(1)第1の実施例
以下、本発明を具体化した第1の実施例について、図1ないし図15を参照しながら説明する。本実施例に係るデジタルタコグラフ1は、図6に示すように、トラックや自家用車等の車両に設けられる車載器2と、この車載器2に対して着脱可能に装着されるタコグラフモジュール3とを備えている。本実施例では、前記車載器2は、インストルメントパネルの運転席側に設けられたメータ部(コンビネーションメータ)4内の右端部寄り部分に組込まれて車室内に設けられている。詳しくは後述するように、前記タコグラフモジュール3は、車載器2が備える装着部5(図4(a)参照)に対して、右側から水平に挿入して装着される。
詳しい図示及び説明は省略するが、前記メータ部4には、周知のように、スピードメータやタコメータが設けられると共に、水温計、燃料計などの各種メータや、時計(時刻表示部)等が設けられている。更にシフトポジションの表示器やウインカー表示器、各種ワーニングランプ等が設けられている。また、図示はしないが、メータ部4の各メータや表示器は、メータ制御回路により制御される。このメータ制御回路は、マイコンを含んで構成され、車両に搭載された複数のシステム(制御コンピュータ)間での通信ネットワークを形成するCAN(Controller Area Network)に接続されている。このメータ制御回路には、例えばイグニッションのオン・オフ情報や、エンジン回転数センサ、車速センサ、シフトポジションセンサ、水温センサ、フューエルセンサ等の各種車載センサの検出に基づく情報等が入力される。
ここで、前記タコグラフモジュール3について、図1〜図3を参照して詳述する。本実施例では、タコグラフモジュール3は、図1で左右方向に長く前後方向にやや薄型のスティック状の本体(パッケージ)6内に、回路基板7(図2参照)を内蔵すると共に、前記本体6の一端部(図で左端部)に、電気的接続用のUSBコネクタ8を直接的に(ケーブルを介さずに)備えて構成されている。つまり、このタコグラフモジュール3は、例えば市販されているUSBメモリの如き形状(大きさ)をなし、小型で持運び可能(容易)に構成されている。
図2、図3に示すように、前記回路基板7には、表面(前面)側に位置して(図2(a)参照)、USBコネクタ8の基端側が実装されていると共に、マイコン9が実装され、更に、状態を報知するための報知部として機能するブザー10並びに緑のLED11及び赤のLED12が実装されている。前記マイコン9は、図3に示すように、USBインターフェイス13、CPU14、IOインターフェイス15、内部RAM16、内部フラッシュROM17を1チップに集積して構成されている。
また、図2(b)に示すように、回路基板7の裏面(後面)側には、運行データ等を記録するための2個のフラッシュメモリ18、18が実装されていると共に、前記ブザー10及び2個のLED11,12を駆動するための駆動回路19が実装されている。この場合、回路基板7は、数平方cm程度の大きさとすることが可能である。タコグラフモジュール3の駆動用の電源は、USBコネクタ8を介して、車載器2側(或いはパソコンや専用リーダ側)から供給されるようになっている。
これにて、タコグラフモジュール3は、USBコネクタ8を介して車載器2と接続されてデータ通信が行われ、フラッシュメモリ18に対する運行データの書込み等がなされる。また、タコグラフモジュール3は、USBコネクタ8を介して図示しないパソコン(或いは専用のリーダ)と接続されてデータ通信が行われ、運行データの読出し、ひいては、保存や解析等が行われる。その際、パソコン(専用リーダ)にも、USBコネクタ8が着脱可能に接続されるUSBコネクタ(ポート)が設けられていることは勿論である。尚、このUSBコネクタ8は、USB2.0規格或いはUSB2.0規格以上のものとされ、100Mbps以上のデータ通信速度を有している。
この場合、図1に示すように、タコグラフモジュール3の本体6には、右端側の前面部に位置して、ブザー10による警告音を発するための複数個の小孔からなる音声出力部20が設けられ、右端部には、前記LED11及び12による緑色及び赤色の表示部21が設けられている。本体6の左端寄り部分には、該本体6の内部が開放された際に、再貼付けが不能となる封印シール22が貼付けられている。更に、図4(b)に示すように、本体6の上面部及び下面部には、左右方向の中央やや右寄り部位に位置して、抜止め用の係止凹部6a(下面部のみ図示)が設けられている。
