JP5558671B2 - ポリビニルアルコール系樹脂、単層フィルムおよび積層体 - Google Patents
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Description
耐水性を向上させるためにPVAにエチレンを共重合させたエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHとも略記する)も用いられているが、EVOH単独フィルムでは高湿度条件下にてガスバリア性が低下し、包装材料としては未だ充分なものとは言えなかった(例えば、非特許文献2を参照)。
高湿度条件下でもガスバリア性を高く保つために、EVOHフィルムの両面を耐水性樹脂等で積層した積層体が実用化されているが、材料が増えるだけでなく、積層処理の手間も増えるので、経済的に不利であった。
K.Toyoshima,「Polyvinyl Alcohol」Ed by C.A.Finch, John Wiley&Sons,1973,p.339 T. Iwanami, Y. Hirai, 「Tappi J.」1983, 66(10), 85.
[2] ガラス転移点(Tg)が75〜180℃であることを特徴とする[1]記載のポリビニルアルコール系樹脂。
[3] エチレン構造単位を更に有することを特徴とする[1]又は[2]記載のポリビニルアルコール系樹脂。
[4] エチレン構造単位を、樹脂中のモノマー構造単位の総量に対し、1〜70モル%含有することを特徴とする[3]記載のポリビニルアルコール系樹脂。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のポリビニルアルコール系樹脂を含有する単層フィルム。
[6] [1]〜[4]のいずれかに記載のポリビニルアルコール系樹脂を含有する層を少なくとも1層有する積層体。
なお、本発明において「PVA系樹脂」は、PVAのみならず、PVAと他の共重合可能成分との共重合体をも包含する。
本発明のPVA系樹脂は、ビニルアルコール構造単位を少なくとも有する。ビニルアルコール構造単位は、ビニルエステル系モノマーに由来した構造単位である。ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
本発明のPVA系樹脂は、主鎖にビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン由来の構造単位を有する。
本発明のPVA系樹脂は、特にエチレンを共重合させると、共重合体の結晶性が下がり、融点が低くなることによって、溶融成形が容易となるため好ましい。樹脂中のモノマー構造単位の総量に対するエチレン構造単位の割合は、通常1〜70モル%、好ましくは10〜60モル%、特に好ましくは25〜50モル%である。
かかるモノマーとしては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類、その塩または炭素数1〜18のモノもしくはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン、その塩またはその4級塩等のアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン、その塩またはその4級塩等のメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類;アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメトキシシラン等のビニルシラン類;酢酸アリル;塩化アリル;アリルアルコール;ジメチルアリルアルコール;トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド;アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
非芳香族炭化水素鎖としては、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン等が挙げられ、芳香族炭化水素鎖としては、フェニレン、ナフチレン等が挙げられる。これら非芳香族炭化水素鎖および芳香族炭化水素鎖は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン等の置換基を有していても良い。
これらの中でも熱溶融安定性の点で、非芳香族炭化水素鎖が好ましく、特にはアルキレンが好ましい。かかるアルキレンとしては、炭素数が少ないものが好ましく、例えば、炭素数6以下のものが好適に用いられる。
本発明のPVA系樹脂の平均重合度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常100〜4000、さらには150〜2600、特には200〜2200であることが好ましい。
本発明のPVA系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が通常75〜180℃、好ましくは80〜140℃、特に好ましくは90〜120℃である。また、エチレンを共重合させた場合の本発明によるPVA系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が通常60〜160℃、好ましくは65〜130℃、特に好ましくは70〜110℃である。かかるガラス転移点(Tg)がより高いほうが、ガスバリア性に優れる傾向がある。なお、ガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計を用いて、2回目の昇温時に測定したとき(セカンド・ラン)の温度である。
