<第1実施形態>
以下には、図面を参照して、この発明の第1実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の第1実施形態の電動車両1の左側面図である。この実施形態においては、電動車両1は、スクータである。電動車両1は、前部および後部に荷物を載せて走行することが可能であり、荷役車両としての用途に適している。
なお、以下の説明における前後、上下および左右の各方向は、電動車両1が水平面を直進走行している状態に相当する基準姿勢にあり、かつ運転者が前方を向いているときの当該運転者の視点を基準とする。また、垂直に起立し、前輪3および後輪4が路面A1に接地し、かつ、運転者が乗車していない状態の電動車両1を基準として、電動車両1の構成を説明する。
電動車両1は、車体フレーム2、前輪3、後輪4、電動モータ5、バッテリ6および車体カバー7を備えている。電動車両1は、バッテリ6から供給される電力によって、電動モータ5を駆動し、電動モータの出力によって後輪4を駆動する。以下、電動車両1の全体の構造を車体前方から順に説明する。
図2は、電動車両1の車体カバー7などの一部の部品を取り外した状態の左側面図である。電動車両1は、この電動車両1の前上部に配置されたヘッドパイプ8を有している。ヘッドパイプ8内には、ステアリング軸9が回動自在に挿入されている。ステアリング軸9の下端部には、左右一対のフロントフォーク10が取り付けられている。前輪3は、フロントフォーク10に取り付けられている。
ステアリング軸9の上端部には、ハンドル11が取り付けられている。運転者は、ハンドル11を操作することにより、ステアリング軸9、フロントフォーク10および前輪3をステアリング軸9の軸線回りに回すことが可能である。
ハンドル11の左右両端部には、それぞれ、グリップ12が設けられている(左側のグリップのみを図示)。右側のグリップはスロットルグリップを構成している。運転者は、このスロットルグリップを回すことにより、電動モータ5の出力を調整することが可能である。
図1に示すように、ハンドル11の中央付近にはメータ13が設けられている。メータ13の下方には、荷台14が配置されている。荷台14は、ヘッドパイプ8に固定されている。荷台14に積まれた荷物の荷重は、ヘッドパイプ8およびステアリング軸9などを介して、主に前輪3に作用する。荷台14の下部には、ヘッドランプ15が固定されている。
図2に示すように、電動車両1は、ヘッドパイプ8から後方に延びる車体フレーム2を含んでいる。車体フレーム2は、鋼鉄製のパイプ部材などを用いて形成されている。車体フレーム2は、ダウンチューブ19と、ダウンチューブ19の後方に配置されたフレーム本体20と、を含んでいる。ダウンチューブ19は、ヘッドパイプ8の下部から後斜め下方に延びている。側面視において、フレーム本体20は、ダウンチューブ19の下端部から後方に延びており、車両の前後方向X1の途中部がS字状に形成されている。
フレーム本体20は、左右一対設けられている。フレーム本体20は、第1フレーム部21と、第2フレーム部22と、第3フレーム部23と、第4フレーム部24と、を含んでいる。第1フレーム部21は、ダウンチューブ19の下端部から後方に略真っ直ぐに延びており、わずかに後斜め上方に傾斜している。
第2フレーム部22は、側面視においてS字状に形成されている。第2フレーム部222は、下端部22aと、中間部22bと、上端部22cと、を含んでいる。第2フレーム部22の下端部22aは、湾曲形状に形成されており、第1フレーム部21の後端部に連結されている。第2フレーム部22の中間部22bは、下端部22aから斜め後上方に真っ直ぐに延びている。側面視において、第1フレーム部21に対する中間部22bの傾斜角度は、例えば、45度程度である。第2フレーム部22の上端部22cは、湾曲形状に形成されており、中間部22bに接続されている。
第3フレーム部23は、上端部22cから直線状に延びており、わずかに後斜め上方に傾斜している。第4フレーム部24は、第2フレーム部22の中間部22bから後方に延び、途中で後斜め上方へ湾曲され、第3フレーム部23の中間部に接続されている。
図1に示すように、電動車両1は、車体フレーム2に取り付けられた車体カバー7を含んでいる。車体カバー7は、ヘッドパイプ8を覆う前カバー25と、前カバー25の下部から後方に延びる下カバー26と、前カバー25の後方に配置された後カバー27と、を含んでいる。
前カバー25は、ステアリング軸9の一部およびヘッドパイプ8を取り囲み、かつ、ダウンチューブ19を取り囲んでいる。下カバー26は、前カバー25の下部25aから後方に延びており、第1フレーム部21と、第2フレーム部22の下端部22aとを、下方および左右両側方から覆っている。下カバー26上端部には、足載せ部28が配置されている。足載せ部28は、運転者が足を載せるために設けられており、略平坦に形成されている。
後カバー27は、全体として、下カバー26の後部26aから後斜め上方に延びた形状に形成されている。後カバー27は、第2フレーム部22のうち、下端部22aを除く領域を前方および左右両側方から覆っている。また、後カバー27は、第3フレーム部23および第4フレーム部24を、前方および左右両側方から覆っている。
後カバー27の上方には、シート29が配置されている。電動車両1の走行中、シート29に座った運転者の足は、足載せ部28に載せられる。前後方向X1において、足載せ部28は、前カバー25の後面25bと、シート29の前端部29aとの間に配置されている。また、シート29は、第2フレーム部22の上方に配置され、かつ、第3フレーム部23の一部の上方に配置され、かつ、第4フレーム部24の一部の上方に配置されている。シート29と、後カバー27とによって囲まれた空間は、収容空間S1を規定している。
図2に示すように、シート29は、第1ブラケット31および支持ブラケット37によって支持されている。第1ブラケット31は、第2フレーム部22の中間部22bに取り付けられている。第1ブラケット31は、中間部22bから上向きに延びている。第1ブラケット31の上端部には、ヒンジ部38が設けられている。シート29は、このヒンジ部38を介して第1ブラケット31に支持されている。第1ブラケット31は、シート29を下方から支持している。シート29は、ヒンジ部38回りに回動することが可能となっている。シート29をヒンジ部38回りに回動することにより、収容空間S1を上方に開放することが可能である。なお、ヒンジ部38を省略し、シート29を直接第1ブラケット31に固定してもよい。
シート29の後部29bは、支持ブラケット37によって支持されている。支持ブラケット37は、車体フレーム2の第3フレーム部23に固定されており、第3フレーム部23から上向きに突出した形状とされている。
シート29の下方の収容空間S1には、電動モータ5の電源としてのバッテリ6が配置されている。バッテリ6は、左右一対の第2フレーム部22の間に配置されている。バッテリ6は、充電可能な二次電池である。バッテリ6は、側面視において略矩形に形成されており、前後方向X1の長さ(幅)よりも車両の上下方向Z1の長さ(高さ)が長くされている。バッテリ6は、後斜め上方に傾斜した姿勢に配置されており、車体フレーム2に支持されている。バッテリ6の上部6aは、第1ブラケット31と、支持ブラケット37との間に配置されている。
図3は、図2のバッテリ6の周辺の拡大図である。バッテリ6は、バッテリ支持装置39を介して車体フレーム2に支持されている。バッテリ支持装置39は、第1〜第5ブラケット31〜35と、サブフレーム36と、を含んでいる。第1ブラケット31および第2ブラケット32によって、バッテリ6の前面6bが支持されている。また、第3ブラケット33および第4ブラケット34によって、バッテリ6の後面6cが支持されている。また、第5ブラケット35によって、バッテリ6の下部6dが支持されている。
第1ブラケット31は、バッテリ6の前面6bのうちの上下方向Z1の中央部に接触している。第2ブラケット32は、上第2ブラケット41と、下第2ブラケット42と、を含んでいる。上第2ブラケット41は、第2フレーム部22の上端部22cからバッテリ6の前方に向けて延びており、バッテリ6の上部6aにおいて前面6bに接触している。下第2ブラケット42は、第2フレーム部22の中間部22bからバッテリ6の前方に向けて延びており、バッテリ6の下部6dにおいて、前面6bに接触している。
第3ブラケット33は、第3フレーム部23からバッテリ6に向けて延びており、バッテリ6の上部6aにおいて、後面6cに接触している。
第4ブラケット34は、バッテリ6の下部6dにおいて、後面6cに接触している。第4ブラケット34は、サブフレーム36に支持されている。サブフレーム36は、パイプ部材を用いて形成されており、バッテリ6の荷重を受けることが可能となっている。サブフレーム36は、サブフレーム本体43と、アーム部44と、を含んでいる。サブフレーム本体43は、第2フレーム部22の中間部22bの下端から斜め後下方に延びている。サブフレーム本体43の後端部に第4ブラケット34が固定されている。アーム部44は、サブフレーム本体43から前斜め下方に延び、第2フレーム部22の下端部22aに固定されている。
