JP5548298B1 - 歯科インプラントシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】インプラント体と顎骨との結合期間を必要とせず、顎骨の骨量や厚さが少ない患者にも施術でき、多くの患者の治療期間及び治療回数を短縮することができると共に、顎骨への影響を最小限に止めることで、患者の精神的及び身体的負担を軽減することができる歯科インプラントシステムを提供する。
【解決手段】1本の歯4に対して、複数のインプラント体2が用いられる歯科インプラントシステム1において、各インプラント体の軸部に、顎骨5に穿設された掛穴51に引掛けられる掛部が設けられ、この掛部は、軸部に対して屈折されており、各インプラント体が、顎骨に引掛けられる際に、この掛部の屈折方向が、複数のインプラント体で異なる構成の歯科インプラントシステムである。
【選択図】図1

Description

本発明は、歯科インプラントに関し、詳しくは、1本の歯に対して、複数のインプラント体が用いられる歯科インプラントシステムに関する。
従来から、天然歯を喪失した場合に、その喪失した箇所の顎骨に人工的な歯根(インプラント体)を埋め込んで、この人工歯根を土台として、この上に義歯を取り付ける歯科インプラント治療が知られている。
現在実施されている歯科インプラント治療は、外科的に顎骨(歯槽骨)上の歯肉を切除した後、予め検査して得られたサイズのインプラント体を顎骨に埋入し、その後3ヶ月〜6ヶ月の期間を待って、インプラント体と顎骨が結合(オッセオインテグレーション)するのを待つ必要がある。そして、顎骨と結合したインプラント体に、アバットメント体と呼ばれる台座と取り付け、このアバットメント体に、予め所定のサイズに成形された義歯を取り付けるといった手順で施術されている。
歯科インプラント治療は、これらの手順に従って施術されるため、治療期間として6ヶ月〜1年間を要するのが一般的である。
また、患者によっては、特に上顎骨への施術について、インプラント体を埋入するために必要な骨量(特に骨の厚さ)が不足している場合がある。かかる場合には、先ず、顎骨に対して、骨再生誘導法(GBR法)、リッジエクスパンジョン、ソケットリフト、サイナスリフト等の補助手術を施し、必要な骨量を形成した上で、上記歯科インプラント治療を行うことになり、更に数ヶ月の治療期間を要する。
上記のような補助手術を要しない歯科インプラント治療について、特許文献1に記載の技術が提案されている。
特許文献1に記載の技術は、「歯根として上顎臼歯部の歯槽骨に埋入されて固定され、かつ脚構造を成す3本の脚部インプラント体と、該脚部インプラント体が移動自在に挿入されるために、前記脚部インプラント体の外径より大きい内径の維持孔が設けられ、該維持孔に挿入された前記各脚部インプラント体をまとめる機能を有する歯根台座部と、該歯根台座部と連結され、歯冠を装填するための支台であるアバットメントとを含む複合構造を有する歯科コンポーネントインプラント」である。
これを要約すると、歯根として歯槽骨に埋入されるインプラント体が3本であり、この3本のインプラント体を歯根台座部でまとめ、これらにアバットメントを加えた複合構造を有する歯科コンポーネントインプラントである。
この技術によれば、「上顎骨や下顎骨の形状、また下顎骨の下部に走っている下歯槽神経の位置に関係なく埋入可能であり、かつ複数の脚部インプラント体により歯根台座部を支持することにより噛み合う際の荷重が各脚部インプラント体に分散して偏った応力の集中を避ける共に当該荷重がアバットメントの長軸方向に加わることでインプラント全体の寿命が長くなる。これにより、骨増量などの骨再生誘導法による付加的手術も不要となり、骨不足、埋入不適症例へのインプラント埋入術の応用が可能となる。」といった効果が得られる。
しかし、特許文献1に記載の技術では、骨不足や埋入不適症例への骨再生誘導法等による補助手術は不要になるが、インプラント体と顎骨との結合に要する期間は必要であり、
やはり治療期間として6ヶ月〜1年間を要するといった問題があった。
一方で、インプラント体と顎骨との結合に要する期間を要しない歯科インプラント治療について、特許文献2に記載の技術が提案されている。
特許文献2に記載の技術は、「歯槽骨のうち口腔側に臨む上部歯槽骨に打ち込まれる抜け止め軸と、該抜け止め軸を下端に一体に突設しており、かつ上部には義歯が装着されるアバットメントとを備えた義歯固定装置」であり、「抜け止め軸が複数本からなり、これらの先端および外周の長手方向の複数箇所に抜け止め用の返り突起を有するもの」も提案されている。
これらの技術によれば、「従来のようにインプラント材と歯槽骨がくっつく数ヶ月の期間を待つことなく、直ぐにアバットメントを上部歯槽骨に取り付けることができる。」と共に、「抜け止め軸を、これの先端および外周の長手方向の複数箇所に抜け止め用の返り突起を有するものとしたので、上記抜け止め軸の歯槽骨への打ち込みを容易化でき、さらに抜け止め軸によるアバットメントの歯槽骨における結着力を十分に高めることができる」といった効果が得られる。
しかし、特許文献2に記載の技術では、アバットメントに設けられた抜け止め軸を、歯槽骨に余程深く打ち込まなければ固定されず、この抜け止め軸に返り突起を設けたとしても、抜け難さは多少増すものの、ハンマーなどを用いて歯槽骨に強く打ち込まなければならず、固定が不十分な上に骨への負担が大きいといった問題があった。
特許第4226609号公報 特開平8−196547公報
そこで、本発明の課題は、インプラント体と顎骨との結合期間を必要とせず、顎骨の骨量や厚さが少ない患者にも施術でき、多くの患者の治療期間及び治療回数を短縮することができると共に、顎骨への影響を最小限に止めることで、患者の精神的及び身体的負担を軽減することができる歯科インプラントシステムを提供することにある。
上記本発明の課題は、下記の手段により達成される。
1.1本の歯に対して、複数のインプラント体が用いられる歯科インプラントシステムに
おいて、
