JP5543854B2 - グリップテープ - Google Patents

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本発明は、打球具等のグリップに巻回されるグリップテープに関する。本発明のグリップテープは、湿潤状態でも高いグリップ性能を保持できるものである。
テニスやバドミントン用のラケット、ゴルフクラブ、野球用のバット等の打球具のグリップや、工具等のグリップには、手で握って使用する際の滑り止めを目的としてグリップテープ(オーバーグリップ)が巻回される。一般的なグリップテープは、シート状の繊維基材の表面に多孔質ポリウレタン樹脂層を設けた構造を有している(例えば、特許文献1)。多孔質ポリウレタン樹脂は吸水性に優れ、グリップテープの表面材として適している。また、意匠性を高めるために、グリップテープの多孔質ポリウレタン樹脂層の表面に所望の模様を付すこともよく行われている(例えば、特許文献2)。当該模様の付与は、グラビア印刷等の手法によって行われている。
特開平11−18909号公報 特開2009−28250号公報
特に、素手で握ることが多いテニスラケット等の打球具のグリップにおいては、巻回されたグリップテープの多孔性ポリウレタン樹脂層が汗を吸収し、打球具の使用中に湿潤状態となりやすい。しかしながら、グリップテープの多孔性ポリウレタン樹脂層は乾燥状態から湿潤状態となると滑りやすくなり、グリップ性能が低下する傾向がある。また一般に、意匠性を高めるためにグリップテープの多孔性ポリウレタン樹脂層の表面にグラビア印刷等を施すと、印刷部分のスキン層が溶解してその下のセル層が露出することとなり、グリップ性能が低下する傾向がある。そのため、湿潤状態でも乾燥状態と同様のグリップ性能を維持でき、さらに、表面印刷を施しても高いグリップ性能を維持できるグリップテープが求められている。
上記現状に鑑み、本発明は、湿潤状態でも高いグリップ性能を維持できるとともに、表面印刷を施しても高いグリップ性能を維持できるグリップテープを提供することを目的とする。
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、繊維基材の表面に多孔質ポリウレタン樹脂層を設けたシート材からなるグリップテープであって、多孔質ポリウレタン樹脂層は湿式凝固法で形成されたものであり、多孔質ポリウレタン樹脂層にロジン系樹脂からなるタッキファイヤーを含有させたものであり、多孔質ポリウレタン樹脂層における前記タッキファイヤーの含有量が5〜35重量%であり、湿潤状態において、滑り片全質量を1kgとした場合のJIS K7125に準拠した方法で測定した静摩擦抵抗値が1.5kg以上であり、湿潤状態の前記静摩擦抵抗値は、乾燥状態の前記静摩擦抵抗値の90%以上であることを特徴とするグリップテープである。
本発明のグリップテープにおいては、多孔質ポリウレタン樹脂層にタッキファイヤー(粘着付与剤)を含有させている。そのため、打球具等の使用中に多孔質ポリウレタン樹脂層が汗を吸収して湿潤状態となっても、グリップ性能の低下が抑えられる。また、グリップテープ表面にグラビア印刷等を施した場合でも、グリップ性能の低下が抑えられる。本発明のグリップテープによれば、湿潤状態でも高いグリップ性能を維持できるとともに、表面印刷を施しても高いグリップ性能を維持できる。
請求項1に記載の発明において、前記タッキファイヤーは、エステル変性ロジンからなることが好ましい(請求項2)。
請求項1又は2に記載の発明において、ポリウレタン樹脂を溶解する溶剤にてポリウレタン樹脂とタッキファイヤーとを溶解させた液を繊維基材に含浸又はコーティングした後、水中又は水を主成分とする溶液中に浸漬し、多孔質ポリウレタン樹脂層を形成させた構成とすることができる(請求項)。
請求項に記載の発明は、多孔質ポリウレタン層の表面に、ポリウレタン樹脂を溶解する溶剤を含むインキを塗布し、所望の模様を施したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグリップテープである。
かかる構成により、湿潤状態でも高いグリップ性能を維持できるとともに、意匠性の高いグリップテープを提供することができる。
