<第1の実施形態>
以下、本発明にかかるミラー装置を、車両のドアに設けられるアウタミラー(ドアミラー)に適用した第1の実施形態について図1〜図11を参照して説明する。はじめに、図1〜図3を参照して、本実施形態にかかるミラー装置の概要について説明する。図1は、車両の斜視構造を示したものである。また、図2(a),(b)は、アウタミラーの平面構造及び側面構造をそれぞれ示したものである。
図1に示されるように、このミラー装置は、大きくは、車両ドアに取り付けられるハウジング1と、同ハウジング1の開口部分に配設されるミラー2とを備えている。ここで、図2(a),(b)に示されるように、ミラー2の背面には、半球状の支持部2aが一体的に取り付けられており、ミラー2は、この支持部2aを介してハウジング1によって揺動可能に支持されている。そして、このミラー装置では、運転席の近傍に設けられた調整スイッチ(図示略)をユーザが操作すると、ミラー2が図中の中心点Oを中心に矢印aで示される左右方向、及び矢印bで示される上下方向の4方向に揺動する。すなわち、調整スイッチを操作することによって、ミラー2の向きを4方向に変更することが可能となっている。また、調整スイッチの近傍には、登録スイッチ及び復帰スイッチがそれぞれ設けられており(図示略)、登録スイッチを運転者がオン操作すると、現在のミラー2の位置が登録位置として登録される。そしてこのようにして登録位置が一旦登録されて以降は、運転者が復帰スイッチをオン操作すると、ミラー2が登録位置まで自動的に復帰する。
図3は、このミラー装置の電気的な構成をブロック図として示したものであり、次に、同図3を参照して、同ミラー装置の構成、動作について説明する。
同図3に示されるように、このミラー装置には、適宜のアクチュエータを介してミラー2を左右方向に揺動させるモータM1とともに、同モータM1を駆動させる駆動回路10が設けられている。また、このミラー装置には、適宜のアクチュエータを介してミラー2を上下方向に揺動させるモータM2とともに、同モータM2を駆動させる駆動回路20が設けられている。なお、モータM1,M2の電源(電源電圧「+B」)は、車載バッテリから供給される。
また、このミラー装置には、その動作状態を検出するための各種センサが設けられている。例えば、モータM1には、同モータM1に印加される電圧を検出するための電圧センサ11が電気的に並列に接続されるとともに、同モータM1を流れる電流を検出するための電流センサ12が電気的に直列に接続されている。また、モータM2にも、同モータM2に印加される電圧を検出するための電圧センサ21が電気的に並列に接続されるとともに、同モータM2を流れる電流を検出するための電流センサ22が電気的に直列に接続されている。さらに、このミラー装置には、ミラー2の左右方向の位置を検出する位置検出手段としての左右位置センサ13や、ミラー2の上下方向の位置を検出する位置検出手段としての上下位置センサ23も設けられている。ちなみに、左右位置センサ13は、先の図2(a)に示されるように、中心点Oを通って且つ、ミラー2の鏡面に垂直な軸線をmとするとき、同軸線mの図中の位置を基準位置として、同基準位置からの軸線mの左右方向の揺動角度θaを検出する。また、上下位置センサ23は、先の図2(b)に示されるように、同じく軸線mの図中の位置を基準位置として、同基準位置からの軸線mの上下方向の揺動角度θbを検出する。
そして、図3に示されるように、これら各センサを含め、前述した調整スイッチ31、登録スイッチ32、及び復帰スイッチ33の出力が、制御手段としての制御装置30に取り込まれている。この制御装置30は、演算処理装置(CPU)や不揮発性メモリ30aなどを有するマイクロコンピュータを備えて、駆動回路10,20を介してモータM1,M2の駆動を制御する部分である。すなわち、制御装置30は、調整スイッチ31の出力に基づいて同スイッチ31に対する操作を検出するとともに、検出された操作に基づきモータM1,M2を駆動させて上記ミラー2を4方向に揺動させる。また、登録スイッチ32がオン操作された旨を検知した場合には、各位置センサ13,23を通じて現在のミラー2の左右方向の位置及び上下方向の位置をそれぞれ検出するとともに、検出した位置を左右方向登録位置及び上下方向登録位置として不揮発性メモリ30aにそれぞれ記憶させる。さらに、制御装置30は、復帰スイッチ33がオン操作された旨を検知した場合には、不揮発性メモリ30aから左右方向登録位置及び上下方向登録位置をそれぞれ読み込むとともに、読み込んだ登録位置を目標位置として、モータM1,M2を駆動させてミラー2を目標位置まで揺動させる制御を行う。この制御は、基本的には、以下のようにして行われる。
