携帯電話をはじめとしたモバイル機器端末の薄型化に伴い、その内部に組み込まれる電源装置も薄型化の要求がある。こうした薄型化の電源装置に対しては電源装置のIC化が必要で、それがSC電源装置の需要増加の原因となっている。
一方、モバイル情報通信機器や車載電子機器などの電子装置では、その内部に組み込まれる電源装置の低雑音化も要求される。磁性部品を有する現状の電源装置は、その磁性部品に電流が流れることで磁束が発生し、放射する磁界はシールドしても簡単には除去できない。一方、電界はシールドにより簡単に除去できることから、電源装置のシステムオンチップには無磁束化が不可欠で、磁束が発生しない電源装置の必要性から、SC電源装置の用途が広がっている。このようなSC電源装置は、例えば特許文献1,非特許文献1,非特許文献2などに開示されている。
コイルレスを実現するSC電源装置の原理を説明すると、SC電源装置100は図8に示すように、複数すなわちn個のキャパシタC1,C2,…Cnと、MOS型FETなどの複数すなわちns個のスイッチS1,S2,…Snsだけで構成され、入力端子101,102に印加される直流(DC)または交流(AC)の入力電圧を、各スイッチS1,S2,Snのスイッチングにより別な直流または交流の出力電圧に変換して、出力端子111,112に出力するものである。SC電源装置100は、内部にトランスやコイルなどの磁性部品を用いておらず、装置自体をIC化することが可能で、小型,軽量,低雑音,高効率という特徴を有している。
上記SC電源装置100は、これまでに各種方式による動作原理が提案されている。例えば非特許文献1では、スイッチΦe1、…Φen,スイッチΦo0、…Φonのオンオフ切換えにより、キャパシタC1,C2,…Cnを直列接続にして充電し、その後並列接続に切換えて放電を行なうことで、入力電圧よりも低い出力電圧に変換して出力するDC−DCコンバータに応用したSC電源装置100が提案されている。
図9は、その具体的な回路構成と、スイッチの動作タイミングとを示している。同図において、ここではn個のキャパシタC1,C2,…Cn−1,Cnの一端と他端に、それぞれスイッチS21,S22,…S2n−1,S2nと、スイッチS31,S32,…S3n−1,S3nを接続した直列回路を形成し、それぞれの直列回路を出力端子111,112の両端間に接続する一方で、キャパシタC1,C2,…Cn−1の他端と、その隣に位置するキャパシタC2,…C1n−1,Cnの一端との間に、それぞれスイッチS11,S12,…S1n−1を接続し、さらに入力端子101とキャパシタC1との間にスイッチS1nを接続し、入力端子102とキャパシタCnの他端との間にスイッチS1n+1を接続した充放電回路113を備えている。また、Coは出力端子111,112間に接続する平滑用のキャパシタ、RLは負荷抵抗である。したがって、図9のSC電源装置100は、n+1個のキャパシタCと、3n+1個のスイッチSの素子数で構成される。
当該回路構成において、図示しない制御回路からは、スイッチS11,S12,…S1n−1,S1n,S1n+1をオンにするクロック(図中の「1」)と、スイッチS21,S22,…S2n−1,S2nおよびスイッチS31,S32,…S3n−1,S3nをオンにするクロック(図中の「2」)が、互いに重なり合わないように所定のデッドタイムTδを有しながら、一周期Tc毎に順に発生する。
これにより、クロック「1」の出力中、スイッチS11,S12,…S1n−1,S1n,S1n+1がオンすると、直列接続したキャパシタC1,C2,…Cn−1,Cnに入力電圧V1が印加され、各キャパシタC1,C2,…Cn−1,CnにはV1/nの電圧がそれぞれ充電される。次に、クロック「2」が出力されると、今度はスイッチS11,S12,…S1n−1,S1n,S1n+1に代わり、スイッチS21,S22,…S2n−1,S2nおよびスイッチS31,S32,…S3n−1,S3nがオンし、それぞれのキャパシタC1,C2,…Cn−1,Cnに生じるV1/nの電圧が、出力電圧V2としてキャパシタCoに発生し、出力端子111,112を経由して負荷抵抗RLに供給される。出力電圧V2は、次の周期Tcで再びクロック「2」が出力されるまで、キャパシタCoによりほぼ一定に保たれる。
