあたり、低圧ポンプが、燃料噴射弁が取り付けられる内燃機関の動力によって駆動される機械式ポンプであり、低圧ポンプ及び高圧ポンプが、一体のポンプユニットとして構成されることが好ましい。
また、本発明の別の態様は、複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、燃料タンク内の燃料を吸入して圧送する低圧ポンプと、低圧ポンプによって圧送される燃料を加圧室内でさらに加圧してコモンレールに圧送する高圧ポンプと、コモンレールの目標圧力に応じて高圧ポンプの加圧室に導入する燃料の流量が調節される調量手段と、調量手段よりも上流側で燃料の一部を潤滑用燃料として高圧ポンプの内部に導く潤滑用燃料通路と、潤滑用燃料通路から分岐して設けられて余剰の燃料を低圧ポンプの上流側の燃料通路に循環させる循環通路と、高圧ポンプの内部を経由した潤滑用燃料を燃料タンクに導くリターン通路と、を備えた蓄圧式燃料噴射装置における潤滑用燃料の温度調節方法において、リターン通路内の燃料温度が所定の閾値以上であることが検出されたときに、高圧ポンプによって圧送された燃料の一部を燃料タンクに戻すことにより、低圧ポンプによって圧送される燃料のうちの燃料タンク内から吸入される燃料の割合を増大させて、潤滑用燃料の温度を低下させることを特徴とする潤滑用燃料の温度調節方法である。
本発明の蓄圧式燃料噴射装置及び潤滑用燃料の温度調節方法によれば、潤滑用燃料の温度の過上昇が検出されたときに、高圧ポンプによって圧送された燃料の一部が燃料排出手段によって排出される制御が実行される。この制御に伴ってレール圧が低下することになるため、目標レール圧を維持するために調量弁の通過流量が増加させられ、調量弁の上流側でオーバーフローする余剰の燃料の流量が減少する。その結果、低圧ポンプによって圧送される燃料のうちの循環燃料の割合が低下させられ、低圧ポンプによって圧送される燃料の温度が低下する。したがって、高圧ポンプの内部に導かれる潤滑用燃料の温度が低下し、高圧ポンプ内部の潤滑性が確保され、高圧ポンプの耐久性の低下を防止することができる。また、低圧ポンプによって圧送される燃料の温度が低下することによって、低圧ポンプ自体の摩耗や熱損傷も低減されるようになる。
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置を構成するにあたり、燃料温度が所定の閾値以上になったときに、新規吸入燃料の温度が所定の閾値以上である場合には、制御手段が燃料排出手段によって燃料の一部を排出する制御を実行しないようにすることにより、高温の新規吸入燃料が循環燃料に混合されて、潤滑用燃料の温度がさらに上昇するおそれを低減することができる。
また、本発明の蓄圧式燃料噴射装置を構成するにあたり、低圧ポンプが、内燃機関の動力によって駆動される機械式ポンプであることにより、例えば内燃機関が高速で回転するとともに無噴射状態になっている場合等、調量弁の通過流量が極めて少ないにもかかわらず低圧ポンプによって圧送される燃料の流量が必要以上に大きくなるおそれがある構成の蓄圧式燃料噴射装置において、高圧ポンプ及び低圧ポンプの耐久性の低下を防止することができる。また、低圧ポンプ及び高圧ポンプが、一体のポンプユニットとして構成されていることにより、比較的熱を帯びやすいポンプユニットが備えられた蓄圧式燃料噴射装置において、ポンプユニットの耐久性の低下を防止することができる。
本発明の実施の形態にかかる蓄圧式燃料噴射装置の構成例を示す全体図である。 本発明の実施の形態にかかる蓄圧式燃料噴射装置を制御する制御装置の構成例を示すブロック図である。 本発明の実施の形態にかかる潤滑用燃料の温度調節方法の一例を示すフローチャートである。 強制排出制御の第1の例を示すフローチャートである。 強制排出制御の第2の例を示すフローチャートである。 強制排出制御の第3の例を示すフローチャートである。 燃料の温度と燃料の粘度との関係を説明するための図である。
以下、図面を参照して、本発明の蓄圧式燃料噴射装置及び潤滑用燃料の温度調節方法に関する実施の形態について具体的に説明する。ただし、以下の実施の形態は、本発明の一態様を示すものであって、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものは同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
1.蓄圧式燃料噴射装置
(1)全体的構成
図1は、本発明の実施の形態にかかる蓄圧式燃料噴射装置50の概略構成を示している。図1に示す蓄圧式燃料噴射装置50は、内燃機関としてのディーゼルエンジンの気筒内に燃料を噴射する蓄圧式燃料噴射装置であって、燃料タンク1と、低圧ポンプ2及び高圧ポンプ5が一体となったポンプユニット3と、コモンレール10と、燃料噴射弁13と、制御装置70等を主たる要素として備えている。