制御装置30は、まず、モータM1を駆動させてミラー2を左右方向登録位置まで揺動させる制御を実行した後、モータM2を駆動させてミラー2を上下方向登録位置まで揺動させる制御を実行する。ここで、前者の制御では、ミラー2の現在の位置から左右方向登録位置までの経路上において、左右方向登録位置から一定角度だけ手前の位置を演算し、演算された位置をモータ停止位置に設定する。なお、一定角度の値は不揮発性メモリ30aに予め記憶されている。また、制御装置30は、こうしてモータ停止位置を設定した後、上記駆動回路10を通じてモータM1への給電を行い、ミラー2を左右方向登録位置に向かって揺動させる。その後、ミラー2の左右方向の位置がモータ停止位置に達した時点で、駆動回路10を通じてのモータM1への給電を停止する。このとき、モータM1は給電停止後も慣性により若干駆動するため、ミラー2はモータ停止位置から左右方向登録位置に向かって揺動する。
また、制御装置30は、こうしてミラー2を左右方向登録位置まで揺動させた後、今度はモータM2を駆動させてミラー2を上下方向登録位置まで揺動させる制御を同様に行う。これにより、ミラー2が登録位置まで揺動することとなる。なお、以下では、便宜上、モータM1の駆動を通じてミラー2を左右方向登録位置まで揺動させる制御についてのみ説明し、モータM2の駆動を通じてミラー2を上下方向登録位置まで揺動させる制御については同様のものとしてその説明を割愛する。
ところで、こうしたミラー装置にあっては、例えば個々の装置の構造の差異や動作環境(例えば温度)などによってモータの慣性によりミラーが揺動する角度にばらつきが生じるため、これに起因してミラー2の実際の停止位置と登録位置との間に位置ずれが生じるおそれがある。
そこで本実施形態では、ミラー2を左右方向登録位置まで揺動させる制御を行った際に、ミラー2が実際に停止した左右方向の位置を上記左右位置センサ13を通じて検出するとともに、検出したミラー2の実停止位置と左右方向登録位置との位置ずれを求めるようにしている。そして、制御装置30は、この位置ずれを補正値として、同補正値に基づいてモータ停止位置θsの補正を行う。また、ミラー2を左右方向登録位置まで揺動させる制御を行う都度、ミラー2の実停止位置と左右方向登録位置との位置ずれに基づいて補正値を学習する。
一方、モータM1の動作電圧と、モータM1の慣性によりミラー2が揺動する角度との間には、前述のように、モータM1の動作電圧が大きくなるほど、モータM1の慣性によりミラー2が揺動する角度が大きくなるといった相関関係がある。また、こうしたミラー装置にあっては、通常、モータM1の内部の摺動抵抗が大きくなるほど、モータM1の慣性によりミラー2が揺動する角度が小さくなる。そしてこのようにモータM1の内部の摺動抵抗が大きい状況では、モータM1の動作電流が大きくなる。すなわち、モータM1の動作電流と、モータM1の慣性によりミラー2が揺動する角度との間には、モータM1の動作電流が大きくなるほど、モータM1の慣性によりミラー2が揺動する角度が小さくなるといった相関関係がある。したがって、ミラー2を左右方向登録位置で正確に停止させるためには、その都度のモータM1の動作電圧及び動作電流に基づいてモータ停止位置を補正することが望ましい。
そこで本実施形態では、ミラー2を左右方向登録位置まで揺動させる制御を行う都度、電圧センサ11及び電流センサ12を通じて検出される電圧及び電流に基づいてモータM1の動作電圧及び動作電流を算出するようにしている。そして制御装置30は、次回にミラー2を左右方向登録位置まで揺動させる制御を行う際に、前回のモータM1の動作電圧と今回のモータM1の動作電圧との差分を演算することで、モータM1の動作電圧の変化量を求める。また、前回のモータM1の動作電流と今回のモータM1の動作電流との差分を演算することで、モータM1の動作電流の変化量も求める。さらに制御装置30は、こうして求めたモータM1の動作電圧の変化量及び動作電流の変化量に基づいて補正値を演算し、演算された補正値に基づいてモータ停止位置の補正を行う。
図4〜図7は、制御装置30を通じて実行される、ミラー2の左右方向の実停止位置と左右方向登録位置との位置ずれを算出する処理、及びモータM1の駆動を通じてミラー2を左右方向登録位置まで揺動させる制御の手順をそれぞれフローチャートとして示したものである。
