JP5536503B2 - 平板型固体酸化物形燃料電池モジュールおよびその運転方法 - Google Patents

平板型固体酸化物形燃料電池モジュールおよびその運転方法 Download PDF

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Description

本発明は、平板型固体酸化物形燃料電池モジュールおよびその運転方法に関する。
平板型の固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell、以下、平板型SOFCともいう)モジュールは、平板型の固体酸化物からなる電解質層と、この電解質層の表裏面にそれぞれ形成した空気極および燃料極とからなる平板型の単セルを備え、燃料極に燃料ガスを供給し、空気極に酸化剤ガスを供給することにより発電を行なうようにした燃料電池である。このような平板型SOFCモジュールは、他の燃料電池に比べて発電効率が高く、また作動温度(700°〜1000℃)が高いため高温の熱を利用することができるという利点を有している(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
図10に、従来の平板型SOFCモジュールを示す。同図において、1は1枚の単セルと複数枚のセパレータ等で構成される発電ユニット、2は発電ユニット1を複数、例えば8枚積層して電気的に直列に接続することにより形成された平板型SOFCスタック(以下、発電部という)である。また、3、4は発電部2の上下面を挟持する金属製のトッププレートおよびベースプレート、5は発電部2を収納する断熱容器、6は発電部2を加圧、シールする荷重機構で、これら部材によって平板型SOFCモジュール7を構成し、発電部2に燃料ガスと酸化剤ガスを供給することにより発電を行なうようにしている。
荷重機構6は、トッププレート3の上方に配置された押圧板8と、トッププレート3と押圧板8との間に介在された加圧手段9とを備えている。加圧手段9としては、金属酸化物を高温で熱処理して焼き固めた高温仕様に耐え得るばね、言い換えればセラミックス製の圧縮コイルばね(以下、セラミックスばねという)が用いられ、その弾撥力でトッププレート3を発電部2に押し付けることにより、各発電ユニット1のセル間の密着度を高め(常温では隙間だらけ)、接続部分での電力の伝達損失を少なくしている。なお、加圧手段として用いるばねは、上記金属酸化物のほか、非金属酸化物または非酸化物の材質も使用できる。
押圧板8は、ベースプレート4上に立設した複数本のボルト10の上部に上下動自在に取り付けられ、ナット11によってセラミックスばね9に押し付けられている。荷重機構6によって発電部2に掛ける荷重は、ナット11を回転させて押圧板8の高さを調整しセラミックスばね9の圧縮量を変えることにより自由に調整することができる。
特開2006−339035号公報
S.Sugita,H.Arai,Y.Yoshida,H.Orui,and M.Arakawa: "Anode-supported planar SOFC stack development at NTT", ECS Transactions,5(2007)491-497.
図10に示す従来の平板型SOFCモジュール7においては、単一の荷重機構6でSOFCモジュール7の初期還元運転および通常運転を行うと、両動作間の温度差によって荷重機構6を構成する部材の劣化が生じるとともに、初期還元時の荷重を通常運転時の荷重に変更する際に生じる振動によって発電ユニット1が劣化するという問題があった。すなわち、平板型SOFCモジュール7の発電温度である700〜1000℃という高温の雰囲気下では、金属の強度は室温付近の温度の場合と比べて著しく低下する。このため、平板型SOFCモジュール7の性能を高めるために大きな荷重を掛けると、ボルト10が破断するおそれがある。ボルト10が破断すると、その破片が断熱容器5に突き刺さったりして発電システムが破壊されてしまうおそれがある。したがって、初期還元運転を行った後は、室温まで降温した後に、ナット11を緩めて押圧板8の位置を調整することにより、発電部2に掛けていた初期還元時の荷重を通常運転時の荷重に下げる必要がある。しかし、室温においてナット11を緩める作業は、セラミックスばね9が伸長して押圧板8を押し上げるため振動が発生し、その振動によって発電部2を構成する部品の位置がずれて平板型SOFCモジュール7の発電特性を低下させてしまう。
