JP5556789B2 - マルチギャップ型回転電機 - Google Patents
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Description
このダブルステータ型モータは、ロータディスクを介して回転軸に連結される環状のロータと、このロータの径方向内側に配置される内ステータと、ロータの径方向外側に配置される外ステータとを有し、ロータと内外ステータとの間で径方向にダブルギャップを形成することにより、シングルステータ型モータと比較して、高トルクを発生することが可能である。
しかし、これまでは、上記のようなマルチギャップ構造を採用していないのが実情である。その主な理由としては、側面ステータの鉄心を通常の積層鋼板を用いて構成した場合に、積層方向に流れる磁束によって積層面内に渦電流が発生するため、損失が増大して出力を著しく低下させてしまうことにある。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、渦電流による損失を低減して高出力を得ることが可能なマルチギャップ型回転電機を提供することにある。
本発明のマルチギャップ型回転電機は、回転軸に連結されて回転軸と一体に回転する環状のロータと、このロータの径方向外側にギャップを有して配置される外側コア、ロータの径方向内側にギャップを有して配置される内側コア、および、ロータの軸方向一端側にギャップを有して配置される側面コアによって構成されるステータコアと、このステータコアに巻装されるステータコイルとを有し、側面コアは、外側コアの軸方向一端側に連接される側面外コアと、内側コアの軸方向一端側に連接される側面内コアとで構成され、側面外コアは、外側コアの内周端より径方向の内側に突き出て、軸方向にロータの外周側軸方向端面と対向する外側ロータ対向部を有すると共に、この外側ロータ対向部の内周面に開口する複数のスロットが周方向に等間隔に形成されて、周方向に隣合うスロットとスロットとの間にそれぞれ外側ティースを有し、且つ、外側ロータ対向部には、外側ティースの内周端に開口して径方向の外側へ延びる1つまたは複数のスリットが形成され、側面内コアは、内側コアの外周端より径方向の外側に突き出て、軸方向にロータの内周側軸方向端面と対向する内側ロータ対向部を有すると共に、この内側ロータ対向部の外周面に開口する複数のスロットが周方向に等間隔に形成されて、周方向に隣合うスロットとスロットとの間にそれぞれ内側ティースを有し、且つ、内側ロータ対向部には、内側ティースの内周端に開口して径方向の内側へ延びる1つまたは複数のスリットが形成され、側面外コアと側面内コアは、外側ロータ対向部の内周端と内側ロータ対向部の外周端との間にギャップを有して径方向に対向配置されていることを特徴とする。
また、側面コアは、外側コアに連接される側面外コアと、内側コアに連接される側面内コアとに分断されているので、積層鋼板によって構成される側面コアの面内渦電流(側面外コアと側面内コアとを跨ぐ大きな渦電流ループ)を無くすことができる。これにより、加工性、強度、磁気特性、およびコスト等の点で優れる積層鋼板を用いて側面コアを構成しても、渦電流による損失を低減できるので、高出力および高効率なマルチギャップ型回転電機を提供できる。
さらに、外側ティースおよび内側ティースにそれぞれスリットを形成しているので、外側ティースおよび内側ティースの先端部分で局所的に発生する渦電流を小さくできる。これにより、渦電流損を更に低減できるため、より高出力化かつ高効率化を図ることができる。
請求項1に記載したマルチギャップ型回転電機において、外側ティースに形成されるスリットは、外側ティースの内周端に向かって周方向のスリット幅が次第に大きくなるテーパ状に形成され、内側ティースに形成されるスリットは、内側ティースの外周端に向かって周方向のスリット幅が次第に大きくなるテーパ状に形成されていることを特徴とする。 本発明では、外側ティースに形成されるスリットおよび内側ティースに形成されるスリットをそれぞれテーパ状とすることで、プレスによるスリットの加工が容易となる。
また、外側ティースおよび内側ティースは、それぞれ根元が太く、先端に向かって次第に細くなっているため、外部から伝わる振動や磁気吸引力による振動を抑制できる。その結果、ギャップ長の変動による性能の低下、繰り返し振動による強度的劣化、および騒音等を抑えることができる。