請求項又はに記載のグリップテープにおいて、ポリウレタン樹脂を溶解する溶剤は、ジメチルホルムアミドを含むものである構成が好ましい(請求項)。
本発明のグリップテープによれば、湿潤状態でも高いグリップ性能を維持できるとともに、表面印刷を施しても高いグリップ性能を維持できる。
(a)は本発明の一実施形態に係るグリップテープの表面を示す正面図、(b)は(a)の一部拡大図である。 図1のグリップテープの積層構造を示す断面図である。 グリップテープの使用方法を説明する斜視図である。
図1,2に示すグリップテープ1は、シート状の繊維基材2の表面に多孔質ポリウレタン層3が積層された構造を有している。多孔質ポリウレタン層3の表面には、連続したダイヤ状の模様が施されている。グリップテープ1の長さは1000〜1200mm程度、幅は20〜30mm程度、厚みは0.3〜2.0mm程度である。
多孔性ポリウレタン樹脂層3は、グリップテープ1をグリップに巻回した際に外側(表面)となる層であり、手に直接触れる層である。多孔性ポリウレタン樹脂層3は、タッキファイヤーを含有している。本実施形態のグリップテープ1は、多孔性ポリウレタン樹脂層3にタッキファイヤーを含有させているので、汗等のために湿潤状態となっても高いグリップ性能を維持できる。前記タッキファイヤーとしては、ポリウレタン樹脂に均一に含有されうるものであれば特に限定はなく、石油樹脂(芳香族系、共重合系、脂環族系、脂肪族系等)、テルペン樹脂、アルキルフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、マレイン酸系樹脂等の水添処理、共重合化、エステル化処理品が例として挙げられる。
多孔質ポリウレタン樹脂層3におけるタッキファイヤーの含有量は、5〜35重量%が好ましく、より好ましくは12〜28重量%、さらに好ましくは15〜22重量%である。すなわち、5重量%未満ではグリップ性能への寄与が少なく、特に厚み0.4mmのタイプのグリップテープではグリップ性能に対する効果が出ない。一方、35重量%を越えると、湿式凝固法におけるポリウレタン樹脂の多孔膜化が損なわれ、かつ粘着力が強すぎ、ハンドリング性が極めて悪くなり実用性がない。
多孔性ポリウレタン樹脂層3は、湿式凝固法で形成されたものである。湿式凝固法としては、例えば、ポリウレタン樹脂を溶解する溶剤にてポリウレタン樹脂とタッキファイヤーとを溶解させた液を繊維基材2に含浸又はコーティングした後、水中又は水を主成分とする溶液中に浸漬し、多孔質ポリウレタン樹脂層3を形成させる方法が挙げられる。
多孔性ポリウレタン樹脂層3の厚みとしては、繊維基材2と一体化させてグリップテープ1の厚み全体の50%以上を占めることが好ましい。多孔性ポリウレタン樹脂層3で繊維基材2をカバーしてもよい。
図1に示すように、多孔質ポリウレタン層3の表面には、連続したダイヤ状の模様が施されている。当該模様は、多孔質ポリウレタン層3の表面に、ポリウレタン樹脂を溶解する溶剤を含むインキを塗布することにより施されている。すなわち、当該インキが塗布された部分においては多孔性ポリウレタン樹脂層3の表面を構成するスキン層6が溶解し、セル層5(本実施形態ではダイヤ状の部分)が表面に露出することとなる。そのため、当該インキで所望の模様を描くことにより、多孔性ポリウレタン樹脂層3の表面に所望の模様を施すことができる。
インキの塗布は、例えば、グラビア印刷の手法を用いて行うことができる。
上記湿式凝固法やインキの塗布工程において、「ポリウレタン樹脂を溶解する溶剤」が用いられる。「ポリウレタン樹脂を溶解する溶剤」としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルアセトアミド等のジメチルアミド極性溶剤を含む溶剤、特にDMFを含む溶剤が挙げられる。この場合におけるジメチルアミド極性溶剤の含有量としては、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。ジメチルアミド極性溶剤に組み合わせる他の溶剤としては、例えばメチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、トルエン等の非極性溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態では、多孔性ポリウレタン樹脂層3の表面においてセル層5(インキの塗布部分)の一部が露出しており、その分、スキン層6の占める面積が小さくなっている。しかし、本実施形態では多孔性ポリウレタン樹脂層3にタッキファイヤーを含有させているので、スキン層6の占める面積が小さくてもグリップ性能の低下が最小限に抑えられる。
