以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1に、本発明が適用された実施形態の回転検出システムの概略構成を示す。図1に示すように、本実施形態の回転検出システム1は、直流モータ(以下単に「モータ」と称す)2の回転角を検出するための装置であり、モータ2を回転駆動させる(トルクを発生させる)ための直流電圧を出力する直流電源3と、モータ2の回転角を検出するための交流電圧を出力する重畳部5と、この重畳部5から出力されてモータ2へ流れる交流電流に基づいてモータ2の回転角に応じた信号(回転パルスSp)を生成し出力する回転信号検出部6と、この回転信号検出部6から出力される回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出する回転角検出部7と、を備えている。
直流電源3は、所定電圧値の直流電圧を出力するものであり、その直流電圧がモータ2に印加される(詳しくは各ブラシ16,17間に印加される)。なお、直流電源3からモータ2を経てグランド電位に至る経路(直流電流が流れる経路)には、チョークコイルLoが設けられているが、このチョークコイルLoについては後述する。
重畳部5は、所定の周波数の交流電圧を生成する交流電源4と、直流電源3から出力される直流電圧に交流電源4にて生成された交流電圧を重畳させてモータ2へ印加するためのカップリングコンデンサC10(本発明の直流電流遮断部、コンデンサに相当)と、交流電源4からの交流電源をモータ2へ流すための通電経路であって後述するように直流電源3からの直流電流が流入しない直流非流入経路8と、を備えている。交流電源4にて生成される交流電圧は、図2の上段に示すような方形波電圧である。そして、カップリングコンデンサC10を介して出力される交流電流は、図2の下段に示すような、略インパルス状の波形となる。
尚、重畳部5から出力される交流電流は、常に図12に示すような略インパルス状の電流波形となるわけではなく、モータ2の回転角や、モータ2以外の他の回路等の回路定数などによって変化する。但し、高調波成分を含むことは同じである。
そのため、重畳部5から出力される交流電流は、交流電源4にて生成される方形波電圧の周波数である基本波周波数f1の他に、高次の高調波成分も含まれる。具体的には、図7の周波数スペクトルに示すように、基本波周波数f1の他、その基本波周波数f1のn倍(nは2以上の自然数)の周波数fnであるn倍波(2倍波、3倍波、4倍波、・・・)が含まれる。その中でも特に、基本波成分(f1)及び奇数倍波成分(f3,f5,f7・・・)の電流がより大きくなる。
このような構成により、モータ2には、単に直流電源3から出力される直流電圧が印加されるだけではなく、直流電源3から出力される直流電圧に重畳部5から出力される交流電圧が重畳された交流重畳電圧が印加される。そのため、モータ2には、直流電源3からの直流電圧による直流電流に重畳部5からの交流電圧による交流電流(図2の下段参照)が重畳された、交直混在(脈流の一種)の電流(交流重畳電流)が流れる。
但し、モータ2は直流モータであるため、交流重畳電流のうち、モータ2の回転に寄与する(トルクを与えて回転駆動させる)成分は、直流電源3にて印加される直流電圧による直流成分であり、重畳部5から印加される交流電圧による交流成分は回転そのものには関与せず、トルクに影響を与えることもない。重畳部5からの交流電圧は、モータ2の回転状態(本実施形態では回転角)を検出するためにモータ2に印加されるのであり、回転信号検出部6は、後述するように、モータ2に流れる電流のうち交流成分に基づいて回転パルスを生成する。つまり、重畳部5は、モータ2を回転させるための電源としてではなく、モータ2の回転状態を検出する目的で設けられているのである。
なお、直流電源3からの直流電圧の出力、及び重畳部5からの交流電圧の出力は、それぞれ独立して制御することが可能に構成されている。本実施形態では、モータ2を回転させる際(起動〜定常回転時)は直流電源3からの直流電圧を印可させると共に重畳部5からの交流電圧も重畳して印加させる。一方、回転中のモータ2を停止(制動)させる際は、モータ2への直流電源3からの直流電圧を遮断する。但し、重畳部5からの交流電圧の印加は、制動させる際も継続される。つまり、重畳部5からの交流電圧は、少なくともモータ2が回転している間はモータ2へ印加され続けるのである。
また、直流電源3から出力される直流電流と、重畳部5から出力される交流電流は、図1に示す合流点Pにおいて合流し、交流重畳電流としてモータ2へ流れる。重畳部5には既述の通りカップリングコンデンサが備えられているため、直流電源3からの直流電流は、合流点Pから直流非流入経路8には流入しない。
モータ2は、互いに対向して(即ち回転方向に180°離れて)配置された一対のブラシ16,17を備え、電機子コイルとして3相の相コイルを有するブラシ付きの3相直流モータであり、各ブラシ16,17と接触する3つの整流子片11,12,13からなる整流子10を備えている。そして、電機子コイルを構成する3つ(3相)の各相コイルL1,L2,L3が、それぞれ、図示のようにΔ結線されている。
即ち、第3整流子片13と第1整流子片11との間に第1相コイルL1が接続され、第1整流子片11と第2整流子片12との間に第2相コイルL2が接続され、第2整流子片12と第3整流子片13との間に第3相コイルL3が接続されている。これら3つの相コイルL1,L2,L3からなる電機子コイル及び整流子10により、アーマチャが構成される。なお、各相コイルL1,L2,L3のインダクタンスは同じ値(L1=L2=L3)である。また、各相コイルL1,L2,L3は、互いに電気角で2/3πずつ離れるように配置されている。
そして、3つの整流子片11,12,13のうちいずれか2つが、各ブラシ16,17にそれぞれ接触しており、モータ2の回転による整流子10の回転に伴って、各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片は切り替わっていく。
なお、本実施形態のモータ2は、図示は省略したものの、ヨークハウジングを有すると共に、ヨークハウジングの内壁側に永久磁石からなる界磁が設けられ、この界磁と対向するようにアーマチャが配置されている。
更に、本実施形態では、モータ2において、第1相コイルL1と並列に、コンデンサC1が接続されている。そのため、直流電源3からの直流電圧と重畳部5からの交流電圧が重畳された交流重畳電圧は、各ブラシ16,17およびこれらに接触しているいずれか2つの整流子片を介して、モータ2内部の各相コイルL1,L2,L3及びコンデンサC1からなる回路(モータ回路)に印加される。そして、このように交流重畳電圧が印加されることにより、モータ回路には交流電流成分を含む電流が流れる。
コンデンサC1は、周知の通り、直流的には電流がほとんど流れない非常に高い抵抗として機能し、交流的には周波数が高くなればなるほど電流が流れやすい低インピーダンス特性を有する。そのため、直流電源3からみればこのコンデンサC1は等価的に存在しないものとして扱うことができ、よって、直流電源3からの直流電流は各相コイルL1,L2,L3にのみ流れることとなる。
一方、重畳部5からみれば、各相コイルL1,L2,L3は高インピーダンスであるのに対してコンデンサC1は低インピーダンスとなり、両者の差は大きい。そのため、例えば図1に示す状態からモータ2が時計回りに回転(即ち整流子10が時計回りに回転)して、通電経路の下流側(グランド電位側)のブラシ17に第1整流子片11が接触するようになると、各ブラシ16,17間に、第1相コイルL1とコンデンサC1の並列回路が形成される。即ち、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの通電経路が形成され、モータ回路全体として、このコンデンサC1と、各相コイルL1,L2,L3の合成インダクタンスとの、並列共振回路が形成される。そのため、その状態では、各ブラシ16,17間のモータ回路のインピーダンスは並列共振特性を有し、共振周波数以上の周波数帯域では周波数が高くなればなるほどインピーダンスは低くなる。
