JP5553130B2 - フェライト・磁石素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、フェライト・磁石素子、特に、マイクロ波帯で使用されるアイソレータやサーキュレータなどの非可逆回路素子に組み込まれるフェライト・磁石素子及びその製造方法に関する。
従来、アイソレータなどの非可逆回路素子は、予め定められた特定方向にのみ信号を伝送し、逆方向には伝送しない特性を有している。この特性を利用して、例えば、アイソレータは、携帯電話などの移動体通信機器の送信回路部に使用されている。
この種のアイソレータでは、複数の中心電極をフェライトの主面に配置し、該フェライトに永久磁石から直流磁界を印加することで複数の中心電極を結合させている。この場合、永久磁石から発生する磁束の漏れを極力防止することが望ましく、特許文献1に記載のように、軟鉄などの強磁性体に銀めっきを施した金属製のヨークをフェライトと永久磁石の周囲に配置し、これらを接着剤で一体化していた。
しかし、軟鉄などで作製した金属製のヨークは大型化し、フェライトや永久磁石とは独立した個別品として取り扱う必要があり、回路基板上での組立てなどにも手間がかかり量産性に支障を生じている。また、接着剤がヨークの周囲にはみ出してしまうという不具合も生じている。
そこで、本発明の目的は、ヨークを個別品としてではなく、フェライトや永久磁石と一体的に取り扱うことができ、かつ、製造上の歩留まりが向上するフェライト・磁石素子及びその製造方法を提供することにある。
本発明の第1形態であるフェライト・磁石素子は、
対向した一対の主面を有するフェライトと、
前記フェライトの少なくとも一の主面に配置された中心電極と、
前記フェライトの一対の主面にそれぞれ固着された永久磁石と、
前記永久磁石及び前記フェライトの外周面に配置された枠状のヨークと、
前記ヨークの内周面と前記永久磁石及び前記フェライトの外周面との間に配置された接着剤と、
を備え、
前記ヨークは、板状材を一方の開放端面及び他方の開放端面を有する枠状に成形したものであり、一方の開放端面側に外方に折れ曲がった第1のフランジ部を有し、他方の開放端面側に内方に折れ曲がった第2のフランジ部を有し、
前記接着剤は、前記第1及び第2のフランジ部の間に充填されていること、
を特徴とする。
対向した一対の主面を有するフェライトと、
前記フェライトの少なくとも一の主面に配置された中心電極と、
前記フェライトの一対の主面にそれぞれ固着された永久磁石と、
前記永久磁石及び前記フェライトの外周面に配置された枠状のヨークと、
前記ヨークの内周面と前記永久磁石及び前記フェライトの外周面との間に配置された接着剤と、
を備え、
前記ヨークは、板状材を一方の開放端面及び他方の開放端面を有する枠状に成形したものであり、一方の開放端面側に外方に折れ曲がった第1のフランジ部を有し、他方の開放端面側に内方に折れ曲がった第2のフランジ部を有し、
前記接着剤は、前記第1及び第2のフランジ部の間に充填されていること、
を特徴とする。
本発明の第2形態であるフェライト・磁石素子の製造方法は、
対向した一対の主面を有するフェライトの少なくとも一の主面に中心電極を配置し、該フェライトの一対の主面にそれぞれ永久磁石を固着してなるフェライト・磁石素子の製造方法において、
フェライトを一対の永久磁石で挟着した集合基板を作製する工程と、
前記集合基板を短冊状基板にカットする工程と、
長尺状のフープ材にて複数の枠状をなすヨークをつなぎ部で連結した状態で形成する工程と、
長尺状の樹脂製シートと前記フープ材とを重ね合わせる工程と、
前記樹脂製シート上であってそれぞれのヨークの略中央部分に対応する位置に接着剤を供給する工程と、
前記ヨークに前記短冊状基板を挿入し、該短冊状基板の略下半分を前記接着剤に浸漬する工程と、
前記樹脂製シートを前記フープ材から剥離するとともに、前記つなぎ部をカットする工程と、
を備えたことを特徴とする。
対向した一対の主面を有するフェライトの少なくとも一の主面に中心電極を配置し、該フェライトの一対の主面にそれぞれ永久磁石を固着してなるフェライト・磁石素子の製造方法において、
フェライトを一対の永久磁石で挟着した集合基板を作製する工程と、
前記集合基板を短冊状基板にカットする工程と、
長尺状のフープ材にて複数の枠状をなすヨークをつなぎ部で連結した状態で形成する工程と、
長尺状の樹脂製シートと前記フープ材とを重ね合わせる工程と、
前記樹脂製シート上であってそれぞれのヨークの略中央部分に対応する位置に接着剤を供給する工程と、