請求項1または2に記載したマルチギャップ型回転電機において、ロータの軸方向端面と対向する外側ティースの対向面積は、外側ティースの周方向幅と外側ティースの軸方向幅とを乗算して求められる面積に対し50〜100%の範囲に設定され、ロータの軸方向端面と対向する内側ティースの対向面積は、内側ティースの周方向幅と内側ティースの軸方向幅とを乗算して求められる面積に対し50〜100%の範囲に設定されていることを特徴とする。
上記の構成によれば、磁気飽和による性能低下および不要な磁路断面による渦電流損の増大を防ぐことができ、より高出力化および高効率化を図ることができる。
(請求項4の発明)
請求項1〜3のいずれか一項に記載したマルチギャップ型回転電機において、側面外コアと側面内コアは、周方向の複数個所でブリッジにより連結されていることを特徴とする。
上記の構成によれば、側面外コアと側面内コアとの軸心精度を向上できる。
実施例1では、本発明のマルチギャップ型回転電機を、自動車のエンジンと変速機との間に配設されるエンジン直結型モータに適用した一例を説明する。
このモータ1は、図1に示す様に、エンジンのクランク軸2にロータディスク3を介して連結される環状のロータ4と、このロータ4の外周側と内周側および軸方向の一端側にそれぞれギャップを有して配置されるステータコア(後述する)と、このステータコアに巻装されるステータコイル(後述する)とで構成される。
ロータ4は、例えば、複数のセグメントを円環状に連結したコアプレートを積層して形成される積層コア4aと、この積層コア4aの軸方向一端面に連結される端面コア4bとで構成され、ロータディスク3にボルト5等で固定される。
外側コア6は、円環状に打ち抜かれた電磁鋼板を積層して形成され、図2(b)に示す様に、内周面に複数のスロット6aが形成されている。このスロット6aは、図3に示す様に、外側コア6の内周面に開口して、周方向に等間隔に形成され、周方向に隣合うスロット6aとスロット6aとの間にティース6bが設けられている。
内側コア7は、円環状に打ち抜かれた電磁鋼板を積層して形成され、図2(b)に示す様に、外周面に複数のスロット7aが形成されている。このスロット7aは、図3に示す様に、内側コア7の外周面に開口して、周方向に等間隔に形成され、周方向に隣合うスロット7aとスロット7aとの間にティース7bが設けられている。なお、本実施例では、外側コア6のスロット数と内側コア7のスロット数とが同数に設定されている。
側面外コア8は、図4に示す様に、外径が外側コア6と同一であり、内径が外側コア6より小さく形成され、外側コア6の内周端より径方向の内側へ突き出る部分が、ロータ4の外周側の軸方向端面とギャップを有して軸方向に対向する本発明の外側ロータ対向部を形成している。
上記の側面外コア8と側面内コア9は、図4に示す様に、外側ロータ対向部(外側ティース8b)の内周端と、内側ロータ対向部(内側ティース9b)の外周端との間にギャップδを有して径方向に対向配置されている。
また、内側ロータ対向部を構成する内側ティース9bには、図6に示す様に、径方向の外周端に開口して径方向の内側(図示下側)へ延びるスリット9cが形成されている。このスリット9cは、内側ティース9bの内周側から外周端に向かって周方向のスリット幅が次第に大きくなるテーパ状に形成されている。
また、ステータコイルは、図5に示す様に、外側コイル10と内側コイル11とを連結する側面コイル12を設けることもできる。この図5に示すステータコイルは、径方向の断面形状が略コの字状(図5では逆コの字状)の円筒体に成形され、ステータコアの各スロット6a、7a、8a、9aに対し、図示右側から軸方向に挿入することにより、容易にステータコアに組み付けることができる。
実施例1に記載したモータ1は、ロータ4の内周面と内側コア7との間、および、ロータ4の外周面と外側コア6との間に形成される内外二つの径方向ギャップと、ロータ4の軸方向端面と側面コア8、9との間に形成される軸方向ギャップとで三面ギャップを形成している。これにより、特許文献1に記載された二面ギャップのダブルステータ型モータと比較して、トルクを発生する面積が増加するため、高出力化を実現できる。