つまり、直流的にみればモータ回路は3つの相コイルL1,L2,L3のみからなる回路とみなせ、故に、直流電源3からの直流電流によって回転するモータ2の回転速度やトルクにコンデンサC1の存在が影響することはない。
これに対し、交流的にみれば、モータ2の回転角に応じて各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片が切り替わる毎に、各ブラシ間に形成されるモータ回路も変化し、よってモータ回路のインピーダンスも変化する。但し、本実施形態では、第1相コイルL1に対してのみコンデンサC1を一つ接続しているため、モータ2が180°回転する間に整流子片の切り替わりは3回生じるもののインピーダンスの変化は二段階である。
図3(a)に、モータ2が180°回転する間における、モータ2内部の結線状態の変化、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路の変化を示す。図3(a)に示すように、本実施形態のモータ2のモータ回路は、モータ2が180°回転する間に、主として状態A、状態B、及び状態Cの三種類に変化する。
状態Aは、図示の如く、直流電源3の正極側(以下「Vb側」ともいう)のブラシ16に第1整流子片11が接触し、グランド電位側(以下「GND側」ともいう)のブラシ17に第2整流子片12が接触した状態である。この状態Aでのモータ2の等価回路、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路は、図中右側に示す回路となる。なお、Vbとは、直流電源3から出力される直流電圧値を示すものである。
この状態Aでは、コンデンサC1と第3相コイルL3とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ16から他方のブラシ17に至るまでの経路には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この状態Aでは、各相コイルL1,L2,L3によるインダクタンスが支配的となってモータ回路全体のインピーダンスが高くなり、故に、モータ2に流れる電流に含まれる交流成分(以下「交流モータ電流」ともいう)の振幅は小さい。
状態Bは、状態Aから時計回りに約50°回転した状態であり、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態Aのときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わっている。GND側のブラシ17には第2整流子片12が接触している。
この状態Bでも、コンデンサC1と第2相コイルL2とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ16から他方のブラシ17に至るまでの経路には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この状態Bでもモータ回路全体のインピーダンスは高く、故に、交流モータ電流の振幅は小さい。なお、この状態Bと状態Aは、図の等価回路を比較して明らかなように、回路全体のインピーダンスは同じである。そのため、交流モータ電流の振幅も同じ大きさである。
状態Cは、状態Bからさらに時計回りに約50°回転した状態であり、GND側のブラシ17に接触する整流子片が、状態A,Bのときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わっている。Vb側のブラシ16には第3整流子片13が接触している。
この状態Cでは、第2相コイルL2及び第3相コイルL3の直列回路と、第1相コイルL1と、コンデンサC1とが、それぞれ並列接続された状態となる。そのため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路が存在する。これにより、モータ回路のインピーダンスは低くなる。
特に本実施形態では、モータ回路全体として並列共振回路が形成され、インピーダンスは並列共振特性を持つことになる。そのため、共振周波数より高い周波数帯域では、周波数が高くなるほどコンデンサC1が支配的となってインピーダンスは低くなる。そのため、交流モータ電流の振幅は大きくなる。
このように、モータ2が180°回転する間には、各ブラシ16,17と接触する整流子片の切り替わりが3回生じ、これに伴って各ブラシ16,17間のモータ回路は状態A,B,Cの三種類に切り替わる。但し状態Aと状態Bは、既述の通り、回路全体のインピーダンスが等しいため、180°回転の間に生じるインピーダンスの変化は二段階である。
なお、モータ2の回転の過程では、隣接する2つの整流子片に一つのブラシが同時に接触する切り替わり期間が存在し、この切り替わり期間においてもブラシ間のインピーダンスが変化するが、この切り替わり期間はモータ2が一回転する間において瞬間的に生じるのみであり、これに伴うインピーダンスの変化も瞬間的なものである。そのため、本実施形態ではこの切り替わり期間については考慮しないものとする。
状態Cから更に回転が進むと、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態Cのときの第3整流子片13から第2整流子片12へと切り替わる。GND側のブラシ17には第1整流子片11が接触している。この状態は、上述した状態Aにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Aと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態A’という。
この状態A’から更に回転が進むと、GND側のブラシ17に接触する整流子片が、状態A’のときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わる。Vb側のブラシ16には第2整流子片12が接触している。この状態は、上述した状態Bにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Bと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態B’という。
この状態B’から更に回転が進むと、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態B’のときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わる。GND側のブラシ17には第3整流子片13が接触している。この状態は、上述した状態Cにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Cと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態C’という。
そして、この状態C’から更に回転が進むと、再び状態Aに切り替わり、以下、回転が進むにつれて状態B→状態C→状態A’→状態B’→状態C’→状態A→・・・と切り替わる。
つまり、モータ2は、一回転する間にその回転角に応じてモータ回路が状態A、B、C、A’、B’、C’の六種類に順次切り替わるのであり、60°回転毎に状態が切り替わるということになる。このうち、状態A、B、A’、B’は、いずれも同じインピーダンス(高インピーダンス)である。また、状態C、C’も同じインピーダンスであり、その値は状態A等のインピーダンスよりも非常に低い。
図3(b)に、各状態におけるインピーダンスの周波数特性を示す。上述の通り、状態A,B,A’,B’のモータ回路のインピーダンスは同じである。この状態A,B,A’,B’の場合、コンデンサC1の影響はほとんどなく、周波数faで小さなピーク値(小さな共振点)が生じるものの、全体としてみれば周波数が高くなるほどインピーダンスが増加する特性となる。