このように、従来の平板型SOFCモジュール7では、初期還元後に大荷重によるボルト10の破断を避けるために、荷重機構6による荷重を下げる作業を行うと、その作業にともない発生する振動が平板型SOFCモジュール7の性能を低下させる可能性があるという問題があった。
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、初期還元時に発電性能を十分に引き出すために必要な荷重を発電部に掛けた後に、その荷重を昇降温時に発電性能を劣化させないために、必要にして、かつ長時間発電しても部品が破損しない値まで下げることができ、発電性能を向上させるようにした平板型酸化物形燃料電池モジュールおよびその運転方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明に係わる平板型酸化物形燃料電池モジュールは、平板型固体酸化物形燃料電池セルを有する発電ユニットを複数枚積層して電気的に接続してなる発電部と、初期還元後に長時間通常運転しても部品が破損しない荷重を前記発電部に掛ける第1の荷重機構と、前記第1の荷重機構に荷重を掛けることによって、前記第1の荷重機構により荷重が掛けられている前記発電部にさらに間接的に付加荷重を掛け、前記発電部に掛かる荷重を、初期還元時に発電性能を十分に引き出すために必要な荷重とする第2の荷重機構とを備えたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明に係わる平板型酸化物形燃料電池モジュールは、請求項1記載の発明において、前記発電部に所定の荷重以上の荷重が掛からないようにする荷重遮断手段を備えているものである。
請求項3に記載の発明に係わる平板型酸化物形燃料電池モジュールは、請求項1または2記載の発明において、前記第1の荷重機構の荷重を調整する第1の荷重調整手段と、前記第2の荷重機構の荷重を調整する第2の荷重調整手段とを有することを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明に係わる平板型酸化物形燃料電池モジュールは、請求項1〜3のいずれかに記載の上記発明において、前記第1の荷重機構が支持部材に上下動自在に配設され発電部の上方に位置する第1の押圧板と、前記第1の押圧板と前記発電部との間に介在された第1の加圧手段とを備え、前記第2の荷重機構が前記第1の押圧板の上方に上下動自在に配設された第2の押圧板と、前記第2の押圧板と前記第1の押圧板との間に介在された第2の加圧手段とを備えていることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明に係わる平板型酸化物形燃料電池モジュールは、請求項4に記載の発明において、前記第1の荷重機構の第1の加圧手段と前記第2の荷重機構の第2の加圧手段が、それぞれセラミックス製の圧縮コイルばねからなることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明に係わる平板型酸化物形燃料電池モジュールは、請求項4に記載の発明において、前記第1の荷重機構の第1の加圧手段がセラミックス製の圧縮コイルばねからなり、前記第2の荷重機構の第2の加圧手段がガスが供給される伸縮自在な袋体であることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明に係わる平板型酸化物形燃料電池モジュールは、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記第1の荷重機構が、支持部材に上下動自在に配設され発電部の上方に位置する第1の押圧板と、前記第1の押圧板と前記発電部との間に介在された第1の加圧手段とを備え、前記第2の荷重機構が、前記第1の押圧板上に設置された荷重棒と、前記荷重棒に力を伝える荷重装置とを備えていることを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明に係わる平板型酸化物形燃料電池モジュールは、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記第1の荷重機構による面圧が0.12Kgf/cm2 〜0.24Kgf/cm2 で、前記第2の荷重機構による面圧が0.24Kgf/cm2 〜0.48Kgf/cm2 であることを特徴とするものである。
