以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1(a),(b)に、本実施形態のモータ2の概略構成を示す。なお、図1(b)は、図1(a)のA視図であるが、詳しくはハウジング14及び各磁石15,16を取り除いた状態でのA視図である。また、図1(a)では、一対のブラシ18,19(図1(b)参照)の図示を省略している。
本実施形態のモータ2は、ハウジング14と、このハウジング14内に収容されたロータコア20とを備えている。ロータコア20は、ハウジング14の軸心に配置されている回転軸17に固定され、この回転軸17と共に回転する。
ハウジング14は、軟磁性体である継鉄(ヨーク)にて形成されたものであり、略円筒形の形状をなしている。そして、ハウジング14の内周面には、界磁発生用の2つの磁石15,16が径方向に互いに対向するように固定されている。各磁石15,16は、いずれも永久磁石であり、ロータコア20と対向する面側の極性が一方はN極で他方がS極である。つまり、本実施形態のモータ2は界磁が2極の直流モータとして構成されている。
ロータコア20は、軟磁性体にて形成されたものであり、3つのティース(突極)21,22,23を有し、電機子コイル24が巻回されている。具体的には、第1ティース21に第1相コイルL1が巻回され、第2ティース22に第2相コイルL2が巻回され、第3ティース23に第3相コイルL3が巻回されており、これら3つの相コイルL1,L2,L3により電機子コイル24が構成されている。
また、回転軸17には、整流子10が固定されている。この整流子10には、図1(b)に示すように、互いに対向して(即ち回転方向に180°離れて)配置された一対のブラシ18,19が摺接している。
整流子10は、より詳しくは、各ブラシ18,19と接触(摺接)する3つの整流子片11,12,13を有しており、これら各整流子片11,12,13に、電機子コイル24を構成する各相コイルL1,L2,L3がそれぞれΔ結線されている。
即ち、第1整流子片11と第2整流子片12との間に第1相コイルL1が接続され、第2整流子片12と第3整流子片13との間に第2相コイルL2が接続され、第3整流子片13と第1整流子片11との間に第3相コイルL3が接続されている。なお、各相コイルL1,L2,L3のインダクタンスは同じ値である。また、各相コイルL1,L2,L3は、互いに電気角で2π/3ずつ離れるように配置されている。
そして、3つの整流子片11,12,13のうちいずれか2つ(但し瞬間的に3つ)が、各ブラシ18,19にそれぞれ接触しており、モータ2の回転による整流子10の回転に伴って、各ブラシ18,19と接触する整流子片は切り替わっていく。つまり、本実施形態のモータ2は、電機子コイルとして3相の相コイルを有するブラシ付きの3相直流モータとして構成されている。
また、回転軸17の一端側には、この回転軸17と同軸状に、リング状(詳しくは中心孔を有する円板状)のリングバリスタ30が固定して設けられている。このリングバリスタ30は、後述するように電極の構成を除けば、直流モータにおけるサージ吸収用として多用されている一般的なリングバリスタと同等の構成であって同等の機能を有するものである。
リングバリスタ30は、より詳しくは、図2(a),(b)にも示すように、中心孔を有する円板状のバリスタ素子部34と、このバリスタ素子部34における一方の円板面(回転軸17の軸心に垂直な2つの円板面のうち整流子10側とは反対側の円板面)に、3つの電極31,32,33が形成されている。
バリスタ素子部34は、図2(b)に示すように、例えば酸化亜鉛やチタン酸ストロンチウムなどの半導体セラミックスからなる半導体層35と、この半導体層35の表面に形成された酸化膜である絶縁層36とにより構成されたものである。この絶縁層36は、半導体層35よりも抵抗値が高い。そのため、抵抗値という観点からみれば、絶縁層36を高抵抗体、半導体層35を低抵抗体として捉えることもできる。
また、一般的なバリスタの持つ特性として、いわゆるバリスタ電圧が印加されると急激に抵抗値が低下するという非直線性抵抗特性はよく知られており、この特性によってサージ吸収機能が実現されるわけだが、その他、バリスタには静電容量が存在していることもよく知られている。なお、この静電容量は、バリスタ素子部34において主として絶縁層36が寄与している。
本実施形態のリングバリスタ30も、一般的なバリスタと同様、非直線性抵抗特性を有していることはもちろん、各電極31,32,33の相互間には静電容量が存在している。
そこで本実施形態では、リングバリスタ30の各電極間の静電容量を利用してモータ2の回転状態を検出すべく、何れか一組の電極間の静電容量値が他の組の静電容量値とは異なる値となるように(即ち静電容量不均等状態となるように)構成されている。
具体的には、3つの電極31,32,33のうち、第1電極31と第2電極32の間の静電容量値が、他の二組の静電容量値、即ち第2電極32と第3電極33の間の静電容量値及び第3電極33と第1電極31の間の静電容量値よりも大きな値となるように構成されている。なお、上記他の二組の静電容量値はいずれも同じ値である。
そして、本実施形態のリングバリスタ30では、上記のような静電容量不均等状態が、各電極31,32,33の面積に差異を持たせることによって実現されている。即ち、図1(a)や図2(a)から明らかなように、第1電極31と第2電極32はいずれも同じ面積で且つ大きな面積となるように形成されているのに対し、第3電極33は、他の2つの電極31,32よりも小さな面積となるように形成されている。
一般に、2つの電極で挟まれた静電容量素子の静電容量がその電極間の距離に反比例すると共に電極の面積に比例することは、よく知られている。そこで、電極の面積によって静電容量値が変わるという上記性質を利用して、リングバリスタ30においても各電極31,32,33を全て同じ面積とするのではなく、上記のように面積に差異を持たせることで、静電容量不均等状態を実現しているのである。
そして、図1(a)に示すように、リングバリスタ30に形成された3つの電極31,32,33のうち、第1電極31には、整流子10を構成する3つの整流子片11,12,13のうち第1整流子片11が接続されている。即ち、この第1電極31は、第3相コイルL3と第1相コイルL1の接続点に電気的に接続されていることになる。第2電極32には、第2整流子片12が接続されている。即ち、この第2電極32は、第1相コイルL1と第2相コイルL2の接続点に電気的に接続されていることになる。第3電極33には、第3整流子片13が接続されている。即ち、この第3電極33は、第2相コイルL2と第3相コイルL3の接続点に電気的に接続されていることになる。
次に、モータ2の回転状態(本実施形態では回転角)を検出する回転検出装置1の概略構成を、図3に示す。本実施形態の回転検出装置1は、モータ2を回転駆動させる(トルクを発生させる)ための直流電圧に所定の周波数の交流電圧が重畳された交流重畳電圧を出力する電源部5と、モータ2に流れる電流(モータ電流)に基づいてモータ2の回転角に応じた信号(回転パルスSp)を生成し出力する回転信号検出部6と、この回転信号検出部6から出力される回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出する回転検出部7と、を備えている。
電源部5から出力されてモータ2に印加される交流重畳電圧は、図4(a)に示すように、直流電圧Vbに、振幅Vsで周波数f(詳細は後述)の交流電圧が重畳された、交直混在(脈流の一種)である。そのため、この交流重畳電圧がモータ2に印加されることにより、モータ2に流れるモータ電流も、直流電流に交流電流が重畳された電流となる。
