JP5552409B2 - 粘着性高分子ゲル及び粘着シート - Google Patents

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Description

本発明は、粘着性高分子ゲル及び粘着シートに関する。更に詳しくは、高温高湿の条件下に置かれても透明性を失わない、生体用材料、医療材料、衛生材料、工業用材料等の幅広い分野で使用可能な粘着性高分子ゲル及び粘着シートに関する。
近年、高分子ゲルに関する研究が進み、高分子ゲルがさまざまな分野に応用されている。高分子ゲルは、主にハイドロゲルとオルガノゲルの2種類に分類される。
ハイドロゲルは、例えば、バイオメディカル分野に使用されている。この分野では、コンタクトレンズに代表される生体適合材料、創傷被覆剤、心電計や低周波治療器と生体を接続するための生体電極用導電性粘着剤等の原料として、ハイドロゲルが使用されている。また、皮膚刺激を低減化するために、従来の粘着剤に代えて、高分子ゲルタイプのハイドロゲルからなる粘着剤を採用する試みがなされている。
また、ハイドロゲルは、バイオメディカル分野以外にも、工業分野等で利用され又はその利用が検討されている。例えば、半導体工程で使用する特殊粘着シートや電池材料、感熱応答性等の刺激応答性を利用した各種センサー、粘弾性を利用した防振材や耐震補強用粘着剤の原料として利用することが検討されている。
一方、オルガノゲルとしては、生体又は特殊粘着シートに用いられる架橋したポリアクリルエステルのマトリックスに脂肪族エステル類のような可塑剤を含有させたゲル、電池材料に用いられるポリオールを骨格とした固体電解質ゲル、アルキレンカーボネートのような溶媒を含有したゲル、ポリウレタンゲル、パラフィンを可塑剤としたスチレン−エチレン系ゲル等がある。
近年、新たに高分子ゲルを光学用途に使用することが検討されている。具体的には、PDP(プラズマディスプレイ)、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の保護シートやスペーサーとして高分子ゲルの使用が検討されている。
例えば、PDPは、パネルと光学フィルタとを備えており、パネルを保護するために、光学フィルタとパネルの間に空隙が設けられている。この空隙は、外部からの入射光の反射による二重映り現象の原因となり、この現象が画質を低下させるという問題が従来のPDPにはある。
そこで、防振性、緩衝性を付与し、粘着性のコントロールも可能な高分子ゲルが、上記問題を解決するための材料として着目されている。即ち、パネルと光学フィルタを高分子ゲルで貼り合せるだけで、パネルと光学フィルタの接着固定と、パネルの保護を行える。加えて、空隙が高分子ゲルで充填されることで、画質の低下を抑えることが可能となる。
上記の光学用途に公知のハイドロゲルを使用すると、ハイドロゲルには大量の水が含まれるため、電子材料と直接的に接触すると、電気回路をショートさせるという危険性を有している。そのため、光学用途等におけるハイドロゲルの実用は困難であると考えられる。また、ハイドロゲルは、常温や体温付近での使用においては安定であるが、高温にさらされるとマトリックスを構成する樹脂の加水分解が促進され、一方、極低温にさらされると凍る可能性がある。そのため、ハイドロゲルにおいて、その耐久性、耐候性が大きな課題となっている。
一方、オルガノゲルは、水分を含まないため、ハイドロゲルのような課題を抱えることはないが、樹脂マトリックスと可塑剤の組み合わせによっては、高温高湿条件下において、オルガノゲルの透明性が失われ、視認性が低下するという課題を有している。
最近では、上記の光学用途に向けたアクリル系の粘着剤の開発が積極的に進められている。例えば、カルボキシル基含有樹脂組成物とアミノ基含有樹脂組成物とを含有した粘着剤組成物が特許文献1に開示されている。
特許第3516035号公報
しかし、特許文献1に記載された粘着剤組成物は、高温高湿条件下においての透明性が徐々に失われ、一度透明性が失われると、常温に戻しても容易には透明性が回復せず、視認性の低下に繋がるという課題を有している。更に、その製造方法においては、セパレーターや支持体にコートする際に、有機溶剤等に溶解してコートするため生産工程が多くなり、その結果、0.2〜0.3mm程度の厚物のシートを作製することが困難であるという課題がある。
本発明は、PDP、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学用途に適するように、高温高湿下に置かれた場合でも、透明性が失われず視認性の低下を引き起こすことのない粘着性高分子ゲル及び粘着シートを提供することをその課題とする。