前記ヨークに前記短冊状基板を挿入し、該短冊状基板の略下半分を前記接着剤に浸漬する工程と、
前記樹脂製シートを前記フープ材から剥離するとともに、前記つなぎ部をカットする工程と、
を備えたことを特徴とする。
前記フェライト・磁石素子において、一体化されたフェライトと一対の永久磁石はその周囲に配置された板状材を枠状に成形したヨークにて囲まれ、該ヨークは永久磁石から発生する磁束の漏れを防止する。ヨークは、一方の開放端面側に外方に折れ曲がった第1のフランジ部を有し、他方の開放端面側に内方に折れ曲がった第2のフランジ部を有しているため、接着剤がヨークから外部へ漏れることが防止され、不良品の発生率が低下(歩留まりが向上)する。
また、ヨークはフェライト・磁石素子の製造工程中にフェライト・磁石素子に組み付けられ、回路基板上での別途組立て工程を必要とすることがなく、非可逆回路素子の量産性が向上する。
本発明によれば、ヨークを個別品としてではなく、フェライトや永久磁石と一体的に取り扱うことができ、ひいては、非可逆回路素子の量産性が向上する。また、製造上の歩留まりが向上する。
以下、本発明に係るフェライト・磁石素子及びその製造方法の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ部材、部分については共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
一実施例であるフェライト・磁石素子30は、図1に示すように、非可逆回路素子を構成する一つの素子であり、非可逆回路素子としては、この素子以外に、図示していない回路基板や外装樹脂、必要に応じて実装されるインダクタやコンデンサを含んでいる。なお、本発明を用いて製造可能なフェライト・磁石素子30(非可逆回路素子)としての基本的な構成は従来から種々の態様があり、集中定数型のアイソレータとしては、前述した特許文献1に記載されている2ポート型のアイソレータを挙げることができる。
この2ポート型のアイソレータ(フェライト・磁石素子30)は、図2に示すように、一対の永久磁石41により直流磁界が印加されるフェライト32と、該フェライト32に互いに絶縁状態で交差して配置された第1中心電極35及び第2中心電極36を備えている。第1中心電極35は、フェライト32に1ターン巻回されており、一端電極35aが入力ポートP1とされ、他端電極35bが出力ポートP2とされている。第2中心電極36は、フェライト32に第1中心電極35と所定の角度で交差した状態で4ターン(ターン数は任意である)巻回されており、一端電極(前記他端電極35bと共用)が出力ポートP2とされ、他端電極36aがグランドポートP3とされている。なお、図2では煩雑さを避けるためにフェライト32の背面側の電極は図示を省略している。
さらに、入力ポートP1と出力ポートP2との間に図示しない終端抵抗が第1中心電極35と並列に接続され、入力ポートP1と出力ポートP2との間に、図示しない第1整合用コンデンサが接続され、出力ポートP2とグランドポートP3との間に図示しない第2整合用コンデンサが接続されている。
そして、第1及び第2中心電極35,36を設けたフェライト32はその両主面を一対の永久磁石41にて接着剤42を介して挟着されたフェライト・磁石素子30として構成されている。前記終端抵抗や前記コンデンサはフェライト・磁石素子30とは別部品として構成されている。
さらに、永久磁石41とフェライト32の外周面に枠状のヨーク50が配置され、ヨーク50の内周面と永久磁石41及びフェライト32の外周面との間に接着剤55が配置されている。ヨーク50は、以下に説明するように磁性体からなるフープ材51(図5参照)を打ち抜いて枠状に成形したもので、上部に外方に折れ曲がった第1のフランジ部50aを有し、下部に内方に折れ曲がった第2のフランジ部50bを有している。接着剤55は第1及び第2のフランジ部50a,50bの間に充填されている。接着剤55としてはエポキシ系樹脂などを素材として好適に用いることができる。ヨーク50は、NiやSPCCなどの磁性体を板状に加工したものであり、永久磁石41から発生する磁束の漏れを防止する。
なお、フェライト32、永久磁石41、接着剤42は従来周知の材料が用いられている。
ところで、ヨーク50はその下部がフェライト・磁石素子30の下面から若干上方に位置して該下面から浮き上がっている。フェライト・磁石素子30はその下面側が実装面となり、電極35a,35b,36aが図示しない回路基板上の端子電極にはんだ付けされることから、ヨーク50が下部まで延在されていると接合用はんだと短絡するおそれがある。このような短絡を防止するため、ヨーク50は実装面に近い部分から離して配置されている。