これに対し、状態C,C’の場合、各相コイルL1,L2,L3とコンデンサC1との共振によってインピーダンス特性は大きく変化し、共振周波数fbを中心(最大値)としてインピーダンスは小さくなる。そのため、状態A,B,A’,B’と状態C,C’とでは、インピーダンスが一致(特性が交差)する周波数fcを除き、インピーダンスが異なる。特に、周波数fcよりもある程度高い周波数以上の帯域では、インピーダンスの比が大きくなる。
そのため、本実施形態では、重畳部5から出力される交流電流の基本波周波数f1(図7参照)が、上記周波数fcよりも高い所定の周波数となるように設定されている。
そして、上述したモータ回路のインピーダンスの変化は、モータ2に流れるモータ電流に含まれる交流成分(交流モータ電流)の変化、或いはその交流モータ電流が流れる通電経路の電圧に含まれる交流成分(交流電圧成分)の変化として直接現れる。
図4は、回転中のモータ電流の一例を示す図である。図4に示すように、モータ電流は、直流電流成分に交流電流成分(交流モータ電流)が重畳した波形となる。そして、交流電流成分に着目すると、状態A、B、A’、B’のときは交流電流成分の振幅が小さく、状態C、C’のときは交流電流成分の振幅が大きくなる。即ち、モータ2が180°回転する間に、交流電流成分の振幅は二種類(二段階)に変化するのである。
そこで本実施形態では、回転信号検出部6が、モータ2の回転に伴う上記インピーダンスの変化によって生じる、モータ電流の交流電流成分の振幅変化に基づいて、回転パルスSpを生成する。そして、その回転パルスSpに基づき、回転角検出部7が、モータ2の回転角を検出する。
図5に、回転信号検出部6の具体的構成を示す。回転信号検出部6は、重畳部5から出力される交流電流を検出する電流検出部21と、この電流検出部21により検出された交流電流に基づく各種信号処理を行って回転パルスSpを生成する信号処理部22とを備えている。
電流検出部21は、重畳部5からモータ2を経てグランド電位に至る経路(交流電源4からの交流電流が流れる経路)に配置された電流検出抵抗R1からなり、この電流検出抵抗R1の両端のうちモータ2側に接続されている一端とグランドの間の電圧が、モータ2に流れる交流モータ電流に応じた検出信号(本発明の電気量に相当)として信号処理部22へ取り込まれる。
尚、このように電流検出抵抗R1の一端(モータ2側)とグランドの間の電圧を検出することによって交流モータ電流を検出する構成はあくまでも一例であり、交流モータ電流を直接又は間接的に検出できる限り、その具体的構成は他にも種々考えられる。例えば、電流検出抵抗R1の両端の電圧を差動増幅回路で増幅し、その差動増幅後の電圧(交流モータ電流を示す電圧)を信号処理部22に入力するようにしてもよい。また例えば、電流プローブを設けて電流を検出するようにしてもよい。後述する図9の構成(第2実施形態)においても同様である。
ここで、回転に伴うモータ回路のインピーダンスの変化によって生じる交流モータ電流の振幅変化を検出するためには、その交流モータ電流を直接検出できる位置に電流検出抵抗R1を配置するのが好ましい。具体的には、図1において、合流点Pからモータ2を経てグランド電位に至る経路に電流検出抵抗R1を配置するのが好ましい。
しかし、モータ2に流れる交流モータ電流を直接検出するということは、直流電源3からの直流電流も含まれた状態で検出(即ち交流重畳電流を検出)するということであり、故に、電流検出抵抗R1にはモータ2の駆動用の直流電流も流れることになる。そのため、この電流検出抵抗R1による駆動エネルギーの損失が生じてしまう。
この電流検出抵抗R1による損失は、当然ながら小さければ小さいほど好ましいため、抵抗値の小さい電流検出抵抗R1を用いることで、ある程度の損失の低減は図ることができる。しかし、電流検出抵抗R1の抵抗値が小さくなると電流検出も困難になるため、抵抗値を小さくするにも限界がある。とはいえ、抵抗値を大きくすると、その分損失も大きくなり、冷却のためのコストアップも生じてしまう。特に、モータ2が中〜大型であって比較的大きな電流が流れるものであると、電流検出抵抗R1としても抵抗値の大きいものを用いる必要性が生じ、これにより電流検出抵抗R1での損失は非常に大きなものとなる。
一方、回転角検出のために本来検出する必要がある電流は、モータ2に流れる電流(交流重畳電流)のうち交流電流成分であり、モータ2に流れる交流電流成分の振幅変化を検出できればよい。
そこで本実施形態では、電流検出抵抗R1を、重畳部5からモータ2を経てグランド電位側に至る経路のうち、重畳部5内、即ち交流電源4からの交流電流は流れるが直流電源3からの直流電流は流入しない直流非流入経路8(合流点Pから交流電源4側の経路)に設けている。このようにすることで、電流検出抵抗R1に直流電源3からの直流電流が流れるのを阻止し、上述した損失が生じるのを防止している。
一方、電流検出抵抗R1を直流非流入経路8に設けたことにより、次のことが問題となるおそれがある。即ち、重畳部5からみた交流回路は、図6に示す等価回路のように、直流電源3とモータ2の並列回路が存在することとなり、よって、重畳部5からの交流電流は、直流電源3とモータ2の双方に流れる(分流する)ことになる。
尚、図6の等価回路において、カップリングコンデンサC10のインピーダンスをZc、電流検出抵抗R1のインピーダンスをZrとすると、交流電源4からみた交流回路のインピーダンスZは、次式(1)で表される。
式(1)のインピーダンスZにおいて、モータ2のインピーダンスZmは、既述の通り、モータ2の回転に伴って変化する。そして、モータ2のインピーダンスZmが大きいときは、上記式(1)の右辺における第3項の値は1に近付き、逆にモータ2のインピーダンスZmが小さいときは、上記式(1)の右辺における第3項の値は0に近づく。このモー2のインピーダンスZmの変化によって、交流回路全体のインピーダンスZも変化し、その変化が、電流検出抵抗R1にて検出される交流成分の振幅変化となって現れる。
モータ2の回転角検出を高精度に行うためには、直流電源3側に分流する交流電流ivが小さければ小さいほど良く、モータ2に流れる交流電流imが大きければ大きいほどよい。しかし、直流電源3のインピーダンスは一般に小さいため、直流電源3側に多くの交流電流が分流してしまう。そして、重畳部5からの交流電流のうち直流電源3側に分流する割合が大きいほど(即ちモータ2側に流れる割合が小さくなるほど)、モータ2のインピーダンス変化によって生じる交流電流の振幅変化が鈍くなり、回転角の検出精度が低下してしまう。
そこで本実施形態では、直流電源3の正極側から合流点Pに至る経路に、チョークコイルLoを設け、このチョークコイルLoによって、重畳部5からの交流電流が直流電源3側に流入するのを抑制している。そのため、本実施形態では、重畳部5から出力される交流電流のほとんどがモータ2に流れることになり、よって、電流検出抵抗R1により検出される交流電流は、モータ2に直接流れる交流モータ電流と同じであるものとして扱うことができる。
図5に戻り、回転信号検出部6の構成についての説明を続ける。信号処理部22は、ハイパスフィルタ(HPF)23と、レベルシフト回路24と、包絡線検波部25と、ローパスフィルタ(LPF)26と、閾値設定部27と、比較部28と、を備えている。
HPF23は、コンデンサC11及び抵抗R2からなる周知の構成のものである。信号処理部22に取り込まれた電流検出抵抗R1による検出信号は、このHPF23によって所定の遮断周波数以下の帯域の信号がカットされる。この遮断周波数は、図7に破線で示すように、重畳部5から出力される交流電流の基本波周波数f1よりも低い周波数に設定されている。そのため、重畳部5から出力される交流電流の全ての周波数成分がHPF23を通過することとなる。このHPF23からの出力波形(検出信号)例を、図8の最上段に示す。図8に示すように、HPF23からの検出信号は、0Vを中心として振幅するものであって、その振幅は、既述の通り、二段階に変化する。
電流検出抵抗R1により検出され、HPF23によって抽出された検出信号は、レベルシフト回路24によって、レベルシフト及び増幅される。