本発明の発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、可塑剤としての多分岐ポリエステルポリオールと、アルコキシアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル系単量体に由来する重合体とからなる粘着性高分子ゲルが、高温高湿下での白化による透明性の低下が小さいだけでなく、被着体や基材(支持体)等からのアウトガスによる微細な気泡の発生を抑制することを見出して本発明に至った。
かくして本発明によれば、可塑剤としての重量平均分子量(Mw)が1000〜10000、水酸基価が100〜1000mg・KOH/gの範囲である多分岐ポリエステルポリオールと、アルコキシアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル系単量体、前記単官能(メタ)アクリル系単量体と共重合して架橋構造を形成し得る架橋性(メタ)アクリル系単量体を少なくとも含む混合物を硬化させてなる粘着性高分子ゲルが提供される。
また、本発明によれば、上記粘着性高分子ゲルと樹脂フィルムとを含む粘着シートが提供される。
本発明による粘着性高分子ゲルは、高温高湿下におかれた場合でも透明性が失われずに、視認性の低下を引き起こすことがないという優れた効果を有している。このように、従来の粘着剤が抱えていた問題が解決された本発明による粘着性高分子ゲル及び粘着シートは、PDP、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学用途に好適に使用され得る。
また、多分岐ポリエステルポリオールが、前記単官能(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、10〜250重量部含まれる場合、高温高湿下であっても、透明性が失われずに、視認性の低下を引き起こすことがないという特性により優れた粘着性高分子ゲルが得られる。
単官能(メタ)アクリル系単量体が、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドである場合、高温高湿下であっても、透明性が失われずに、視認性の低下を引き起こすことがないという特性により優れた粘着性高分子ゲルが得られる。
また、架橋性(メタ)アクリル系単量体が、単官能(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して0.01〜10重量部含まれる場合、高温高湿下であっても、透明性が失われずに、視認性の低下を引き起こすことがないという特性により優れた粘着性高分子ゲルが得られる。
本発明の実施例によるロール状に粘着シートを製造する方法の概略説明図である。 本発明の実施例によるロール状の粘着シートの概略図である。
本発明による粘着性高分子ゲル(以下、単に「ゲル」ともいう)は、可塑剤としての重量平均分子量(Mw)が1000〜10000、水酸基価が100〜1000mg・KOH/gの範囲である多分岐ポリエステルポリオールと、アルコキシアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル系単量体(以下、「単官能(メタ)アクリル系単量体」ともいう)、前記単官能(メタ)アクリル系単量体と共重合して架橋構造を形成し得る架橋性(メタ)アクリル系単量体を少なくとも含む混合物を硬化させてなるものである。なお、(メタ)アクリルとは、メタクリル又はアクリルを意味する。
多分岐ポリエステルポリオールとは、具体的には以下のような構造で表される多分岐状のポリマーであり、非常に規則正しい、放射状で対称性の分岐構造を有する「デンドリマー」と、それとは対照的に、不均一な分岐構造を有する「樹枝状ポリマー」とに分類される。
このような多分岐構造を持つことにより、高分子量でも液状になり得、かつ、低粘度であるため、液配合時の取扱い性が良好になる。また、ゲルを形成する際には、絡み合いが強くなるため、可塑剤成分となるこの多分岐ポリエステルポリオールのブリード現象が生じにくくなり、耐熱性の向上が期待できる。
本発明における多分岐ポリエステルポリオールは、ポリエステル単位を含むコアを有する樹枝状重合体であり、コアから枝が広がって少なくとも2個以上の末端水酸基を有する高度に分岐した構造を有するものである。
多分岐ポリエステルポリオールの重量平均分子量(Mw)は、1000〜10000である。好ましくは、1500〜6000である。
ここでの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。なお、重量平均分子量は、ポリスチレン(PS)換算重量平均分子量を意味し、その測定方法は次の通りである。
測定装置:東ソー社製 HPLC (ポンプ:DP−8020、オートサンプラー:AS−8020、検出器:UV−8020,RI−8020)
カラム:GPC K−806L×2(Shodex製)
測定条件:カラム温度(40℃),移動相(クロロホルム),移動相流量(1.2mL/min)ポンプ温度(室温),測定時間(25min),検出(RI),注入量(50μL)