一方、SC電源装置100を、図9に示すようなDC−DCコンバータとしてではなく、AC−DCコンバータやDC−ACコンバータとして応用する考えも知られている。図10はその原理を概略的に示しているが、AC−DCコンバータに応用したSC電源装置100の場合、例えばAC100V/60Hzの交流入力電圧V1を、全波整流器121によって整流電圧V1’に変換し、その整流電圧V1’をSC電源装置100の入力端子101,102に印加する。これをスイッチS1,S2,…Snsのオンオフ切換えにより、キャパシタC1,C2,…Cnを並び換えて、複数個のキャパシタC1,C2,…Cnに電圧サンプルする。これにより個々のキャパシタC1,C2,…Cnの充電電圧Vcを基本値として、整流電圧V1’に応じた電圧がSC電源装置100内で充電される。後は、キャパシタC1,C2,…Cnを別な接続に並び換えて順番に放電することにより、直流出力電圧V2を生成することができる。
また、DC−ACコンバータに応用したSC電源装置100の場合、入力端子111,112に印加する直流入力電圧V1でキャパシタC1,C2,…Cnを充電した後、スイッチS1,S2,…Snsのオンオフ切換えにより、各キャパシタC1,C2,…Cnを別な接続に並び換えて、個々のキャパシタC1,C2,…Cnの充電電圧Vcを段階波形状に放電し、これを出力電圧V2’として出力する。そして、この出力電圧V2’をフルブリッジ回路122により正負交互の交流波形に変換すれば、例えばAC100V/60Hzの交流出力電圧V2を生成することができる。
図11は、そうしたDC−ACコンバータに応用したSC電源装置100の回路構成と、スイッチの動作タイミングとを示している。これはn=4として、キャパシタC1,C2,C3,C4の一端と他端に、それぞれスイッチS21,S22,S23,S24の他端と、スイッチS31,S32,S33,S34の一端を接続した直列回路を形成し、スイッチS21,S22,S23,S24の一端をスイッチS16の一端に共通して接続し、このスイッチの他端を出力端子111に接続し、スイッチS31,S32,S33,S34の他端を出力端子112に接続する一方で、キャパシタC1,C2,C3の他端と、その隣に位置するキャパシタC2,C3,C4の一端との間に、それぞれスイッチS11,S12,S13を接続し、さらに入力端子101とキャパシタC1との間にスイッチS14を接続し、入力端子102とキャパシタC4の他端との間にスイッチS15を接続した充放電回路113を備えている。
また、充放電回路113の出力端子111,112には、電圧調整用のレギュレータ143と、前記図10で示したフルブリッジ回路144が順に接続され、そのフルブリッジ回路144の出力端子が、SC電源装置100としての出力端子141,142に接続される。フルブリッジ回路144は、4個のスイッチp1,p2,n1,n2をブリッジ接続して構成され、対をなすスイッチp1,p2と、スイッチn1,n2が交互にオンオフするように構成される。出力端子141,142間には平滑用のキャパシタCoが接続され、この出力端子141,142間から負荷抵抗RLに出力電圧Voutが出力されるようになっている。したがって、図9のSC電源装置100は、充放電回路113に着目すると、n個のキャパシタCと、3n+2個のスイッチSの素子数で構成される。
当該回路構成において、図示しない制御回路からは、スイッチS11〜S15をオンにするクロックΦ1と、スイッチS21〜S24およびスイッチS31〜S34をオンにするクロックΦ2と、スイッチS16,S34をオンする他に、スイッチS21〜S24とスイッチS11〜S13の幾つかを選択的にオンにするクロックΦ0が、一周期Tc毎に順に発生する。
これにより、クロックΦ1が出力して、スイッチS11〜S15が何れもオンすると、直列接続したキャパシタC1,C2,C3,C4に直流電源145の入力電圧V1が印加され、各キャパシタC1,C2,C3,C4にはV1/4の電圧がそれぞれ充電される。次に、クロックΦ2が出力されると、各キャパシタC1,C2,C3,C4は並列接続された状態になり、それぞれの充電電圧がV1/4に保たれる。その後に出力されるクロックΦ0で、スイッチS16,S34をオンする他に、スイッチS24がオンすると、キャパシタC4の充電電圧V1/4がレギュレータ143を通してフルブリッジ回路144に出力される。