電源部5の内部構成は図4(b)に示す通りであり、モータ2を駆動させるための直流電圧を生成し出力する直流電源3と、モータ2の回転角を検出するための所定の周波数の交流電圧を生成し出力する交流電源4と、直流電源3から出力される直流電圧に交流電源4から出力された交流電圧を重畳させてモータ2へ印加するためのカップリングコンデンサC10と、を備えている。
このような構成により、モータ2には、単に直流電源3から出力される直流電圧が印加されるだけではなく、直流電源3から出力される直流電圧に交流電源4から出力される交流電圧が重畳されて印加される。そのため、モータ2には、直流電源3からの直流電圧による直流電流に交流電源4からの交流電圧による交流電流が重畳された電流が流れる。つまり、直流電源3は直流電流を生成してモータ2へ供給するものであり、交流電源4は交流電流を生成してモータ2へ供給するものであるとも言える。
但し、モータ2は直流モータであるため、交直混在の電流のうち、モータ2の回転に寄与する(トルクを与えて回転駆動させる)成分は、直流電源3にて印加される直流電圧による直流成分であり、交流電源4にて印加される交流電圧による交流成分は回転そのものには関与せず、トルクに影響を与えることもない。交流電源4からの交流電圧は、本実施形態ではモータ2の回転状態を検出するためにモータ2に印加されるのであり、回転信号検出部6は、後述するように、モータ2に流れる電流のうち交流成分に基づいて回転パルスを生成する。つまり、交流電源4は、モータ2を回転させるための電力としてではなく、モータ2の回転状態を検出する目的で設けられているのである。
なお、電源部5は、直流電源3から直流電圧を出力させずに交流電源4からの交流電圧のみを出力することも可能である。本実施形態では、回転中のモータ2を停止させる制動制御の際は、モータ2への直流電源3からの直流電圧が遮断される。一方、交流電源4からの交流電圧は、停止制御の際もモータ2への印加が継続される。つまり、交流電源4からの交流電圧は、少なくともモータ2が回転している間はモータ2へ印加され続ける。
モータ2は、その具体的構成は図1,図2を用いて既に説明した通りであり、図3では、モータ2におけるモータ回路(一対のブラシ18,19間の回路)を等価的に示している。
即ち、モータ2は、既述の通り、3つの相コイルL1,L2,L3がΔ結線されていると共に各相コイルL1,L2,L3がそれぞれ各整流子片11,12,13と図示のように接続されている。これに加え、モータ2は、リングバリスタ30が設けられていることにより、各整流子片11,12,13の相互間には、等価的にコンデンサが接続された状態となる。
このうち第1整流子片11と第2整流子片12は、それぞれリングバリスタ30における第1電極31と第2電極32に接続されている。そのため、第1整流子片11と第2整流子片12の間には、リングバリスタ30における第1電極31と第2電極32との間に形成されるバリスタ成分(以下「第1バリスタ」という)30aが、第1相コイルL1に対して並列に接続されている。
そして、この第1バリスタ30aは、静電容量を有している。これは即ち、第1電極31と第2電極32の間の静電容量(第1整流子片11と第2整流子片12の間の静電容量ともいえる)であり、これにより、第1相コイルL1には等価的にコンデンサ(以下「第1コンデンサ」という)C1が並列接続された状態となる。
また、第2整流子片12と第3整流子片13は、それぞれリングバリスタ30における第2電極32と第3電極33に接続されている。そのため、第2整流子片12と第3整流子片13の間には、リングバリスタ30における第2電極32と第3電極33との間に形成されるバリスタ成分(以下「第2バリスタ」という)30bが、第2相コイルL2に対して並列に接続されている。
そして、この第2バリスタ30bも、静電容量を有している。これは即ち、第2電極32と第3電極33の間の静電容量(第2整流子片12と第3整流子片13の間の静電容量ともいえる)であり、これにより、第2相コイルL2には等価的にコンデンサ(以下「第2コンデンサ」という)C2が並列接続された状態となる。
また、第3整流子片13と第1整流子片11は、それぞれリングバリスタ30における第3電極33と第1電極31に接続されている。そのため、第3整流子片13と第1整流子片11の間には、リングバリスタ30における第3電極33と第1電極31との間に形成されるバリスタ成分(以下「第3バリスタ」という)30cが、第3相コイルL3に対して並列に接続されている。
そして、この第3バリスタ30cも、静電容量を有している。これは即ち、第3電極33と第1電極31の間の静電容量(第3整流子片13と第1整流子片11の間の静電容量ともいえる)であり、これにより、第3相コイルL3には等価的にコンデンサ(以下「第3コンデンサ」という)C3が並列接続された状態となる。
そして、各コンデンサC1,C2,C3の静電容量値は、既述の通り、バリスタ30の各電極31,32,33の面積に差異を持たせたことによって、第2コンデンサC2と第3コンデンサC3の静電容量値は同じであるものの、第1コンデンサC1の静電容量値は、他の2つのコンデンサC2,C3よりも大きな値となっている。尚、図3において「(大)」、「(小)」とあるのは、各コンデンサC1,C2,C3の静電容量値の相対的な差異(大小)を示している。
コンデンサは、周知の通り、直流的には電流がほとんど流れない非常に高い抵抗として機能し、交流的には電流が流れやすい低インピーダンス特性を有する。そのため、直流電源3からみれば各コンデンサC1,C2,C3は等価的に存在しないものとして扱うことができ、よって、直流電源3からの直流電流は各相コイルL1,L2,L3にのみ流れるものと見なすことができる。そのため、直流電源3からの直流電流によって回転するモータ2の回転速度やトルクに対する、各コンデンサC1,C2,C3の存在の影響は、無視することができる。
一方、交流電源4からみれば、各相コイルL1,L2,L3は高インピーダンスであるのに対して各コンデンサC1,C2,C3は低インピーダンスとなる。また、既述の通り、第1コンデンサC1の静電容量値は他の2つのコンデンサC2,C3の静電容量値よりも大きい。そのため、モータ2の回転角に応じて各ブラシ18,19と接触する2つの整流子片が切り替わる毎に、各ブラシ18,19間に形成されるモータ回路も変化し、よってモータ回路のインピーダンスも変化する。但し、本実施形態では、第2コンデンサC2と第3コンデンサC3を同じ静電容量値としているため、モータ2が180°回転する間に整流子片の切り替わりは3回生じるものの、インピーダンスの変化は二段階である。
図5に、モータ2が180°回転する間における、モータ2内部の結線状態の変化、即ち各ブラシ18,19間に形成されるモータ回路の変化を示す。図5に示すように、本実施形態のモータ2のモータ回路は、モータ2が180°回転する間に、主として状態A、状態B、及び状態Cの三種類に変化する。
状態Aは、図1(a)や図3に示されている状態、即ち、各ブラシ18,19のうち直流電源3の正極側(以下「Vb側」ともいう)のブラシ18に第1整流子片11が接触し、グランド電位側(以下「GND側」ともいう)のブラシ19に第2整流子片12が接触した状態である。
この状態Aでのモータ2の等価回路、即ち各ブラシ18,19間に形成されるモータ回路は、図示の通りであり、コンデンサのみに着目すると、第3コンデンサC3及び第2コンデンサC2の直列接続体と、第1コンデンサC1とが、並列接続された状態となっている。
この状態Aからモータ2が時計回りに約60°回転すると、状態Bとなる。この状態Bは、Vb側のブラシ18に第3整流子片13が接触し、GND側のブラシ19に第2整流子片12が接触した状態である。つまり、状態Aに対し、Vb側のブラシ18に接触する整流子片が第1整流子片11から第3整流子片13に切り替わった状態である。
