以下、本発明の実施形態に係る弾性表面波装置(SAW装置)について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、以下の複数の実施形態において、同一又は類似する構成については同一の符号を付して説明を省略することがある。
<第1の実施形態>
(SAW装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るSAW装置1の外観斜視図である。
SAW装置1は、いわゆるウェハレベルパッケージ(WLP)形のSAW装置により構成されている。SAW装置1は、基板3と、基板3に固定されたカバー5と、カバー5から露出する第1端子7A〜第6端子7F(以下、これらを区別せずに、単に「端子7」ということがある。)と、基板3のカバー5とは反対側に設けられた裏面部9とを有している。
SAW装置1は、複数の端子7のいずれかを介して信号の入力がなされる。入力された信号は、SAW装置1によりフィルタリングされる。そして、SAW装置1は、フィルタリングした信号を複数の端子7のいずれかを介して出力する。SAW装置1は、例えば、カバー5側の面を不図示の回路基板等の実装面に対向させて当該実装面に載置された状態で樹脂封止されることにより、端子7を実装面上の端子に接続した状態で実装される。
基板3は、圧電基板により構成されている。具体的には、例えば、基板3は、タンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶等の圧電性を有する直方体状の単結晶基板である。基板3は、第1主面3aと、その背面側の第2主面3bとを有している。基板3の平面形状は適宜に設定されてよいが、例えば矩形である。基板3の大きさは適宜に設定されてよいが、例えば、厚さは0.2mm〜0.5mm、1辺の長さは0.5mm〜2mmである。
カバー5は、第1主面3aを覆うように設けられている。カバー5の平面形状は、例えば、基板3の平面形状と同様(本実施形態では矩形)である。カバー5は、例えば、第1主面3aと概ね同等の広さを有し、第1主面3aの概ね全面を覆っている。
複数の端子7は、カバー5の上面(基板3とは反対側の面)から露出している。複数の端子7の数及び配置位置は、SAW装置1の内部の電子回路の構成に応じて適宜に設定される。本実施形態では、6つの端子7がカバー5の外周に沿って配列されている。
裏面部9は、特に図示しないが、例えば、第2主面3bの概ね全面を覆い、基準電位が付与される裏面電極と、裏面電極を覆う絶縁性の保護層とを有している。裏面電極により、温度変化等により基板3表面にチャージされた電荷が放電される。保護層により、基板3の損傷が抑制される。なお、以下では、裏面部9は、図示や説明が省略されることがある。
図2は、カバー5の一部を破断して示すSAW装置1の斜視図である。
第1主面3aには、弾性表面波共振子(SAW共振子)11A(図3参照)と、弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)11Bとが設けられている。なお、以下では、SAW共振子11AとSAWフィルタ11Bとを区別せずに、これらを「SAW素子11」ということがある。なお、図2において、SAWフィルタ11Bは、後述する図3よりも模式的に示されている。
また、第1主面3aには、第1端子7A〜第6端子7Fの直下において、第1電極パッド13A〜第6電極パッド13F(図3も参照。以下、単に「電極パッド13」といい、これらを区別しないことがある。)が設けられている。電極パッド13は、SAW素子11と接続されている。端子7は、カバー5を貫通するように設けられており、電極パッド13に接続されることにより、SAW素子11と接続されている。
カバー5は、SAW素子11の周囲に空洞が形成されるように第1主面3aを覆っている。具体的には、カバー5は、SAW共振子11Aの周囲に第1振動空間S1を形成し、SAWフィルタ11Bの周囲に第2振動空間S2を形成している。なお、以下では、第1振動空間S1と第2振動空間S2とを区別せずに、これらを「振動空間S」ということがある。
