JP5558737B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)信号から画像を再構成する磁気共鳴イメージング(MRI: Magnetic Resonance Imaging)装置に係り、特に、被検体ごとの特徴に拠らず普遍的なB1シミングを行うことにより、B1不均一性の影響を低減することが可能な磁気共鳴イメージング装置に関する。
磁気共鳴イメージングは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。
近年、装置の高磁場化に伴いB1不均一性が問題となっている。B1不均一性は、RF磁場不均一性とも呼ばれ、共鳴周波数の高い高磁場装置において、波長が短いRFパルスが生体内で減衰することによって不均一度が増加し、RFパルスの不均一性に伴ってエコー信号も不均一となる現象である。すなわち、高磁場MRI装置では、被検体の誘電率の違い等の影響により、撮影領域の中心と周辺部ではRF送信パルスの信号強度分布が大きく異なる。
このため、B1不均一性の影響を低減するためにB1シミングを行うことが必要となる。すなわち、RF送信パルスの信号強度分布を均一にする補正を行わないと、撮影領域の中心部と周辺部とで感度ムラが生じる恐れがある。そこで、B1不均一性の影響を低減するために、感度ムラが生じる領域について振幅や位相を補正したRF送信パルスを送信することが有効であるという研究報告がなされている(例えば非特許文献1、非特許文献2および非特許文献3参照)。
G. McKinnon et al., "RF Shimming With a Conventional 3T Body Coil", Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 15 (2007), p173. D. Weyers et al., "Shading Reduction at 3.0T using an Elliptical Drive", Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 14 (2006), p2023. J. Nistler et al., "Homogeneity Improvement Using A 2 Port Birdcage coil", Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 15 (2007), p1063.
しかしながら、B1不均一性の影響によって感度ムラが生じる領域および適切なRF送信パルスの位相および振幅は、被検体の体重、身長、体積、水の分布、脂肪の分布、筋肉の分布等の特徴に応じて異なる。これに対して、従来提案されているB1シミングの手法は、ある特定の被検体の特徴に応じた送信RFパルスの位相および振幅を予め求め、決定した位相および振幅を有する送信RFパルスを被検体の特徴に応じて感度ムラが生じる領域に送信するといいうものである。このため、被検体が変わると、感度ムラ領域や適切なRF送信パルスの振幅および位相も変わり、定常的に良好なB1シミングを行うことができないという問題がある。逆に言えば、従来の手法をそのまま用いると、被検体ごとに感度ムラ領域が異なるにも関わらず、予め決定された共通の感度ムラ領域について送信RFパルスの振幅や位相を調整することとなる。
また、被検体が変わる度に、ユーザが適切な送信RFパルスの位相や振幅を求めることが必要となり、かつ送信RFパルスの位相や振幅の調整を手動で頻繁に行うことが必要となる。
以上の問題が高磁場装置へのB1シミング機能の実装化の妨げとなっている。そこで、被検体が変わったとしても普遍的かつ簡便にB1シミングを行うための技術の開発が望まれる。
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、被検体ごとの特徴に拠らず普遍的なB1シミングを行うことにより、B1不均一性の影響を低減することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、被検体内に設定された複数の関心領域間におけるデータのばらつきが低減されるような高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を取得する撮影条件取得手段と、前記振幅および位相の少なくとも一方を撮影条件としてイメージングを行うことにより画像データを取得するイメージング手段とを備えるものである。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置においては、被検体ごとの特徴に拠らず普遍的なB1シミングを行うことにより、B1不均一性の影響を低減することができる。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図。 図1に示すシーケンスコントローラ、送信器およびRFコイルの詳細構成例を示す図。 図1に示すコンピュータの機能ブロック図。 図3に示すROI設定部において、準備スキャンによって収集されたデータに基づいてROIを設定するための領域を決定する方法を説明する図。 図3に示すROI設定部において設定される複数のROIの一例を示す図。 図3に示す振幅位相設定部において格子探索法により最適なRF送信信号の振幅および位相を探索する方法を説明する図。 図3に示す振幅位相設定部において2分法により最適なRF送信信号の振幅および位相を探索する方法を説明する図。 図1に示す磁気共鳴イメージング装置によりRF送信信号の位相および振幅の調整によるB1シミングを伴って被検体の画像データを収集する際の手順を示すフローチャート。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
(構成および機能)
図1は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図である。
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23およびRFコイル24を備えている。
