JP5550354B2 - 遮光膜および光学素子 - Google Patents
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Description
本発明の目的は、上記問題点を考慮してなされたものであり、内面反射防止および表面反射防止を兼ね備えた遮光塗膜およびそれを用いた光学素子を提供するものである。
上記の課題を解決する光学素子は、レンズ又はプリズムと、前記レンズ又はプリズムの外周面に遮光膜と、を有する光学素子であって、前記遮光膜は、(a)樹脂、(b)色素材、(c)無機微粒子及び(d)界面活性剤又はオイルを含有し、前記遮光膜における前記(d)界面活性剤又はオイルの濃度は、前記レンズ又はプリズムと接触しない面側が接触する面側よりも高いことを特徴とする。
本発明に係る遮光塗膜は、(a)樹脂、(b)色素材、(c)無機微粒子、(d)界面活性剤およびオイルから選ばれた少なくとも1種の成分を含有する塗膜であって、前記塗膜における(d)界面活性剤およびオイルから選ばれた少なくとも1種の成分の濃度が表層の方が下層よりも高いことを特徴とする。
本発明に係る光学素子は、上記の遮光塗膜を有すること特徴とする。
次に、本発明の遮光塗膜に含有される各成分について説明する。
本発明の遮光塗膜に含有される樹脂5は、光学レンズのコバ面2と高屈折率微粒子3のバインダーとなる樹脂であり、塗膜形成プロセスの形態に応じて熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化型樹脂を適宜選択して用いることが可能である。
本発明の遮光塗膜に含有される色素材としては、有機染料や有機顔料が用いられる。
有機染料としては、波長400nmから700nmの可視光を吸収し、溶媒に溶解可能な材料であればよく、また染料に区分されない有機物も含む。波長400nmから700nmにおける最大吸収率と最小吸収率の比を0.7以上にするために、染料は1種類であっても良いし、黒色、赤色、黄色、青色など数種類の染料を混合して吸収波長を調整しても構わない。
本発明の遮光塗膜に含有される色素材の含有量は、遮光塗膜に対して4重量%以上12重量%以下、好ましくは5重量%以上9重量%以下が望ましい。
本発明の遮光塗膜に含有される無機微粒子としては、高屈折率微粒子3の例としては、酸化チタン(TiO2、屈折率:2.71、比重:4.2〜4.3)、酸化ジルコニウム(ZrO2、屈折率:2.10、比重:5.5)、酸化セリウム(CeO2、屈折率:2.20、比重:7.1)、酸化錫(SnO2、屈折率:2.00、比重:7.0)、アンチモン錫酸化物(ATO、屈折率:1.75〜1.85、比重:6.6)、インジウム錫酸化物(ITO、屈折率:1.95〜2.00、比重:7.1)を用いることができる。
前記無機微粒子の平均粒子径は、40nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下であることが望ましい。
本発明の遮光塗膜に含有される無機微粒子の含有量は、遮光塗膜に対して5重量%以上20重量%以下、好ましくは10重量%以上15重量%以下が望ましい。
本発明の遮光塗膜に含有される界面活性剤としては、低屈折率の界面活性剤であるフッ素系界面活性剤もしくはシリコーン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系オイルの例としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルポリエーテル、三フッ化エチレン重合体、これらの混合物が挙げられる。
本発明の遮光塗膜に含有される界面活性剤およびオイルから選ばれた少なくとも1種の成分の含有量は、遮光塗膜に対して10重量%以上40重量%以下、好ましくは11重量%以上38重量%以下が望ましい。
本発明の光学素子は、上記の光学部材のフレアやゴーストの発生原因となる迷光を吸収するための遮光塗膜を用いているので、光学性能が良好である。
本発明の遮光塗膜の形成方法は、(a)樹脂、(b)色素材、(c)無機微粒子、(d)界面活性剤およびオイルから選ばれた少なくとも1種の成分、及び(e)有機溶媒を含有する塗料組成物を用いて形成される。
有機溶媒には、特に制限はないが、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等が用いられる。