測定液作成方法:試料30mg±5mgを秤量し、HPLC用クロロホルム4mL(移動相)で溶解後測定液とする。
検量線用PS標準物質:Shodex製STANDARDキットより、STD.No.S−6120、S−3250、S−1320、S−493、S−133、S−55.1、S−19.6、S−7.2、S−3.1、S−1.2の合計10本を選択して使用し、検量線を作成する。
また、多分岐ポリエステルポリオールは、その水酸基価が100〜1000mg・KOH/gである。好ましくは、100〜700mg・KOH/gである。
ここでの水酸基価は、試料1gをアセチル化させた時、水酸基と結合した酢酸を中和するに要する水酸化カリウム(KOH)のmg数(mg・KOH/g)で表す。その測定は、JIS K0070の中和滴定法に準拠させて水酸基価を求める。
本発明において用いられる多分岐ポリエステルポリオールの具体例としては、例えば、Perstorp社のBoltornシリーズが挙げられる。Boltornシリーズのうち、その品質や性状によって、H2004、H311、P500、P1000等を用いることができる。また、シグマアルドリッチ社より市販されているポリエステルデンドロンや超分岐ポリマーも用いることができる。代表図を以下に示す。
多分岐ポリエステルポリオールの含有量は、単官能(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して10〜250重量部であることが好ましい。多分岐ポリエステルポリオールが10重量部未満であると、ゲルの強度が高くなり、柔軟性を得ることが困難となる場合がある。一方、250重量部を超えると、ゲルの強度が弱くなり、ハンドリングが困難となる場合がある。
アルコキシアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル系単量体は、多分岐ポリエステルポリオール、架橋性(メタ)アクリル系単量体と相溶するものであれば特に制限なく使用することができる。
アルコキシアルキル基の合計炭素数は、単量体と多分岐ポリエステルポリオールの相溶性の観点から2〜10が好ましい。より好ましくは、4〜10であり、5〜8が更に好ましい。アルコキシ基とアルキル基の合計炭素数が上記の範囲にある場合、均一な単量体と多分岐ポリエステルポリオールの組成物を作製しやすい。また、上記範囲は、重合後のゲルを透明にできる効果も有する。更に、アルコキシアルキル基を占めるアルコキシ基の炭素数は、1〜9であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。
アルコキシアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、n−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ペンタキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ヘキシルメチル(メタ)アクリルアミド、n−ヘプタキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−オクトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、n−プロポキシエチル(メタ)アクリルアミド及びn−ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキルアクリルアミド等が挙げられる。これら単量体は、単独で、又は組み合わせて使用できる。
ゲルの粘着力の調整等の目的で、アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体以外の他の(メタ)アクリル系単量体を適宜混合させて、アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体と共重合させても良い。このような他の(メタ)アクリル系単量体は、多分岐ポリエステルポリオールと均一に溶解する単量体を使用することが好ましい。また、重合後透明なゲルを得ることができる単量体を使用することが好ましい。
他の(メタ)アクリル系単量体としては、疎水性単量体、イオン性単量体、親水性及び親油性を有する単量体(両親媒性単量体)等が挙げられる。
疎水性単量体の例としては、イソブチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
イオン性単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アリルカルボン酸等の不飽和カルボン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホブチル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート、それらの塩が挙げられる。