はじめに、図4を参照して、ミラー2の左右方向の実停止位置と左右方向登録位置との位置ずれを算出する処理について説明する。なおこの処理は、実際には、上記復帰スイッチ33がオン操作された旨が検知されたときに実行される。
同図4に示されるように、この処理では、はじめに、不揮発性メモリ30aに記憶された左右方向登録位置θtが読み込まれた後(ステップS1)、読み込んだ左右方向登録位置θtから一定角度θmを減算することで、モータ停止位置θs(=θt−θm)が演算される(ステップS2)。そして、続くステップS3の処理として、モータM1の動作電圧・動作電流が算出される。ここで、このモータM1の動作電圧・動作電流は図5に示す処理を通じて算出される。
すなわち、同図5に示されるように、この処理ではまず、左右位置センサ13を通じて検出されるミラー2の左右方向の位置に基づいて、ミラー2がモータ停止位置θsよりも所定角度θα(>0)だけ手前の位置まで揺動したか否かが監視される(ステップS30)。ここで、ミラー2がモータ停止位置θsよりの所定角度θαだけ手前の位置まで揺動した旨が検知された場合には(ステップS30:YES)、ステップS31の処理が実行される。すなわち、ミラー2がモータ停止位置θsよりも所定角度θβ(<θα)だけ手前の位置に揺動するまでの期間、電圧センサ11及び電流センサ12を通じてモータM1に印加される電圧及びモータM1を流れる電流が所定の周期をもって検出される。そして、続くステップS32の処理として、電圧センサ11を通じて検出された電圧の時系列的なデータからその平均値が演算されて、演算された電圧の平均値がモータM1の動作電圧Vaとされる。また、電流センサ12を通じて検出された電流の時系列的なデータからその平均値が演算されて、演算された電流の平均値がモータM1の動作電流Iaとされる(ステップS33)。すなわち、本実施形態では、この図5に示す処理が動作電圧検出手段及び動作電流検出手段となる。
こうしてモータM1の動作電圧Va及び動作電流Iaが算出された後、図4に示すステップS4の処理として、ミラー2が停止したか否かが監視される。このステップS4の処理では、具体的には、上記左右位置センサ13を通じて検出されるミラー2の左右方向の位置が所定時間以上変化していない旨が検知されることをもって、ミラー2が停止した旨が判断される。そして、ミラー2が停止した旨が検知された場合には(ステップS4:YES)、左右位置センサ13を通じて検出されるミラー2の左右方向の位置を実停止位置として、同実停止位置と左右方向登録位置θtとの位置ずれθgが算出される(ステップS5)。また、続くステップS6の処理として、ステップS3及びステップS5の処理を通じて算出された位置ずれθg、モータM1の動作電圧Va、及び動作電流Iaの情報が、前回の位置ずれθgb、動作電圧Vab、動作電流Iabとして不揮発性メモリ30aに記憶されて、制御装置30この一連の処理を終了する。
次に図6を参照して、モータM1の駆動を通じてミラー2を左右方向登録位置まで揺動させる制御について説明する。なおこの制御も、実際には、上記復帰スイッチ33がオン操作された旨が検知されたときに実行される。
同図6に示されるように、この制御では、はじめに、不揮発性メモリ30aに記憶された左右方向登録位置θtが読み込まれた後(ステップS10)、読み込んだ左右方向登録位置θtから一定角度θmを減算することで、モータ停止位置θs(=θt−θm)が演算される(ステップS11)。そして、続くステップS12の処理として、ミラー2を左右方向登録位置θtに向けて揺動させるべく、駆動回路10を通じてモータM1への給電が開始された後、不揮発性メモリ30aに前回のモータM1の動作電圧Va及び動作電流Iaの情報が記憶されているか否かが判断される(ステップS13)。ここで、例えば車両製造後に初めて復帰スイッチ33がオン操作された状況など、不揮発性メモリ30aにモータM1の動作電圧Va及び動作電流Iaの情報が未だ記憶されていない場合には(ステップS13:NO)、ステップS14の処理が実行される。すなわち、メーカにより予め定められているモータM1の定格電圧に基づいて補正値Δθv1がマップ演算されるとともに、モータM1の定格電流に基づいて補正値Δθi1がマップ演算される。ここで本実施形態では、制御装置30の不揮発性メモリ30aに、モータM1の定格電圧と補正値Δθv1との関係を示すマップが図8(a)に示すようなマップとして、また、モータM1の定格電流と補正値Δθi1との関係が図8(b)に示すようなマップとしてそれぞれ記憶されている。