レベルシフト回路24は、オペアンプ30と、このオペアンプ30の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R5と、一端がこのオペアンプ30の非反転入力端子に接続されて他端がグランドラインに接続された抵抗R6と、一端がこのオペアンプ30の反転入力端子に接続された抵抗R4と、一端がこのオペアンプ30の非反転入力端子に接続された抵抗R3と、レベルシフトさせる量に対応した所定の基準電圧を生成する基準電圧生成部32と、オペアンプ31と、を備えている。このオペアンプ31は、反転入力端子と出力端子が短絡された、いわゆる電圧フォロワとして構成されており、非反転入力端子に入力された基準電圧生成部32からの基準電圧がそのままの値で入力される。このオペアンプ31の出力端子は抵抗R4の他端に接続されており、オペアンプ31からの出力電圧(即ち基準電圧)は、抵抗R4を介してオペアンプ30の反転入力端子に入力される。
一方、オペアンプ30は、これに接続された各抵抗R3,R4,R5と共に全体として非反転増幅回路を構成している。そして、HPF23からの検出信号は、抵抗R3を介してオペアンプ30の非反転入力端子に入力される。
そのため、HPF23からの検出信号は、基準電圧生成部32にて生成される基準電圧だけレベルシフト(レベルダウン)されると共に、上記の非反転増幅回路にて増幅される。つまり、検出信号に対して基準電圧だけ直流オフセットが加えられ、更に増幅される。そして、0V以上の電圧が包絡線検波部25へ出力される。
本実施形態のレベルシフト回路24では、図8の最上段に示すように、レベルシフト量(直流オフセット)が、HPF23からの検出信号のうち、振幅の小さい期間における振幅の1/2に相当する量に設定されている。そのため、図8の上から2段目に示すように、レベルシフト回路24からの出力波形には、HPF23からの検出信号のうち振幅の小さい期間については波形が現れず、振幅の大きい期間のみが波形出力されることとなる。
レベルシフト回路24にてレベルシフト、増幅された検出信号は、包絡線検波部25にて包絡線検波される。この包絡線検波部25は、整流用のダイオードD1と、一端がこのダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続された抵抗R7と、一端がダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続されたコンデンサC12とを備えてなるものであり、ダイオードD1のアノードに、レベルシフト回路24からの検出信号が入力される。
この包絡線検波部25により、レベルシフト回路24から入力された検出信号が包絡線検波され、交流電流の振幅に応じた一定の信号(以下「検波信号」という)が生成される(図8の上から3段目参照)。
そして、その生成された検波信号は、LPF26にて高周波成分がカットされた上で、比較部28に入力される。LPF26は、抵抗R8及びコンデンサC13からなる周知の構成のものである。なお、抵抗R8にはダイオードD2が並列接続されている。このダイオードD2の接続方向は、検波信号が入力される方向に対して逆方向となっている。
比較部28は、コンパレータ33と、コンパレータ33の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R11と、一端がコンパレータ33の非反転入力端子に接続されて他端がLPF26に接続された抵抗R9と、一端がコンパレータ33の反転入力端子に接続されて他端が閾値設定部27に接続された抵抗R10とを備えてなるものである。
包絡線検波部25から出力された検波信号は、LPF26を介して比較部28に入力され、この比較部28において抵抗R9を介してコンパレータ33の非反転入力端子に入力される。一方、コンパレータ33の反転入力端子には、抵抗R10を介して閾値設定部27からの閾値が入力される。これにより、コンパレータ33では、検波信号と閾値との比較が行われ、その比較結果が出力される。
閾値設定部27にて設定され比較部28に入力される閾値は、本実施形態では、図4に示したモータ電流波形のうち振幅が小さい期間(つまり状態A、B、A’、B’の期間)での検波信号よりも大きく、且つ、振幅が大きい期間(つまり状態C、C’の期間)での検波信号よりも小さい、所定の値が設定されている。
そのため、振幅の小さい期間では、包絡線検波部25から比較部28へ入力される検波信号は0Vであって閾値設定部27からの閾値よりも小さいため、コンパレータ33からはローレベルの信号が出力される。一方、振幅の大きい期間では、包絡線検波部25から比較部28へ入力される検波信号は閾値よりも大きくなるため、コンパレータ33からはハイレベルの信号が出力される。
そして、コンパレータ33から出力されたローレベル、ハイレベルの信号が、モータ2の回転角に応じた回転パルスSpとして、回転角検出部7へ出力される(図8の最下段参照)。
このように、信号処理部22では、電流検出抵抗R1にて検出された交流電流(検出信号)に対して各種信号処理を行った上で回転パルスSpが生成されるため、外乱やノイズが低減された正確な回転パルスSpが生成される。
回転角検出部7は、信号処理部22から入力された回転パルスSpに基づき、例えばその回転パルスSpの立ち上がりエッジを検出・計数するといった方法により、モータ2の回転角を検出する。そして、その検出された回転角は、図示しないモータ2の制御回路においてフィードバック信号として用いられる。
なお、本実施形態の回転検出システム1は、回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出するよう構成されたものであるが、回転パルスSpの間隔(例えば立ち上がりエッジの間隔)に基づいてモータ2の回転速度も検出できるよう構成してもよい。或いは、回転角ではなく回転速度を検出する回転速度検出装置として構成してもよい。モータ2が何度回転する毎に回転パルスSpが出力されるかは予めわかっているため、その回転パルスSpが出力される間隔(周期)がわかれば、モータ2の回転速度を検出することができる。
以上説明したように、本実施形態の回転検出システム1では、モータ2を駆動させるための駆動源としての直流電源3とは別に、回転角検出のために重畳部5が設けられ、モータ2が回転される際は、直流電源3からの直流電圧に重畳部5からの交流電圧が重畳された交流重畳電圧がモータ2へ印加され、これによりモータ2には交流成分を含む交流重畳電流が流れる。
また、モータ2においては、3相の各相コイルL1,L2,L3のうち第1相コイルL1と並列に回転角検出用のコンデンサC1が接続されている。そして、信号処理部22にて、電流検出部21にて検出されたモータ電流(交流電流)の振幅の変化に応じた回転パルスSpを生成する。コンデンサC1が接続されていることにより、各ブラシ16,17間のモータ回路のインピーダンスは、モータ2の回転角に応じて変化し、その変化は交流電流の振幅変化として現れる。そのため、交流電流の振幅の変化に基づいて、回転パルスSpの生成、延いては回転角の検出を行うことができるのである。
従って、本実施形態の回転検出システム1によれば、仮にモータ2の停止(制動)時に直流電源3らの直流電圧の印加(直流電流の供給)が停止されても、交流電圧が印加(交流電流が供給)され続けることにより、完全に停止するまで(延いては完全に停止した後も)回転角を確実に検出することができる。しかも、回転角の検出は、重畳部5から出力される交流電流に基づいて行っており、モータ駆動に影響を与えることなく検出が行われる。そのため、ロータリエンコーダ等の大がかりなセンサを設けることなく、またトルク変動が発生しないようにしつつ、回転速度によらずに回転角を精度良く検出することができる。
また、電流検出部21を構成する電流検出抵抗R1は、重畳部5内の直流非流入経路8、即ち直流電源3からの直流電流が流入しない経路に設けられている。そのため、直流電源3の電力が電流検出抵抗R1で消費されることはなく、よって、電流検出抵抗R1での直流電力の損失を防止することができる。