また、両親媒性単量体の例としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
上記他の(メタ)アクリル系単量体の含有量は、アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、100重量部までが好ましい。
架橋性(メタ)アクリル系単量体としては、分子内に重合性を有する炭素−炭素二重結合を2つ以上有する(メタ)アクリル系の単量体であり、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の2官能型、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能型、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型等の多官能アクリレート誘導体が挙げられる。
これら架橋性(メタ)アクリル系単量体の使用量は、アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましい。より好ましくは、0.01〜5重量部であり、0.01〜3重量部が更に好ましい。
さらに、本発明の粘着性高分子ゲルには、必要に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、粘着付与剤、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、香料、界面活性剤、着色剤、染料等が挙げられる。
多分岐ポリエステルポリオール、単官能アクリル系単量体、架橋性アクリル系単量体を含む混合物を重合させる方法としては、一般的なラジカル重合の他、レドックス重合、活性エネルギー線による重合等が挙げられる。例えば、厚み又は深さが10mm以上の型枠に注入して重合させる場合は、レドックス重合や一般的なラジカル重合が適している。逆に、厚みが数ミリメートル〜数マイクロメートルのシート又はフィルム状に成型する場合は活性エネルギー線による重合が適している。
活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線等の活性光又は電子線等を指す。電子線を照射して架橋させる場合、光重合開始剤を必要としないが、紫外線等の活性光を照射して架橋させる場合には、光重合開始剤を存在させることが好ましい。本発明に用いる活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。活性エネルギー線源としては、例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、電子線加速装置、放射性元素等の線源が好ましい。
活性光を照射して架橋させる場合に用いられる光重合開始剤としては、紫外線や可視光線で開裂して、ラジカルを発生するものであれば特に限定されない。例えば、α−ヒドロキシケトン、α−アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセン等が挙げられる。
光重合開始剤の具体例としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:DAROCUR1173、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名:IRUGACURE184、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:IRUGACURE2959、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名:IRUGACURE907、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(製品名:IRUGACURE369、チバスペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤を、単独で使用しても、また二種以上を組み合わせて使用しても良い。
光重合開始剤の濃度は、重合反応を十分に行い、残存モノマーを低減するためには、モノマー配合液に対して0.01重量%以上であることが好ましく、反応後の残開始剤による変色(黄変)や、臭気を防ぐためには1重量%以下であることが好ましい。
本発明のゲルは、通常、液状の単量体配合液を重合してゲル化させるため、用途に合わせて適宜成型できる。例えば、粘着シートとして使用する場合は、厚さ0.01mm〜2.0mmのシート状に成型されていることが望ましい。特に、PDP、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学用途に使用する場合、薄型化が要望されており、厚さ0.05mm〜0.3mm程度が望ましい。
