JPH08206135A - 義歯または顎間固定用スクリューピン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 歯槽骨に対するアバットメントの固定を安定
的に行えるようにする。 【構成】 歯槽骨１１を構成する上部歯槽骨１１ａおよ
び下部歯槽骨１１ｂを貫通するように、これらにねじ込
み固定されるスクリューピン２を設け、さらに該スクリ
ューピン２を上部に義歯７が装着されるアバットメント
１の下端に一体に突設する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、義歯を口腔側に臨む
歯槽骨上に固定するのに利用する義歯固定用スクリュー
ピンと術後に上下顎を固定する顎間固定用スクリューピ
ンに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、歯根がなくなった顎骨の一部
に、人工的に歯根を埋め込んで、この歯根を土台にし
て、これの上に人工の歯である義歯を取り付ける人工歯
根治療法が、歯科医療分野で広く実施されている。

【０００３】また、この人工的に作られる人工歯根はイ
ンプラントと呼ばれ、外科的に歯槽骨上の歯肉を切除し
た後、予め精密検査して得たサイズの上記インプラント
が局部麻酔の状態で、上記歯槽骨に植え込まれる。ここ
で歯槽骨は、硬質の上部と下部歯槽骨の他に、その内部
にある柔らかい海綿骨とからなる。

【０００４】さらに、上記インプラントの植え込み処理
後、例えば上顎での歯槽骨では６ヶ月、下顎の歯槽骨で
は３ヶ月の放置期間をおいて、インプラントと歯槽骨が
完全につくのを待つ。

【０００５】こうして、このインプラントと歯槽骨とが
完全についたら口の粘膜に埋まっている上記インプラン
トの頭を出して、その上にアバットメントと呼ばれる土
台を取り付けて外科的処理が終了する。

【０００６】次に、予め精密な型どりがされて色，形，
寸法が選択された義歯を、上記アバットメントに対しね
じ込みやマグネットによる吸着力あるいはスプリング部
材による嵌合力によって取り付けることで、インプラン
ト義歯の完成となる。

【０００７】ところで、かかる従来のインプラントは通
常各義歯ごとに一本宛植え込まれ、具体的には、硬い歯
槽骨と海綿骨とを貫通するように、上記インプラントが
植え込まれている。

【０００８】一方、顎を手術した後やシーネ（仮床）を
取り付ける際に、上顎と下顎とを噛合して一定期間固定
することによって、顎肉や筋を保持して安定化させる必
要があるが、従来は上下顎を固定するために布帯で頭か
ら顎を吊る他に、シーネを固定する特別な方法はなかっ
た。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
従来のインプラントの支持構造では、上記歯槽骨内部の
海綿骨がその歯槽骨よりも柔らかく、支持の主たるもの
は上部と下部歯槽骨にあり、例えば釘を石膏ボードに打
ち込んだ状態と同様に、海綿骨によるインプラントの支
持は不十分であり、強い衝撃を受けた場合にはインプラ
ントがぐらつき、従って義歯をインプラント上に安定保
持できなくなるという問題点があった。

【００１０】なお、実験によっても、上記インプラント
周辺には海綿骨による硬化像は観測されていない。

【００１１】この発明は、上記のような従来の問題点に
着目してなされたものであり、海綿骨を包む硬くて薄い
歯槽骨のうち上部歯槽骨と下部歯槽骨の両方にスクリュ
ーピンを貫通支持させることで、上記歯槽骨に対するア
バットメントの固定を安定的に行えるようにする義歯固
定用スクリューピンを得ることを目的とする。

【００１２】また、別の発明として、上記問題点を解消
するために、固定したい位置に確実に、しかも十分な保
持力でもって上と下の顎を固定することができる顎間固
定用スクリューピンを提供することを目的とする。

