以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である生理用ナプキンに基づき図面を参照して説明する。本実施形態のナプキン1は、図1及び図2に示すように、肌当接面側に配置された表面シート2、非肌当接面側に配置された裏面シート3、及び両シート2,3間に介在された吸収体4を有しており、縦長(一方向に長い形状)である。ナプキン1は、図1に示すように、装着時に装着者の排泄部(膣口)に対向配置される排泄部対向部11と、装着時に排泄部対向部11よりも装着者の腹側に配される前方部12と、装着時に排泄部対向部11よりも装着者の背中側に配される後方部13とを、長手方向Xに有している。排泄部対向部11は、後述する、左右に一対のウイング部6,6を有する部分である。一対のウイング部6,6は、ナプキン1をショーツ等の下着に固定する際に、下着の股下部(クロッチ部)に巻かれて使用される部位である。尚、本発明の吸収性物品(生理用ナプキン)がウイング部を有していない場合、該生理用ナプキンの排泄部対向部は、製品長手方向の全長が25cm以下のいわゆる短時間昼用のナプキンでは、該ナプキンを長手方向に3等分して前方部、中央部、後方部とした場合の中央部(前から2番目の領域)であり、製品長手方向全長が25cmを超えるいわゆる長時間昼用及び夜用のナプキンでは、これらのナプキンを長手方向に4等分した場合の前から2番目の領域(後から3番目の領域)である。
尚、本明細書において、肌当接面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の装着時に装着者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、吸収性物品又はその部材における、吸収性物品の装着時に肌側とは反対側(衣類側)に向けられる面である。また、長手方向は、吸収性物品又はその構成部材の長辺に沿う方向であり、幅方向は、該長手方向と直交する方向である。図中、符号Xで示す方向は、吸収性物品(吸収体、吸収性コア)の長手方向であり、符号Yで示す方向は、吸収性物品(吸収体、吸収性コア)の幅方向である。
図2に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌当接面4aの全域を被覆し、更に吸収体4の長手方向Xに沿う左右両側縁から幅方向Yの外方に延出しており、また、裏面シート3は、吸収体4の非肌当接面4bの全域を被覆し、更に吸収体4の両側縁から幅方向Yの外方に延出している。また、表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の長手方向Xの前端及び後端それぞれから長手方向Xの外方にも延出しており、それらの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって、互いに接合されている。
ナプキン1の長手方向Xに沿う左右両側部には、図1及び図2に示すように、一対のサイドシート5,5がナプキン1の長手方向Xの全長に亘って配されている。サイドシート5は、その幅方向Yの内方側の側部が、公知の接合手段によって表面シート2の肌当接面2aに接合されており、外方側の側部が、吸収体4の長手方向Xに沿う側縁から幅方向Yの外方に延出し、その延出部が、公知の接合手段によって、裏面シート3における、吸収体4の側縁からの延出部に接合されている。裏面シート3及びサイドシート5は、排泄部対向部11において、吸収体4の側縁からの幅方向Yの外方への延出長さが最大となっており、それらの最大延出部によって一対のウイング部6,6が形成されている。
ナプキン1の非肌当接面(裏面シート3の非肌当接面3b)は、装着時にショーツのクロッチ部等、衣類側に向けられる。非肌当接面3bには、ナプキン1をショーツ等の下着のクロッチ部に固定するための粘着部(図示せず)が設けられている。また、一対のウイング部6,6の非肌当接面(裏面シート3の非肌当接面3b)には、ショーツの外面(非肌当接面)に固定するための粘着部(図示せず)が設けられている。これらの粘着部は、ホットメルト粘着剤を所定箇所に塗布することにより設けられており、ナプキン1の使用前においてはフィルム、不織布、紙などからなる図示しない剥離シートによって被覆されている。
吸収体4は、吸収性材料(パルプ等の繊維材料、吸水性ポリマー等)を含む吸収性コア40を含んで構成されている。本実施形態における吸収体4は、吸収性コア40を、ティッシュペーパーや透水性の不織布からなるコアラップシート(図示せず)で被覆して構成されている。吸収性コア40は、パルプ等の繊維材料のみから構成されていても良く、あるいは該繊維材料及び吸水性ポリマーを含んで構成されていても良く、また、後者の場合、繊維材料間に吸水性ポリマーが均一に混合された形態でも良く、あるいは繊維材料を主体とする繊維層と吸水性ポリマーを主体とするポリマー層とを含み、上下2層の該繊維層の間に該ポリマー層が挟持された形態でも良い。表面シート2と吸収体4との間、吸収体4と裏面シート3との間は、ドット、スパイラル、ストライプ等のパターン塗工された接着剤(ホットメルト接着剤等)により互いに接合されていても良い。
吸収体4は、相対的に坪量が高い高坪量部41と、該高坪量部41に隣接して相対的に坪量が低い低坪量部42とを有している。本実施形態においては、図2及び図3に示すように、吸収体4を構成する吸収性コア40が、吸収性材料が相対的に多い高坪量部41と吸収性材料が相対的に少ない低坪量部42(42X,42Y)とが所定方向(長手方向X及び幅方向Yそれぞれ)に交互に形成されてなる凹凸構造を有している。より具体的には、吸収性コア40には、図3に示すように、長手方向Xに沿って延びる線状(連続直線状)の低坪量部42Xと幅方向Yに沿って延びる線状(連続直線状)の低坪量部42Yとがそれぞれ複数形成され、低坪量部42全体として格子状に形成されており、これら直線状の低坪量部42X,42Yで区画された部位(格子の目の位置)が、高坪量部41となっている。複数の線状の低坪量部42Xは、それぞれ、吸収性コア40の長手方向Xの全長に亘って延びて形成されており、複数の線状の低坪量部42Yは、それぞれ、吸収性コア40の幅方向Yの全長に亘って延びて形成されている。複数の高坪量部41は、それぞれ、図3(a)に示す如き平面視において矩形形状となっている。