前記調製した塗料組成物を用いて、次工程の塗膜形成に移る。具体的な塗装の方法としては、前記塗料の染み出す連続気孔が形成されたウレタン製スポンジ(商品名:フソラス/富士ケミカル製)に塗料組成物を含浸させ、平板ガラスの表面に倣って50mm/秒の速さで移動させながら塗布する。塗布後、焼成を行って本発明の遮光塗膜を得る。焼成条件は80℃で120分間である。
本発明の遮光塗膜の膜厚は、3μm以上15μm以下、好ましくは5μm以上10μm以下である。
界面活性剤およびオイルから選ばれた少なくとも1種の成分の濃度が表層の方が下層よりも高いことを測定する。
本発明において、遮光塗膜中の表層の低屈折率界面活性剤の濃度は、遮光塗膜に対して8重量%以上38重量%以下、好ましくは10重量%以上35重量%以下が望ましい。
また、下層の低屈折率界面活性剤の濃度は、1重量%以上30重量%以下、好ましくは5重量%以上25重量%以下が望ましい。
図3に示すように、反射防止塗膜評価光学ガラスLAH53(nd=1.805)からなる平板ガラス6の平滑面に、上記により得られた遮光塗膜1を測定用サンプル7とした。この測定用サンプル7について、図4に示す構成の分光光度計を用い、その反射光の光量を測定して、表面反射率を求めた。すなわち、光源およびモノクロメータを用いて、波長400nmから700nmの可視光をサンプル7に照射し、サンプル7から出た反射光を検出器および積分球を用いて測定して、表面反射率を求めた。
また、内面反射率は、ASP分光計(ASP−32;分光計器)を用い求めた。測定用サンプルには三角プリズムを用いた。三角プリズムは大きさが直角を挟む1辺の長さが30mm、厚み10mmで、材質がS−LAH53(nd=1.805)であるものを用いた。
ASP分光計は、サンプルと検出器の角度を任意に移動可能であるので、入射角毎の内面反射率を測定できる。ASP分光計より出た光は三角プリズムに対して、入射角b=30°、45°及び90°で入射する。このとき、空気の屈折率とプリズムの屈折率の差により、光の屈折が起こる。屈折後の入射角はc=68.13°、45°及び36.73°である。入射角dに対する屈折後の角度eは下記の式(3)より算出した。また、屈折後のeより入射角cを算出した。
n=sin d/sin e・・・式(3)
続いて、三角プリズム14で屈折した光は三角プリズム14の底面に当たり、反射して三角プリズム14の外に出る。この反射光の強度を400nmから700nmの可視光領域について検出器で検出した。尚、バックグラウンドは三角プリズム14の底面に何も塗布しないサンプルとし、三角プリズム14の底面に光学素子用の遮光膜を形成した時の内面反射率を計測した。また、表2の内面反射率には内面反射率は400nmから700nmの内面反射を1nm間隔で測定し、その結果の平均値を記載した。
遮光塗膜を光学ガラス表面上に形成した後、遮光塗膜の密着力を測定した。測定方法はJIS−K5600−5−7に基づき、アドヒージョンテスター(コーテック製)を使用し、遮光塗膜を直接引き剥がす方法で行った。
まず、表1に示す組成に示す様に、エポキシ樹脂(JER828;ジャパンエポキシレジン)10g、黒色染料(VALIFAST BLACK 3810;オリエント化学)4g、赤色染料(VALIFAST RED 3108;オリエント化学)2.9g、黄色染料(VALIFAST YELLOW 3120;オリエント化学)0.375gを秤量する。
得られた塗料を、平板ガラスの平滑面に塗布し、恒温槽(80℃×2時間)により硬化させ、遮光塗膜を得た。遮光塗膜の膜厚は、8.0μmであった。
遮光塗膜中の表層の界面活性剤の濃度は10重量%であり、下層の界面活性剤の濃度は5重量%であった。
分光光度計により、遮光塗膜の表面反射率と内面反射率を測定した。その結果、表面反射率は波長400から700nmの平均値で0.61%であり、内面反射率は0.35%であった。
分光光度計により、遮光塗膜の表面反射率と内面反射率を測定した。その結果、表面反射率は波長400から700nmの平均値で0.69%であり、内面反射率は0.33%であった。
また、ガラスと遮光塗膜の密着力は、15.2MPaであり、塗膜の剥離も無く、良好であった。
分光光度計により、遮光塗膜の表面反射率と内面反射率を測定した。その結果、表面反射率は波長400から700nmの平均値で0.64%であり、内面反射率は0.37%であった。
また、ガラスと遮光塗膜の密着力は、12.3MPaであり、塗膜の剥離も無く、良好であった。
低屈折率成分が無添加である以外は、実施例1と同じ塗料組成である。