次の周期Tcでは、制御回路から同様のクロックΦ1,Φ2が充放電回路113に与えられるが、その後のクロックΦ0では、スイッチS16,S34をオンする他に、スイッチS23,S13がオンし、直列接続されたキャパシタC3,C4からの加算した充電電圧(V1/4)×2が、レギュレータ143を通してフルブリッジ回路144に出力される。
次の周期Tcでは、制御回路から同様のクロックΦ1,Φ2が充放電回路113に与えられるが、その後のクロックΦ0では、スイッチS16,S34をオンする他に、スイッチS22,S12,S13がオンし、直列接続されたキャパシタC2,C3,C4からの加算した充電電圧(V1/4)×3が、レギュレータ143を通してフルブリッジ回路144に出力される。
次の周期Tcでは、制御回路から同様のクロックΦ1,Φ2が充放電回路113に与えられるが、その後のクロックΦ0では、スイッチS16,S34をオンする他に、スイッチS21,S11,S12,S13がオンし、直列接続されたキャパシタC1,C2,C3,C4からの加算した充電電圧(V1/4)×4が、レギュレータ143を通してフルブリッジ回路144に出力される。
以下、各周期Tにおいて、上述したのと逆の動作を辿ることで、充放電回路113からの出力電圧を段階的に繰り返し増減させることができる。この場合、充放電回路113はn通りの出力電圧V2を生成できる。充放電回路113からの出力電圧V2をフルブリッジ回路144により正負交互の交流波形に変換し、これをキャパシタCoで平滑すれば、出力端子111,112から負荷抵抗RLに交流の出力電圧Voutを供給できる。
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付し、その共通する箇所の説明は重複を避けるため極力省略する。
図1は、本実施例における2n−1倍昇圧形のSC電源装置200の回路構成と、スイッチの動作タイミングとを示している。SC電源装置200は従来例と同様に、直流電源145からの入力電圧V1が印加される入力端子101,102と、出力電圧V2を負荷抵抗RLに接続する出力端子111,112とを備えており、磁性部品を有しない複数個のキャパシタCと複数個のスイッチSだけで構成される。
本実施例では、キャパシタCとしてn個のキャパシタC1,C2,C3,…Cn−1,Cnを備え、またスイッチSとして、第1スイッチ群に相当するn−1個のスイッチS12,S13,…S1nと、第2スイッチ群に相当するn個のスイッチS21,S22,S23,…S2nと、第3スイッチ群に相当するn−1個のスイッチS31,S32,S33,…S3n−1とを備えている。すなわち、ここでの素子数はキャパシタCがn個であり、スイッチSが3n−2個となる。
各素子は以下のように接続される。一方の入力端子101と一方の出力端子111との間の線路161に、n個のスイッチS21,S22,S23,…S2nが各々挿入接続される。また、隣り合うスイッチS21の他端およびスイッチS22の一端,スイッチS22の他端およびスイッチS23の一端,…スイッチS2n−1(図示せず)の他端およびスイッチS2nの一端の各接続点と、他方の入力端子102と他方の出力端子112との間を接続する線路162との間に、キャパシタC1およびスイッチS31の直列回路,キャパシタC2およびスイッチS32の直列回路,キャパシタC3およびスイッチS33の直列回路,…キャパシタCn−1およびスイッチS3n−1の直列回路がそれぞれ接続される。そして、キャパシタC1およびスイッチS31の接続点とスイッチS21の一端,キャパシタC2およびスイッチS32の接続点とスイッチS22の一端,キャパシタC3およびスイッチS33の接続点とスイッチS23の一端,…キャパシタCn−1およびスイッチS3n−1の接続点とスイッチS2n−1の一端に、スイッチS12,S13,…S1nをそれぞれ接続して、キャパシタC1,C2,C3,…Cn−1に関する充放電回路213を構成する。キャパシタCnは平滑用に設けられたもので、これは出力端子111,112間に接続される。
