JP5537986B2 - アモルファス酸化チタン分散液およびその製造方法 - Google Patents
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ドーパントを含む酸化チタン(ドープ酸化チタン)の膜を簡便に形成する方法の一つとして、ドープ酸化チタンの微粒子の分散液あるいはドープ酸化チタンの前駆体の溶液または分散液を基材表面に塗布し、その後、乾燥あるいはさらに必要に応じ焼成する、いわゆる塗布法がある。
しかしながら、かかる特許文献1のアモルファス型過酸化チタン粒子の分散液には、通常、その調製過程で使用される塩基性溶液に由来するアンモニウムイオン等の陽イオンが不純物として含まれており、これが、分散液の保存安定性を悪化させたり、最終的に形成される膜の物性を損ねたりする原因となるおそれがあった。
しかしながら、特許文献2記載の方法で得られた酸化チタンゾルは、作製直後には良好に塗布作業に供することができるものの、保存安定性が充分ではなく、例えば室温で保管しておくと、液の粘度が経時的に上昇し、数日後には流動性を失ったゲル化状態となり、塗布が困難になることがあった。
(1)ニオブまたはタンタルがドープされたアモルファス酸化チタンのナノ粒子が分散媒中に分散してなる分散液の製造方法であって、チタンアルコキシドとニオブアルコキシドまたはタンタルアルコキシドとを含む前駆体液を該前駆体液中の金属原子の総モル数に対し2倍モル以上の水の存在下で加水分解することにより、ニオブまたはタンタルがドープされたアモルファス酸化チタンを含有するゲルを得、このゲルを分散媒中に分散させることを特徴とするアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
(2)前記加水分解した後、−20℃以上の温度で所定時間エージング処理を施して、ニオブまたはタンタルがドープされたアモルファス酸化チタンを含有するゲルを得る、前記(1)に記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
(3)前記前駆体液中のチタンアルコキシドとニオブアルコキシドまたはタンタルアルコキシドとの合計濃度が0.1モル/L以上である、前記(1)又は(2)に記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
(4)前記ゲルを分散させる分散媒として、該ゲルを得る際に用いた溶媒とは異なる溶媒を用いる、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
(5)得られる分散液中のアモルファス酸化チタンのナノ粒子の平均粒子径が3〜20nmである、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
(6)得られる分散液の固形分濃度が0.01〜30重量%である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
(7)得られる分散液は、液性が中性であり、かつ分散安定化剤を含有していない、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法によって得られたアモルファス酸化チタン分散液。
前記タンタルアルコキシドとしては、例えば、ペンタメトキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、ペンタ−i−プロポキシタンタル、ペンタ−n−プロポキシタンタル、ペンタ−i−ブトキシタンタル、ペンタ−n−ブトキシタンタル、ペンタ−sec−ブトキシタンタル、ペンタ−t−ブトキシタンタル等を用いることができる。タンタルアルコキシドは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記チタンアルコキシド、前記ニオブアルコキシドおよび前記タンタルアルコキシドは、いずれも、水分と接触すると直ちに反応する不安定な物質なので、乾燥(低湿度)雰囲気で扱うことが好ましい。
前記前駆体液に含まれるチタンアルコキシドとニオブアルコキシドおよび/またはタンタルアルコキシドとのモル比(すなわち、Ti:Nbおよび/またはTaの金属原子比)は、特に制限されないが、例えば、透明なコーティング膜に適用する場合、透明性の観点からは、Ti:Nbおよび/またはTa=99.9:0.1〜60:40であるのがよい。
前記前駆体液を加水分解するに際しては、前駆体液中の金属原子の総モル数に対し2倍モル以上、好ましくは2.5〜50倍モルの水の存在下で行うことが重要である。水の量が前記範囲よりも少ないと、加水分解による生成物は、ゲルにはならず、液状で得られることになり、これをそのまま塗布液として用いると、例えば数日間で保存安定性に問題が生じることになり、良好に塗布することが困難になる。また、水の量が前記範囲よりも少ないと、後述するエージング処理を行う際の所要時間が長くなり、生産性に欠けコスト的に不利になり、工業的価値が低下する。
一般的に金属アルコキシドは室温では加水分解液と共存すると瞬時に加水分解・重縮合反応が進行する。よって、本発明では、前記前駆体液中の金属アルコキシドの加水分解反応開始温度未満の温度で加水分解液を添加し、攪拌して均一に混合した後に加水分解開始反応温度以上に昇温し、加水分解・重縮合反応を進行させる。
前記加水分解液を添加する際の前記前駆体液の温度は、特に制限されないが、好ましくは−196〜0℃、より好ましくは−30〜0℃の範囲であるのがよい。加水分解を行う際の温度が前記範囲よりも高いと、前記加水分解液を添加した瞬間に添加部近傍のみで不均一に金属アルコキシドの加水分解・重合反応が起こり、その結果、得られる粒子の粒径分布が広くなるおそれがあり、一方、前記範囲よりも低いと、冷却するのに時間とコストがかかり、生産性の低下を招くおそれがある。