ポンプユニット3の低圧ポンプ2と燃料タンク1とは低圧燃料通路18aで接続されており、低圧燃料通路18aの途中には燃料フィルタ4が備えられている。燃料フィルタ4よりも下流側の低圧燃料通路18aには、燃料タンク1から新たに吸入される新規吸入燃料の温度を検出するための温度センサ27が設けられている。この温度センサ27及び制御装置70の新規吸入燃料温度検出部73が、本実施形態において吸入燃料温度検出手段を構成する。
低圧ポンプ2は、主として燃料タンク1内の燃料を吸入して下流側に圧送する。低圧ポンプ2は、内燃機関の動力によって駆動する機械式ポンプや通電により駆動制御される電動低圧ポンプ等が用いられる。本実施形態において、低圧ポンプ2は、内燃機関の動力によって駆動する機械式ポンプとしてなるギヤポンプが用いられている。
また、低圧ポンプ2と高圧ポンプ5の加圧室5aとは低圧燃料通路18bで接続されている。ポンプユニット3を構成する高圧ポンプ5は、低圧ポンプ2によって送られる燃料を加圧してコモンレール10に圧送する。本実施形態の高圧ポンプ5では、三本のプランジャ7がカムリング17を介して偏芯カム15によって押し上げられることで三つの加圧室5a内で燃料が加圧され、各加圧室5aからコモンレール10に対して高圧燃料が圧送される。
高圧ポンプ5に備えられた偏芯カム15は、内燃機関のクランクシャフトにギヤを介して連結されたカムシャフトに固定されている。この高圧ポンプ5は、プランジャ7とシリンダ、タペットとシリンダ、プランジャ7とタペット、タペットとカムリング17、カムリング17と偏芯カム15、カムシャフトとハウジング等、部品同士が当接ないし摺動する部分を有している。
また、低圧燃料通路18bの途中には流量制御弁8が備えられている。この流量制御弁8は、高圧ポンプ5の加圧室5aに供給される燃料の流量を調節可能になっており、燃料の流量の目標値は、目標レール圧や目標燃料噴射量等に応じて決定される。流量制御弁8は、例えば供給される電流値の大きさによって燃料の通過面積を調節可能な電磁比例式の流量制御弁が用いられ、制御装置70によって通電制御が行われるようになっている。この流量制御弁8及び制御装置70の流量制御弁制御部78が、本実施形態において調量手段を構成する。
流量制御弁8よりも上流側の低圧燃料通路18bには、低圧燃料通路18cが接続されている。この低圧燃料通路18cはカム室16に通じる低圧燃料通路18dと、圧力調整弁14のスリーブ部材14aの一端側に通じる低圧燃料通路18eとに分岐している。低圧燃料通路18dの途中にはオリフィス28が設けられており、低圧燃料通路18cからカム室16側に導かれる燃料の流量が制限されるようになっている。このオリフィス28が設けられることにより、潤滑用燃料を常にカム室16内に導くことができる一方、流量制御弁8に対して供給される燃料の圧力を所定値以上に維持することができるようになっている。
また、オリフィス28よりも下流側の低圧燃料通路18dには、圧力調整弁14のスリーブ部材14aの他端側に通じる低圧燃料通路18fが接続されている。低圧燃料通路18dに備えられたオリフィス28によって、低圧燃料通路18eを介してピストン14aの一端側に導かれる圧力と低圧燃料通路18fを介してピストン14aの他端側に導かれる圧力とに差圧が生じるようになっている。
圧力調整弁14は、ピストン14bを一端側に付勢するスプリング14cを備えており、上記差圧の大きさによってピストン14bの位置が変動するように構成されている。圧力調整弁14のスリーブ部材14aの中央部分には、低圧ポンプ2の上流側に連通する低圧燃料通路18gと、オリフィス28よりも下流側の低圧燃料通路18dに通じる低圧燃料通路18hとが接続されている。
この圧力調整弁14において、差圧が小さい場合には、ピストン14bによって低圧燃料通路18eと低圧燃料通路18g・18hとの連通が遮断される一方、差圧が所定値を越えた場合には、低圧燃料通路18eと低圧燃料通路18g・18hとが連通する。低圧燃料通路18gは、燃料フィルタ4よりも下流側で低圧燃料通路18aに合流する。また、低圧燃料通路18hにもオリフィス29が設けられ、圧力調整弁14を介してカム室16側に導かれる燃料の流量が制限されるようになっている。
これらの低圧燃料通路18a〜18hのうち、低圧燃料通路18c・18d・18hが燃料の一部を潤滑用燃料として高圧ポンプ5の内部に導く潤滑用燃料通路19を構成し、低圧燃料通路18c・18e・18gが余剰の燃料を低圧燃料通路18aに循環させる循環通路20を構成する。また、高圧ポンプ5には、潤滑用燃料として高圧ポンプ5の内部に導入された燃料を燃料タンク1に戻すためのリターン通路30bが接続されている。このリターン通路30bには、通過する燃料温度を検出するための温度センサ26が備えられている。この温度センサ26及び制御装置70の潤滑用燃料温度検出部72が、本実施形態において燃料温度検出手段を構成する。
また、高圧ポンプ5の加圧室5aとコモンレール10とは高圧燃料通路37で接続されている。コモンレール10は、高圧ポンプ5から圧送される高圧燃料を一時的に蓄積し、高圧燃料通路39を介して接続された複数の燃料噴射弁13に対して高圧燃料を供給する。このコモンレール10にはレール圧を検出するためのレール圧センサ21が設けられており、レール圧センサ21のセンサ信号は制御装置70に送られる。