また、外側ティース8bのスリット8cおよび内側ティース9bのスリット9cは、それぞれ外側ティース8bおよび内側ティース9bの先端に向かってスリット幅が大きくなるテーパ状に形成されるので、プレスによるスリット8c、9cの加工が容易である。
なお、実施例1では、外側ティース8bおよび内側ティース9bにそれぞれスリット8c、9cを1本ずつ形成しているが、スリット8c、9cを1本に限定する必要はなく、例えば、図7に示す様に、スリット8c、9cを複数本(図6では2本)形成しても良い。あるいは、図8に示す様に、スリット8c、9cを廃止することもできる。
図9は、側面コアが側面外コア8と側面内コア9とに分離されていない一体型のモデルAと、側面コアが側面外コア8と側面内コア9とに分離されているモデルB、C、Dとで渦電流損の大きさを比較したシミュレーション結果である。なお、モデルBは、外側ティース8bおよび内側ティース9bにスリット8c、9cを形成していないタイプ。モデルCは、外側ティース8bおよび内側ティース9bにスリット幅一定のスリット8c、9cを2本形成したタイプ。モデルDは、外側ティース8bおよび内側ティース9bにテーパ状のスリット8c、9cを形成したタイプである。
図9に示す結果からも明らかな様に、側面コアが分離されていない一体型のモデルAと比較して、側面コアを側面外コア8と側面内コア9とに分離したモデルB、C、Dの方が渦電流損を小さくできる。特に、外側ティース8bおよび内側ティース9bにスリット8c、9cを形成したモデルC、Dでは、渦電流損の低減効果が顕著である。
この実施例2は、ロータ4の軸方向端面と対向する外側ロータ対向部(外側ティース8b)の対向面積および内側ロータ対向部(内側ティース9b)の対向面積を所定の範囲に設定する一例である。
図10に示す様に、ロータ4の軸方向端面に対向する外側ティース8bの対向面積(図中にハッチングを入れた領域の面積)をSo、外側ティース8bの周方向幅をWo、外側ティース8bの軸方向幅をho、外側ティース8bの周方向幅Woと外側ティース8bの軸方向幅hoとを乗算して求められる面積をS1とすると、下記(1)式が成立する。
50%≦(So/S1)×100≦100%………………………(1)
すなわち、ロータ4の軸方向端面に対向する外側ティース8bの対向面積Soは、外側ティース8bの周方向幅Woと外側ティース8bの軸方向幅hoとを乗算して求められる面積S1に対し、50〜100%の範囲に設定されている。
50%≦(Si/S2)×100≦100%………………………(2)
すなわち、ロータ4の軸方向端面と対向する内側ティース9bの対向面積Siは、内側ティース9bの周方向幅Wiと内側ティース9bの軸方向幅hiとを乗算して求められる面積S2に対し、50〜100%の範囲に設定されている。
上記の様に、外側ティース8bおよび内側ティース9bの断面比をそれぞれ50〜100%の範囲に設定することにより、磁気飽和による性能低下および不要な磁路断面による渦電流損の増大を防ぐことができ、より高出力化および高効率化を図ることができる。
この実施例3は、図13に示す様に、側面外コア8と側面内コア9とをブリッジ13によって連結する一例である。ブリッジ13は、周方向に等間隔(例えば電気角2πピッチ)に設けられ、図14に示す様に、側面外コア8の外側ティース8bと側面内コア9の内側ティース9bとを連結している。
なお、図13、図14に示すブリッジ13は、周方向に同位置に配設される外側ティース8bと内側ティース9bとを連結しているが、必ずしも周方向に同位置のティース同士を連結する必要はなく、周方向に位置が異なる外側ティース8bと内側ティース9bとを連結しても良い。
上記の構成によれば、側面外コア8と側面内コア9との軸心精度を向上できる。
この実施例4は、図15に示す様に、側面外コア8と側面内コア9とを連結部材14によって連結固定する一例である。
連結部材14は、例えば、金属プレートを円環状にプレスして成形され、径方向の外周端面が、側面外コア8のスロット底部より径方向外側の軸方向端面に固定され、径方向の内周端面が、側面内コア9のスロット底部より径方向内側の軸方向端面に固定されて、側面外コア8と側面内コア9とを機械的に連結している。
