本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、目的とする動ばね特性を有効に得ることができると共に、車両等への装着前にもストッパ部材が防振装置本体の収容凹所に安定して保持される、新規な構造の防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の第一の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されていると共に、該第二の取付部材の筒状部によって形成されて軸方向に開口する収容凹所に別体のストッパ部材を配設した防振装置において、前記収容凹所の周壁を構成する前記筒状部の内周面には、該収容凹所の開口側に向かって次第に内周側に傾斜する当接面を備えた弾性テーパ部が設けられている一方、前記ストッパ部材には軸直角方向の外側に向かって突出するストッパ突部が設けられており、該ストッパ突部が該収容凹所における該弾性テーパ部よりも奥方に配されていると共に、該ストッパ突部が該弾性テーパ部に対して軸方向の投影において重なり合っていることを、特徴とする。
このような本発明の第一の態様に従う構造とされた防振装置によれば、収容凹所に別体のストッパ部材が配されており、軸直角方向の過大な荷重入力時には、ストッパ部材のストッパ突部が収容凹所の周壁内面に当接することで、第一の取付部材と第二の取付部材の相対変位が制限されるようになっている。これにより、本体ゴム弾性体の過大な変形による損傷などが防止されて、耐久性の向上が図られる。
また、車両等に装着される前の防振装置単体において、ストッパ部材のストッパ突部が収容凹所の弾性テーパ部に対して軸方向に当接係止されることで、ストッパ部材が収容凹所から脱落するのを防ぐことができる。これにより、防振装置の保管中や輸送中にストッパ部材に対して抜け方向の力が作用しても、別体のストッパ部材が収容凹所に保持されて、分離が防止される。特に、ストッパ部材のストッパ突部を利用することにより、簡単な構造でストッパ部材の収容凹所からの抜けを防止することできる。
しかも、ストッパ部材の収容凹所への配設状態では、ストッパ突部が弾性テーパ部よりも奥方に配されることから、ストッパ部材が収容凹所内で位置決めされる車両などへの装着状態では、ストッパ突部が収容凹所の周壁内面に押し当てられることはない。それ故、ストッパ突部が収容凹所の周壁内面に当接することによって、防振装置の軸直角方向のばね特性に影響するのを回避できて、目的とする防振性能を有効に得ることができる。
以上のように、防振装置単体において、第一の取付部材と第二の取付部材の相対変位量を制限するためのストッパ突部を利用して、ストッパ部材の収容凹所からの抜けが防止されていると共に、ストッパ部材の収容凹所からの抜けが問題にならない車両などへの装着状態では、ストッパ突部が弾性テーパ部よりも奥方に配置されることで、目的とする防振性能が有効に発揮されるようになっている。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された防振装置において、前記収容凹所の周上に複数の前記弾性テーパ部が周方向に所定の距離を隔てて設けられているものである。
第二の態様によれば、ストッパ突部と弾性テーパ部が周上の複数箇所で当接することによって、当接反力によるストッパ部材の傾動などが防止されて、ストッパ部材が所定の向きで安定して収容凹所に保持される。しかも、全周に亘って連続的に弾性テーパ部を設ける場合に比して、ストッパ突部が弾性テーパ部を乗り越えて収容凹所に挿入され易くなって、ストッパ部材の配設作業が容易になる。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された防振装置において、前記筒状部の内周面が前記本体ゴム弾性体と一体形成された被覆ゴム層で覆われていると共に、前記弾性テーパ部が該被覆ゴム層と一体形成されているものである。
第三の態様によれば、複数の弾性テーパ部を設ける場合にも、被覆ゴム層と一体形成することでそれら複数の弾性テーパ部を容易に形成することができる。しかも、被覆ゴム層が本体ゴム弾性体と一体形成することで、被覆ゴム層および弾性テーパ部をより容易に且つ簡単な構造で設けることができる。
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記ストッパ部材が四角筒形状とされていると共に、該ストッパ部材の角部には軸方向端面に開口する切欠きが設けられているものである。
第四の態様によれば、ストッパ部材の角部における応力の集中が回避されて、ストッパ部材の耐久性の向上が図られる。しかも、ストッパ部材がゴムなどの弾性体で形成されている場合には、第一の取付部材と第二の取付部材の相対変位量を制限するストッパ手段の特性を、切欠きによって調節することができる。