インキの塗布面積としては特に限定はないが、例えば、多孔性ポリウレタン樹脂層3の表面の20〜80%とすることができる。もちろん、100%(全面)でも大きな問題はない。
なお、図2ではセル層5とスキン層6の図示を省略している。
繊維基材2は、グリップテープ1をグリップに巻回した際に内側(グリップ側)となる層であり、グリップに接触する層である。繊維基材2としては特に限定はなく、例えば、ナイロン、レーヨン、ポリエステル等からなる織・編地や不織布を用いることができる。繊維基材2の厚みとしては特に限定はなく、例えば、0.4〜0.7mm程度のものを用いることができる。また、用途に合わせて1.5mm程度の特に厚いものを用いることも可能である。
グリップテープ1のグリップ性能は、例えば、JIS K7125に準拠した方法で評価することができる。好ましい実施形態において、グリップテープ1は、湿潤状態において、滑り片全質量を1kgとした場合のJIS K7125に準拠した方法で測定した静摩擦抵抗値が1.5kg以上である。
本実施形態のグリップテープ1は、例えば、以下の手順で作製することができる。まず、適宜の繊維基材2の表面に、DMFを含む溶剤でポリウレタン樹脂を溶解した溶液を含浸させるか、塗布する。次に、ポリウレタン樹脂を含浸又は塗布した繊維基材2を水中又は水を主成分とする溶液(例えば、10%DMF)中に浸漬する。これにより、ポリウレタン樹脂中のDMFが水に置き換わり(脱DMF)、多孔性ポリウレタン樹脂層3となる。その後、洗浄と脱水を行い、熱風乾燥してシート状のベースを得る。
次に、グラビア印刷の手法により、多孔性ポリウレタン樹脂層3表面に所望の模様を施す。インキとしては、DMFを含む溶媒を用いる。印刷終了後、熱風乾燥してDMFを完全に除去する。これにより、表面に模様が施されたシート状のベースが得られる。
最後に、ベースをテープ状に切断し、グリップテープ1が得られる。なお、グリップへの巻回と定着を容易にするために、必要に応じて、繊維基材2の多孔性ポリウレタン樹脂層3と逆の面に、粘着層や架橋型接着層を設けてもよい。
本実施形態のグリップテープ1は、例えば、図3に示すように打球具等のグリップ7に巻回して使用される。詳細には、繊維基材2が内側(グリップ7側)、多孔質ポリウレタン樹脂層3が外側(表面)となるように、グリップ7の周囲に巻回される。打球具の例としては、テニス用ラケット、バドミントン用ラケット、ゴルフクラブ、野球用のバット、ホッケー用のスティック等が挙げられる。また打球具以外のグリップの例としては、釣竿、手で握って使う工具類、等のグリップが挙げられる。
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
0.6mm厚のウーリーナイロン繊維からなる編地の弱起毛面に、表1(単位は重量部)に示す配合からなる湿式塗料(実施例、比較例)をクリアランスコーターで塗布した。これを30℃の10%DMF凝固浴に浸漬して脱溶媒(脱DMF)を行い、ポリウレタン樹脂を凝固させた。さらに、洗浄およびロールプレスによる脱水を行った後、120℃の熱風下で乾燥した。これにより、厚さ0.85mmの、多孔性ポリウレタン樹脂層を有するグリップテープ用ベース(実施例、比較例)を得た。
Figure 0005543854
表1における各成分は以下のとおりである。
・溶液型ウレタン樹脂A:商品名クリスボンMP−105(固形分:30%;抗張力:55MPa;DIC社)
・溶液型ウレタン樹脂B:商品名クリスボンMP−625(固形分:30%;抗張力:83MPa;DIC社)
・着色料(黒色):商品名ダイラックL6001(DIC社)