ゲルの両面には、表面を保護するためのセパレーターを設けることが好ましい。セパレーターのうち一方は支持体であってもよい。もう一方は、ベースフィルムとして最終製品まで付属していることが好ましい。この場合のセパレーターは、末端ユーザーが使用する直前に剥離できる。なお、支持体とは、ゲルを補強し、テープの形態を保持させるためのフィルム、不織布、織布等のことを指す。通常、ゲルは支持体にコートされ、いわゆる、粘着シートとして使用される。PDP、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学用途に使用する場合は、支持体無しの形態で使用される場合がある。
セパレーターの材質としては、フィルム状に成型可能な樹脂又は紙であれば特に制限されない。中でも、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン等からなる樹脂フィルム、紙、又は樹脂フィルムをラミネートした紙等が好適に用いられる。特に、ベースフィルムとして使用する場合は、二軸延伸したPETフィルムや、OPP、ポリオレフィンをラミネートした紙が好ましい。
セパレーターのゲルと接する面には離型処理がなされていることが好ましい。また、必要に応じてセパレーターの両面が離型処理されていても差し支えない。両面に離型処理する場合は、表裏の剥離強度に差をつけてもよい。離型処理の方法としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル基含有カルバメート等の離型剤のコーティングが挙げられるが、特に、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。
セパレーターの内、前記ベースフィルムの逆の面に配置されるトップフィルムは、ゲルの製品形態に応じて最適な材料が選択される。例えば、ゲルを短冊で取り扱う場合は、前記の通りフィルム状に成型可能な樹脂又は紙であれば特に制限されないが、ベースフィルムと同様に離型処理されていることが好ましい。
ゲルをロール状に巻き取って保管、物流する場合、トップフィルムは柔軟であることが望ましい。柔軟性を有するフィルムは、ロール巻の内周側及び/又は外周側に使用してもよいが、外周側に配置することがより好ましい。具体的には、ベースフィルム、ゲル、トップフィルムの3層構造のゲルシートをロールに巻く際、少なくとも片側の(ロールの外周側に位置する)トップフィルムが延びれば、巻き皺を低減できる。柔軟性がないフィルムを両面に使用することは、巻皺が発生する危険性を高くするため好ましくない。
ゲルシートには、枚葉とロールの場合があるが、生産、加工を連続して行うことを考えた場合、ロールの場合が好ましい。
また、支持体としては、離型処理しているか又はしていない樹脂フィルムを使用できる。樹脂フィルムとしては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等が挙げられる。
上記支持体を備えた粘着シートは、例えば、ゲル形成後、支持体を貼付する方法と、支持体に直接単量体配合液をコーティングし、紫外線照射してゲルを生成させる方法により製造できる。また、粘着力の異なるゲルを支持体の表裏面それぞれに貼付することで、表裏面で粘着力の異なる粘着シートを得ることができる。支持体を使用せず、ゲルを直接貼り合わせてもよい。
単量体配合液をセパレーターあるいは支持体にコーティングするには、通常おこなわれているグラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ホットメルトコート法、カーテンコート法等で行うことができる。
粘着シートは、必要に応じて中間基材としてフィルム等がゲルに埋設されていてもよい。ゲルをシート状に成形する際、これら中間基材は、ゲルの補強、裁断時の保形性を改善する役割を果たす。使用可能なフィルムはポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等の樹脂フィルムが挙げられる。これらフィルムは、穴を有していても、多層構造を有していてもよい。
本発明のゲルは、例えば、
(1)多分岐ポリエステルポリオール、単官能(メタ)アクリル系単量体、架橋性(メタ)アクリル系単量体及び重合開始剤含む混合物を作製し、
(2)重合反応と同時に任意の形状に成型することにより得られる。
(1)混合物の作製
多分岐ポリエステルポリオール、単官能(メタ)アクリル系単量体、架橋性(メタ)アクリル系単量体及び重合開始剤を混合、攪拌して溶解する。次に、必要に応じて添加剤等を添加して溶解するまで攪拌して混合物(単量体配合液)を作製する。
(2)重合反応と成型
得られた混合物を任意の形状の型枠に注入し、次いで重合させることでゲルが得られる。また、2枚の樹脂フィルム(ベースフィルム、トップフィルム)の間に混合物を流し込み、一定の厚みに保持した状態で重合させることでシート状のゲルが得られる。更に、1枚の樹脂フィルム(ベースフィルム又は支持体)上に混合物を薄層コーティングし、重合させることでフィルム状(シート状より薄い)のゲルが得られる。