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記ストッパ部材が軸方向視で四角形状とされていると共に、前記ストッパ突部が該ストッパ部材の対向する辺部からそれぞれ外側に突出して設けられており、該ストッパ突部の周方向端部が前記収容凹所の前記弾性テーパ部に対して軸方向の投影において重なり合っているものである。
第五の態様によれば、ストッパ突部が弾性テーパ部を乗り越える際の摩擦抵抗が小さくなって、ストッパ部材を収容凹所に差し入れ易くなる。また、後述する第六の態様に記載の構造を組み合わせて採用することにより、より効率的に軸方向での当接係止を実現することができる。
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記収容凹所が軸方向視で四角形状とされていると共に、該収容凹所の隅部にそれぞれ前記弾性テーパ部が設けられているものである。
第六の態様によれば、収容凹所の隅部に弾性テーパ部を設けることで、ストッパ部材を収容凹所に挿入する際に、ストッパ突部が弾性テーパ部に引っ掛かって、収容凹所の辺部が内周側に倒れ込むのを防ぐことができる。しかも、形状安定性に優れた収容凹所の隅部に弾性テーパ部が設けられていることで、周方向の長さが小さい弾性テーパ部であっても、ストッパ突部の当接係止によるストッパ部材の抜止め作用を有効に得ることができる。
本発明の第七の態様は、第一〜第六の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記収容凹所の内周面には前記ストッパ部材を軸方向に案内するガイド部が設けられているものである。
第七の態様によれば、ストッパ部材を収容凹所に差し入れる際に、ストッパ部材がガイド部によって軸方向に案内されることで、ストッパ部材を収容凹所に容易に配設することができる。
本発明の第八の態様は、第一〜第七の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記ストッパ突部には先端面に開口して軸方向に延びる分割溝が形成されているものである。
第八の態様によれば、ストッパ突部が弾性テーパ部を乗り越える際に、弾性テーパ部やストッパ突部の変形が分割溝によって許容されることから、ストッパ部材の収容凹所への差入れが容易になる。
本発明によれば、軸方向の投影において重なり合う収容凹所の弾性テーパ部とストッパ部材のストッパ突部とが、軸方向で当接係止されることにより、ストッパ部材の収容凹所からの抜けが防止されて、ストッパ部材が収容凹所に安定して保持される。しかも、ストッパ部材が収容凹所内で位置決めされる車両などへの装着状態では、ストッパ突部が弾性テーパ部よりも奥方に配されることで、ストッパ突部が弾性テーパ部に押し当てられるのを防いで、防振装置のばね特性に対する影響が低減乃至は回避されている。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜4には、本発明に従う構造とされた防振装置の一実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、防振装置本体としてのマウント本体12にストッパ部材としてのストッパゴム14が取り付けられた構造とされている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、軸方向である図3中の上下方向を言う。また、前後方向とは車両への装着状態で車両前後方向となる図1中の左右方向を、左右方向とは車両への装着状態で車両左右方向となる図1中の上下方向を、それぞれ言う。
より詳細には、マウント本体12は、図5〜8に示すように、第一の取付部材16と第二の取付部材18が本体ゴム弾性体20によって弾性連結された構造を有している。
第一の取付部材16は、軸方向視で角丸の略四角形状を呈しており、鉄やアルミニウム合金などの板材で形成された高剛性の部材であって、内周端部と外周端部がそれぞれ略軸直角方向に広がっていると共に、軸直角方向の中間部分が上方に向かって次第に拡開するテーパ形状とされている。また、第一の取付部材16の中央部分には、上下に貫通する小径円形のボルト挿通孔22が形成されている。この第一の取付部材16は、パワーユニットのロッド部材23がボルト挿通孔22を利用して螺着されることにより、パワーユニット側に取り付けられるようになっている。
第二の取付部材18は、第一の取付部材16と同様に金属などで形成された高剛性の部材であって、角部を円弧状に丸められた略四角断面で軸方向に延びる筒状部24と、筒状部24の上端から軸直角方向で外方に向かって広がるフランジ部26とを、一体で備えている。なお、フランジ部26は前後方向で左右方向よりも大きく突出しており、前後両側にそれぞれボルト孔28が貫通形成されている。この第二の取付部材18は、車両ボデーの取付部29に対してフランジ部26が重ね合わされてボルト孔28を利用して螺着されることにより、車両ボデー側に取り付けられるようになっている。