以上のように構成されたタコグラフモジュール3に対し、前記車載器2は、次のように構成されている。即ち、図5に示すように、車載器2は、各種車載センサからの信号が入力される車両信号インターフェイス23と、USBホスト機能を持つマイコン24と、USBコネクタ25とを備えている。また、車載器2には、車両電源が電源回路26を介して供給されると共に、電源回路26からの電源を、USBコネクタ25を介してタコグラフモジュール3側にも供給するようになっており、電源供給手段を構成する。USBコネクタ25には、タコグラフモジュール3のUSBコネクタ8が着脱可能に接続される。マイコン24(CPU28)は、CANコントローラを内蔵しており、CANバスにも接続されている。
前記マイコン24は、IOインターフェイス27、CPU28、内部RAM29、内部フラッシュROM30、USBインターフェイス31を備えて構成されている。マイコン24は、車両信号インターフェイス23から入力された各種車載センサからの信号に基づいて運行データを生成し、前記タコグラフモジュール3に送信する機能を備えている。従って、マイコン24が信号出力手段として機能する。
後述するように、前記タコグラフモジュール3に記録される運行データは、最低限、時刻と、その時刻における速度と走行距離のデータが含まれている。このとき、車両センサからの信号としては、最低限、車速(及び時刻)があれば良いが、運行データとして、他にも、省燃費運転のアドバイスを行うために、エンジン回転数のデータや、運行記録をとるために、ナビゲーション装置(GPS)から得られた位置(緯度、経度)データを含ませても良い。
そして、図4に示すように、車載器2は、メータ部4の右端部外面部に、前記タコグラフモジュール3が挿入されて接続される装着部5を備えている。この装着部5は、図4(a)に示すように、タコグラフモジュール3の本体6のうち、右端部分(音声出力部20及び表示部21)を除く部位が挿入される大きさの、上下及び図で前後に壁を有し、右端が開口した横長の箱状をなしている。図示は省略しているが、装着部5の左端の奥壁部には、USBコネクタ25が設けられている。
装着部5の右端開口部部分には、該開口部を開閉する蓋部32が、上辺のヒンジ部32aを介して開閉自在に取付けられている。タコグラフモジュール3の非装着状態では、蓋部32は自重により開口部を閉塞し、装着部5内へ水の侵入等を防止している。タコグラフモジュール3を装着部5に装着するにあたっては、蓋部32を開放させ、右側からタコグラフモジュール3を水平にして装着部5内に挿入し、USBコネクタ8をUSBコネクタ25に嵌合接続させるようにする。
このとき、装着部5の上下の壁部には、図4(b)にも示すように、タコグラフモジュール3の装着状態で、その本体6の係止凹部6aに夫々係止する係止部33,33が一体的に設けられている。この係止部33がタコグラフモジュール3の係止凹部6aに係止することによって、タコグラフモジュール3の本体6の抜止め及び上下方向の変位(振動)が防止(拘束)されるようになる。
また、本実施例では、図4(a)に示すように、装着部5の底部(下の壁部)には、装着部5内に侵入した水分を排出するために、左右方向中間部(前記係止部33のやや左側)に位置して第1の水抜き穴34が設けられていると共に、左端部(奥壁部のすぐ手前)に位置して第2の水抜き穴35が設けられている。このとき、装着部5の底面部は、第1の水抜き穴34及び第2の水抜き穴35、並びに右端開口部に向けて緩やかに下降傾斜する形態に設けられている。
更に、本実施例では、装着部5の内壁部のうち、左右方向中間部分(前記第1の水抜き穴34のやや左側)に位置して、タコグラフモジュール3の本体6の外面との間を液密にシールして、奥側即ちUSBコネクタ8,25側への水の侵入を防止するOリングからなるシール部材36が設けられている。
さて、上記構成においては、タコグラフモジュール3のマイコン9(CPU14)は、次の作用説明(フローチャート説明)にて述べるように、デジタルタコグラフ1として必要な動作を実行する。具体的には、第1に、車載器2側から入力される運行データ(時刻及びその時刻における速度と走行距離のデータ)のフラッシュメモリ18への記録(書込み)を実行する。
このとき、フラッシュメモリ18に記録される運行データは、直近24時間分については、最低限、所定時間である500ms以下の間隔の詳細な詳細データ(以下「24hrデータ」という)となり、その直近24時間以前の過去52週分については、前記所定時間よりも長い間隔例えば1分間隔で平均化した平均化データ(以下「52週データ」という)とされる。マイコン9は、24hrデータが24時間分を超えた場合に、24時間分を超えるデータを、52週データに変換して記憶させるデータ変換手段として機能する。また、上記封印テープ22を含め、フラッシュメモリ18に記録された運行データの消去や改ざんを防止する機能が設けられていることは勿論である。