第5ブラケット35は、サブフレーム本体43の上方に配置されサブフレーム本体43に固定されている。
図1に示すように、シート29の後方には、荷台45が配置されている。荷台45は、第3フレーム部23の上方に配置され、この第3フレーム部23に支持されている。荷台45の上方に、荷物を載せることが可能となっている。荷台45に載せられた荷物の荷重は、主に後輪4によって受けられる。
このように、荷台14と、重量物であるバッテリ6と、荷台45は、前後方向X1に並んで配置されている。したがって、荷台14および荷台45に荷物を載せたときに、前後方向X1における電動車両1の荷重のバランスを、均等にすることができる。したがって、荷台14および荷台45に荷物を載せた状態でも、電動車両1の高い操縦性を維持することができる。
図4は、連結機構46およびスイングユニット47の前端部を示す斜視図である。電動車両1は、連結機構46と、連結機構46を介して車体フレーム2に揺動可能に連結されたスイングユニット47と、を含んでいる。
連結機構46は、左右一対の第4フレーム部24(24L,24R)に固定された固定部48L,48Rと、可動部49L,49Rと、第1ピボット軸51と、第2ピボット軸52L,52Rと、を含んでいる。各固定部48L,48Rは、下向きに開放されたU字状に形成された板部材である。
図5は、連結機構46およびスイングユニット47の前端部の一部断面図であり、連結機構46およびスイングユニット47の前端部を上方からみた状態を示している。左側の固定部48Lは、左右一対の板部53L,53Lを含み、右側の固定部48Rは、左右一対の板部53R,53Rを含んでいる。
固定部48Lの板部53L,53Lには、挿通孔54が形成されている。板部53L,53Lの間には、板状の可動部55Lが配置されている。可動部55の前部には、孔部が形成されており、この孔部に補強パイプ56Lが固定されている。補強パイプ56Lには、ダンパ57Lおよび第2ピボット軸52Lが挿通されている。ダンパ57Lは、円筒状のゴムなどの弾性部材を用いて形成されている。第2ピボット軸52は、ボルト部材58Lの軸部であり、ダンパ57Lおよび板部53L,53Lの各挿通孔54を挿通している。ボルト部材58には、ナット59Lが結合されている。
固定部48Rの板部53R,53Rには、挿通孔54が形成されている。板部53R,53Rの間には、板状の可動部55Rが配置されている。可動部55Rの前部には、孔部が形成されており、この孔部に補強パイプ56Rが固定されている。補強パイプ56Rには、ダンパ57Rおよび第2ピボット軸52Rが挿通されている。ダンパ57Rは、円筒状のゴムなどの弾性部材を用いて形成されている。第2ピボット軸52Rは、ボルト部材58Rの軸部であり、ダンパ57および板部53R,53Rの各挿通孔54を挿通している。第2ピボット軸52L,52Rは、同軸に配置されている。ボルト部材58Rには、ナット59Rが結合されている。
可動部55L,55Rの後部には、それぞれ、挿通孔60L,60Rが形成されている。挿通孔60L,60Rには、第1ピボット軸51が挿通されている。第1ピボット軸51は、ボルト部材61の軸部である。ボルト部材11には、ナット62が結合されている。第1ピボット軸51には、円筒状のカラー63が嵌められている。カラー63は、可動部55L,55R間に配置されている。また、可動部55L,55R間には、カラー63に隣接して補強バー64が配置されている。これらカラー63および補強バー64によって、可動部55L,55R間の連結の剛性が確保されている。また、カラー63の外周には、一対の軸受65,66が取り付けられている。これらの軸受65,66は、スイングユニット47の前端部47aに取り付けられている。
上記の構成により、可動部55L,55Rは、各ダンパ57L,57Rが弾性変形可能な範囲で、各第2ピボット軸52L,52R回りを揺動可能となっている。すなわち、スイングユニット47は、各ダンパ57L,57Rが弾性変形可能な範囲で、各第2ピボット軸52L,52R回りを揺動可能となっている。また、スイングユニット47は、第1ピボット軸51回りを揺動可能となっている。この実施形態において、スイングユニット47が第1ピボット軸51回りを揺動可能な角度範囲は、十数度であってもよく、スイングユニット47が第2ピボット軸52回りを揺動可能な角度範囲は、数度であってもよい。
図4に示すように、スイングユニット47は、モータケース67と、モータケース67の前端部67aに形成された傾斜部68L,68Rと、を含んでいる。スイングユニット47の前端部47aは、モータケース67の前端部67aおよび傾斜部68L,68Rを含んでいる。傾斜部68L,68Rは、左右方向Y1に並んでいる。
各傾斜部68L,68Rは、モータケース67から前斜め上方に延びている。各傾斜部68L,68Rの先端には、それぞれ、挿通孔68aが形成されている。図5に示すように、各挿通孔68に、対応する軸受65,66が取り付けられている。これにより、各傾斜部68L,68R(スイングユニット47)は、第1ピボット軸51の回りを揺動可能である。
図6は、電動車両1の後部の右側面図である。スイングユニット47は、後輪4の右方に配置されている。スイングユニット47の後部47bは、ショックアブソーバ69を介して第3フレーム部23に連結されている。これにより、スイングユニット47が揺動したときの衝撃を、ショックアブソーバ69で減衰および吸収することが可能である。スイングユニット47は、側面視において第3フレーム部23の下方に配置されている。スイングユニット47のモータケース67は、側面視において、前後方向X1の長さが上下方向Z1の長さよりも長くされている。
図7は、スイングユニット47の分解斜視図であり、スイングユニット47を右斜め後方から視た状態を示している。スイングユニット47のモータケース67は、モータケース本体71と、モータケース本体71の前端部に固定された連結部材72と、モータケース本体71の右側面を覆う蓋73と、を含んでいる。
モータケース本体71は、左右方向Y1に延びる前端部67aを有しており、前端部67aの右部から後方に延びた形状に形成されている。
連結部材72は、モータケース本体71の前端部の左方に配置されている。連結部材72と、モータケース本体71の前端部は、複数のねじ部材74を用いて固定されている。連結部材72には、傾斜部68Lが一体成形されている。モータケース本体71の前端部には、傾斜部68Rが一体成形されている。連結部材72およびモータケース本体71の前端部によって、モータケース67の前端部67aが形成されている。
モータケース本体71は、前後方向X1に延びる側壁75と、側壁75の外周縁部から右方に延びる筒状の周壁76と、を含んでいる。側壁75および周壁76によって、電動モータ5を収容可能なモータ収容空間S2が形成されている。
図8は、スイングユニット47の一部を分解した状態を示す右側面図である。周壁76は、第1部分76a〜第6部分76fを含んでいる。第1部分76aは、後斜め上方に延びている。第2部分76bは、第1部分76aから後方に延びており、上方に向けて凸となる湾曲状に形成されている。第3部分76cは、後方に向けて凸となる半円状に形成されている。第4部分76dは、第3部分76cの下端から前斜め上方に延びている。第5部分76eは、第4部分76dから前方に直線状に延びている。第6部分76fは、第5部分76eから前斜め上方に延びており、第1部分76aに接続されている。
図7に示すように、蓋73は、周壁76の右方に配置されており、モータ収容空間S2を覆っている。蓋73は、複数のねじ部材77を用いて周壁76の右端面に固定されている。周壁76と蓋73との間には、図示しないガスケットなどが配置されている。
スイングユニット47は、モータ収容空間S2内に配置された制御装置78と、電動モータ5と、ステータ駆動装置79と、を含んでいる。
制御装置78は、合成樹脂などを用いて形成されたケース78a内に、インバータ回路などのドライバ回路や、このドライバ回路を制御する制御回路などが配置された構成となっている。インバータ回路は、バッテリ6(図2参照)からの直流電力を、交流電力に変換し、電動モータ5に供給する回路である。制御回路は、CPU,RAMおよびROMを含んでおり、運転者によるスロットルの操作量に応じた出力が電動モータ5に発生するように、インバータ回路を制御する。
図8に示すように、制御装置78のケース78aは、側面視において略矩形状に形成されている。制御装置78は、モータ収容空間S2の前部に配置されており、周壁76の第2部分76bと第5部分76eとに挟まれている。
すなわち、制御装置78は、電動モータ5よりも第1ピボット軸51に近い位置に配置されている。これにより、スイングユニット47が第1ピボット軸51の回りを揺動したときに、制御装置78に作用する加速度が小さくされている。したがって、制御装置78に作用する外力を小さくできるので、制御装置78の耐久性をより高くできる。
電動モータ5は、制御装置78の後方に配置されている。電動モータ5は、周壁76の第2部分76bと、第3部分76cと、第4部分76dとに囲まれている。上下方向Z1におけるモータ収容空間S2の長さ(高さ)は、電動モータ5を配置している領域のほうが、制御装置78を配置している領域よりも長くされている。これにより、電動モータ5を大型化しつつ、制御装置78の配置スペースを小さくできる。これにより、スイングユニット47を大型化することなく電動モータ5を大型にできる。