この状態Bでのモータ回路は、図示の通りであり、コンデンサのみに着目すると、第3コンデンサC3及び第1コンデンサC1の直列接続体と、第2コンデンサC2とが、並列接続された状態となっている。
この状態Bからさらにモータ2が時計回りに約60°回転すると、状態Cとなる。この状態Cは、Vb側のブラシ18に第3整流子片13が接触し、GND側のブラシ19に第1整流子片11が接触した状態である。つまり、状態Bに対し、GND側のブラシ19に接触する整流子片が第2整流子片12から第1整流子片11に切り替わった状態である。
この状態Cでのモータ回路は、図示の通りであり、コンデンサのみに着目すると、第2コンデンサC2及び第1コンデンサC1の直列接続体と、第3コンデンサC3とが、並列接続された状態となっている。
ここで、各状態A,B,Cのモータ回路のインピーダンスを比較する。既述の通り、リングバリスタ30によって各整流子片11,12,13間に等価的に接続された状態となっている各コンデンサC1,C2,C3の静電容量値は、第2コンデンサC2及び第3コンデンサC3が何れも同じ値であるのに対し、第1コンデンサC1は他の2つよりも大きい値である。
そのため、静電容量値の大きい第1コンデンサC1がそれよりも静電容量値の小さい第2コンデンサC2又は第3コンデンサC3と直列接続された状態にある状態B,Cのインピーダンスは、静電容量値の大きい第1コンデンサC1に他のコンデンサが直列接続されていない状態Aのインピーダンスとは異なる。
図6に、状態A,B,Cのインピーダンスの周波数特性を示す。なお、図中A’,B’,C’とあるが、これらについては後で説明する。図示の通り、状態Aのインピーダンス特性と状態B及び状態Cのインピーダンス特性は異なっており、状態Aの共振周波数がf1であるのに対し、状態B及び状態Cの共振周波数は、f1よりも大きいf2である。このような特性の違いにより、特性が交差する周波数f2よりも低い周波数領域では状態Aの方が状態B,Cよりもインピーダンスが高くなり、逆に周波数f2より高い周波数領域では状態Aの方が状態B,Cよりもインピーダンスが低くなる。
なお、本実施形態では、電源部5の交流電源4から供給される交流電圧の周波数が、状態B,Cの共振周波数であるf3よりも高い所定の周波数に設定されている。そのため、本実施形態においては、状態B,Cよりも状態Aの方がインピーダンスが小さくなる。
このように、モータ2が180°回転する間に、各ブラシ18,19と接触する整流子片の切り替わりが3回生じ、これに伴い、各ブラシ18,19間のモータ回路は状態A,B,Cの三種類に切り替わる。しかし、状態Bと状態Cは、既述の通り、回路全体のインピーダンスは同じであるため、180°回転の間に生じる、状態A,B,Cの変化に伴うインピーダンスの変化は二種類(二段階)である。
なお、モータ2の回転の過程では、隣接する2つの整流子片に1つのブラシが同時に接触する切り替わり期間が存在し、厳密にいえばこの切り替わり期間においてもブラシ間のインピーダンスが変化する。しかし、この切り替わり期間はモータ2が一回転する間において瞬間的に生じるのみであり、これに伴うインピーダンスの変化も瞬間的なものである。そのため、本実施形態ではこの切り替わり期間については考慮しないものとする。
状態Cから更に回転が進むと、GND側のブラシ19には引き続き第1整流子片11が接触したままであるが、Vb側のブラシ18に接触する整流子片は、状態Cのときの第3整流子片13から第2整流子片12へと切り替わる。この状態は、上述した状態Aにおいて、Vb側のブラシ18とGND側のブラシ19とが入れ替わった状態であり、回路全体のインピーダンスは状態Aと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態A’という。
この状態A’から更に回転が進むと、Vb側のブラシ18には引き続き第2整流子片12が接触したままであるが、GND側のブラシ19に接触する整流子片は、状態A’のときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わる。この状態は、上述した状態Bにおいて、Vb側のブラシ18とGND側のブラシ19とが入れ替わった状態であり、回路全体のインピーダンスは状態Bと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態B’という。
この状態B’から更に回転が進むと、GND側のブラシ19には引き続き第3整流子片13が接触したままであるが、Vb側のブラシ18に接触する整流子片は、状態B’のときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わる。この状態は、上述した状態Cにおいて、Vb側のブラシ18とGND側のブラシ19とが入れ替わった状態であり、回路全体のインピーダンスは状態Cと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態C’という。
そして、この状態C’から更に回転が進むと、再び状態Aに切り替わり、以下、回転が進むにつれて状態B→状態C→状態A’→状態B’→状態C’→状態A→・・・と切り替わる。
つまり、モータ2は、一回転する間にその回転角に応じてモータ回路が状態A、B、C、A’、B’、C’の六種類に順次切り替わるのであり、60°回転毎に状態が切り替わるということになる。このうち、状態B、C、B’、C’は、いずれも同じインピーダンスである。また、状態A、A’も同じインピーダンスであり、その値は状態B,C等のインピーダンスとは異なる。即ち、本実施形態では状態A,A’の方が状態B,B’,C,C’よりもインピーダンスが小さい。
そして、インピーダンスの変化は、モータ2に流れるモータ電流に含まれる交流成分(交流電流成分)の変化、或いはそのモータ電流が流れる通電経路上の電圧(経路電圧)に含まれる交流成分(交流電圧成分)の変化として直接現れる。
図7は、回転中のモータ電流の一例を示す図である。図7に示すように、モータ電流は、直流電流成分に交流電流成分が重畳した波形となる。そして、交流電流成分に着目すると、状態B、C、B’、C’のときは交流電流成分の振幅が小さく、状態A、A’のときは交流電流成分の振幅が大きくなる。即ち、モータ2が180°回転する間に、交流電流成分の振幅は二種類(二段階)に変化するのである。
そこで本実施形態の回転検出装置1では、回転信号検出部6が、モータ2の回転に伴う上記インピーダンスの変化によって生じる、モータ電流の交流電流成分の振幅変化に基づいて、回転パルスSpを生成する。そして、その回転パルスSpに基づき、回転検出部7が、モータ2の回転角を検出する。
図8に、回転信号検出部6の具体的構成を示す。回転信号検出部6は、モータ2の通電経路上(詳しくはGND側のブラシ19からグランド電位に至る通電経路上)に設けられた電流検出部26と、この電流検出部26により検出された通電電流(モータ電流)に基づく各種信号処理を行って回転パルスSpを生成する信号処理部27とを備えている。
電流検出部26は、モータ2の通電経路上に挿入された電流検出抵抗R1からなり、この電流検出抵抗R1の両端の電圧が、モータ電流に応じた検出信号として信号処理部27へ取り込まれる。
信号処理部27は、ハイパスフィルタ(HPF)41と、増幅部42と、包絡線検波部43と、ローパスフィルタ(LPF)44と、閾値設定部45と、比較部46と、パルス生成部47と、を備えている。
HPF41は、コンデンサC11及び抵抗R2からなる周知の構成のものである。信号処理部27に取り込まれた電流検出抵抗R1による検出信号は、このHPF41によって、直流電流成分を含む所定の遮断周波数以下の帯域の信号がカットされ、交流電源4にて生成される交流電圧の周波数を含む、上記遮断周波数より高い周波数成分が抽出されて、増幅部42に入力される。そのため、検出されたモータ電流(検出信号)のうち、直流電流成分はこのHPF41によって遮断され、交流電流成分のみが増幅部42へ入力されることとなる。
