JP5539384B2 - シンターケーキ支持スタンド、肉盛溶接用ワイヤ及び肉盛溶接用金属 - Google Patents

シンターケーキ支持スタンド、肉盛溶接用ワイヤ及び肉盛溶接用金属 Download PDF

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Description

本発明は、焼結鉱を製造する下方吸引式焼結機において使用されるシンターケーキ支持スタンド、このシンターケーキ支持スタンドの肉盛溶接部を形成する際に用いられる肉盛溶接用ワイヤ、及び、肉盛溶接金属に関するものである。
従来、製鉄所の高炉に投入される原料として、粉状鉄鉱石等の鉄含有原料、石灰石等の副原料、粉コークス等の固体燃料からなる焼結原料を焼結した焼結鉱が使用されている。この焼結鉱を製造する手段として、焼結原料を焼結パレット台車に積載しその表層中の固体燃料に点火し、焼結パレット台車を移送しつつ、焼結パレット台車の下方から吸引することで、焼結パレット内の原料充填層の燃焼点を移動させることにより、原料の焼成を進行させていき、シンターケーキ(焼結塊)を生成する下方吸引式焼結機が採用されている。
ここで、前述の下方吸引式焼結機では、焼結パレット内の原料充填層の焼結が進行する過程において上部側で生成されたシンターケーキの自重によってその下方側に位置する焼結原料が圧縮され、嵩密度が高くなるため、通気性が低下し、焼結を効率的に行うことができないといった問題があった。
特許文献1には、焼結パレット上に進行方向に平行な断面が概略台形板状をなすシンターケーキ支持スタンドを配設しておき、焼結パレットに充填された焼結原料充填層の焼結過程において上部側で形成されたシンターケーキを支持することで、下部側の原料充填層内の通気性を確保する技術が提案されている。
このシンターケーキ支持スタンドは、焼結原料をパレット台車に装入する際の衝撃、摩擦、および、焼結完了後のシンターケーキをパレット台車外部へと排鉱する際の摩擦によって損耗することになる。また、前述の焼結機においては、焼結時には加熱温度が1200〜1400℃と非常に高温となり、その後空冷されることから、シンターケーキ支持スタンドに熱歪による割れが発生するおそれがあった。さらに、焼結機内では、高温の酸化、硫化雰囲気となることが知られている。よって、シンターケーキ支持スタンドには、高温雰囲気下において耐摩耗性、耐割れ性及び耐腐食性を確保する必要があった。そのため、特許文献2〜4において、以下の技術が提案されている。
特許文献2には、シンターケーキ支持スタンドを特殊鋳鋼で一体鋳造部品として製造したものが提案されている。
特許文献3には、個別に製作された下部台座部と上部ブレード部とを接合した構造とし、上部ブレード部の綾線部及び側面部に肉盛溶接を施したものが提案されている。
特許文献4には、シンターケーキ支持スタンドの上部ブレード部の側面等に減肉加工を施し、この減肉した部分に肉盛溶接を施したものが提案されている。
特開平06−147765号公報 特開平09−041098号公報 特開2002−013876号公報 特開2006−118769号公報
特許文献2に記載されたシンターケーキ支持スタンドは、特殊鋳鋼製で、シンターケーキ支持スタンド全体を一体成形している。このため、シンターケーキ支持スタンドの製造コストが大幅に増大する。また、この特殊鋳鋼は、炭素量が約0.3質量%、クロム量が約13質量%の鋳鋼であり、1200〜1400℃といった高温雰囲気下における耐摩耗性、耐割れ性及び耐腐食性等が不十分であった。また、シンターケーキ支持スタンドが前記特殊鋳鋼の一体成形品のため、上部の編磨耗でも全体を交換する必要があり、メンテナンス性に欠け、コストも高いものとなっている。