各インプラント体の軸部に、顎骨に穿設された掛穴に引掛けられる掛部が設けられ、
この掛部は、前記軸部に対して屈折されており、
各インプラント体が、顎骨に引掛けられる際に、この掛部の屈折方向が、複数のインプラント体で異なる構成であって、
2つのインプラント体が対を成し、各インプラント体の掛部の屈折方向が、相対向するように配置され、
少なくとも2対のインプラント体から成り、
一方の対を成す2つのインプラント体について、各インプラント体の掛部の屈折方向が、互いに内側に向かって相対向するように配置され、
他方の対を成す2つのインプラント体について、各インプラント体の掛部の屈折方向が、互いに外側に向かって相対向するように配置される構成であることを特徴とする歯科インプラントシステム。
.インプラント体の軸部と掛部との間に、軸部に対する掛部の屈折角度を調整するための角度調整部が設けられることを特徴とする前記1に記載の歯科インプラントシステム。
.インプラント体の軸部の基端部に、少なくとも掛部の屈折方向とは反対方向に突出した軸固定部が設けられることを特徴とする前記1又は2に記載の歯科インプラントシステム。
上記1〜3の参考発明として、次の構成を挙げることができる。
(1)1本の歯に対して、複数のインプラント体が用いられる歯科インプラントシステムにおいて、
各インプラント体の軸部に、顎骨に穿設された掛穴に引掛けられる掛部が設けられ、
この掛部は、前記軸部に対して屈折されており、
各インプラント体が、顎骨に引掛けられる際に、この掛部の屈折方向が、複数のインプラント体で異なることを特徴とする歯科インプラントシステム。
(2)2つのインプラント体が対を成し、
各インプラント体の掛部の屈折方向が、相対向するように配置される構成であることを特徴とする前記(1)に記載の歯科インプラントシステム。
(3)少なくとも2対のインプラント体から成り、
一方の対を成す2つのインプラント体について、各インプラント体の掛部の屈折方向が、互いに内側に向かって相対向するように配置され、
他方の対を成す2つのインプラント体について、各インプラント体の掛部の屈折方向が、互いに外側に向かって相対向するように配置される構成であることを特徴とする前記(2)に記載の歯科インプラントシステム。
(4)対を成す2つのインプラント体が、各軸部が交差するように配置され、該軸部が交差する位置で枢支される構成であることを特徴とする前記(2)又は(3)に記載の歯科インプラントシステム。
(5)3つ以上のインプラント体が対を成し、
そのうちの少なくとも2つのインプラント体について、各インプラント体の掛部の屈折方向が、相対向するように配置されることを特徴とする前記(1)に記載の歯科インプラントシステム。
(6)3つ以上のインプラント体が対を成し、
そのうちの少なくとも2つのインプラント体が、各軸部が交差するように配置され、該軸部が交差する位置で枢支される構成であることを特徴とする前記(5)に記載の歯科インプラントシステム。
(7)インプラント体の軸部と掛部との間に、軸部に対する掛部の屈折角度を調整するための角度調整部が設けられることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の歯科インプラントシステム。
(8)インプラント体の軸部の基端部に、少なくとも掛部の屈折方向とは反対方向に突出した軸固定部が設けられることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の歯科インプラントシステム。
(9)インプラント体の軸部に、鍔状の凸部が設けられることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の歯科インプラントシステム。
(10)複数のインプラント体の軸部を結合させると共に、義歯が装着される台座となるアバットメント体を有することを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の歯科インプラントシステム。
(11)アバットメント体の側面に、透孔が設けられることを特徴とする前記(10)に記載の歯科インプラントシステム。
(12)アバットメント体に、顎骨に埋入して固定されるための爪部が設けられることを特徴とする前記(10)又は(11)に記載の歯科インプラントシステム。
(13)アバットメント体に2つの爪部が設けられ、
アバットメント体によって2つのインプラント体の軸部が結合された状態において、
前記2つの爪部が、前記2つのインプラント体の掛部の基端部と、略等辺の四角形を形成する位置に形成されることを特徴とする前記(10)〜(12)のいずれかに記載の歯
科インプラントシステム。
(14)アバットメント体が、複数のインプラント体の軸部を束ねることで結合させる構成であることを特徴とする前記(10)〜(13)のいずれに記載の歯科インプラントシステム。
(15)インプラント体の軸部及び角度調整部は、板状に形成され、
掛部は、柱状又は針状に形成されることを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれかに記載の歯科インプラントシステム。
(16)掛部が、直径0.5mm以上5mm以下の柱状体又は針状体であることを特徴とする前記(1)〜(15)のいずれかに記載の歯科インプラントシステム。
17インプラント体を顎骨に埋入した後、インプラント体と顎骨との結合を要しないことを特徴とする前記(1)(16)のいずれかに記載の歯科インプラントシステム。
前記1に示す発明によれば、インプラント体に設けられた掛部を、顎骨に穿設された掛穴に引掛けることによって、インプラント体を顎骨に取り付けることができる。この取り付け手段によって、1本の歯に対して複数のインプラント体を顎骨に取り付け、これらのインプラント体を歯科用セメント等によって一体に結合すれば、複数のインプラント体が顎骨に固定される。