しかも、電流検出抵抗R1には直流電源3からの直流電流が流れないことから、電流検出抵抗R1として、抵抗値の大きいものを用いることができる。そして、そのように抵抗値の大きいものを用いることで、回転角の検出精度を高めることができる。
なお、本実施形態において、重畳部5は本発明の交流重畳手段に相当し、電流検出部21は本発明の通電検出手段に相当し、信号処理部22及び回転角検出部7によりは本発明の回転状態検出手段が構成され、レベルシフト回路24は本発明の直流オフセット手段に相当し、チョークコイルLoは本発明の分流抑制手段に相当する。
[第2実施形態]
図9に、本実施形態の回転検出システム40の概略構成を示す。本実施形態の回転検出システムは、図1に示した第1実施形態の回転検出システム1と同様、モータ2の回転角を検出するためのシステムであり、モータ2に駆動用の直流電圧を印加するための直流電源3を備えている点、モータ2に回転角検出用の交流電圧を印加(重畳)するための重畳部41を備えている点、重畳部41からモータ2を経てグランド電位側に至る経路における、合流点Pから交流電源46側の直流非流入経路49に電流検出部47が設けられている点、この電流検出部47にて検出された交流電流(検出信号)に基づいて信号処理部48が回転パルスSpを生成する点、などについては、第1実施形態と同じである。
そのため、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付し、その詳細説明を省略する。そして、以下、第1実施形態の回転検出システム1とは異なる構成を中心に説明する。
本実施形態の回転検出システム40では、重畳部41において、交流電源46は正弦波電圧を生成する。そのため、重畳部41から出力される電圧は正弦波電圧となり、電流についても正弦波状の交流電流が出力される。そして、交流電源46からの交流電流は、カップリングコンデンサC10及びこれが配置された直流非流入経路49を介してモータ2へ供給され、合流点Pにて直流電源3からの直流電流に重畳される。
そのため、モータ2に流れるモータ電流(交流重畳電流)は、図10に示すような波形となる。なお、状態A、B、A’、B’の場合に交流電流成分の振幅が小さくなって状態C、C’の場合に交流電流成分の振幅が大きくなことについては、第1実施形態(図4参照)と同様である。
重畳部41から出力される交流電流の周波数成分は、図11の周波数スペクトルに示すように、基本的には、交流電源46にて生成される正弦波電圧の周波数(基本波周波数)f1のみである。尚、厳密には基本波周波数f1以外の高調波成分も含まれるが、そのレベルは基本波周波数f1の成分に比べれば無視し得る程度であるため、本実施形態では考慮しないものとする。
また、上記第1実施形態の回転検出システム1では、重畳部41からの交流電流が直流電源3側に流入しないよう、直流電源3の正極側から合流点Pに至る経路にチョークコイルLoが設けられていたが、本実施形態では、チョークコイルLoに代えて、設定された周波数帯域の信号の通過を阻止するためのバンドリジェクトフィルタ(BRF)43が設けられている。
このBRF43は、具体的には、図12(a)に示すような回路構成となっている。即ち、2つのコンデンサC26,C27の直列接続体と並列に抵抗R26が接続され、この並列回路の両端において信号の入出力が行われる。また、2つのコンデンサC26,C27の接続点は、抵抗R27を介してグランド電位側に接続されている。即ち、このBRF43は、一般によく知られているT型のバンドリジェクトフィルタである。
BRF43の通過帯域は、図12(b)に破線で示す通りである。即ち、重畳部41から出力される交流電流の周波数f1を中心周波数とする所定の帯域の信号が遮断され、それ以外の帯域の信号は通過する。
尚、バンドリジェクトフィルタは、周知の通り、バンドエリミネートフィルタ、ノッチフィルタなどと呼ばれることもある。また、よく知られたLC並列共振回路も、バンドリジェクトフィルタの一種であり、よってBRF43の代わりにLC並列共振回路を用いてもよい。その場合、そのLC並列共振回路の共振周波数を、交流電流の周波数f1と同じか若しくは周波数f1を含む所定の周波数帯域内に設定するとよい。
また、上記第1実施形態では、電流検出部21として電流検出抵抗R1を用いていたが、本実施形態の電流検出部47では、電流検出抵抗R1に代えてコイルL10が設けられている。そして、このコイルL10の両端のうちモータ2側に接続されている一端とグランドの間の電圧が、重畳部41から流れる交流電流を示す検出信号として信号処理部48に入力される。
電流検出部47としてコイルL10を用いていることにより、このコイルL10と、重畳部41内のカップリングコンデンサC10とで、直列共振回路が構成されることとなる。
そこで、本実施形態では、この直列共振回路の共振周波数が、交流電源46にて生成される正弦波電圧の周波数f1と一致するか若しくはその周波数f1を含む所定の帯域内の周波数となるように、コイルL10やカップリングコンデンサC10の素子値が設定されている。
信号処理部48は、入力段のフィルタを除き、第1実施形態の信号処理部22と同じ構成である。即ち、第1実施形態の信号処理部22では、電流検出部21からの検出信号がHPF23を介してレベルシフト回路24へ入力される構成であったが、本実施形態の信号処理部48では、図13に示すように、電流検出部47からの検出信号が、バンドパスフィルタ(BPF)50を介してレベルシフト回路24へ入力される。
BPF50は、図13に示すような一般的な構成のものであり、オペアンプ51と、オペアンプ51の出力端子と反転入力端子の間に接続された、抵抗R21及びコンデンサC21からなる並列回路と、オペアンプ51の反転入力端子に接続された、抵抗R22及びコンデンサC22からなる直列回路と、により構成されている。オペアンプ51の非反転入力端子はグランドに接地されている。また、抵抗R22及びコンデンサC22からなる直列回路の一端側(コンデンサC22側)は、オペアンプ51の反転入力端子に接続されており、他端側(抵抗R22側)に、電流検出部47からの検出信号が入力される。
このBPF50の通過帯域は、図11に破線で示す通りであり、重畳部41から出力される交流電流の周波数f1を中心周波数とする所定の帯域の信号が通過し、それ以外の帯域の信号は遮断される。
なお、上記第2実施形態では、電流検出部47を構成するコイルL10の一端(モータ2側)とグランドの間の電圧を検出信号として信号処理部48へ入力するようにしたが、このコイルL10と重畳部41内のカップリングコンデンサC10からなる直列共振回路全体を電流検出部として、この電流検出部の両端の電圧(即ち直列共振回路の両端の電圧)を、例えば差動増幅回路で増幅後に信号処理部48へ入力するようにしてもよい。
このように構成された本実施形態の回転検出システム40では、電流検出部47が備えるコイルL10と、重畳部41が備えるカップリングコンデンサC10とによって、直流共振回路が形成されており、この直流共振回路の共振周波数は、交流電源46にて生成される正弦波電圧の周波数f1と一致するか若しくはその周波数f1を含む所定の帯域内の周波数となるように設定されている。そのため、交流電源46から出力される交流電力の、カップリングコンデンサC10やコイルL10による損失を、低く抑えることができる。
[第3実施形態]
図14に、本実施形態の回転検出システム60の概略構成を示す。本実施形態の回転検出システム60も、図1に示した第1実施形態の回転検出システム1と同様、モータ2の回転角を検出するためのシステムであり、モータ2に駆動用の直流電圧を印加するための直流電源3を備えている点、モータ2に回転角検出用の交流電圧を印加(重畳)するための重畳部5を備えている点、重畳部5からモータ2への経路における、合流点Pから交流電源4側の直流非流入経路8に電流検出部21が設けられている点、この電流検出部21にて検出された交流電流(検出信号)に基づいて信号処理部22が回転パルスSpを生成する点、などについては、第1実施形態と同じである。