前記エージング処理とは、−20℃以上の温度で、ニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンを、所定時間、ガラス容器等の密閉容器中で放置することである。このとき、エージング時間は、酸化チタンがアモルファスの状態を保持する範囲(換言すれば、酸化チタンが結晶化しない範囲)に留めておく。
前記エージング処理の処理時間は、処理温度等に応じて適宜設定されるものであるが、通常、10分間〜30日間、好ましくは30分間〜10日間の範囲で設定される。
なお、前記エージング処理を施すにあたり、加水分解直後の液温をエージング処理の処理温度まで昇温する際には、0.5℃/分程度の昇温速度で行うのがよい。
前記ゲルを分散させる分散媒としては、ゲルの種類や得られる分散液の用途等に応じて適宜選択すればよく、特に制限されないが、例えば、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等)、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン、アセトン等)等の有機溶媒や、水を用いることができる。これら分散媒は、1種のみを用いてもよいし、相溶性のある2種以上を併用してもよい。
かくして分散させた分散液中のアモルファスのドープ酸化チタン粒子は、単分散している状態でもよいし、一次粒子が凝集している二次粒子の状態でもよい。
本発明の製造方法により得られる分散液は、固形分濃度が0.01〜30重量%であることが好ましい。分散液の固形分濃度が0.01重量%未満であると、該分散液を塗布して膜を形成する際に1回の塗装で形成できる膜厚が小さくなるので、生産性の点で不利となり、一方、30重量%を超えると、流動性が低下する傾向があり、該分散液を均一に塗布することが困難になるおそれがある。
また、上述したアモルファスの酸化チタン薄膜は、さらに結晶化温度(例えばアナターゼ型であれば400℃以上)以上の温度で熱処理することにより、アナターゼ型あるいはルチル型の結晶化酸化チタン薄膜とすることもできる。このように結晶化させた酸化チタン薄膜は、光触媒膜や導電性膜として優れた機能を発揮するものとなる。
なお、光触媒材料の用途において有機系基材を用いる場合には、分散液により形成される膜と基材との間に、光触媒ブロック層としてプライマー層を設けることが望ましい。
ニオブペンタエトキシド(Nb(OC2H5)5)と、溶媒である2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)とを乾燥窒素雰囲気中にて混合し、次いで、得られた混合物にチタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4)を加えて攪拌することにより、前駆体液を調製した。このとき、ニオブペンタエトキシド、チタンテトライソプロポキシドおよび2−メトキシエタノールの使用量は、前駆体液中のTiとNbとの金属原子比(モル比)が表1に示す比率になり、かつ金属アルコキシド濃度(ニオブペンタエトキシドとチタンテトライソプロポキシドとの合計濃度)が表1に示す値になるように、決定した。
次いで、上記で得られたゲルを分散媒(2−メトキシエタノール))中に、表1に示す固形分濃度となるように投入し、超音波照射することにより分散させて、本発明の分散液を得た。
<密着性試験>
得られた分散液を、透明基材(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上にドライ膜厚200nmとなるようにスピンコータで1回塗布し、100℃で10分間加熱することにより分散媒を揮散させて、基板上に塗膜を形成した。この塗膜を用いてJIS−K5400に準じた碁盤目試験(隙間間隔1mm)を行い、下記の基準で評価した。
◎:残ったマス目数が100個
○:残ったマス目数が90〜99個
△:残ったマス目数が50〜89個
×:残ったマス目数が0〜49個
これらの結果から、本発明の分散液は良好な分散安定性を有していることが分かった。
ニオブペンタエトキシド(Nb(OC2H5)5)と、溶媒である2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)とを乾燥窒素雰囲気中にて混合し、次いで、得られた混合物にチタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4)を加えて攪拌することにより、前駆体液を調製した。このとき、ニオブペンタエトキシド、チタンテトライソプロポキシドおよび2−メトキシエタノールの使用量は、前駆体液中のTiとNbとの金属原子比(モル比)が表1に示す比率になり、かつ金属アルコキシド濃度(ニオブペンタエトキシドとチタンテトライソプロポキシドとの合計濃度)が表1に示す値になるように、決定した。
次いで、上記で得られたゲルを分散媒(2−メトキシエタノール)中に、表1に示す固形分濃度となるように投入し、超音波照射することにより分散させて、比較用の分散液を得た。
得られた分散液の密着性を実施例1〜4と同様にして評価した。結果を表1に示す。
実施例1で得られた分散液(アモルファスのニオブドープ酸化チタン粒子の分散液)と、比較例1で得られた分散液(アナターゼ型のニオブドープ酸化チタン粒子の分散液)とを、実施例1:比較例1=2:1(重量比)の割合で混合し、得られた混合物を本発明の分散液とした。
得られた分散液の密着性を実施例1〜4と同様にして評価したところ、残ったマス目数は100個であり、評価は「◎」であった。