そして、第一の取付部材16が第二の取付部材18の上方に離隔して配置されて、それら第一の取付部材16と第二の取付部材18が本体ゴム弾性体20によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体20は、角部を丸められた略四角錐台形状とされており、小径側の端部が第一の取付部材16の下面に加硫接着されていると共に、大径側の端部が第二の取付部材18の筒状部24の上端およびフランジ部26に加硫接着されている。なお、本体ゴム弾性体20は、第一の取付部材16と第二の取付部材18を備えた一体加硫成形品として形成されている。
さらに、本体ゴム弾性体20には、下方に開口する凹所が形成されており、第二の取付部材18の筒状部24を通じて下方に開口している。これにより、筒状部24の内周側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体20で構成された軸方向視で略四角形状の収容凹所30が、軸方向下方に開口して形成されている。なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体20が第一の取付部材16の中央部分には固着されておらず、第一の取付部材16のボルト挿通孔22が本体ゴム弾性体20の中心孔を通じて収容凹所30に連通されており、収容凹所30に挿通されたロッド部材23が第一の取付部材16のボルト挿通孔22に螺着されるようになっている。
更にまた、第二の取付部材18の筒状部24には、被覆ゴム層32が固着されている。被覆ゴム層32は、本体ゴム弾性体20と一体形成されており、本実施形態では、筒状部24の内周面に加えて軸方向端面と外周面も覆うように設けられている。これにより、収容凹所30の周壁内面は、本体ゴム弾性体20および被覆ゴム層32によって一体的に構成されている。
さらに、本体ゴム弾性体20および被覆ゴム層32で構成された収容凹所30の周壁内面には、ガイド部としての案内突条34が設けられている。案内突条34は、収容凹所30の開口端から軸方向に略一定の半円形断面で延びる突条であって、収容凹所30の周壁部において軸直角方向で対向する部分に、それぞれ一対が形成されている。また、一対の案内突条34,34は、ストッパゴム14の後述するガイド突部38の幅寸法に対応する距離だけ周方向に離れて形成されている。
このような構造とされたマウント本体12には、別体のストッパゴム14が取り付けられている。ストッパゴム14は、図9〜13に示すように、全体がゴム弾性体で一体形成されており、逆向きの略有底四角筒形状とされていると共に、上底壁部を上下に貫通するロッド挿通孔36が形成されて、ロッド部材23が挿通されるようになっている。なお、ストッパ部材は、ゴム弾性体やエラストマ等の弾性体であることが望ましいが、例えば、金属や硬質の合成樹脂で形成された補強材が内部に埋設されていても良いし、ストッパ部材全体が硬質とされていても良い。
また、ストッパゴム14には、一対のガイド突部38,38が設けられている。ガイド突部38は、ストッパゴム14の一方(左右)の対向辺部から外側に突出しており、周方向に所定の幅をもって軸方向に連続している。
さらに、ストッパゴム14には、一対のストッパ突部40,40が設けられている。ストッパ突部40は、ストッパゴム14における他方(前後)の対向辺部の上部から前後外側に突出しており、本実施形態では突出先端側に向かって上下狭幅となっている。また、ストッパ突部40には、突出先端面に開口して軸方向に延びる分割溝42が形成されており、ストッパ突部40の突出先端部分が分割溝42を挟んで周方向両側に二分されている。図13に示すように、本実施形態の分割溝42は、ストッパ突部40の突出先端側に向かって拡幅する溝断面形状を有している。
なお、本実施形態では、ガイド突部38とストッパ突部40を除いたストッパゴム14の本体部分が軸方向視で略長方形の外形を有しており、長手方向の対向辺部から一対のガイド突部38,38が突出していると共に、短手方向の対向辺部から一対のストッパ突部40,40が突出している。更に、ストッパ突部40の突出寸法がガイド突部38の突出寸法よりも大きくされており、ストッパゴム14がストッパ突部40を設けられた軸直角方向で厚肉とされている。
更にまた、ストッパゴム14の各角部には、軸方向下方に開口する切欠き44が形成されている。本実施形態の切欠き44は、内面が滑らかな湾曲面とされており、ストッパゴム14の変形時に切欠き44の内面における応力の集中が緩和されるようになっている。