インプラント体に設けられた掛部は、例えば、軸部の端部を屈折させたように、軸部に対して屈折して設けられ、この掛部を、同じく軸部の方向に対して屈折した方向に穿設された掛穴に引掛けるので、軸部方向には抜けることがない。更に、各インプラント体は、掛部の屈折方向が異なるように取り付けられ、これらのインプラント体が一体に結合されるので、掛部の屈折方向にも抜けることがない。
従来のインプラント治療とは異なり、インプラント体を顎骨にねじ込む等して深く埋入させるのではなく、顎骨に浅く穿設された掛穴に、掛部を引掛ける構成であるため、顎骨の骨量や厚さが少ない場合であっても、補助手術等をすることなく施術することができる。また、インプラント体を深く埋入させることによる顎骨への損傷等の影響を最小限に止めることができる。
かかる構成の歯科インプラントシステムであれば、インプラント体を顎骨に引掛け、各インプラント体を一体に結合するだけで、一体に結合されたインプラント体が顎骨に固定されるので、従来のインプラント治療のように、インプラント体と顎骨とが結合する期間が不要であり、治療期間及び治療回数を短縮することができる。また、顎骨の骨量や厚さが少ない患者にも施術でき、補助手術による治療期間の延長を避けることもできる。
即ち、顎骨の骨量等を問わず、多くの患者の治療期間及び治療回数を短縮することができると共に、顎骨への影響を最小限に止めることで、患者の精神的及び身体的負担を軽減することができる歯科インプラントシステムを提供することができる。
更に、前記に示す発明によれば、2つのインプラント体の掛部の屈折方向が、相対抗するように配置することによって、各掛部が引掛けられる方向が反対になり、これらの2つのインプラント体が一体に結合されれば、一体に結合されたインプラント体が顎骨から外れることがなく固定される。
更にまた、前記に示す発明によれば、2対のインプラント体について、それぞれ内側に向かって相対向するものと、外側に向かって相対向するものを組み合わせることによって、掛部があらゆる方向に対して抜け難くなり、インプラント体の顎骨への固定がより強化される。
前記2に示す発明によれば、インプラント体に設けられた角度調整部によって、掛部の軸部に対する屈折角度を調整することができ、掛部の屈折角度と、顎骨に穿設された掛穴の角度が一致していなくても、歯科医師が臨床現場において、これらの角度を調整し合致させることができる。
前記3に示す発明によれば、軸部の基端部に、少なくとも掛部の屈折方向とは反対方向に突出した軸固定部によって、この軸固定部が、顎骨の表面に当接し、顎骨に埋入された掛部と相俟って、顎骨に取り付けられた軸部が傾くことを防止・抑制することができる。
前記(1)に示す参考発明によれば、インプラント体に設けられた掛部を、顎骨に穿設された掛穴に引掛けることによって、インプラント体を顎骨に取り付けることができる。この取り付け手段によって、1本の歯に対して複数のインプラント体を顎骨に取り付け、
これらのインプラント体を歯科用セメント等によって一体に結合すれば、複数のインプラント体が顎骨に固定される。
インプラント体に設けられた掛部は、例えば、軸部の端部を屈折させたように、軸部に対して屈折して設けられ、この掛部を、同じく軸部の方向に対して屈折した方向に穿設された掛穴に引掛けるので、軸部方向には抜けることがない。更に、各インプラント体は、掛部の屈折方向が異なるように取り付けられ、これらのインプラント体が一体に結合されるので、掛部の屈折方向にも抜けることがない。
従来のインプラント治療とは異なり、インプラント体を顎骨にねじ込む等して深く埋入させるのではなく、顎骨に浅く穿設された掛穴に、掛部を引掛ける構成であるため、顎骨の骨量や厚さが少ない場合であっても、補助手術等をすることなく施術することができる。また、インプラント体を深く埋入させることによる顎骨への損傷等の影響を最小限に止めることができる。
かかる構成の歯科インプラントシステムであれば、インプラント体を顎骨に引掛け、各インプラント体を一体に結合するだけで、一体に結合されたインプラント体が顎骨に固定されるので、従来のインプラント治療のように、インプラント体と顎骨とが結合する期間が不要であり、治療期間及び治療回数を短縮することができる。また、顎骨の骨量や厚さが少ない患者にも施術でき、補助手術による治療期間の延長を避けることもできる。
即ち、顎骨の骨量等を問わず、多くの患者の治療期間及び治療回数を短縮することができると共に、顎骨への影響を最小限に止めることで、患者の精神的及び身体的負担を軽減することができる歯科インプラントシステムを提供することができる。
前記(2)に示す参考発明によれば、2つのインプラント体の掛部の屈折方向が、相対抗するように配置することによって、各掛部が引掛けられる方向が反対になり、これらの2つのインプラント体が一体に結合されれば、一体に結合されたインプラント体が顎骨から外れることがなく固定される。
前記(3)に示す参考発明によれば、2対のインプラント体について、それぞれ内側に向かって相対向するものと、外側に向かって相対向するものを組み合わせることによって、掛部があらゆる方向に対して抜け難くなり、インプラント体の顎骨への固定がより強化される。
前記(4)に示す参考発明によれば、2つのインプラント体の各軸部が交差するように配置され、該軸部が交差する位置で枢支されるので、石吊り具の要領で、軸部に対して顎骨から引き抜かれる方向に力が加わると、掛部が顎骨を掴むように、内側に向かって力を加えるように働くので、軸部を引き抜こうとすればするほど、顎骨からインプラント体が抜け難くなる。
前記(5)に示す参考発明によれば、インプラント体が3つ以上使用される場合であっても、そのうちの少なくとも2つのインプラント体の掛部の屈折方向が、相対抗するように配置することによって、各掛部が引掛けられる方向が反対になり、これらの2つのインプラント体が一体に結合されれば、一体に結合されたインプラント体が顎骨から外れることがなく固定される。