そのため、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付し、その詳細説明を省略する。そして、以下、第1実施形態の回転検出システム1とは異なる構成を中心に説明する。
本実施形態の回転検出システム60では、直流電源3からモータ2への電力供給が、モータドライバ61を介して行われる。
また、直流電源3とモータドライバ61の間には、直流電源スイッチ65が設けられている。この直流電源スイッチ65は、制御部62からの直流印加制御信号Sdcにより制御(ON・OFF)され、ONされているときには直流電源3からの直流電圧がモータドライバ61に入力され、OFFされているときには直流電源3からモータドライバ61への直流電圧の入力が遮断される。
モータドライバ61は、4つのスイッチからなる周知のHブリッジ回路(いわゆるフルブリッジ)にて構成されたものである。
即ち、モータドライバ61は、MOSFETからなるスイッチMOS1、スイッチMOS2、スイッチMOS3、及びスイッチMOS4を備え、このうちハイサイド側の各スイッチMOS1,MOS2(いずれもPチャネルMOSFET)のソースは直流電源スイッチ65を介して直流電源3に接続され、ローサイド側の各スイッチMOS3,MOS4(いずれもNチャネルMOSFET)のソースはグランド電位に接続されている。また、ハイサイド側のスイッチMOS1のドレインはローサイド側のスイッチMOS3のドレインに接続されると共に、その接続点(即ちHブリッジ回路の一方の中点J)はモータ2における一方のブラシ16に接続されている。同様に、ハイサイド側における他方のスイッチMOS2のドレインはローサイド側における他方のスイッチMOS4のドレインに接続されると共に、その接続点(ブリッジ回路の他方の中点K)はモータ2における他方のブラシ17に接続されている。
そして、各スイッチMOS1〜MOS4のゲートには、それぞれ、制御部62からモータドライバ制御信号SM1〜SM4が入力され、各スイッチMOS1〜MOS4は、それぞれ自身のベースに入力されるモータドライバ制御信号によってON・OFFされる。
このように、モータドライバ61を備えていることにより、このモータドライバ61によるモータ2の正転・逆転の切り替えが可能である。即ち、モータ2を正転させる際は、直流電源スイッチ65をONさせると共に、モータドライバ61を構成する4つのスイッチMOS1〜MOS4のうち、スイッチMOS1及びスイッチMOS4をONさせ、他の2つのスイッチMOS2,MOS3をOFFさせる。これにより、直流電源3からの直流電圧が、モータドライバ61を介してモータ2へ印加され、モータ2が正転を開始する。正転時には、図14に矢印で示したように、モータ2において、一方のブラシ16から他方のブラシ17へモータ電流が流れることになる(但し起動〜定常回転時)。
一方、モータ2を逆転させる際は、モータドライバ61を構成する4つのスイッチMOS1〜MOS4のうち、スイッチMOS2及びスイッチMOS3をONさせて、他の2つのスイッチMOS1,MOS4をOFFさせる。これにより、図14に矢印でしたように、モータ2において、他方のブラシ17から一方のブラシ16へモータ電流が流れることになる(但し起動〜定常回転時)。
そして、回転中のモータ2を制動させる際は、短絡制動が行われる。短絡制動とは、モータドライバ61を構成する4つのスイッチMOS1〜MOS4のうちローサイド側の2つのスイッチMOS3,MOS4をONさせることで、モータ2の端子間(各ブラシ16,17間)を、これら各スイッチMOS3,MOS4を介して短絡させることにより、モータ2を制動させるものである。回転中のモータ2の各ブラシ16,17間を各スイッチMOS3,MOS4を介して短絡させると、その短絡時に発生するモータ2の逆起電力によるエネルギーが、ローサイド側の各スイッチMOS3,MOS4、及びモータ2によって消費され、これによりモータ2が制動されてやがて停止することになる。
そのため、正転状態のモータ2に対して短絡制動を行うと、図14に矢印で示すように、モータ2には、正転時とは逆方向のモータ電流、即ち他方のブラシ17から一方のブラシ16へモータ電流が流れることとなる。逆に、逆転状態のモータ2に対して短絡制動を行うと、図14に矢印で示すように、モータ2には、逆転時とは逆方向のモータ電流、即ち一方のブラシ16から他方のブラシ17へモータ電流が流れることとなる。
短絡制動によってモータ2を制動させる場合に、重畳部5を、例えばモータドライバ61の上流側(直流電源3側)に設けるようにすると、短絡制動が行われる期間中は、モータ2には重畳部5からの交流電圧が印加されないことになる。そこで本実施形態では、直流電源3からモータ2への通電経路のうち、起動〜定常回転時及び短絡制動時の双方ともにモータ電流が流れる共通電流経路に対して、重畳部5からの交流電圧を重畳するようにしている。
より具体的には、図14に示すように、モータドライバ61の一方の中点Jからモータ2の一方のブラシ16に至る経路上の合流点Pに、重畳部5からの交流電圧が重畳(印加)される。そして、第1実施形態と同様、重畳部5における直流非流入経路8(合流点Pから交流電源4側の経路)に、回転信号検出部6における電流検出部21が設けられている。そして、信号処理部22からの回転パルスSpは、制御部62に入力される。
制御部62は、上述した直流電源スイッチ65の制御や、モータドライバ61を構成する各スイッチMOS1〜MOS4の制御を行うほか、第1実施形態の回転角検出部7と同様の機能、即ち回転パルスSpに基づいて回転角を検出する機能も備えている。なお、重畳部5からの交流電圧の出力を制御部62によって制御するようにしてもよいし、また、信号処理部22内の閾値設定部27(図5参照)にて設定される閾値を、制御部62からの制御信号によって可変設定できるようにしてもよい。
また、上記第1実施形態では、直流電源3の正極側から合流点Pに至る経路にチョークコイルLoを設けたが(図1参照)、本実施形態では、図14に示す通り、合流点Pからモータドライバ61における一方の中点Jに至る経路にチョークコイルLoが設けられている。
仮にこのチョークコイルLoがない場合、モータ2の正転時には、重畳部5からの交流電流の一部が、合流点Pからモータドライバ61側へ分流し、中点J及びスイッチMOS1を経て直流電源3側へ流入してしまう。また、モータ2の逆転時にも、重畳部5からの交流電流の一部が、合流点Pからモータドライバ61側へ分流し、中点J及びスイッチMOS3を経てグランド電位側へ流入してしまう。
そこで本実施形態では、合流点Pとモータドライバ61との間にチョークコイルLoを設けることにより、重畳部5からの交流電流がモータドライバ61側へ分流するのを抑制し、定常回転時はもちろん、短絡制動時でも、交流電流の大部分(理想的には全て)がモータ2へ流れるようにしているのである。
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記第1実施形態の回転検出システム1では、図5に示すように、電流検出部21による検出信号を、HPF23を通してレベルシフト回路24に入力するようにしたが、このHPF23に代えて、例えば、重畳部5から出力される交流電流の周波数成分を含む所定の帯域のみを通過させるBPFを用いるようにしてもよい。この場合、交流電流の各周波数成分のうちどの周波数成分を通過させるようにするかは任意に決めることができ、例えば基本波周波数f1のみを通過させるようにしてもよいし、特定の高調波成分のみを通過させるようにしてもよい。
但し、好ましくは、信号強度の強い基本波周波数f1や3倍波f3などを通過させるのがよい。また、重畳部5からは複数の周波数成分を持つ交流電流(即ち、高調波成分を多く含んだ交流電流)が出力されるため、検出信号のロスを低減するためには、HPF32を用いて全ての周波数成分を通過させるのがよい。