請求項9に記載の発明に係わる平板型酸化物形燃料電池モジュールの運転方法は、平板型固体酸化物形燃料電池セルを有する発電ユニットを複数枚積層して電気的に接続してなる発電部を備えた平板型燃料電池モジュールの初期還元運転時においては、第1の荷重機構によって、初期還元後に長時間通常運転しても部品が破損しない荷重を前記発電部に直接掛けるとともに、前記第1の荷重機構により荷重が掛けられている前記発電部に、第2の荷重機構によって前記第1の荷重機構に荷重を加えることによりさらに間接的に付加荷重を掛け、前記発電部に掛かる荷重を、初期還元時に発電性能を十分に引き出すために必要な荷重とし、初期還元後は前記第2の荷重機構を取り除き前記第1の荷重機構のみによって前記発電部に荷重を掛けて通常運転を行なうことを特徴とするものである。
請求項1〜9に記載の本発明によれば、第1の荷重機構による荷重を初期還元後の荷重に設定しておけば、初期還元運転後に第2の荷重機構を取り除いたとき、第1の荷重機構による荷重を何ら変更する必要がない。このため、荷重変更にともない振動が発生して部品が破損したりするといったおそれがなく、発電性能を向上させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、荷重遮断手段を備えているので、所定荷重以上の荷重を掛けるおそれがない。
請求項3に記載の発明によれば、荷重調整手段を備えているので、第1、第2の荷重機構による荷重を適宜調整することができる。
請求項8に記載の発明によれば、第1の荷重機構による面圧を0.12Kgf/cm2 〜0.24Kgf/cm2 としているので、通常運転時に第1の荷重機構を構成する部品等が破損するおそれがない。また、第2の荷重機構による面圧を0.24Kgf/cm2 〜0.48Kgf/cm2 としているので、初期還元運転を良好に行なうことができる。
本発明に係わる平板型SOFCモジュールの第1の実施の形態を示す断面図である。 発電ユニットの分解斜視図である。 燃料極支持型の単セルの側面図である。 初期還元時の荷重の影響を示す図である。 昇降温時の荷重の影響を示す図である。 本発明の第2の実施の形態を示す平板型SOFCモジュールの断面図である。 本発明の第3の実施の形態を示す平板型SOFCモジュールの断面図である。 本発明の第4の実施の形態を示す平板型SOFCモジュールの断面図である。 本発明の第5の実施の形態を示す平板型SOFCモジュールの断面図である。 従来の平板型SOFCモジュールの断面図である。
以下、図面に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、図10に示した構成部品と同一部品については、同一符号をもって示し、その説明を適宜省略する。
図1において、平板型SOFCモジュール20は、発電ユニット1を複数、例えば8枚積層して電気的に直列に接続してなる発電部2と、この発電部2に鉛直方向で下方に荷重を直接掛ける第1の荷重機構21と、この第1の荷重機構21に同じく鉛直方向で下方に荷重を掛けることによって発電部2に間接的に付加荷重を掛ける第2の荷重機構22と、これらの発電部2および第1、第2の荷重機構21、22を収納する断熱容器5とを備えている。
図2および図3において、発電ユニット1は、1枚の単セル25と、複数枚のセパレータセット26と、セルホルダー27等で構成されている。
単セル25は、平板型の固体酸化物からなる電解質層28と、この電解質層28の表裏面にそれぞれ形成した空気極29および燃料極30とからなり、燃料極支持型の単セルを形成している。