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24にはガントリに内蔵されたRF信号の送受信用の全身用コイル(WBC: whole body coil)や寝台37や被検体P近傍に設けられるRF信号の受信用の局所コイルなどがある。
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
RFコイル24は、送信器29および/または受信器30と接続される。送信用のRFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能を有し、受信用のRFコイル24は、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRF信号を発生させる機能を有する。
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波およびA/D (analog to digital)変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
図2は、図1に示すシーケンスコントローラ31、送信器29およびRFコイル24の詳細構成例を示す図である。
図2に示すように、シーケンスコントローラ31には振幅制御部31A、位相制御部31Bおよび信号発生器31Cが備えられる。送信器29には、90度信号分配器29A、振幅位相バランサ29B、一対の送信前段増幅器29C、一対のパワー増幅器29D、一対のアイソレータ29E、一対の50Ω終端29Fが備えられ、1つの信号から分配して得られる2つのRF信号を並列に増幅させる並列駆動RFアンプとして機能する。また、送信器29とRFコイル24との間には、RFフロントエンド38が設けられる。RFフロントエンド38には、送受信切換スイッチ38A、I信号送受チャンネル38B、Q信号送受チャンネル38C、90度位相合成器38D、50Ω終端38Eおよび受信前段増幅器38Fが備えられる。RFコイル24には、I信号を送受信するためのコイルエレメント24AおよびQ信号を送受信するためのコイルエレメント24Bを含む複数のコイルエレメントが備えられる。
シーケンスコントローラ31の振幅制御部31A、位相制御部31Bおよび信号発生器31Cは、それぞれコンピュータ32からの制御信号により制御できるように構成される。振幅制御部31Aは、送信器29の振幅位相バランサ29Bに制御信号を与えることによりI信号の振幅を調整する機能を有する。位相制御部31Bは、送信器29の振幅位相バランサ29Bに制御信号を与えることによりI信号の位相を調整する機能を有する。信号発生器31Cは、RF信号を発生させて送信器29の90度信号分配器29Aに出力する機能を有する。
送信器29の90度信号分配器29Aには、振幅位相バランサ29BおよびQ信号用の送信前段増幅器29Cが並列接続される。振幅位相バランサ29Bの後段には、I信号用の送信前段増幅器29C、パワー増幅器29Dおよびアイソレータ29Eが直列に接続され、Q信号用の送信前段増幅器29Cの後段には、Q信号用のパワー増幅器29Dおよびアイソレータ29Eが直列に接続される。また、I信号およびQ信号用の各アイソレータ29Eには、それぞれ50Ω終端29Fが接続される。
90度信号分配器29Aは、信号発生器31Cから取得したRF信号を位相が0度のI信号および位相が90度のQ信号に分配する機能と、分配したI信号を振幅位相バランサ29Bに出力する一方、Q信号を対応する送信前段増幅器29Cに出力する機能を有する。送信前段増幅器29Cは、振幅制御部31Aおよび位相制御部31Bからの制御信号に従って、I信号の振幅および位相を所定の値に設定する機能と、調整後のI信号を対応する送信前段増幅器29Cに出力する機能を有する。各送信前段増幅器29Cおよび各パワー増幅器29Dはそれぞれ信号を増幅する機能を有する。各アイソレータ29Eは、それぞれ50Ω終端38Eにより、信号の回り込み防止や回路の保護のために入力信号と出力信号を直列的に絶縁する機能を有する。
RFフロントエンド38の送受信切換スイッチ38Aは、I信号送受チャンネル38BをI信号用のアイソレータ29E側と90度位相合成器38D側との間で、Q信号送受チャンネル38CをQ信号用のアイソレータ29E側と90度位相合成器38D側との間で、それぞれ切換えることによりRF信号の送信時における回路接続構成とエコー信号の受信時における回路接続構成とを切換える機能を有する。I信号送受チャンネル38Bは、I信号を送信する一方、I信号に対応するエコー信号を受信するコイルエレメント24Aと接続される。Q信号送受チャンネル38Cは、Q信号を送信する一方、Q信号に対応するエコー信号を受信するコイルエレメント24Bと接続される。90度位相合成器38Dは、I信号送受チャンネル38BおよびQ信号送受チャンネル38Cからそれぞれ出力されたエコー信号を、90度の位相差をキャンセルする位相補正を行った上で合成することにより単一のエコー信号を得る機能と、受信エコー信号を受信前段増幅器38Fに出力する機能とを有する。受信前段増幅器38Fは、90度位相合成器38Dにおいて合成されたエコー信号を増幅して受信器30に出力する機能を有する。
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムによらず、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
図3は、図1に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
コンピュータ32は、プログラムにより撮像条件設定部40、シーケンスコントローラ制御部41、k空間データベース42、画像再構成部43、画像データベース44、画像処理部45および振幅位相バランスデータベース46として機能する。撮像条件設定部40は、ROI設定部40Aおよび振幅位相設定部40Bを有する。
撮像条件設定部40は、入力装置33からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮影条件を設定し、設定した撮影条件をシーケンスコントローラ制御部41に与える機能を有する。そのために、撮影条件設定部40は、撮影条件の設定用画面情報を表示装置34に表示させる機能を備えている。