また、コモンレール10には、コモンレール10から排出されるリターン燃料を燃料タンク1に戻すためのリターン通路30aが接続されている。このリターン通路30aには圧力制御弁12が備えられ、コモンレール10内に保持される燃料の圧力が調節可能になっている。この圧力制御弁12は、例えば供給される電流値の大きさによって燃料の通過面積を調節することにより燃料保持圧力を調節可能な電磁比例式の制御弁が用いられ、制御装置70によって通電制御が行われるようになっている。この圧力制御弁12及び制御装置70の圧力制御弁制御部79が、本実施形態において燃料排出手段を構成する。
また、コモンレール10に接続された燃料噴射弁13は、噴射孔が設けられたノズルボディと噴射孔を閉塞するノズルニードルとを備え、ノズルニードルの後端側に作用する背圧が逃されることによって噴射孔が開かれ、コモンレール10から供給される高圧燃料が噴射されるように構成されている。燃料噴射弁13は、例えば、背圧制御部としてソレノイドバルブが備えられた電磁制御型の燃料噴射弁や、背圧制御部としてピエゾ素子が備えられた電歪型の燃料噴射弁が用いられ、制御装置70によって駆動制御が行われるようになっている。燃料噴射弁13には、背圧制御によって逃される燃料を燃料タンク1に戻すためのリターン通路30cが接続されている。
(2)燃料の流れ
次に、図1に示す蓄圧式燃料噴射装置50における燃料の流れについて説明する。
内燃機関の運転に伴って低圧ポンプ2が駆動すると、燃料タンク1内の燃料が吸入されて下流側に圧送される。このとき、燃料に混入している異物は燃料フィルタ4によって捕集される。低圧ポンプ2によって圧送される燃料は、流量制御弁8によって流量が調節され、燃料吸入弁6を介して加圧室5aに導入される。
このとき、低圧ポンプ2によって圧送された燃料のうちの流量制御弁8を通過する燃料以外の燃料は、低圧燃料通路18c側に導かれ、そのうちの一部の燃料がオリフィス28を介してカム室16内に潤滑用燃料として流入する。カム室16内に流入した潤滑用燃料は、高圧ポンプ5内の摺動部分に導かれて潤滑油として機能するとともに、リターン通路30bを介して燃料タンク1に戻される。
また、流量制御弁8の通過流量が少なく、低圧燃料通路18cに導かれる燃料の流量が多くなると、低圧燃料通路18eを介して圧力調節弁14の一端側に作用する圧力が増大し、圧力調節弁14が開弁する。その結果、低圧燃料通路18eを流れる燃料は、低圧燃料通路18gを介して低圧ポンプ2の上流側に還流する。このとき、一部の燃料は、オリフィス29を介してカム室16に流入する。
燃料が低圧燃料通路18gを介して低圧ポンプ2の上流側に還流される状態においては、低圧燃料通路18g内の圧力が燃料タンク1内の圧力を上回るため、新規吸入燃料よりも循環燃料のほうが優先的に低圧ポンプ2に吸入される状態となる。すなわち、流量制御弁8の通過流量が小さいほど、低圧ポンプ2によって吸入される燃料のうちの循環燃料の割合が高くなる。
一方、加圧室5aに導入された燃料は、プランジャ7によって加圧されるとともに燃料吐出弁9を介してコモンレール10へと圧送される。コモンレール10に圧送された高圧燃料のうち、圧力制御弁12によって排出される燃料は、リターン通路30aを介して燃料タンク1に戻される。また、コモンレール10に圧送された高圧燃料は、さらに燃料噴射弁13に供給され、燃料噴射弁13が開弁したときに噴射される。このとき、燃料噴射弁13からのリーク燃料は、リターン通路30cを介して燃料タンク1に戻される。
この蓄圧式燃料噴射装置50における燃料の流量の関係は以下の通りとなる。
低圧ポンプ2によって圧送される燃料の流量は、新規吸入燃料の流量と、循環燃料の流量との和に相当する。
低圧ポンプ圧送流量=新規吸入燃料流量+循環燃料流量 …(1)
また、新規吸入燃料の流量は、燃料噴射弁13からの噴射流量と、燃料タンク1に戻される燃料の流量との和に相当する。
新規吸入燃料流量=噴射流量+タンク戻り流量 …(2)
流量制御弁8よりも上流側で低圧燃料通路18cに導かれる燃料の流量は、カム室16に送り込まれる潤滑用燃料の流量と、低圧ポンプ2の上流側に還流される循環燃料の流量との和に相当する。
低圧燃料通路18c内の燃料流量=潤滑用燃料流量+循環燃料流量 …(3)
燃料タンク1に戻される燃料の流量は、リターン通路30bを流れるポンプ戻り燃料の流量と、リターン通路30cを流れる燃料噴射弁戻り燃料の流量と、リターン通路30aを流れるコモンレール戻り燃料の流量との和に相当する。
タンク戻り流量=ポンプ戻り燃料流量+燃料噴射弁戻り燃料流量+コモンレール戻り燃料流量 …(4)
ここで、レール圧の制御が流量制御弁8によってのみ行われ、コモンレール戻り燃料の流量がゼロであると仮定すると、燃料タンク1に戻される燃料の流量は、リターン通路30bを流れるポンプ戻り燃料の流量と、リターン通路30cを流れる燃料噴射弁戻り燃料の流量との和に相当する。
タンク戻り流量=ポンプ戻り燃料流量+燃料噴射弁戻り燃料流量 …(5)