前記工程により得られた塗料を、平板ガラスの平滑面に塗布し、硬化させ、遮光塗膜を得た。
分光光度計により、表面反射率と内面反射率を測定した。その結果、表面反射率は波長400から700nmの平均値で0.92%であり、実施例1と比較して表面反射率は悪化した。
フッ素系界面活性剤であるパーフルオロアルキルエチレンオキシド(DIC)の添加量を60g(42wt%)にした以外は、実施例1と同じ塗料組成である。
前記工程により得られた塗料を、平板ガラスの平滑面に塗布し、硬化させ、遮光塗膜を得た。
分光光度計により、表面反射率と内面反射率を測定した。その結果、光学特性は良好な値を示したが、密着力が6.5MPaであり、比較例1と比較して、密着力が悪化した。
フッ素系界面活性剤の屈折率を1.505のメチルフェニルシリコーンにした以外は、実施例1と同じ塗料組成である。
前記工程により得られた塗料を、平板ガラスの平滑面に塗布し、硬化させ、遮光塗膜を得た。
分光光度計により、表面反射率と内面反射率を測定した。その結果、表面反射率は0.85%と悪化した。
高屈折率微粒子であるTiO2の平均粒子径を60nmにした以外は、実施例1と同じ塗料組成である。
前記工程により得られた塗料を、平板ガラスの平滑面に塗布し、硬化させ、遮光塗膜を得た。遮光塗膜の膜厚は、8.0μmであった。
分光光度計により、表面反射率と内面反射率を測定した。その結果、内面反射率は0.55%と悪化した。
下記の表1から表4に、実施例および比較例の結果をまとめて示す。
○:表面反射率<0.70%、内面反射率<0.50%、密着力>9.0MPaの全てを満たす場合を示す。
×:表面反射率≧0.70%、内面反射率≧0.50%、密着力≦9.0MPaの何れかである場合を示す。
2 コバ面
3 高屈折率微粒子
4 低屈折率界面活性剤
5 樹脂
6 平板ガラス
7 内面反射測定用サンプル
Claims (10)
- レンズ又はプリズムの外周面に形成される遮光膜であって、
前記遮光膜は、(a)樹脂、(b)色素材、(c)無機微粒子及び(d)界面活性剤又はオイルを含有し、
前記界面活性剤又はオイルの含有量が、前記遮光膜に対して10重量%以上40重量%以下であり、
前記遮光膜における前記(d)界面活性剤又はオイルの濃度は、前記レンズ又はプリズムと接触しない面側が接触する面側よりも高いことを特徴とする遮光膜。 - 前記界面活性剤又はオイルの屈折率が1.2以上1.4以下であることを特徴とする請求項1に記載の遮光膜。
- 前記無機微粒子の屈折率が1.5以上4.0以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮光膜。
- 前記無機微粒子の平均粒子径が40nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の遮光塗膜。
- 前記遮光膜における前記(d)界面活性剤又はオイルの濃度は、前記レンズ又はプリズムと接触しない面側から接触する面側に傾斜的に減少していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の遮光膜。
- レンズ又はプリズムと、前記レンズ又はプリズムの外周面に遮光膜と、を有する光学素子であって、
前記遮光膜は、(a)樹脂、(b)色素材、(c)無機微粒子及び(d)界面活性剤又はオイルを含有し、
前記界面活性剤又はオイルの含有量が、前記遮光膜に対して10重量%以上40重量%以下であり、
前記遮光膜における前記(d)界面活性剤又はオイルの濃度は、前記レンズ又はプリズムと接触しない面側が接触する面側よりも高いことを特徴とする光学素子。 - 前記界面活性剤又はオイルの屈折率が1.2以上1.4以下であることを特徴とする請求項6に記載の光学素子。
- 前記無機微粒子の屈折率が1.5以上4.0以下であることを特徴とする請求項6又は乃至7に記載の光学素子。
- 前記無機微粒子の平均粒子径が40nm以下であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の光学素子。
- 前記遮光膜における前記(d)界面活性剤又はオイルの濃度は、前記レンズ又はプリズムと接触しない面側から接触する面側に傾斜的に減少していることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の光学素子。
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