後述するように、マイコン9は、運行データ(24hrデータ)をフラッシュメモリ18に書込む際に、運行データにエラーがないかどうかをチェックするエラーチェック手段として機能し、エラーがあった場合に運行データにエラーデータを付加して記録させる。この場合、24hrデータを52週データに変換する際に、24hrデータ中に前記エラーデータが含まれている場合には、前記エラーデータが前記52週データに悪影響を与えず、且つエラーの記録が失われることのないようなエラーデータ処理を行う。
第2に、マイコン9は、音声出力部20(ブザー10)及び表示部21(LED11,12)によるドライバに対する動作状態の表示や異常報知を実行する。この場合、緑のLED11及び赤のLED12の点灯、点滅を行うことにより、正常、異常の表示を行うと共に、異常時には、ブザー10を鳴動させて警報音を出力する。このときの異常の種類としては、図7(a)に示す通りであり、初期化処理における異常、運行中の異常、PC接続時の異常がある。これら各異常の発生(検出)時には、運行データと同様に、時刻及び状態(異常)コード(図7(b)参照)からなる状態データがフラッシュメモリ18に記録され、異常発生状況の事後確認が可能とされる。また、状態の報知(表示)については、図7(b)に示す一覧の通りに実行される。
次に、上記のように構成されたデジタルタコグラフ1の動作について、図8ないし図15も参照して述べる。図8〜図13のフローチャートは、タコグラフモジュール3のマイコン9(CPU14)の実行する処理を示している。図8は起動処理、図9はデータの入出力処理、図10は読出し処理(図9のステップS17の詳細な処理)、図11は消去処理(図9のステップS18の詳細な処理)、図12は書込み処理(図9のステップS19の詳細な処理)、図13は終了処理を夫々示している。
即ち、まず、図8の起動処理において、タコグラフモジュール3の電源がオン(ACCオン)されると(スタート)、ステップS1にて、内部(マイコン9)の初期化が実行され、次のステップS2にて、タコグラフモジュール3が正常に動作するかどうかの自己診断が行われる。この自己診断の処理では、内部RAM16のテスト、内部フラッシュROM17のデータ照合(チェックサム、CRC、2重書きデータ比較等)、LED11,12の駆動テスト、ブザー10の駆動テストなどが実行される。
ステップS3では、自己診断の結果がOKかどうかが判断され、正常に動作しなかった場合には(ステップS3にてNo)、ステップS4にて起動時異常の報知がなされる。図7(b)に示したように、この起動時異常では、赤のLED12の点灯、緑のLED11の消灯、ブザー10の鳴動(継続)による異常報知が行われる。これに対し、正常に動作する場合には(ステップS3にてYes)、ステップS5にて、図7(b)に示したように、緑のLED11を点灯させる(赤のLED12は消灯、ブザー10はオフ)ことにより正常の報知がなされる。この後、図9のデータの入出力処理に進む。
図9のデータ入出力処理においては、まずステップS11にてUSBの初期化が行われ、次のステップS12にて接続先(車載器2かPCか)の判別が行われる。これは、車載状態では、記録間隔に規定(500ms以下)があるのに対し、パソコン等の解析装置ではそれを考慮する必要がないからである。パソコンに接続されている場合には(ステップS12にてNo)、ステップS13に進み,PC接続時の状態表示、即ち、図7(b)に示す、緑のLED11及び赤のLED12の双方の点灯(ブザー10はオフ)が行われ、ステップS16に進む。
これに対し、車載器2に接続されている場合には(ステップS12にてYes)、ステップS14にて、500ms以内に運行データの書込み処理の要求があったかどうかが判断される。書込みがあった場合には(ステップS14にてYes)そのままステップS16に進む。運行データの書込み処理の要求が確認できなかった場合には(ステップS14にてNo)、ステップS15にて、車載器2との接続が異常と判断され、図7(b)に示す、緑のLED11及び赤のLED12の双方の点灯更にブザー10の3秒間の鳴動による異常報知が行われる。但し、この異常報知後も、運行データの記録が可能となるケースもあるので、ステップS16に進み、以降の動作を続行する。
パソコンとの接続或いは車載器2との接続の確認後、ステップS16では、要求されるデータ入出力の種類が、読出し、消去、書込みの3つのうちいずれの処理であるかが判断される。データの読出しである場合には、ステップS17の読出し処理(図10)に進む。データの消去である場合には、ステップS18の消去の処理(図11)に進む。データの書込みである場合には、ステップS19の書込み処理(図12)に進む。これらの処理後は、ステップS12に戻る。
ここで、データの読出し処理では、記録されたデータを活用したアプリケーション(例えば省燃費運転診断や安全運転診断等)を実現するために、車載器2やパソコンにより、フラッシュメモリ18に記録された運行データの読出しが行われる。この場合、記録された状態データ(異常コード)の読出しも行うことができる。データの消去の処理は、一般に公開されないダイアグ用の特殊用途のソフト(例えばメーカの工場内のみで使用できる)を用いた場合のみ可能となる。