【００１３】

【課題を解決するための手段】この発明にかかる義歯固
定用スクリューピンは、歯槽骨を構成する硬質の上部歯
槽骨および下部歯槽骨を縦に貫通するに十分な長さでね
じ込み固定されるスクリューを有し、さらに該スクリュ
ーピンを、上部に義歯が装着されるアバットメントの下
端に突設したものである。ここでいう前歯とは臼歯を除
く、上下各１番から５番までの全１０本を示すものであ
り、臼歯の歯槽骨下方にはオトガイ孔とオトガイ神経，
動脈や静脈があり、今の技術では臼歯に対して手術に危
険があり、これを除いたものである。

【００１４】この発明の別の要旨は、上下顎の歯槽骨を
貫通する長さでねじ込み固定されるスクリューと、該ス
クリューの上部に上下顎間を固定するフックとを設けた
顎間固定用スクリューピンにある。

【００１５】

【作用】この発明における義歯固定用スクリューピンで
は、チタンや金，銀，あるいはこれら２以上の合金など
の材料からなる長目のスクリューを、薄くて硬い歯槽骨
を構成する上部歯槽骨および下部歯槽骨に位置決めし
て、予め穿設したガイド孔に沿ってねじ込むことで、こ
のスクリューを上部歯槽骨および下部歯槽骨の２箇所の
支持部でぐらつきを生じることなく保持可能にする。

【００１６】これにより、このように安定保持されたス
クリュー上のアバットメントに対して義歯を装着した場
合に、この義歯の安定保持を実現可能にする。

【００１７】また、この発明の他の実施例である顎間固
定用スクリューピンは、相対向する左右の上顎と下顎の
歯槽骨にスクリューを固定し、上下の歯肉に被せたシー
ネに固定した輪状ワイヤを通した左右の繋索を、スクリ
ューの上部に設けた上下のフックに緊着することによっ
て、上下の顎を確実に固定する。

【００１８】

【実施例】以下に、この発明の一実施例を図１と図２に
基づいて説明する。

【００１９】図１は、この発明の義歯固定用スクリュー
ピンを示す斜視図であり、これが例えば薄い円柱状のア
バットメント１の下面中央に細くて長いスクリュー２を
一体に突設したものからなる。なお、アバットメントは
円柱に限られず、角柱や円筒、角筒など歯槽骨に載置す
るに適した各種形態のものを用いてもよい。

【００２０】また、このアバットメント１およびスクリ
ューピン２は骨や歯ぐきなどの粘膜との適合性が良好
な、例えばチタンや銀または金、これらの合金などの金
属から形成され、スクリュー２の外周には歯槽骨１１に
対して適度の結合力が得られる螺条が施されている。

【００２１】さらに、上記スクリューピン２はアバット
メント１に対する固定基部から先端にいくに従って次第
に先細となるように形成され、その全長は義歯７が装着
される歯槽骨１１のサイズに応じた長さとされる。換言
すれば、歯槽骨１１のうち上部歯槽骨１１ａおよび下部
歯槽骨１１ｂ間の距離に略相当する長さに選定される。

【００２２】なお、このスクリューピン２の長さの選定
は、歯槽骨１１に対するこのスクリューピン２のねじ込
みに先立って、その歯槽骨１１にヤリ状の外科治療用突
切具で穿設されるガイド孔により容易かつ確実に行うこ
とができ、種々の長さがあるものの中から適当な長さの
スクリューピン２が選んで用いられる。

【００２３】また、上記アバットメント１には中央上部
内側に一定の深さのねじ孔３が設けられており、このね
じ孔３には、磁石や磁性材料からなるもう一つのアバッ
トメントとしての義歯取付部材４下端のねじ部５が、ね
じ込み可能となっている。

【００２４】そして、この義歯取付部材４上面の中央部
には係合穴６が形成され、この係合穴６には予め形成さ
れたレジン床９の上部に一体形成した義歯７下部に連設
した磁石からなる突子８が嵌合可能となっており、これ
らの嵌合状態がその磁石の吸着力により安定保持される
ようになっている。