共重合の方法は、特に制限がなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。高重合度のPVA系樹脂の製造が必要な場合は、低温での懸濁重合または低温でのエマルジョン重合を行なうことが好ましい。また、共重合時のモノマー成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等の任意の方法が採用される。共重合体中にエチレンを導入する場合には、例えばエチレン加圧重合を採用することができる。エチレンの圧力を調整することによって、その導入量を制御することが可能であり、目的とするエチレン含有量により一概にはいえないが、圧力は通常25〜80kg/cm2から選択される。
共重合で用いられる重合触媒としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル等の低温活性ラジカル重合触媒等が挙げられる。重合触媒の使用量は、触媒の種類により異なり一概には決められず、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対して0.01〜0.2モル%が好ましく、特には0.02〜0.15モル%が好ましい。
重合時間は、回分式の場合、4〜20時間、更には6〜12時間が好ましい。連続式の場合、重合缶内での平均滞留時間は2〜10時間、更には2〜8時間が好ましい。重合時間(滞留時間)が短過ぎると、高生産性(高重合率)を達成するための重合制御が難しくなり、逆に長過ぎると生産性の面で問題があり好ましくない。
必要に応じて、重合禁止剤を添加して重合を停止させてもよい。重合禁止剤としては、特に限定されず、例えば、ハイドロキノン、アニリン、アントラセン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、ベンゾニトリル、ベンゾフェノン、N,N−ジメチルホルムアミド、桂皮アルコール、桂皮酸、ソルビン酸等が挙げられる。重合停止後は、蒸留を行うことにより、未反応のモノマー等が除去される。
次いで、得られた共重合体は、混錬機等を用いた回分式、またはベルト上やカラム内等での連続式によりケン化される。ケン化は、上記で得られた共重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60質量%の範囲から選ばれる。
ケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は、脂肪酸エステル単位の総量に対して、通常0.1〜30ミリモル、好ましくは2〜17ミリモルが適当である。
本発明のPVA系樹脂を各種用途に供するには、本発明の目的を阻害しない範囲において、滑剤、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えばエチレングリコール、グリセロール、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなど)、酸素吸収剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、充填材(例えば無機フィラー等)、他樹脂(例えばポリオレフィン、ポリアミド等)等を含有していても良い。
酸素吸収剤としては、例えば無機系酸素吸収剤、有機化合物系酸素吸収剤、高分子系酸素吸収剤が挙げられる。無機系酸素吸収剤としては、還元鉄粉類、さらにこれに吸水性物質や電解質等を加えたもの、アルミニウム粉、亜硫酸カリウム、光触媒酸化チタン等が挙げられる。有機化合物系酸素吸収剤としては、アスコルビン酸、さらにその脂肪酸エステルや金属塩等;ハイドロキノン、没食子酸、水酸基含有フェノールアルデヒド樹脂等の多価フェノール類;ビス−サリチルアルデヒド−イミンコバルト、テトラエチレンペンタミンコバルト、コバルト−シッフ塩基錯体、ポルフィリン類、大環状ポリアミン錯体、ポリエチレンイミン−コバルト錯体等の含窒素化合物と遷移金属との配位結合体;テルペン化合物;アミノ酸類とヒドロキシル基含有還元性物質の反応物;トリフェニルメチル化合物等が挙げられる。高分子系酸素吸収剤としては、窒素含有樹脂と遷移金属との配位結合体(例:MXDナイロンとコバルトの組合せ)、三級水素含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例:ポリプロピレンとコバルトの組合せ)、炭素−炭素不飽和結合含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例:ポリブタジエンとコバルトの組合せ)、光酸化崩壊性樹脂(例:ポリケトン)、アントラキノン重合体(例:ポリビニルアントラキノン)等や、さらにこれらの配合物に光開始剤(ベンゾフェノン等)や過酸化物補足剤(市販の酸化防止剤等)や消臭剤(活性炭等)を添加したものなどが挙げられる。
金属塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の塩と、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸や、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸等の無機酸との金属塩が挙げられる。また、該金属塩の添加量としては、PVA系樹脂100重量部に対して金属換算で0.0005〜0.01重量部(さらには0.001〜0.05重量部、特には0.002〜0.03重量部)とすることが好ましく、かかる添加量が0.0005重量部未満ではその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に0.01重量部を越えると得られる成形物の外観が悪化する傾向にあり好ましくない。尚、PVA系樹脂に2種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩を添加する場合は、その総計が上記の添加量の範囲にあることが好ましい。