撮影条件設定部40のROI設定部40Aは、単一または複数の関心領域(ROI: region of interest)を設定する機能を有する。そのために、ROI設定部40Aには、必要に応じて画像データベース44を参照できるように構成される。
また、振幅位相設定部40Bは、ROI設定部40Aにおいて設定された各ROIについて収集されるデータ間における信号強度のばらつきおよび/または単一のROI内におけるデータのばらつきが低減されるような被検体Pの励起用のRF送信信号の位相および振幅の一方または双方の絶対値または相対値を決定する機能を備えている。そのために、振幅位相設定部40Bには、画像データベース44を参照できるように構成される。そして、振幅位相設定部40Bは、決定したRF送信信号の位相および振幅をイメージングスキャン用の撮影条件として設定するように構成される。
すなわち、特に磁気共鳴イメージング装置20が高磁場装置である場合には、いわゆるB1不均一性の影響によって撮影部位ごとにRF送信信号の信号強度が変化する。つまり、RF送信信号の信号強度が空間的に不均一となる。また、被検体の体重、身長、体積、水の分布、脂肪の分布、筋肉の分布、体格、年齢等の特徴に応じてもRF送信信号の空間的な不均一性は変化する。このため、B1不均一性の影響によってROIごと、ROI内の位置ごとおよび被検体の特徴ごとに収集される信号の強度のばらつきが変化する。
そこで、振幅位相設定部40Bにより、B1不均一性の影響を低減するために各ROIにおいて収集されるデータ間における信号強度のばらつきおよび/または単一のROI内におけるデータのばらつきが低減されるような適切なRF送信信号の位相や振幅が決定される。信号強度のばらつきの低減対象となる単一または複数のROIは、入力装置33からの指示情報に基づいて手動で、或いは予め決定された条件に従って自動的にROI設定部40Aにおいて設定することができる。例えば、ユーザが入力装置33を操作することによってROIを手動で設定するROI設定モードとROIが自動的に設定されるROI設定モードを設けることができる。
ROIを設定する場合には、ROIを設定するための領域を決定することが必要となる。ROIを設定するための領域はデフォルト値してROI設定部40Aに記憶させておくこともできるが、ROIの設定領域を決定するための位置決め用の準備スキャンを行って収集されたデータに基づいて自動的に、または手動で決定することもできる。
図4は、図3に示すROI設定部40Aにおいて、準備スキャンによって収集されたデータに基づいてROIを設定するための領域を決定する方法を説明する図である。
図4において横軸はある1方向の位置を、縦軸は画像データの信号強度を示す。例えば、準備スキャンによって円柱状の人体等価ファントムを撮像すると、中心軸に平行な断面上における再構成画像データの信号強度は図4の実線で示すようになる。尚、画像データの信号強度はROI設定部40Aに自動計測するように設定することが処理の自動化およびユーザ作業の労力低減化に繋がる。図4に示すように、B1不均一性の影響によって、画像データの信号強度は、人体等価ファントムの中心部で大きくなる一方、人体等価ファントムの周辺部では小さくなる。
これに対して、B1不均一性の影響がないと仮定した場合における画像データの信号強度の理想値は、図4の一点鎖線で示すように人体等価ファントムが存在する範囲において一定の値をとり、人体等価ファントムの外部ではゼロである。従って、図4の実線で示す画像データの測定値が一点鎖線で示す理想値に近づくようにRF送信パルスの振幅および位相を決定することが必要となる。
ROIを設定するための領域は、画像データの信号強度を参照して、人体等価ファントムが存在すると考えられるある閾値以上となる範囲に設定することができる。これにより人体等価ファントム等の被検体Pの存在領域を、ROIを設定するための領域として抽出することができる。この領域の設定は、表示装置34に図4に示すような画像データの信号強度のプロファイルを表示させ、マウス等の入力装置33を操作して範囲を指定することによってユーザの手動によって行うことができるが、ROI設定部40Aにおいて閾値とデータの信号値との大小関係に基づいて自動的に行うこともできる。
尚、閾値は、信号強度に対する絶対値として定義することができるが、背景のノイズ領域であると考えられる低信号部を画像データから自動的に抽出し、低信号部に対する相対値として定義することもできる。
また、ROIの設定も手動または自動で行うことができる。ROIを設定するための条件としては、ROIの数、位置、形状の他、隣接するROI間におけるオーバーラップ率またはオーバーラップ量、ROIの設定領域の面積に対するROIの面積の割合が挙げられる。隣接するROIをオーバーラップさせれば、イメージングスキャンによって連続的な画像データを得ることができる。このため、イメージングスキャン用のROIに合わせて準備スキャン用にオーバーラップさせた複数のROIを設定することができる。ROIを設定するためのパラメータはデフォルト値としてROI設定部40Aに記憶させることができ、入力装置33の操作によって変更することもできる。
図5は、図3に示すROI設定部40Aにおいて設定される複数のROIの一例を示す図である。
図5に示すように人体等価ファントムの断面の輪郭がROIを設定するための領域として画像データのプロファイルに基づいて抽出される。そして、例えば、中心部に所望のサイズの1つのROI A1を、周辺部に4つの所望のサイズのROI B1, ROI B2, ROI B3, ROI B4を互に所望のオーバーラップ率でオーバーラップさせて設定することができる。設定された複数のROIに関する情報は、ROI設定部40Aから振幅位相設定部40Bに与えられる。
しかしながら、図4に示すように画像データの中心部と周辺部とでは、B1不均一性の影響により信号強度に偏差が存在する。このため、ROIごとに信号強度にばらつきが存在することとなる。また、単一のROI内においても信号強度にばらつきが存在する。そこで、振幅位相設定部40Bは、単一のROI内および/または複数のROI間における信号強度間のばらつきが最小となるようなRF送信信号の振幅および位相をイメージングスキャン用の撮影条件として求めるように構成される。