上記(2)式及び(5)式より、レール圧の制御が流量制御弁8によってのみ行われている状態においては、噴射燃料の流量が少ないと燃料噴射弁戻り燃料の流量も少なくなり、新規吸入燃料の流量が少なくなることが分かる。そして、上記(1)式から、低圧ポンプ2の出力が機関回転数に依存し、燃料噴射の流量に依存しない蓄圧式燃料噴射装置50では、新規吸入燃料の流量が減ると、低圧ポンプ2によって圧送される燃料の流量のうちの循環燃料の流量の割合が増大することが理解できる。
2.制御装置
次に、本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置50に備えられた制御装置70の構成について説明する。
図2は、制御装置70の構成のうちの潤滑用燃料の温度調節に関連する部分を機能的なブロックで表した図を示している。この制御装置70は、レール圧検出部71と、潤滑用燃料温度検出部72と、新規吸入燃料温度検出部73と、目標噴射量演算部74と、目標レール圧演算部75と、燃料噴射弁制御部76と、レール圧制御手段選択部77と、流量制御弁制御部78と、圧力制御弁制御部79と、強制排出制御部81とを備えている。
制御装置70は、公知の構成からなるマイクロコンピュータを中心に構成されており、各部は具体的にはマイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現される。また、制御装置70には、図示しないRAM(Random Access Memory)等の記憶部が備えられ、各部での演算結果や検出結果が記憶される。
レール圧検出部71は、コモンレール10に設けられたレール圧センサ21のセンサ信号を読込むとともに当該センサ信号に基づいて実レール圧Pactを算出するように構成されている。また、潤滑用燃料温度検出部72は、リターン通路30bに備えられた温度センサ26のセンサ信号を読込むとともに当該センサ信号に基づいて燃料温度Trtnを検出するように構成されている。この燃料温度Trtnは、潤滑用燃料の温度に相関する値として検出される。
新規吸入燃料温度検出部73は、低圧燃料通路18aに備えられた温度センサ27のセンサ信号を読込むとともに当該センサ信号に基づいて新規吸入燃料温度Tinを検出するように構成されている。この新規吸入燃料温度Tinは、燃料タンク1から新たに吸入される新規吸入燃料の温度に相関する値として検出される。
目標噴射量演算部74は、アクセル操作量Acc及び機関回転数Neを読込むとともに、これらの情報に基づいて燃料噴射弁13によって噴射する燃料の目標噴射量Qtgtを算出するように構成されている。また、目標レール圧演算部75は、目標噴射量演算部74で算出された目標噴射量Qtgtと機関回転数Neとに基づいて目標レール圧Ptgtを演算するように構成されている。燃料噴射弁制御部76は、レール圧検出部71で検出された実レール圧Pactと目標噴射量演算部74で算出された目標噴射量Qtgtとに基づいて燃料噴射弁13の開弁時間を求め、燃料噴射弁13への通電制御を実行するように構成されている。
レール圧制御手段選択部77は、流量制御弁制御部78又は圧力制御弁制御部79のどちらの制御部によってレール圧制御を実行するかを決定するように構成されている。具体的に、本実施形態においては、燃料温度Trtn及び機関回転数Neによってレール圧制御手段が切り分けられており、燃料温度Trtnが第1閾値T1以上、かつ、機関回転数Neが所定値Ne1以上のときに流量制御弁制御部78によるレール圧制御が選択される一方、機関回転数Neが所定値Ne1未満、又は、燃料温度Trtnが第1閾値T1未満のときに圧力制御弁制御部79によるレール圧制御が選択されるようになっている。
燃料温度Trtnの第1閾値T1は例えば15℃に設定され、システム温度が上昇するまでは比較的大量の高圧燃料がコモンレール10に圧送されるようになっている。また、機関回転数Neの所定値Ne1は例えば500rpmに設定され、内燃機関の始動直後には比較的大量の高圧燃料がコモンレール10に圧送されるようになっている。すなわち、本実施形態では、内燃機関の通常運転中においては、基本的に流量制御弁制御部78によってコモンレール10に圧送する高圧燃料の流量を調節することによって実レール圧Pactが調節されるようになっており、必要な流量の高圧燃料のみが効率的にコモンレール10に圧送されるようになっている。
流量制御弁制御部78によるレール圧制御が選択されている間、流量制御弁制御部78は、レール圧検出部71で検出される実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtとなるように、実レール圧Pactと目標レール圧Ptgtとの差分に基づいて流量制御弁8の通電量Ameunをフィードバック制御するようになっている。一方、圧力制御弁制御部79によるレール圧制御が選択されている間、流量制御弁制御部78は、通過流量が所定の値になるように流量制御弁8の通電量Ameunをフィードフォワード制御するようになっている。