前記(6)に示す参考発明によれば、インプラント体が3つ以上使用される場合であっても、そのうちの少なくとも2つのインプラント体の各軸部が交差するように配置され、該軸部が交差する位置で枢支されるので、石吊り具の要領で、軸部に対して顎骨から引き抜かれる方向に力が加わると、掛部が顎骨を掴むように、内側に向かって力を加えるように働くので、軸部を引き抜こうとすればするほど、顎骨が抜け難くなる。
前記(7)に示す参考発明によれば、インプラント体に設けられた角度調整部によって、掛部の軸部に対する屈折角度を調整することができ、掛部の屈折角度と、顎骨に穿設された掛穴の角度が一致していなくても、歯科医師が臨床現場において、これらの角度を調整し合致させることができる。
前記(8)に示す参考発明によれば、軸部の基端部に、少なくとも掛部の屈折方向とは反対方向に突出した軸固定部によって、この軸固定部が、顎骨の表面に当接し、顎骨に埋入された掛部と相俟って、顎骨に取り付けられた軸部が傾くことを防止・抑制することができる。
前記(9)に示す参考発明によれば、鍔状の凸部が設けられることで、歯科用セメント等を用いて、複数のインプラント体を結合・固定する場合に、用いられる歯科用セメントの移動を規制するので、結合・固定を強化することができる。
前記(10)に示す参考発明によれば、義歯が装着される台座となるアバットメント体が、複数のインプラント体の軸部を結合させるので、複数のインプラント体とアバットメント体とで、義歯と装着させるための基礎を形成することができる。
前記(11)に示す参考発明によれば、アバットメント体の側面に、透孔が設けられることで、歯科用セメント等を用いてインプラント体とアバットメント体を結合・固定する場合に、インプラント体とアバットメント体の間に塗布されたセメントが、この透孔にも流入することで、インプラント体、アバットメント体及び歯科用セメントがより強固に結合・固定され、更に、この透孔からはみ出した歯科用セメントを簡単に除去することもできる。
前記(12)に示す参考発明によれば、アバットメント体に設けたれた爪部が、顎骨に埋入されるので、インプラント体と顎骨との固定に、アバットメント体と顎骨との固定も加わり、より強く固定させることができる。
前記(13)に示す参考発明によれば、アバットメント体に設けられた2つの爪部が、2つのインプラント体の掛部と、略等辺の四角形を形成する位置に形成されるので、2つのインプラント体とアバットメント体との結合体が、掛部の屈折方向のみならず、これと直交する方向に対しても強く固定される。
前記(14)に示す参考発明によれば、アバットメント体が、複数のインプラント体の軸部を束ねることで結合させるので、アバットメント体とインプラント体の取り付けが容易であり、かつ複数のインプラント体を確実に結合することもできる。
前記(15)に示す参考発明によれば、インプラント体の軸部及び角度調整部が板状に形成されるので、2つの板状の軸部を重ねることで、2つのインプラント体を相対向して配置することができる。また、掛部が柱状又は針状に形成されるので、顎骨に穿設する掛穴は、ドリル等によって容易に穿設できる丸穴でよい。このような態様にインプラント体を形成することによって、施術を容易にすることができる。
前記(16)に示す参考発明によれば、掛部を、直径0.5mm以上5mm以下の柱状体又は針状体に形成することで、顎部に設けられる掛穴もこれに対応するサイズを穿設すればよく、掛穴の穿設が容易であると共に、顎骨への損傷等の影響を最小限に止めることができる。
前記(17)に示す参考発明によれば、インプラント体を顎骨に埋入した後、インプラント体と顎骨との結合を要しない構成なので、治療期間及び治療回数を短縮することができる。
参考発明に係る歯科インプラントシステムの一実施例を表す分解説明図 インプラント体の一実施例を表す斜視図 インプラント体の他の実施例を表す斜視図 2対のインプラント体を使用した実施例において、インプラント体を掛部側から観察した態様を表す概略図 軸固定部が設けられたインプラント体の一実施例を表す斜視図 凸部が設けられたインプラント体の一実施例を表す斜視図 凸部が設けられたインプラント体の他の実施例を表す斜視図 枢支部が設けられたインプラント体の一実施例を表す斜視図 アバットメント体の一実施例を表す斜視図 2つのインプラント体を結合させるアバットメント体の実施例を表す斜視図 3つのインプラント体を結合させるアバットメント体の実施例を表す斜視図 4つのインプラント体を結合させるアバットメント体の実施例を表す斜視図 掛部と爪部の位置関係を表す概略図 透孔が設けられたアバットメント体の一実施例を表す斜視図 歯科インプラントシステムの取り付け手順の一例を説明する概略図 歯科インプラントシステムが顎骨に取り付けられた状態の一例を表す概略図 歯科インプラントシステムが顎骨に取り付けられた状態の他の例を表す概略図
本発明に係る歯科インプラントシステム1は、現在実施されている歯科インプラント治療とは異なり、インプラント体を顎骨に埋入した後のインプラント体と顎骨との結合(オッセオインテグレーション)が不要であり、治療期間及び治療回数を短縮することができる歯科インプラントシステムである。
以下、添付の図面に従って本発明を詳細に説明する。
本発明に係る歯科インプラントシステム1の一実施例として、図1に分解説明図を示す。
図1に示されるように、歯科インプラントシステム1は、少なくとも2つのインプラント体2から構成され、これに直接又はアバットメント体3を介して義歯4が取り付けられ
る。
本発明におけるインプラント体2は、顎骨5の特に歯槽骨に設けられた掛穴51に、引掛けて固定するためのものである。
インプラント体2は、図2又は図3に表わされるように、少なくとも軸部21及び掛部22から構成され、角度調整部2又は位置決め部24を設けることができる。
図2は、軸部21及び角度調整部23を板状に形成した例であり、図3は、軸部21及び角度調整部23を角柱状に形成した例である。尚、軸部21及び角度調整部23の形状は、図2又は図3に表わされる形態に限定されるものではない。
軸部21は、顎骨5から自然歯が生える方向と同方向に立設され、顎骨5と義歯4とを直接又は後述するアバットメント体3を介して接続し、固定する箇所である。
