JP5536063B2 - 流動床式ボイラの燃焼方法、及び流動床式ボイラ - Google Patents

流動床式ボイラの燃焼方法、及び流動床式ボイラ Download PDF

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Description

本発明は、ボイラ燃料としてアルカリ成分含有の燃料を用いた流動床式ボイラの燃焼方法、及び流動床式ボイラに関する。
流動床式ボイラ(「CFBボイラ」ともいう)へのバイオマス燃料の適用が求められている。バイオマス燃料のうち、モミ殻やEFB(Empty Fruit Bunches)などの低品位のバイオマス燃料はアルカリ成分を多く含み、このアルカリ成分は低融点の化合物を生じさせる。低融点の化合物は流動材(「ベット材」ともいう)に付着して流動不良を引き起こす可能性があるため、炉内温度を低融点の化合物が生じない程度、具体的には750℃以下に保持するなどの制御が必要であった(特許文献1参照)。
一方で、流動床式ボイラの流動材中に酸化マグネシウム(MgO)を添加すると、低融点の化合物の生成を抑えることができる。しかしながら、酸化マグネシウムを直接に流動材中に添加するということは一般的ではないため、通常は、炭酸マグネシウム(MgCO)や水酸化マグネシウム(Mg(OH))を供給していた。
特開2005−226930号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、流動不良回避のために炉内温度を低く抑える必要があってボイラの運転温度を低くせざるを得ず、エネルギー回収効率の向上が難しかった。また、炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムを流動材中に添加する方法では、酸化マグネシウムに分解される際に吸熱反応が生じたり、水が生成されたりしてエネルギー回収効率を低下させる虞があった。
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、アルカリ成分含有の燃料を用いる場合にも、エネルギー回収効率の向上と流動不良を防止とを両立できる流動床式ボイラの燃焼方法、及び流動床式ボイラを提供することを目的とする。
本発明者は、製錬スラグの一種であるフェロニッケルスラグに着目したところ、酸化マグネシウムが30%(重量パーセント濃度)程度含まれており、製錬スラグの有効利用を鋭意検討した結果、流動床式ボイラに添加すると流動不良を効果的に防止できるとの知見を得て、本発明を想到するに至った。
すなわち、本発明は、アルカリ成分含有の燃料を用いた流動床式ボイラの燃焼方法において、鉱石の製錬によって生じる製錬スラグを流動床式ボイラの流動材として投入し、流動中に燃料中のアルカリ成分と反応させて製錬スラグの表面に高融点のコーティングを形成させながら燃料を燃焼させることを特徴とする。
流動床式ボイラの燃料として、バイオマス燃料などのアルカリ成分含有の燃料を用いた場合には、カリウム(K)やナトリウム(Na)などのアルカリ成分と、流動材成分としての石英粒子との間の化学反応により、アルカリ珪酸塩が形成される。このアルカリ珪酸塩は、700℃程度で溶融する低融点化合物であり、流動材としての粒子表面に粘着層を形成し、流動材の流動を阻害する可能性がある。しかしながら、本発明では、アルカリ成分含有の燃料に加えて製錬スラグを流動床式ボイラに供給しており、製錬スラグ中には酸化マグネシウムが含まれているため、アルカリ珪酸塩の生成を抑制できる。従って、低融点化合物の生成に伴う流動不良発生の虞が低減し、流動床式ボイラの高温での運転が可能になる。その結果として、エネルギー回収効率の向上を図り易くなる。さらに、製錬スラグ中には炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムではなく酸化マグネシウムが含まれているため、その酸化マグネシウムがアルカリ珪酸塩の生成抑制に直接に寄与するので、炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムを添加する場合に比べて高いエネルギー回収効率を期待できる。さらに、鉱石の製錬によって生じる製錬スラグを流動床式ボイラの流動材として投入していので、製錬スラグを利用して流動床を形成でき、流動床の流動不良を偏り無く効果的に抑制できる。