ここで、フェライト・磁石素子30の製造工程の要部について図3を参照して説明する。まず、図3(A),(B)に示すように、樹脂製シート60上にヨーク50を配置する。このとき、第1のフランジ部50aを樹脂製シート60に密着させ、第2のフランジ部50bを形成した穴部50cを上方に向けて配置する。次に、図3(C)に示すように、樹脂製シート60上であってヨーク50の略中央部分に対応する位置に接着剤55をノズル71から適量塗布する。
次に、図3(D)に示すように、フェライト・磁石素子30を穴部50cからヨーク50内に挿入する。このとき、図3(E)に示すように、接着剤55はフェライト・磁石素子30によって押圧されてヨーク50の内周面に沿って押し広げられる。接着剤55を仮硬化させた後、図3(F)に示すように、素子30及びヨーク50を樹脂製シート60から剥離し、図3(G)に示すように、カッタ72にて第1のフランジ部50aをカットする。なお、フェライト・磁石素子30は、ヨーク50と一体化させる工程において、下面(実装面)を上方に向けた状態で取り扱われる。
図4には、フェライト・磁石素子30の製造工程を示す。まず、図4(A)に示すように、表面に1単位ごとの中心電極35,36をマトリクス状に形成したフェライト32を永久磁石41で挟着した集合基板30Aを作製する。この集合基板30Aは、例えば、1素子30を縦横に70×30個、計2100個をマトリクス状に形成したものである。
次に、図4(B)に示すように、前記集合基板30Aを一点鎖線に沿って1単位の素子30ごとにカットする。カットは円盤状ダイサーを用いて表裏面から2工程で行われる。このように、1単位に切り出された素子30(1単位の短冊状基板)が図3(D),(E)に示したようにヨーク50に挿入される。
また、ヨーク50は、図5に示すように、磁性体からなる長尺状のフープ材51にその長手方向に例えば2列に形成される。フープ材51の両側には搬送/位置決め用のパイロット穴52が形成されており、枠状のヨーク50はつなぎ部53によってフープ材51の基部に結合されている。
次に、フェライト・磁石素子30の全体的な製造工程を模式的に描いた図6を参照して説明する。
図6(A)に工程(1)として示すように、上下に配置したローラ81,82の間を搬送されるコンベアベルト61上に、下部に長尺状樹脂製シート60を、上部にヨーク50を形成した長尺状フープ材51を配置して重ねて貼り合わせ、矢印A方向に搬送する。貼り合わせにはローラ81,82を用いたのはあくまで一例であり、他の機構を用いてもよいことは勿論である。次に、工程(2)として、ノズル71から適量の接着剤55を樹脂製シート60上に塗布する。塗布位置は図3(C)に示されている。
次に、工程(3)として、前述のごとく短冊状基板として切り出され、かつ、図示しないパーツフィーダに整列された1単位の素子30を図示しないマウンタを用いて各ヨーク50に穴部50cから挿入する(図3(E)参照)。なお、パーツフィーダやマウンタは周知であり、その説明は省略する。次に、工程(4)として、接着剤55を仮硬化させる。接着剤55としてエポキシ系樹脂を使用した場合、仮硬化は、例えば、150℃で30分間加熱することによって行われる。
次に、工程(5)として、樹脂製シート60から仮硬化した接着剤55を剥がす。即ち、一体化されたヨーク50と素子30を樹脂製シート60から剥離する。さらに、工程(6)として、素子30を台座62上に載置し、カッタ72にて第1のフランジ部50aをつなぎ部53から切断し、フープ材51から切り離す。さらに、工程(7)として接着剤55を本硬化させる。接着剤55としてエポキシ系樹脂を使用した場合の本硬化は、例えば、150℃で30分間加熱することによって行われる。以上のごとく作製されたフェライト・磁石素子30は、工程(8)として、着磁装置の着磁ヘッド75の間にセットされ、永久磁石41に必要な着磁が行われる。
前記樹脂製シート60はその上で接着剤55を仮硬化させるため、仮硬化温度に耐え得る耐熱性を有することが必要となる。さらに、素子30をマウンタでヨーク50に挿入する際、素子30を強い力で圧接しないように、樹脂製シート60は弾性を有することが好ましい。樹脂製シート60はこのような性質を備えた素材として、シリコーン系、ポリイミド系、セルロース系、アクリル系の樹脂材又は発泡樹脂を用いることができる。また、これらは仮硬化させた接着剤55と剥離しやすい点で好ましい素材である。