また、データの書込みの処理は、車載器2からの運行データをフラッシュメモリ18に書込む処理である。データ改ざん防止のため、パソコンからの書込みは、一般に公開されないダイアグ用の特殊用途のソフト以外は禁止されている。尚、各処理において、エラーコードの授受の詳細は規定されていないが、エラーコードは、処理要求後に車載器2又はパソコンが読出すことにより、授受されるものとする。
図10のフローチャートは、図9のステップS17の読出し処理の詳細な手順を示している。即ち、ステップS21では、要求されたデータが、運行データであるか状態データであるかが判断される。要求データが状態データである場合には、ステップS22にて、フラッシュメモリ18から状態データが読出されて送信された上で、図9のフローチャートにリターンする。
要求データが運行データである場合には、ステップS23に進み、フラッシュメモリ18から指定期間に関しての運行データの読出しが行われる。そして、次のステップS24では、読出した運行データが正常であるかどうかが判断される。正常である場合には(ステップS24にてYes)、ステップS25にて、指定期間の運行データが送信され、リターンする。
一方、運行データに異常があった場合には(ステップS24にてNo)、ステップS26にて、異常報知(図7(b)に示す、緑のLED11及び赤のLED12の双方の点灯、並びにブザー10の3秒間の鳴動)が行われると共に、運行中のデータ異常があった旨のデータ(0x03の異常コード)がパソコン(又は車載器2)に送信される。さらに、異常が部分的であって有効な運行データが存在する場合もあるので、ステップS25に進み、指定期間の運行データが送信された上で、リターンする。
図11のフローチャートは、図9のステップS18の消去処理の詳細な手順を示している。即ち、ステップS31では、消去コマンドが専用のダイアグコマンドかどうかが判断される。このとき、データ消去は、一般に公開されない特殊用途のソフトの専用ダイアグコマンドのみにより行うことができ、それ以外では対応しないので、専用のダイアグコマンド以外の場合には、そのまま図9のフローチャートにリターンする。専用のダイアグコマンドである場合には、ステップS32に進み、フラッシュメモリ18から指定されたデータの消去が行われる。
ここで、データ消去時にエラーが発生する場合があるので、ステップS33にて、データ消去が正常に行われたかどうかが判断される。正常の場合は(ステップS33にてYes)、そのままリターンする。エラーが発生した場合には(ステップS33にてNo)、ステップS34にて、フラッシュメモリ18のエラーが発生した該当領域を使用禁止とする処理が行われ、リターンする。この場合、領域は、セクタやブロック、アドレス範囲等、フラッシュメモリ18の構造や管理方法に応じて任意に設定することが可能である。使用禁止とされた領域については、以後、その領域への書込み、読出しは行われない。
図12のフローチャートは、図9のステップS19の書込み処理の詳細な手順を示している。即ち、ステップS41では、フラッシュメモリ18に十分な空きエリアがある(例えば1時間分の運行データを書込むことが可能な記憶容量が残っている)かどうかが判断される。1時間分以上の記憶容量が残っている場合には(ステップS41にてYes)、次のステップS42にて、指定された運行データ(24hrデータ)がフラッシュメモリ18に書込まれる。
これに対し、フラッシュメモリ18の記憶容量が不足すると判断された場合には(ステップS41にてNo)、ステップS43にて、異常報知(図7(b)に示す、緑のLED11の点灯及び赤のLED12の点滅、並びにブザー10の3秒間の鳴動)が行われ、ステップS44にて、記録容量不足があった旨のデータ(0x04のコード)が車載器2に送信される。そして、ステップS42に進んで、要求されたデータの書込みが行われる。
ここで、データの書込み時にもエラーが発生する場合があるので、ステップS45にて、データの書込みが正常に行われたかどうかが判断される。正常の場合は(ステップS45にてYes)、そのまま図9のフローチャートにリターンする。エラーが発生した場合には(ステップS45にてNo)、ステップS46にて、フラッシュメモリ18のエラーが発生した該当領域を使用禁止とし、ステップS42にもどって、別の領域への書込みが実行される。