また、特許文献3、4に記載されたシンターケーキ支持スタンドは、上部の編磨耗する部分に耐摩耗性材料を肉盛溶接しているため、磨耗しても再肉盛溶接すればよく、メンテナンス性は改善されていた。しかし、肉盛溶接に用いる材料のCr含有量が多く、高温下で脆化し、耐割れ性が大きく低下する。そのため、高温下における耐摩耗性、耐割れ性及び耐腐食性等が十分ではなく、シンターケーキ支持スタンドの大幅な寿命延長を図ることができなかった。
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、焼結鉱加熱温度1200℃〜1400℃の高温雰囲気下における耐摩耗性、耐割れ性及び高温酸化・硫化雰囲気に対する耐腐食性に優れたシンターケーキ支持スタンドを得ることを目的とする。さらに、このシンターケーキ支持スタンドの肉盛溶接部に用いられる肉盛溶接用ワイヤ及び肉盛溶接用金属を得ることも目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高温脆化の起因となるCr減らしつつ、耐摩耗性に重要なCr炭化物を適度に有する肉盛溶接金属を見出した。Crは、耐高温酸化性を改善し、その炭化物は耐摩耗性を改善する。その反面、炭化しきれないCrは金属中に固溶し、高温脆化の原因となる。そのため、C含有量、Cr含有量等を適正化した肉盛溶接金属を見出した。
この肉盛溶接金属を特許文献4に記載のシンターケーキ支持スタンドに適用することにより、焼結鉱加熱温度1200℃〜1400℃の高温雰囲気下における耐摩耗性、耐割れ性及び高温酸化・硫化雰囲気に対する耐腐食性に優れたシンターケーキ支持スタンド得られることを見出した。
本発明は、これら知見に基づき成されたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)本発明に係るシンターケーキ支持スタンドは、焼結鉱を製造する下方吸引式焼結機の焼結パレット上に配置されるシンターケーキ支持スタンドであって、前記焼結パレット上に載置される台座部と、この台座部から上方に向けて延設されたブレード部を有し、前記ブレード部の少なくとも上縁部または側面部の上部には肉盛溶接部が設けられており、この肉盛溶接部を構成する肉盛溶接金属が、C:3.0質量%以上5.0質量%以下、Si:0.8質量%以上2.0質量%以下、Cr:10質量%以上15質量%以下、Mo:7質量%以上10質量%以下を含み、残部がFeと不可避不純物とからなる組成を有することを特徴としている。
(2)前記(1)のシンターケーキ支持スタンドは、前記肉盛溶接部が、前記シンターケーキ支持スタンドの少なくとも上縁部または側面上部の表面から2mm以上10mm以下の部分を減肉した部分に形成されたことを特徴としている。
(3)また、前記(1)または(2)のシンターケーキ支持スタンドは、前記肉盛溶接部が、前記シンターケーキ支持スタンドの減肉した部分を消滅させるように形成されたことを特徴としている。
(4)さらに、前記(1)〜(3)のいずれか一つのシンターケーキ支持スタンドは、前記肉盛溶接部の前記シンターケーキ支持スタンド頂上部からの距離が、焼結パレット進行方向前側に比べ進行方向後側が長いことを特徴としている。
(5)本発明に係る肉盛溶接用ワイヤは、シンターケーキ支持スタンドの肉盛溶接部を形成する際に使用される肉盛溶接用ワイヤであって、C:3.3質量%以上5.5質量%以下、Si:0.9質量%以上2.2質量%以下、Cr:11質量%以上17質量%以下、Mo:8質量%以上11質量%以下を含み、残部がFeと不可避不純物とからなる組成を有することを特徴としている。
(6)本発明に係る肉盛溶接金属は、シンターケーキ支持スタンドの肉盛溶接部に使用される肉盛溶接金属であって、C:3.0質量%以上5.0質量%以下、Si:0.8質量%以上2.0質量%以下、Cr:10質量%以上15質量%以下、Mo:7質量%以上10質量%以下を含み、残部がFeと不可避不純物とからなる組成を有することを特徴としている。