低坪量部42(42X,42Y)は、図1及び図2に示すように、ナプキン1(吸収性コア40)の厚み方向Tにおいて肌当接面4a側に偏在している。そして、低坪量部42がこのように厚み方向Tの肌当接面4a側に偏在していることにより、高坪量部41は、肌当接面4aとは反対側、即ち、厚み方向Tの非肌当接面4b側に突出している。従って、吸収性コア40においては、肌当接面4a(表面シート2との対向面)は、後述する溝7の形成部位を除き、実質的に凹凸が無く略平坦であるのに対し、非肌当接面4b(裏面シート3との対向面)は、突出形成された高坪量部41(凸部)と高坪量部41,41間に位置する低坪量部42(非凸部あるいは凹部)とによる凹凸を有している。
本実施形態に係る吸収性コア40(前記凹凸構造)は、その外観が、薄板状に成形された吸収性材料の一面側に、吸収性材料からなる平面視矩形形状の複数の吸収部が互いに離間配置されて構成されている点で、特許文献2及び3に記載の吸収体(複数の吸収部をシートに固定してなる吸収体)と類似するように見えるかもしれない。しかし、本実施形態に係る吸収性コア40は、後述するように、前記凹凸構造を有するように吸収性材料を成形して製造されるものであって、高坪量部41及び低坪量部42が、接着剤や熱融着等の接合手段を介さずに一体化されており、同一の材料による境界(高坪量部41と低坪量部42との境界)を有しないように形成されているのに対し、特許文献2及び3に記載の吸収体は、複数の前記吸収部を該吸収部とは別体の前記シートに固定して製造されたものであって、前記吸収部と前記シートとが接合手段を介して互いに接合されていて、前記吸収部と前記シートとの境界を有しているものであり、この点で両者は異なる。そして、このような構成の相違により、本実施形態に係る高坪量部41と低坪量部42とは、液がスムーズに移動し得る連続性を有しているのに対し、特許文献2及び3に記載の吸収体における前記吸収部と前記シートとは、両者間(境界)に接合手段からなる界面が存在するため、境界部分での液拡散が起こり易く、液がスムーズに移動し得る連続性を有しているとは言い難い。
ナプキン1は、図1〜図3に示すように、表面シート2及び吸収体4(吸収性コア40)が一体的に凹陥してなる溝7を有している。溝7は、後述する底壁部71と側壁部72とによって画成された、空間(ナプキン1の形成材料が存していない部位)である。溝7は、図3(a)に示すように、長手方向Xに連続的に延びる左右一対の縦溝7X,7Xと、幅方向Yに連続的に延びる2本の横溝7Y1,7Y2とを含んで構成されており、これら4本の溝がそれぞれの端部で繋がって全体として環状の溝を形成している。一対の縦溝7X,7Xは、吸収性コア40の長手方向Xに沿う左右両側部において、排泄部対向部11の長手方向Xの全長に亘って延びており、更に、前方部12及び後方部13それぞれにも延びている。横溝7Y1は前方部12に、横溝7Y2は後方部13にそれぞれ形成されている。両横溝7Y1,7Y2は、何れも平面視において、長手方向Xの外方に向かって凸に湾曲した横長の形状を含んで形成されており、両横溝7Y1,7Y2それぞれの凸の頂部は、幅方向Yの中央に位置している。
溝7(7X,7Y1,7Y2)は、図3に示すように、相対的に浅く凹陥している浅溝部73と、相対的に深く凹陥している深溝部74とを有している。溝7は、浅溝部73と深溝部74とが溝7の長さ方向に沿って交互に連なることによって、全体として連続線を形成している。溝7は、エンボス加工によって吸収性コア40を表面シート2と共に圧搾することによって形成されるところ、浅溝部73は、該エンボス加工において相対的に弱く圧搾され底部深さ(底壁部71の肌当接面2aからの深さ)が浅い部位であり、深溝部74は、該エンボス加工において相対的に強く圧搾され該底部深さが深い部位である。浅溝部73及び深溝部74の平面視形状は、それぞれ、特に制限されず、長方形、正方形、菱形、円形、十字等とすることができる。
溝7(7X,7Y1,7Y2)は、熱を伴うか又は伴わないエンボス、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。即ち、ナプキン1の製造工程において、吸収体4(凹凸構造を有する吸収性コア40)の一面上に表面シート2を供給した後、エンボス加工により所定部位を表面シート2側から吸収体4側に向けて凹状に押し込む(圧搾する)ことにより、該所定部位に溝7を形成することができる。溝7においては、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化している。
溝7は、高坪量部(凸部)41と低坪量部(非凸部あるいは凹部)42とに跨って形成されている。より具体的には、溝7は、所定方向に隣接する2個の高坪量部(凸部)41,41と両高坪量部41,41に挟まれた1個の低坪量部(非凸部あるいは凹部)42とに連なって形成されている。本実施形態においては、図3(a)に示すように、長手方向Xに関しては、排泄液を直接受ける部位である排泄部対向部11において、溝7の一部である一対の縦溝7X,7Xそれぞれが、長手方向Xに隣接する2個の高坪量部41,41及びそれらの間に位置する1個の低坪量部42Yに連なって形成されており、長手方向Xに連なる吸収性コア40の凹凸を跨ぐように形成されている。また、幅方向Yに関しては、前方部12において、溝7の一部である横溝7Y1が、幅方向Yに隣接する2個の高坪量部41,41及びそれらの間に位置する1個の低坪量部42Xに連なって形成されており、更に、後方部13において、溝7の一部である横溝7Y2が、同様に連なって形成されている。