なお、2枚の樹脂フィルムをゲルの両面に配置し、光照射によりゲルを生成する際、光を照射する側に配置されるトップフィルムは、光を遮蔽しない材質を選択する必要がある。また、前記の支持体として例示したフィルムは、トップフィルムとして使用しない方がよい。特に、前記の支持体に、紫外線の照射による劣化の可能性がある場合は、直に紫外線が照射されることになるため好ましくない。
通常のアクリル系粘着剤により0.2〜0.3mmの厚物のシートを得ることは困難であるが、上記ゲルの製造方法においては、配合液を重合硬化させることによりシートが作成できるため、厚物のシートを得ることが容易である。
また、セパレーターあるいは支持体にコーティングする際に、通常のアクリル系粘着剤では有機溶剤を使用するが、上記のゲルの製造方法では特に有機溶剤等を使用することなくシートを生産することが可能であり、環境面、生産工程の面においても好ましい。
本発明の粘着性高分子ゲル及び粘着シートは、生体用材料、医療材料、衛生材料、工業用材料等として幅広く使用可能であり、特に、PDP、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の保護シート、スペーサー等への使用が挙げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
先ず、実施例及び比較例中の測定方法及び評価方法について説明する。
(粘着性高分子ゲルの評価方法)
重合後のゲルを、その外観、耐湿性(高温高湿環境下放置後の全光線透過率及びヘイズ)、耐発泡性及び剥がれについて評価する。
(1)ゲルの外観
重合後のゲルの全光線透過率とヘイズをヘーズメーターHM−150型(村上色彩技術研究所社製)にて測定する。なお、測定条件は、透過率についてはJIS K7361に則り、ヘイズについてはJIS K7136に則り実施する。
(2)耐湿性
重合後のゲルを60℃,90%RH雰囲気下に24時間静置し、その後、ゲルの全光線透過率とヘイズをヘーズメーターHM−150型(村上色彩技術研究所社製)にて測定する。なお、測定条件は、透過率についてはJIS K7361に則り、ヘイズについてはJIS K7136に則り実施する。
(3)耐発泡性及び剥がれの評価
重合後のゲルをガラス板に貼り付けて、60℃,90%RH雰囲気下に24時間静置して、ゲルの発泡の有無及び貼り付け面端部での剥がれの有無を目視により観察する。耐発泡性の評価は、次のとおりとする。
○・・・発泡なしあるいは僅かに微細な発泡が見られるが、実用上、問題ないレベル。
×・・・発泡が多く、大きな発泡及びふくれが観察された。
(実施例1)
多分岐ポリエステルポリオール(Perstorp社製:Boltorn H2004、分子量:3,200、水酸基価:121mgKOH/g)65.5重量部と、アルコキシアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル系単量体としてのイソブトキシメチルアクリルアミド(IBMA)(MRCユニテック社製)100重量部と、架橋性(メタ)アクリル系単量体としての1,9−ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学社製:ライトアクリレート1,9−NDA)0.3重量部と、重合開始剤としての1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製:IRUGACURE2959)0.8重量部とを、混合、撹拌させることで、無色透明の単量体配合液(混合物)を得た。
得られた単量体配合液をシリコーンコーティングされたPETフィルム上に滴下した。その上から同じくシリコーンコーティングされたPETフィルムを被せることで、液が均一に押し広げられ、厚さが0.3mmになる様に固定した。これにメタルハライドランプを使用してエネルギー量7000mJ/cm2の紫外線照射することにより厚さ0.3mmのシート状の透明高分子ゲルを得た。
得られたゲルの外観、耐湿性、耐発泡性及び剥がれについての各評価について下記の表1に示す。
(実施例2)
多分岐ポリエステルポリオールを148.3重量部に、1,9−NDAを0.5重量部にしたことを除き、実施例1と同様の方法により透明高分子ゲルを得た。
得られたゲルの外観、耐湿性、耐発泡性及び剥がれについての各評価について下記の表1に示す。
(実施例3)
多分岐ポリエステルポリオールを24.1重量部に、1,9−NDAを0.25重量部にしたことを除き、実施例1と同様の方法により透明高分子ゲルを得た。
得られたゲルの外観、耐湿性、耐発泡性及び剥がれについての各評価について下記の表1に示す。
(比較例1)
多分岐ポリエステルポリオールの替わりに、ポリプロピレングリコール(日油社製:ユニオールD−2000、分子量:2,000、水酸基価:55.4mgKOH/g)を使用したことを除き、実施例1と同様の方法により透明高分子ゲルを得た。