このような構造とされたストッパゴム14は、図2〜4に示すように、マウント本体12の収容凹所30に下方から差し入れられて配設されている。本実施形態では、ストッパゴム14に設けられた各ガイド突部38が収容凹所30の内周面に設けられた一対の案内突条34,34の間に差し入れられることで、ストッパゴム14が案内突条34に沿って軸方向に案内されるようになっている。
本実施形態では、ストッパゴム14が収容凹所30に差し入れられることによって、一対のガイド突部38,38が収容凹所30の周壁内面に対して押し当てられており、それら一対のガイド突部38,38と収容凹所30の周壁内面との間に作用する摩擦抵抗力によって、ストッパゴム14が収容凹所30に保持されるようになっている。
ここにおいて、ストッパゴム14の収容凹所30からの抜けを防止するための抜け止め手段が設けられている。即ち、収容凹所30の周壁内面には、四つの弾性テーパ部46,46,46,46が形成されている。弾性テーパ部46は、図14に示すように、被覆ゴム層32と一体形成されており、収容凹所30の開口部分に設けられて、収容凹所30の開口側に向かって次第に内周側に傾斜する当接面48を備えている。本実施形態では、第二の取付部材18の筒状部24の内周面に設けられた弾性テーパ部46が、収容凹所30の開口側に向かって次第に厚肉となっていることで、弾性テーパ部46の内周面が当接面48とされている。
さらに、本実施形態において、弾性テーパ部46は、図2に示すように、収容凹所30の四つの隅部にそれぞれ設けられており、四つの弾性テーパ部46,46,46,46が周方向に所定の距離を隔てて分散配置されている。なお、図2に示されているように、1つの弾性テーパ部46に対して、その周方向両側に配された弾性テーパ部46,46が、前後又は左右において対向する位置に配置されている。
更にまた、弾性テーパ部46は、収容凹所30の底側(奥方)の端縁(基端)が第二の取付部材18の筒状部24の内周面上に位置していると共に、収容凹所30の開口側の端縁(先端)が筒状部24よりも軸方向外側まで延びている。これにより、弾性テーパ部46は、基端部分が筒状部24によって拘束されて外周側への弾性変形を制限されていると共に、先端部分が外周側への弾性変形を許容されている。
そして、ストッパゴム14は、図15(a)に示すように、ストッパ突部40,40が弾性テーパ部46,46,46,46を乗り越えて収容凹所30の奥方に差し入れられており、ストッパ突部40,40が弾性テーパ部46,46,46,46の上方に離隔して配置されている。
本実施形態では、各ストッパ突部40の周方向両側の角部が、弾性テーパ部46,46に押し当てられながら、それら弾性テーパ部46,46を乗り越えるようになっており、弾性テーパ部46,46を乗り越える際の当接面積が小さくされて、摩擦抵抗が低減されている。更に、ストッパ突部40には先端面に開口して軸方向に延びる分割溝42が形成されていることから、ストッパ突部40が周方向中央側への弾性変形を許容されており、ストッパ突部40の角部が弾性テーパ部46を乗り越え易くなっている。
このようにストッパ突部40,40が弾性テーパ部46,46,46,46よりも収容凹所30の奥方に差し入れられることにより、図2にも示すように、各ストッパ突部40の周方向両側の角部が、弾性テーパ部46,46に対して軸方向の投影において重なり合っている。その結果、ストッパゴム14に対して収容凹所30の開口から抜ける方向(下向き)の外力が作用すると、図15(b)に示すように、ストッパ突部40,40の角部が弾性テーパ部46,46,46,46の各当接面48に軸方向で当接係止されて、ストッパゴム14のマウント本体12に対する相対変位が制限されることから、ストッパゴム14の収容凹所30からの脱落が防止される。
特に、ストッパ突部40の角部が、筒状部24の内周面に固着された弾性テーパ部46の基端部分で当接面48に当接するようになっていることから、ストッパ突部40の当接による弾性テーパ部46の弾性変形が制限されている。それ故、ストッパゴム14の収容凹所30からの抜けがより効果的に防止されるようになっている。
しかも、弾性テーパ部46は、形状が安定して保持される収容凹所30の四隅に設けられていることから、弾性テーパ部46が周方向に比較的に短い長さで形成されていても変形が制限され易くなって、ストッパゴム14が収容凹所30から脱落するのを有利に防止することができる。なお、収容凹所30の壁内面の成形後に成形用金型を下方に抜き取る際に、弾性テーパ部46がアンダーカットになるが、各弾性テーパ部46が周方向で短い長さとされて周上に分散配置されていることから、成形用金型の脱型も容易になる。