このような溝7と高坪量部41及び低坪量部42との位置関係は、後述する本発明による排泄液の吸収・拡散作用をより確実に奏させるようにする上で重要であり、特に前述したように、溝7(縦溝7X)が長手方向Xに高坪量部(凸部)41と低坪量部(非凸部あるいは凹部)42とに跨って形成されていることは、排泄液の幅方向Yへの移動に起因する外部への漏れ出し(いわゆる横漏れ)の防止効果にかかわるものであり、重要である。そこで、本実施形態においては、斯かる縦溝7Xの凹凸を跨ぐ配置がより確実に得られるようにするための工夫として、「ナプキン1がその長手方向Xに延びる線状(連続直線状)の低坪量部42Xを含んでおり、長手方向Xに延びる縦溝7Xが、該線状の低坪量部42Xとは長さ方向が異なる部分を有している」という構成を採用している。即ち、本実施形態においては、前述したように、低坪量部42Xを、平面視して長手方向Xに延びる直線状に形成し、また、縦溝7Xを、平面視において図3(a)に示すように、排泄部対向部11におけるナプキン1の長手方向Xに沿う両側部それぞれに、ナプキン1の幅方向Yの外方に向かって凸に湾曲した縦長の形状(湾曲部)を含むように形成し、直線状の低坪量部42Xとは長さ方向が異なる部分として、該湾曲部からなる曲線を含むように形成している。このように、吸収性コア40の低坪量部42Xを、吸収性コア40の長手方向Xに完全に一致する直線状に形成する一方で、縦溝7Xを、長手方向Xとは完全には一致しない(部分的に一致する)湾曲部を有するように形成することにより、少なくとも縦溝7Xの該湾曲部は、平面視において、長手方向Xに延びる直線状の低坪量部42Xと完全に一致することがなく、縦溝7Xが、長手方向Xに高坪量部41と低坪量部42とを跨ぐように形成されやすくなる。
図4〜図6には、吸収性コア40の各部における溝7の断面が模式的に示されている。溝7(7X,7Y1,7Y2)は、図4〜図6に示すように、底壁部71と該底壁部71から立設する側壁部72とによって画成されている。尚、図4〜図6では、説明容易の観点から、浅溝部73及び深溝部74の図示を省略し、底壁部71を、溝7の長さ方向において段差の無い略平坦部として記載しているが、実際には、浅溝部73と深溝部74とでその底壁部の吸収性コア厚み方向における位置は異なっており、浅溝部73の底壁部71は相対的に表面シート2から近く、深溝部74の底壁部71は相対的に表面シート2から遠く、従って実際の底壁部71には、相対的に高い位置にある浅溝部73と相対的に低い位置にある深溝部74とに対応した段差が生じている
本実施形態においては、高坪量部41が低坪量部42に比して高密度となっており、高坪量部41、低坪量部42並びに溝7及びその近傍に、密度勾配が存在する。即ち、図3(b)及び図4〜図6中、符号A〜Eで示した部位の密度は、A≦B<<C<<E、より好ましくはA<B<<C<D<Eとなっており、溝7(縦溝7X)から離れるほど密度が低く(部位A)、溝7に近づくほど密度が高くなり(部位B及び/又はC)、溝7(底壁部71)において密度が最大となる(部位D及びE)。また、溝7(底壁部71)については、低坪量部42(42Y)における部位Dは、高坪量部41における部位Eに比べ、やや密度が低くなされていることで溝7に沿った液の拡散性(横漏れ防止効果)が高められており、高坪量部41における溝7の近傍である部位Cに比べると、密度が高いことがより好ましい。溝7に近づくほど密度が高くなるという密度勾配は、主として、前述したエンボス加工による溝7の形成(吸収性コア40の圧搾)に起因するもので、従来の防漏溝が形成された吸収体においても存在する。密度勾配に関し本実施形態において特徴的なのはB<<C、即ち、吸収性コア40全体において高坪量部41が低坪量部42に比して高密度であるという点であり、溝7の近傍においてもこの関係が成立しているということである。尚、「溝の近傍」とは、溝7を画成する側壁部72(図4〜図6参照)及びその近傍を意味し、主として、溝7(側壁部72の外面)から溝7の長さ方向と直交する方向(溝7の幅方向)の外方に5mm以内の部位を意味する。
このように、溝7(縦溝7X)の近傍である部位B及びCは、溝7から距離が同じであるにもかかわらず、高坪量部41に位置する部位Cの方が、低坪量部42(42Y)に位置する部位Bよりも密度が高い理由は、吸収性コア40の圧搾による溝7の形成前において、高坪量部41の方が低坪量部42よりも吸収性材料が多く存在し密度が高いためである。即ち、本実施形態に係る吸収性コア40は、後述するように、高坪量部41及び低坪量部42を有するように吸収性材料を堆積して凹凸構造を有する堆積物を得、該堆積物全体を加圧ロール等によって均一の圧縮力で圧縮することにより製造されるところ、斯かる圧縮工程においては、凸部としての高坪量部41の方が、非凸部あるいは凹部としての低坪量部42よりも強く圧縮されるため、高坪量部41(部位C)が低坪量部42(部位B)に比して高密度になるのである。このように、部位Bと部位Cとには溝7の形成前から密度差が存在しており、更に圧搾によって部位B及び部位Cに溝7を形成すると、溝7を画成する側壁部72及びその近傍においてこの密度差が反映され、その結果として密度に関しB<<Cとなるのである。
また、本実施形態における低坪量部42においては、図4に示すように、溝7(縦溝7X)を画成する側壁部72(部位B、「溝の近傍」)は、側壁部72よりも溝7(縦溝7X)から離間した位置にある部位A(「溝の近傍」よりも該溝から離間した部位)に比して低坪量となっている。このような、低坪量部42における溝7からの距離に起因した坪量差は、エンボス加工による溝7の形成(吸収性コア40の圧搾)に起因するものである。即ち、エンボス加工により溝7を形成する過程では、低坪量部42は、最終的に溝7を画成する底壁部71となる部位(部位D)を押し込み中心として凹状に押し込まれるところ、この低坪量部42の押し込みによって、該押し込み中心の近傍(部位B)は選択的に延伸されて坪量が低減するのに対し、該押し込み中心からより遠い部位(部位A)は実質的に延伸されず(坪量は変化せず)、その結果、該押し込み中心の近傍(部位B)は、部位Aに比して低坪量の側壁部72となる。このように、低坪量部42において溝7を画成する側壁部72が溝7からより離れた部位よりも低坪量となっていると、側壁部72による排泄液の輸送量が低下するため、後述するように、排泄液が溝7を越えてナプキン1の幅方向Yの外方に移動することが効果的に防止される。低坪量部42における斯かる作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、低坪量部42における側壁部72〔溝7の近傍(側壁部72の外面から溝7の幅方向に5mm以内の部位)〕の坪量をW1、低坪量部42における、側壁部72よりも溝7から離間した位置にある部位(側壁部72の外面から溝7の幅方向に5mm以上離れた部位)の坪量をW2とした場合、両坪量の比(W1/W2)は、好ましくは1.1〜15、更に好ましくは1.2〜3.0である。