尚、上記書込みデータについては、要件として、500ms以下の間隔で記録することとなっているが、データのサンプリングは車載器2側で行われるため、本実施例では、データの正当性は車載器2側で担保されるものとし、タコグラフモジュール3側では特にデータのチェックを行っていない。しかし、マイコン9は、次のようなチェック項目についてエラーのチェックを行い、エラーがあった場合に運行データにエラーデータを付加して記録し、車載器2またはパソコンからの読出しにより、異常の発生状況が事後にも確認できるようにすることもできる。
チェックするエラーの例としては、(1)前回の受信データと今回の受信データとの時刻情報が、0ms〜500msの範囲を越えている、(2)仕様で決められた必要なデータ(時刻、速度、距離等)が欠落している、(3)時刻×速度の値と、距離の値とが著しく乖離している、(4)データの書込み時に使用されるチェックサム、CRCが異常である、などである。また、次に述べる終了処理において、24hrデータを52週データに変換する際に、エラーデータを利用して、異常なデータがそのまま52週データに反映されてしまうことを回避することもできる。
図13のフローチャートは、終了処理の処理手順を示している。この終了処理は、ステップS51にて、例えば車載器2側から終了処理要求を受信する(或いはユーザ(ドライバ)がスイッチ等により終了操作を行う)ことにより開始される。まず、ステップS52では、フラッシュメモリ18内の24hrデータが24時間分以上存在するかどうかが判断される。24hrデータが24時間に満たない場合には(ステップS52にてNo)、ステップS55に進む。
24hrデータが24時間分以上ある場合には(ステップS52にてYes)、ステップS53にて、24時間を越えるデータを古い順に52週データ(1分平均のデータ)に変換し、52週データを書込む処理が行われる。次のステップS54では、52週データに変換済みの24hrデータの領域を消去する処理が行われる。この領域については、再度データの書込みに利用される。
ステップS55では、フラッシュメモリ18内の52週データについて、52週間分以上存在するかどうかが判断される。52週間分以上のデータがない場合には(ステップS55にてNo)、そのまま処理を終了する。そして、ある場合には(ステップS55にてYes)、ステップS56にて、52週を越えたデータが古い順に消去され、処理が終了する。尚、上記処理において、データの書込みや消去に伴い、エラーが発生した場合には、上記と同様に、フラッシュメモリ18のエラーが発生した該当領域を使用禁止とすることができる。
また、上記したように、書込みデータのチェックを行って24hrデータ中にエラーデータを付加させた場合には、エラーデータが52週データに悪影響を与えず、且つエラーの記録が失われることにないように、次のような処理を行っても良い。即ち、24hrデータからエラーデータを間引いて52週データに変換し、別途エラーデータのみを保存する。又は、24hrデータからエラーデータを間引いて52週データに変換し、別途エラーデータを含む1分間の24hrデータを解析用に保存する。或いは、24hrデータからエラーデータを間引いて52週データに変換し、別途エラーデータを含む前後30秒(この時間は必要に応じて変更可)の24hrデータを解析用に保存する。
次に、図14及び図15のフローチャートは、車載器2側のマイコン24(CPU28)が実行する動作手順を示しており、図14は起動からデータの書込みの処理、図15は終了処理を夫々示している。まず、図14のフローチャートにおいて、車載器2の電源がオンされると(スタート)、ステップS61にて、内部の初期化が行われた後、ステップS62にて、USBの初期化が行われる。ステップS63では、400msタイマが起動され、ステップS64では、CAN信号及び車両信号が取得され、ステップS65にて、USB経由でタコグラフモジュール3に対し、運行データの書込みの指示が行われる。
ステップS66では、400msタイマがオーバーフローしたかどうか判断され、400msが経過すると(ステップS66にてYes)、ステップS63からの処理が繰返される。この場合、400ms間隔としたのは、上記した運行データの書込み間隔を500ms以下とする要件を担保するためであるが、500ms以下を担保できれば、タイマの値は任意に設定できる。
図15のフローチャートに示すように、終了処理は、ステップS71にて車両のACCオフが検出されることにより開始され、次のステップS72では、タコグラフモジュール3に対して終了処理要求が送信される(図13のステップS51参照)。次いで、ステップS73にて、10sタイマが起動され、10秒が経過すると、全ての処理が終了される。尚、図13の説明でも述べたと同様に、車載器2側において、ユーザがスイッチにより終了操作を行うことに基づき、タコグラフモジュール3に対して終了処理要求を送信する構成としても良い。