すなわち、このステップS14の処理では、これら図8(a),(b)に示すマップを用いて各補正値Δθv1,Δθi1がマップ演算される。ちなみに、本実施形態では、モータM1の動作電圧が大きくなるほど、モータM1の慣性によりミラー2が揺動する角度が大きくなることを考慮して、図8(a)に示すマップでは、モータの定格電圧が大きくなるほど、補正値Δθv1が大きくなるように設定されている。また、モータM1の動作電流が大きくなるほど、モータM1の慣性によりミラー2が揺動する角度が小さくなることを考慮して、図8(b)に示すマップでは、モータM1の定格電流が大きくなるほど、補正値Δθi1が小さくなるように設定されている。そしてこのステップS14の処理に続いて、次式(1)に基づいて停止位置補正値Δθの初期値が演算される(ステップS15)。
Δθ←Δθv1+Δθi1・・・(1)
また、こうして停止位置補正値Δθが演算されると、次式(2)に基づいてモータ停止位置θsが補正される(ステップS16)。
θs←θs−Δθ・・・(2)
そして、続くステップS17の処理として、上記左右位置センサ13を通じて検出されるミラー2の左右方向の位置に基づいてミラー2がモータ停止位置θsまで揺動したか否かが監視される。ここで、ミラー2がモータ停止位置θsまで揺動した旨が検知された場合には(ステップS17:YES)、駆動回路10を通じてのモータM1への給電が停止されて(ステップS18)、制御装置30はこの一連の処理を終了する。
一方、ステップS13の判断処理において、不揮発性メモリ30aにモータM1の動作電圧Va及び動作電流Iaの情報が記憶されている旨が判断された場合には(ステップS13:YES)、図7に示されるように、先の図5に例示した処理を通じてモータM1の動作電圧Va及び動作電流Iaが算出される(ステップS20)。そして、続くステップS21の処理として、検出された今回の動作電圧Va及び動作電流Iaが、不揮発性メモリ30aに記憶されている前回の動作電圧Vab及び動作電流Iabとそれぞれ一致するか否かが判断される。ここで、今回の動作電圧Va及び動作電流Iaと前回の動作電圧Vab及び動作電流Iabとがそれぞれ一致する旨が判断された場合には(ステップS21:YES)、不揮発性メモリ30aから前回の位置ずれθgbが読み込まれて、次式(3)に基づいて停止位置補正値Δθが算出される(ステップS22)。
Δθ←Δθ−θgb・・・(3)
また、こうして停止位置補正値Δθが算出されると、図6に示されるように、上記ステップS16〜18の処理が実行されて、制御装置30はこの一連の処理を終了する。
また一方、先の図7に示されるように、ステップS21の処理において、今回の動作電圧Vaと前回の動作電圧Vaとが互いに一致しない旨が判断された場合、あるいは今回の動作電流Iaと前回の動作電流Iaとが互いに一致しない旨が判断された場合には(ステップS21:NO)、ステップS23及びS24の処理が実行される。すなわち、今回の動作電圧Vaとその前回値Vabとの差分を演算することで動作電圧の変化量ΔVa(=Va−Vab)が算出されるとともに(ステップS23)、今回の動作電流Iaとその前回値Iabとの差分を演算することで動作電流の変化量ΔIa(=Ia−Iab)が算出される(ステップS24)。そして、続くステップS25の処理として、動作電圧の変化量ΔVaに基づいて補正値Δθv2がマップ演算されるとともに、動作電流の変化量ΔIaに基づいて補正値Δθi2がマップ演算される。ここで、本実施形態では、制御装置30の不揮発性メモリ30aに、動作電圧の変化量ΔVaと補正値Δθv2との関係を示すマップが図9(a)に示すようなマップとして、また、動作電流の変化量ΔIaと補正値Δθi2との関係を示すマップが図9(b)に示すようなマップとしてそれぞれ記憶されている。すなわち、このステップS31の処理では、これら図9(a),(b)に示すマップを用いて各補正値Δθv2,Δθi2がマップ演算される。ちなみに、図9(a)に示すマップでは、モータM1の動作電圧が大きくなるほど、モータM1の慣性によりミラー2が揺動する角度が大きくなることを考慮して、動作電圧の変化量ΔVaが大きくなるほど、補正値Δθv2が大きくなるように設定されている。また、図9(b)に示すマップでは、モータM1の動作電流が大きくなるほど、モータM1の慣性によりミラー2が揺動する角度が小さくなることを考慮して、動作電流の変化量ΔIaが大きくなるほど、補正値Δθi2が小さくなるように設定されている。そしてこのステップS25の処理に続いて、不揮発性メモリ30aから前回の位置ずれθgbが読み込まれて、次式(4)に基づいて停止位置補正値Δθが算出される(ステップS26)。