本実施形態のナプキン1は、このように、吸収体4(吸収性コア40)が高坪量部41とこれに隣接して低坪量部42とを有し且つ溝7がこれら高坪量部41と低坪量部42とに跨って形成されていることにより、以下に説明する排泄液の吸収・拡散作用が機能し、それによって経血等の排泄液を、その量の多少にかかわらず、素早く吸収・拡散することができる。本実施形態のナプキン1における排泄液の吸収・拡散作用について、図3(b)を参照して説明すると、ナプキン1の装着者が排泄した経血等の排泄液Wは、通常、排泄部対向部11の幅方向Yの中央部で受け止められ、肌当接面(表面シート2の肌当接面2a)上から溝7(縦溝7X)に向かって幅方向Yに移動し、例えば図3(b)において、部位A(排泄部対向部11の幅方向Yの中央部近傍)から部位B(低坪量部42における溝7の近傍)に向かって、ナプキン1の各種構成部材(表面シート2、吸収性コア40等)を伝って移動する。前述したように、部位Bと部位Cとには密度差が存在し密度がB<Cとなっているため、部位Bに到達した排泄液Wは、毛管力により高坪量部41における溝7の近傍である部位Cに移動しやすく、部位Bには滞留し難い。こうして、排泄液Wは、溝7の近傍で且つ溝7よりも幅方向Yの内方において、溝7に沿ってナプキン1の前後方向に移動し、排泄部対向部11から長手方向Xに速やかに拡散する。
部位Bは、隣接する高坪量部41,41間に位置する単なる隙間(空間)ではなく、吸収性コア40の一部(低坪量部42)として存しているため、排泄液の保持機能を有している。従って、排泄液Wの量が多く、部位Aから部位Bへの排泄液Wの移動速度の方が、部位Bから部位Cへの排泄液Wの移動速度(長手方向Xの拡散速度)よりも速い場合でも、部位Bで一時的に排泄液を保持することができ、そのため、部位Bよりもナプキン1の幅方向Yの外方に位置する部位D(低坪量部42における溝7を画成する底壁部71)に大量の排泄液が一度に移動することが防止され、延いては、排泄液Wが溝7を越えてナプキン1の幅方向Yの外方に移動して横漏れにつながることが防止される。また、前述したように、部位Bは、部位Aに比して低坪量となっており、その低坪量に起因して排泄液の輸送量が低下しているところ、この部位Bの排泄液輸送能の低下も、部位Bから部位Dへの液の移動を抑制すること、延いては横漏れ防止に寄与している。
排泄液Wは、溝7の近傍で且つ溝7よりも幅方向Yの内方において部位Bから部位Cへ移動する途中で、高坪量部41に素早く吸収・保持され、高坪量部41の吸収容量を超えた分が、図6に示すように、部位Cよりも幅方向Yの外方に位置する部位E(高坪量部41における溝7を画成する底壁部71)に移動する。部位Eは、溝7の形成時(圧搾時)において最も圧縮された部位であり、幅方向Yに隣接する部位Cに比して圧倒的に密度が高いため、排泄液Wの部位Eから部位Cへの移動は起こり難く、従って、排泄液Wが溝7を越えてナプキン1の幅方向Yの外方に移動することは起こり難い。これは、前述した、低坪量部42における部位Bと部位Dとの関係と同じである。部位Cを経由して部位Eに移動した排泄液Wは、溝7の外側に漏れ出すことなく溝7を通って、隣接する部位D(低坪量部42における溝7を画成する底壁部71)に移動し、更に、これに隣接する別の部位Eに移動する。こうして、溝7を移動する排泄液Wは、その移動中に、主に高坪量部41に吸収・保持される。
このように、本実施形態のナプキン1においては、排泄部対向部11の幅方向Yの中央部に排泄された排泄液は、縦溝7X、及び縦溝7Xの近傍で且つ縦溝7Xよりも幅方向Yの内方に位置する部位の両方において、ナプキン1の前後方向に速やかに拡散され、斯かる拡散の途中で主に高坪量部41に速やかに吸収・保持される。従って、本実施形態のナプキン1は、このような吸収体4(吸収性コア40)と溝7との連携による排泄液の拡散・吸収作用により、排泄された排泄液を素早く拡散・吸収でき、横漏れを起こし難く、装着者の濡れに起因する不快感を解消できる。
そして、本実施形態のナプキン1においては、このような吸収体4と溝7との連携による排泄液の拡散・吸収作用の発現を前提として、溝7の構成を工夫してその柔軟性を高め、それによってナプキン1の装着者の身体に対するフィット性を高めている。この溝7の構成上の工夫とは、浅溝部73が、深溝部74に比して、溝の長さ方向の長さが長いという構成である。即ち、長手方向Xに延びる縦溝7Xを例にとると、図7(a)に示すように、浅溝部73の、縦溝7Xの長さ方向Xの長さL8は、深溝部74の該長さ方向Xの長さL9よりも長くなっている。この浅溝部73と深溝部74との長さの関係は、横溝7Yについても同様である。
前述したように、浅溝部73は、溝7の形成時におけるエンボス加工において相対的に弱く圧搾された低密度部であり、深溝部74は、該エンボス加工において相対的に強く圧搾された高密度部であるところ、高密度な深溝部74の長さL9が低密度な浅溝部73の長さL8よりも長くなって、溝7における深溝部74の占める割合が増加する(即ち浅溝部73の占める割合が減少する)と、溝形成に起因する溝7が延びる方向への影響に加えて溝7全体として硬くなるため、ナプキン1の柔軟性が低下し、ナプキン1が装着者の身体になじみにくくフィット性が低下するおそれがある。一方、深溝部74は、溝7の構造安定と、排泄液が溝7を超えてナプキン1の幅方向Yの外方に移動すること(横漏れ)を防止するのに重要な役割を果たす部位であり、溝7における深溝部74の占める割合が減少する(即ち浅溝部73の占める割合が増加する)と、溝7による横漏れ防止性が低減するおそれがある。
図7(b)及び図7(c)は、このような、溝における柔軟性(フィット性)と横漏れ防止性との二律背反の関係を示したものである。図7(b)及び図7(c)に示すように、高坪量部及び低坪量部を有さず坪量が均一な吸収性コア40’に、浅溝部73及び深溝部74を有する溝7(縦溝7X)を形成した場合において、図7(b)に示すように、浅溝部73と深溝部74とで溝の長さ方向Xの長さを等しくする(L8=L9とする)と、縦溝7Xが硬くなって柔軟性(フィット性)の点で不利となる一方、横漏れ防止性については有利に働くため、排泄液Wは、縦溝7Xを超えて幅方向Yの外方へ移動し難く、縦溝7Xよりも幅方向Yの内方において縦溝7Xに沿って移動し易くなる。また、図7(c)に示すようにL8>L9とすると、低密度な浅溝部74の縦溝7Xに占める割合が増加するのに伴って、縦溝7Xの柔軟性(フィット性)については図7(b)に示す形態よりも改善されるが、横漏れ防止性については不利に働くため、図7(c)中符合W1で示すように、排泄液が縦溝7Xを超えてナプキン1の幅方向Yの外方に移動するおそれが高まる。