本実施例のデジタルタコグラフ1によれば、次のような作用・効果を得ることができる。即ち、デジタルタコグラフ1を、車両のメータ部4に組込まれる小型の車載器2と、この車載器2に着脱可能に装着されUSBコネクタ8を介して電源及び運行データが供給されるタコグラフモジュール3とを備えて構成した。このとき、タコグラフモジュール3を、小型のスティック状の本体6に、デジタルタコグラフ1として最小限必要な機能、つまり、運行データを記憶するフラッシュメモリ18や、状態を報知するための表示部21(LED11,12)及び音声出力部20(ブザー10)を設けて構成した。
これにより、車載器2側の報知部が不要となるなど車載器2側の構成が簡単になり、1個のDINスロットを占有することがなくなったことと併せて、車載器2及びタコグラフモジュール3の双方に関して、構成の簡単化及び十分な小型化を図ることができた。従って、本実施例によれば、車両に搭載され、運行データの記録及び状態の報知を行うことができるデジタルタコグラフ1にあって、小型化を図ることができると共に、安価に済ませることができるという優れた効果を奏するものである。
また、特に本実施例では、前記車載器2とタコグラフモジュール3とを接続するコネクタを、USB2.0規格以上のUSBコネクタ8,25から構成したので、タコグラフモジュール3とパソコン等との接続も容易となる等、コネクタ8を汎用性の高いものとすることができるメリットを得ることができる。さらに、本実施例では、車載器2を、メータ部4に組込んで設けたので、運転席正面の、運転者にとって見やすく使いやすい位置にタコグラフモジュール3(表示部21や音声出力部20)を配置することが可能となり、また、走行センサ等からの信号は元々メータ部4内に導入されているので、配線等も簡単に済ませることができる。
そして、本実施例では、タコグラフモジュール3が装着される車載器2側の装着部5に、タコグラフモジュール3の本体6の係止凹部6a、6aに夫々係止して、抜止め及び上下方向の変位(振動)を防止する係止部33,33を一体的に設けるようにしたので、装着部5に対するタコグラフモジュール3の振動を抑制することができ、ひいてはUSBコネクタ8,25部分における瞬断や端子の摩耗による接触不良の発生を防止することができる。
しかも、本実施例では、装着部5の底部に、第1の水抜き穴34及び第2の水抜き穴35を設けると共に、装着部5の内壁部に、タコグラフモジュール3の本体6との間を液密にシールするシール部材36を設けるようにしたので、装着部5の開口部に蓋部32を設けたことと併せ、装着部5内へ水の侵入を防止すると共に、装着部5内に侵入した水分を容易に排出することができ、コネクタ8,25部分に対する絶縁性の低下や腐食などの悪影響を効果的に防止することができる。
(2)第2の実施例、その他の実施例
次に、図16〜図21を参照しながら、本発明の第2の実施例について述べる。但し、上記第1の実施例と共通する部分については、同一符号を付して新たな説明などを省略することとし、上記第1の実施例と異なる点を中心に説明する。本実施例に係るデジタルタコグラフは、例えばメータ部4に組込まれる車載器41(図19参照)と、この車載器41の装着部に対し着脱可能に装着されるタコグラフモジュール42(図16、図18参照)とを備えて構成される。
そのうちタコグラフモジュール42の構成について、図16〜図18を参照して述べる。図16に示すように、タコグラフモジュール42の本体43は、小型で持運び可能(容易)な図で左右方向に長いスティック状をなし、その一方の端部(図で左端部)に、車載器41側の車両用コネクタ44(図19参照)と接続するための第1のコネクタ45が直接的に設けられていると共に、他方の端部(図で右端部)に、外部のパソコンや専用のリーダ(いずれも図示せず)と接続するための第2のコネクタとしてのUSBコネクタ46が直接的に設けられている。
前記第1のコネクタ45は、図18に示すように、車両信号用の入力端子や、CAN用の送信端子及び受信端子、車載器41側から電源供給を受けるための電源端子などを備えている。また、前記USBコネクタ46は、100Mbps以上のデータ通信速度を有するUSB2.0規格或いはUSB2.0規格以上のものとされ、データ入出力用の端子や、外部のパソコンや専用のリーダから電源供給を受けるための電源端子を備えている。
また、図16に示すように、本体43の前面の右端側には、ブザー10による警告音を発するための複数個の小孔からなる音声出力部20が設けられ、右端部には、緑のLED11及び赤のLED12による緑色及び赤色の表示部21が設けられている。本体43の左端寄り部分には、該本体43の内部が開放された際に、再貼付けが不能となる封印シール22が貼付けられている。本体43の右端部には、前記USBコネクタ46を覆う防水キャップ47が着脱可能に装着されている。