Δθ←Δθ−θgb−Δθv2−Δθi2
また、こうして停止位置補正値Δθが算出されると、先の図6に示されるように、上記ステップS16〜18の処理が実行されて、制御装置30はこの一連の処理を終了する。
次に、図10及び図11を参照して、これらの処理及び制御に基づきミラー2が左右方向登録位置まで揺動する様子について説明する。なおここでは、ミラーの現在の左右方向の揺動位置が位置θp1であるとともに、ミラー2の左右方向登録位置がθtに設定されている場合について例示している。
例えばいま、車両オーナが復帰スイッチ33をオン操作したとすると、図10(b)に示されるように、復帰スイッチ33のオン操作が行われた時刻t1の時点からモータM1への給電が開始される。またこのとき、図10(a)に示されるように、左右方向登録位置θtから一定角度θmだけ手前の位置がモータ停止位置θsに設定される。ここで、モータM1の動作電圧Va及び動作電流Iaの情報が不揮発性メモリ30aに未だ記憶されていない場合には、モータM1の定格電圧及び定格電流に基づいてモータ停止位置θsが例えば図中の位置θs1に補正される。その後、ミラー2がモータ停止位置θsよりも所定角度θαだけ手前の位置θ1まで揺動すると、その時点(時刻t2)から、電圧センサ11及び電流センサ12を通じて電圧及び電流が所定の周期をもって検出される。そして、これら電圧及び電流の検出は、ミラー2がモータ停止位置θsよりも所定角度θβだけ手前の位置θ2に揺動するまでの期間、継続される。そして、この時刻t3の時点で、電圧センサ11を通じて検出された電圧からモータM1の動作電圧が算出されるとともに、電流センサ12を通じて検出された電流からモータM1の動作電流が算出される。その後、ミラー2がモータ停止位置θs1まで揺動する時刻t4の時点で、図10(b)に示されるように、モータM1への給電が停止される。このとき、モータM1は給電停止後も慣性により若干駆動するため、図10(a)に示されるように、ミラー2はモータ停止位置θs1から左右方向登録位置θtに向かって揺動することとなる。そして、ミラー2が停止する時刻t5の時点で、左右位置センサ13を通じてミラー2の実停止位置θp2が検出されるとともに、同実停止位置θp2と左右方向登録位置θtとの位置ずれθgが算出される。また、これら算出された位置ずれθg、モータM1の動作電圧Va及び動作電流Iaが、前回の位置ずれθgb、動作電圧Vab、動作電流Iabとして制御装置30の不揮発性メモリ30aに記憶される。
その後、例えば他人が車両を使用した際にミラー2の左右方向の位置を位置θp3まで揺動させたとするときに、車両オーナがミラー2の位置を登録位置に戻そうとして復帰スイッチ33をオン操作したとすると、このミラー装置は図11に示すように動作する。まず、図11(b)に示されるように、復帰スイッチ33がオン操作された時刻t10の時点からモータM1への給電が開始されて、図11(a)に示されるように、ミラー2が左右方向登録位置θtに向かって揺動する。そしてこのときにも、ミラー2の揺動位置が位置θ1に達する時刻t11から、位置θ2に達する時刻t12までの期間、電圧センサ11及び電流センサ12を通じて電圧及び電流が検出されて、検出された電圧及び電流に基づいてモータM1の動作電圧Va及び動作電流Iaがそれぞれ算出される。ここで、例えば今回のモータM1の動作電圧Va及び動作電流Iaが、前回の動作電圧Vab及び動作電流Iabと一致しない場合には、動作電圧の変化量ΔVa及び動作電流の変化量ΔIaに基づいて上記補正値Δθv2,Δθi2がマップ演算される。そして、これら補正値Δθv2,Δθi2、及び前回の位置ずれθgに基づいて、モータ停止位置θsが図中の位置θs2に補正される。その後、ミラー2がモータ停止位置θs2まで揺動する時刻t13の時点で、図11(b)に示されるように、モータM1への給電が停止される。これにより、モータM1の慣性によってミラー2が左右方向登録位置θtに向かって揺動したときに、ミラー2が左右方向登録位置θtで停止する。