ROI内およびROI間における信号強度のばらつきを最小にする方法としては、信号強度のばらつきを表す指標を定義し、定義した指標が最小となるようなRF送信信号の振幅および位相を求めて撮影条件として設定する方法およびより均一なB1分布が得られるようなRF送信信号の振幅および位相を求めて撮影条件として設定する方法がある。
まず、信号強度のばらつきを表す指標が最小となるようなRF送信信号の振幅および位相を求める方法について説明する。
例えば、図5に示すように中心部に1つのROI A1が設定され、周辺部にi個のROI B1, ROI B2, ROI B3, …, ROI Biが設定される場合には、ROI間におけるデータの信号強度の偏差Dは、式(1)のように定義することができる。
[数1]
D=Ia1-(Ib1+Ib2+Ib3+…+Ibi)/i (1)
ただし、Ia1はROI A1についての信号強度の代表値、Ibk (1≦k≦i)はROI Bkについての信号強度の代表値である。信号強度の代表値は、各ROI内における信号強度の平均値、中間値、最大値あるいは最小値とすることができる。また、特異値やエラー値を除去して平均値や中間値等の代表値を求めてもよい。
すなわち、式(1)に示すように信号強度が相対的に大きい中心部のROI A1についての信号強度の代表値と信号強度が相対的に小さい周辺部のROI Bkについての信号強度の平均値との差を複数のROI間におけるデータの信号強度の偏差Dとして定義することができる。ただし、式(1)によらず、ROIの数や形状或いは撮影目的等の条件に応じて任意にROI間におけるデータの信号強度の偏差Dを定義することができる。また、単一のROI内におけるデータの信号強度の偏差についてもROI内に複数の領域や点を設定することによって同様に式(1)のように定義することができる。
尚、各ROI内における信号強度は、ROI設定部40Aにおいて自動計測した値を用いることができるが、振幅位相設定部40Bにおいて自動計測することもできる。
このように複数のROI間または単一のROI内におけるデータの信号強度の偏差Dが数値として求められると、偏差Dを最小とするRF送信信号の振幅および位相を任意の探索方法で計算することが可能となる。偏差Dを最小とするRF送信信号の振幅および位相を探索する代表的な方法としては、格子探索法および2分法が挙げられる。必要に応じて格子探索法および2分法の双方を用いることもできる。
格子探索法は、RF送信信号の位相および振幅を2次元的に変化させた場合における、つまり位相および振幅をパラメータとするROI間またはROI内の信号強度の偏差Ddata群を取得し、偏差Ddata群に基づいて偏差Dを最小とするRF送信信号の振幅および位相を探索する方法である。このため、格子探索法を利用する場合には、RF送信信号の位相および振幅をそれぞれ変えた準備スキャンが実行される。RF送信信号の位相および振幅をそれぞれ変えた準備スキャンの撮影条件は、撮像条件設定部40において設定されることとなるが、緩和時間等を考慮するとマルチスライス撮影としてスライス断面ごとにRF送信信号の位相または振幅を所定の間隔で徐々に変化させることが撮影時間の短縮化に繋がる。さらに、上述した被検体Pの輪郭を抽出するためのデータを収集するための準備スキャンとRF送信信号の位相および振幅をそれぞれ変えた準備スキャンを共通化することも撮影時間の短縮化に繋がる。
撮像条件設定部40において撮影条件として設定されたRF送信信号の振幅および位相は、それぞれシーケンスコントローラ制御部41を通じてシーケンスコントローラ31の振幅制御部31Aおよび位相制御部31Bに出力される。そして、振幅制御部31Aおよび位相制御部31Bによる振幅位相バランサ29Bの制御によりRF送信信号のI信号の振幅および位相をそれぞれ設定された値に調整することができる。
図6は、図3に示す振幅位相設定部40Bにおいて格子探索法により最適なRF送信信号の振幅および位相を探索する方法を説明する図である。
図6において横軸はRF送信信号の振幅をQ信号の振幅AqとI信号の振幅Aiの比として表している。また縦軸は、RF送信信号の位相をQ信号の位相ΦqとI信号の位相Φiとの比として表している。
例えば、Q信号の位相Φqを0度としつつI信号の位相Φiを+Xから-Yの範囲で90度から一定の間隔で変化させる一方、I信号の振幅Aiを制御することによってQ信号の振幅AqとI信号の振幅Aiとの比をAqmax:AiminからAqmin:Aimaxの範囲で一定の間隔で変化させて準備スキャンを実行するものとする。尚、Aqmax:Aiminは4:1が、Aqmin:Aimaxは1:4が、それぞれ限界であるという報告がある。そうすると、図6に示すような2次元空間の各格子点上にQ信号とI信号の振幅比Aq/AiおよびI信号の位相Φiに応じた信号強度の偏差Ddata(Aq/Ai, Φi)が得られる。マルチスライス撮影の場合には、スライス数に等しい数の格子点が存在することとなる。
ここで、格子点上の偏差Ddataのうち最小となる偏差Ddata_minを探索する。次に、最小の偏差Ddata_minとなる格子点上を取り囲む周囲の点を抽出する。そうすると、信号強度の最小の偏差Dminをとる点は、最小の偏差Ddata_minとなる格子点の周囲の点で囲まれる範囲内に存在すると考えることができる。そこで、最小の偏差Ddata_minとなる格子点の周囲の点におけるそれぞれの偏差Ddataを用いた補間処理によって最小の偏差Dminおよび対応する点、すなわちQ信号とI信号の振幅比Aqopt/AioptおよびI信号の位相Φi=90+ΔΦoptを推定することができる。補間処理としては、線形補間、スプライン補間、2次補間等の任意の補間処理とすることが可能であり、ユーザがこれらの補間方法の候補から選択できるようにすることもできる。例えば3次元スプライン補間が実用的である。
尚、全ての格子点上における偏差Ddataを用いて任意の次数の関数を用いたフィッティングを行うことにより最小の偏差Dmin並びに対応するQ信号とI信号の振幅比Aqopt/AioptおよびI信号の位相Φi=90+ΔΦoptを求めることもできる。ただし、上述したように、最小の偏差Ddata_minとなる格子点の周囲の点のみを用いて狭い範囲でフィッティングを行う方が、より近似が成立して計算精度を向上させることができる。