上述のように、本発明によれば、1200℃〜1400℃の高温雰囲気下における耐摩耗性、耐割れ性及び高温酸化・硫化雰囲気に対する耐腐食性に優れたシンターケーキ支持スタンドを得ることができ、シンターケーキ支持スタンドの寿命を大幅に延長することが可能となる。
図1は、本発明の一実施形態であるシンターケーキ支持スタンドの斜視図である。
図2は、図1に示すシンターケーキ支持スタンドの正面図である。
図3は、図2におけるX−X断面矢視図である。
図4は、図1のシンターケーキ支持スタンドにおいて肉盛溶接部を形成する前の状態を示す斜視図である。
図5は、本発明の他の実施形態であるシンターケーキ支持スタンドの正面図である。
図6は、本発明の他の実施形態であるシンターケーキ支持スタンドの正面図である。
以下に、本発明の一実施形態であるシンターケーキ支持スタンド、肉盛溶接用ワイヤ及び肉盛溶接金属について、図1から図4を参照して説明する。
シンターケーキ支持スタンド10は、高炉へ投入される原料である焼結鉱を製造する下方吸引式焼結機の焼結パレット台車上に配置される。焼結過程において、シンターケーキ支持スタンド10は、原料充填層上部側に生成したシンターケーキ(焼結塊)を支持し、焼結原料充填層下部側の通気性を維持するための部材である。
このシンターケーキ支持スタンド10は、図1から図3に示すように、焼結パレット台車に固定される台座部11と、この台座部11から上方に向けて延設されたブレード本体16を備えている。そして、ブレード本体16の上縁部及び側面上部は表面を深さ1〜5mm削るように減肉(スキンカット)しており、この減肉部には肉盛溶接部を供えている。このブレード本体16と肉盛溶接部18を総称してブレード部15とよぶ。なお、図1及び図3において、ブレード部15の下端部に表示されている矢印Yは、焼結機内でのシンターケーキ支持スタンド10及び焼結パレット台車の進行方向を示すものである。
台座部11は、例えばステンレス鋳鋼(SCS2:JIS 5121で規定するマルテンサイト系ステンレス)、オーステナイト系鋳鋼又はフェライト系とオーステナイト系の二相系鋳鋼で構成されており、下部に焼結パレットに装着するための取付け部12が設けられている。本実施形態では、台座部11の高さH2は、120mm≦H2≦130mmの範囲内に設定されている。
ブレード部15は、排鉱性を良好にする点から、パレット台車の進行方向に対し側面視概略台形状をなしており、ブレード本体16と、このブレード本体16の上縁部(台形の上辺部及び斜辺部)及び台形面の上部に形成された肉盛溶接部18と、を備えている。また、ブレード部15の厚み方向の断面は、排鉱性を良好にする点から、板厚が下から上に薄くなるテーパー形状であることが好ましい。
ここで、本実施形態では、ブレード部15の高さH1は、300mm≦H1≦450mmの範囲内に設定されており、ブレード部15の厚さTは、30mm≦T≦70mmの範囲内に設定されている。
ブレード本体16は、台座部11と同様に、例えばステンレス鋳鋼(SCS2)、オーステナイト系鋳鋼又はフェライト系とオーステナイト系の二相系鋳鋼で構成されており、本実施形態では、台座部11と一体成形されている。
このブレード本体16の上縁部(台形の上辺部及び斜辺部)及び台形面の表層部には、図4に示すように、表層を削ったような減肉部(スキンカット)17が形成されている。なお、本実施形態では、台形面側の減肉部17は、シンターケーキ支持スタンド10の進行方向前方(矢印Y前方方向)側部分よりも後方(矢印Y後方方向)側部分の面積が広くなるように形成されている。そして、この減肉部17を埋めるように、肉盛溶接を施し、肉盛溶接部18が形成されている。