電流検出抵抗R1により検出され、HPF41によって抽出された検出信号(交流電流成分)は、増幅部42にて増幅される。
増幅部42は、オペアンプ48と、オペアンプ48の出力端子と非反転入力端子との間に接続された抵抗R3と、オペアンプ48の非反転入力端子とグランド電位との間に接続された抵抗R4とを備え、反転入力端子に入力される信号(HPF41からの検出信号)が所定の増幅率にて増幅される。
増幅部42にて増幅された検出信号は、包絡線検波部43にて包絡線検波される。この包絡線検波部43は、整流用のダイオードD1と、一端がこのダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続された抵抗R5と、一端がダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続されたコンデンサC12とを備えてなるものであり、ダイオードD1のアノードに、増幅部42にて増幅された検出信号が入力される。
この包絡線検波部43により、増幅部42から入力された交流の検出信号が包絡線検波され、交流電流成分の振幅に応じた一定の信号(以下「検波信号」という)が生成される。
そして、その生成された検波信号は、LPF44にて高周波成分がカットされた上で、比較部46に入力される。LPF44は、抵抗R6及びコンデンサC13からなる周知の構成のものである。なお、抵抗R6にはダイオードD2が並列接続されている。このダイオードD2の接続方向は、検波信号が入力される方向に対して逆方向となっている。
比較部46は、コンパレータ49と、コンパレータ49の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R9と、一端がコンパレータ49の非反転入力端子に接続されて他端がLPF44に接続された抵抗R7と、一端がコンパレータ49の反転入力端子に接続されて他端が閾値設定部45に接続された抵抗R8とを備えてなるものである。
包絡線検波部43から出力された検波信号は、LPF44を介して比較部46に入力され、この比較部46において抵抗R7を介してコンパレータ49の非反転入力端子に入力される。一方、コンパレータ49の反転入力端子には、抵抗R8を介して閾値設定部45からの閾値が入力される。これにより、コンパレータ49では、検波信号と閾値との比較が行われ、その比較結果が出力される。
閾値設定部45にて設定され比較部46に入力される閾値は、本実施形態では、図7に示したモータ電流波形のうち振幅が小さい期間(つまり状態B,C,B’,C’の期間)での検波信号よりも大きく、且つ、振幅が大きい期間(つまり状態A,A’の期間)での検波信号よりも小さい、所定の値が設定されている。
そのため、振幅の小さい期間では、包絡線検波部43から比較部46へ入力される検波信号は閾値設定部45からの閾値よりも小さいため、コンパレータ49からはローレベルの信号が出力される。一方、振幅の大きい期間では、包絡線検波部43から比較部46へ入力される検波信号は閾値よりも大きくなるため、コンパレータ49からはハイレベルの信号が出力される。
そして、コンパレータ49から出力されたローレベル、ハイレベルの信号は、パルス生成部47にて適宜波形整形、レベル調整された上で、モータ2の回転角に応じた回転パルスSpとして回転検出部7へ出力される。
このように、信号処理部27では、電流検出抵抗R1にて検出されたモータ電流(検出信号)に対して低周波領域のカット、交流電流成分の増幅、包絡線検波といった各種信号処理を行った上で回転パルスSpが生成されるため、外乱やノイズが低減された正確な回転パルスSpが生成される。
なお、HPF41に代えて、例えば、交流電流成分の周波数を含む所定の帯域のみを通過させるバンドパスフィルタを用いるようにしてもよい。LPF44についても、同様にバンドパスフィルタを用いるようにしてもよい。また、比較部46から出力される信号は、それ自体がすでに比較的安定したパルス信号となっており、これをそのまま回転検出部7へ入力することもできる。そのため、パルス生成部47を省略することも可能である。
回転検出部7は、パルス生成部47から入力された回転パルスSpに基づき、例えばその回転パルスSpの立ち上がりエッジを検出・計数するといった方法により、モータ2の回転角を検出する。そして、その検出された回転角は、図示しないモータ2の制御回路においてフィードバック信号として用いられる。
なお、交流電源4から供給される交流電圧の周波数は、本実施形態では既述の通り周波数f3よりも高い周波数であるが、これはあくまでも一例であり、特性が交差する周波数f2を除く任意の周波数に設定することができる。
但し、例えば周囲温度の変化などの種々の要因によって、各コンデンサC1,C2,C3の静電容量値が変化し、これにより各共振周波数f1,f2が変化することも考えられる。そのため、そのような共振周波数の変動を考慮すれば、周波数f3よりも大きい周波数の方が、共振周波数が変動してもインピーダンスの変化が小さく、且つ状態A,A’と状態B,B’,C,C’のインピーダンスの差の変化も小さいため、回路設計上の観点からも、交流電源4の交流電圧の周波数として使用しやすい領域である。
続いて、回転中のモータ2が停止する際のモータ電流波形の一例を、図9に示す。なお、図9では、インピーダンスが大きくて交流電流成分の振幅の小さい期間(状態B,C,B’,C’となる期間)の交流電流成分については、その振幅が非常に小さいため、図示を省略している。後述する図10も同様である。
図9に示す例では、回転中のモータ2に制動をかけて停止させる停止制御(制動制御)の際、モータ2への直流電源3からの直流電圧の印加(直流電流の電源供給)を停止させる。一方、交流電源4からの交流電圧(交流電流)については、モータ2の駆動に関与するものではなく、あくまでもモータ2の回転角を検出する目的で供給されるものであるため、回転中か停止制御時かにかかわらず、モータ2の回転が制御されている間は常時モータ2へ供給される。
そのため、停止制御開始後(直流電源3からの直流電圧印加電源停止後)のモータ電流は、図示の如く、誘導起電力によって生じる電流に交流電源4からの交流電流が重畳したものとなる。このうち、誘導起電力による電流の大きさは、モータ2の回転速度が低くなるほど小さくなるため、この誘導起電力による電流は徐々に小さくなり、モータ2が停止したときにはこの電流もゼロになる。
一方、交流電流は、上記のように回転角検出のために常に交流電源4から供給されるものであるため、図9に示すように、モータ2の回転速度に関係なく、回転角に応じた(モータ回路のインピーダンスの変化に応じた)振幅の交流電流が流れる。そのため、モータ2の回転速度に関係なく、モータ2の回転角を検出することができるのである。
図9に示した停止制御時における、信号処理部27にて生成される回転パルスSpの例を、図10に示す。図10の上側の波形は、増幅部42にて増幅された後の検出信号であり、下側の波形が、パルス生成部47にて生成される回転パルスSpである。本例では、交流電流成分の振幅が小振幅から大振幅に変化するタイミング毎に、所定時間幅の回転パルスSpが生成される。
そして、本実施形態では、回転パルスSpはモータ2が180°回転する毎に生成される。そのため、この回転パルスSpが生成される毎にモータ2が180°回転したものとして、モータ2の回転角を検出することができる。