一方、2分法は、RF送信信号の振幅および位相のいずれか一方を変えて収集した2つの画像データのROI間またはROI内における信号強度の偏差D1, D2の大小関係を判定し、値が小さい側の近傍について再びRF送信信号の振幅および位相のいずれか一方を変えて2つの画像データを収集するという作業を繰り返すことにより、偏差Dを最小とするRF送信信号の振幅および位相を探索する方法である。このため、2分法を利用する場合には、RF送信信号の位相および振幅のいずれか一方を変えて画像データを収集する準備スキャンと、2つの画像データのROI間における信号強度の偏差D1, D2の大小関係を判定する処理が繰返し実行される。
図7は、図3に示す振幅位相設定部40Bにおいて2分法により最適なRF送信信号の振幅および位相を探索する方法を説明する図である。
図7において横軸は、RF送信信号のI信号の振幅Aを示し、縦軸はI信号の振幅Aに対応するROI間の信号強度の偏差D(A)を示す。例えば、RF送信信号の振幅Aを変える場合に、間に最小の偏差Dminに対応する振幅Aoptが存在すると考えられる十分に離れた2つの振幅を基点A1, A2として決定し、2つの振幅A1, A2の中点(A1+A2)/2に相当する振幅を求める。次に、中点(A1+A2)/2と隣り合う両側の2つの基点A1, A2との間におけるそれぞれの中点(3A1+A2)/4, (A1+3A2)/4を求める。
そして、準備スキャンによって中点(A1+A2)/2の両側の2点(3A1+A2)/4, (A1+3A2)/4に相当する2つの振幅にRF送信信号の振幅を設定して画像データの収集を行う。次に、2点(3A1+A2)/4, (A1+3A2)/4にそれぞれ対応する画像データの信号強度の各偏差D((3A1+A2)/4), D((A1+3A2)/4)を計算する。次に2つの偏差D((3A1+A2)/4), D((A1+3A2)/4)を比較して小さい値をとる側を特定する。そうすると、最小の偏差Dminに対応する振幅Aoptは、2つの基点A1, A2の中点(A1+A2)/2よりも小さい偏差D(A)の値をとる側に存在すると考えることができる。
そこで、小さい偏差D(A)の値に対応する点(3A1+A2)/4または(A1+3A2)/4を中点とする両側の2点A1またはA2と(A1+A2)/2を新たな基点として上述した2つの異なる振幅に対応する画像データ収集および比較判定処理を行う。このような画像データ収集および比較判定処理を繰り返すことにより最小の偏差Dminおよび対応する振幅Aoptを求めることができる。
尚、ある程度、振幅についての探索が終了したら同様な手法により位相についての探索を行うことが望ましい。そして振幅についての探索および位相についての探索を、探索結果を反映しつつ交互に繰り返すことにより偏差Dを最小にするためのRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptを求めることができる。この場合、例えば、互に異なる振幅でRF送信信号を送信して2つのスライス画像データを収集するマルチスライス撮影用のシーケンスと、互に異なる位相でRF送信信号を送信して2つのスライス画像データを収集するマルチスライス撮影用のシーケンスとをそれぞれ複数セット準備し、各マルチスライス撮影の間に偏差Dの計算や偏差Dの比較判定処理を行って処理結果を次のマルチスライス撮影に反映させることが撮影時間の短縮化に繋がる。マルチスライス撮影は、振幅および位相のそれぞれについて4回程度繰り返せば実用的な精度で最小の偏差Dminおよび対応する振幅Aopt、位相Φoptを求めることができると考えられる。
次に、より均一なB1分布が得られるようなRF送信信号の振幅および位相を求めて撮影条件として設定する方法について説明する。
この場合には、RF送信信号の位相および振幅をそれぞれ変えた準備スキャンによって予めB1分布(RF磁場分布)が取得される。B1分布は、公知の方法により出荷前または撮像の度に取得することができる。例えば、30度RFパルスおよび60度RFパルスを印加してそれぞれ収集した信号間の演算により、B1分布以外の影響による成分を除去することによって、B1分布成分を抽出することができる。B1分布を求める際の被検体Pは、ファントムであっても良いが、人体とすることが精度上望ましい。また、B1分布は、被検体Pの体重や身長等の体型、RF送信信号の送信に使用するRFコイル24および撮像部位ごとに異なる。このため、被検体Pの体型、使用するRFコイル24および撮像部位ごとに取得しておくことが精度上望ましい。
このようにして取得されるB1分布は、信号強度分布と同様の特性を有する。そして、B1分布に基づいて最適なRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptを求めることができる。すなわち、被検体Pの体型等の撮像条件に対応する、より均一なB1分布が得られるRF送信信号の振幅および位相を撮影条件として設定することができる。
尚、ここまでは、準備スキャンによって収集されたデータに基づいて信号強度の偏差が最小となるRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptを求める方法および最も均一なB1分布が得られるRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptを求める方法について説明したが、予め被検体Pの特徴、撮影部位、RFコイル24の特徴等の撮影条件に応じて求めたB1不均一性の影響を低減させる最適なRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptをデータベース化してコンピュータ32に保存しておき、撮影条件に応じて適切なRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptを利用するように構成することもできる。