また、圧力制御弁制御部79によるレール圧制御が選択されている間、圧力制御弁制御部79は、レール圧検出部71で検出される実レール圧Pactが目標レール圧Ptgtとなるように、実レール圧Pactと目標レール圧Ptgtとの差分に基づいて圧力制御弁12の通電量Apcvをフィードバック制御するようになっている。一方、流量制御弁制御部78によるレール圧制御が選択されている間、圧力制御弁制御部79は、圧力制御弁12を閉じた状態で保持する制御を行うようになっている。
ただし、レール圧制御手段の切り分け方は上述の例に限られるものではない。また、流量制御弁制御部78及び圧力制御弁制御部79を併用してレール圧を制御するようにしても構わない。
強制排出制御部81は、少なくとも流量制御弁制御部78によるレール圧制御が実施されている状態において、燃料温度Trtnが所定の第2閾値T2以上となった場合に、圧力制御弁12を強制的に開弁することによってコモンレール10から高圧燃料を強制的に排出する制御(以下「強制排出制御」と称する場合がある。)を行うようになっている。
例えば、車両が、アクセル操作量Accがゼロの状態でエンジンブレーキをかけながら長い下り坂を走行するような状況においては、機関回転数Neが比較的高く、低圧ポンプ2によって圧送される燃料の流量が大きい一方、内燃機関への燃料の目標噴射量Qtgtはゼロあるいは極く少量であり、流量制御弁8の通過流量はゼロあるいは極く少量とされる。そのため、低圧ポンプ2によって圧送された燃料のうちの大部分が低圧ポンプ2の上流側に還流し、また、そのときの循環燃料の流量は大きくなる。
また、このような状況では機関回転数Neが急激に変化することがないため、低圧ポンプ2によって圧送される燃料の流量と循環燃料の流量との差は極めて小さくなり、新規吸入燃料の流量は極めて少量となる。そうすると、低圧ポンプ2によって圧送される燃料のうちの循環燃料の割合が非常に高い状態になり、大量の燃料が繰り返し循環させられ、燃料の温度が徐々に上昇することになる。
このように燃料温度Trtnが上昇して第2閾値T2を超えたときに、強制排出制御部81が強制排出制御を実行することにより、検出される実レール圧Pactが低下して目標レール圧Ptgtと実レール圧Pactとの差分が大きくなる。そうすると、流量制御弁制御部78では通電量Ameunのフィードバック制御が実行されているために、実レール圧Pactを目標レール圧Ptgtに一致させようとして流量制御弁8の通過流量が増大する。その結果、循環燃料の流量が低下する一方で新規吸入燃料の流量が増加し、低圧ポンプ2によって圧送される燃料のうちの循環燃料の割合が低下して、圧送される燃料の温度を低下させることができる。すなわち、強制排出制御を実行することによって潤滑用燃料の温度を低下させることができる。第2閾値T2は、潤滑用燃料の粘度や、低圧ポンプ及び高圧ポンプの耐熱温度を考慮して適宜設定される値であるが、第2閾値T2は固定値であってもよいし、燃料温度Trtnの上昇速度等に基づいて選択される可変値であってもよい。
強制排出制御によって排出する燃料の流量、すなわち、強制排出制御実行時の圧力制御弁12への通電量Apcvは、固定値であってもよいが、例えば燃料温度Trtnに基づいて決定される可変値とすることもできる。この場合において、排出する燃料の流量が、燃料温度Trtnが高いほど多くなるように設定されれば、潤滑用燃料の温度をできるだけ早く低下させることができるようになる。
また、本実施形態において、強制排出制御部81は、燃料温度Trtnが第2閾値T2以上となっている場合であっても、新規吸入燃料温度Tinが第3閾値T3以上である場合には、強制排出制御を待機するようになっている。強制排出制御部81をこのように構成することによって、燃料温度Trtnよりも相対的に高い温度となっている新規吸入燃料が循環燃料に混合されて、潤滑用燃料の温度が逆に上昇してしまうことが防止される。第3閾値T3は、例えば、第2閾値T2よりも小さい値に設定される。この他、目標噴射量Qtgtが所定値以下であることや機関回転数Neが所定値以上であることが条件に含まれていても構わない。
また、強制排出制御部81は、強制排出制御が実行されている間に、燃料温度Trtnが第4閾値T4未満に低下したことが検出されると、強制排出制御を停止するようになっている。第4閾値T4は第2閾値T2未満の値として適宜選択することができる。ただし、強制排出制御を停止する時期は、強制排出制御を開始してからの経過時間で設定することもできる。強制排出制御部81がこのように構成されている場合には、燃料温度Trtnが第4閾値T4未満になるまで、繰返し所定時間での強制排出制御が繰り返されることになる。