当該回路構成において、図示しない制御回路からはn個のクロック、すなわちスイッチS21,S31をオンにするクロック(図中の「1」)と、スイッチS12,S22,S32をオンにするクロック(図中の「2」)と、スイッチS12,S13,S23,S33をオンにするクロック(図中の「3」)と、スイッチS12,S13,S14,S24(図示せず),S34(図示せず)をオンにするクロック(図中の「4」)と、…スイッチS12,S13,S14,…S1n−1(図示せず),S2n−1(図示せず),S3n−1をオンにするクロック(図中の「n−1」)と、スイッチS12,S13,S14,…S1n,S2nをオンにするクロック(図中の「n」)が、互いに重なり合わないように所定のデッドタイムを有しながら、一周期Tc毎に順に発生する。
次に上記構成について、その動作を説明する。クロック「1」が出力して、スイッチS21,S31がオンすると、キャパシタC1に直流電源145の入力電圧V1が印加され、キャパシタC1にはV1の電圧が充電される。次に、クロック「2」が出力され、スイッチS12,S22,S32がオンすると、直流電源145およびキャパシタC1の直列回路がキャパシタC2の両端間に接続した状態となり、キャパシタC2には2V1の電圧が充電される。
以後、クロック「3」が出力され、スイッチS12,S13,S23,S33がオンすると、直流電源145,キャパシタC1,およびキャパシタC2の直列回路がキャパシタC3の両端間に接続した状態となり、キャパシタC3には4V1の電圧が充電される。この動作をクロック「n−1」が出力されるまで順に繰り返せば、キャパシタCn−1には2n−2V1の電圧が充電されることになる。そして最後に、クロック「n」が出力されると、直流電源145とキャパシタC1,C2,C3,…Cn−1との直列回路が、キャパシタCnひいては出力端子111,112の両端間に接続した状態となり、負荷抵抗RLに昇圧したV2=2n−1V1の出力電圧を供給することができる。
図1に示すSC電源装置200の特徴は、既存のSC電源装置100に比べて大きな昇圧比を得られる、ということにある。n個のキャパシタCが組み込まれているときに、SC電源装置200からの出力電圧V2を入力電圧V1のn倍ではなく、入力電圧V1の2n−1倍に昇圧させることができる。これは、スイッチSのオンオフを切り換えることにより、直流電源145からの入力電圧V1で第1のキャパシタC1を充電し、この直流電源145とキャパシタC1との直列回路を第2のキャパシタC2の両端間に接続して、第2のキャパシタC2を充電し、直流電源145とキャパシタC1,C2との直列回路を第3のキャパシタC3の両端間に接続して、第3のキャパシタC3を充電し、以後、第n−1のキャパシタCn−1まで同様に繰り返して、直流電源145と充電された各キャパシタC1,C2,C3…,Cn−1との直列回路を出力端子111,112の両端間に接続することで達成される。
また別な特徴として、個々のキャパシタC1,C2,C3,…Cn−1には、同じ電圧値が充電されるのではなく、V1,2V1,4V1,…2n−2V1のように、2の累乗に従う異なる電圧値が充電される。そのため、スイッチSを適宜選択すれば、入力電圧V1から入力電圧V1の2n−1倍の範囲で、入力電圧V1の整数倍の出力電圧V2を生成できる。例えば、V2=3V1の出力電圧を負荷抵抗RLに供給するには、クロック「1」「2」でキャパシタC1,C2をそれぞれ充電した後、キャパシタC1,C2の直列回路が出力端子111,112の両端間に接続するように、スイッチS13と、スイッチS23,…S2nと、スイッチS31をオンにするクロックを与えればよい。この動作を繰り返すことで、キャパシタCnにて出力電圧V2の平滑化が行なわれ、負荷抵抗RLに入力電圧V1の3倍の昇圧した出力電圧V2を供給できる。
応用例として、入力電圧V1に対して2n−1分の1に降圧させた出力電圧V2を得るには、図1に示す回路構成の入出力を入れ換えて考えればよい。これにより、V2=V1/2n−1の出力電圧を負荷抵抗RLに供給できるようになる。
図2は、少ないキャパシタ数で多出力が得られる昇降圧形のSC電源装置200の回路構成を示している。これはn=4として、キャパシタC1,C2,C3,C4と、スイッチS11,S12,S13,S14と、スイッチS21,S22,S23,S24と、スイッチS31,S32,S33と、スイッチS41と、スイッチS51,S52,S53,S54,S55,S56とにより構成される。