図3は、基板3の第1主面3aにおける配線構造を示す模式的な平面図である。なお、図3においては、振動空間Sの範囲を2点鎖線で示している。
SAW共振子11Aは、例えば、IDT(InterDigital Transducer)電極15Aと、IDT電極15Aの、弾性表面波の伝搬方向(X方向)両側に配置された2つの反射器17Aとを有している。
SAWフィルタ11Bは、例えば、縦結合ダブルモードSAWフィルタにより構成されている。すなわち、SAWフィルタ11Bは、複数(例えば5つ)のIDT電極15Bと、複数のIDT電極15Bの、弾性表面波の伝搬方向(X方向)両側に配置された2つの反射器17Bとを有している。
IDT電極15A又は15B(以下、A、Bを省略することがある。)は、それぞれ一対の電極から構成されている。この一対の電極は、弾性表面波の伝搬方向(X方向)に延びるバスバー15aと、バスバー15aから上記伝搬方向に直交する方向(Y方向)に伸びる複数の電極指15bとを有し、電極指15bが互いに噛合うように配置されている。なお、図3は模式図であることから、電極指15bは、実際の数よりも少ない数で示されている。SAW素子11は、例えばAl−Cu合金等のAl合金によって形成されている。
第4端子7Dは、信号が入力される端子であり、入力側接続線27を介してSAW共振子11Aに接続されている。SAW共振子11Aは、中間接続線29により、SAWフィルタ11Bと接続されている。SAWフィルタ11Bは、出力側接続線31を介して信号を出力する端子としての第3端子7C及び第6端子7Fに接続されている。
第1端子7A、第2端子7B及び第5端子7Eは、基準電位が付与される端子であり、第1グランド接続線33a、第2グランド接続線33b、第3グランド接続線33cにより互いに接続されている。また、第3グランド接続線33cが分岐することにより、SAWフィルタ11Bに接続されている。
なお、中間接続線29と、第2グランド接続線33bとは立体交差している。また、出力側接続線31と第3グランド接続線33cとは立体交差している。
基準電位が付与される電極パッド(13A、13B及び13E)からは、延在部33dが基板3の外側へ向かって延在している。延在部33dは、SAW装置1の製造過程において、SAW装置1の電極パッド(13A、13B及び13E)と、他のSAW装置1の電極パッド(13A、13B及び13E)とを接続するためのものである。
図4は図3のIV−IV線における断面図である。ただし、図4は、図3よりも概念的に描かれており、SAW素子11は図3よりも模式的に示され、第3グランド接続線33cの図示は省略されている。
SAW装置1は、第1主面3aに設けられた第1導電層19と、第1導電層19及び第1主面3aに積層された保護膜25とを有している。
第1導電層19は、SAW素子11、入力側接続線27、中間接続線29、出力側接続線31、第1グランド接続線33a、延在部33d及び電極パッド13を構成している。第1導電層19は、例えば、Al−Cu合金等のAl合金により形成されており、その厚さは、例えば、100〜300nmである。
なお、以下では、第1導電層19のうち、入力側接続線27、中間接続線29、出力側接続線31、第1グランド接続線33a及び延在部33dを構成する部分(SAW素子11及び電極パッド13を除く部分)を「配線導体12」ということがある。
保護膜25は、第1導電層19及び第1主面3aに積層された第1保護層39と、第1保護層39に積層された第2保護層41とを有している。
そして、保護膜25の、第1保護層39のみにより構成された部分は、薄肉部43を構成しており、保護膜25の、第1保護層39及び第2保護層41により構成された部分は、薄肉部43よりも厚い厚肉部45を構成している。