軸部21の形状に限定はないが、例えば、図2に示されるように、板状に形成することもできるし、図3に示されるように、角柱状に形成することもできる。尚、軸部21の形状として、円柱状等の非角型を採用することもできるが、後述するように、本発明に係る歯科インプラントシステム1は、2つ以上のインプラント体2を組み合わせて使用するため、この2つ以上のインプラント体2を所定の箇所に配置する際に、板状や角柱状のように側面に平面を有する形状の方が、平面同士を接して固定し易いという利点がある。
また、軸部21のサイズに限定はないが、例えば、図2に示されるように板状に形成される場合には、長さが5mm〜15mm、板の幅が2mm〜7mm、板の厚さが1mm〜2mmに形成することができ、図3に示されるように角柱状に形成される場合には、同じく長さが5mm〜15mm、対角線長が2mm〜3mm(奥歯用は4mm〜7mm)に形成することができる。
尚、軸部21の長さや径又は厚さについては、歯科医師が治療の現場において、患者に合わせて加工することができる。特に、歯科用ドリル等で削ることでサイズや形状を加工することができるので、インプラント体2は、必要なサイズよりもやや大きめであることが好ましい。
掛部22は、軸部21の顎骨5側に設けられ、顎骨5に穿設された掛穴51に引掛けられる箇所である。
掛部22は、図2又は図3に示されるように、軸部21の顎骨5側の端部に又は後述する角度調整部23を介して設けられ、軸部21の軸方向に対して屈折した方向に設けられ、柱状又は針状に形成される。
掛部22は、例えば、軸部21の端部を屈折させるようにして、軸部21に対して屈折して設けられ、この掛部22を、同じく軸部21の方向に対して屈折した方向に穿設された掛穴51に引掛けるので、軸部21の軸方向には抜けることがない。更に、各インプラント体2は、掛部22の屈折方向が異なるように取り付けられ、これらのインプラント体2が一体に結合されるので、掛部22の屈折方向にも抜けることがない。
特に、掛部22は、2つのインプラント体2が対を成す場合において、各インプラント体2の掛部22の屈折方向が、相対向するように配置される。具体的には、掛部22の屈折方向が、互いに内側に向かって向き合う格好で相対向するように配置され(図1に示されるインプラント体2の配置方向を参照。)、又は、掛部22の屈折方向が、互いに外側に向かって相対向するように配置される。
3つ以上のインプラント体2が対を成す場合においても、そのうちの少なくとも2つのインプラント体2について、各インプラント体2の掛部22の屈折方向が、相対向するように配置される。
また、2つのインプラント体2が対を成す場合であって、少なくとも2対のインプラント体2から構成される場合は、一方の対を成す2つのインプラント体2について、各インプラント体2の掛部22の屈折方向が、互いに内側に向かって相対向するように配置され、他方の対を成す2つのインプラント体2について、各インプラント体2の掛部22の屈折方向が、互いに外側に向かって相対向するように配置される。
2つのインプラント体2が対を成す構成について、詳述する。
図4は、2対のインプラント体2から構成される場合において、掛部22側から軸部21側を臨む方向に観察した場合における概略図である。この図4において、角度調整部23が表れる2つで対を成すインプラント体2は、図2に示される態様であり、軸部21が表れる2つで対を成すインプラント体2は、図3に示される態様である。
図4に示されるように、2対のインプラント体2から構成される場合は、一方の対を成すインプラント体2(図2に示される態様)は、その掛部22の先端部22aが、互いに内側を向いて相対向するように配置され、他方の対を成すインプラント体2(図3に示される態様)は、その掛部22の先端部22aが、互いに外側を向いて相対向するように配置される。かかる構成を採用することによって、2対のインプラント体2について、それぞれ内側に向かって相対向するものと、外側に向かって相対向するものとが組み合わされるので、掛部22があらゆる方向に対して抜け難くなり、インプラント体2の顎骨5への固定がより強化される。
掛部22のサイズに限定はないが、必要な強度と顎骨への影響を比較考量すると、長さが3mm〜10mm、径が0.5mm〜5mmの範囲に形成することが好ましく、径について0.7mm〜2mmの範囲に形成することがより好ましい。径が細いものは、前歯ないし上顎への施術に適し、径が太いものは奥歯ないし下顎への施術に適する。尚、掛部22の長さや径については、歯科医師が治療の現場において、患者に合わせて加工することができる。
また、掛部22の軸部21に対する屈折角度に限定はないが、10度〜60度の範囲であることが好ましく、30度〜50度の範囲であることがより好ましい。この屈折角度が小さいと、インプラント対2が軸方向へ離脱するおそれがあり、屈折角度が大きいと、掛部22(又は掛穴51)の上を覆う顎骨5の厚みが薄くなり、強い力が加わると当該部分が割れるおそれがあり、また掛部21の取り付けも掛穴51の穿設も困難になる。
角度調整部23は、軸部21と掛部22との間に設けられ、軸部21に対する掛部22の屈折角度を調整するための箇所である。
角度調整部23は、 図2に示されるように、軸部21と掛部22との接続箇所に、軸部21の軸方向に略直交する方向に延設することができる。この延設された角度調整部23は、軸部21よりも細くないし薄く形成することで屈曲し易くなり、この角度調整部23を任意に屈曲させることで、軸部21に対する掛部22の屈折角度を調整することができる。
また、図3に示されるように、軸部21の掛部22近傍の一部を溝状ないし凹状に形成し、当該部分を軸部21の径又は厚さよりも細く又は薄く形成することによって設けることができる。この溝状ないし凹状に設けられる角度調整部23は、軸部21の外周に沿って連続的に設けられてもよいし、断続的に複数個が設けられてもよい。この溝状ないし凹状に設けられた箇所は、軸部21よりも細くないし薄く形成することで屈曲し易くなり、この角度調整部23を任意に屈曲させることで、軸部21に対する掛部22の屈折角度を調整することができる。