肉盛溶接部18は、図2及び図3に示すように、前述の減肉部17に対して、肉盛溶接用金属を含有する肉盛溶接用ワイヤにて肉盛溶接を施すことによって形成されている。ここで、ブレード部15の上縁部(台形の上辺部及び斜辺部)側の減肉部17の肉盛溶接部18の厚さt1は、おおよそ減肉部17の片側の深さに相当する、2mm≦t1≦4mmの範囲内に設定されている。また、台形面表層部側の減肉部17の肉盛溶接部18の厚さt2は、おおよそ減肉部17の片側の深さに相当する、2mm≦t2≦4mmの範囲内に設定されている。
この肉盛溶接部18は、焼成中の加熱された焼結鉱(シンターケーキ)が直接接触する部分であり、さらに排出される焼結鉱が衝突する部分でもある。したがって、本発明の解決すべき課題である、温度1200℃〜1400℃の高温雰囲気下における耐摩耗性、耐割れ性及び高温酸化・硫化雰囲気に対する耐腐食性に優れたシンターケーキ支持スタンドを得るために、最も重要な部分になる。
この肉盛溶接部18に、耐摩耗性、耐割れ性及び高温酸化・硫化雰囲気に対する耐腐食性をもたせるため、肉盛溶接部を構成する溶接金属(以下、肉盛溶接金属という。)は、次のような組成とすることが要求されることを見出した。
すなわち、C:3.0質量%以上5.0質量%以下、Si:0.8質量%以上2.0質量%以下、Cr:10質量%以上15質量%以下、Mo:7質量%以上10質量%以下を含み、残部がFeと不可避不純物とからなる組成である。
以下に、肉盛溶接金属の組成を上記のように限定した理由について説明する。(以下、特に断りの無い限り、成分含有量は質量%で表示する。)
(C:炭素)
Cは、Cr等と結合して炭化物を形成し、高温強度、耐摩耗性を向上させる作用を有する元素である。
ここで、Cの含有量が3.0%未満では、炭化物を十分に生成させることができず、上述の作用効果を奏功せしめることはできない。一方、Cの含有量が5.0%を超えると、炭化物が過剰に存在してしまい、肉盛溶接部18がブレード本体16から剥離するおそれがある。このような理由から、Cの含有量を3.0%以上5.0%以下に設定している。効果を確実に得るために、好ましくは3.3%以上、4.7%以下とするとよく、更には3.5%以上、4.5%以下とすることが好ましい。
(Si:珪素)
Siは、肉盛溶接を実施する際の脱酸に有効な元素である。また、高温雰囲気下での耐酸化性を向上させる作用を有する。
ここで、Siの含有量が0.8%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることはできない。一方、Siの含有量が2.0%を超えると、肉盛溶接部18の靱性が低下するおそれがある。
このような理由から、Siの含有量を0.8%以上2.0%以下に設定している。効果を確実に得るために、好ましくは1.0%以上、1.8%以下とするとよく、更には、1.2%以上、1.6%以下とするとことが好ましい。
(Cr:クロム)
Crは、炭素と結合して高硬度のCr炭化物を生成し、耐摩耗性及び高温強度を向上させる作用を有する元素である。また、耐腐食性を向上させる作用を有する。
ここで、Crの含有量が10%未満では、Cr炭化物を十分に生成させることができず、上述の作用効果を奏功せしめることはできない。一方、Crの含有量が15%を超えると、Cr炭化物が過剰に存在してしまい、肉盛溶接部18が脆化し、耐割れ性が大きく低下するおそれがある。
このような理由から、Crの含有量を10%以上15%以下に設定している。効果を確実に得るために、好ましくは10.5%以上、14.5%以下とするとよく、更には、11.0%以上、14.0%以下とするとことが好ましい。
(Mo:モリブデン)
Moは、肉盛溶接金属のマトリックス内に固溶し、強度、耐摩耗性、靱性を向上させる作用を有する元素である。
ここで、Moの含有量が7%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることはできない。一方、Moの含有量が10%を超えても、上述の作用効果が向上することがない。
このような理由から、Moの含有量を7%以上10%以下に設定している。効果を確実に得るために、好ましくは7.5%以上、9.5%以下とするとよく、更には、8.0%以上、9.0%以下とするとことが好ましい。