第1保護層39及び第2保護層41は、同一の材料により形成されていてもよいし、互いに異なる材料により形成されていてもよい。本願では、説明の便宜上、第1保護層39と第2保護層41との境界線を明示しているが、現実の製品においては、第1保護層39と第2保護層41とが同一材料により形成され、境界線が明らかでなくてもよい。なお、第1保護層39及び第2保護層41は、密着性の観点から同一材料により形成されていることが好ましい。
第1保護層39及び第2保護層41は、例えば、絶縁性及び遮水性を有する材料により形成されている。例えば、第1保護層39及び第2保護層41は、酸化珪素(SiO2など)、窒化珪素、シリコンなどにより形成されている。
第1保護層39は、電極パッド13の配置領域を除いて、第1主面3aの全面に亘って形成されている。すなわち、第1保護層39は、SAW素子11及び配線導体12、並びに、第1主面3aの第1導電層19の非配置領域に積層されている。
第2保護層41は、電極パッド13の配置領域及びSAW素子11の配置領域を除いて、第1主面3aの全面に亘って形成されている。すなわち、第2保護層41は、配線導体12上、及び、第1導電層19の非配置領域上において、第1保護層39に積層されている。
従って、薄肉部43は、SAW素子11を覆っている。また、厚肉部45は、配線導体12を覆っている。図3において、薄肉部43と厚肉部45との境界線BLを2点鎖線にて示す。薄肉部43は、例えば、振動空間S内に配置されている。
図4に示すように、カバー5は、保護膜25に積層されている。カバー5は、保護膜25に積層された枠部35と、枠部35に積層された蓋部37とにより構成されている。
枠部35は、保護膜25の厚肉部45に積層されている。枠部35は、第1主面3aの平面視においてSAW素子11を囲むように形成されている。蓋部37は、枠部35に積層され、枠部35の開口を塞いでいる。そして、第1主面3a(保護膜25)、枠部35及び蓋部37により囲まれた空間により、振動空間Sが形成されている。
枠部35は、概ね一定の厚さの層に振動空間Sとなる開口が1以上(本実施形態では2つ)形成されることにより構成されている。なお、図3における、基板3(第1主面3a)の輪郭を示す実線及び振動空間Sの範囲を示す2点鎖線により示される形状は、枠部35の平面形状と概ね同一である。
本実施形態において、振動空間が2つに分けられているのは、枠部35による蓋部37の支持強度を向上させるために、仕切壁35b(図2)を形成したことによるものである。従って、必要な支持強度が得られるのであれば、SAW装置1は、仕切壁35bが省略されて、一の振動空間に2つのSAW素子11が配置されていてもよい。
枠部35及び蓋部37は、概ね一定の厚さの層により構成されている。枠部35の厚さ(振動空間Sの高さ)は、例えば、数μm〜30μmである。蓋部37の厚さは、例えば、数μm〜30μmである。
枠部35及び蓋部37は、例えば、感光性樹脂により形成されている。感光性樹脂は、例えば、アクリル基やメタクリル基などのラジカル重合により硬化する、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系の樹脂である。
なお、枠部35及び蓋部37は、同一の材料により形成されていてもよいし、互いに異なる材料により形成されていてもよい。本願では、説明の便宜上、枠部35と蓋部37との境界線を明示しているが、現実の製品においては、枠部35と蓋部37とが同一材料により形成され、境界線が明らかでなくてもよい。
図5は、図4の領域Vを拡大して示す断面図である。
第1保護層39は、例えば、第1導電層19の配置位置及び非配置位置に亘って、概ね一様の厚さになるように形成されている。第1保護層39の厚さt1、換言すれば、薄肉部43の厚さt1は、例えば、第1導電層19の厚さt0よりも小さい。より具体的には、厚さt1は、厚さt0の1/10程度であり、例えば10〜30nmである。
第2保護層41は、例えば、第1導電層19(配線導体12)の配置位置及び非配置位置に亘って、上面が平坦になるように形成されている。第2保護層41は、例えば、厚肉部45の、第1主面3a上における厚さt2が、第1導電層19の厚さt0以上となるように設定されている。例えば、厚さt2は、100〜300nmである。なお、厚さt2が厚さt0よりも大きくなるように設定すると、一般には、第2保護層41の厚さ(t2−t1)は、第1保護層39の厚さt1よりも大きくなる。