これに対し、本実施形態においては、溝7が形成される吸収体(吸収性コア)として、前述したように、高坪量部41とこれに隣接する低坪量部42とを有し、浅溝部73と深溝部74との長さの大小関係にかかわらず、排泄液に対して優れた拡散・吸収作用を示す吸収体4(吸収性コア40)を採用し、更に前述した溝7周辺の構造由来の液移動性を有しているため、溝7の柔軟性(フィット性)の向上の観点から前記大小関係を決定することが可能であり、従って、「浅溝部73が深溝部74に比して溝の長さ方向の長さが長い」という構成を採用することができ、それによってナプキン1の柔軟性(フィット性)が高められている。浅溝部73の溝の長さ方向の長さL8(図7(a)参照)と深溝部74の該長さ方向の長さL9(図7(a)参照)との比(L8/L9)は、好ましくは1.2〜18、更に好ましくは1.2〜4.0である。また、浅溝部73の溝の長さ方向の長さL8は、好ましくは1.2〜18.0mm、更に好ましくは1.2〜4.0mmである。
前述したナプキン1における作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、各部の寸法等は以下のように設定することが好ましい。
吸収性コア40の高坪量部41の坪量S41と低坪量部42の坪量S42との比(S41/S42)は、好ましくは1.25〜10、更に好ましくは3〜6である。
高坪量部41の坪量S41は、好ましくは100〜600g/m2、更に好ましくは150〜500g/m2であり、低坪量部42の坪量S42は、好ましくは10〜150g/m2、更に好ましくは30〜100g/m2である。
高坪量部41の厚みT41と低坪量部42の厚みT42との比(T41/T42)は、好ましくは1〜20、更に好ましくは1.5〜10である。
高坪量部41の厚みT41は、好ましくは0.5〜10mm、更に好ましくは1〜8mmであり、低坪量部42の厚みT42は、好ましくは0.1〜5mm、更に好ましくは0.2〜3.0mmである。
低坪量部42の幅L1(図3(a)参照)は、好ましくは1〜5mm、更に好ましくは1〜3mmである。低坪量部42Xと42Yとで、幅L1は同じでも良く、異なっていても良い。
高坪量部41の図3(a)に示す如き平面視における大きさは、吸収性物品の種類・用途等によって異なるが、ナプキン1の如き生理用ナプキンにおいては、長手方向Xの長さL2(図3(a)参照)が、好ましくは5〜50mm、更に好ましくは10〜30mmであり、幅方向Yの長さL3(図3(a)参照)が、好ましくは3〜30mm、更に好ましくは5〜20mmである。
高坪量部41は、面積50cm2当たり、5〜70個、特に10〜60個形成されていることが好ましい。
溝7(7X,7Y1,7Y2)の幅L5(図3(b)参照)は、好ましくは0.5〜5.0mm、更に好ましくは1.0〜4.0mmである。
溝7の深さL6(図5参照)は、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.0mmである。尚、深さL6は、溝7において最も深さが深い部位である、深溝部74の深さを意味する。浅溝部73の深さは、好ましくは0.5mm未満、更に好ましくは1.1.0mm未満である。
尚、前述した溝7の各部の寸法は、肉眼で定規等を使って測定しても良いが、好ましくは、デジタルマイクロスコープを用いて測定する。例えば、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープVHX−1000を用いて溝7を拡大撮影し、各部の寸法を測定することができる。前記溝7の幅L5は、溝7の底面で測定したものである。また、前記溝7の深さL6は、溝7の断面をデジタルマイクロスコープにより測定したものである。
浅溝部73は、高坪量部41に比してナプキン1の長手方向Xの長さが短いことが好ましい。長手方向Xに延びる縦溝7Xを例にとれば、その浅溝部73の長さL8(図7(a)参照)が、高坪量部41の長手方向Xの長さL2(図3(a)参照)よりも短いことが好ましい。斯かる構成により、縦溝7Xにおける深溝部74が、高坪量部41に必ず形成されるようになり、それによって、溝構造が安定的に形成され、高い液留め性能が奏される。浅溝部73の長さL8と高坪量部41の長手方向Xの長さL2との比(L8/L2)は、好ましくは0.06〜0.9、更に好ましくは0.06〜0.2である。
また、本実施形態においては、吸収性コア40(吸収体4)の非肌当接面4bにおける、溝7に対応する部位(溝7を画成する底壁部71を形成する部位)は、低坪量部42の方が高坪量部41よりも表面シート2に近い(裏面シート3から遠い)ことが好ましい。即ち、長手方向Xに延びる縦溝7Xを例にとれば、図6に示すように、低坪量部42における縦溝7Xに対応する部位(縦溝7Xを画成する底壁部71を形成する部位)の非肌当接面と裏面シート3との離間距離をL42、高坪量部41における該非肌当接面と裏面シート3との離間距離をL41とした場合、L42>L41となっていることが好ましい。斯かる構成により、エンボス加工による溝7の形成時(吸収性コア40の圧搾時)に低坪量部42が押し込まれて破断するという不都合が回避され、溝7がより安定的に形成される。L42=L41あるいはL42<L41であると、低坪量部42における溝7を画成する側壁部72やその近傍が破断するおそれがある。低坪量部42における離間距離L42と高坪量部41における離間距離L41との差(L42−L41)は、好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。通常、離間距離L41は0.5mm以下である。
ナプキン1における各部の形成材料について説明すると、表面シート2及び裏面シート3としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート2としては、例えば、不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。裏面シート3としては、例えば、透湿性を有しない樹脂フィルムや、微細孔を有し、透湿性を有する樹脂フィルム、撥水不織布等の不織布、これらと他のシートとのラミネート体等を用いることができる。また、サイドシート5としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、例えば、撥水性の不織布や樹脂フィルム製のシートを用いることができる。