各素子は以下のように接続される。線路161には、スイッチS21,S22,S23,S24,S55が各々挿入接続され、線路162には、スイッチS41,S56がそれぞれ接続される。また、隣り合うスイッチS21の他端およびスイッチS22の一端,スイッチS22の他端およびスイッチS23の一端,スイッチS23の他端およびスイッチS24の一端の各接続点と、入力端子102からスイッチS41の一端に至る線路162との間には、キャパシタC1およびスイッチS31の直列回路,キャパシタC2およびスイッチS32の直列回路,キャパシタC3およびスイッチS33の直列回路がそれぞれ接続される。スイッチS24の他端およびスイッチS55の一端の接続点と、スイッチS41の他端とスイッチS56の一端の接続点との間には、キャパシタC4が接続される。さらにここでは、入力端子101とキャパシタC1,C2,C3の一端に、スイッチS51,S52,S53,S54の一端が接続され、これらのスイッチS51,S52,S53,S54の他端に出力端子111を接続して、キャパシタC1,C2,C3,C4に関する充放電回路213を構成する。
なお、ここでは例として、直流電源145の入力電圧V1を8Vとする。
当該構成において、キャパシタC1,C2,C3,C4の充電動作は次のように行なわれる。先ず過渡状態でスイッチS12,S13,S14,S21,S41をオンにして、直流電源145に対し全てのキャパシタC1,C2,C3,C4を直列に接続し、キャパシタC1,C2,C3,C4に2Vの電圧を充電する。その後、キャパシタC1,C2,C3を放電して、スイッチS24,S33,S41をオンにし、キャパシタC3,C4を並列に接続して、これらのキャパシタC3,C4の両端間電圧を1Vにする。次に、スイッチS14,S23,S32,S41をオンにし、直列接続したキャパシタC3,C4の両端にキャパシタC2を接続して、キャパシタC2の両端間電圧を2Vにする。以下、スイッチS13,S14,S22,S31,S41をオンにし、直列接続したキャパシタC2,C3,C4の両端にキャパシタC1を接続して、キャパシタC1の両端間電圧を4Vにするが、これは勿論、n個のキャパシタCn,…C3,C2,C1に対しても同じように行なうことができる。そして最後に、スイッチS12,S13,S14,S21,S41をオンにし、直列接続したキャパシタC1,C2,C3,C4の両端に直流電源145を接続することで、各キャパシタC1,C2,C3,C4の両端間電圧が4V,2V,1V,1Vに保たれる。
このときの入力電圧V1とキャパシタC1,C2,C3,C4の電圧比は、8:4:2:1:1となる。また、n番目のキャパシタCnの電圧Vcnは、Vcn=V1/2nとなる。
次に、放電時の動作を説明する。出力電圧V2を1Vとするには、スイッチS55,S56をオンにし、キャパシタC4を出力端子111,112に接続する。出力電圧V2を2Vとするには、スイッチS14,S54,S56をオンにし、キャパシタC3,C4の直列回路を出力端子111,112に接続する。出力電圧V2を3Vとするには、スイッチS13,S24,S53,S56をオンにし、キャパシタC2,C4の直列回路を出力端子111,112に接続する。出力電圧V2を4Vとするには、スイッチS31,S41,S52,S56をオンにし、キャパシタC1を出力端子111,112に接続する。以下、スイッチSのオンオフを適宜切り換えることで、出力電圧V2を1Vのステップで16Vにまで切り換えることができる。例えば、出力電圧V2を16Vとするには、スイッチS11,S12,S13,S14,S51,S56をオンにし、直流電源145とキャパシタC1,C2,C3,C4を出力端子111,112に接続すればよい。
図2に示すSC電源装置200の特徴は、4個のキャパシタC1,C2,C3,C4で、入力電圧V1よりも低い電圧(1V)から、入力電圧V1よりも高い電圧(16V)まで、24=16ステップの出力電圧V2が得られる、ということにある。したがって、n個のキャパシタC1,C2,C3,…Cnでは、2nステップの出力電圧V2を得ることができ、いわゆるデジタル選択方式の新たなSC電源装置200を提供できる。