図6は、図3のVI−VI線における断面図である。すなわち、配線の立体交差を説明する図である。
保護膜25上には、絶縁層21と、第2導電層23とが形成されている。
第2導電層23は、第2グランド接続線33b及び第3グランド接続線33cを構成している。絶縁層21は、第1導電層19と第2導電層23とが交差する位置において、第1導電層19と第2導電層23との間に介在している。
絶縁層21は、例えば、ポリイミドなどの感光性樹脂により形成されており、その厚さは、例えば、1〜2μmである。第2導電層23は、例えば、金、ニッケル、クロムにより形成されている。なお、第2導電層23の材料は、第1導電層19の材料に比較して、腐食しにくい。第2導電層23は、絶縁層21によって生じる段差により断線しないように、例えば、第1導電層19よりも厚く形成されており、その厚さは、例えば、1〜2μmである。
(SAW装置の製造方法)
図7〜図9は、SAW装置1の製造方法を説明する、図4に対応する断面図である。製造工程は、図7(a)から図9(c)まで順に進んでいく。
以下に説明する工程は、いわゆるウエハプロセスにおいて実現される。すなわち、分割されることによって基板3となる母基板を対象に、薄膜形成やフォトリソグラフィー法などが行われ、その後、ダイシングされることにより、多数個分のSAW装置1が並行して形成される。ただし、図7〜図9では、1つのSAW装置1に対応する部分のみを図示する。後述する他の実施形態の製造工程を説明する図も同様である。また、導電層や絶縁層は、プロセスの進行に伴って形状が変化するが、変化の前後で共通の符号を用いる。
図7(a)に示すように、まず、基板3の第1主面3a上には、第1導電層19が形成される。具体的には、まず、スパッタリング法、蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の薄膜形成法により、第1主面3a上に第1導電層19となる金属層が形成される。次に、金属層に対して、縮小投影露光機(ステッパー)とRIE(Reactive Ion Etching)装置とを用いたフォトリソグラフィー法等によりパターニングが行われる。これにより、SAW素子11及び配線導体12を含む第1導電層19が形成される。
第1導電層19が形成されると、図7(b)に示すように、第1保護層39が形成される。なお、厳密には、図7(b)の時点では、第1保護層39には電極パッド13を露出させる開口は形成されておらず、第1保護層39は完成していない。第1保護層39は、例えば、CVD法または蒸着法等の薄膜形成法により形成される。
第1保護層39が形成されると、図7(c)に示すように、薄肉部43が形成される領域に犠牲層47が形成される。犠牲層47は、例えば、スピンコート等により感光性樹脂(フォトレジスト)の薄膜が形成され、その薄膜がフォトリソグラフィーによりパターニングされることにより形成される。
犠牲層47が形成されると、図7(d)に示すように、第2保護層41となる薄膜が、第1主面3aの全面に亘って犠牲層47及び第1保護層39上に積層される。当該薄膜は、例えば、第1保護層39と同様に、CVD法または蒸着法等の薄膜形成法により形成される。
次に、図8(a)に示すように、第2保護層41のうち犠牲層47上の部分、及び、犠牲層47を除去する。このようにして、薄肉部43及び厚肉部45が形成される。犠牲層47等の除去は、例えば、犠牲層47を溶解可能な溶剤を用いて、フォトリソグラフィーの現像と同様に行われる。
犠牲層47等が除去されると、図8(b)に示すように、フォトリソグラフィー法等によって厚肉部45の一部が除去され、電極パッド13が露出する。換言すれば、保護膜25が完成する。