また、本発明の流動床式ボイラは炉本体を備え、炉本体から排出された排ガスから分離された流動材に製錬スラグを供給し、燃料の供給とは別に、製錬スラグが供給された流動材を炉本体に戻してもよい。
さらに、流動床式ボイラは、炉本体と、炉本体から排出された排ガス中の流動材を排ガスから分離する分離部と、分離部で分離された流動材を炉本体からの逆流を防止しながら炉本体の内部に戻す循環シール部と、を備え、製錬スラグを循環シール部に供給すると好適である。循環シール部での流動不良を効果的に抑止することができる。
また、本発明は、アルカリ成分含有の燃料を用いた流動床式ボイラであって、燃料を燃焼する炉本体を備え、炉本体には、鉱石の製錬によって生じる製錬スラグが流動材として投入され、流動中に燃料中のアルカリ成分と反応させて製錬スラグの表面に高融点のコーティングを形成させながら燃料を燃焼させることを特徴とする。本発明によれば、アルカリ成分含有の燃料を用いる場合にも、エネルギー回収効率の向上と流動不良を防止とを両立できる。また、鉱石の製錬によって生じる製錬スラグが流動材として投入されているので、製錬スラグを利用して流動床を形成でき、流動床の流動不良を偏り無く効果的に抑制できる。
また、本発明の炉本体から排出された排ガスから分離された流動材には製錬スラグが供給され、燃料の供給とは別に、製錬スラグが供給された流動材が炉本体に戻されてもよい。
さらに、炉本体から排出された排ガス中の流動材を排ガスから分離する分離部と、分離部で分離された流動材を炉本体からの逆流を防止しながら炉本体の内部に戻す循環シール部と、を更に備え、製錬スラグは循環シール部に供給されると好適である。この構成によれば、循環シール部での流動不良を効果的に抑止することができる。
本発明によれば、流動床式ボイラの燃料としてアルカリ成分含有の燃料を用いる場合に、エネルギー回収効率の向上と流動不良を防止とを両立できる。
流動床式ボイラを模式的に示す説明図である。 アグロメの生成メカニズムを示す説明図であり、(a)はコーティング誘発メカニズムを示す図であり、(b)は、溶融誘発メカニズムを示す図である。 O−SiO状態図である。 MgO−SiO状態図である。 MgO−KO−SiO状態図である。 共晶コーティングCにMgOが作用する状態を模式的に示す説明図である。 フェロニッケルスラグである三つ試料の物性を示す図である。 フェロニッケルスラグを添加した場合における運転時間と、ベット温度およびベット差圧との関係を示すグラフである。 フェロニッケルスラグを添加しない(不添加)場合における運転時間と、ベット温度およびベット差圧との関係を示すグラフである。
以下、本発明に係る流動床式ボイラ、及び流動床式ボイラの燃焼方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示されるように、流動床式ボイラ(以下「CFBボイラ」という)1は、燃料を燃焼し、密閉容器内の水を加熱して蒸気を生成する燃焼塔(炉本体)3と、燃焼塔3で生じた燃焼ガス(以下、「排ガス」という)Gから固形物を分離するサイクロン分離器(分離部)5と、排ガスGの熱を熱回収する熱回収部7と、サイクロン分離器5で排ガスGから分離された飛灰、すなわち排ガスGから分離された流動材Fa(図2参照)を燃焼塔3の下部に戻す循環ライン9等を備えている。なお、熱回収部7には、過熱器などの熱交換チューブ等が配置されている。