ちなみに、図11に示すようにミラー2の揺動制御が行われる際にも、ミラー2の実停止位置と左右方向登録位置θtとの位置ずれθgが算出されて、算出された位置ずれθg、並びにモータM1の動作電圧Va及び動作電流Iaが、前回の位置ずれθgb、動作電圧Vab、動作電流Iabとして制御装置30の不揮発性メモリ30aに記憶される。したがって、仮に今回の制御でミラー2が左右方向登録位置θtで停止しなかった場合であっても、次回にミラー2を左右方向登録位置θtに揺動させる制御を実行する際には、モータ停止位置θsが適切に補正されるため、ミラー2を左右方向登録位置θtで確実に停止させることができる。
ミラー装置としてのこうした構成によれば、例えば各装置の構造の差異や動作環境などに起因してミラー2に位置ずれが生じるような状況であっても、その位置ずれに基づいて停止位置補正値が学習される。このため、ミラー2の位置ずれを反映するかたちでモータ停止位置が補正されるため、ミラー2を目標位置で確実に停止させることができるようになる。また、モータM1の動作電圧及び動作電流が変化するような状況であっても、その都度のモータM1の動作電圧及び動作電流に応じてモータ停止位置が補正される。これにより、モータM1の慣性を利用してミラー2を揺動させる場合であれ、ミラー2を目標位置で確実に停止させることができるため、ミラー2の左右方向の位置ずれを抑制することができるようになる。
なお、ミラー2の上下方向の位置ずれについても同様に抑制することが可能であることは言うまでもない。
以上説明したように、本実施形態にかかるミラー装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)モータM1,M2の動作電圧の変化量ΔVa及び動作電流の変化量ΔIaに基づいて停止位置補正値Δθを演算するとともに、同補正値Δθに基づいてモータ停止位置を補正することとした。これにより、モータM1,M2の動作電圧Va、あるいは動作電流Iaが変化するような状況であっても、その都度のモータM1,M2の動作電圧及び動作電流に応じてモータ停止位置が補正されるため、ミラー2の位置ずれを抑制することができるようになる。
(2)ミラー2の実際の停止位置と登録位置との位置ずれに基づいて停止位置補正値Δθを学習するとともに、同停止位置補正値Δθに基づいてモータ停止位置を補正することとした。これにより、個々のミラー装置の構造の差異や動作環境などに起因してミラー2の位置ずれが生じるような状況であっても、これを反映するかたちでモータ停止位置が補正されるため、ミラー2の位置ずれをより的確に抑制することができるようになる。
(3)モータM1,M2の動作電圧の変化量ΔVa及び動作電流の変化量ΔIaに基づいて補正値Δθv2,Δθi2をマップ演算した上で、これら補正値Δθv2,Δθi2に基づいて停止位置補正値Δθを演算することとした。これにより、モータの動作電圧Va及び動作電流Iaのそれぞれの変化を停止位置補正値Δθに容易に反映することができるため、適切なモータ停止位置を容易に求めることができるようになる。
(4)モータM1,M2の動作電圧Va及び動作電流Iaの検出を、モータM1,M2への給電を開始した時点からミラー2がモータ停止位置に揺動するまでの期間に行うこととした。これにより、モータM1,M2の動作電圧Va及び動作電流Iaを精度良く検出することができるようになる。
(5)停止位置補正値Δθの初期値を設定するにあたり、同停止位置補正値Δθを求めるための補正値とモータM1,M2の定格電圧との関係を定めたマップ、及び同じく停止位置補正値Δθを求めるための補正値とモータM1,M2の定格電流との関係を定めたマップによるマップ演算により行うこととした。これにより、適切なモータ停止位置を精度よく、しかも極めて容易に求めることができるようになる。
<第2の実施形態>
続いて、本発明にかかるミラー装置の第2の実施形態について、図12〜図14を参照して説明する。なお、この第2の実施形態もミラー装置としての基本構成は先の図1及び図2に例示した構成に準ずるものであり、ここでは、先の図3に対応する図として、ミラー装置の電気的な構成を図12に示している。また、この図12において、先の図3に示した要素と同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛し、以下では、両者の相違点を中心に説明する。
こうしたミラー装置にあっては、前述のように、車載バッテリからの給電によってモータM1,M2を駆動させているため、モータの動作電圧はバッテリ電圧に応じて定まる。そこで本実施形態では、図12に示されるように、車載バッテリの電圧を検出するバッテリ電圧検出部34を設けた上で、同検出部34を通じて検出されるバッテリ電圧のみに基づいて上記停止位置補正値をマップ演算することとしている。