なお、図7(b)の後において第1保護層39の一部をフォトリソグラフィー法等によって除去して電極パッド13を露出させ、図7(c)において電極パッド13上にも犠牲層47を形成し、図8(a)において電極パッド13上の犠牲層47及び第2保護層41を除去することにより、電極パッド13を露出させてもよい。
保護膜25が完成すると、図8(c)に示すように、枠部35となる薄膜が形成される。薄膜は、例えば、感光性樹脂により形成されたフィルムが貼り付けられることにより、又は、保護膜25等と同様の薄膜形成法により形成される。
枠部35となる薄膜が形成されると、図8(d)に示すように、フォトリソグラフィー法等により、薄膜の一部が除去され、枠部35が形成される。これにより、枠部35の開口(振動空間Sとなる部分)、及び、電極パッド13を露出させる貫通孔が形成される。
枠部35が形成されると、図9(a)に示すように、蓋部37が形成される。蓋部37は、枠部35と同様に、感光性樹脂のフィルムを貼り付けることにより薄膜を形成し、当該薄膜に対して電極パッド13を露出させるためのフォトリソグラフィーを行うことにより形成される。
蓋部37が形成されると、図9(b)に示すように、めっき下地層49及びレジスト層51が形成される。
めっき下地層49は、第1主面3aの全面に亘って成膜され、カバー5の上面、カバー5の電極パッド13を露出させる貫通孔の内周面、電極パッド13に積層される。めっき下地層49は、例えば、TiとCuとを積層したものからなり、スパッタ法により形成される。
レジスト層51は、カバー5の電極パッド13上の貫通孔及びその周囲において、めっき下地層49が露出するように形成される。レジスト層51は、例えば、スピンコート等により感光性樹脂の薄膜が形成され、その薄膜がフォトリソグラフィーによりパターニングされることにより形成される。
レジスト層51が形成されると、図9(c)に示すように、電気めっき処理により、めっき下地層49の露出部分に金属53を析出させる。金属53は、例えば、Cuである。その後、めっき下地層49のレジスト層51に被覆されていた部分及びレジスト層51が除去されることにより、端子7が形成される。
なお、上記の説明から理解されるように、端子7は、めっき下地層49及び金属53により形成されている。また、端子7のカバー5からの露出面は、ニッケルや金などにより構成されてもよい。
図示は省略するが、絶縁層21及び第2導電層23は、保護膜25を形成する工程(図8(b))と枠部35を形成する工程(図8(c))との間において形成される。絶縁層21は、例えば、CVD法または蒸着法等の薄膜形成法により第1主面3aの全面に薄膜が形成され、フォトリソグラフィー法によって薄膜の一部が除去されることにより形成される。第2導電層23は、例えば、第1導電層19と同様の方法により形成される。
端子7の形成後、且つ、ダイシング前においては、端子7を介して信号の入出力を行うことにより、SAW装置1の検査が行われる。延在部33dは、ダイシング前においては、他のSAW装置1の延在部33dと連続しており、検査時の基準電位の安定に寄与する。
なお、以上の実施形態において、SAW装置1は本発明の弾性波装置の一例であり、SAW素子11又はIDT電極15は本発明の励振電極の一例であり、第1保護層39は本発明の第1層の一例であり、第2保護層41は本発明の第2層の一例であり、第2導電層23は本発明の積層導体の一例である。
(第1変形例)
図10(a)は、第1変形例の図5に対応する断面図を示している。第1変形例において、厚肉部45(第2保護層41)は、第1主面3a上における厚さt2と、配線導体12上における厚さt3とが同等になるように形成され、上面に段差が形成されている。
なお、図5等において示した上面が平坦な厚肉部45は、例えば、配線導体12よりも高く第2保護層41となる薄膜を形成した後に平坦化処理をしたり、粘度の低い液状材料を用いた液相成長法により第2保護層41を形成したりすることにより形成可能である。第1変形例のような厚さが概ね一定の厚肉部45(第2保護層41)は、スパッタリングやCVD法により形成可能である。
(第2変形例)