【００２５】次に、かかる構成になる義歯固定用スクリ
ューピンの使用方法について説明する。

【００２６】まず、図２に示すように前歯としての義歯
７を装着しようとする部位の歯槽骨１１のうち上部歯槽
骨１１ａ上の歯肉１２を局部麻酔下でメスにより切除し
たり、筒状の押し抜き刃などにより一定の領域に亘って
押し抜いて除去する。

【００２７】続いて、この歯肉１２を除去した部位に露
出した上部歯槽骨１１ａ上に、ドリルや外科治療用突切
具などの細径の工具先端を位置決めして、殻状の歯槽骨
１１を構成する上部歯槽骨１１ａ，内部の海綿骨１３お
よび下部歯槽骨１１ｂにガイド孔を貫通するように穿設
する。

【００２８】そして、このようにして、ガイド孔を穿設
した後は、アバットメント１に一体の上記ドリル径より
太い上記スクリュー２を、そのガイド孔内にねじ込んで
いき、アバットメント１を歯槽骨１１上に装着する。

【００２９】これにより、上記スクリュー２は硬くて薄
い上部歯槽骨１１ａおよび下部歯槽骨１１ｂの２箇所で
螺合保持され、上下方向および左右方向のいずれの方向
にもぐらつくことがなくなる。

【００３０】そして、このようなアバットメント１およ
びスクリュー２の歯槽骨１１に対する装着ないしは植え
込み後、義歯取付部材４のねじ部５をアバットメント１
のねじ孔３にねじ込む。

【００３１】続いて、このねじ込まれた義歯取付部材４
上の係合穴６内に、予め精密加工された人工歯としての
義歯７下面の突子８を嵌め込み、磁石からなるこの突子
８を磁性材料からなる上記義歯取付部材４に吸着させる
ことで、義歯７のアバットメント１を介した歯槽骨１１
に対する装着を完了することとなる。

【００３２】なお、上記実施例では義歯７の義歯取付部
材４に対する装着保持を、磁石の吸着力を利用して行う
ものを示したが、これに限らず、アバットメント上に突
出部を設けておき、これに義歯下部の２つの円形スプリ
ングを嵌合させるなどの弾発力を利用して着脱自在に保
持したり、アバットメントと義歯のいずれかを雄ネジと
雌ネジにすることで、これらをねじ込みにより保持した
りする構成などを任意に採用できるものである。

【００３３】ついで、この発明の他に実施例を図３と図
４で説明する。

【００３４】図３はこの発明の顎間固定用スクリューピ
ンＢを示す斜視図であり、これの本体下部は細くて長い
スクリュー２１を突設し、上部には鉤状のフック２２を
スクリュー２１と一体に設けている。そして、この顎間
固定用スクリューピンＢは、チタン、銀、金、またはこ
れらの合金からなり、スクリュー２１の外周には歯槽骨
１１に対して適度の結合力を有する螺条が施こされてい
る。また、このスクリュー２１は先細となり、その長さ
は歯槽骨１１に対して斜めにねじ込まれる距離に略相当
する長さに選定される。

【００３５】なお、このスクリュー２１の長さの選定
は、歯槽骨１１に対するこのスクリュー２１のねじ込み
に先立って、その歯槽骨１１にヤリ状の外科治療用突切
具で穿設されるガイド孔により容易かつ確実に行うこと
ができ、種々の長さがあるものの中から適当な長さのス
クリュー２１を選んで用いられる。

【００３６】そして、スクリュー２１の上部にはスクリ
ュー２１と同材料で一体に成形したフック２２が設けら
れている。

【００３７】次いで、上記構成からなる顎間固定用スク
リューピンの使用方法について説明する。

【００３８】まず、図４に示すように固定しようとする
部位の左右の上下に対向する一対の歯槽骨１１のうち上
部または下部歯槽骨１１ａ，１１ｂ上の歯肉１２を局部
麻酔下でメスにより切除したり、押し抜き刃などにより
一定の領域に亘って押し抜いて除去する。なお、歯槽骨
１１の内部は保持強度の低い海綿骨１３となっている。