吸収性コア40の形成材料である吸収性材料としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば繊維材料として、木材パルプ、コットン、麻等の天然繊維;ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂からなる合繊繊維;アセテートやレーヨン等の半合成繊維等を用いることができる。また、吸収性材料としてこれらの繊維材料に加えて、更に粒子状等の各種形状の吸水性ポリマーを用いることもできる。
以下に、本発明に係る吸収体(吸収性コア)の製造方法について、前述した吸収体4(吸収性コア40)の製造方法を例にとり説明する。図8には、吸収体4の製造方法の一実施態様及びそれに用いる製造装置が示されている。吸収体の製造装置は、矢印R1方向に回転駆動される回転ドラム50と、回転ドラム50の外周面に吸収性コア40の原料である吸収性材料45を供給するダクト60と、回転ドラム50の斜め下方に配置され、矢印R2方向に回転駆動されるトランスファーロール70と、回転ドラム50の周方向におけるダクト60とトランスファーロール70との間に配置されたバキュームボックス65と、バキュームボックス65と回転ドラム50との間及びトランスファーロール70と回転ドラム50との間を通るように配された、シート状の通気性部材であるメッシュベルト75と、トランスファーロール70の下方に配されたバキュームコンベア80とを備えている。
回転ドラム50は、図8に示すように、円筒状をなし、モータ等の原動機からの動力を受けて、その外周面を形成する部材が水平軸回りを回転する。回転ドラム50の内側(回転軸側)の非回転部分には内部を減圧可能な空間56が形成されている。空間56には、吸気ファン等の公知の排気装置(図示せず)が接続されており、該排気装置を作動させることにより、空間56内を負圧に維持可能である。他方、回転ドラム50の内側(回転軸側)の空間57及び58には、装置外の空気を取り込み可能な配管(図示せず)が接続されている。
図9に示すように、回転ドラム50の外周面には、製造する吸収性コア40の形状に対応する形状の凹部51が形成されている。凹部51の底面部52には、多数の細孔が形成されており、凹部51が、負圧に維持された空間56上を通過している間、凹部51の底面部52の細孔が吸収性材料45の吸引孔として機能する。一方、凹部51が形成されていない、回転ドラム50の外周面の左右両側部は、金属製の剛体からなる回転ドラム50のフレーム体からなり、非通気性である。
凹部51の底面部52には、図9に示すように、凹部51内を複数の領域に区画する、区画部材53が複数突出して形成されている。各区画部材53は、非通気性の板状部材からなる。凹部51内は、複数の区画部材53によって、前述した吸収性コア40における複数の高坪量部41に対応する、複数の領域54に区画されている。各区画領域54の平面視における形状は、高坪量部51の平面視における形状と同形状(矩形形状)である。また、後述するように、吸収性材料が区画部材53の底面部52からの突出高さを超えて凹部51内に堆積されるようにするため、区画部材53の底面部52からの突出高さは、凹部51の深さよりも短くなっている。
ダクト60は、図8に示すように、その一端側が、負圧に維持される空間56上に位置する回転ドラム50の外周面を覆っており、図示しない他端側には、繊維材料導入装置を有している。繊維材料導入装置は、例えば、シート状の木材パルプを粉砕して解繊パルプとし、その解繊パルプ(繊維材料)をダクト内に送り込む粉砕器を備えている。ダクト60の途中に吸水性ポリマーを導入する吸水性ポリマー導入部を設けることもできる。
トランスファーロール70は、通気性を有する円筒状の外周部を有しており、モータ等の原動機からの動力を受けて、その外周部が水平軸回りを回転する。トランスファーロール70の内側(回転軸側)の非回転部分には、内部を減圧可能な空間71が形成されている。空間71には、吸気ファン等の公知の排気装置(図示せず)が接続されており、該排気装置を作動させることにより、空間71内を負圧に維持可能である。
バキュームボックス65は、回転ドラム50の回転方向R1において、ダクト60の下流側端部61と、トランスファーロール70との間に配置されている。バキュームボックス65は、上下面、左右の両側面及び背面を有する箱状の形状を有し、背面に対向する部位に、回転ドラム50方向に向かって開口する開口部を有している。バキュームボックス65は、排気管67を介して、吸気ファン等の公知の排気装置(図示せず)が接続されており、該排気装置の作動により、バキュームボックス65内を負圧に維持可能である。
メッシュベルト75は、シート状の通気性部材であり、網目を有する帯状の通気性ベルトが無端状に連結されたものであり、複数のフリーロール及びトランスファーロール70に案内されて所定の経路を連続的に移動する。メッシュベルト75は、トランスファーロール70の回転によって駆動される。メッシュベルト75は、図8に示すように、ダクト60の下流側端部61の近傍において、回転ドラム50の外周面上に導入された後、バキュームボックス65と回転ドラム50との間及びトランスファーロール70と回転ドラム50との間を順次通過するように配されている。メッシュベルト75は、バキュームボックス65の前記開口部の前を通過している間は、回転ドラム50の外周面に接触しており、トランスファーロール70と回転ドラム50とが最も接近している最接近部付近で、回転ドラム50の外周面から離れてトランスファーロール70上へと移行する。
バキュームコンベア80は、駆動ロール81及び従動ロール82に架け渡された無端状の通気性ベルト83と、通気性ベルト83を挟んでトランスファーロール70と対向する位置に配されたバキュームボックス84とを備えている。
次に、前述した吸収体の製造装置を用いて吸収体4(吸収性コア40)を連続的に製造する方法について説明する。前述した吸収体の製造装置を用いて吸収体4を製造するためには、回転ドラム50内の空間56、及びバキュームボックス65内を、それぞれに接続された排気装置を作動させて負圧にする。空間56内を負圧にすることで、ダクト60内に、吸収性材料45を回転ドラム50の外周面に搬送する空気流が生じる。また、回転ドラム50及びトランスファーロール70を回転させ、また、バキュームコンベア80を作動させる。そして、前記繊維材料導入装置を作動させて、ダクト60内に繊維材料を供給し、更には吸水性ポリマーを供給すると、これらの吸収性材料45は、ダクト60内を流れる空気流に乗り、飛散状態となって回転ドラム50の外周面に向けて供給される。