図10(b)は、第2変形例の図5に対応する断面図を示している。第2変形例において、厚肉部45(第2保護層41)は、第1変形例と同様に、第1主面3a上における厚さt2と、配線導体12上における厚さt3とが同等になるように形成され、当該厚さは、配線導体12の厚さよりも小さい。
以上の実施形態及び変形例によれば、SAW装置1は、基板3と、基板3の第1主面3aに設けられたSAW素子11と、第1主面3aに設けられ、SAW素子11に接続された配線導体12と、SAW素子11及び配線導体12を覆う絶縁性の保護膜25とを有する。保護膜25は、SAW素子11を覆う薄肉部43と、配線導体12を覆い、薄肉部43よりも厚い厚肉部45とを有する。
従って、保護膜25がSAW素子11の振動に及ぼす影響を抑制しつつ、配線導体12の被覆性を向上させ、ひいては、配線導体12の腐食抑制効果を向上させることができる。
特に、厚肉部45の第1主面3a上における厚みt2が、配線導体12の厚みt0以上であることから、腐食抑制効果が飛躍的に向上する。具体的には、以下のとおりである。
図5において示す、第1保護層39のうち、配線導体12の側面を覆う部分の厚さt4は、第1主面3a上又は配線導体12上における第1保護層39の厚さt1に比較して薄くなりやすく、配線導体12の側面に露出部分が生じることもあり得る。従って、従来においては、一般に、配線導体12は、最初に側面が腐食する。しかし、厚肉部45の厚みt2が配線導体12の厚みt0以上となると、配線導体12の側面は、第1保護層39(従来の保護膜)に覆われる状態から、保護膜25に埋もれる状態となる。そして、配線導体12の側面の腐食が確実に抑制され、ひいては、配線導体12全体としての腐食抑制効果も向上する。
厚肉部45の第1主面3a上における厚みt2は、100nm以上である。この程度の厚みがあれば、従来の10〜30nmの厚みの保護膜に比較して、十分な腐食抑制効果が期待される。また、上述した、配線導体12よりも厚い厚肉部45の形成も期待される。
SAW装置1は、保護膜25に積層され、第1主面3aの平面視においてSAW素子11を囲む枠部35、及び、枠部35の開口を塞ぐ蓋部37を有するカバー5を更に有する。配線導体12及び厚肉部45は、枠部35と重なる部分を有する。従って、配線導体12やSAW素子11の腐食抑制効果が向上する。具体的には、以下のとおりである。
図11(a)は、比較例の端子7周辺における断面図を示している。この比較例のように、第2保護層41(厚肉部45)が設けられていない場合には、第1保護層39(比較例における保護膜)の上面には、配線導体12による段差と同等の段差が生じる。当該段差においては、枠部35と第1保護層39との間に隙間Cが生じやすい。例えば、フィルムにより枠部35を形成する場合には、当該段差にフィルムの塑性変形が追従せずに隙間Cが生じる。枠部35は、隙間Cが形成されることにより、防水性が低下し、配線導体12等が腐食する可能性が高くなる。
一方、図4に示すように、本実施形態においては、保護膜25の上面は平坦である。また、第1及び第2変形例に対応する図11(b)に示すように、保護膜25の上面の段差は、配線導体12による段差よりも緩やかな形状となっている。従って、枠部35と保護膜25との密着性が向上し、ひいては、配線導体12等の腐食抑制効果が向上する。特に、延在部33dのような、配線導体12が枠部35の外縁に交差する部分を有するときに有効である。なお、保護膜25の上面の段差が配線導体12による段差よりも緩和された形状となるのは、薄膜形成法の指向性が完全ではないことなどに起因する。第1保護層39(従来の保護膜)は、配線導体12の厚さに比較して非常に薄いことから、当該第1保護層39のみでは、当該段差の緩和の効果はほとんど現れない。
保護膜25は、SAW素子11及び配線導体12を覆う絶縁性の第1保護層39と、第1保護層39の配線導体12を覆う部分を覆う絶縁性の第2保護層41とを有する。薄肉部43は、第1保護層39により構成され、厚肉部45は、第1保護層39及び第2保護層41により構成されている。