【００３９】続いて、この歯肉１２を除去した部位に露
出した上部歯槽骨１１ａか下部歯槽骨１１ｂ上に、ドリ
ルや外科治療用突切具などの細径の工具先端を位置決め
して、殻状の歯槽骨１１を構成する上部歯槽骨１１ａか
下部歯槽骨１１ｂから内部の海綿骨１３まで、および必
要に応じては上部と下部歯槽骨１１ａ，１１ｂとを共に
貫通するようにガイド孔を穿設する。

【００４０】そして、このようにして、ガイド孔を穿設
した後は、上記ドリル径より太い上記スクリュー２を、
そのガイド孔内にねじ込んでいき歯槽骨１１に装着す
る。

【００４１】これにより、上記スクリュー２は硬くて薄
い上部歯槽骨１１ａおよび／または下部歯槽骨１１ｂで
螺合保持される。

【００４２】そして、このようなスクリュー２の歯槽骨
１１に対する螺着後、歯肉１２に被せたアクリル系樹脂
などプラスチックスで成形された上下のシーネ（仮床）
２３，２４を、それぞれ噛み合せた状態で、予めシーネ
の成形時に一体に植設しておいた輪状ワイヤを通して、
上下の顎間固定用スクリューピンＢの各フックにステン
レスなどの繋索２７を緊着することで上下の顎間を固定
する。

【００４３】もちろん、顎肉や筋などを安定させる所定
の固定期間を経過した後で、繋索２７やシーネ２３，２
４もろとも顎間固定用スクリューピンを歯槽骨１１から
取り外す。

【００４４】

【発明の効果】以上のように、この発明の義歯固定用ス
クリューピンによれば、歯槽骨を構成する上部歯槽骨お
よび下部歯槽骨を貫通するように、これらにねじ込み固
定されるスクリューを有し、さらに該スクリューを、上
部に義歯が装着されるアバットメントの下端に一体に突
設するように構成したので、海綿骨を包む硬くて薄い歯
槽骨のうち上部歯槽骨と下部歯槽骨の両方に上記スクリ
ューを貫通支持させることができ、上記歯槽骨に対する
アバットメントの固定を安定的に行えるものが得られる
効果がある。

【００４５】また、この発明としての顎間固定用スクリ
ューピンは、従来顎間の安定固定が困難であったものを
上下の歯槽骨へスクリューをねじ込み、これらを繋索な
どで顎間を確実に固定することが容易にできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例による義歯固定用スクリュ
ーピンを示す斜視図である。

【図２】図１の義歯固定用スクリューピンの歯槽骨への
装着状態を示す説明図である。

【図３】この発明の他の実施例としての顎間固定用スク
リューピンを示す斜視図である。

【図４】図１の顎間固定用スクリューピンの顎間の固定
状態を示す説明図である。

【符号の説明】

Ａ 義歯固定用スクリューピン １ アバットメント ２，２１ スクリュー ７ 義歯 １１ 歯槽骨 １１ａ 上部歯槽骨 １１ｂ 下部歯槽骨 Ｂ 顎間固定用スクリューピン ２２ フック ２３ シーネ ２７ 繋索

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 歯槽骨を構成する硬質の上部歯槽骨と下
   部歯槽骨を縦に貫通するに十分な長さでねじ込み固定さ
   れるスクリューと、該スクリューの上部に義歯を装着す
   るためのアバットメントとを備えた義歯固定用スクリュ
   ーピン。
2. 【請求項２】 上下顎の歯槽骨を貫通する長さでねじ込
   み固定されるスクリューと、該スクリューの上部に上下
   顎間を固定するフックとを設けた顎間固定用スクリュー
   ピン。