また、上記第2実施形態では、電流検出部47としてコイルL10を用いたが、第1実施形態及び第3実施形態の電流検出部21についても、電流検出抵抗R1に限らずコイルを用いてもよい。また、電流検出抵抗やコイルに限らず、結果として交流電流の振幅変化が反映された検出信号を出力できる限り、電流検出部の具体的構成は限定されない。
また、上記各実施形態では、直流電源からの直流電流と重畳部からの交流電流が合流点Pにおいて合流(重畳)されてモータ2へ流れるものとして説明したが、このような合流点Pを備えることは必須ではない。例えば、モータ2の各ブラシ16,17と直流電源3との間を電線で接続すると共に、この電線とは物理的に別に用意された電線によって重畳部5と各ブラシ16,17との間を接続し、その電線に対して電流検出部を設けるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、直流電源3からモータ2への直流の通電経路における、モータ2の上流側に、重畳部5を接続して交流電流を重畳させるようにしたが、モータ2の下流側において交流電流を重畳させる構成としてもよい。具体的には、例えば図1の回路構成において、直流電源3を、チョークコイルLoとグランドとの間ではなく、モータ2においてグランドと接続されている一方のブラシ17とグランドとの間に、ブラシ17側に正極が接続されるように設ける。この構成の場合、直流電源3からの直流電流は、モータ2、合流点P、チョークコイルLoを経てグランドに至る経路を流れることになり、その電流経路におけるモータ2の下流側に重畳部5からの交流電流が重畳されることとなる。
電流検出部を設ける位置についても、上記実施形態では、直流非流入経路における、カップリングコンデンサC10よりも交流電源側とは反対側に電流検出部を設ける例を示したが、これも一例であって、交流電源とカップリングコンデンサC10の間に設けるようにしてもよい。
つまり、結果として、重畳部5からモータ2を経てグランド電位側に至る経路において、直流電源3からの直流電流が流れない経路が存在し、その経路に電流検出部を設けることができる限り、モータ2に対して直流電圧(電流)、交流電圧(電流)をどのように、どのような経路で印加する(通電させる)かの具体的形態は、種々考えられる。
また、上記各実施形態の信号検出部の構成(図5や図13)は、あくまでも一例であり、図示の構成に限定されるものではないことはいうまでもない。電流検出部からの検出信号に基づいて回転パルスSpを生成できる限り、種々の構成を採ることができる。
また、上記実施形態では、重畳部内の交流電源が生成する電圧として、方形波電圧の場合(第1,第3実施形態)及び正弦波電圧の場合(第2実施形態)について説明したが、これら各電圧もあくまでも一例であり、例えば第1,第3実施形態において正弦波電圧を生成するようにしてもよいし、第2実施形態において方形波電圧を生成するようにしてもよい。或いは、他の種類の交流電圧を生成するようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、モータ2の回転の過程において、ブラシに接触する整流子片が切り替わる際に生じる、モータ回路の瞬間的なインピーダンスの変化については、考慮しないものとして説明したが、瞬間的ではあれ、インピーダンスが変化することは事実であり、しかもそのインピーダンスの変化は回転に伴って周期的に生じる。そのため、その瞬間的に生じるインピーダンスの変化に基づいて(延いてはそれにより生じる交流成分の変化に基づいて)回転角等の回転状態を検出することも可能である。その場合、上記各実施形態のモータ2のようにコンデンサC1を設けることは必ずしも必要ではなくなる。
また、上記各実施形態では、モータ2の回転角を検出する回転検出システムについて説明したが、モータ2に代えて、例えば図15に示すようなモータ70を用いることで、回転方向も検出することが可能となる。
図15に示すモータ70は、上記各実施形態のモータ2に対して更に、第2相コイルL2にもコンデンサC2が並列接続された構成となっている。そして、このコンデンサC2の静電容量値は、第1相コイルL1に並列接続されたコンデンサC1の静電容量値とは異なる値である。
そのため、このモータ70が180°回転する間、各ブラシ16,17と接触する整流子片が切り替わる毎、即ち各ブラシ16,17間のモータ回路が変化する毎に、そのモータ回路のインピーダンスはそれぞれ異なる値に変化する。つまり、第1実施形態では、図3に示したように、180°回転する間にモータ回路は状態A〜Cの3種類に変化するもののインピーダンスの変化は状態A,Bの高インピーダンスと状態Cの低インピーダンスの二段階種類であったのに対し、本実施形態では、モータ回路が3種類に変化する毎に、インピーダンスもそれぞれ異なる値(3種類の値)となる。即ち、180°回転する間にモータ回路のインピーダンスは3段階に変化するのである。
そのため、電流検出部21により検出される交流電流は、モータ70が同一方向に回転している限り、その振幅が、小振幅、中振幅、大振幅の3段階に順次変化する。
そこで、この3段階の振幅変化を検出するために、信号処理部22において、互いに異なる値の閾値が設定された2つの閾値設定部を設けると共に、これら各閾値設定部に対応するように2つの比較部を設け、各比較部からそれぞれ回転パルスを出力させるようにするとよい。より具体的には、例えば、検出信号の振幅が中振幅以上の場合にHレベルとなるような回転パルスを出力する比較部と、検出信号の振幅が大振幅以上の場合にHレベルとなるような回転パルスを出力する比較部とを設ける。
このように構成することで、双方の比較部から出力される回転パルスの変化パターンに基づいて、モータ70の回転方向を検出できるようになる。
また、図15に示したモータ70以外にも、例えば、3つの相コイルの各々に、容量の異なるコンデンサを接続するようにしてもよい。このようにしても、分解能の高い回転角の検出及び回転方向の検出が可能である。
なお、3つの相コイルの各々にコンデンサを接続する場合、いずれか2つのコンデンサは同じ静電容量値のものとすることもできる。但しその場合、回転角や回転速度の検出は可能であるものの、回転方向の検出はできなくなる。
また、上記第1実施形態では、第1相コイルL1全体に対して完全に並列となるようにコンデンサC1を接続したが、例えば、第1相コイルL1の一部に中間タップをたててそこにコンデンサC1の一端を接続することにより、コンデンサC1を第1相コイルL1の一部に対して並列となるように接続してもよい。このような接続方法は、図15に示したモータ70や、後述する他のモータについても同様に適用できる。
また、上記各実施形態では、モータ2として、各相コイルL1,L2,L3がΔ結線されている構成を例示したが、Δ結線に限らず、例えば図16に示すモータ80のように、電機子コイルとしての各相コイルL11,L12,L13がスター結線されたモータであってもよい。スター結線の場合、例えば、図16に示すように、2つの相コイルL11,L12の双方にそれぞれコンデンサC31,C32を並列接続することで、モータ80の回転角や回転方向を検出することができる。
なお、図16に示した構成はあくまでも一例に過ぎず、例えば、何れか1つの相コイルにのみコンデンサを並列接続するようにしてもよい。また例えば、全ての相コイルL11,L12,L13にそれぞれコンデンサを並列接続してもよい。但しその場合、コンデンサの静電容量値は少なくとも二種類にする必要がある。また、例えば、2つの整流子片の間にコンデンサを接続するようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、電機子コイルの相数が3相の3相直流モータを例に挙げて説明したが、本発明の適用は、3相のモータに限定されるものではなく、4相以上のモータであっても適用可能である。
4相以上のモータに対する本発明の適用例として、図17に、5相の直流モータの場合を示す。図17に示すモータ90は、5つの整流子片91,92,93,94,95からなる整流子を有し、隣接する各整流子片にそれぞれ、電機子コイルとしての各相コイルL21,L22,L23,L24,L25がそれぞれ接続(Δ結線)されている。なお、各相コイルのインダクタンスはいずれも同じである。