図7に示すように、電動モータ5は、ロータ81と、ロータ81に対向したステータ82とを含んでいる。この実施形態においては、電動モータ5は、8極12スロットのブラシレスモータである。電動モータ5は、アキシャルギャップモータであり、ロータ81とステータ82との間には、電動モータ5の軸方向(左右方向Y1)にギャップが設けられている。ロータ81は、ステータ82の右方に配置されている。
ロータ81は、円板状に形成されたロータコア83と、ロータコア83に固定されたロータマグネット84とを含んでいる。ロータコア83は、モータ軸85に固定されるロータコア本体83aと、ロータコア本体83aの右端部から径方向外方に拡がる延伸部83bと、を含んでいる。ロータコア本体83aは、モータ軸85の右端部にスプライン結合などによって結合されており、モータ軸85と一体回転可能である。
ロータマグネット84は、延伸部83bのうちステータ82と対向する左側面に固定されている。ロータマグネット84は、複数設けられており、ロータコア83の周方向に沿って等間隔に配置されている。これらのロータマグネット84は、ロータコア83の周方向に沿ってN極とS極とが交互に配置されている。この実施形態においては、ロータマグネット84は、8個設けられている。
図9は、スイングユニット47および後輪4の一部断面図であり、スイングユニット47および後輪4を上方から見た状態を示している。以下、図面の一部は、2点鎖線で示していることがある。ロータ81は、蓋73に隣接して配置されている。蓋73は、制御装置78と左右方向Y1に並ぶ第1部分73aと、第1部分73aの後方に配置された第2部分73bとを含んでいる。第2部分73bは、第1部分73aよりも右方に位置しており、ロータ81と左右方向Y1に並んでいる。この構成により、左右方向Y1におけるモータ収容空間S2の幅は、電動モータ5が配置されている領域と比べて、制御装置78が配置されている領域で狭くされている。
これにより、制御装置78の周辺におけるモータ収容空間S2の幅を狭くできるので、スイングユニット47の小型化を実現できる。モータ収容空間S2の幅を狭くすることができる結果、電動車両1が旋回のために傾くことのできる最大角度(最大バンク角度)をより大きくすることが可能となり、電動車両1の旋回性能をより向上できる。ロータ81は、電動モータ5の出力軸としてのモータ軸85に固定されている。
図7に示すように、ステータ82は、ロータ81の左方に配置されている。ステータ82は、モータ軸85を取り囲む筒状に形成されている。ステータ82は、電動モータ5の軸方向に並ぶ第1ステータ86および第2ステータ87を含んでいる。第1ステータ86は、ロータ81の左方に配置されており、モータケース本体71の側壁75にねじ部材を用いて固定されている。第2ステータ87は、第1ステータ86の左方に配置されており、第1ステータ86に対してステータ82の周方向に変位可能とされている。これにより、ステータ82で生じた磁束の経路を変更し、ロータ81との間に作用する磁力を変更可能となっている。
図10Aは、スイングユニット47の右側面図である。第1ステータ86は、第1ティース88と、コイル89と、第1合成樹脂部材90と、を含んでいる。第1ティース88は、電動モータ5の軸方向に延びる柱状の部分である。第1ティース88は、複数設けられており、ステータ82の周方向に等間隔に配置されている。この実施形態においては、第1ティース88は、12個設けられている。
コイル89は、各第1ティース88に巻かれている。コイル89は、電動モータ5の周方向に沿って、U相コイル、V相コイル、W相コイル、U相コイル、V相コイル…、の順に規則的に配列されている。コイル89のうちの各U相コイルは、U相バスバー91Uに接続されている。コイル89のうちの各V相コイルは、V相バスバー91Vに接続されている。コイル89のうちの各W相コイルは、W相バスバー91Wに接続されている。各バスバー91U,91V,91Wは、それぞれ、制御装置78に接続されている。
各バスバー91U,91V,91Wは、上下方向Z1において、ステータ82の上端部82cと下端部82dとの間に配置されており、かつ、制御装置78の上端部78bと下端部78cとの間に配置されている。また、各バスバー91U,91V,91Wは、前後方向X1において、ステータ82と制御装置78との間に配置されている。このように、各バスバー91U,91V,91Wを配置することにより、ステータ82と制御装置78との間の空間を、各バスバー91U,91V,91Wの配置スペースとして有効利用できる。これにより、スイングユニット47の小型化を達成できる。
図10Bは、第1ステータ86の周辺の主要部の右側面図である。第1合成樹脂部材90は、第1ティース88および各コイル89をモールドしている。これにより、スイングユニット47の組み立ての際に、第1ステータ86を1部品として扱うことが可能であり、スイングユニット47の組み立て作業が容易である。第1合成樹脂部材90の外周面90aは、第1外周面90dと、第2外周面90eと、を含んでいる。第1外周面90dは、側面視において、円形に形成されている。第2外周面90eは、第1外周面90dの右方(紙面の手前のほう)に配置されている。第2外周面90eは、側面視において、コイル89と第1ステータ86の径方向に並んでいる部分が凸となり、第1ティース88,88間の部分が凹となる凹凸形状に形成されている。
図7に示すように、第1合成樹脂部材90は、第1外周面90dから突出するフランジ部90bを含んでいる。フランジ部90bは、第1ステータ86の左端部に配置されており、第2ステータ87に隣接している。フランジ部90bは、電動モータ5の周方向に沿って複数形成されている。フランジ部90bには、ねじ挿通孔が形成されており、このねじ挿通孔にねじ部材(図示せず)が挿通されている。各ねじ部材は、モータケース本体71の側壁75に形成されたねじ孔にねじ結合されている。これにより、第1ステータ86は、モータケース本体71に固定されている。
図10Bに示すように、側面視において、第1外周面90dと、各フランジ部90bの外周面とによって囲まれた領域(第1ステータ88の最外周部で囲まれた領域)が、ステータ内領域F3を規定している。
図11は、電動モータ5およびスイングユニット47の減速機構131の周辺の断面図であり、減速機構131の各ギヤ140,142,144の中心軸線を通る切断面を上方から視た状態を示している。第1合成樹脂部材90は、モータ軸85を取り囲む内周面90cを有している。この内周面90cの右端部は、第1軸受101を介してロータコア本体83aを回転可能に支持している。この構成により、第1軸受101は、ロータコア本体83aを介してモータ軸85の右端部を回転可能に支持している。この実施形態においては、第1軸受101と、後述する第2〜第8軸受102〜108は、それぞれ、ボールベアリングである。
図12は、第2ステータ87の断面図であり、第2ステータ87を周方向に沿って切断した断面を示している。第2ステータ87は、ヨーク93と、第2ティース94と、第2合成樹脂部材95と、を含んでいる。
ヨーク93は、円環状の板状の部分である。第2ティース94は、第2ヨーク93の右側面から右方に突出している。第2ティース94は、電動モータ5の周方向に等間隔に複数設けられている。第2ティース94の数は、第1ティース88の数と同じである。第2合成樹脂部材95は、円環状に形成されており、第2ヨーク93および各第2ティース94をモールドしている。各第2ティース94の右端面は、第2合成樹脂部材95から露出している。
図11に示すように、電動モータ5の軸方向において、各第2ティース94の長さは、第1ティース88の長さより短い。第2合成樹脂部材95の内周面には、第2軸受102が取り付けられている。第2軸受102の内周部は、円筒状の結合部材96の左半部に取り付けられている。結合部材96の右半部は、第1合成樹脂部材90の内周面90cに固定されている。上記の構成により、第2ステータ87は、第2軸受102および結合部材96を介して第1ステータ86に相対回転可能に支持されている。
図7に示すように、第2ステータ87は、第1ステータ86よりも直径が小さい。ステータ駆動装置79は、電動モータ5の周方向における第2ステータ87の位置を変更するために設けられている。ステータ駆動装置79は、第2ステータ87の前斜め上方に配置されている。
図13は、ステータ駆動装置79の分解斜視図であり、ステータ駆動装置79を斜め後方から視た状態を示している。ステータ駆動装置79は、駆動モータ111と、第1歯車機構112と、第2歯車機構113と、出力ギヤ114と、フレーム115と、を含んでいる。
駆動モータ111は、ケース116と、ケース116から後方に突出する出力軸117と、を含んでいる。
第1歯車機構112は、小ギヤ118と、小ギヤ118よりも大径の大ギヤ119と、を含む減速機構である。小ギヤ118は、出力軸117に固定されている。大ギヤ119は、小ギヤ118の左方に配置されており、小ギヤ118に噛み合っている。大ギヤ119には、結合孔119aが形成されている。