また、本実施形態においては、少なくとも流量制御弁制御部78によるレール圧制御が実行されている場合において強制排出制御が実行されるようになっている。これは、圧力制御弁制御部79のみによるレール圧制御が実行されている状態では、流量制御弁8の通過流量が比較的多く、低圧ポンプ2によって圧送される燃料のうちの新規吸入燃料の割合が多くなっており、強制排出制御を実行しても潤滑用燃料の冷却効果が得にくいばかりか、高温の燃料が燃料タンク1に還流しており潤滑用燃料の温度を上昇させるおそれが高いからである。また、圧力制御弁制御部75によるレール圧制御が選択されている場合に強制排出制御を実行しようとすると、一時的に流量制御弁制御部76による通電量のフィードバック制御に切換える必要があり、レール圧制御が複雑になるおそれがあるからである。したがって、圧力制御弁制御部79のみによるレール圧制御が選択されている場合に燃料温度Trtnが第2閾値T2を超えた場合には、強制排出制御部81はリンプホームモードで蓄圧式燃料噴射装置50を制御するように指示を行う。
3.潤滑用燃料の温度調節方法
次に、制御装置70によって行われる潤滑用燃料の温度調節方法のフローの一例について、図3〜図6のフローチャートに基づいて説明する。
まず、図3のフローチャートにおけるスタート後のステップS1では、温度センサ26のセンサ信号に基づいて燃料温度Trtnを検出するとともに、検出された燃料温度Trtnが第2閾値T2以上であるか否かが判別される。燃料温度Trtnが第2閾値T2未満の場合には潤滑用燃料が過上昇している状態にはないため、ステップS6に進み、蓄圧式燃料噴射装置50が通常のレール圧制御を実行するようにしてスタートに戻る。一方、燃料温度Trtnが第2閾値T2以上の場合にはステップS2に進む。
ステップS2では、現在のレール圧制御が少なくとも流量制御弁制御部78による通電量Ameunのフィードバック制御によって実行されているか否かを判別する。流量制御弁8の通電量Ameunのフィードバック制御を実行中でない場合には、強制排出制御によって燃料温度Trtnを低下させることが困難な状況であることから、強制排出制御を実行しないで、ステップS5に進み、蓄圧式燃料噴射装置50がリンプホームモードで制御されるようにする。
一方、流量制御弁8の通電量Ameunのフィードバック制御が実行されている場合には、ステップS3に進んで、温度センサ27のセンサ信号に基づいて新規吸入燃料温度Tinを検出するとともに、検出された新規吸入燃料温度Tinが第3閾値T3未満であるか否かが判別される。新規吸入燃料温度Tinが第3閾値T3以上の場合には、強制排出制御によって潤滑用燃料の温度がさらに上昇するおそれが高いことから、強制排出制御を実行しないで、ステップS5に進み、蓄圧式燃料噴射装置50がリンプホームモードで制御されるようにする。一方、新規吸入燃料温度Tinが第3閾値T3未満の場合には、ステップS4に進んで強制排出制御を実行する。
(強制排出制御の第1の例)
図4は、上述した制御装置70によって実行される強制排出制御のフローチャートを示している。このフローチャートにおいては、まず、ステップS11で、あらかじめ決められた通電量Apcvにしたがって圧力制御弁12に対して通電を開始する。圧力制御弁12への通電量Apcvは、燃料温度Trtnに応じて異なる値に設定することもできる。
次いで、ステップS12では、所定間隔ごとに温度センサ26のセンサ信号に基づいて燃料温度Trtnを検出するとともに、検出された燃料温度Trtnが第4閾値T4以下になったか否かが判別される。燃料温度Trtnが第4閾値T4以下になるまでこのステップS12が繰り返され、燃料温度Trtnが第4閾値T4以下になったときにはステップS13に進み、圧力制御弁12への通電を停止して、強制排出制御を終了する。
この第1の例によれば、燃料温度Trtnが第4閾値T4以下になるまでの間、圧力制御弁12によってコモンレール10内の燃料を排出し、新規吸入燃料の割合を増大させる制御が実行されるために、潤滑用燃料の温度を確実に低下させることができる。
なお、第1の例において、ステップS12で所定間隔ごとに検出される燃料温度Trtnが前回の燃料温度Trtnよりも所定値以上高くなっていないかを判定するステップを設けることにより、強制排出制御中に何らかの理由で燃料温度Trtnが上昇し続けている場合に速やかに強制排出制御を中断し、リンプホームモードに移行することができる。
(強制排出制御の第2の例)
図5は、強制排出制御の第2の例のフローチャートを示している。このフローチャートにおいては、まず、ステップS21で、あらかじめ決められた通電量Apcv及び通電時間にしたがって圧力制御弁12に対して通電を行う。圧力制御弁12への通電量Apcvあるいは通電時間は、燃料温度Trtnに応じて異なる値に設定することもできる。
次いで、ステップS22では、所定間隔ごとに温度センサ26のセンサ信号に基づいて燃料温度Trtnを検出するとともに、検出された燃料温度Trtnが第4閾値T4以下になったか否かが判別される。燃料温度Trtnが第4閾値T4を超えている場合にはステップS21に戻り、再び圧力制御弁12に対して通電を行う一方、燃料温度Trtnが第4閾値T4以下になったときには、強制排出制御を終了する。