図17に示すように、本体43内には、回路基板48が設けられる。図18にも示すように、回路基板48には、表面(前面)側に位置して(図17(a)参照)、前記第1のコネクタ45の基端側が実装されていると共に、USB用のマイコン9が実装され、更に、状態を報知するための報知部として機能するブザー10並びに緑のLED11及び赤のLED12が実装され、前記USBコネクタ46の基端側が実装されている。前記マイコン9は、図18に示すように、USBインターフェイス13、CPU14、IOインターフェイス15、内部RAM16、内部フラッシュROM17を1チップに集積して構成されている。
前記回路基板48の裏面(後面)側には(図17(b)参照)、CANマイコン49が実装されていると共に、運行データ等を記録するための2個のフラッシュメモリ18、18や、前記ブザー10及び2個のLED11,12を駆動するための駆動回路19が実装されている。図18に示すように、前記CANマイコン49は、CANインターフェイス50、CPU51、IOインターフェイス52、内部RAM53、内部フラッシュROM54を1チップに集積して構成されている。IOインターフェイス52には、車両信号が信号インターフェイス55を介して入力される。IOインターフェイス52と前記マイコン9のIOインターフェイス15とは接続され、CPU51、14間での通信を行う。
前記車載器41は、図19に示すように、各種車載センサからの信号が入力される車両信号インターフェイス23と、CAN通信機能を持つマイコン56と、前記タコグラフモジュール42のUSBコネクタ46が着脱可能に接続される車両用コネクタ44とを備えている。また、車載器41には、車両電源が電源回路26を介して供給されると共に、電源回路26からの電源を、車両用コネクタ44を介してタコグラフモジュール42側にも供給するようになっている。
前記マイコン56は、IOインターフェイス57、CPU58、内部RAM59、内部フラッシュROM60、CANインターフェイス61を備えて構成されている。マイコン56は、車両信号インターフェイス23を介して入力された各種車載センサからの車両信号や、CANにおけるCAN通信データを、前記タコグラフモジュール42に送信する機能を備えている。また、本実施例では、車載器41のマイコン56(IOインターフェイス57)は、例えば駆動回路62を介してLCD63やスピーカ64を有するカーオーディオ装置に接続されている。これにて、車載器41のマイコン56が、LCD63に必要な表示を行わせたり、スピーカ64から音声(警報音)を出力させたりできるようになっている。
上記構成により、タコグラフモジュール42は、車載機41側に設けられる図示しない装着部に対して装着され、車両用コネクタ44と第1のコネクタ45が接続されてデータ通信が行われ、フラッシュメモリ18に対する運行データの書込み等がなされる。このとき、図示は省略しているが、装着部には、前記タコグラフモジュール42の本体43の着脱方向である前後方向、及び、上下方向又は水平横方向への変位を防止するための係止部が設けられている。また、装着部の底部には水抜き穴が設けられており、装着部の内壁部には、タコグラフモジュール42の本体43との間を液密にシールして水の侵入を防止するシール部材が設けられている。
尚、タコグラフモジュール42が車載機41の装着部に装着されている状態では、本体43の右端部にはUSBコネクタ46を覆うように防水キャップ47が装着されている。また、これも図示はしないが、タコグラフモジュール42は、車載器41から取外した状態で、USBコネクタ46を介して図示しないパソコン(或いは専用のリーダ)との接続が可能に構成され、それらの間でデータ通信が行われて運行データの読出し、ひいては、保存や解析等が行われる。
図20及び図21のフローチャートは、本実施例における、タコグラフモジュール42のマイコン9及びCANマイコン49の実行する処理のうち、データの入力処理及び終了処理を夫々示している。尚、タコグラフモジュール42(マイコン9及びCANマイコン49)が実行する他の処理、つまり起動処理、読出し処理、消去処理、書込み処理等については、上記第1の実施例で述べた各処理(図8〜図13)にほぼ準ずる(ほぼ同様の処理を行う)ので、第1の実施例と相違する点のみについて、図示及び説明を行う。
図20のフローチャートに示すように、タコグラフモジュール42が車載器41に接続されると、まず起動処理が行われた後、ステップS81にてCAN通信の初期化が行われる。次のステップS82では、500msタイマが起動され、ステップS83にて、CAN通信データ及び車両信号のデータが取得(サンプリング)される。そして、ステップS84にて、フラッシュメモリ18に対する運行データの書込み処理が行われる。この運行データの書込み処理は、上記第1の実施例(図12)と同様にして行われる。