位置決め部24は、軸部21の外周に突出して設けられ、後述するアバットメント体3が用いられる場合に、インプラント体2との取り付け位置を確認ないし予め決定するために設けられる。
位置決め部24は、図3に示されるように、軸部21の外周に沿って鍔状に設けることができる。アバットメント体2に軸部21が挿入される際に、位置決め部24の位置まで挿入されると、この位置決め部24にアバットメント体3が当接し、これ以上は挿入されなくなり、この位置でインプラント体2とアバットメント体3とを取り付けることができる。尚、図2に示されるインプラント体2の場合には、軸部21から延設された角度調整部23が位置決め部24の役割を果たすことができる。
図2に示されるインプラント体2のような形態の場合は、軸部21の下端に、突起部(図示しない)を設けることができる。この突起部は、顎骨5に浅く埋入して固定されるための凸部ないし小突起である。突起部は、顎骨5に軽く打ち込むことによって、又は予め穿設された穴に埋入することによって顎骨5に固定される。この突起部を設けることにより、特に、横方向(軸部21の軸方向とは直交する方向)への強度を高めることができる。
突起部は、軸部21の下端に1つ設けてもよいし、この下端の幅方向両端部に1つずつ計2つ設けてもよいし、3つ以上を設けてもよい。
インプラント体2には、以下に説明するように、軸固定部25、凸部26、枢支部27を設けることもできる。
図5に示されるように、インプラント体2の軸部21の基端部に、少なくとも掛部22の屈折方向とは反対方向に突出した軸固定部25を設けることができる。この軸固定部25が、顎骨5の表面に当接し、顎骨5に埋入された掛部22と相俟って、顎骨5に取り付けられた軸部21が傾くこと、特に掛部22の屈折方向とは反対方向に傾くことを防止・抑制することができる。
軸固定部25は、インプラント体2の軸部21の基端部に設けられ、少なくとも掛部22の屈折方向とは反対方向に突出させることで設けることができ、該基端部の全周にわたって突出させてもよいし、掛部22の屈折方向とは反対方向に加えて他の方向に突出させてもよい。
図6又は7に示されるように、インプラント体2の軸部21に、鍔状の凸部26を設けることができる。歯科用セメント等を用いて、複数のインプラント体2やアバットメント体3を結合・固定する場合に、この凸部26が、歯科用セメントの移動を規制するので、結合・固定を強化することができる。
図6は、図2に示されるインプラント体2に凸部26が設けられた実施例であり、図7は、図3に示されるインプラント体2に凸部26が設けられた実施例である。
凸部26は、軸部21の側面に鍔状に設けることができるが、全周にわたって連続的に形成される必要はなく、全周にわたって断続的に凸部26が形成されてもよいし、例えば半周や1/4周のように一部の周回に形成されてもよい。また、凸部26は、軸部21に上下に複数段設けることができる。図6は、凸部26が上下2段に設けられた例であり、図7は、凸部26が上下3段に設けられた例である。
図7に示される軸部21について、軸部21の基端部に設けられた凸部26(図面上で最下段に表わされる凸部26)は、上述した軸固定部25を兼ねることができる。この場合、凸部26は、少なくとも掛部22の屈折方向とは反対方向に突出する態様となる。
インプラント体2について、他の実施例を挙げる。
2つのインプラント体2が対を成して使用される場合において、図8に示されるように、2つの軸部21が交差するように配置され、該軸部21が交差する位置に枢支部27が設けられ、該枢支部で2つの軸部21が回動可能に枢支される構成を採用することができる。この場合、各インプラント体2の掛部22は、相互に内側に向かって屈折され、相対向するように配置される。
かかる構成を採用することによって、2つのインプラント体2の各軸部21が回動可能に枢支されるので、石吊り具や氷はさみの要領で、軸部21に対して顎骨5から引き抜かれる方向(1)に力が加わると、掛部22が、内側に向かって顎骨5を掴む方向(2)に力を加えるので、軸部21を引き抜こうとすればするほど、インプラント体2が顎骨5から抜け難くなる。
また、3つ以上のインプラント体2が対を成して使用される場合においても、そのうちの少なくとも2つのインプラント体2について、2つの軸部21が交差するように配置され、該軸部21が交差する位置に枢支部27が設けられ、該枢支部で2つの軸部21が回動可能に枢支される構成を採用することができる。この場合も、各インプラント体2の掛部22は、相互に内側に向かって屈折され、相対向するように配置される。
本発明では、少なくとも2つのインプラント体2を使用する。図1等に表わされる実施例では、2つのインプラント体2を使用しているが、1本の歯当たり3つ以上のインプラント体2を使用することができ、特に奥歯など、顎骨5に十分な骨量があり、強度が必要な箇所には、4〜6つのインプラント体2を使用することができる。
インプラント体2を構成する各部は、十分な強度と硬度を有する材料で、一体に成形されることが好ましい。用いられる材料に限定はなく、インプラント体の材料として公知・公用の材料を特別の制限なく採用することができるが、例えば、チタン又はこの合金等の金属の他、セラミックスやジルコニア等を挙げることができる。
次に、アバットメント体3について説明する。
アバットメント体3は、複数のインプラント体2の軸部21を結合させると共に、義歯4が装着される台座となるものである。
図9等に示されるように、アバットメント体3は、台座部31と爪部32とを有する。
台座部31は、複数のインプラント体2の軸部21を結合させると共に、義歯4を装着する土台となる箇所である。