なお、本実施形態の回転検出装置1は、回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出するよう構成されたものであるが、回転パルスSpの間隔(例えば立ち上がりエッジの間隔)に基づいてモータ2の回転速度も検出できるよう構成してもよい。或いは、回転角ではなく回転速度を検出する回転速度検出装置として構成してもよい。モータ2が何度回転する毎に回転パルスSpが出力されるかは予めわかっているため、その回転パルスSpが出力される間隔(周期)がわかれば、モータ2の回転速度を検出することができる。
以上説明したように、本実施形態の回転検出装置1では、モータ2を駆動させるための電源としての直流電源3とは別に、回転角検出用のために交流電源4が設けられ、モータ2が回転される際は、直流電源3からの直流電圧に交流電源4空の交流電圧が重畳された交流重畳電圧がモータ2へ印加され、これによりモータ2には交流成分を含むモータ電流が流れる。
また、モータ2は、リングバリスタ30を備えた構成であって、しかもそのリングバリスタ30は、3つの電極31,32,33のうち第3電極33の面積が他の2つの電極31,32の面積とは異なるように形成されている。この面積の差異により、各電極間の静電容量値(即ち等価的に存在する各コンデンサC1,C2,C3の静電容量値)は、第2コンデンサC2及び第3コンデンサC3の静電容量値は同じであるのに対し、第1コンデンサC1の静電容量値は、他の2つのコンデンサC2,C3とは異なる値である。
そのため、モータ2が回転すると、各ブラシ18,19間に形成されるモータ回路のインピーダンスも変化し、そのインピーダンスの変化によって、モータ電流における交流電流成分の振幅が変化する。そこで本実施形態の回転検出装置1は、その交流電流成分の振幅変化を検出し、その検出結果に基づいてモータ2の回転角を検出するようにしている。
従って、本実施形態の回転検出装置1によれば、仮にモータ2の停止制御時に直流電源3からの直流電圧の印加(直流電流の供給)が停止されたとしても、交流電圧が印加(交流電流が供給)され続けることにより、減速時〜停止時にかけても回転角を確実に検出することができる。
また、停止中であっても、電源電圧として少なくとも交流電圧を印加させ続けることで、モータ2の回転状態を検出でき、例えば何らかの外力を受けて意図せず所定量回転してしまったとしても、これを確実に検出することができる。
しかも、回転角の検出は、モータ電流に含まれる交流電流成分に基づいて行っており、モータ駆動用の直流電流に影響を与えることなく検出が行われている。そのため、ロータリエンコーダ等の大がかりなセンサを設けることなく、またトルク変動が発生しないようにしつつ、回転速度によらずに回転角を精度良く検出することができる。
また、リングバリスタ30の各電極間の静電容量値(即ち各コンデンサC1,C2,C3の静電容量値)に差異を持たせること、即ち静電容量不均等状態を、リングバリスタ30の各電極31,32,33の面積に差異を持たせるという簡易的な構成にて実現している。そのため、静電容量不均等状態が確実に実現しつつ、リングバリスタ30のコスト低減、延いては回転検出装置1全体のコストを低減をも可能としている。
また、交流電源4からモータ2に印加される交流電圧の周波数が、モータ2の回転中に各ブラシ18,19間に形成されるモータ回路の各共振周波数f1,f3よりも大きい所定の周波数に設定されている。これにより、仮に周囲温度が変化してリングバリスタ30の各電極間の静電容量値(即ち各コンデンサC1,C2,C3の静電容量値)がその温度特性に伴って変化したとしても、モータ回路全体のインピーダンスは周囲温度によって大きく変化することはない。そのため、リングバリスタ30が有する静電容量の温度特性の影響を受けずに安定した回転角の検出が可能となる。
また、本実施形態では、モータ2の回転に伴って生じるモータ回路のインピーダンスの変化を、モータ電流に含まれる交流電流成分の振幅の変化として検出している。しかもその振幅の変化は、検出信号がHPF41、増幅部42、包絡線検波部43、及びLPF44によって信号処理された上で、コンパレータ49等からなる比較部46により検出される。そのため、簡易的な構成でありながら、ノイズや外乱の影響を抑制して高精度に振幅の変化を検出でき、延いては高精度に回転角を検出することができる。
また、既述の特許文献1に開示された方法では、直流電流の変化を検出していることから、ブラシや整流子の経年劣化によって、波形に歪みが生じるなど、検出精度の悪化が生じる可能性が高い。これに対し、本実施形態の回転検出装置1は、交流電流成分の振幅変化に基づいて回転角を検出するものであり、その振幅変化はモータ回路のインピーダンスに依存するため、ブラシや整流子の経年劣化の影響を抑制することが可能となる。
なお、本実施形態において、電源部5は本発明の電源手段に相当し、電流検出部26は本発明の通電検出手段に相当する。また、信号処理部27及び回転検出部7により、本発明の回転状態検出手段が構成される。
[第2実施形態]
図11に、本実施形態の回転検出装置を構成するモータ60に設けられたリングバリスタ50の構成を、図12に、このリングバリスタ50が設けられたモータ60のモータ回路を、それぞれ示す。
本実施形態の回転検出装置は、図示は省略したものの、基本的には第1実施形態の回転検出装置1(図3)と同様の構成をとっており、第1実施形態の回転検出装置1と異なるのは、主として、モータ2に代えて図12のようなモータ回路を有するモータ60が用いられること、このモータ60が第1実施形態のモータ2と異なるのはリングバリスタ50の構成であること、信号処理部27内において検波信号との比較対象である閾値が二種類設定されると共に比較部を2つ備え、これら各比較部によって検波信号が各閾値とそれぞれ比較されること、その二種類の閾値との比較結果に基づいて2種類の回転パルスが生成されること、及びその2種類の回転パルスに基づき、回転検出部72がモータ60の回転角、回転方向、及び回転速度を検出することである。
図11に示すように、本実施形態のリングバリスタ50は、円板状のバリスタ素子部54における一方の円板面上に3つの電極が形成されているという基本構成については第1実施形態のリングバリスタ30と同じであり、このうちバリスタ素子部54は第1実施形態のバリスタ素子部34と全く同じである。
そして、本実施形態のリングバリスタ50が第1実施形態のリングバリスタ30と異なるのは、3つの電極の面積である。本実施形態のリングバリスタ50は、3つの電極51,52,53がいずれも異なる面積となるように構成されている。より具体的には、第2電極52の面積が最も大きく、第3電極53の面積が最も小さい。第1電極51の面積は、第3電極53より大きく且つ第2電極52よりは小さくなるように形成されている。
そのため、このようなリングバリスタ50が設けられたモータ60のモータ回路は、図12に示すように、基本的には、第1実施形態のモータ2のモータ回路(図3参照)と同じように各相コイルL1,L2,L3にそれぞれ等価的に第1バリスタ50a,第2バリスタ50b,及び第3バリスタ50cが並列接続された状態となる。
但し、本実施形態のリングバリスタ50は、図11に示した通り、3つの電極51,52,53の面積がそれぞれ異なっているため、各相コイルL1,L2,L3に等価的に接続されている各コンデンサC21,C22,C23の静電容量値もそれぞれ異なる値となる。具体的には、第1相コイルL1に等価的に並列接続されている第1コンデンサC21の静電容量値(即ち第1電極51と第2電極52の間の静電容量値)が最も大きく、第3相コイルL3に等価的に並列接続されている第3コンデンサC23の静電容量値(即ち第1電極51と第3電極53の間の静電容量値)が最も小さい。そして、第2相コイルに等価的に並列接続されている第2コンデンサC22の静電容量値(即ち第2電極52と第3電極53の間の静電容量値)は、第3コンデンサC23より大きく且つ第1コンデンサC21よりは小さい値である。