ステップS85では、500msタイマがオーバーフローしたかどうかが判断される。500ms以内に運行データの書込みが行えた場合には(ステップS85にてNo)、ステップS82からの処理が繰返される。500ms以内に運行データの書込みが行えず、500msタイマがオーバーフローした場合には(ステップS85にてYes)、ステップS86にて、緑のLED11及び赤のLED12の双方の点灯更にブザー10の3秒間の鳴動による異常報知が行われる。但し、この異常報知後も、運行データの記録が可能となるケースもあるので、ステップS82に戻り、以降の動作を続行する。
次に、図21のフローチャート(終了処理)においては、ステップS91にて、タコグラフモジュール42においてACCオフを検出すると、以降の終了処理(ステップS52〜S56)を開始する。つまり、上記第1の実施例における終了処理(図13のフローチャート)との相違点は、車載器2側から終了処理要求を受信することに代えて、タコグラフモジュール42側で直接的にACCオフを検出する点にある。その後の終了処理は、図13で述べたと同様であるので、説明を省略する。
このような第2の実施例によれば、上記第1の実施例と同様に、タコグラフモジュール42を、小型のスティック状の本体43に、デジタルタコグラフとして最小限必要な機能、つまり、運行データを記憶するフラッシュメモリ18や、状態を報知するための表示部21(LED11,12)及び音声出力部20(ブザー10)を設けて構成したので、車載器41及びタコグラフモジュール42の双方に関して、構成の簡単化及び十分な小型化、更には全体のコストダウンを図ることができる。
そして、本実施例では、タコグラフモジュール42の本体43に、前記車載器41側に設けられた車両用コネクタ44と接続するための第1のコネクタ45を設けると共に、外部のパソコン又は専用リーダと接続するためのUSBコネクタ46を設ける構成としたので、タコグラフモジュール42に設けられた2つのコネクタ45,46を使い分けながら、車載器41及び外部のパソコン又は専用リーダと接続することが可能となり、車両側に専用のコネクタを設けずとも済むなど、利便性を高めることができるものである。
図22(a)〜(e)は、本発明の他の実施例(第3〜第7の実施例)を示すものであ。これら第3〜第7の実施例においては、やはりデジタルタコグラフ1は、車載器(USBコネクタ25のみを図示)と該車載器に対して着脱可能なタコグラフモジュール3とを備えて構成されるのであるが、車載器を、メータ部4以外の車載装置に組込んで車室内に設ける場合のいくつかの具体例を示している。即ち、図22(a)に示す本発明の第3の実施例では、デジタルタコグラフ1の車載器を、車載装置であるETC車載装置71に組込むようにしている。
図22(b)に示す本発明の第4の実施例では、デジタルタコグラフ1の車載器を、車載装置であるカーナビゲーション装置の表示ユニット72に組込むようにしている。図22(c)に示す本発明の第5の実施例では、デジタルタコグラフ1の車載器を、車載装置であるドライブレコーダ73に組込むようにしている。図22(d)に示す本発明の第6の実施例では、デジタルタコグラフ1の車載器を、車載装置であるタクシーメータ74に組込むようにしている。図22(e)に示す本発明の第7の実施例では、デジタルタコグラフ1の車載器を、車載装置であるタクシー用の車載無線装置75に組込むようにしている。
これらの構成によっても、デジタルタコグラフ1の車載器を別の車載装置にコンパクトに組込むことができ、別途の組付けが不要となると共に、運転者にとって見やすく使いやすい位置にタコグラフモジュール3を配置することが可能となる等の利点を得ることができる。さらには、その車載装置が有している機能を用いて、ユーザに対する状態の報知(表示や音声報知)を併せて行う等の連携を図るように構成することもできる。
尚、上記各実施例では、デジタルタコグラフの車載器を車載装置に一体的に組込んで設ける場合を例としたが、車載器を単体の装置として、車両のインパネ等に設けるようにしても良い。タコグラフモジュール(本体)の形状としても、スティック状に限らず、ブロック状(箱状)やカード状などであっても良い。例えば大型のスピーカ(ブザー)を内蔵するために、本体を部分的に膨らんだ形状にしても良い。
その他、車載器側に設けられる装着部の構成、即ちタコグラフモジュールの振動防止(抜止め)構造や、コネクタ部分の防水のための構造としても、様々な変更が可能であり、例えばタコグラフモジュールを斜め上方から差込むような構成とすることもできる。また、コネクタの規格としても、USB等に限定されるものではなく、データ通信速度が100Mbps以上であれば、IEEE1394等の通信規格のものを採用しても良い等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。