第2歯車機構113は、ウォーム減速機構であり、ウォーム軸120と、ウォームホイール121と、を含んでいる。ウォーム軸120の前端部には、結合部120aが形成されている。結合部120aは、結合孔119aに固定されている。ウォームホイール121は、ウォーム軸120に噛み合っている。
出力ギヤ114は、たとえば、平歯車である。出力ギヤ114の左半部は、ウォームホイール121の結合孔121aに固定されている。結合孔121aは、出力ギヤ114の外周面の形状に合致する形状に形成されている。出力ギヤ114の右半部は、ウォームホイール121から右方に突出している。
フレーム115は、駆動モータ111、第1歯車機構112、第2歯車機構113および出力ギヤ114を保持している。フレーム115は、フレーム本体110と、第1カバー122と、第2カバー123と、を含んでいる。
フレーム本体110は、合成樹脂などを用いて形成された一体成形品である。フレーム本体110は、第1収容部124と、第2収容部125と、を含んでいる。第1収容部124は、第1歯車機構112を収容するために設けられている。第1収容部124は、前方に開放された箱状に形成されている。第1収容部124は、第1歯車機構112と、ウォーム軸120の前端部と、を収容している。
第1カバー122は、第1収容部124の前端部に固定されている。第1カバー122は、矩形の板状に形成されている。第1カバー122は、第1収容部124を前方から覆っている。第1カバー122は、ケース116の後端部を固定している。第1カバー122には、挿通孔122aが形成されており、この挿通孔122aを通して、出力軸117が後方に突出している。
第2収容部125は、第1収容部124の後方に配置されている。第2収容部125は、ウォーム軸120の後部を取り囲み、かつ、ウォームホイール121の外周を取り囲んでいる。第2カバー123は、第2収容部125の右側面に固定されている。第2カバー123は、ウォームホイール121の右側面を覆うカバー部126と、このカバー部126から右方に突出する突出部127と、を含んでいる。突出部127は、先端が閉じられた円筒状に形成されている。突出部127には、出力ギヤ114の右半部が収容されている。突出部127の一部には、切欠部127aが形成されている。切欠部127aから、出力ギヤ114が下方に露呈している。
上記の構成により、駆動モータ111の出力軸117の出力回転は、第1歯車機構112および第2歯車機構113で減速され、かつトルクが増幅され、出力ギヤ114に伝達される。一方、第2ステータ87などから出力ギヤ114に入力された力は、ウォームホイール121とウォーム軸120との噛み合いによって受けられ、出力ギヤ114の回転を規制する。したがって駆動モータ111の停止時に出力ギヤ114から力が入力されても、出力ギヤ114は容易には回転しない。
図8に示すように、駆動モータ111の中心軸線111aは、側面視において横向きとなるように配置されている。この実施形態においては、前後方向X1に対する中心軸線111aの傾きは、45度以下とされている。その結果、第1ピボット軸51回りにスイングユニット47が揺動したとき、駆動モータ111は、駆動モータ111の中心軸線111aと略直交する方向の振動力を受ける。駆動モータ111の中心軸線111aと略直交する方向の振動力であれば、この振動力によって駆動モータ111内のロータの位置がずれることなどを抑制できる。その結果、駆動モータ111を縦向きとなるように(駆動モータ111の中心軸線111aが上下方向Z1を向くように)配置した場合と比べて、駆動モータ111の故障をより確実に抑制できる。
駆動モータ111の前部は、制御装置78の上方に配置されている。駆動モータ111は、モータケース本体71の周壁76の第2部分76bに隣接している。フレーム115の第1収容部124は、前後方向X1においてステータ82と制御装置78との間に配置されている。
出力ギヤ114は、第2ステータ87に形成された歯部87aに噛み合っている。この実施形態においては、歯部87aは、第2ステータ87の第2合成樹脂部材95から突出するセクタギヤである。出力ギヤ114の回転に伴い、第2ステータ87が電動モータ5の周方向に変位する。この実施形態においては、第2ステータ87が電動モータ5の周方向に変位可能な角度範囲は、約15度である。
第2ステータ87の外周部には、着磁部128が設けられている。着磁部128には、磁気パターンが形成されている。着磁部128(第2ステータ87)の変位は、位置センサ129aによって検出される。位置センサ129aは、第2ステータ87の左方(図8の紙面の後方)において、モータ収容空間S2の上部に配置されている。位置センサ129aは、回路基板129に保持されている。回路基板129は、モータケース本体71の側壁75に固定されている。位置センサ129aの出力は、回路基板129を介して制御装置78に出力されるようになっている。制御装置78は、駆動モータ111に電気的に接続されている。制御装置78は、位置センサ129aで検出された第2ステータ87の位置を参照しながら、駆動モータ111の駆動を制御するようになっている。これにより、第2ステータ87が変位される。
図14Aおよび図14Bは、第2ステータ87を変位させることに伴う電動モータ5の出力の特性の変化を説明するための主要部の図解図である。図14Aおよび図14Bでは、コイルなどの図示を省略している。
上記した第2ステータ87の位置制御により、第2ステータ87は、第1位置と第2位置との間で変位可能である。図14Aに示すように、第2ステータ87が第1位置に位置しているとき、各第2ティース94は、対応する第1ティース88と電動モータ5の軸方向に対向している。図14Bに示すように、第2ステータ87が第2位置に位置しているとき、各第2ティース94は、各第1ティース88と電動モータ5の軸方向に対向しない。
図14Aに示すように、第2ステータ87が第1位置に位置しているとき、第1および第2ティース88,94間のギャップG1は小さく、磁気抵抗が小さい。この状態で電動モータ5を駆動させたとき、電動モータ5には、強力な磁束M1が生じる。磁束M1は、ロータ81のロータコア83、第1ティース88、第2ティース94、および第2ステータ87のヨーク93を通る。強力な磁束M1が発生していることにより、電動モータ5は、低回転だが高トルクの出力を発生できる。電動車両1は、停車状態から発進するときや、坂道を上るときに、大きな磁束M1を発生するように構成されている。
一方、図14Bに示すように、第2ステータ87が第2位置に位置しているとき、第1および第2ティース88,94間のギャップG1は大きく、磁気抵抗が大きい。この状態で電動モータ5を駆動させたとき、電動モータ5には、磁束M1よりも弱い磁束M2が生じる。磁束M2は、ロータ81のロータコア83、および第1ティース88の周囲に形成され、第2ステータ87を通らない。弱い磁束M2が発生していることにより、電動モータ5は、低トルクだが高回転の出力を発生できる。電動車両1は、平坦路を一定速度で走行しているときなどに、磁束M2を発生するように構成されている。
上記のように電動モータ5に生じる磁束M1,M2を変化させることにより、電動車両1の走行状態に応じた出力を電動モータ5が発生するようになっている。
また、図10Bに示すように、ステータ82に隣接してホール(hall)ICセンサなどの磁極センサ130aが設けられている。磁極センサ130aは、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルに対応してそれぞれ設けられている。各磁極センサ130aは、センサ基板130に保持されている。センサ基板130は、第1合成樹脂部材90に隣接して配置されている。磁極センサ130aは、側面視において、隣り合うティース間のスロットに配置されている。図10Aに示すように、各磁極センサ130aの出力は、制御装置78に入力されるようになっている。制御装置78は、各磁極センサ130aからの信号に基づき、各バスバー91U,91V,91Wへ供給する電力を制御する。
図11に示すように、スイングユニット47は、電動モータ5の出力を後輪4に伝達するための減速機構131を含んでいる。減速機構131は、電動モータ5のモータ軸85の回転を減速することにより、モータ軸85からのトルクを増幅して後輪4に出力する構成となっている。
減速機構131は、モータケース67に固定されたギヤケース132に収容されている。ギヤケース132は、左右方向Y1に分割して配置されている。ギヤケース132は、モータケース本体71の側壁75に一体成形された第1部分132aと、第1部分132aと別の部材を用いて形成された第2部分132bと、を含んでいる。
第1部分132aは、全体として、右方に向けて窪んだ形状に形成されている。第1部分132aは、モータケース本体71の側壁75と連続する右側壁133と、右側壁133の外周部から左方に延びる筒状の第1周壁134と、を含んでいる。
第2部分132bは、第1部分132aの左方に配置されている。第2部分132bは、全体として、左方に窪んだ形状に形成されている。
第2部分132bは、左側壁135と、左側壁135の外周部から右方に延びる筒状の第2周壁136と、左側壁135から左方に延びる円筒状の第1および第2延伸部137,138と、を含んでいる。