この実施例4の構成においても、実施例3と同様に、側面外コア8と側面内コア9との軸心精度を向上できる。
2 クランク軸(回転軸)
4 ロータ
6 外側コア(ステータコア)
7 内側コア(ステータコア)
8 側面外コア(側面コア、ステータコア)
8a 側面外コアのスロット
8b 外側ティース(外側ロータ対向部)
8c 外側ティースに形成されたスリット
9 側面内コア(側面コア、ステータコア)
9a 側面内コアのスロット
9b 内側ティース(内側ロータ対向部)
9c 内側ティースに形成されたスリット
10 外側コイル(ステータコイル)
11 内側コイル(ステータコイル)
12 側面コイル(ステータコイル)
13 ブリッジ
14 連結部材
So 外側ティースの対向面積
Wo 外側ティースの周方向幅
ho 外側ティースの軸方向幅
Si 内側ティースの対向面積
Wi 内側ティースの周方向幅
hi 内側ティースの軸方向幅
Claims (4)
- 回転軸に連結されて前記回転軸と一体に回転する環状のロータと、
このロータの径方向外側にギャップを有して配置される外側コア、前記ロータの径方向内側にギャップを有して配置される内側コア、および、前記ロータの軸方向一端側にギャップを有して配置される側面コアによって構成されるステータコアと、
このステータコアに巻装されるステータコイルとを有し、
前記側面コアは、
前記外側コアの軸方向一端側に連接される側面外コアと、
前記内側コアの軸方向一端側に連接される側面内コアとで構成され、
前記側面外コアは、前記外側コアの内周端より径方向の内側に突き出て、軸方向に前記ロータの外周側軸方向端面と対向する外側ロータ対向部を有すると共に、この外側ロータ対向部の内周面に開口する複数のスロットが周方向に等間隔に形成されて、周方向に隣合う前記スロットと前記スロットとの間にそれぞれ外側ティースを有し、且つ、前記外側ロータ対向部には、前記外側ティースの内周端に開口して径方向の外側へ延びる1つまたは複数のスリットが形成され、
前記側面内コアは、前記内側コアの外周端より径方向の外側に突き出て、軸方向に前記ロータの内周側軸方向端面と対向する内側ロータ対向部を有すると共に、この内側ロータ対向部の外周面に開口する複数のスロットが周方向に等間隔に形成されて、周方向に隣合う前記スロットと前記スロットとの間にそれぞれ内側ティースを有し、且つ、内側ロータ対向部には、前記内側ティースの内周端に開口して径方向の内側へ延びる1つまたは複数のスリットが形成され、
前記側面外コアと前記側面内コアは、前記外側ロータ対向部の内周端と前記内側ロータ対向部の外周端との間にギャップを有して径方向に対向配置されていることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。 - 請求項1に記載したマルチギャップ型回転電機において、
前記外側ティースに形成されるスリットは、前記外側ティースの内周端に向かって周方向のスリット幅が次第に大きくなるテーパ状に形成され、
前記内側ティースに形成されるスリットは、前記内側ティースの外周端に向かって周方向のスリット幅が次第に大きくなるテーパ状に形成されていることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。 - 請求項1または2に記載したマルチギャップ型回転電機において、
前記ロータの軸方向端面と対向する前記外側ティースの対向面積は、前記外側ティースの周方向幅と前記外側ティースの軸方向幅とを乗算して求められる面積に対し50〜100%の範囲に設定され、
前記ロータの軸方向端面と対向する前記内側ティースの対向面積は、前記内側ティースの周方向幅と前記内側ティースの軸方向幅とを乗算して求められる面積に対し50〜100%の範囲に設定されていることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載したマルチギャップ型回転電機において、
前記側面外コアと前記側面内コアは、周方向の複数個所でブリッジにより連結されていることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
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