セパレータセット26は、それぞれ所定形状の溝31および穴32を有する、例えば4枚の金属製のセパレータ26A〜26Dとセルホルダー27を重ね合わせることにより構成されている。これらのセパレータ26A〜26Dとセルホルダー27は、単セル25を収納する空間と、空気極29に酸化剤ガスG1を供排出するガス経路と、燃料極30に燃料ガスG2を供排出するガス経路と、単セル25から電気を取り出す経路(いずれも図示せず)を形成している。
再び図1において、第1の荷重機構21は、第1のベースプレート4上に立設した複数本の第1のボルト(支持部材)10の上部に上下動自在に配設された第1の押圧板8と、トッププレート3と第1の押圧板8との間に弾装された加圧手段としての高温仕様に耐え得る第1のセラミックスばね9と、各第1のボルト10の上部にそれぞれ螺合された第1のナット(第1の荷重調整手段)11とを備えている。
第1の押圧板8には、第1のボルト10が貫通する挿通孔が形成されている。
第1のナット11は、第1の押圧板8を第1のセラミックスばね9に押し付けてその圧縮量を変えることにより第1の荷重機構21による荷重を調整する。
また、第1の荷重機構21は、第1のセラミックスばね9により給電部2に掛ける荷重が所定値以上にならないようにするストッパ(荷重遮断手段)35とを備え、このストッパ35を備えている点で図10に示した荷重機構6とは異なっている。
第1のセラミックスばね9は、自然状態において、ストッパ35の高さ寸法より長く、第1の押圧板8の下降によって徐々に圧縮されることにより、発電部2に荷重を掛け、第1の押圧板8がストッパ35の上面に当接すると、それ以上の圧縮が制限される。セラミックスばね9としては、2つ用いたが、これに限らず1つであってもよく、また2つ以上であってもよい。
ストッパ35は、円柱状に形成され、トッププレート3上に設置されている。また、ストッパ35は、高さが異なる複数のストッパが予め用意されており、第1の荷重機構21によって発電部2に掛ける荷重に応じた高さのストッパが選択的に使用される。ただし、これに限らず一定厚さ(例えば、1〜数mm)のストッパ片を発電部2に掛ける荷重に応じた枚数だけトッププレート3上に積層配置してストッパとしたり、あるいはボルトをトッププレート3上に高さ調整可能に設けてストッパとしてもよい。なお、ストッパ35の配置位置としては、第1のセラミックスばね9の内側に限らず、外側にこれを囲むように設置されるものであってもよい。
第1の荷重機構21によって発電部2に荷重を掛けるときは、第1のナット11を締め付けて第1の押圧板8を押し下げ、ストッパ35の上面に押し付ける。これにより、第1のセラミックスばね9は圧縮されてトッププレート3を押圧し発電部2に一定の荷重を掛ける。第1の荷重機構21による荷重は、ストッパ35の高さを変えることにより自由に変更することができる。なお、この荷重は、初期還元後に長時間通常運転して発電しても第1のボルト10等の部品が破損しない荷重とされる。
第2の荷重機構22は、第2のベースプレート40上に立設した複数本からなる第2のボルト(支持部材)41の上部に上下動自在に配設された第2の押圧板42と、第1の押圧板8と第2の押圧板42との間に弾装された高温仕様に耐え得る第2のセラミックスばね43と、各第2のボルト41の上部にそれぞれ螺合され第2の押圧板42を第2のセラミックスばね43に押し付けて第2のセラミックスばね43の圧縮量を変えることにより第2の荷重機構22の荷重を調整する第2のナット(第2の荷重調整手段)44とを備えている。また、第2の荷重機構22は、初期還元運転時以後は不要となり取り除かれるので、発電部2に対して取外し可能に設けられている。
第2の押圧板42には、第2のボルト41が貫通する挿通孔が形成されている。
第2の荷重機構22によって発電部2に荷重を掛けるときは、第2のナット44を締め付けて第2の押圧板42を押し下げ、第2のセラミックスばね43を圧縮させる。これにより第2のセラミックスばね43による荷重が第1の押圧板8に加えられ、当該荷重が第1のセラミックスばね9による荷重を超えると第1の押圧板8を押し下げ、第2のセラミックスばね43による荷重が付加荷重として発電部2に加えられる。この付加荷重は、第2のナット44の位置を調整することにより自由に変えることができる。なお、第1、第2の荷重機構21、22によって発電部2に掛けられる荷重は、初期還元時の荷重とされる。