なお、不可避不純物としては、P、S等が挙げられる。これらの不可避不純物は、総量で0.06%以下であることが好ましい。
上述したように、本発明のシンターケーキ支持スタンドを構成するブレード本体は、例えばステンレス鋳鋼(SCS2:JIS 5121で規定するマルテンサイト系ステンレス)、オーステナイト系鋳鋼又はフェライト系とオーステナイト系の二相系鋳鋼が用いられる。
本発明では、肉盛溶接によって、上記の成分組成を有する肉盛溶接金属をブレード本体の減肉部に形成するためには、溶接時のブレード本体からの成分希釈を考慮する必要がある。ブレード本体の材料は、前述したようにステンレス鋳鋼、オーステナイト系鋳鋼又はデライト・オーステナイト二相系鋳鋼などが実際用いられている。本発明者らは、前記いろいろな種類のブレード材料を考慮した上で、肉盛溶接用ワイヤの成分組成をC:3.3%以上5.5%以下、Si:0.9%以上2.2%以下、Cr:11%以上17%以下、Mo:8%以上11%以下を含み、残部がFeと不可避不純物とするとよいことを見出した。肉盛溶接用ワイヤの各成分元素の限定理由は、上記肉盛溶接金属の成分元素と同じである。
ただ、その効果を確実に得るために、好ましくは、C:3.5%以上5.2%以下、Si:1.1%以上2.0%以下、Cr:12%以上16%以下、Mo:8.5%以上10.5%以下とするとよく、さらには、C:3.8%以上5.0%以下、Si:1.3%以上1.8%以下、Cr:13%以上15%以下、Mo:8.5%以上10.5%以下とすることが好ましい。
以上説明したように本実施形態に係るシンターケーキ支持スタンド10、肉盛溶接用ワイヤ及び肉盛溶接金属により、ブレード部15の上縁部及び側面の台形面の表層部に肉盛溶接部18が形成されるので焼結時の加熱温度が1200〜1400℃といった高温雰囲気下における耐摩耗性、耐割れ性及び耐腐食性に優れることになる。よって、ブレード部15の早期劣化を抑制することができ、このシンターケーキ支持スタンド10の使用寿命を大幅に延長することが可能となる。
また、本実施形態では、ブレード本体16の上縁部および側面上部に減肉部17が形成され、ここを埋めるように肉盛溶接部18が形成されている。そのため、肉盛溶接部18がスタンドから張り出すことがなく、シンターケーキを円滑に排鉱することができる。
さらに、シンターケーキ支持スタンドの側面(台形面側)の減肉部17が、シンターケーキ支持スタンド10の進行方向前方側部分よりも進行方向後方側部分の面積が広くなるように形成されており、これに合わせて肉盛溶接部18が形成されている。ここで、シンターケーキを排鉱する際には、シンターケーキ支持スタンド10の進行方向後方側部分がシンターケーキと長時間にわたって摺接することになる。よって、進行方向後方側部分の肉盛溶接部18の面積が大きくなるように構成することで、シンターケーキ支持スタンド10の摩耗を確実に抑制することが可能となる。
シンターケーキ支持スタンド側面の減肉部分の形状(図2のハッチング部分に相当)は、特に限定されない。例えば、図2に示すように、進行方向前方側部分の側面台形形状の上辺からの減肉幅bが、進行方向前方側部分の側面台形形状の上辺からの減肉幅aより短い(a>b)となる階段状の形状でもよい。また、図6のように後方に行くにしたがって広がるような形状でもよい。もちろん、図5のように側面台形形状の上辺からの減肉幅が一定でもかまわないが、実操業での磨耗形態を考慮すると、前方より後方の減肉幅を増加させたほうが好ましい。
以上、本発明の実施形態であるシンターケーキ支持スタンド、肉盛溶接用ワイヤ及び肉盛溶接金属について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、シンターケーキ支持スタンドにおける肉盛溶接部の形状は、本実施形態で示した形状に限定されることはなく、例えば図5及び図6に示すように、台座部111、211から上方に延設されたブレード本体116、216に、肉盛溶接部118、218を形成したシンターケーキ支持スタンド110、210であってもよい。