ホウ酸金属塩としてはホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛,メタホウ酸亜鉛等)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム等)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀等)、ホウ酸銅(ホウ酸第2銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅等)、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)、ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛等)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケル等)、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム等)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム等)、ホウ酸マンガン(ホウ酸第1マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン等)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム等)などの他、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石等のホウ酸塩鉱物などが挙げられ、好適にはホウ砂、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)があげられる。またホウ素化合物の添加量としては、組成物中のPVA系樹脂100重量部に対してホウ素換算で0.001〜1重量部、さらには0.002〜0.2重量部、特には0.005〜0.1重量部とすることが好ましく、かかる添加量が0.001重量部未満ではその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に1重量部を越えると得られる成形物の外観が悪化する傾向にあり好ましくない。
本発明のPVA系樹脂は、高湿度条件下においてもガスバリア性が高いので、食品や薬品等の包装材料としてのフィルムに好適である。本発明のPVA系樹脂を含有するフィルムは、公知の方法により製造することができる。例えば、PVA系樹脂の水溶液をロール、ドラムまたはエンドレスベルト上に流延し、80〜130℃程度で乾燥させる方法や、あるいはPVA系樹脂に水、可塑剤およびフィラー等を適宜加えた組成物を押出法等の手段によって溶融成形する方法等が採用され得る。なお、フィルム形成後に、必要に応じて、120〜200℃、1〜30分程度のアニール処理を施しても良い。
本発明によるPVA系樹脂フィルムの厚さは、使用目的に応じて適宜定めることができ、特に限定されないが、通常0.1〜500μm、好ましくは0.5〜100μm程度である。
かかる積層体を製造するに当たっては、本発明のPVA系樹脂を含有する層の片面又は両面に、例えば、熱可塑性樹脂を含有する基材を積層する。その積層方法としては、例えば(A)本発明のPVA系樹脂を含有するフィルムやシートに、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着性樹脂を用いて、熱可塑性樹脂を含有するフィルムやシートを貼り合わせるドライラミネート法、(B)本発明のPVA系樹脂を含有するフィルムやシートに、熱可塑性樹脂を溶融押出する溶融押出ラミネート法、(C)本発明のPVA系樹脂と熱可塑性樹脂とを共押出する方法、(D)熱可塑性樹脂の層上に、本発明のPVA系樹脂を含有する溶液を塗布し、熱風の吹き付けや紫外線照射等により水分を蒸発させて乾燥させ皮膜を形成するコーティング法が挙げられる。
かかる熱可塑性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸塩共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィン単独または共重合体、あるいはこれらのオレフィンの単独または共重合体を不飽和カルボン酸またはそのエステルでグラフト変性したものや塩素化したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド;ナイロン6.66共重合体、ナイロン6.12共重合体等の共重合ポリアミド;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ビニルエステル系樹脂;ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等のエラストマー;ポリフェニレンサルファイド等が用いられる。
かかる基材は、各種の表面処理を施したものが好ましい。かかる表面処理としては、コロナ放電処理、溶剤によるエッチング処理、スパッタリング処理、クロム酸処理、高周波処理などや、これらを組み合わせた表面処理が挙げられる。また、接着性樹脂の塗布やドライラミネーションなどによりアンカー層を設けることも、層間接着性をさらに向上させる点で好ましい。かかる接着性樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキルチタネート系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂などを挙げることができる。
積層体の層構成としては、本発明のPVA系樹脂の層をX(X1、X2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をY(Y1、Y2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトルなどの場合は、X/Yの二層構成のみならず、Y/X/Y、X/Y/X、X1/X2/Y、X/Y1/Y2、Y2/Y1/X/Y1/Y2、Y2/Y1/X/Y1/X/Y1/Y2等、任意の組み合わせが可能である。かかる層間には必要に応じて公知の接着性樹脂が用いられ得る。なお、2層以上の熱可塑性樹脂層が積層される場合には、同種の熱可塑性樹脂からなる層のみならず、異種の熱可塑性樹脂からなる層が積層され得る。