さらに、四つの弾性テーパ部46,46,46,46が収容凹所30の周上で分散して設けられており、各弾性テーパ部46の当接面48がストッパ突部40,40の周方向両端角部にそれぞれ当接するようになっている。これにより、弾性テーパ部46とストッパ突部40の当接による反力が、ストッパゴム14に対して周上でバランス良く作用することから、ストッパゴム14の傾動も防止されて、ストッパゴム14が収容凹所30に対して所定の向きに保持される。
特に本実施形態では、四つの弾性テーパ部46,46,46,46が被覆ゴム層32と一体形成されることで相互に繋がっていることから、各弾性テーパ部46が筒状部24に強固に固着されていると共に、成形も容易とされている。更に、被覆ゴム層32が本体ゴム弾性体20と一体形成されていることから、本体ゴム弾性体20と被覆ゴム層32と四つの弾性テーパ部46,46,46,46とを一体で容易に形成可能とされている。
また、図3に仮想的に示す車両装着状態では、図15(a)にも示すように、ストッパ突部40が収容凹所30における弾性テーパ部46よりも奥方に配されており、収容凹所30の周壁内面に対して強く押し当てられることなく、離隔しているか、或いは0乃至は僅かな当接圧で当接している。これにより、軸直角方向の小振幅振動の入力に対して、マウント本体12のばね特性に対するストッパゴム14のばねの影響が低減されており、目的とするばね特性(低動ばね特性)を得ることで有効な防振効果(振動絶縁効果)が発揮されるようになっている。
なお、ストッパ突部40を外れたストッパゴム14の下部は、前後方向において、収容凹所30の開口部の内法寸法に比して、充分に小さな外形をもって形成されていることから、ストッパ突部40が弾性テーパ部46よりも収容凹所30の奥方に配されることで、ストッパゴム14と弾性テーパ部46の当接が回避されている。
また、図3に仮想的に示す車両装着状態において、自動車の加減速などに起因する前後方向(図3中、左右方向)の大荷重が入力されると、ロッド部23に外嵌されたストッパゴム14のストッパ突部40が収容凹所30の内周面に押し当てられて、第一の取付部材16と第二の取付部材18の軸直角方向での相対変位量が制限される。これにより、本体ゴム弾性体20の過大な弾性変形が防止されて、本体ゴム弾性体20の耐久性の向上が図られる。本実施形態では、ストッパ突部40の突出先端部に分割溝42が形成されていることにより、ストッパ突部40の突出先端部分のばねが小さくされており、ストッパ突部40が収容凹所30の内周面に当接する際の衝撃が緩和されて、打音が低減されるようになっている。特に本実施形態では、ストッパ突部40が先細形状とされていることから、ストッパ作用をより緩衝的に得ることができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、弾性テーパ部は、必ずしも複数が形成されていなくても良く、一つだけであっても良い。具体的には、例えば、弾性テーパ部が全周に亘って連続的に設けられていても良い。
また、収容凹所の深さ方向における弾性テーパ部の形成位置は、収容凹所の開口端部に限定されるものではなく、収容凹所の深さ方向の中間部分であっても良い。なお、弾性テーパ部は、軸直角方向の投影において全体が筒状部と重なり合うようにも配置され得る。
弾性テーパ部は、必ずしも収容凹所の隅部に形成されなくても良く、収容凹所の辺部に設けることも可能である。このことからも明らかなように、ストッパ突部は、弾性テーパ部に対して周方向の中間部分が軸方向投影で重なり合っていても良い。
弾性テーパ部は、収容凹所の開口側に向かって次第に厚肉となるゴム弾性体で形成された前記実施形態の構造に限定されず、例えば、筒状部の下部を絞り加工などによって下方に向かって内傾する傾斜形状とすることで設けることもできる。
収容凹所は、軸方向視で四角形状に限定されるものではなく、例えば円形であっても良い。また、ストッパ部材は、例えば円筒形状なども採用可能である。収容凹所とストッパ部材の軸方向視での形状は、互いに略対応する形状であることが望ましいが、それら収容凹所とストッパ部材の軸方向視での形状を互いに異なる形状とすることも可能であり、例えば、軸方向視で四角形状の収容凹所に円筒形状のストッパ部材を配設しても良い。
ストッパ部材は、前記実施形態では全体がゴム弾性体で形成されていたが、例えば、形状の安定化や耐荷重性の向上などを図るために、金属や合成樹脂で形成された硬質の補強部材が埋設されていても良い。
本発明の適用範囲は、エンジンマウントに限定されるものではなく、サブフレームマウントやボデーマウント、デフマウントなどとして用いられる防振装置にも適用され得る。また、本発明は、自動車用の防振装置にのみ適用されるものではなく、例えば、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両などに用いられる防振装置にも適用可能である。