また、台座部とブレード本体とを一体成形したものとして説明したが、これに限定されることはなく、台座部とブレード本体とを個別に製作し、これらを接合した構造を採用してもよい。
さらに、台座部の取付部の構造は、本実施形態に限定されることはなく、焼結パレット等の構造に合わせて適宜設計変更してもよい。
以下に、本発明の効果を確認すべく実施した確認実験の結果について説明する。
図4に示すブレード本体の減肉部に、肉盛溶接を行った。ブレードはSCS2製であり、その成分仕様は、C:0.16〜0.24%、Si:〜1.50%、Mn:〜1.00%、P:〜0.040%、S:〜0.040%、Cr:11.50〜14.00%である。肉盛溶接ワイヤは、溶接後の成分希釈を考慮して、C、Si、Cr、Moの含有量を調整したワイヤを用いた。ブレードに肉盛溶接後の溶接金属の成分組成を表1に示す。肉盛溶接部の成分組成は、肉盛溶接部の表面から1〜2mmの範囲を切削してその切り粉を分析した。Cは、切り粉をるつぼで加熱・溶解し、発生したガスを酸素気流中で燃焼させ、非分散赤外線検出器によって成分を測定した。また、C以外の成分は、切り粉の化学分析によって測定した。従来使用していた肉盛溶接ワイヤで行った肉盛溶接金属の組成を「従来例」とした。
Figure 0005539384
図1から図3において、ブレード部の高さH1は300mm、厚さTは40mm、台座部の高さH2は125mmとした。
ブレード部の上縁部(台形状側面の上辺部及び斜辺部)側の減肉部17の肉盛溶接部の厚さ(おおよそ減肉部の深さに相当する)t1は3.0mm、台形面表層部側の減肉部17の肉盛溶接部の厚さ(おおよそ減肉部の深さに相当する)t2は3.0mmとした。また、図2において、肉盛溶接部の各寸法は、a=150mm、b=200mm、c=20mmとした。
このようにして得られたシンターケーキ支持スタンドを、焼結パレット幅5m、有効面積660mの下方吸引式焼結機の焼結パレット上に配設した。
そして、焼結原料厚700mm、焼結パレット速度4m/minの条件で操業を行い、3ヶ月毎に摩耗及び腐食による損耗状況、割れの発生状況について確認した。評価結果を表2に示す。
Figure 0005539384
表2において、摩耗量は、スタンド中心部を専用治具で計測した初期高さと所定期間使用後の高さのとの差から算出し、110mmを超えた時点を使用限界とした。
また、割れ発生状況は、スケールにて測定した割れの長さが50mm以上または割れ開口幅が1.0mm以上のものを“大”、前記長さが20mm〜50mm未満または割れ開口幅が0.5mm〜1.0mm未満のものを“中”、前記長さが20mm未満または割れ開口幅が0.5mm未満のものを“小”と定義した。
比較例1は、肉盛溶接金属中のC含有量が本発明の範囲から高く外れているため、炭化物の過剰析出によりブレード本体と溶接部との剥離が発生し、3ヶ月で割れの大きさが許容範囲(割れの長さが50mm以上で、割れ開口幅が1.0mm以上)を超えた。
比較例2は、肉盛溶接部の溶接金属中のC含有量が本発明の範囲から低く外れているため、炭化物の析出強化による高温強度及び耐摩耗性向上効果は得られず、12ヶ月で損耗量が許容範囲(110mm以下)を超えた。
比較例3は、肉盛溶接金属中のSi含有量が本発明の範囲から高く外れているため、肉盛溶接部の靭性が低下し、3ヶ月で割れの大きさが許容範囲(割れの長さが50mm以上で、割れ開口幅が1.0mm以上)を超えた。
比較例4は、肉盛溶接金属中のSi含有量が本発明の範囲から低く外れているため、高温雰囲気下での耐酸化性向上効果が得られず、24ヶ月で損耗量が許容範囲(110mm以下)を超えた。