そのため、モータ60が180°回転する間、各ブラシ18,19と接触する整流子片が切り替わる毎、即ち各ブラシ18,19間のモータ回路が変化する毎に、そのモータ回路のインピーダンスはそれぞれ異なる値に変化する。つまり、第1実施形態では、図5に示したように、180°回転する間にモータ回路は状態A〜Cの3種類に変化するもののインピーダンスの変化は状態B,Cのときと状態Aのときとで異なる二種類(二段階)であったのに対し、本実施形態では、モータ回路が3種類に変化する毎に、インピーダンスもそれぞれ異なる値(三種類の値)となる。即ち、モータ回路が変化する毎にインピーダンスも段階的に変化するのである。
図13に、本実施形態のモータ60における、モータ回路毎のインピーダンスの周波数特性を示す。図中、状態Dとは、第1実施形態の状態Aに相当するものであり、即ち、Vb側のブラシ18に第1整流子片11が接触し、GND側のブラシ19に第2整流子片12が接触した状態(図12に示された状態)である。
状態Eとは、第1実施形態の状態Bに相当するもの、即ち状態Dからモータ60が時計回りに約60°回転した状態であり、Vb側のブラシ18に第3整流子片13が接触し、GND側のブラシ19に第2整流子片12が接触した状態である。
状態Fとは、第1実施形態の状態Cに相当するもの、即ち状態Dからモータ60が時計回りに約60°回転した状態であり、Vb側のブラシ18に第3整流子片13が接触し、GND側のブラシ19に第1整流子片11が接触した状態である。
そして、図12に示すように、インピーダンス特性の共振周波数は、状態Dの共振周波数f4が最も小さく、状態Fの共振周波数f6が最も大きく、状態Eの共振周波数f5はその間にある。
そのため、モータ60に流れるモータ電流の交流電流成分は、モータ60が同一方向に回転している限り、その振幅が、小振幅、中振幅、大振幅の3種類段階に順次変化する。この振幅変化の例を図14に示す。図14は、モータ60の停止制御時のモータ電流のうち、交流電流成分のみを示したものである。
本実施形態では、リングバリスタ50の各電極間の静電容量値がそれぞれ異なることから、モータ60に流れる電流の交流電流成分は、図14に示すように、モータが同一方向に回転している限り、60°回転する毎(即ちブラシに接触する整流子片が切り替わる毎)にその振幅が変化する。そのため、その振幅変化に基づき、60°毎に回転角を検出することができる。
そこで本実施形態の回転検出装置を構成する信号処理部71は、図15(a)に示すように、2つの閾値設定部75,76と、2つの比較部73,74を備え、各比較部73,74からそれぞれ第1回転パルスSp11、第2回転パルスSp12が出力されるよう構成されている。
即ち、図15(a)に示す信号処理部71は、HPF41、増幅部42、包絡線検波部43、及びLPF44を備えている点では、図8に示した第1実施形態の信号処理部27と同じである。そして、本実施形態の信号処理部71では、LPF44から出力された検波信号が、第1比較部73及び第2比較部74に入力される。
第1比較部73では、入力された検波信号と第1閾値設定部75にて設定されている第1閾値との比較が行われ、第1実施形態の比較部46と同様に、比較結果に応じた回転パルス(第1回転パルスSp11)が出力される。
第2比較部74では、入力された検波信号と第2閾値設定部76にて設定されている第2閾値との比較が行われ、比較結果に応じた回転パルス(第2回転パルスSp12)が出力される。
第1閾値及び第2閾値は、次のように設定されている。即ち、検出信号に含まれる交流電流成分が小振幅のときの包絡線検波部43による包絡線検波後の検波信号を小検波信号、交流電流成分が中振幅のときの包絡線検波部43による包絡線検波後の検波信号を中検波信号、交流電流成分が大振幅のときの包絡線検波部43による包絡線検波後の検波信号を大検波信号としたとき、第1閾値は、小検波信号より大きく中検波信号より小さい所定の値であり、第2閾値は、中検波信号より大きく大検波信号より小さい所定の値である。
そのため、包絡線検波部43からの検波信号に対して第1比較部73にて第1閾値との比較を行った結果、例えば検波信号が第1閾値より小さければ、小検波信号と判断できる。検波信号が第1閾値より大きかった場合は、中検波信号又は大検波信号の何れかであることが推定される。この場合、第2比較部74による第2閾値との比較の結果、検波信号が第2閾値より小さければ中検波信号と判断でき、検波信号が第2閾値よりも大きければ大検波信号と判断できる。
逆に言えば、検波信号に対してそれが小検波信号、中検波信号、又は大検波信号のいずれであるかを判断できるように、第1閾値及び第2閾値をそれぞれ設定することで、整流子片の切り替わり毎(モータ回路の切り替わり毎)に、その切り替わりを検出して各回転パルスSp11,Sp12を生成することができる。そのため、第1実施形態に比べて分解能の高い回転角検出が実現される。図15(b)は、各回転パルスSp11,Sp12の一例である。
また、本実施形態では、180°回転する間の整流子片の切り替わり毎に、交流電流成分の振幅が小・中・大の3段階種類にそれぞれ変化するため、その変化パターンに基づいてモータ60の回転方向を検出することができる。
図14は、モータ60の停止制御時に、モータ2が停止する直前に時刻t1で逆転してしまった場合の波形を示している。
仮に、時刻t1で逆転が生じずにそのまま停止したとすると、交流電流成分の振幅は、時刻t1のときの中振幅状態から変化しないか、或いは、変化するとしたら次は大振幅に変化するはずである。
これに対し、時刻t1で逆転が生じると、図14に示すように、中振幅の状態から再び小振幅に戻り、更にその小振幅の状態から大振幅へと変化する。つまり、逆転により、振幅の変化のパターン順序が、正転時の変化パターン順序(小振幅→中振幅→大振幅→小振幅→・・・)とは逆になるのである。なお、図14の例では大振幅の期間における時刻t2でモータ60が完全に停止した例が示されているため、停止後の交流電流成分の振幅は大振幅のままとなっている。
そのため、本実施形態では、交流電流成分の振幅がどのように変化するかによって、モータ60の回転方向をも検出することができるのである。例えば図14の時刻t1以降においては、振幅が中振幅から小振幅へと変化している。そのため、この中振幅から小振幅への変化に基づいて、モータ60の回転方向が変わったことを検出できる。
そこで本実施形態の回転検出部72は、信号処理部71にて生成された第1回転パルスSp11及び第2回転パルスSp12に基づき、モータ60の回転角、回転速度、及び回転方向を検出するよう構成されている。なお、回転速度の検出は、第1回転パルスSp11又は第2回転パルスSp12の出力間隔(周期)に基づいて検出することができる。
以上説明した本実施形態によれば、モータ60において、リングバリスタ50の各電極間の静電容量値がそれぞれ異なる値となるようにされており、これにより、回転に伴って各ブラシ18,19と接触する整流子片が切り替わる毎に、交流電流成分の振幅もそれぞれ異なる大きさに変化する。そのため、高い分解能で回転角を検出することができ、しかも、回転角や回転速度に加えて回転方向をも検出することができる。そのためモータ60の停止付近で起こりやすい逆転も正確に検出でき、回転方向も考慮されたより精度の高い回転状態の検出が可能となる。
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記各実施形態では、リングバリスタとして、一方の円板面上にのみ各電極が形成された構成を例示したが、このような構成はあくまでも一例である。即ち、円板状のリングバリスタにおけるバリスタ素子部は、2つの円板面のうち一方である表面、その2つの円板面のうち他方である裏面、外周面、及び内周面(中心孔の内周面)の、4つの面を有している。