そこで、コンピュータ32のデータ振幅位相バランスデータベース46には、被検体Pの特徴、撮影部位、RFコイル24の特徴等の撮影条件に応じた最適なRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptが保存される。被検体Pの特徴としては、被検体Pの体重や身長等の体型、体積、水の分布、脂肪の分布、筋肉の分布、体格、年齢が挙げられる。また、RFコイル24の特徴としては、RF信号の送信用に用いられる表面コイルの数、サイズ、形状、種類が挙げられる。
過去に準備スキャンを実行して上述した方法により振幅位相設定部40Bにおいて求められた撮影条件ごとのRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptは、データ振幅位相バランスデータベース46に書き込んで保存することができる。この場合、適切なRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptは、装置ごとに異なる値となる。一方、準備スキャンを伴う上述した手法によらず、他の方法で事前に推定あるいは求めた撮影条件ごとの適切なRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptを装置の出荷時にデータ振幅位相バランスデータベース46に保存しておくこともできる。この場合、RF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptを磁気共鳴イメージング装置20の機種に応じた値とすることもできる。ただし、精度向上の観点から適切なRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptを撮像の度に求めてデータ振幅位相バランスデータベース46に保存してもよい。
そして、振幅位相設定部40Bは、データ振幅位相バランスデータベース46を参照し、入力装置33から入力された被検体Pの特徴、撮影部位、RFコイル24の特徴等の撮影条件に対応するRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptをデータ振幅位相バランスデータベース46から読み込んでイメージングスキャン用の撮影条件として設定するように構成される。
尚、RF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptの代わりに、撮影条件ごとのB1分布を表す関数またはテーブルをデータ振幅位相バランスデータベース46に保存し、撮影条件に対応するB1分布に基づいて振幅位相設定部40Bが最適なRF送信信号の位相Φoptおよび振幅Aoptを設定するように構成しても良い。
次に、コンピュータ32の他の機能について説明する。
シーケンスコントローラ制御部41は、入力装置33またはその他の構成要素からの情報に基づいて、シーケンスコントローラ31に撮像条件設定部40から受けたパルスシーケンスを含む撮影条件を与えることにより駆動制御させる機能を有する。また、シーケンスコントローラ制御部41は、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データベース42に形成されたk空間に配置する機能を有する。このため、k空間データベース42には、受信器30において生成された各生データがk空間データとして保存される。
画像再構成部43は、k空間データベース42からk空間データを取り込んでフーリエ変換(FT: Fourier transformation)を含む画像再構成処理を施すことにより被検体Pの画像データを再構成する機能と、再構成して得られた画像データを画像データベース44に書き込む機能を有する。このため、画像データベース44には、画像再構成部43において再構成された画像データが保存される。
画像処理部45は、画像データベース44から画像データを取り込んで必要な画像処理を行って表示用の2次元の画像データを生成する機能と、生成した表示用の画像データを表示装置34に表示させる機能を有する。
(動作および作用)
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作および作用について説明する。
ここでは、複数のROIを設定し、ROI間における信号強度の偏差が最小となるように、RF送信信号の振幅および位相を決定する場合について説明する。単一のROI内における信号強度の偏差が最小となるようにRF送信信号の振幅および位相を決定する場合や、均一なB1分布が得られるようにRF送信信号の振幅および位相を決定する場合についても同様な流れでイメージングを行うことができる。
図8は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20によりRF送信信号の位相および振幅の調整によるB1シミングを伴って被検体Pの画像データを収集する際の手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
まずステップS1において、コンピュータ32のROI設定部40Aにおいて複数のROIが手動または自動で作成される。自動でROIが作成される場合には、準備スキャンが実行され、後述する信号処理および画像再構成処理により画像データが得られる。そして、画像データの信号強度の閾値処理を伴ってROIを設定するための領域が抽出される。
次に、ステップS2において、振幅位相設定部40Bによりデータ振幅位相バランスデータベース46が参照され、被検体Pの特徴やROI等の撮影条件に対応する適切なRF送信信号の位相および振幅がデータ振幅位相バランスデータベース46に保存されているか否かが判定される。
そして、適切なRF送信信号の位相および振幅がデータ振幅位相バランスデータベース46に保存されていない場合にはステップS3において、RF送信信号の振幅および位相を変えた準備スキャンが実行される。尚、適切なRF送信信号の位相および振幅がデータ振幅位相バランスデータベース46に保存されている場合でも、入力装置33から準備スキャンにより適切なRF送信信号の位相および振幅を算出する指示が振幅位相設定部40Bに入力された場合にはステップS3において準備スキャンが実行される。
そのために、撮像条件設定部40によりRF送信信号の振幅および位相を変えた準備スキャン用の撮影条件が設定される。そして、設定された撮影条件に従ってデータ収集が行われる。