第2周壁136は、複数のねじ部材139(図7参照)を用いて、第1周壁134に固定されている。第1周壁134の左端面と、第2周壁136の右端面は、それぞれ、平坦に形成されており、互いに突き合わされている。これらの左端面、右端面間には、図示しないシール部材が配置されている。第1周壁134および第2周壁136によって、ギヤケース132の周壁が形成されている。ギヤケース132内の空間、すなわち、第1部分132aと第2部分132bとの間の空間は、ギヤ収容空間S3とされている。
減速機構131は、ギヤ収容空間S3に収容されている。減速機構131は、2段減速式で、かつ、3つの軸を有する構成とされている。減速機構131は、入力ギヤ140と、中間軸141と、中間ギヤ142と、車軸143に設けられた出力ギヤ144と、を含んでいる。この実施形態においては、各ギヤ140,142,144は、平歯車である。
入力ギヤ140は、モータ軸85に一体に設けられている。モータ軸85は、電動モータ5の出力軸としての機能と、減速機構131の入力軸としての機能と、を有している。モータ軸85の中間部は、モータケース本体71の側壁75および第1部分132aに形成された挿通孔145を挿通している。挿通孔145とモータ軸85の中間部との間には、シール部材146が配置されている。また、挿通孔145とモータ軸85の中間部との間には、第3軸受103が配置されている。第3軸受103は、シール部材146の左方において、ギヤ収容空間S3に配置されている。ギヤケース132の右側壁133は、第3軸受103を保持する円筒状の軸受保持部133aを有している。ギヤケース132は、第3軸受103を介してモータ軸85の中間部を回転可能に支持している。
モータ軸85は、第3軸受103の左方に延びている。モータ軸85の左端部には、第4軸受104が嵌められている。第4軸受104は、ギヤケース132の左側壁135に形成された円筒状の軸受保持部135aに保持されている。これにより、ギヤケース132は、第4軸受104を介してモータ軸85の左端部を回転可能に支持している。第3軸受103の直径(外径)は、第4軸受104の直径よりも大きくされている。これにより、電動モータ5からのトルクが入力されるモータ軸85の右半部の支持の剛性を高くでき、かつ、第4軸受104を小型にすることによりスイングユニット47の小型化を達成している。
入力ギヤ140は、第3軸受103と第4軸受104との間に配置されている。入力ギヤ140は、ギヤケース132の前端寄りに配置されている。中間軸141は、モータ軸85の後方に隣接して配置されており、モータ軸85と平行に並んでいる。すなわち、モータ軸85は、中間軸141よりも前方に配置されている。
中間軸141の右端部には、第5軸受105が嵌められている。第5軸受105は、ギヤケース132の右側壁133に形成された円筒状の軸受保持部133bに保持されている。また、中間軸141の左端部には、第6軸受106が嵌められている。第6軸受106は、ギヤケース132の左側壁135に形成された円筒状の軸受保持部135bに保持されている。上記の構成により、中間軸141は、第5および第6軸受105,106を介して、ギヤケース132に回転可能に支持されている。中間軸141は、第2軸受102の一部と左右方向Y1に並んで配置されている。中間軸141は、車軸143よりも前方に配置されている。
中間ギヤ142は、中間軸141に設けられている。中間ギヤ142は、入力ギヤ140に噛み合い、かつ出力ギヤ144に噛み合うように構成されている。中間ギヤ142は、第1中間ギヤ142aと、第2中間ギヤ142bと、を有している。第1中間ギヤ142aは、中間軸141の外周に嵌められており、中間軸141に圧入などによって固定されている。第1中間ギヤ142aは、入力ギヤ140に噛み合っている。第1中間ギヤ142aは、入力ギヤ140よりも大径に形成されている。
第2中間ギヤ142bは、第1中間ギヤ142aの右方に配置されている。第2中間ギヤ142bは、中間軸141と一体に形成されている。第2中間ギヤ142bは、第1中間ギヤ142aよりも小径に形成されている。出力ギヤ144は、車軸143に固定されている。
車軸143は、ステータ82の後端部82aと左右方向Y1に並んで配置されている。車軸143は、中間軸141に隣接しており、中間軸141およびモータ軸85と平行に配置されている。車軸143の右端部には、第7軸受107が嵌められている。第7軸受107は、右側壁133の後部に形成された円筒状の軸受保持部133cに保持されている。また、車軸143の中間部には、第8軸受108が嵌められている。第8軸受108は、第1延伸部137の左端部の内周に形成された軸受保持部137aに保持されている。これにより、車軸143は、第7軸受107および第8軸受108を介して、ギヤケース132に回転可能に支持されている。
出力ギヤ144は、車軸143の右端部の近傍に配置されており、第2中間ギヤ142bに噛み合っている。出力ギヤ144は、第2中間ギヤ142bよりも大径に形成されている。
車軸143の中間部には、シール部材147が嵌められている。シール部材147は、第8軸受108の右方に配置されており、車軸143の外周と第1延伸部137の内周面との間をシールしている。車軸143は、第1延伸部137からギヤケース132の左方に突出し、後輪4に連結されている。
図15は、電動車両1の主要部の左側面図であり、スイングユニット47の一部の図示は省略している。電動モータ5の外径R1は、電動モータ5のモータ軸85の中心軸線85aから、電動モータ5のうちの中心軸線85aから最も遠い部分(第1ステータ86の第1合成樹脂部材90のフランジ部90bの外周部)までの距離の2倍として規定されている。電動モータ5の外径R1は、入力ギヤ140の外径R2よりも大きく、かつ、中間ギヤ142の外径R3(第1中間ギヤ142aの外径)よりも大きく、かつ、出力ギヤ144の外径R4よりも大きくされている。モータ軸85は、上下方向Z1において、制御装置78の上端部78bと下端部78cとの間に配置されている。
図16は、ギヤケース132の周辺の主要部の構成を示す一部断面図であり、ギヤケース132を左方から視た状態を示している。中間軸141は、モータ軸85よりも低い位置に配置され、かつ、車軸143よりも低い位置に配置されている。より具体的には、中間軸141の中心軸線141aは、モータ軸85の中心軸線85aよりも低い位置に配置され、かつ、車軸143の中心軸線143aよりも低い位置に配置されている。さらにいえば、中間軸141の上端部141bは、モータ軸85の上端部85bよりも低い位置に配置され、かつ、車軸143の上端部143bよりも低い位置に配置されている。
車軸143の中心軸線143aは、モータ軸85の中心軸線85aと上下方向Z1の位置が略揃えられている。すなわち、車軸143の中心軸線143aと、モータ軸85の中心軸線85aは、前後方向X1に略真っ直ぐに並んでいる。
図15に示すように、中間ギヤ142の少なくとも一部は、側面視でステータ82(ステータ内領域F3)と重なる位置に配置されている。この実施形態においては、中間ギヤ142の全部が、側面視でステータ82と重なる位置に配置されている。側面視したとき、中間ギヤ142は、モータ軸85の後斜め下方に配置されており、第1ステータ86の第1ティース88と重なる位置に配置されている。
車軸143の少なくとも一部は、側面視でステータ82と重なる位置に配置されている。この実施形態においては、車軸143の略全部が、側面視でステータ82と重なる位置に配置されている。
側面視したとき、車軸143は、第1ステータ86の第1ティース88と重なる位置に配置されている。出力ギヤ144の前端部を含む一部は、側面視でステータ82と重なる位置に配置されている。このように、側面視において、減速機構131の一部は、側面視でステータ82の第1ステータ88の外周面に囲まれた領域としてのステータ内領域F3に配置されている。
図9に示すように、車軸143のうち、ギヤケース132から突出している部分は、雄歯部143cと、雄歯部143cの左方に配置された雄ねじ部143dと、を含んでいる。この実施形態においては、雄歯部143cは、雄スプラインである。雄歯部143cは、後輪4に連結されている。後輪4は、電動モータ5およびモータケース本体71の左方に配置されている。後輪4は、ホイル部材148と、ホイル部材148に取り付けられたタイヤ149と、を含んでいる。
この実施形態においては、ホイル部材148は、スチールホイールである。ホイル部材148は、ハブ150と、ディスク151と、ハブ150を取り囲む筒状部152と、リム153と、を含んでいる。
ハブ150は、車軸143の雄歯部143cに嵌められている。これにより、ホイル部材148(後輪4)は、車軸143と一体回転可能に連結されている。また、車軸143の雄ねじ軸143dには、ナット154が固定されている。ハブ150は、ステータ82の後端部82aと、前後方向X1の位置が揃えられている。
ディスク151は、ハブ150の左端部からホイル部材148の径方向外方に延びている。ディスク151は、ホイル部材148の径方向外方に進むにしたがい、右方に進むように湾曲した形状に形成されている。筒状部152の先端部は、ギヤケース132の第2延伸部138に形成された環状溝138aに挿通されている。