得られたゲルの外観、耐湿性、耐発泡性及び剥がれについての各評価について下記の表1に示す。
(比較例2)
多分岐ポリエステルポリオールの替わりに、ポリプロピレングリコール(日油社製:ユニオールD−2000、分子量:2,000、水酸基価:55.4mgKOH/g)を使用したことを除き、実施例2と同様の方法により透明高分子ゲルを得た。
得られたゲルの外観、耐湿性、耐発泡性及び剥がれについての各評価について下記の表1に示す。
(比較例3)
多分岐ポリエステルポリオールの替わりに、オレイン酸エステル(阪本薬品工業社製:MO−150)を使用したことを除き、実施例1と同様の方法により透明高分子ゲルを得た。
得られたゲルの外観、耐湿性、耐発泡性及び剥がれについての各評価について下記の表1に示す。
IBMA:N−イソブトキシメチルアクリルアミド(MRCユニテック社製:IBMA)
H2004:多分岐ポリエステルポリオール(Perstorp社製:Boltorn H2004、分子量:3,200、水酸基価:121mgKOH/g)
D−2000:ポリプロピレングリコール(日油社製:ユニオールD−2000、分子量:2,000、水酸基価:55.4mgKOH/g)
MO−150:オレイン酸エステル(阪本薬品工業製:MO−150)
1,9−NDA:1,9−ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学社製:ライトアクリレート1,9−NDA)
IR2959:1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製:IRUGACURE2959)
表1に示されるように、本発明による粘着性高分子ゲルを用いて特性評価を行った場合(実施例1〜3)、本発明の範囲外である粘着性高分子ゲル(比較例1〜3)の評価結果と比較して、高温高湿下に置かれた場合であっても、透明性が失われることなく、視認性の低下を引き起こすことがないことが分かった。また、ゲルの発泡や剥がれも見られなかった。
(実施例4)
Roll to Roll装置を用いたロール状の粘着シートの製造例について、図1を用いて説明する。
原反ロールから繰り出されたシリコーンコーティングされたPETフィルム1上に、実施例1で使用した単量体配合液7を滴下した。単量体配合液滴下面に、原反ロールから繰り出されたシリコーンコーティングされたPETフィルム2を被せた。
次いで、液厚が0.3mmになるように、2本のロール3の間を通して単量体配合液を押し広げた。この後、メタルハライドランプ4によりエネルギー量7000mJ/cm2 の紫外線を照射することで、粘着シートを得た。
得られた粘着シートのPETフィルム2を剥離してロールに巻き取った。次いで、原反ロールから繰り出されたシリコーンコーティングされたポリエチレンフィルム5を、PETフィルム2に代えて粘着シート上に貼付した。
この後、ポリエチレンフィルム5が外側になるように、シート状の粘着シートを巻き取ることで、ロール状の粘着シート6を得た。
得られたロール状の粘着シート6の概略図を図2に示す。図中、8はゲルを意味する。
1,2:PETフィルム
3:ロール
4:メタルハライドランプ
5:シリコーンコーティングされたポリエチレンフィルム
6:ロール状の粘着シート
7:単量体配合液
8:ゲル

Claims (5)

  1. 可塑剤としての重量平均分子量(Mw)が1000〜10000、水酸基価が100〜1000mg・KOH/gの範囲である多分岐ポリエステルポリオールと、アルコキシアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル系単量体、前記単官能(メタ)アクリル系単量体と共重合して架橋構造を形成し得る架橋性(メタ)アクリル系単量体を少なくとも含む混合物を硬化させてなる粘着性高分子ゲル。
  2. 前記多分岐ポリエステルポリオールが、前記単官能(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、10〜250重量部含まれる請求項1に記載の粘着性高分子ゲル。
  3. 前記単官能(メタ)アクリル系単量体が、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドである請求項1又は2に記載の粘着性高分子ゲル。
  4. 前記架橋性(メタ)アクリル系単量体が、前記単官能(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して0.01〜10重量部含まれる請求項1〜3のいずれか1つに記載の粘着性高分子ゲル。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の粘着性高分子ゲルと樹脂フィルムとを含む粘着シート。
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