図13は、先の図6に対応する図として、モータM1の駆動を通じてミラー2を左右方向登録位置まで揺動させる制御についてその処理手順をフローチャートとして示したものである。なおこの制御も、実際には、上記復帰スイッチ33がオン操作された旨が検知されたときに実行される。なお、同図13において、先の図6に示した処理と同一の処理にはそれぞれ同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛する。
同図13に示されるように、この制御では、上記ステップS10〜S12の処理が実行されてモータM1への給電が開始されると、上記バッテリ電圧検出部34を通じてバッテリ電圧Vbが検出されるとともに(ステップS40)、検出されたバッテリ電圧Vbに基づいて停止位置補正値Δθがマップ演算される(ステップS40)。ここで本実施形態では、制御装置30の不揮発性メモリ30aに、バッテリ電圧Vbと停止位置補正値Δθとの関係が図14に示すようなマップとして記憶されており、このステップS40の処理では、同図14に示すマップを用いてバッテリ電圧Vbから停止位置補正値Δθの値がマップ演算される。そして、こうして停止位置補正値Δθが演算されると、上記ステップS16〜S18の処理が実行されて、モータM1への給電が停止される。
ミラー装置としてのこうした構成によれば、バッテリ電圧の変化に伴いモータの動作電圧に変化が生じるような状況であっても、その都度のバッテリ電圧に応じてモータ停止位置が補正される。これにより、モータM1の慣性を利用してミラー2を揺動させる場合であれ、ミラー2を左右方向登録位置で確実に停止させることができるため、ミラー2の左右方向の位置ずれを抑制することができるようになる。
なお、ミラー2の上下方向の位置ずれについても同様に抑制することが可能であることは言うまでもない。
以上説明したように、本実施形態にかかるミラー装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(6)バッテリ電圧Vbに基づいて停止位置補正値Δθを演算するとともに、同補正値Δθに基づいてモータ停止位置を補正することとした。これにより、バッテリ電圧Vbの変化に伴いモータM1,M2の動作電圧に変化が生じるような状況であっても、その都度のバッテリ電圧に応じてモータ停止位置が補正されるため、ミラー2の位置ずれを抑制することができるようになる。
(7)モータM1,M2の動作電圧の検出をバッテリ電圧の検出として行うこととした。これにより、モータM1,M2の動作電圧を容易に検出することができるようになる。
<他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第1の実施形態では、モータM1,M2の定格電圧及び定格電流に基づいて停止位置補正値Δθの初期値を設定することとしたが、これに代えて、停止位置補正値Δθを予め定められた所定値(「0」を含む)に設定してもよい。
・上記第1の実施形態では、モータM1,M2の動作電圧の検出を電圧センサ11,21を通じて行うこととしたが、これに代えて、例えば第2の実施形態のように、それらの動作電圧の検出をバッテリ電圧の検出として行ってもよい。一方、第2の実施形態では、第1の実施形態のように、電圧センサを通じてモータM1,M2の動作電圧を直接検出してもよい。要は、モータM1,M2の動作電圧を直接的に検出する場合であれ、あるいは間接的に検出する場合であれ、モータM1,M2の動作電圧に基づいてモータ停止位置を補正するものであればよい。
・上記第1の実施形態では、ミラー2の実停止位置と登録位置との位置ずれ、モータM1,M2の動作電圧及び動作電流のそれぞれの変化量に基づいて停止位置補正値Δθを演算することとしたが、これに代えて、例えばモータM1,M2の動作電圧及び動作電流のそれぞれの変化量のみに基づいて停止位置補正値Δθを演算してもよい。また、モータM1,M2の動作電圧の変化量のみに基づいて停止位置補正値Δθを演算したり、あるいはモータM1,M2の動作電流の変化量のみに基づいて停止位置補正値Δθを演算してもよい。これらいずれの構成であっても、従来のミラー装置と比較すると、ミラー2の位置ずれを抑制することが可能である。
・モータM1,M2の動作電圧を検出する方法については、例えば電圧センサ11を通じて検出される電圧値をそのままモータM1の動作電圧として用いるなど、適宜の方法を採用することが可能である。また、モータM1,M2の動作電流を検出する方法についても同様に適宜の方法を採用することが可能である。