リム153は、全体として、ディスク151を取り囲む円筒状に形成されている。リム153は、ディスク151の外周部に接続されたウェル部153aと、ビードシート部153b,153cと、フランジ部153d,153eと、を含んでいる。ウェル部153aは、ホイル部材148の周方向に沿って視たときに、溝状に形成されている。
ビードシート部153b,153cは、タイヤ149のビード部149a,149bの内周面とそれぞれ結合するために設けられている。ビードシート部153b,153cは、ウェル部153aの外周部から左右方向Y1に延びている。ビードシート部153bは、ウェル部153aから右方に延びている。ビードシート部153cは、ウェル部153aから左方に延びている。
フランジ部153d,153eは、ビード部149a,149bの外側面をそれぞれ受けるために設けられている。フランジ部153dは、ビードシート部153bの右端部からホイル部材148の径方向外方に延びている。フランジ部153eは、ビードシート部153cの左端部からホイル部材148の径方向外方に延びている。
上記の構成により、ホイル部材148のディスク151およびリム153によって、ホイル内空間S4が形成されている。ホイル内空間S4は、ディスク151の右方に形成されている。
ホイル内空間S4は、ギヤケース132の左側壁135と、第2周壁136の一部と、モータ軸85の左端部と、減速機構131の入力ギヤ140の一部と、中間軸141の左端部と、第1中間ギヤ142aの一部と、車軸143の一部と、第4,6,8軸受104,106,108と、シール部材147と、後述するブレーキ装置155と、を収容している。
ホイル部材148のフランジ部153dは、モータ軸85の左端部、入力ギヤ140の左端部、および第1中間ギヤ142aの左半部と左右方向Y1の位置が重なるように配置されている。ビードシート部153bは、第4軸受104,モータ軸85の左端部、第6軸受106、および中間軸141の左半部と左右方向Y1の位置が重なるように配置されている。フランジ部153d,153eの外周面は、ホイル部材148の外周面148aとされている。
タイヤ149は、合成ゴムを用いて形成されている。タイヤ149は、リム153を取り囲むトレッド部149eと、トレッド部149eの左右両端部からそれぞれリム153に向けて延びるサイドウォール149c,149dと、を含んでいる。サイドウォール149c,149dの内周部に、それぞれ、前述のビード部149a,149bが形成されている。
図15に示すように、側面視において、ホイル部材148の外周面148aで囲まれた領域は、ホイル内領域F1を規定している。側面視において、ホイル内領域F1には、減速機構131の全部が配置されている。また、ホイル内領域F1には、電動モータ5の一部が配置されている。ホイル内領域F1には、電動モータ5のステータ82のうち、前端部82bを除く領域が配置されている。
すなわち、電動モータ5の第1ステータ86のうち、最も前方に配置されている第1ティース88aとホイル部材148の外周面148aとの交差部を基準として、この部分よりも前方に位置しているステータ82の前端部82bは、ホイル内領域F1の外方に配置されている。
ステータ駆動装置79の駆動モータ111と、第2歯車機構113の一部は、ホイル内領域F1よりも前方に配置されている。
また、モータ軸85および車軸143は、サブフレーム36と前後方向X1に並ぶように配置されており、サブフレーム36の後端部36aと上下方向Z1の位置が揃っている。このように、バッテリ6を支持するためのサブフレーム36と、減速機構131の一部とを、上下方向Z1の位置が重なるように配置することにより、バッテリ6をより下方に配置できる。これにより、シート29の位置をより低くすることができる。
側面視において、タイヤ149の外周面(トレッド部149eの外周縁部)に囲まれ、かつ、ホイル内領域F1の外方の領域は、タイヤ内領域F2を規定している。タイヤ内領域F2には、電動モータ5のステータ82の前端部82bが配置されている。また、タイヤ内領域F2には、ステータ駆動装置79の駆動モータ111の一部と、第2減速機構113の一部が配置されている。また、タイヤ内領域F2には、バスバー91Uおよび制御装置78の後端部78eが配置されている。
図9に示すように、ホイル部材148の内部には、ブレーキ装置155が配置されている。この実施形態においては、ブレーキ装置155は、ドラムブレーキ装置である。ブレーキ装置155は、ホイル内空間S4において、ハブ150と筒状部152との間に配置されている。
ブレーキ装置155からは、操作軸156が右方に延びている。操作軸156の右端部は、操作レバー157に固定されている。
操作レバー157は、操作軸156から後斜め下方に延びている。図15に示すように、操作レバー157の下端部には、操作ケーブル158が接続されている。操作ケーブル158は、運転者によるブレーキレバー(図示せず)の操作によって前後方向X1に変位するように構成されている。
図16に示すように、ギヤケース132内には、減速機構131を潤滑するための潤滑油159が溜められている。ギヤケース132の第1部分132aの後端部には、潤滑油159をギヤケース132内に供給するための潤滑油供給口160が形成されている。潤滑油供給口160は、電動モータ5の後方(ステータ82の後端部82aよりも後方)に配置されている。潤滑油供給口160は、ギヤケース132の第1部分132aを貫通して形成されている。潤滑油供給口160には、ねじ部材161が取り外し可能に取り付けられている。このねじ部材161を取り外すことで、ギヤケース132の右方から潤滑油供給口160に潤滑油を供給することができる。
潤滑油供給口160は、左右方向Y1に平行に(水平な向きに)設けられている。これにより、潤滑油供給口160の下端部よりも上方には、潤滑油159が溜まらないようになっている。ギヤケース132内において、潤滑油159は、各ギヤ140,142,144の一部のみを浸すように溜められている。これにより、潤滑油159に起因する減速機構131の各ギヤ140,142,144の駆動ロスを最小限にしつつ、各ギヤ140,142,144を確実に潤滑できるようにしている。
より具体的には、ギヤケース132内の潤滑油159の上面159a(潤滑油給油口160)は、減速機構131の下端としての第2中間ギヤ142bの下端部142cよりも上方に、かつ、出力ギヤ144の下端部144aよりも上方に、かつ、入力ギヤ140の下端部140aよりも下方に位置している。これにより、入力ギヤ140、中間ギヤ142および出力ギヤ144が回転しているとき、潤滑油159は、中間ギヤ142および出力ギヤ144によって掻き上げられ、各ギヤ140,142,144を潤滑する。
また、ギヤケース132は、ギヤ収容空間S3内の潤滑油159を排出するための潤滑油排出部162を有している。潤滑油排出部162は、ギヤ収容空間S3の下端に接続されている。具体的には、ギヤケース132の周壁は、側面視において下方に窪んだ形状に形成されている。
図17は、スイングユニット47の後端寄りの一部を破断して示す左側面図であり、一部の部材は2点鎖線で示している。図16および図17に示すように、ギヤ収容空間S3の下端に、潤滑油排出部162が接続されている。潤滑油排出部162は、ギヤケース132の第2周壁136に一体成形され第2周壁136から下方に延びている。
潤滑油排出部162の下端部は、潤滑油排出口163を含んでいる。潤滑油排出口163は、側面視において、電動モータ5(第1合成樹脂部材90)やモータケース67の外方に配置されており(図15参照)、電動モータ5よりも下方に位置している。ここでの「モータケース67の外方」とは、詳しくは「モータケース67のうち側面視で電動モータ5の外周を覆っている部分よりも電動モータ5の回転軸(モータ軸85)に対して外側」ということである。潤滑油排出口163には、ドレンボルトとしてのねじ部材164が取り外し可能に取り付けられている。ねじ部材164を取り外すことにより、ギヤ収容空間S3に溜められた潤滑油159を、ギヤケース132の外部に排出することができる。
図17に示すように、スイングユニット47は、第1ブリーザ165と、第2ブリーザ166と、を含んでいる。
第1ブリーザ165は、モータケース67内の空間(モータ収容空間S2)を、モータケース67の外部の空間に開放することにより、モータケース67内の気圧が過大になることを防ぐために設けられている。第1ブリーザ165は、モータケース本体71の側壁75の接続部75bに固定された第1ボス167と、第1ボス167に接続された第1ブリーザホース168とを含んでいる。
第1ボス167は、側面視においてブレーキ装置155の上方に配置されており、ギヤケース132の前端部132cよりも後方に配置されている。第1ボス167の内部は、中空に形成されており、モータケース67内に連続している。第1ブリーザホース168は、ゴムホースなどの可撓性を有するホースである。第1ブリーザホース168は、第1ボス167から後方に延び、途中で下方に向けて湾曲しており、下方に向けて開放されている。このように、第1ブリーザホース168は、第1ボス167を介してモータケース67に接続されている。