そのため、これら4つの面のうち、上記各実施形態のように何れか一つの面のみ(上記例では表面のみ)に各電極を形成するようにしてもよいのはもちろんのこと、それ以外に、例えば、何れか一つ又は複数の電極を、上記4つの面のうち表面以外の他の面に形成してもよいし、隣接する複数の面に渡って連続的に形成するようにしてもよく、複数の電極毎に、それをバリスタ素子部上のどこにどのように形成するかは適宜決めることができる。
1つの電極が複数の面に渡って連続的に形成された構成の一例を、図16に示す。図16は、3つの電極81,82,83のうち2つが複数の面に渡って連続的に形成されたリングバリスタ80を示すものであり、同図(a)は上面図、同図(b)は側面図、同図(c)は底面図である。なお、このリングバリスタ80におけるバリスタ素子部84は、第1実施形態のリングバリスタ30のバリスタ素子部34と全く同じである。
図16に示すリングバリスタ80は、第3電極83については、バリスタ素子部84の表面上に形成されている。これに対し、第1電極81は、バリスタ素子部84の表面に形成された第1表面電極部81a,バリスタ素子部84の側面(外周面)に形成された第1側面電極部81b,及びバリスタ素子部84の裏面に形成された第1裏面電極部81cを有し、これら各電極部81a,81b,81cが連続的に形成されて1つの第1電極81をなしている。
第2電極82も、第1電極81と同じように、バリスタ素子部84の表面に形成された第2表面電極部82a,バリスタ素子部84の側面(外周面)に形成された第2側面電極部82b,及びバリスタ素子部84の裏面に形成された第2裏面電極部82cを有し、これら各電極部82a,82b,82cが連続的に形成されて1つの第2電極82をなしている。
このように構成された図16のリングバリスタ80は、第1電極81及び第2電極82がいずれもバリスタ素子部84の表面・裏面・外周面の3面に渡って連続的に形成されているため、電極面積をより大きくとることができる。つまり、第3電極83との面積の差をより大きくすることができる。
そのため、各電極間の静電容量値、即ち各相コイルL1,L2,L3に等価的に並列接続される各コンデンサC31,C32,C33の静電容量値は、第2コンデンサC32と第3コンデンサC33が同じ値であって第1コンデンサC31はそれらよりも大きい値であるという点では、第1実施形態のリングバリスタ30と同じであるが、第1コンデンサC31の静電容量値と他の2つのコンデンサC32,C33の静電容量値の差は、第1実施形態のリングバリスタ30の場合よりも非常に大きい。
そのため、第1実施形態において、図2に示したリングバリスタ30に変えてこの図16のリングバリスタ80を用いれば、状態A,A’のインピーダンスと状態B,C,B’,C’のインピーダンスの差が大きくなり、交流電流成分の振幅の変化も大きくなる。そのため、回転状態の検出をより精度良く行うことが可能となる。
第2実施形態のリングバリスタ50のように、3つの電極の面積をそれぞれ異なるように形成する場合についても、電極毎に、バリスタ素子部84の各面のうちどこにどのように形成するかを適宜決めることで、3つの電極の面積の差をより大きくすることができ、それにより回転状態(特に回転方向)をより精度良く検出することが可能となる。
また、上記各実施形態では、リングバリスタの各電極間の静電容量値に差異を持たせるための具体的構成として、各電極の面積に差異を持たせる構成を採用したが、電極の面積に差異を持たせる構成以外にも(或いはそれに加えて)他の構成によって静電容量値に差異を持たせるようにしてもよい。
その具体的方法は種々考えられ、例えば図17に示すように、絶縁層の厚さに差異を持たせることで実現することができる。図17に示すリングバリスタ90は、バリスタ素子部94の表面上に3つの電極91,92,93が形成されており、いずれも面積は同じである。
一方、バリスタ素子部84は、半導体層95の表面に形成されている絶縁層の厚さが、各電極毎に異なる厚さとなっている。具体的には、第1電極91に対応した絶縁層、即ち第1電極91と半導体層95との間の絶縁層である第1絶縁層96aの厚さをd1(図17(b)参照)、第2電極92に対応した絶縁層、即ち第2電極92と半導体層95との間の絶縁層である第2絶縁層96bの厚さをd2(図17(c)参照)、第3電極93に対応した絶縁層、即ち第3電極93と半導体層95との間の絶縁層である第3絶縁層96cの厚さをd3(図17(d)参照)、としたとき、その大小関係は、d1<d2<d3、となっている。
そのため、各電極間の静電容量値、即ち各相コイルL1,L2,L3に等価的に並列接続される各コンデンサC41,C42,C43の静電容量値は、何れも異なる値となる。つまり、第2実施形態のような、各電極間の静電容量が個々に異なる値となるような特性が、電極の面積の差異ではなく、絶縁層の厚さの差異によって実現されている。
もちろん、図17に示した構成は一例であって、電極毎に絶縁層の厚さを適宜調整することで、例えば第1実施形態のリングバリスタ30と同等の特性(電極間の静電容量値の差異)を有するリングバリスタを実現することもできる。
更に、各電極の面積に差異を持たせる構成と、図17のようにバリスタ素子部側で電極毎に差異を持たせる構成とを組み合わせることもできる。
また、上記各実施形態では、モータにリングバリスタが1つ設けられた構成について説明したが、リングバリスタの数は1つに限定されるものではなく、複数のリングバリスタが設けられたモータを構成してもよい。
例えば、第1実施形態のモータ2において、リングバリスタ30を2つ設け、整流子10と2つのリングバリスタ30の電極との接続を、双方のリングバリスタに対していずれも第1実施形態と同じ接続状態となるようにすることができる。
即ち、第1整流子片11を、2つのリングバリスタ30に対していずれも電極面積の大きい第1電極31に接続し、第2整流子片12についても、2つのリングバリスタ30に対していずれも電極面積の大きい第2電極32に接続し、第3整流子片13については、2つのリングバリスタ30に対していずれも電極面積の小さい第3電極33に接続する。
このようにすることで、回転中にブラシ間に生じる静電容量値の差が、リングバリスタ30が1つの場合よりも大きくなり、回転状態の検出精度をより高めることができる。
なお勿論、上記のように整流子10と2つのリングバリスタ30を接続することはあくまでも一例であり、リングバリスタを幾つ設けるか、また、複数のリングバリスタのそれぞれに対して整流子片10をどのように接続するかなどについては、適宜決めることができる。
また、上記各実施形態では、リングバリスタとして、円板状のバリスタ素子部に電極が形成されたものを示したが、このような形状はあくまでも一例であり、全体としてリング状の形状をなしている限り、その具体的形状は適宜決めることができる。例えば、ドーナツ形状のバリスタ素子部に電極が形成された構成としてもよい。また例えば、外周が多角形状に形成されたものであってもよい。
また、上記各実施形態では、モータにおける各相コイルL1,L2,L3がΔ結線されている構成を例示したが、Δ結線に限らず、各相コイルL11,L12,L13がスター結線されたモータであっても、本発明を適用できる。
また、上記各実施形態では、電機子コイルの相数が3相の3相直流モータを例に挙げて説明したが、本発明の適用は、3相のモータに限定されるものではなく、4相以上のモータであっても適用可能である。
例えば5相の直流モータの場合、リングバリスタとして5つの電極を有するものを用いることになるが、この場合も、リングバリスタの各電極間の静電容量値に差異を持たせることで、モータが180°回転する間にインピーダンスの変化が二種類(二段階)或いはそれ以上生じるように構成することができる。