ここで、本実施の形態においては、第2の荷重機構22に荷重を制限し発電部2に所定以上の付加荷重が掛からないようにする荷重遮断手段を設けていないが、第1の荷重機構21のストッパ35と同様なストッパを設け、第2のセラミックスばね43による荷重を制限するようにしてもよい。
また、第2のセラミックスばね43として1つ用いたが、これに限らず1つ以上であってもよい。さらに、第1のベースプレート4の下にこれより大きい第2のベースプレート40を配置し、この第2のベースプレート40上に第2のボルト41を立設したが、第1のベースプレート4を大きく形成して第1、第2のボルト10、41を立設すれば、第2のベースプレート40を省略することができる。
このような平板型SOFCモジュール20は、定常運転を想定する温度(800〜1000℃)に昇温した後に、アノードの還元を行ってから発電を開始する。一度還元した単セル25は、アノード側を還元雰囲気に保ち続ければ、再度酸化されることはない。すなわち、還元作業が必要なのは、最初に昇温した時のみである。アノードを還元すると、アノードの厚さが減少して単セル25が薄くなる。このため、初期の還元で、発電部2の高さは、単セル25自体の痩せや、柔らかい集電部材の潰れや、シール材(ガラス)の溶融等により低くなる。
次に、本発明の平板型SOFCモジュール20の運転方法について説明する。
平板型SOFCモジュール20の初期還元運転時には、第1、第2の荷重機構21、22によって大きな荷重を掛ける必要がある。大きな荷重を掛ける場合は、第1のナット11により第1の押圧板8を押し下げてストッパ35に押し付け、第1のセラミックスばね9を圧縮させる。これにより、第1の荷重機構21による荷重が発電部2に掛けられる。この第1の荷重機構21による荷重は、初期還元後の通常運転時と同じ荷重に設定することが望ましい。また、第2のナット44により第2の押圧板42を押し下げて第2のセラミックスばね43を圧縮させることにより、第2の荷重機構22による付加荷重を第1の荷重機構21を介して発電部2に間接的に掛け、発電部2に掛ける荷重を初期還元時の荷重にする。そして、この状態で初期還元運転を行なう。
初期還元運転が終了した後も大きな荷重を掛け続けると、第1のボルト10が破断して、発電装置を破壊するおそれがある。そのため初期還元後は、第2のベースプレート40、第2のボルト41、第2の押圧板42、第2のセラミックスばね43および第2のナット44を取り除く。すなわち、第2の荷重機構22を取り除き、第1の荷重機構21のみによって引き続き荷重を掛け続け、通常運転を行なう。
本発明の平板型SOFCモジュール20の利点について説明する。
本発明の平板型SOFCモジュール20では、第2の荷重機構22を取り外す作業を行うとき、第1の荷重機構21の荷重は何ら変更せず、そのままにしておく。このため、その構成部品が位置ずれしたり振動したりするおそれがなく、平板型SOFCモジュール20の性能の低下を低減することができる。また、第1の荷重機構21によって発電部2に掛け続ける荷重が適切であれば、昇降温時における部品の位置ずれも抑制することができ、平板型SOFCモジュール20の性能を向上させることができる。
初期還元時に必要な荷重、および昇降温時に必要な荷重について、以下に説明する。
初期還元時に第2の荷重機構22によって発電部2に掛ける付加荷重は、面圧が0.48Kgf/cm2 以上とすることが望ましい。この値は、以下の実験より求めた。平板型SOFCモジュール20(発電ユニット1の積層数1)を電気炉内に設置して発電性能試験を行った。発電部2の荷重機構は、電気炉を開閉することなく外部から自由に荷重を制御できるものを用いた。
平板型SOFCモジュール20に0Kgf、60Kgf、および120Kgfの荷重を掛けながらSOFCモジュール20を800℃まで昇温し、荷重を変化させずに初期還元から初期通電を行った。
ここで、スタックの面積が249.5cm2 として、荷重が120Kgfに対してスタックに掛かる面圧は、0.48Kgf/cm2 (0.047MPa)、荷重60Kgfに対してスタックに掛かる面圧は0.24Kgf/cm2(0.024MPa)、荷重30Kgfに対してスタックに掛かる面圧は0.12Kgf/cm2 (0.012MPa)、荷重15Kgfに対してスタックに掛かる面圧は0.06Kgf/cm2 (0.006MPa)である。