・上記第2の実施形態では、モータM1,M2への給電を開始した後にバッテリ電圧を検出することとしたが、例えばモータM1,M2への給電を開始する前にバッテリ電圧を検出してもよい。このように、モータM1,M2の動作電圧の検出をバッテリ電圧の検出として行うこととすれば、モータM1,M2が駆動していない状況であっても、モータM1の動作電圧(より詳細にはその推定値)を検出することができるため、動作電圧の検出を容易に行うことが可能となる。
・上記第2の実施形態では、バッテリ電圧のみに基づいて停止位置補正値Δθを演算することとしたが、これに代えて、例えばモータM1,M2の動作電流を検出するセンサを別途設けた上で、同センサを通じて検出されるモータM1,M2の動作電流に基づいて停止位置補正値Δθを更に演算してもよい。なお、モータM1,M2の動作電流に基づく停止位置補正値Δθの演算は例えば次のように行う。まず、モータM1,M2の動作電流と補正値との関係を定めたマップを予め用意した上で、同マップを用いてモータM1,M2の動作電流から補正値をマップ演算する。そして、演算された補正値に基づいて上記停止位置補正値Δθを補正する。このような構成によれば、ミラー2の位置ずれをより的確に抑制することができるようになる。
・本発明にかかるミラー装置は、例えばシフトレバーがリバース位置に操作された際に、車両後方の路面の白線や輪留めなどを視認することのできる所定位置(登録位置)までミラー2を揺動させる、いわゆるリバース連動制御を行うミラー装置にも適用することが可能である。
・本発明にかかるミラー装置は、例えば1つのモータによってミラーを揺動させるミラー装置や、あるいは3つ以上のモータによってモータを揺動させるミラー装置にも適用することが可能である。
・上記各実施形態では、本発明にかかるミラー装置を、車両のアウタミラーを揺動させるミラー装置に適用することとしたが、本発明にかかるミラー装置は、モータの駆動を通じてミラーを揺動させる適宜のミラー装置に適用することが可能である。
<付記>
次に、上記各実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)前記動作電圧の変化に基づく前記補正値の補正が、前記動作電圧の変化が大きいほど、前記補正値を大きくする態様にて行われることを特徴とするミラー装置。こうしたミラー装置にあっては、前述のように、モータの動作電圧と、モータの慣性によりミラーが揺動する角度との間には、モータの動作電圧が大きくなるほど、モータの慣性によりミラーが揺動する角度が大きくなるといった相関関係がある。したがって、上記構成によるように、モータの動作電圧が大きいほど補正値を大きくすることが、ミラーの位置ずれを抑制する上で有効である。
(ロ)前記動作電流の変化に基づく前記補正値の補正が、前記動作電流の変化が大きいほど、前記補正値を小さくする態様にて行われることを特徴とするミラー装置。こうしたミラー装置にあっては、前述のように、モータの動作電流と、モータの慣性によりミラーが揺動する角度との間には、モータの動作電流が大きくなるほど、モータの慣性によりミラーが揺動する角度が小さくなるといった相関関係がある。したがって、上記構成によるように、モータの動作電流が大きいほど補正値を小さくすることが、ミラーの位置ずれを抑制する上で有効である。
(ハ)前記動作電圧検出手段は、前記動作電圧の検出を、前記モータへの給電を開始した時点から前記ミラーが前記モータ停止位置に揺動するまでの期間に行うことを特徴とするミラー装置。同構成によれば、モータの動作電圧あるいは動作電流を精度良く検出することができるようになる。
(ニ)前記動作電流検出手段は、前記動作電流の検出を、前記モータへの給電を開始した時点から前記ミラーが前記モータ停止位置に揺動するまでの期間に行うことを特徴とするミラー装置。同構成によれば、モータの動作電圧あるいは動作電流を精度良く検出することができるようになる。
(ホ)前記動作電圧検出手段は、前記モータの動作電圧の検出を、車載バッテリの電圧を検出することにより行うことを特徴とするミラー装置。こうしたミラー装置にあっては、車載バッテリからの給電によってモータを駆動させているため、モータの動作電圧はバッテリ電圧に応じて定まる。したがって、上記構成によるように、モータの動作電圧の検出を、車載バッテリの電圧を検出することにより行うこととすれば、モータの動作電圧を容易に検出することができるようになる。