比較例5は、肉盛溶接金属中のCr含有量が本発明の範囲から低く外れているため、Cr炭化物の析出強化による耐摩耗性及び高温強度の向上効果、耐腐食性の向上効果が得られず、24ヶ月で損耗量が許容範囲(110mm以下)を超えた。
比較例6は、肉盛溶接金属中のCr含有量が本発明の範囲から高く外れているため、Cr炭化物の過剰析出により、肉盛溶接部が脆化し、3ヶ月で割れの大きさが許容範囲(割れの長さが50mm以上で、割れ開口幅が1.0mm以上)を超えた。
比較例7は、肉盛溶接金属中のMo含有量が本発明の範囲から低く外れているため、固溶強化による強度及び耐摩耗性の向上、靱性の向上効果が得られず、3ヶ月で割れの大きさが許容範囲(割れの長さが50mm以上で、割れ開口幅が1.0mm以上)を超えた。
本発明例1〜9では、肉盛溶接部の溶接金属の成分組成が、本発明の範囲を満足しているので、48ヶ月間使用後においても、従来例及び比較例に比べて損耗量が100mm以下と少なく、かつ、割れの発生が少なく、あっても中、小程度にとどまっており、耐摩耗性、耐腐食性及び耐割れ性が大幅に向上していることが確認された。
以上のことから、本発明によれば、肉盛溶接部の耐摩耗性、耐腐食性及び耐割れ性を向上させて、シンターケーキ支持スタンドの大幅な寿命延長を図ることが可能である。
本発明は、鉄鋼用高炉原料の製造に利用することができる。本発明を利用することにより、鉄鋼用原料の焼結工程におけるシンターケーキ支持スタンドの寿命を大幅に延長することが可能となる。
10 シンターケーキ支持スタンド
11 台座部
15 ブレード部
18 肉盛溶接部

Claims (6)

  1. 焼結鉱を製造する下方吸引式焼結機の焼結パレット上に配置されるシンターケーキ支持スタンドであって、
    前記シンターケーキ支持スタンドの少なくとも上縁部または側面上部に肉盛溶接部が設けられており、
    この肉盛溶接部を構成する肉盛溶接金属が、C:3.0質量%以上5.0質量%以下、Si:0.8質量%以上2.0質量%以下、Cr:10質量%以上15質量%以下、Mo:7質量%以上10質量%以下を含み、残部がFeと不可避不純物とからなる組成を有することを特徴とするシンターケーキ支持スタンド。
  2. 前記肉盛溶接部が、前記シンターケーキ支持スタンドの少なくとも上縁部または側面上部の表面から2mm以上10mm以下の部分を減肉した部分に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のシンターケーキ支持スタンド。
  3. 前記肉盛溶接部が、前記シンターケーキ支持スタンドの減肉した部分を消滅させるように形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のシンターケーキ支持スタンド。
  4. 前記肉盛溶接部の前記シンターケーキ支持スタンド頂上部からの距離が、焼結パレット進行方向前側に比べ進行方向後側が長いことを特徴とする請求項1または2に記載のシンターケーキ支持スタンド。
  5. シンターケーキ支持スタンドの肉盛溶接を行う際に使用される肉盛溶接用ワイヤであって、
    C:3.3質量%以上5.5質量%以下、Si:0.9質量%以上2.2質量%以下、Cr:11質量%以上17質量%以下、Mo:8質量%以上11質量%以下を含み、残部がFeと不可避不純物とからなる組成を有することを特徴とする肉盛溶接用ワイヤ。
  6. シンターケーキ支持スタンドの肉盛溶接を行う際に使用される肉盛溶接金属であって、
    C:3.0質量%以上5.0質量%以下、Si:0.8質量%以上2.0質量%以下、Cr:10質量%以上15質量%以下、Mo:7質量%以上10質量%以下を含み、残部がFeと不可避不純物とからなる組成を有することを特徴とする肉盛溶接金属。
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