そして、各相コイルL21,L22,L23,L24,L25のうち2つの相コイル(第1相コイルL21、第2相コイルL22)に、それぞれコンデンサC41,C42が並列接続されている。このような5相のモータ90についても、回転角や回転速度の検出を行うことができる。
なお、4相以上のモータにおいて、何れか一つの相コイルにのみコンデンサを並列接続すれば、少なくとも回転角や回転速度の検出は可能となる。また、4相以上のモータにおいても、少なくとも2つの相コイルにそれぞれ静電容量値の異なるコンデンサを接続すれば、図15に示したモータ70と同様、回転に伴うインピーダンスの段階的変化の変化パターン(延いては交流電流の振幅変化パターン)に基づいて回転方向の検出も可能となる。
また、上記各実施形態では、回転に伴うモータ回路のインピーダンスの周期的な変化を、モータ2の第1相コイルL1にコンデンサC1を並列接続することによって実現していたが、回転に伴ってインピーダンスの変化が周期的に生じるようなモータの具体的構成は、他にも種々考えられる。
例えば、図18に示すモータ100も、回転に伴ってモータ回路のインピーダンスが周期的に変化する。図18のモータ100は、ハウジング101と、このハウジング101内に収容されたロータコア110とを備えている。ロータコア110は、ハウジング101の軸心に配置されている回転軸106に固定され、この回転軸106と共に回転する。
ハウジング101は、略円筒形の形状をなし、その内周面には、界磁発生用の2つの磁石102,103が径方向に互いに対向するように固定されている。周方向で見れば、2つの磁石が所定間隔隔てて固定されている。各磁石102,103は、いずれも永久磁石であり、ロータコア110と対向する面側の極性が一方はN極で他方がS極である。つまり、このモータ100は界磁が2極の直流モータとして構成されている。
また、ハウジング101は軟磁性体である継鉄(ヨーク)にて形成されたものであり、内周面に固定された2つの磁石102,103と共にモータ100の磁気回路を構成している。
ロータコア110は、軟磁性体にて形成されたものであり、3つのティース(突極)111,112,113を有し、電機子コイル105が巻回されている。具体的には、第1ティース111に第1相コイルL1が巻回され、第2ティース112に第2相コイルL2が巻回され、第3ティース113に第3相コイルL3が巻回されており、これら3つの相コイルL1,L2,L3により電機子コイル105が構成されている。
また、回転軸106には、整流子10が固定されており、この整流子10に、互いに対向して(即ち回転方向に180°離れて)配置された一対のブラシ16,17が摺接している。整流子10と各相コイルL1,L2,L3との結線状態は、第1実施形態のモータ2(図1参照)と同じである。
更に、モータ100には、ハウジング101の内周面において、2つの磁石102,103の間に、凸部104が設けられている。ハウジング101の内周面には、2つの磁石102,103が周方向において所定の間隔を隔てて固定されているため、周方向において磁石102,103の存在しない領域(磁石間領域)が2箇所存在している。モータ100では、図18に示す通り、このうち1箇所の磁石間領域に、ハウジング101の内周面から径方向内側へ突出するように凸部104が設けられている。また、この凸部104は、2つの磁石102,103のいずれとも接触しないよう、周方向において各磁石102,103の双方からそれぞれ所定間隔隔てて設けられている。
凸部104は、軟磁性体の材料で形成されたものであり、周方向に所定の長さを有し、且つ、径方向に所定の厚みを有している。そして、この凸部104が設けられていることにより、モータ100のロータコア110とハウジング101により構成される磁気回路の磁気抵抗は、ロータコア110の回転に伴って変化する。なお、以下の説明で「磁気抵抗」とは、特に断りのない限り、モータ2のロータコア110とハウジング101により構成される磁気回路の磁気抵抗を意味するものとする。
ロータコア110及びハウジング101はいずれも軟磁性体にて形成されており、その透磁率は空気の透磁率よりも非常に大きい。そのため、モータ100の磁気抵抗は、ロータコア110(詳しくは各ティース111,112,113の外周面)とハウジング101の内周面又は磁石102,103との間のエアギャップ、及び各磁石102,103の厚みの和に大きく依存する。つまり、エアギャップが大きいほど磁気抵抗は大きくなり、逆にエアギャップが小さいほど、磁気抵抗は小さくなる。
但し、各磁石102,103については、その透磁率は空気の透磁率とほぼ同じである。そのため、各磁石102,103は、磁気的にみれば空気が存在していることと等価となる。つまり、モータ100の磁気抵抗を考慮する上では、空気と同じ透磁率である各磁石102,103の存在は無視することができ、各磁石102,103はいずれもエアギャップとして扱うことができる。そのため、仮に凸部104がないならば、ロータコア110とハウジング101の内周面とのエアギャップはロータコア110が回転しても一定であり、故に、回転に伴って磁気抵抗が変化することはない。
しかし、モータ100は、ハウジング101の内周面に、ハウジング101とほぼ同じ透磁率を有する、軟磁性の凸部104が設けられている。そのため、モータ100の回転角によって、即ちロータコア110の各ティース111,112,113の外周面がこの凸部104と対向しているか否かによって、モータ100の磁気抵抗は異なった値となる。つまり、モータ100の回転に伴ってその磁気抵抗が変化する。そして、磁気抵抗が変化すると、モータ回路のインダクタンスも変化するため、重畳部から出力されて電流検出部を流れる交流電流の振幅も変化する。
この振幅の変化は、モータ100の回転(詳しくはロータコア110及び回転軸106の回転)に伴って周期的に生じる。そこで、この交流電流の振幅の変化に基づき、上述した各実施形態と同様に、モータ100の回転角を検出することができる。
なお、ハウジング側に工夫を加えることでモータ回路のインダクタンスを周期的に変化させることが可能な構成は、図18に示したモータ100以外にも多種多様のものが考えられる。具体的には、凸部の設置位置や設置数を適宜変更したり、凸部の形状自体に工夫を加えることで回転に伴うモータ回路のインダクタンスの変化パターンに特徴を持たせたりすることができる。
また、モータ回路のインダクタンスを周期的に変化させるための構成は、図18に示したモータ100のようにハウジング側に工夫を加えること以外にも実現可能である。例えば、図19に示すモータ120は、第1実施形態のモータ2に対し、コンデンサC1に代えて、コンデンサ以外のインピーダンス素子122を相コイルに並列接続した構成となっている。
インピーダンス素子122としては、例えばインダクタンス素子(コイル)であってもよいし、抵抗であってもよい。また、1つの相コイルにのみ並列接続するのはあくまでも一例に過ぎない。結果としてモータ回路のインピーダンスが回転に伴って周期的に変化する限り、どのような素子をどの相コイルに対してどのように接続するかは適宜決めることができる。
また、一般に直流モータにおいては、サージ吸収のためにリングバリスタが用いられることがある。このようにリングバリスタを有するモータの場合には、このリングバリスタを利用して、回転に伴う周期的なインピーダンス変化を生じさせるようにすることができる。
例えば、リングバリスタが有する複数の電極のうち隣接する電極間にコンデンサやインダクタンス素子等を接続するようにしてもよい。また例えば、上述した各種モータのように別途コンデンサやインダクタンス素子等を接続することなく、各電極の面積に差異をもたせるなどしてリングバリスタ自体の構成に工夫を加えることで、回転に伴う周期的なインピーダンス変化が生じるようにすることもできる。
また、上記各実施形態では、一対のブラシを有するモータについて説明したが、複数対のブラシを有するモータに対しても本発明を適用することが可能である。