また、ここでのSC電源装置200は、既存のSC電源装置100に比べて大きな降圧比を得ることができる。n個のキャパシタC1,C2,C3,…Cnが組み込まれているときに、SC電源装置200からの出力電圧V2を入力電圧V1の1/n倍ではなく、入力電圧V1の1/2n−1倍に降圧させることができる。
このような特徴は、スイッチSの切り換えによって、個々のキャパシタC1,C2,C3,…Cn−1に、V1/2nとなる2の累乗に従う異なる電圧値を充電することで達成される。
図3は、図2で提案したデジタル選択方式のSC電源装置200をDC−ACコンバータに応用した例を示している。ここでは、従来の図11に示す充放電回路113の代わりに、図2で示した充放電回路213が組み込まれている。但し、図3ではスイッチS41の位置が異なり、スイッチS41の一端に入力端子102が接続され、スイッチS41の他端にスイッチS31の他端が接続される。
当該構成において、図示しない制御回路からクロック「Φ1」が出力されると、スイッチS24,S33をオンにし、キャパシタC3,C4を並列に接続して、これらのキャパシタC3,C4の両端間電圧をV1/8にする。次に、クロック「Φ2」が出力されると、スイッチS14,S23,S32をオンにし、直列接続したキャパシタC3,C4の両端にキャパシタC2を接続して、キャパシタC2の両端間電圧をV1/4にする。次に、クロック「Φ3」が出力されると、スイッチS13,S14,S22,S31をオンにし、直列接続したキャパシタC2,C3,C4の両端にキャパシタC1を接続して、キャパシタC1の両端間電圧をV1/2にする。次に、クロック「Φ4」が出力されると、スイッチS12,S13,S14,S21,S41をオンにし、直列接続したキャパシタC1,C2,C3,C4の両端に直流電源145を接続することで、各キャパシタC1,C2,C3,C4の両端間電圧をV1/2,V1/4,V1/8,V1/8に保つ。
以上の充電動作の後、制御回路はクロック「Φo」を出力して、スイッチS12,S13,S14,S21,S22,S23,S24,S31,S32,S33,S51,S52,S53,S54,S55,S56のいずれかを選択的にオンにして、キャパシタC1,C2,C3,C4のいずれかを放電させ、V1/8〜2V1の範囲の出力電圧V2を出力する。そして、上記充放電の動作を繰り返し行なうことで、図3に示すような段階的に増減を繰り返す出力電圧V2をレギュレータ143に供給することができる。レギュレータ143で調整された出力電圧V2は、フルブリッジ回路144により正負交互の交流波形に変換され、これをキャパシタCoで平滑することで、出力端子141,142から負荷抵抗RLに交流の出力電圧Voutを供給できる。
この場合、充放電回路213は2n通りの出力電圧V2を段階的に生成できるので、従来のSC電源装置100よりも出力電圧Voutが正弦波状に近似し、レギュレータ143の損失が少なくなって高効率化を達成できる。
また、図3に示す回路構成において、交流電源からの入力電圧を直流電圧に変換する全波整流器などのAC−DC変換器を、入力端子101,102の前段に接続すれば、SC電源装置200をAC−ACコンバータに応用することができる。さらに、そうした構成のAC−ACコンバータから、DC−AC変換器であるレギュレータ143とフルブリッジ回路144を省略して、出力電圧V2を直接負荷抵抗RLに供給すれば、SC電源装置200をAC−DCコンバータに応用することができる。
図4は、別な変形例によるデジタル選択方式のSC電源装置200であって、DC−DCコンバータに応用した例を示している。同図において、ここでは図3に示した充放電回路213の他に、外部から直流入力電圧Vinが印加される入力端子171,172と、入力側のキャパシタC0と、スイッチS61,S62,…S66が付加される。
より具体的には、一方の入力端子171にはスイッチS65の一端が接続され、そのスイッチS65の他端が入力端子101とキャパシタC0の一端に接続される。同じように、他方の入力端子172にはスイッチS66の一端が接続され、そのスイッチS66の他端が入力端子102とキャパシタC0の他端に接続される。また、入力端子101とキャパシタC1,C2,C3の一端に、スイッチS61,S62,S63,S64の一端が接続され、これらのスイッチS61,S62,S63,S64の他端に入力端子171を接続して、キャパシタC0,C1,C2,C3,C4に関する充放電回路213を構成する。