酸化剤ガスG1としては空気を用い、燃料ガスG2としては水素を用いた。水素および空気の供給量は、電流密度が0.28Acm-2における燃料利用率、および酸素利用率が、それぞれ、60%、15%となるように決定した。
図4に、初期還元運転時に第2の荷重機構22によって荷重を掛けなかった場合と、60kgfおよび120Kgfの荷重を掛けた場合の電流密度と電圧の関係を示す。
□が荷重を掛けなかった場合(荷重0Kgf)の実験結果であり、△が60Kgfの荷重を掛けた場合、そして、○が120kgfの荷重を掛けた場合の実験結果である。60Kgf、および120kgfの荷重を掛けた場合の性能は明らかに荷重を掛けなかった場合よりも高い。また、0.28Acm-2における電圧は、120kgfの場合の方が60kgfの場合よりも高いが、その差は小さく3mV程度であった。すなわち、荷重が120Kgf以下の場合は、荷重を掛けるほど発電性能は上昇するが、荷重が60Kgfと120Kgfの場合の発電性能の差は小さく、第2の荷重機構22によって荷重を120Kgfより大きくしても発電性能が大幅に上昇することはない。つまり、第2の荷重機構22による荷重を60Kgf〜120Kgfとすれば、SOFCモジュール20の性能は、ほぼ引き出すことができているといえる。以上の実験結果により、第2の荷重機構22によって発電部2に掛ける荷重は60Kgf〜120Kgfとすることが望ましい。
第1の荷重機構21によって発電部2に掛ける荷重は、30Kgfから60Kgfの範囲とすることが望ましい。まず、荷重を30Kgf以上とするべき理由について説明する。この値は、以下の実験より求めた。
平板型SOFCモジュール20(発電ユニット1の積層数1)を電気炉内に設置して発電性能試験を行った。発電部2の荷重機構は、電気炉を開閉することなく外部から自由に荷重を制御できるものを用いた。
平板型SOFCモジュール20に120Kgfの荷重を掛けながらSOFCモジュール20を800℃まで昇温し、120Kgfの荷重のまま、初期還元から初期通電を行った。燃料ガスG2には水素を用い、酸化剤ガスG1には空気を用いた。水素および空気の供給量は、電流密度が0.53Acm-2における燃料利用率および酸素利用率が、それぞれ60%、30%となるように設定した。初期通電後、0.53Acm-2で電圧の経時変化を100時間程度観測した。その後、120Kgfの荷重を掛けながら降温し、室温まで冷却した後に、荷重を0Kgf、15Kgf、30Kgf、および120Kgf(変化なし)とした。すなわち、試験は4ケース行った。室温で荷重を決定した後に、昇温して0.53Acm-2まで通電し、一定時間放置した後に降温するという作業を繰り返した。
試験結果を図5に示す。初期通電後の荷重を120Kgf、30Kgf、15Kgf、および0Kgfとした場合の結果が、それぞれ、一、△、□、および○である。横軸は時間であり、縦軸は0.53Acm-2通電時の初期電圧からの変化である。120Kgfおよび30Kgfの場合は、昇降温を行った直後に若干の性能の低下が見られるが、放置していると性能は回復する。これに対し、15Kgfおよび0Kgfの場合は、昇降温を行った直後に大きく性能が低下し、放置しても性能は回復しきらない。以上の実験結果により、昇降温する際の第1の荷重機構21によって発電部2に掛ける荷重は、30Kgf以上とすることが望ましい。
次いで、荷重を60Kgf以下とするべき理由について説明する。この値は、以下の実験より求めた。
第1のボルト10に120Kgfの荷重を掛けたまま800℃下に放置した。その結果、数百時間で第1のボルト10は破断した。これに対し、第1のボルト10に60Kgfの荷重を掛けたまま800℃で放置しても、第1のボルト10には2000時間以上顕著な変化が見られなかった。以上の実験結果により、荷重は60Kgf以下にすることが望ましい。
使用したボルト材質と寸法、ボルトに掛かる応力の関係は以下の通りである。
材質:SUS430
寸法:M10
応力:51.7Kgf/cm2(120Kgf時)、25.9Kgf/cm2(60Kgf時)