また、当該構成に対応して、SAW装置1の製造方法は、以下の工程を有している。(1)基板3の第1主面3aに設けられたSAW素子11及び配線導体12を覆う絶縁性の第1保護層39を形成する工程(図7(b))。(2)第1保護層39のうちSAW素子11を覆う領域を覆う犠牲層47を形成する工程(図7(c))。(3)第1保護層39及び犠牲層47を覆う絶縁性の第2保護層41を形成する工程(図7(d))。(4)第2保護層41の犠牲層47上の部分、及び、犠牲層47を除去する工程(図8(a))。
従って、後述する第2の実施形態に比較して薄肉部43を薄くすることが容易である(当該効果については、第2の実施形態においても説明する。)。例えば、薄肉部43をSAW素子11よりも薄く形成することが容易である。そして、その結果、保護膜25がSAWに及ぼす影響を極力抑制することができる。
<第2の実施形態>
図12は、第2の実施形態に係るSAW装置の製造方法を説明する断面図である。なお、図12(a)〜図12(d)に示す工程は、図7(b)〜図8(b)に示す工程に対応する。換言すれば、図7(a)、図8(c)〜図9(c)に示す工程については、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様であり、説明は省略する。
図12(a)に示すように、第1主面3a上には、保護膜125となる薄膜が形成される。当該薄膜は、例えば、第1導電層19よりも厚く(第1導電層19が埋没する高さに)形成される。なお、当該薄膜の上面は、平坦であってもよいし、第1導電層19に起因して段差を有していてもよい。
次に、図12(b)に示すように、SAW素子11の配置領域を除いてレジスト層155が形成される。レジスト層155は、例えば、スピンコート等により感光性樹脂(フォトレジスト)の薄膜が形成され、その薄膜がフォトリソグラフィーによりパターニングされることにより形成される。
レジスト層155がパターニングされると、図12(c)に示すように、保護膜125となる薄膜のうちレジスト層155から露出されている部分が、RIE等により、SAW素子11が露出しない深さまでエッチングされる。これにより、薄肉部143及び厚肉部145が形成される。
その後、図12(d)に示すように、レジスト層155は除去される。また、厚肉部145は、フォトリソグラフィーなどにより一部が除去され、電極パッド13が露出する。
なお、図12(c)の工程と図12(d)の工程との間において、電極指15b間の領域をフォトリソグラフィーによりエッチングすることも可能である。
以上の実施形態によれば、保護膜125は、SAW素子11を覆う薄肉部143と、配線導体12を覆い、薄肉部143よりも厚い厚肉部145とを有するから、第1の実施形態と同様の効果が奏される。すなわち、保護膜125がSAW素子11の振動に及ぼす影響を抑制しつつ、配線導体12の被覆性を向上させ、ひいては、配線導体12の腐食抑制効果を向上せさせることができる。
さらに、第2の実施形態は、保護膜125となる薄膜を1回成膜するだけでよいから、第1の実施形態に比較して、製造工程を簡素化することが容易である。
ただし、第2の実施形態は、図12(c)を参照して説明したように、SAW素子11が露出しないようにエッチングを行う必要があり、第1の実施形態に比較して、エッチングの深さの調整が難しく、また、薄肉部143を第1導電層19よりも薄くすることができない。電極指15b間のエッチングも行うとすれば、電極指15bが微細であることから、高いエッチング精度が要求されるとともに、工程数の増加を招く。従って、第1の実施形態は、上述のように、第2の実施形態に比較して、薄肉部の薄肉化に有利である。
<第3の実施形態>
図13は、第3の実施形態のSAW装置を示す、図3に対応する平面図である。
第3の実施形態の保護膜225(符号は図14(a)参照)は、第1主面3aの平面視において、SAW素子11を囲む環状に延び、枠部35と重なる溝部253を有している。なお、第3の実施形態のSAW装置においては、延在部33dは設けられておらず、溝部253は、第1導電層19の全体を囲んでいる。