台座部31の形状は、図9に示されるように、中空の角柱形状に形成することができる。この形状は、図2に示されるインプラント体2の形状に対応したもので、中空部31aには、複数のインプラント体2の軸部21が挿通される。中空部31aの形状を、任意の数のインプラント体2の軸部21の形状と予め一致させておくことで、中空部31aに挿通された複数の軸部21は、中空部31a内で密状態に収容され、束ねられるような態様で結合ないし固定される。また、中空部31aを挿通される軸部21よりも大きめに形成しておき、軸部21と台座部31の間に生じた空隙Sを、歯科用セメント等で埋めることができる。即ち、例えば、図16に示されるように、2つのインプラント体2の軸部21の間の空隙Sが歯科用セメント等で埋められることにより、2つの軸部21が傾斜したりすることを抑制できる。
尚、図9における形状は上部が開放されているが、この上部が閉鎖された形状を採用することもできる(図示しない)。
また、台座部31の形状は、図10に示されるように、インプラント体2の数に応じた孔部31bが設けられた形状に形成することができる。この形状は、例えば、図3に示さ
れるインプラント体2の形状に対応したもので、それぞれの孔部31bに、インプラント体2のそれぞれの軸部21が挿通される。孔部31bの形状を、軸部21の形状と予め一致させておくことで、複数のインプラント体2は、それぞれの軸部21が孔部31bに挿通されることで結合ないし固定される。
図10は、2つのインプラント体2が挿通される例であるが、3つのインプラント体2が挿通される場合には、図11に示されるような形状を、4つのインプラント体2が挿通される場合には、図12に示されるような形状を採用することができる。
尚、図10〜12に示されるアバットメント体3の態様であっても、孔部31bを挿通される軸部21よりも大きめに形成しておき、軸部21と台座部31の間に生じた空隙Sを、歯科用セメント等で埋めることができる。
爪部32は、顎骨5に浅く埋入して固定されるための凸部ないし小突起である。爪部32は、顎骨5に軽く打ち込むことによって、又は予め穿設された小穴52に埋入することによって顎骨5に固定される。特に、横方向(軸部21の軸方向とは直交する方向)への強度を高めることができる。
図13に、アバットメント体3に設けられる爪部32と、インプラント体2の掛部22の位置関係について示す。図13は、インプラント体2にアバットメント体3が取り付けられた状態を口腔側から顎骨5に向かって観察した図であり、掛部22と爪部32は実線で表わされ、他の部分は破線で表されている。
2つのインプラント体2を用いた歯科インプラントシステム1の場合、各インプラント体2の掛部22を結んだ直線の方向に対しては、高い強度が発揮されるが、この方向とは異なる方向、特に直交する方向に対しての強度は低いといえる。この直交する方向に対する強度を補うため、アバットメント体3の爪部32は、図13に示されるように、2つの掛部22を結ぶ直線と、2つの爪部32を結ぶ直線とが直行するように設けられることが好ましい。
インプラント体2が、3つ以上用いられる場合でも、掛部22だけでは横方向の強度が低い方向があり、この方向への強度を補う位置に爪部32が設けられることが好ましい。
アバットメント体3には、側面に透孔33が設けれらることが好ましい。透孔33を設けることで、歯科用セメント等を用いてインプラント体2とアバットメント体3を結合・固定する場合に、インプラント体2とアバットメント体3の間に塗布されたセメントが、この透孔33にも流入することで、インプラント体2、アバットメント3体及び歯科用セメントがより強固に結合・固定され、更に、この透孔33からはみ出した歯科用セメントを簡単に除去することもできる。
透孔33は、図14に示されるように、台座部31の側面に設けられる。図14においては、透孔33は1つのみ表わされているが、2つ以上の透孔33を設けてもよい。また、図14では、透孔33は長方形状に表わされているが、この形状に限定はされず、円形や多角形などの形状を特別の制限なく採用することができる。
アバットメント体3は、十分な強度と硬度を有する材料で、一体に成形されることが好ましい。用いられる材料に限定はなく、アバットメント体の材料として公知・公用の材料を特別の制限なく採用することができるが、例えば、チタン又はこの合金等の金属の他、セラミックスやジルコニア等を挙げることができる。
本発明において、インプラント体2単体では、義歯4を顎骨5に固定するのに必要な強度を得ることができないおそれがあるが、このインプラント体2を2つ以上結合させ、更
にはアバットメント体3を結合させることによって、必要十分な強度を得ることができるのである。
続いて、歯科インプラントシステム1を用いた治療手順について説明する。
ここでは、図2に示されるインプラント体2を2つと、図9に示されるアバットメント体3を1つ用いた場合の手順を説明する。
先ず、抜歯した箇所の歯肉6を切開し、顎骨5の歯槽骨に2つの掛穴51を穿設する。2つの掛穴51は、図15に示されるように、相対抗する方向に穿設されることが好ましく、歯列の外側から内側に向けて、又は歯列の内側から外側に向けて穿設されることが好ましい。歯列の内側から外側に向けての方向又はその反対方向から穿設することで、隣接する歯が邪魔にならず、作業が容易となるからである。
掛穴51は、インプラント体2における掛部22の屈折角度と略同一となる角度に穿設することが好ましい。尚、掛穴51を穿設する前に、顎骨5の歯槽骨の表面に球冠状等の窪みを設けておけば、掛穴51を任意の角度に穿設し易い。
また、必要に応じて、顎骨5の歯槽骨に、小穴52も穿設する。小穴52を穿設する位置は、先に説明したとおり、図13に示される位置である。
次に、一方の掛穴51に、インプラント体2の掛部22を引掛けて取り付ける。この際、掛部22と掛穴51の屈折角度に若干の相違が生ずる可能性があるが、インプラント体2に設けられた角度調整部23を折り曲げ等することによって、この屈折角度を調整し、掛部22と掛穴51の角度を一致させることができる。
続いて、他方の掛穴51にも同様に、インプラント体2の掛部22を引掛けて取り付ける。