すなわち、予め寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
そして、入力装置33からシーケンスコントローラ制御部41に準備スキャンの開始指示が与えられると、シーケンスコントローラ制御部41は撮影条件設定部40からRF送信信号の振幅および位相を変えた撮影条件を取得してシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御部41から受けた撮影条件に従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
具体的には、シーケンスコントローラ31の信号発生器31Cにおいて発生したRF信号が送信器29の90度信号分配器29Aに出力され、90度信号分配器29AにおいてI信号およびQ信号に分配される。I信号の振幅および位相は、振幅位相バランサ29Bにおいて振幅制御部31Aおよび位相制御部31Bからの制御信号に従って調整される。そして、I信号およびQ信号は、送信前段増幅器29C、パワー増幅器29D、アイソレータ29Eおよび送受信切換スイッチ38Aを経由してそれぞれI信号送受チャンネル38BおよびQ信号送受チャンネル38Cから対応するコイルエレメント24A、24Bに出力される。これによりコイルエレメント24A、24Bからは振幅および位相が調整されたRF送信信号が被検体Pに向けて送信される。
このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24のコイルエレメント24A、24Bにより受信されて送受信切換スイッチ38A、90度位相合成器38Dおよび受信前段増幅器38Fを経由して受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からNMR信号を受けて、所要の信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのNMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをシーケンスコントローラ制御部41に与え、シーケンスコントローラ制御部41はk空間データベース42に形成されたk空間に生データをk空間データとして配置する。
次に、画像再構成部43は、k空間データベース42からk空間データを取り込んで画像データを再構成し、得られた画像データを画像データベース44に書き込む。これにより画像データベース44には、異なるRF送信信号の振幅および位相に対応する複数のROIごとの画像データが保存される。
次に、ステップS4において、コンピュータ32の振幅位相設定部40Bは予め定められた定義に従ってROI間における画像データの信号強度のばらつきを表す指標として信号強度の代表値のROI間における偏差を求める。そして、異なるRF送信信号の振幅および位相に対応する複数の画像データの偏差に基づいて、任意の探索方法で偏差が最小となるようなRF送信信号の振幅および位相を算出する。
次に、ステップS5において、振幅位相設定部40Bは、算出したRF送信信号の振幅および位相をイメージングスキャン用の撮影条件として設定する。
一方、ステップS2において、被検体Pの特徴やROI等の撮影条件に対応する適切なRF送信信号の位相および振幅がデータ振幅位相バランスデータベース46に保存されていると判定された場合には、ステップS6において、振幅位相設定部40Bは、対応する適切なRF送信信号の位相および振幅をイメージングスキャン用の撮影条件として設定する。
次に、ステップS7において、撮影条件として設定されたRF送信信号の位相および振幅を用いてイメージングスキャンが実行される。イメージングスキャンの流れは準備スキャンの流れと同様である。
次に、ステップS8における画像再構成処理が行われる。このため、画像データベース44には、イメージングスキャンによって収集され、適切なRF送信信号の位相および振幅の調整によるB1シミングによってB1不均一性の影響が低減された画像データが保存される。そして、画像処理部45は、画像データベース44から画像データを取り込んで必要な画像処理を行って表示用の2次元の画像データを生成する。さらに、生成された表示用の画像データは表示装置34に表示される。
つまり、以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、B1不均一性の影響を低減させるためにRFコイル24から送信されるRF送信信号の振幅や位相を変化させるようにしたものである。特に、磁気共鳴イメージング装置20では、所望の単一または複数のROIを設定することが可能である。そして、例えばROI内および/またはROI間におけるデータの信号強度のばらつきが低減されるようにRF送信信号の振幅や位相が決定される。或いは、より均一なB1分布が得られるようにRF送信信号の振幅や位相が決定される。
(効果)
このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、信号強度のばらつきの補正対象となる領域の設定の自由度が向上し、B1シミング対象領域に関する操作性を改善することができる。また、被検体Pの特徴等の撮影条件に適応的に最適なRF送信信号の振幅および位相を簡易に求めてB1シミングを行うことができる。このため、NMR信号を劣化させることなくRFコイル24からデータ処理システムに伝送することが可能となり、B1シミング機能を装置に実装することができる。
(変形例)
尚、上述した実施形態では、各ROIに対応する画像データの信号強度の偏差をばらつきの指標としたが、各ROIに対応するk空間データの信号強度の偏差をばらつきの指標とすることもできる。
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイル
24 RFコイル
24A、24B コイルエレメント
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
29 送信器
29A 90度信号分配器
29B 振幅位相バランサ
29C 送信前段増幅器
29D パワー増幅器