ヨーク50は、上部に外方に折れ曲がった第1のフランジ部50aを有し、下部に内方に折れ曲がった第2のフランジ部50bを有しているため、接着剤55がヨーク50から外部へ漏れることが防止され、不良品の発生率が低下(歩留まりが向上)する。また、フェライト・磁石素子30は、以上のごとく完成された状態で、ヨーク50がフェライト32や永久磁石41と一体化されている。換言すれば、ヨーク50はフェライト・磁石素子30の製造工程中にフェライト・磁石素子30に組み付けられ、別途組立て工程を必要とすることがない。よって、非可逆回路素子の製造工程が簡略化され、量産性が向上する。
なお、本発明に係るフェライト・磁石素子及びその製造方法は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
例えば、フェライトに形成される中心電極は種々の形態を採用でき、非可逆回路素子としては、実施例として示した2ポート型のアイソレータ以外に、3ポート型、あるいは、磁気共鳴型のアイソレータなどであってもよい。
以上のように、本発明は、フェライト・磁石素子及びその製造方法に有用であり、特に、ヨークをフェライトや永久磁石と一体的に扱うことができ、製造上の歩留まりが向上する点で優れている。
30…フェライト・磁石素子
30A…集合基板
32…フェライト
35,36…中心電極
41…永久磁石
50…ヨーク
50a…第1のフランジ部
50b…第2のフランジ部
51…フープ材
53…つなぎ部
55…接着剤
60…樹脂製シート
30A…集合基板
32…フェライト
35,36…中心電極
41…永久磁石
50…ヨーク
50a…第1のフランジ部
50b…第2のフランジ部
51…フープ材
53…つなぎ部
55…接着剤
60…樹脂製シート
Claims (7)
- 対向した一対の主面を有するフェライトと、
前記フェライトの少なくとも一の主面に配置された中心電極と、
前記フェライトの一対の主面にそれぞれ固着された永久磁石と、
前記永久磁石及び前記フェライトの外周面に配置された枠状のヨークと、
前記ヨークの内周面と前記永久磁石及び前記フェライトの外周面との間に配置された接着剤と、
を備え、
前記ヨークは、板状材を一方の開放端面及び他方の開放端面を有する枠状に成形したものであり、一方の開放端面側に外方に折れ曲がった第1のフランジ部を有し、他方の開放端面側に内方に折れ曲がった第2のフランジ部を有し、
前記接着剤は、前記第1及び第2のフランジ部の間に充填されていること、
を特徴とするフェライト・磁石素子。 - 前記接着剤はエポキシ系の樹脂材からなること、を特徴とする請求項1に記載のフェライト・磁石素子。
- 前記永久磁石及び前記フェライトはそれらの外周面とは直交する第1の端面及び第2の端面を有し、
前記第2のフランジ部は前記永久磁石及び前記フェライトの第1の端面よりも第2の端面側にわずかに片寄って位置すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフェライト・磁石素子。 - 対向した一対の主面を有するフェライトの少なくとも一の主面に中心電極を配置し、該フェライトの一対の主面にそれぞれ永久磁石を固着してなるフェライト・磁石素子の製造方法において、
フェライトを一対の永久磁石で挟着した集合基板を作製する工程と、
前記集合基板を短冊状基板にカットする工程と、
長尺状のフープ材にて複数の枠状をなすヨークをつなぎ部で連結した状態で形成する工程と、
長尺状の樹脂製シートと前記フープ材とを重ね合わせる工程と、
前記樹脂製シート上であってそれぞれのヨークの略中央部分に対応する位置に接着剤を供給する工程と、
前記ヨークに前記短冊状基板を挿入し、該短冊状基板の略下半分を前記接着剤に浸漬する工程と、
前記樹脂製シートを前記フープ材から剥離するとともに、前記つなぎ部をカットする工程と、
を備えたことを特徴とするフェライト・磁石素子の製造方法。 - 前記樹脂製シートを前記フープ材から剥離する前に前記接着剤を仮硬化させること、を特徴とする請求項4に記載のフェライト・磁石素子の製造方法。
- 前記樹脂製シートは耐熱性を有する樹脂材からなること、を特徴とする請求項4又は請求項5に記載のフェライト・磁石素子の製造方法。
- 前記樹脂製シートは、シリコーン系、ポリイミド系、セルロース系、アクリル系の樹脂材又は発泡樹脂からなり、前記接着剤はエポキシ系樹脂材からなること、を特徴とする請求項4、請求項5又は請求項6に記載のフェライト・磁石素子の製造方法。
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