この際、図15に示されるように、2つのインプラント体2は、それぞれの掛部22が掛穴51に奥まで挿通される過程において、それぞれの軸部21が接し、互いに寄せ合う態様となる。
2つのインプラント体2が接触せず、間に空隙Sが生じる場合(図16参照。)には、この空隙Sを歯科用セメント等で埋めることができ、2つのインプラント体2が一体となって固定されることが好ましい。即ち、例えば、図16に示されるように、2つのインプラント体2の軸部21の間の空隙Sが歯科用セメント等で埋められることにより、2つの軸部21が傾斜したりすることを抑制できる。
尚、掛部22と掛穴51の大きさが合致しない場合には、治療現場において歯科用ドリル等を使用して、掛部22を短く又は細く加工してもよい。
次に、アバットメント体3を、2つの軸部21に軸方向から被せ、束ねるように結合する。アバットメント体3は、インプラント体2に設けられた角度調整部23に接触し、これ以上奥には移動しない。
この状態において、2つのインプラント体2は、それぞれの軸部21が、アバットメント3の中空部31aに密状態で収容されるので、顎骨5に固定される。
インプラント体2とアバットメント体3の間に、空隙Sが生じる場合(図16参照。)には、この空隙Sを歯科用セメント等で埋めることができ、インプラント体2とアバットメント体3とが一体となって固定されることが好ましい。
また、アバットメント体3に設けられた爪部32を、予め顎骨5に穿設された小穴52に埋入する。
最後に、インプラント体2とアバットメント体3との結合体に、義歯4を被せる。この際、インプラント体2又はアバットメント体3を、義歯4に合わせて歯科用ドリル等で加工し、両者が嵌合するように形状を整えることができ、更には歯科用接着剤や歯科用セメ
ント等を用いて、両者を接着固定してもよい。
上記手順で顎骨5に取り付けられた歯科インプラントシステム1を、図16に示す。インプラント体2、アバットメント体3及び義歯4は一体に結合され、顎骨5に固定され、掛部22により軸方向に抜けず、掛部22及び爪部32により横方向にも高い強度を有する。
上記治療手順では、図2に示されるインプラント体2を2つと、図9に示されるアバットメント体3を1つ用いた場合の手順を説明し、その治療が完成した状態の概略図を図16に示したが、図3に示されるインプラント体2を2つと、図10に示されるアバットメント体3を1つ用いた治療が完成した状態の概略図を、図17に示す。図17に示す実施例でも、図16に示す場合と同様の効果を得ることができる。
尚、図16及び17について、アバットメント体3は、部分断面図にて表わされ、アバットメント3に挿通されたインプラント体2の態様が表わされている。
本発明に係る歯科インプラントシステム1によれば、インプラント体2に設けられた掛部22を、顎骨5に穿設された掛穴51に引掛けることによって、インプラント体2を顎骨5に取り付けることができるので、従来のインプラント治療のように、インプラント体2と顎骨5とが結合する期間が不要であり、治療期間及び治療回数を短縮することができる。治療を急ぐ場合には、抜歯と同日にでも、顎骨5への掛穴51の穿設から、インプラント体2及びアバットメント体3の取り付けが可能である。患者に合った義歯4の製作が、同日中に可能であるならば、抜歯と同日に、治療を終えることができる。義歯4の完成が後日になる場合であっても、抜歯からインプラント体2等の取り付けと、義歯4の取り付けの2回の治療で終えることができる。
更に、掛部22は、顎骨5に対して浅くかつ斜めに取り付けられるので、取り付け箇所の骨の厚さや骨量が最小限で足り、特に上顎など、従来のインプラント治療では、補助手術をしなければならなかった患者に対しても施術可能であり、この分の治療回数・時間を短縮することもできる。
本発明に係る歯科インプラントシステム1を使用すれば、顎骨5の骨量等を問わず、多くの患者の治療期間及び治療回数を短縮することができると共に、顎骨5への影響を最小限に止めることで、患者の精神的及び身体的負担を軽減することができる歯科インプラント治療を提供することができる。
1 歯科インプラントシステム
2 インプラント体
21 軸部
22 掛部
22a 先端部
23 角度調整部
24 位置決め部
25 軸固定部
26 凸部
27 枢支部
3 アバットメント体
31 台座部
31a 中空部
31b 孔部
32 爪部
33 透孔
4 義歯
5 顎骨
51 掛穴
52 小穴
6 歯肉
S 空隙

Claims (3)

  1. 1本の歯に対して、複数のインプラント体が用いられる歯科インプラントシステムにおいて、
    各インプラント体の軸部に、顎骨に穿設された掛穴に引掛けられる掛部が設けられ、
    この掛部は、前記軸部に対して屈折されており、
    各インプラント体が、顎骨に引掛けられる際に、この掛部の屈折方向が、複数のインプラント体で異なる構成であって、
    2つのインプラント体が対を成し、各インプラント体の掛部の屈折方向が、相対向するように配置され、
    少なくとも2対のインプラント体から成り、
    一方の対を成す2つのインプラント体について、各インプラント体の掛部の屈折方向が、互いに内側に向かって相対向するように配置され、
    他方の対を成す2つのインプラント体について、各インプラント体の掛部の屈折方向が、互いに外側に向かって相対向するように配置される構成であることを特徴とする歯科インプラントシステム。
  2. インプラント体の軸部と掛部との間に、軸部に対する掛部の屈折角度を調整するための角度調整部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の歯科インプラントシステム。
  3. インプラント体の軸部の基端部に、少なくとも掛部の屈折方向とは反対方向に突出した軸固定部が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科インプラントシステム。
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