第2ブリーザ166は、ギヤケース132内の空間(ギヤ収容空間S3)を、ギヤケース132の外部の空間に開放することにより、ギヤケース132内の気圧が過大になることを防ぐために設けられている。第2ブリーザ166は、ギヤケース132の左側壁135の接続部135cに固定された第2ボス169と、第2ボス169に接続された第2ブリーザホース170とを含んでいる。
第2ボス169は、側面視において、ブレーキ装置155の上方に配置されており、ギヤケース132の前端部132cよりも後方に配置されている。第2ボス169は、第1ボス167よりも前方に配置されている。第2ボス169の内部は、中空に形成されており、ギヤケース132内に連続している。第2ブリーザホース170は、ゴムホースなどの可撓性を有するホースである。第2ブリーザホース170は、第2ボス169から後方に延び、途中で下方に向けて湾曲しており、下方に向けて開放されている。このように、第2ブリーザホース170は、第2ボス169を介してギヤケース132に接続されている。
図9に示すように、第2ブリーザホース170の後端部170aと、第1ブリーザホース168の後端部168aとは、前後方向X1の位置が揃えられている。
第1ブリーザホース168の後端部168aおよび第2ブリーザホース170の後端部170aは、保持部材171によって左右に並ぶ(側面視で重なる)同じ位置で保持されている。具体的には、保持部材171は、金属棒を折り曲げ加工することなどにより形成されたクランプ部材であってもよい。
保持部材171は、ギヤケース132の右側壁133の後部に、ねじ部材139を用いて固定されている。保持部材171は、右側壁133の後方に配置された第1保持部173と、第2保持部174と、を有している。第1保持部173は、円筒状に形成されており、第1ブリーザホース168の後端部168aの下端近傍を保持している。第2保持部174は、円筒状に形成されており、第2ブリーザホース170の後端部170aの下端近傍を保持している。第1保持部173および第2保持部174は、隣接して配置されており、実質的に同じ位置で各ブリーザホース168,170を保持している。
図10Aに示すように、電動車両1は、スイングユニット47に取り付けられたスタンド装置175を含んでいる。スタンド装置175は、電動車両1を駐車しているときに電動車両1を支持するために設けられており、後輪4を路面A1から浮かせた状態でスイングユニット47を支持するようになっている。
スタンド装置175は、スイングユニット47に連結された支軸176と、この支軸176に接続され支軸176回りに回動可能なスタンド部材177と、を含んでいる。
スタンド部材177は、路面A1から離隔した離隔位置と、路面A1に接地した接地位置とに変位可能である。離隔位置にあるときのスタンド装置175は、実線で示されている。また、接地位置にあるときのスタンド装置175は、2点鎖線で示されている。以下では、特に説明しない場合、スタンド装置175が離隔位置にある状態を基準に説明する。
支軸176は、モータケース67の前端部67aの下端に形成された接続部178を挿通しており、左右方向Y1に延びている。スタンド部材177は、支軸176に固定されたU字状部179を含んでいる。
図9に示すように、U字状部179は、平面視において、後輪4の前部を前方および左右両側方から囲うように配置されている。U字状部179は、支軸176に接続された第1部分181と、第1部分181から左右方向Y1に分かれた一対の第2部分182L,182Rと、を含んでいる。
第2部分182Lは、第1部分181から左後方に向けて延びている。第2部分182Lの先端部には、足掛け部183が設けられている。足掛け部183は、運転者がスタンド部材177を足で操作するときに運転者の足が掛けられる部分である。足掛け部183は、第2部分182Lの先端部から左方に延びる棒状に形成されており、後輪4のホイル部材148のフランジ部153eの左方に配置されている。
また、第2部分182Lの先端部には、接地部材184が設けられている。接地部材184は、第2部分182Lとは別部材である金属板をプレス加工して形成されており、第2部分182Lに固定されている。
第2部分182Rは、第1部分181から右後方に向けて延びている。第2部分182Rは、足掛け部183が設けられていない点以外、第2部分182Lと左右対称な形状を有している。
図15に示すように、側面視において、離隔位置に位置しているときのスタンド部材177の足掛け部183は、電動モータ5のステータ82の前端部82bと重なるように配置されている。また、側面視において、スタンド部材177の各第2部分182L,182Rの先端部および足掛け部183は、タイヤ内領域F2に配置されている。
運転者がスタンド部材177を離隔位置から接地位置に変位させる際には、まず、運転者は、電動車両1を降り、足の爪先を足掛け部183にかける。次に、足掛け部183を下向きに踏んでスタンド部材177を支軸176回りに回動させることにより、スタンド部材177は、接地位置に変位する。接地位置に変位したスタンド部材177の接地部材184は、路面A1に接地している。このとき、後輪4は、路面A1から浮いた状態となる。
図18Aは、後輪4周辺の左側面図である。図18Bは、後輪4周辺の右側面図である。図18Aおよび図18Bに示すように、電動車両1は、後輪4の上部に配置されたリアフェンダ185を含んでいる。
リアフェンダ185は、後輪4が跳ね上げた雨水や小石などを受け止めるために設けられており、後輪4と一体に第1ピボット軸51回りを揺動可能である。リアフェンダ185は、タイヤ149の上部を上方から覆うように配置されている。リアフェンダ185は、タイヤ149の上方に配置された円弧状部186と、円弧状部186から下方に延びる一対の側板187L,187Rと、円弧状部186から前方に延びる突出部188と、を含んでいる。
円弧状部186の後端部には、鍔部189が設けられている。鍔部189は、後斜め下方に延びており、電動車両1の走行時にリアフェンダ185を通過する空気を整流する機能を有している。
一対の側板187L,187Rは、それぞれ、後輪4の左方および右方に配置されている。側板187Rは、後輪4とモータケース67のとの間に配置されている。側板187Rは、ショックアブソーバ69との接触を避けるための凹部190を有している。
図19Aは、後輪4周辺の左側面図であり、リアフェンダ185を取り外した状態を示している。図19Bは、後輪4周辺の右側面図であり、リアフェンダ185を取り外した状態を示している。図19Aおよび図19Bに示すように、電動車両1は、フェンダサポート191を含んでいる。
フェンダサポート191は、第1部分192と、第2部分193と、第3部分194と、を含んでいる。第1部分192の前端部は、スイングユニット47の連結部材72にねじ部材74を用いて固定されている。第1部分192は、連結部材72から後方に略直線状に延びる板状に形成されている。第1部分192の後端部192aは、ホイル部材148の後端よりも後方に配置されている。
第2部分193は、下向きに開放されたU字状に形成されており、タイヤ149の上部と、上方および左右両側方から対向している。第2部分193の左下端部193aは、第1部分192に接触している。第2部分193の右下端部193cは、ギヤケース132の左側壁135に接触している。
第3部分194は、第2部分193の右下端部193cから後斜め上方に延びた棒状の部材である。第3部分194の前端部は、ギヤケース132の左側壁135にねじ部材197を用いて固定されている。
図18Aおよび図18Bに示すように、第1部分192および第2部分193は、ねじ部材195を用いてリアフェンダ185の側板187Lに固定されている。第2部分193の右部は、ねじ部材196を用いてリアフェンダ184の側板187Rに固定されている。第3部分194の後端部は、ねじ部材198を用いて側板187Rの後端部に固定されている。
以上説明したように、この実施形態によれば、電動モータ5を大型化することなく後輪4に充分なトルクを付与でき、かつ、電動モータ5の冷却のための構造を簡素にでき、かつ、路面A1に対する後輪4の追従性を向上でき、しかも、最大バンク角度を大きく確保できる。
より具体的には、減速機構131は、入力ギヤ140と中間ギヤ142との間での減速と、中間ギヤ142と出力ギヤ144との間での減速という2段階の減速を行うことができる。これにより、減速機構131において大きな減速比(たとえば、10以上)を実現できるので、電動モータ5のトルクの増幅量を大きくできる。したがって、電動モータ5を大型化することなく、電動モータ5から後輪4に充分なトルクを付与できる。
このように、電動モータ5を大型化することなく、電動モータ5から充分なトルクを後輪4に伝達できるので、電動モータ5を小型化できる。小型の電動モータ5は、発熱量が少ない上、減速機構131でトルクが大きく増幅されている。すなわち、大きなトルクを後輪4に与えるために、大型の電動モータの出力を用い、この大型の電動モータの出力を、減速機構を介することなく後輪に伝える構成ではない。