ニオブペンタエトキシド(Nb(OC2H5)5)と、溶媒である2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)とを乾燥窒素雰囲気中にて混合し、次いで、得られた混合物にチタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4)を加えて攪拌することにより、前駆体液を調製した。このとき、ニオブペンタエトキシド、チタンテトライソプロポキシドおよび2−メトキシエタノールの使用量は、前駆体液中のTiとNbとの金属原子比(モル比)が表2に示す値になり、かつ金属アルコキシド濃度(ニオブペンタエトキシドとチタンテトライソプロポキシドとの合計濃度)が表2に示す値になるように、決定した。
次いで、上記で得られたゲルを分散媒である2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)中に、それぞれ表2に示す固形分濃度となるように投入し、超音波照射することにより分散させて、アモルファスのニオブドープ酸化チタン粒子の分散液を得た。
ニオブペンタエトキシド(Nb(OC2H5)5)と、溶媒である2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)とを乾燥窒素雰囲気中にて混合し、次いで、得られた混合物にチタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4)を加えて攪拌することにより、前駆体液を調製した。このとき、ニオブペンタエトキシド、チタンテトライソプロポキシドおよび2−メトキシエタノールの使用量は、前駆体液中のTiとNbとの金属原子比(モル比)が表2に示す値になり、かつ金属アルコキシド濃度(ニオブペンタエトキシドとチタンテトライソプロポキシドとの合計濃度)が表2に示す値になるように、決定した。
次いで、上記で得られたゲルを分散媒である2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)中、表2に示す固形分濃度となるように投入し、超音波照射することにより分散させて、ニオブドープアモルファス酸化チタン粒子の分散液を得た。
ニオブペンタエトキシド(Nb(OC2H5)5)と、溶媒である2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)とを乾燥窒素雰囲気中にて混合し、次いで、得られた混合物にチタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4)を加えて攪拌することにより、前駆体液を調製した。このとき、ニオブペンタエトキシド、チタンテトライソプロポキシドおよび2−メトキシエタノールの使用量は、前駆体液中のTiとNbとの金属原子比(モル比)が、比較例2ではTi:Nb=0.94:0.06(モル比)、比較例3ではTi:Nb=0.90:0.10(モル比)になり、かつ金属アルコキシド濃度(ニオブペンタエトキシドとチタンテトライソプロポキシドとの合計濃度)が11.3重量%になるように、決定した。
なお、比較例2で得られた分散液の固形分濃度は9.3重量%であり、比較例3で得られた分散液の固形分濃度は7.5重量%であった。
Claims (8)
- ニオブまたはタンタルがドープされたアモルファス酸化チタンのナノ粒子が分散媒中に分散してなる分散液の製造方法であって、
チタンアルコキシドとニオブアルコキシドまたはタンタルアルコキシドとを含む前駆体液を該前駆体液中の金属原子の総モル数に対し2倍モル以上の水の存在下で加水分解することにより、ニオブまたはタンタルがドープされたアモルファス酸化チタンを含有するゲルを得、このゲルを分散媒中に分散させることを特徴とするアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。 - 前記加水分解した後、−20℃以上の温度で所定時間エージング処理を施して、ニオブまたはタンタルがドープされたアモルファス酸化チタンを含有するゲルを得る、請求項1に記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
- 前記前駆体液中のチタンアルコキシドとニオブアルコキシドまたはタンタルアルコキシドとの合計濃度が0.1モル/L以上である、請求項1または2に記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
- 前記ゲルを分散させる分散媒として、該ゲルを得る際に用いた溶媒とは異なる溶媒を用いる、請求項1〜3のいずれかに記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
- 得られる分散液中のアモルファス酸化チタンのナノ粒子の平均粒子径が3〜100nmである、請求項1〜4のいずれかに記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
- 得られる分散液の固形分濃度が0.01〜30重量%である、請求項1〜5のいずれかに記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
- 得られる分散液は、液性が中性であり、かつ分散安定化剤を含有していない、請求項1〜6のいずれかに記載のアモルファス酸化チタン分散液の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法によって得られたアモルファス酸化チタン分散液。
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