図14(a)は、図13のXIV−XIV線における断面図である。
溝部253は、厚肉部245の配置領域内に薄肉部243が線状に配置されることにより形成されている。第1保護層39のパターンは、第1の実施形態と同様である。第2保護層241のパターンが第1の実施形態と異なることにより、薄肉部243及び厚肉部245のパターンは第1の実施形態と異なっている。
枠部35は、例えば、フィルムが貼り付けられることにより形成され、溝部253の形状に追従して塑性変形して、保護膜225に密着している。または、枠部35は、例えば塗布方法やCVD等の薄膜形成法により形成され、材料が溝部253の内面に付着することにより、保護膜225に密着している。
(第3変形例)
図14(b)は、第3変形例に係る図14(a)に対応する断面図である。
第3変形例では、溝部253に代えて、突条部353が形成されている。突条部353は、薄肉部343の配置領域内に厚肉部345が線状に配置されて形成されている。なお、突条部353の平面形状は、溝部253と同様である。第1保護層39のパターンは、第1の実施形態と同様である。第2保護層341のパターンが第1の実施形態と異なることにより、薄肉部343及び厚肉部345のパターンは第1の実施形態と異なっている。枠部35は、第3の実施形態と同様に、保護膜325に密着している。
以上の第3の実施形態及び第3変形例によれば、溝部253又は突条部353により、枠部35の外部から内部への方向において、保護膜225(325)と枠部35との界面における沿面距離が長くなり、水分の浸入が抑制される。また、当該界面に隙間が生じた場合には、当該隙間は、枠部35に沿って水分を導き、振動空間S(より好ましくは、第1導電層19の配置領域)への水分の浸入を抑制する。その結果、保護膜の腐食抑制効果が向上する。
なお、第3の実施形態及び第3変形例においても、第1の実施形態と同様に、薄肉部243又は343は、SAW素子11を覆い、厚肉部245又は345は、配線導体12を覆っている。ただし、薄肉部及び厚肉部は、そのように形成されないことも可能である。
<第4の実施形態>
図15(a)は、第4の実施形態に係るSAW装置における、図3のXV−XV線に対応する断面図である。
第1の実施形態では、第2保護層41上に、絶縁層21及び第2導電層23が積層されたのに対し、第4の実施形態では、第1保護層39上に、絶縁層21及び第2導電層23が積層されている。そして、第2導電層23は、第2保護層41によって覆われている。
(第4変形例)
図15(b)は、第4変形例に係るSAW装置における、図15(a)に対応する断面図である。
第4変形例では、第1導電層19上に、絶縁層21及び第2導電層23が積層されている。そして、第2導電層23は、第1保護層39及び第2保護層41によって覆われている。
以上の第4の実施形態及び第4変形例によれば、第2導電層23も腐食が抑制される。従って、第2導電層23を第1導電層19よりも腐食しにくい材料から選択する必要性が薄れ、設計の自由度が向上する。また、従来は、立体交差部は、その段差が大きく、枠部35の密着性の観点から、枠部35と重なる領域に配置することが難しかった。しかし、第2導電層23によって立体交差部の段差の形状が緩やかにされることから、立体交差部を枠部35と重なる領域に配置することも可能となる。その結果、第1主面3aのスペースを有効活用して、SAW装置1を小型化することなども可能となる。
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
弾性波装置は、SAW装置に限定されない。例えば、弾性波装置は、圧電薄膜共振器であってもよい。弾性波装置において、絶縁層(21)及び第2導電層(23)は省略されてもよいし、逆に、他の適宜な層が形成されてもよい。
励振電極を覆う薄肉部は、配線導体の一部を覆っていてもよいし、配線導体を覆う厚肉部は、励振電極の一部を覆っていてもよい。導電層に対して、適宜な位置に薄肉部又は厚肉部が配置されてよい。保護膜の厚さは、複数段階に設定されていてもよい。