したがって、減速機構131を用いることなく大型の電動モータを用いた場合と比べて、減速機構131と小型の電動モータ5とを用いる場合には、電動車両1が同じ加速を得るために電動モータ5が必要な出力を小さくできる。よって、電動モータ5の発熱も抑制できる。したがって、電動モータ5を強制的に冷却するための冷却ファンが不要であり、電動モータ5を電動車両1の走行風などで自然冷却することで、電動モータ5を充分に冷却できる。これにより、電動モータ5の冷却のための構成を簡素にできる。
また、電動モータ5のステータ82は、側面視で中間ギヤ142の少なくとも一部と重なる位置に配置され、かつ、モータ軸85は、中間軸141よりも前方に配置され、かつ、ステータ82の一部(前端部82b)が、側面視でホイル部材148よりも前方に配置されている。これにより、重量物である電動モータ5を、第1ピボット軸51の近くの前寄りに配置できる。その上、小型で軽量の電動モータ5を用いることができるので、電動車両1の走行時における第1ピボット軸51回りの電動モータ5の慣性モーメントを小さくできる。その結果、電動モータ5と一緒に第1ピボット軸51回りを揺動する後輪4の、路面A1に対する追従性を向上できる。
また、特許文献1として示す特開2010−83366号公報に記載の構成では、入力ギヤと出力ギヤという2つのギヤによる1段階の減速しか行っていない。よって、大きな減速比を得るためには、大きな径の出力ギヤが必要なので、入力ギヤと出力ギヤとの間を広くする必要がある。
これに対し、この実施形態では、3つのギヤ140,142,144によって2段階の減速を行っているので、大きな減速比を得るのに、入力ギヤ140と出力ギヤ144との間の間隔を広くする必要がない。これにより、3つのギヤ140,142,144間の間隔を狭く配置できる。これにより、電動モータ5と後輪4の中心軸線の間の距離を短くできるので、後輪4を、より前方の第1ピボット軸51の近傍に配置できる。これにより、電動車両1の走行時における第1ピボット軸51回りの後輪の慣性モーメントをより小さくできる。その結果、路面A1に対する後輪4の追従性をより一層向上できる。
さらに、左右方向Y1における中間ギヤ142の一部の位置を、ホイル部材148の位置と重なるようにしている。これにより、後輪4と中間軸141とが全体として占める左右方向Y1の長さ(横幅)を短くできる。このように、路面A1からの高さが比較的低い位置に配置される後輪4および中間軸141を、全体として横幅が短い配置にできるので、電動車両1を旋回のために左右方向Y1に傾けることのできる角度の最大値(最大バンク角度)を大きくできる。
また、側面視において、減速機構131は、ホイル内領域F1に配置されており、かつ、減速機構131の一部は、側面視においてステータ内領域F3に配置されている。これにより、減速機構131のより多くの部分を、ホイル内空間S4に配置することが可能となり、ホイル部材148、減速機構131および電動モータ5が全体として左右方向Y1に占める長さをより短くできる。これにより、電動車両1を旋回するために傾けたときに、スイングユニット47が路面A1に接触し難くなるので、最大バンク角をより大きくできる。
また、側面視において、減速機構131は、入力ギヤ140、中間ギヤ142および出力ギヤ144の外径R2,R3,R4がいずれも電動モータ5の外径R1よりも小さくされている。これにより、減速機構131をより確実にホイル部材148(ホイル内空間S4)内に配置することが可能となり、ホイル部材148、減速機構131および電動モータ5が全体として左右方向Y1に占める長さをより短くできる。これにより、電動車両1を旋回するために傾けたときに、スイングユニット47が路面A1に接触し難くなるので、最大バンク角をより大きくできる。
さらに、中間軸141は、モータ軸85および車軸143よりも下方に配置されている。これにより、側面視において減速機構131をホイル内領域F1に収めつつ、各ギヤ140,142,144をホイル内空間S4のより広い範囲に配置できる。これにより、各ギヤ140,142,144の外径をより大きくできる。その結果、減速機構131の減速比をより大きくできる。
また、電動モータ5の後方の位置に潤滑油供給口160が設けられている。前述したように、電動モータ5を前方寄りに配置できるようにしたことで、ギヤケース132の後端部に潤滑油供給口160を設けることができる。ギヤケース132の後端部は、障害物となる部品が少ないので、潤滑油供給口160を容易に手で開閉操作できる。また、潤滑油供給口160の高さ位置を自由に設定できるので、ギヤケース132内の潤滑油の量を、潤滑油供給口160の配置によって容易に規定できる。また、モータケース67の第2部分132bを取り外すことなく、潤滑油の注入作業を行える。
さらに、潤滑油供給口160は、前記減速機構131の下端(中間ギヤ142の下端部142c)よりも上方に配置されている。これにより、少なくとも中間ギヤ142によって潤滑油159をギヤケース132内で掻き上げることができるので、減速機構131の各ギヤ140,142,144に確実に潤滑油159を供給できる。また、最適な潤滑油159の高さ(オイルレベル)を実現できる。これにより、潤滑油159による潤滑効果が最も高くなるように、かつ、潤滑油159の粘性抵抗による減速機構131の駆動ロスが最小になるように、オイルレベルを設定できる。
また、潤滑油排出口163が側面視でモータケース67の外方にあるので、潤滑油排出口163を手で操作し易く、潤滑油159の排出作業を容易に行える。
さらに、第1および第2ブリーザホース168,170によって、ギヤケース132内の圧力およびモータケース67内の圧力を、大気圧に維持できる。また、各ブリーザホース168,170を保持部材171によって同じ位置で保持しているので、各ブリーザホース168,170を同時に取り付けることが容易であり、各ブリーザホース168,170の取り付け作業が容易である。
また、スタンド部材177が離隔位置にあるときの足掛け部183は、第1ピボット軸51近くの前寄りに配置された電動モータ5と側面視で重なるように配置されている。よって、足掛け部183も前寄りに位置しており、ハンドル11を持って路面A1に立った状態の運転者が足を足掛け部183に掛けやすい。すなわち、スタンド部材177の操作性を向上できる。
しかも、後輪4を挟んで電動モータ5と足掛け部とが左右に配置されているので、左右方向Y1において後輪4からの電動車両1の部品の突出量を小さくできる。その結果、最大バンク角度を大きくできる。
<第2実施形態>
図20は、この発明の第2実施形態の電動車両1Aの主要部の左側面図である。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明する。第1実施形態と同様の構成には、図に同じ符号を付して説明を省略する。
電動車両1Aが電動車両1と異なっているのは、スイングユニット47Aの構成と、スタンド装置175Aの構成である。
スイングユニット47Aは、第1実施形態のスイングユニット47を左右方向Y1に反転させた構成となっている。したがって、スイングユニット47Aのモータケース本体71A、電動モータ5Aおよびギヤケース132Aなどは、後輪4の左方に配置されている。
スタンド装置175Aは、車体フレーム2の第2フレーム部22に連結された支軸176Aと、この支軸176Aに接続され支軸176A回りに回動可能なスタンド部材177と、を含んでいる。
支軸176Aは、第2フレーム部22の下端部22aに接続されており、左右方向Y1に延びている。スタンド部材177の足掛け部183は、スイングユニット47Aよりも前方に配置されている。すなわち、スタンド部材177は、側面視において、電動モータ5Aよりも前方に配置されている。スタンド部材177の足掛け部183は、左右方向Y1において後輪4の左方に配置されている。
運転者がスタンド部材177を離隔位置から接地位置に変位させる際には、まず、運転者は、電動車両1Aを降り、足の爪先などを足掛け部183にかける。次に、足掛け部183を下向きに踏んでスタンド部材177を支軸176A回りに回動させる。これにより、スタンド部材177は、接地位置に変位する。接地位置に変位したスタンド部材177の各接地部材184は、路面A1に接地する。
この実施形態によれば、スタンド部材177が離隔位置にあるときの足掛け部183を、前方寄りに配置できる。よって、ハンドル11を持って路面A1に立った状態の運転者が足を足掛け部183に掛けやすい。すなわち、スタンド部材177の操作性を向上できる。
なお、各上記実施形態において、中間軸141を、モータ軸85および車軸143よりも下方に配置した構成を説明したけれども、これに限定されない。中間軸141は、モータ軸85および車軸143の少なくとも一方に対して、上下方向Z1の位置が揃えられていてもよいし、モータ軸85および車軸143よりも上方に配置されていてもよい。
また、ホイル部材148のディスク151の周方向に沿ってディスク151に複数の孔部を設けてもよい。
さらに、ピボット軸52L,52Rを廃止し、スイングユニット47を、第1ピボット軸51の回りにのみ揺動可能としてもよい。
また、本発明を、スクータ以外の電動車両に適用してもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。