図4に示すSC電源装置200では、図3の回路例で説明した各クロック「Φ1」,「Φ2」,「Φ3」,「Φ4」,「Φo」が出力されたときの動作に加えて、クロック「Φ4」とクロック「Φo」との間に、クロック「Φi」の動作が加わる。各キャパシタC1,C2,C3,C4の両端間電圧がV1/2,V1/4,V1/8,V1/8にそれぞれ保たれた後、当該クロック「Φi」が出力されると、スイッチS12,S13,S14,S21,S22,S23,S24,S31,S32,S33,S41,S61,S62,S63,S64,S65,S66のいずれかを選択的にオンにして、V1/8〜V1の範囲でキャパシタC0を充電する。一方、この回路例では、スイッチS65,S66をオンにすることで、入力端子171,172からの入力電圧Vinを、キャパシタC0の両端間に印加することもできる。したがって、この回路例では、入力端子101,102間の入力電圧V1を、キャパシタC1,C2,C3,C4の充電電圧若しくは外部からの入力電圧Vinの何れかで規定できる。なお、充放電回路213がV1/8〜2V1の範囲の出力電圧V2を出力することは上述した通りであり、図4に示すSC電源装置200を、昇降圧形のDC−DCコンバータとして動作させることができる。
次に、従来の回路方式との比較を図5〜図7にそれぞれ示す。図5は、従来から知られている直並列切換方式(非特許文献1)やリング方式(非特許文献2)のSC電源装置100と、本実施例で提案したデジタル選択方式のSC電源装置200において、キャパシタCの個数n(=1,2,3,…10)に対する出力のステップ段数Nstepと、出力電圧Vout=100Vrmsとしたときのステップ間の電圧差すなわち電圧キザミΔVstepと、必要なスイッチSの個数nsとをそれぞれ表で示している。また図6と図7は、キャパシタCの個数nを変化させたときのステップ段数Nstepと、スイッチSの個数nsを、それぞれグラフで示している。これらの各図からも明らかなように、本実施例におけるデジタル選択方式のSC電源装置200は、キャパシタCの個数nが多くなるに従って、出力のステップ段数Nstepが桁違いに増加することがわかる。
以上のように本実施例では、複数個のキャパシタCと複数個のスイッチSだけで構成され、各キャパシタC間の接続を各スイッチSで切り換えて、入力電圧V1を別な出力電圧V2に変換するSC電源装置200において、各スイッチSのオンオフを切り換えることにより、前記複数個のキャパシタCの中で、充電した複数のキャパシタCを直列接続し、この直列接続した各キャパシタCの電圧の和で、充電した複数のキャパシタCとは別のキャパシタCを充電するように、この別のキャパシタCを直列接続した複数のキャパシタCの両端間に接続して、入力電圧V1に2の累乗若しくは2の累乗分の1を掛け合わせた電圧で、個々のキャパシタCを異なる電圧値に充電し、当該個々のキャパシタCの充電電圧を単独に若しくは幾つかを加算して、前記出力電圧V2を生成するように構成している。
このようにすると、スイッチSの切り換えによって、個々のキャパシタCは同じ電圧値が充電されるのではなく、入力電圧V1の1,2,4,8,…,2n倍、若しくは1,1/2,1/4,1/8,…,1/2n倍のそれぞれ異なる電圧値が充電される。したがって、そこからスイッチSを別な状態に切り換えて、個々のキャパシタCの充電電圧を単独に若しくは幾つかを加算した出力電圧V2を生成すれば、従来に比べて少ない素子数で大きな昇降圧比を得ることができ、またより多くのステップ数の出力電圧V2を得ることができる。
また本実施例では、出力電圧V2が段階的に増減を繰り返すように充放電回路213を構成し、出力電圧V2を交流に変換するDC−AC変換器を備えている。
こうすることで、SC電源装置200をDC−ACコンバータとして機能させることができる。
また、交流電圧を直流の入力電圧V1に変換するAC−DC変換器を備えることで、SC電源装置200をAC−DCコンバータとして機能させることができる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲において種々の変形実施が可能である。実施例中の回路はあくまでも一例であって、同様の機能や動作を達成するものであれば、適宜改変して構わない。