図18に、本発明を5相の直流モータに適用した場合の一例を示す。図18は、5相の直流モータのうち、整流子110とリングバリスタ100のみを図示している。整流子110は、第1整流子片111、第2整流子片112、第3整流子片113、第4整流子片114、及び第5整流子片115の5つの整流子片を有している。
一方、リングバリスタ100は、第1電極101、第2電極102、第3電極103、第4電極104、及び第5電極105の5つの電極を有している。このうち、第1電極101,第2電極102,及び第3電極103は、第4電極104及び第5電極105よりも電極面積が大きい。
そして、第1電極101には第1整流子片111が接続され、第2電極102には第1整流子片112が接続され、第3電極103には第1整流子片113が接続され、第4電極104には第1整流子片114が接続され、第5電極105には第1整流子片115が接続されている。
このような構成において、図示しない一対のブラシと接触する整流子片の組(延いてはその整流子片の組を介して電気的に接続される電極の組)は、直流モータが180度回転する間に次のように変化する。即ち、例えばある時点で一対のブラシに接触している整流子片が第1整流子片111と第3整流子片113であるとする(この場合、これら各整流子片を介して第1電極101と第3電極103がブラシに接続されている)。そこから直流モータが回転すると、一対のブラシに接触する整流子片は、第5整流子片115と第3整流子片113に切り替わり(つまり第5電極105と第3電極103がブラシに接続され)、さらに回転すると第5整流子片115と第2整流子片112に切り替わり(つまり第5電極105と第2電極102がブラシに接続され)、さらに回転すると第4整流子片114と第2整流子片112に切り替わり(つまり第4電極104と第2電極102がブラシに接続され)、さらに回転すると第4整流子片114と第1整流子片111に切り替わる(つまり第4電極104と第1電極101がブラシに接続される)。
そのため、直流モータが180度回転する間に、一対のブラシ間の静電容量値は、少なくとも大きな値と小さな値の2種類に変化する。具体的には、上記の5種類の接続状態のうち、第1整流子片111と第3整流子片113がブラシに接触している状態(つまり第1電極101と第3電極103がブラシに接続されている状態)では、ブラシに接続されている双方の電極の面積がいずれも大きいため静電容量値も大きい。これに対し、その他の状態では、ブラシに接続される電極のうち一方が小さい(第4電極104又は第5電極105となる)ため、静電容量値は小さくなる。
よって、上記のように180度回転する間に生じる少なくとも2種類の静電容量値の変化(延いてはブラシ間のインピーダンスの変化)に基づいて、上述した各実施形態と同様に直流モータの回転状態を検出することができる。
つまり、モータにおける電機子コイルの相数にかかわらず、リングバリスタの各電極間の静電容量値に適宜差異を持たせることで、結果として、モータの回転に伴ってブラシ間のインピーダンスを複数種類(複数段階)に変化させ、それによってモータ電流の交流電流成分も複数段階に変化させることができる。そして、その交流電流成分の変化に基づいて回転状態(回転角、回転方向、回転速度の少なくとも1つ)を検出することができる。
また、上記各実施形態では、リングバリスタの形状として、いずれも、全体として真円の円板状のものを図示したが、これらはあくまでも一例である。例えば、真円ではなく楕円であってもよいし、外周が多角形状のものであってもよく、その形状(特に外周形状)は限定されるものではない。また、モータの回転軸とリングバリスタの中心との位置関係についても、必ずしも両者を一致させる必要はない。
更に、リングバリスタは、必ずしも円周に沿って連続的に形成された完全な円板状のものである必要はなく、例えば図19(a),(b)に示すようなC型形状のものであってもよい。
図19(a)のリングバリスタ120は、は、C型形状のバリスタ素子部124の一方の面に第1電極121,第2電極122,及び第3電極123が形成されたものであり、このうち第1電極121と第2電極122は同じ面積であって、これら2つに対して第3電極123は面積が小さい。そして、バリスタ素子部124は、完全な円板状ではなく、一部に素子間隙部125が形成されており、これにより全体としてC型の形状をなしている。
図19(b)のリングバリスタ130も、電極面積を除けば基本的には図19(a)のリングバリスタ120と同じである。即ち、C型形状のバリスタ素子部134の一方の面に第1電極131,第2電極132,及び第3電極133が形成されたものであり、これら3つの電極131,132,133はいずれも同じ面積である。そして、バリスタ素子部134は、完全な円板状ではなく、一部に素子間隙部135が形成されており、これにより全体としてC型の形状をなしている。このリングバリスタ130は、電極面積は同じであるが、バリスタ素子部134がC型形状をなしていることから、ブラシ間のインピーダンスはモータの回転に伴って少なくとも2種類に変化することになる。
図19(a),(b)に示した各リングバリスタ120,130は、完全な円板状ではないリングバリスタの1つの例であって、これら各リングバリスタ120,130以外の種々の形状のリングバリスタであってもよいことは言うまでもない。
また、上記各実施形態は、リングバリスタによってブラシ間の静電容量値を変化させる構成であったが、静電容量値に加えてブラシ間のインダクタンス値についてもモータ回転中に変化するように構成してもよく、そのようにすれば、ブラシ間のインピーダンスをより大きく変化させることができる。具体的には、例えばモータの各相コイルのいずれか1つ(又は2つ)に対して別途インダクタンス素子を直列又は並列に接続したり、或いは各相コイルのうちいずれか1つの巻数を他の各相コイルとは異なるようにすることで実現できる。
より具体的な例を挙げると、例えば上記第1実施形態で説明したモータ2において、第1相コイルL1の巻数を他の各相コイルL2,L3よりも増やすことにより、第1相コイルL1のインダクタンスを増加させれば、図5に示した状態Aにおいて、第1相コイルL1と第1コンデンサC1の並列回路の共振周波数f1(図6参照)がさらに小さくなる。そのため、他の状態B,Cの共振周波数f3との差が広がり、インピーダンスの差をより大きくすることができる。
但し、モータの相コイルのインダクタンスを変化させると、その変化の度合い(巻数の差)によってはモータにトルク変動が生じるおそれがある。そのため、ブラシ間のインダクタンスを変化させる場合は、可能な限りトルク変動が抑制されるようにするのが好ましい。
また、上記各実施形態では、モータの回転中に生じる、隣接する2つの整流子片に1つのブラシが同時に接触する切り替わり期間については、考慮しないものとしたが、この切り替わり期間に生じるブラシ間のインピーダンス変化を利用してモータの回転状態を検出することも可能である。そして、このように切り替わり期間のインピーダンス変化を利用する場合は、必ずしも、リングバリスタの電極面積を上記各実施形態のように変化させる必要はない。つまり、電極面積がいずれも同じであって隣接する電極間の静電容量値が同じである公知のリングバリスタをそのまま用いても、切り替わり期間に生じるインピーダンス変化を利用して回転状態を検出することは可能である。
また、上記各実施形態では、交流電源4として、図4(a)で説明したように振幅Vsの正弦波状の電圧を出力するものを例に挙げて説明したが、交流電源4が出力する交流は正弦波交流に限らないのはいうまでもなく、種々の波形の交流電圧を出力することができる。例えば、正弦波交流電圧に代えて、方形波電圧を出力するようにしてもよい。