ダクト60に覆われた部分を搬送されている間に、回転ドラム50の凹部51には、吸収性材料(繊維材料と吸水性ポリマーとの混合物)45が吸引される。吸収性材料45は、凹部51の各区画領域54の底面部52上に徐々に堆積していき、最終的には図10に示すように、区画部材53の底面部52からの突出高さを超えて凹部51内に堆積する。こうして得られた堆積物46においては、区画部材53上に吸収性材料45が堆積してなる部位(区画部材対応部)46aが、相対的に吸収性材料45の堆積量が少なく、その他の部位(区画領域対応部)46bが、相対的に吸収性材料45の堆積量が多くなっており、堆積物46全体として凹凸構造を有している。
そして、回転ドラム50が回転して、凹部51がバキュームボックス65の対向位置にくると、凹部51内の堆積物46がバキュームボックス65からの吸引によって、メッシュベルト75に吸い付けられた状態となる。凹部51内の堆積物46は、その状態で、トランスファーロール70と回転ドラム50との最接近部の直前まで搬送され、該最接近部付近で、トランスファーロール70側からの吸引により、メッシュベルト75に吸い付けられた状態のまま凹部51より離型し、トランスファーロール70上へと移行する。
こうして、メッシュベルト75と共にトランスファーロール70上に移行した堆積物46は、トランスファーロール70上のメッシュベルト75に吸着されたまま、バキュームコンベア80との受け渡し部(トランスファーロール70の最下端部)まで搬送され、該受け渡し部において、バキュームボックス84による吸引によりバキュームコンベア80上へと移行する。
本実施形態の吸収体の製造装置においては、図8に示すように、堆積物46が載置される前のバキュームコンベア80上に、ティッシュペーパーや透水性の不織布からなる第1コアラップシート47が導入され、その第1コアラップシート47上に堆積物46が移行する。そして、更に、堆積物46の上面側に第2コアラップシート48が導入された後、両コアラップシート47,48に被覆された状態の堆積物46が所定の間隔で切断され、ナプキン1個分の寸法に切断された吸収体前駆体49が得られる。尚、図1及び図2では、両コアラップシート47,48の図示を省略している。
そして、本実施形態の吸収体の製造装置においては、こうして得られた吸収体前駆体49を加圧手段90によって圧縮し、吸収体前駆体49を構成する堆積物46の厚みを積極的に減少させて、目的とする吸収体4(吸収性コア40)を得る。加圧手段90は、図8に示すように、表面平滑な一対のロール91,92を備え、ロール91,92間に導入された被加圧物を上下面から加圧して厚み方向に圧縮可能に構成されている。
図11には、堆積物46の圧縮前後の状態が模式的に示されている。図11の矢印を挟んで左側の図は圧縮前の堆積物46、右側の図は圧縮後の堆積物46(吸収性コア40)を示し、また、左右両図において、上段は堆積物46(吸収性コア40)の断面図、下段は堆積物46の斜視図を示す。加圧手段90によって堆積物46を圧縮すると、吸収性材料が相対的に多く厚みの大きい区画領域対応部46b(凸部)は、吸収性材料が相対的に少なく厚みの小さい区画部材対応部46a(非凸部あるいは凹部)よりも強く圧縮される。その結果、堆積物46における区画領域対応部46bは、吸収性コア40において相対的に密度の高い高坪量部41となり、堆積物46における区画部材対応部46aは、吸収性コア40において相対的に密度の低い低坪量部42となる。
前述した吸収体の製造方法によれば、相対的に高密度の高坪量部41と相対的に低密度の低坪量部42とが長手方向X及び幅方向Yの両方向に交互に形成されてなる凹凸構造を有する、吸収性コア40を効率良く製造することができる。高坪量部41の密度D41と低坪量部42の密度D42との比(D41/D42)は、好ましくは1.5〜20、更に好ましくは2.0〜10である。高坪量部41及び低坪量部42の密度は次のようにして測定される。
<密度の測定方法>
高坪量部41の密度は、高坪量部41の重量を高坪量部41の体積(厚み×長さ×幅)で除して算出した。低坪量部42の密度は、低坪量部42の重量を低坪量部42の体積(厚み×長さ×幅)で除して算出した。高坪量部41及び低坪量部42それぞれの体積の算出に用いる「厚み」は、次のようにして測定した。縦37mm、横37mm、厚み3mmのアクリルプレートを、測定対象の吸収性コア40上に置き、該吸収性コア40の高坪量部41の厚みについては、KEYENCE社製非接触式レーザー変位計(レーザーヘッドLK−G30、変位計LK−GD500)を用いて測定し、低坪量部42の厚みについては、KEYENCE社製マイクロスコープVHX−1000を用いて該吸収性コア40の断面(図2に示す如き断面)を観察することで測定した。また、高坪量部41及び低坪量部42それぞれの「重量」は、次のようにして測定した。測定対象の吸収性コア40にFEATHER社製カミソリ(フェザー剃刃S片刃)を押し当てて、高坪量部41及び低坪量部42をそれぞれ切り出し、切り出した高坪量部41及び低坪量部42それぞれの重量を電子天秤(A&D社製電子天秤GR−300、精度:小数点以下4桁)を用い測定した。
本発明は、前記実施形態に制限されない。例えば、吸収性コア40において、高坪量部41は千鳥状に配置されていても良い。即ち、多数の高坪量部41を長手方向Xに所定間隔をおいて配置して高坪量部列を形成し、該高坪量部列を幅方向Yに所定間隔を置いて複数本配置した場合に、互いに隣接する高坪量部列における高坪量部41のピッチがずれていても良い。換言すれば、高坪量部41は、所定の高坪量部列における高坪量部41を、該高坪量部列と直交する方向(幅方向Y)に投影したときに、隣接する高坪量部41の投影像と一致しないように配置されていても良い。仮に、幅方向Yに延びる溝7(横溝7Y1及び7Y2)が、前記実施形態(図3参照)のように、平面視してナプキン1の長手方向Xの外方に向かって凸に湾曲した横長の形状を含むように形成されていなくても(例えば、横溝7Y1,7Y2が幅方向Yに延びる直線状に形成されていても)、該横溝7Y1,7Y2と低坪量部42とが完全に一致することを防止できる。