この第2の例によれば、圧力制御弁12によってコモンレール10内の燃料を排出し、新規吸入燃料の割合を増大させる制御が、燃料温度Trtnが第4閾値T4以下になるまで繰り返し実行され、潤滑用燃料の温度を確実に低下させることができる。また、この第2の例によれば、圧力制御弁12を開弁している間に燃料温度Trtnを監視する作業がなくなるために、制御装置70の負荷が軽減される。
この第2の例においても、ステップS22で所定間隔ごとに検出される燃料温度Trtnが前回の燃料温度Trtnよりも所定値以上高くなっていないかを判定するステップを設けることにより、強制排出制御中に何らかの理由で燃料温度Trtnが上昇し続けている場合に速やかに強制排出制御を中断し、リンプホームモードに移行することができる。
(強制排出制御の第3の例)
図6は、強制排出制御の第3の例のフローチャートを示している。このフローチャートにおいては、まず、ステップS31で、ステップS1で検出された燃料温度Trtnに基づいて圧力制御弁12への通電時間が決定される。このときの通電時間は、あらかじめ記憶された情報に基づいて決定されるようになっており、現在の燃料温度Trtnを所定温度まで低下させるまでの推定所要時間として決定される。また、このときの通電量Apcvは固定値であってもよいし、燃料温度Trtnに応じて異なる値に設定することもできる。
次いで、ステップS32で、圧力制御弁12に対して、ステップS31で決定された時間の通電を実施した後に、強制排出制御を終了する。
この第3の例によれば、現在の燃料温度Trtnを所定温度まで低下させるための所要時間を燃料温度Trtnに応じてあらかじめ実験等によって求めておくことにより、圧力制御弁12によってコモンレール10内の燃料を排出し、新規吸入燃料の割合を増大させる制御によって、潤滑用燃料の温度を容易に低下させることができる。また、この第3の例によれば、強制排出制御中に燃料温度Trtnを監視する作業がなくなるために、制御装置70の負荷が軽減される。
以上説明した本実施形態の蓄圧式燃料噴射装置50によれば、潤滑用燃料の過上昇が検出されたときに、コモンレール10内の燃料を強制的に排出する制御が実行され、低圧ポンプ2によって圧送される燃料のうちの循環燃料の割合が低下する。したがって、低圧ポンプ2によって圧送される燃料温度が低下し、潤滑用燃料の温度を低下させることができる。しかも、この制御は、新規吸入燃料温度が第3閾値T3未満のときに実行されるようになっているために、潤滑用燃料の温度のさらなる上昇が防止される。
その結果、高圧ポンプ5内の潤滑性が確保され、高圧ポンプ5の耐久性の低下を抑えることができる。また、低圧ポンプ2自体の摩耗や熱損傷も低減される。さらには、燃料温度の過上昇が検出された場合であってもリンプホームモードに移行せずに、通常走行を継続することが可能になる。
なお、蓄圧式燃料噴射装置の構成は図1の例に限られるものではない。例えば、低圧燃料通路18bと潤滑用燃料通路19や循環通路20とが分岐する位置、及び、循環通路20と低圧燃料通路18aとが合流する位置が同じであれば、潤滑用燃料通路19や循環通路20の通路構成が異なっていても構わない。同様に、図1の圧力調整弁14は差圧が所定値を超えたときに開弁する構成のオーバーフローバルブとなっているが、低圧ポンプ2によって圧送される燃料の圧力が所定の開弁圧を超えた時に開弁する構成のオーバーフローバルブであってもよい。
さらに、リターン通路30a〜30cの通路構成についても、種々の変形が可能である。例えば、潤滑用燃料を燃料タンク1に戻すリターン通路30bを圧力制御弁12の周囲を通過するように配設し、圧力制御弁12の冷却機能をもたせるようにすることもできる。
また、図1の蓄圧式燃料噴射装置50では低圧ポンプ2及び高圧ポンプ5がポンプユニット3として構成されているが、それぞれ独立した別体に構成されていてもよい。ただし、ポンプユニット3として構成されている場合には、ポンプユニット3が比較的熱を帯びやすいなかで、潤滑用燃料の温度を効果的に低下させて、ポンプユニット3内の潤滑用燃料による潤滑性を確保することができる。
さらに、リターン通路30bに備えられた温度センサ26や低圧燃料通路18aに備えられた温度センサ27についても、それぞれ異なる位置に備えられていてもよい。温度センサ26は潤滑用燃料に相関する燃料温度を検出可能な位置であればよく、温度センサ27は新規吸入燃料温度に相関する燃料温度を検出可能な位置であればよい。演算によってそれぞれの温度を推定することができるのであれば、温度センサ自体を省略することもできる。
また、上述の実施の形態の例においては、コモンレール10に備えられた圧力制御弁12が燃料排出手段として構成されているが、レール圧を低下させることができる位置に備えられるのであれば、他の弁装置によって燃料排出手段を構成することもできる。ただし、圧力制御弁12を燃料排出手段として利用すれば部品点数が増加することもなく、また、流量制御弁8の通電量Ameunのフィードバック制御に用いられるレール圧を直接的に変化させることができることから、好適な態様である。