・タッキファイヤー:エステル変性ロジン
・溶剤:ジメチルホルムアミド(DMF)
・助剤:界面活性剤
得られたグリップテープ用ベースに対して、ポリエステル系一液(商品名:レザミンME3435;組成:35重量%ポリウレタン/40重量%DMF/25重量%MEK;大日精化工業社)100重量部とDMF150重量部を混合してなるエッチング用インキを用いてグラビア印刷を行い、110℃でインキ溶媒を熱風乾燥した。エッチング柄パターンは、印刷無し(エッチング面積:0%)、「エルク」(エッチング面積:32%)、「ダイヤ」(エッチング面積:50%)、「全面120L」(エッチング面積:100%)の4種とした。これにより、表面にグラビア印刷が施された各種グリップテープ用シートが得られた。
JIS7125に準じた方法で各グリップテープ用シートの摩擦抵抗値(グリップ性能に相当)を測定した。すなわち、1kgの滑り片(接触面積:40cm2、一辺の長さ:63mm)にピッグスキン(豚皮)銀面を外にして貼り付けた。試料となるグリップテープ用シートをテーブルに貼り付けた。試料上にピッグスキン銀面が当たるように滑り片をセットし、オートグラフAG−LS(島津製作所社)で滑り片を200mm/分で引っ張り、摩擦抵抗値を測定した。各試料について測定を3回行い、その平均値を採用した。なお、ピッグスキンは、温度20℃、相対湿度60%の雰囲気で1日養生したものを用いた。また、試験毎に滑り片のピッグスキンを取り替えた。
なお、各グリップテープ用シートについて、乾燥状態(ドライサンプル)と湿潤状態(ウエットサンプル)の2種類の試料を作製し、上記試験に供した。ドライサンプルは、温度20℃、相対湿度60%の雰囲気で1日養生することにより調製した。ウエットサンプルは、常温で水に浸漬して十分に吸水させ、1kg過重でニップで絞って調製した。
測定結果を表2に示す。
Figure 0005543854
表2に示すように、実施例のグリップテープ用シートは、いずれのエッチング面積においても90%以上の高いグリップ残率を有していた。
一方、タッキファイヤーを含まない比較例のグリップテープ用シートでは、いずれのエッチング面積においても85%以下の低いグリップ残率しか示さなかった。特に、エッチング面積が小さいほどグリップ残率の低下が顕著であった。
1 グリップテープ
2 繊維基材
3 多孔性ポリウレタン樹脂層

Claims (5)

  1. 繊維基材の表面に多孔質ポリウレタン樹脂層を設けたシート材からなるグリップテープであって、
    多孔質ポリウレタン樹脂層は湿式凝固法で形成されたものであり、
    多孔質ポリウレタン樹脂層にロジン系樹脂からなるタッキファイヤーを含有させたものであり、
    多孔質ポリウレタン樹脂層における前記タッキファイヤーの含有量が5〜35重量%であり、
    湿潤状態において、滑り片全質量を1kgとした場合のJIS K7125に準拠した方法で測定した静摩擦抵抗値が1.5kg以上であり、
    湿潤状態の前記静摩擦抵抗値は、乾燥状態の前記静摩擦抵抗値の90%以上であることを特徴とするグリップテープ。
  2. 前記タッキファイヤーは、エステル変性ロジンからなることを特徴とする請求項1に記載のグリップテープ。
  3. ポリウレタン樹脂を溶解する溶剤にてポリウレタン樹脂とタッキファイヤーとを溶解させた液を繊維基材に含浸又はコーティングした後、水中又は水を主成分とする溶液中に浸漬し、多孔質ポリウレタン樹脂層を形成させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のグリップテープ。
  4. 多孔質ポリウレタン層の表面に、ポリウレタン樹脂を溶解する溶剤を含むインキを塗布し、所望の模様を施したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグリップテープ。
  5. ポリウレタン樹脂を溶解する溶剤は、ジメチルホルムアミドを含むものであることを特徴とする請求項又はに記載のグリップテープ。
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