(M10 有効断面積:0.58cm2、ボルト:4本)
図6は、本発明の第2の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、ベースプレート4上に立設した複数本のボルト10に第1の荷重機構21の第1の押圧板8と第2の荷重機構22の第2の押圧板42をそれぞれ上下動自在に配設した点が図1に示す第1の実施の形態の平板型SOFCモジュール20と異なり、その他の構成、および第1、第2の荷重機構21、22によって掛ける荷重は略同一である。すなわち、ボルト10を第1、第2の荷重機構21、22の第1、第2の押圧板8、42を共通に上下動自在に支持する支持部材として用いたものであり、これによって図1に示した第2のベースプレート40および第2のボルト41を省略することができ、また第1、第2の押圧板8、42を同一の大きさに形成することができる。
図7は、本発明の第3の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、第2の荷重機構22として、ガス圧を利用して第1の押圧板8に付加荷重を掛けるようにしたものである。このため、第2の荷重機構22は、セラミックスばね43の代わりに第1の押圧板8と第2の押圧板42との間に介在された伸縮自在で高温仕様に耐え得る金属製の袋体(加圧手段)45を備え、この袋体45をガス供給管46を介して供給されるガスによって膨張させることにより第1の押圧板8に所定の荷重を掛けるようにしている。第2の荷重機構22による荷重は、袋体45に供給するガスのガス圧を調整することによって制御することができる。なお、その他の構成および第1、第2の荷重機構21、22によって掛ける荷重は、上記した第1または第2の実施の形態と略同一である。
図8は、本発明の第4の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、第2の実施の形態と同様に第1、第2の加圧機構21、22の第1、第2の押圧板8、42をボルト10にそれぞれ上下動自在に配設するとともに、第2の加圧機構22の加圧手段として図7に示す第3の実施の形態と同様に袋体45を用いたものである。なお、その他の構成および第1、第2の荷重機構21、22によって掛ける荷重は、上記した第1、第2または第3の実施の形態と略同一である。
このような構造においても、上記した第1〜第3の実施の形態の平板型SOFCモジュール20と同様に発電部2に所望の荷重を掛けることができる。
図9は、本発明の第5の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、第2の荷重機構22を、第1の押圧板8に付加荷重を掛ける荷重棒(加圧手段)51と、この荷重棒51に鉛直方向で下方への力を伝える荷重装置52とで構成し、荷重棒51の上端部と荷重装置52を断熱容器5の外部に突出させることにより、外部から第1の押圧板8に対して付加荷重を掛けるようにしている。荷重棒51による第1の押圧板8に対する荷重は、荷重装置41が荷重棒51を押す力を変えることにより調整することができる。なお、その他の構成および第1、第2の荷重機構21、22によって掛ける荷重は、上記した第1、第2、第3または第4の実施の形態と略同一である。
このような構成においても、上記した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
本発明においては、燃料極30に十分な強度を持たせた燃料極支持型の単セル25を用いた例を示したが、これに限らず十分な強度を有する平板型固体電解質28の表裏面に空気極29、燃料極30をそれぞれ配置した電解質支持型の単セルまたは空気極29に十分な強度を持たせた空気極支持型の単セルを用いてもよい。
1…発電ユニット、2…発電部、5…断熱容器、8…第1の押圧板、9…セラミックスばね(加圧手段)、10…ボルト、11…ナット、20…平板型SOFCモジュール、21…第1の加圧機構、22…第2の加圧機構、25…単セル、35…ストッパ(荷重遮断手段)、41…ボルト、42…第2の押圧板、43…セラミックスばね(加圧手段)、44…ナット、45…袋体(加圧手段)、51…荷重棒(加圧手段)、52…荷重装置。