29E アイソレータ
29F 50Ω終端
30 受信器
31 シーケンスコントローラ
31A 振幅制御部
31B 位相制御部
31C 信号発生器
32 コンピュータ
33 入力装置
34 表示装置
35 演算装置
36 記憶装置
37 寝台
38 RFフロントエンド
38A 送受信切換スイッチ
38B I信号送受チャンネル
38C Q信号送受チャンネル
38D 90度位相合成器
38E 50Ω終端
38F 受信前段増幅器
40 撮像条件設定部
40A ROI設定部
40B 振幅位相設定部
41 シーケンスコントローラ制御部
42 k空間データベース
43 画像再構成部
44 画像データベース
45 画像処理部
46 振幅位相バランスデータベース
P 被検体

Claims (12)

  1. 被検体内に設定された複数の関心領域間におけるデータのばらつきが低減されるような高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を取得する撮影条件取得手段と、
    前記振幅および位相の少なくとも一方を撮影条件としてイメージングを行うことにより画像データを取得するイメージング手段と、
    を備える磁気共鳴イメージング装置。
  2. 前記複数の関心領域を設定する関心領域設定手段をさらに備える請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  3. 前記撮影条件取得手段は、高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を変化させて準備スキャンを実行することによって得られたデータから前記複数の関心領域間におけるデータのばらつきを示す指標を求め、前記指標が最小となるような高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を算出するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  4. 前記撮影条件取得手段は、スライスごとに高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を変化させたマルチスライス撮影によって得られたデータから前記複数の関心領域間におけるデータのばらつきを示す指標を求めるように構成される請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置。
  5. 前記撮影条件取得手段は、格子探索法を利用して前記指標が最小となるような高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を算出するように構成されることを特徴とする請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置。
  6. 前記撮影条件取得手段は、2分法を利用して前記指標が最小となるような高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を算出するように構成される請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置。
  7. 前記撮影条件取得手段は、被検体の特徴を含む撮影条件ごとに適切な高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を保存する記憶手段を備え、被検体の特徴を含む前記イメージング用の撮影条件に対応する適切な高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を前記記憶手段から読み込んで取得するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  8. 前記関心領域設定手段は、準備スキャンを実行することによって得られた画像データの信号値に基づいて抽出された領域内に予め決定された条件に従って前記複数の関心領域を自動的に設定するように構成される請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
  9. 前記関心領域設定手段は、入力装置からの情報に従って前記複数の関心領域を可変設定するように構成される請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
  10. 前記撮影条件取得手段は、高周波磁場分布に基づいて前記高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を取得するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  11. 前記撮影条件取得手段は、被検体の体型、撮像部位および高周波送信信号の送信用に用いられるコイルの少なくとも1つに対応する高周波磁場分布と、適切な高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方とをテーブルまたは関数として関連付けて保存する記憶手段を備え、前記イメージングにおける前記被検体の体型、前記イメージングにおける撮像部位および前記イメージングにおいて高周波送信信号の送信用に用いられる前記コイルの少なくとも1つに対応する適切な高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を前記テーブルまたは前記関数に基づいて取得するように構成される請求項10記載の磁気共鳴イメージング装置。
  12. 被検体内に設定された複数の関心領域間におけるデータのばらつきが低減されるような高周波送信信号の振幅および位相の少なくとも一方を、前記被検体の体型および高周波送信信号の送信用に用いられるコイルの少なくとも一方に応じた高周波磁場分布に基づいて取得する撮影条件取得手段と、
    前記振幅および位相の少なくとも一方を撮影条件としてイメージングを行うことにより画像データを取得するイメージング手段と、
    を備える磁気共鳴イメージング装置。
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