さらに、上述した実施の形態の例においては、レール圧が流量制御手段制御部78によってのみ制御されている場合に強制排出制御を実行するように構成されているが、流量制御弁制御部78及び圧力制御弁制御部79を併用してレール圧が制御されている場合も本発明に含まれる。この場合、圧力制御弁制御部79によるレール圧制御分の燃料排出量に対して、強制排出制御分の燃料排出量を加算して圧力制御弁12に通電を行うことにより、加算された燃料排出量に相当する流量が、流量制御弁8の通過流量にフィードバックされて、強制排出制御を実施しない場合と比較して、低圧ポンプ2によって圧送される燃料のうちの循環流量の割合が低下するようになる。
1:燃料タンク、2:低圧ポンプ、3:ポンプユニット、4:燃料フィルタ、5:高圧ポンプ、5a:加圧室、6:燃料吸入弁、7:プランジャ、8:流量制御弁、9:燃料吐出弁、10:コモンレール、12:圧力制御弁、13:燃料噴射弁、14:圧力調整弁、14a:スリーブ部材、14b:ピストン、14c:スプリング、15:偏芯カム、16:カム室、17:カムリング、18a・18b・18c・18d・18e・18f・18g・18h:低圧燃料通路、19:潤滑用燃料通路、20:循環通路、21:レール圧センサ、26・27:温度センサ、28・29:オリフィス、30a・30b・30c:リターン通路、37・39:高圧燃料通路、50:蓄圧式燃料噴射装置、70:制御装置、71:レール圧検出部、72:潤滑用燃料温度検出部、73:新規吸入燃料温度検出部、74:目標噴射量演算部、75:目標レール圧演算部、76:燃料噴射弁制御部、77:レール圧制御手段選択部、78:流量制御弁制御部、79:圧力制御弁制御部、81:強制排出制御部

Claims (4)

  1. 複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、
    燃料タンク内の燃料を吸入して圧送する低圧ポンプと、
    前記低圧ポンプによって圧送される燃料を加圧室内でさらに加圧して前記コモンレールに圧送する高圧ポンプと、
    前記コモンレールの目標圧力に応じて前記高圧ポンプの前記加圧室に導入する燃料の流量を調節する調量手段と、
    前記調量手段よりも上流側で前記燃料の一部を潤滑用燃料として前記高圧ポンプの内部に導く潤滑用燃料通路と、
    前記潤滑用燃料通路から分岐して設けられて余剰の燃料を前記低圧ポンプの上流側の燃料通路に循環させる循環通路と、
    前記高圧ポンプの内部を経由した潤滑用燃料を前記燃料タンクに導くリターン通路と、
    を備えた蓄圧式燃料噴射装置において、
    前記リターン通路内の燃料温度を検出するための燃料温度検出手段と、
    前記高圧ポンプによって圧送された燃料の一部を前記燃料タンクに戻すための燃料排出手段と、
    前記燃料温度が所定の閾値以上になったときに前記燃料排出手段によって前記燃料の一部を排出する制御を実行する制御手段と、
    を備えることを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置。
  2. 前記燃料タンクから新たに吸入される燃料の温度を検出するための吸入燃料温度検出手段を備え、
    前記制御手段は、前記燃料温度が所定の閾値以上になったときに、前記新たに吸入される燃料の温度が所定の閾値以上である場合には、前記制御を実行しないようにすることを特徴とする請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
  3. 前記低圧ポンプが、前記燃料噴射弁が取り付けられる内燃機関の動力によって駆動される機械式ポンプであり、
    前記低圧ポンプ及び前記高圧ポンプが、一体のポンプユニットとして構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
  4. 複数の燃料噴射弁が接続されたコモンレールと、
    燃料タンク内の燃料を吸入して圧送する低圧ポンプと、
    前記低圧ポンプによって圧送される燃料を加圧室内でさらに加圧して前記コモンレールに圧送する高圧ポンプと、
    前記コモンレールの目標圧力に応じて前記高圧ポンプの前記加圧室に導入する燃料の流量が調節される調量手段と、
    前記調量手段よりも上流側で前記燃料の一部を潤滑用燃料として前記高圧ポンプの内部に導く潤滑用燃料通路と、
    前記潤滑用燃料通路から分岐して設けられて余剰の燃料を前記低圧ポンプの上流側の燃料通路に循環させる循環通路と、
    前記高圧ポンプの内部を経由した潤滑用燃料を前記燃料タンクに導くリターン通路と、
    を備えた蓄圧式燃料噴射装置における前記潤滑用燃料の温度調節方法において、
    前記リターン通路内の燃料温度が所定の閾値以上であることが検出されたときに、前記高圧ポンプによって圧送された燃料の一部を前記燃料タンクに戻すことにより、前記低圧ポンプによって圧送される燃料のうちの前記燃料タンク内から吸入される燃料の割合を増大させて、前記潤滑用燃料の温度を低下させることを特徴とする潤滑用燃料の温度調節方法。
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