Claims (9)

  1. 平板型固体酸化物形燃料電池セルを有する発電ユニットを複数枚積層して電気的に接続してなる発電部と、
    初期還元後に長時間通常運転しても部品が破損しない荷重を前記発電部に掛ける第1の荷重機構と、
    前記第1の荷重機構に荷重を掛けることによって、前記第1の荷重機構により荷重が掛けられている前記発電部にさらに間接的に付加荷重を掛け、前記発電部に掛かる荷重を、初期還元時に発電性能を十分に引き出すために必要な荷重とする第2の荷重機構と、
    を備えたことを特徴とする平板型固体酸化物形燃料電池モジュール。
  2. 請求項1記載の平板型固体酸化物形燃料電池モジュールにおいて、
    前記発電部に所定の荷重以上の荷重が掛からないようにする荷重遮断手段を備えたことを特徴とする平板型固体酸化物形燃料電池モジュール。
  3. 請求項1または2記載の平板型固体酸化物形燃料電池モジュールにおいて、
    前記第1の荷重機構による荷重を調整する第1の荷重調整手段と、前記第2の荷重機構による荷重を調整する第2の荷重調整手段とを有することを特徴とする平板型固体酸化物形燃料電池モジュール。
  4. 請求項1、2、3のうちのいずれか一項記載の平板型固体酸化物形燃料電池モジュールにおいて、
    前記第1の荷重機構は、支持部材に上下動自在に配設され発電部の上方に位置する第1の押圧板と、前記第1の押圧板と前記発電部との間に介在された第1の加圧手段とを備え、
    前記第2の荷重機構は、前記第1の押圧板の上方に上下動自在に配設された第2の押圧板と、前記第2の押圧板と前記第1の押圧板との間に介在された第2の加圧手段とを備えていることを特徴とする平板型固体酸化物形燃料電池モジュール。
  5. 請求項4項記載の平板型固体酸化物形燃料電池モジュールにおいて、
    前記第1の荷重機構の第1の加圧手段と前記第2の荷重機構の第2の加圧手段は、それぞれセラミックス製の圧縮コイルばねからなることを特徴とする平板型固体酸化物形燃料電池モジュール。
  6. 請求項4記載の平板型固体酸化物形燃料電池モジュールにおいて、
    前記第1の荷重機構の第1の加圧手段は、セラミックス製の圧縮コイルばねからなり、前記第2の荷重機構の第2の加圧手段は、ガスが供給される伸縮自在な袋体であることを特徴とする平板型固体酸化物形燃料電池モジュール。
  7. 請求項1、2、3のうちのいずれか一項記載の平板型固体酸化物形燃料電池モジュールにおいて、
    前記第1の荷重機構は、支持部材に上下動自在に配設され発電部の上方に位置する第1の押圧板と、前記第1の押圧板と前記発電部との間に介在された第1の加圧手段とを備え、
    前記第2の荷重機構は、前記第1の押圧板上に設置された荷重棒と、前記荷重棒に力を伝える荷重装置とを備えていることを特徴とする平板型固体酸化物形燃料電池モジュール。
  8. 請求項1〜7のうちのいずれか一項記載の平板型固体酸化物形燃料電池モジュールにおいて、
    前記第1の荷重機構による面圧が0.12Kgf/cm2 〜0.24Kgf/cm2 で、前記第2の荷重機構による面圧が0.24Kgf/cm2 〜0.48Kgf/cm2 であることを特徴とする平板型固体酸化物形燃料電池モジュール。
  9. 平板型固体酸化物形燃料電池セルを有する発電ユニットを複数枚積層して電気的に接続してなる発電部を備えた平板型燃料電池モジュールの初期還元運転時においては、第1の荷重機構によって、初期還元後に長時間通常運転しても部品が破損しない荷重を前記発電部に直接掛けるとともに、
    前記第1の荷重機構により荷重が掛けられている前記発電部に、第2の荷重機構によって前記第1の荷重機構に荷重を加えることによりさらに間接的に付加荷重を掛け、前記発電部に掛かる荷重を、初期還元時に発電性能を十分に引き出すために必要な荷重とし、
    初期還元後は前記第2の荷重機構を取り除き前記第1の荷重機構のみによって前記発電部に荷重を掛けて通常運転を行なうことを特徴とする平板型固体酸化物形燃料電池モジュールの運転方法。
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