また、本発明のPVA系樹脂を有する単層フィルムおよび積層体は、必要に応じて公知の延伸処理を施すことも、ガスバリア性が高まる点で好ましい。
〔ガラス転移点〕
示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、試料10mg、−30℃〜230℃を昇温および降温速度10℃/分で測定し、セカンド・ランの温度をガラス転移点(℃)とした。
〔ガスバリア性〕
温度23℃、湿度80%RHの条件下で、酸素透過度測定装置(MOCON 社製「OXTRAN」)を用いて酸素透過度(OTR、cc・4μm/m2・day・atm)を測定した。
還流冷却器、滴下漏斗および撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル352質量部、メタノール35質量部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルニレン)52質量部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.12mol%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ重合を行った。
その後、酢酸ビニルの重合率が61%となった時点で、重合禁止剤としてm−ジニトロベンゼン20ppm(対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、重合を終了した。続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により、未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40質量%に調製して、水酸化ナトリウムの2質量%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニルの総量に対して8mmol%となる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。生成したPVA粒子を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、PVA系樹脂を得た。得られたPVA系樹脂の構造単位を下記構造単位(2)に示す。
得られたPVA系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ、240であった。また、上記のPVA系樹脂中のビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンの導入量は、1H−NMR(内部標準物質:テトラメチルシラン、溶媒:d6−DMSO)で測定し、下記の方法で算出した。図1にそのチャートを示す。測定結果から算出された導入量は、前記PVA系樹脂中のビニルアルコール構造単位及びノルボルニレン構造単位の総量に対して6モル%であった。なお、NMR測定にはVarian社製「UNITY−300」を用いた。
1.82〜2.40ppm:メチンプロトン(上記構造単位(2)中のHα、図1における積分値a)
3.45〜3.98ppm:メチンプロトン(上記構造単位(2)中のHβ、図1における積分値b)
〔算出法〕
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン由来のメチンは、1.8〜2.4ppmに帰属され、4つのプロトンが存在するので、1つのプロトンの積分値はa/4である。一方、主鎖のメチンは、3.4〜3.95ppmに帰属されることから、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンの導入量は、導入量(モル%)={(a/4)÷(b+a/4)}×100より算出した。
平均重合度1300、ケン化度99.2モル%のポリビニルアルコールを用いて、実施例1と同様にして積層体を得て、同様の評価を行った。このPVA積層体の物性を表1にまとめた。
エチレン含有量44モル%、MFR(メルトフロレート)が12g/10分のエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いて、実施例1と同様にして積層体を得て、同様の評価を行った。このEVOH積層体の物性を表1にまとめた。
Claims (6)
- ビニルアルコール構造単位と主鎖にビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン由来の構造単位とを有し、該ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン由来の構造単位の含有量が0.1〜30モル%であることを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂。
- ガラス転移点(Tg)が75〜180℃であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂。
- エチレン構造単位を更に有することを特徴とする請求項1又は2記載のポリビニルアルコール系樹脂。
- エチレン構造単位を、樹脂中のモノマー構造単位の総量に対し、1〜70モル%含有することを特徴とする請求項3記載のポリビニルアルコール系樹脂。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリビニルアルコール系樹脂を含有する単層フィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリビニルアルコール系樹脂を含有する層を少なくとも1層有する積層体。
Applications Claiming Priority (2)
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