また、前述したように溝7を、ナプキン1の長手方向X又は幅方向Yに並んだ2個の高坪量部41,41と2個の該高坪量部41,41に挟まれた1個の低坪量部42とに連なって形成する方法、換言すれば、溝7と吸収性コア40の低坪量部42とを完全には一致させない方法としては、前記実施形態のように、溝7を平面視してナプキン1の外方に向かって凸に湾曲した形状を含むように形成し且つ低坪量部42を平面視して直線状に形成する方法の他に、a)相対的に大きなサイズの高坪量部41の周りに相対的に小さなサイズの低坪量部42を配置する方法、b)低坪量部42と組み合わされる高坪量部41として、平面視形状が5角形以上の多角形形状の高坪量部41の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いる方法、c)溝7の形成方向(線状の溝7の延びる方向)と低坪量部の形成方向(線状の低坪量部の延びる方向)との成す角度を30〜60°に設定する方法、等が挙げられる。
また、本発明の吸収性物品の適用例の一つとして生理用ナプキンを挙げたが、本発明は、例えば使い捨ておむつ、失禁パッド、パンティライナー等にも適用できる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
図1及び図2に示すナプキン1と同様の構成を有する生理用ナプキンを作製し、それを実施例1のサンプルとした。表面シートとしては、2層構造を有する表面シートを用い、裏面シートとしては、坪量30g/m2の非透湿ポリエチレン製フィルムを用い、サイドシートとしては、坪量20g/m2のエアスルー不織布を用い、吸収性コアを被覆するコアラップシートとしては、坪量16g/m2の吸収紙を用いた。吸収性コアとしては、前述した方法に従って製造したものを用いた。実施例1で用いた吸収性コアは、図3に示す吸収性コア40と同様の構成(凹凸構造)を有するもので、吸収性材料として針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP、繊維材料)及び粒子状の吸水性ポリマーを重量比で前者:後者=4:1で含んだ、混合積繊タイプの吸収性コアであり、吸収性コア全体におけるパルプ坪量200g/m2、吸水性ポリマー坪量50g/m2、高坪量部の坪量300g/m2、高坪量部の厚み2.0mm、低坪量部の坪量140g/m2、低坪量部の厚み0.8mm、長手方向の全長200mm、幅方向の全長75mmであった。また、高坪量部に関し、長手方向の長さL2(図3(a)参照)は20mm、幅方向の長さL3(図3(a)参照)は10mmであった。また、高坪量部は、面積50cm2当たり18個形成されていた。また、溝の幅L5(図3(b)参照)は2mm、溝の深さL6(図5参照)は0.5mmであった。また、浅溝部の溝の長さ方向の長さL8(図7(a)参照)は3.4mm、深溝部の溝の長さ方向の長さL9(図7(a)参照)は1.0mmであった。
〔比較例1〕
吸収性コアとして、下記に示すものを用い且つ浅溝部の溝の長さ方向の長さL8及び深溝部の溝の長さ方向の長さL9をそれぞれ1.2mmとした以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製し、それを比較例1とした。
比較例1で用いた吸収性コア:吸収性材料が均一な坪量でコア全体に分布していて低坪量部及び高坪量部を有しておらず、凹凸構造を有しない、肌当接面及び非肌当接面が略平坦な吸収性コア。この吸収性コアは、以上の点以外は、寸法を含め実施例1で用いた吸収性コアと同様に構成されている。
〔比較例2〕
吸収性コアとして、比較例1で用いた吸収性コアと同じものを用いた以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製し、それを比較例2とした。
〔評価〕
実施例及び比較例の各サンプル(生理用ナプキン)について、下記方法に従って、動的最大吸収量、柔軟性を評価した。それらの結果を下記表1に示す。
<動的最大吸収量の評価方法>
生理用ナプキンを生理用ショーツに固定し、この生理用ショーツを人体の動的モデルに装着した。動的モデルの歩行動作を開始させ、歩行動作開始より1分後に、1回目の液注入操作として、動的モデルの液排泄点より生理用ナプキンに2gの馬血を注入し、更に1回目の液注入操作終了より3分後に、2回目の液注入操作として、動的モデルの液排泄点より生理用ナプキンに3gの馬血を注入し、更に2回目の液注入操作終了より3分後に、3回目の液注入操作として、動的モデルの液排泄点より生理用ナプキンに2gの馬血を注入する。3回目以降の液注入操作は、前回の液注入操作終了より3分後に動的モデルの液排泄点より生理用ナプキンに2gの馬血を注入することで実施する。斯かる液注入操作を、生理用ナプキンのウイング部から液(馬血)が染み出すまで繰り返し、液が染み出す前までに実施した液注入操作によって注入された液の総量を、動的最大吸収量とした。動的最大吸収量の値が大きいほど経血のモレ防止性に優れ、高評価となる。
<柔軟性の評価方法>
JIS L−1096(一般織物試験方法)に準じて、生理用ナプキンにおける吸収性コアの曲げ剛性を評価する。評価装置として、大栄科学精器製作所社製のハンドロメーター(型式:HOM−3)を用いる。ハンドロメーターのスリット幅は40mmに設定する。より具体的には、生理用ナプキンから吸収体(吸収性コアをコアラップシートで被覆したもの)を取り出し、前記ハンドロメーターを用いて、取り出した吸収体(長手方向の全長200mm、幅方向の全長75mm)の前端部より100mmの部位にて該吸収体を長手方向及び幅方向にそれぞれ折り曲げ、そのときの荷重値を測定した。この荷重値が小さいほど柔軟性に優れ、高評価となる。
表1に示す結果から明らかなように、実施例1は、比較例1及び2に比して動的最大吸収量の値が大きく、経血のモレ防止に優れていると共に、折り曲げたときの荷重値が小さく、柔軟性にも優れていた。この結果より、前述したように、低坪量部と高坪量部とが特定パターンで形成された吸収性コアに特定構造の溝を特定パターンで形成することは、排泄液を素早く吸収・拡散し、装着者の濡れに起因する不快感を解消し、且つ防漏溝を有するにもかかわらず、適度な柔軟性を有しフィット性に優れる吸収性物品を得る上で有効であることが示唆された。