燃焼塔3には、モミ殻やEFB(Empty Fruit Bunches)などのバイオマス燃料が投入される。この種のバイオマス燃料は、カリウムやナトリウムなどのアルカリ成分を多く含む低品位燃料である。さらに、燃焼塔3には、製錬スラグの一種であるフェロニッケルスラグが投入される。燃焼塔3には、石英粒子を主成分とする流動材Faが投入されており、この流動材Fa中に下部から空気が供給され、流動材Faが流動して流動床(以下「ベット」という)Fが形成される。ベットFの形成により、燃料の燃焼が促進される。燃焼の結果として生じる排ガスGは、流動材Faの一部を随伴しながら燃焼塔3内を上昇する。なお、本実施形態では、フェロニッケルスラグを流動材Fa中に添加する態様を説明するが、フェロニッケルスラグそのものを流動材Faとして利用することも可能である。
サイクロン分離器5は、燃焼塔3に隣接して配置されており、燃焼塔3から排出された排ガスG及び排ガスGに随伴された流動材Faを受け入れ、遠心分離作用によって排ガスGと流動材Faとを分離し、流動材Faは燃焼塔3に戻し、排ガスGは熱回収部7に送り込む。
サイクロン分離器5には、循環ライン9が接続されている。循環ライン9は、燃焼塔3の下部に接続された管路からなり、循環ライン9上にはループシール(循環シール部)9aが設けられている。ループシール9aは、燃焼塔3からの排ガスGの逆流を防止する設備であり、ループシール9a内には、サイクロン分離器5から送り込まれた流動材Faが蓄積され、流動材Faはループシール9aの出口のリターンシュート部9bから燃焼塔3内に投入される。
また、CFBボイラ1は、ループシール9a内に製錬スラグの一種であるフェロニッケルスラグを供給するための製錬スラグ供給部11を備えている。ループシール9a内にフェロニッケルスラグを供給することで、ループシール9a内での流動不良を効果的に抑えることができる。
次に、バイオマス燃料をCFBボイラ1に投入して燃焼させた際に生じる現象を説明する。
バイオマス燃料の燃焼におけるボトムアッシュ(Bottom Ash)とフライアッシュ(Fly Ash)の生成概念について説明する。ボトムアッシュは、流動材Faである砂を種(たね)としてバイオマス燃料中の成分が凝縮、融体、凝集して付着したり、砂表面で化学反応したりして粒子形成される。また、フライアッシュは、粒子形成されたボトムアッシュの一部が細かくなったものを除くと、バイオマス燃料中の成分そのものの凝縮、融体、凝集により形成される。
バイオマス燃料の燃焼における流動材(「流動砂」、「ベット材」ともいう)Fa中での流動阻害の主たる原因はアグロメX(図2参照)である。アグロメXは、ほとんどが低融点化合物の融体(バイオマス燃料中の成分により形成される物質の融体)が流動材Fa表面へ付着したり、流動材Faの表面で共晶形成(バイオマス燃料中の成分が流動材Faの表面で化学反応)したりして引き起こされ、溶融誘発およびコーティング誘発として知られている二つのメカニズムに起因して生じると考えられている。
具体的には、バイオマス燃料を燃焼した際のアグロメXの生成の主要な原因は、バイオマス燃料からのアルカリ成分、たとえばカリウム(K)やナトリウム(Na)等と流動材Faの主成分である石英粒子との間で化学反応が生じ、流動材Faの表面での粘着性のあるアルカリ珪酸塩層が形成されることに起因すると特定されている。なお、アルカリ成分に加えてリンもアグロメXにおける重要因子であることが確認されている。
(溶融誘発メカニズム)
図2(b)に示されるように、溶融誘発メカニズムのアグロメXは、低融点化合物(アルカリ珪酸塩)の融体Mが流動材Faの表面に付着したボトムアッシュ粒子群が互いに集まって起こり、このメカニズムの制御因子は、局部温度と燃料灰組成とであり、高濃度のアルカリ成分と塩素とが含まれた燃焼灰では、溶融誘発メカニズムを通してアグロメXが形成される傾向にある。
(コーティング誘発メカニズム)
図2(a)に示されるように、コーティング誘発メカニズムのアグロメXは、流動材Faの表面での共晶コーティング(アルカリ珪酸塩相)Cが形成されたボトムアッシュ粒子群が、それらの共晶コーティングCにより接合と離散とを繰り返し、その結果、粒子凝集が開始され、徐々にネック(流動阻害要因)になるアグロメXの形成に到り、このメカニズムの主要な制御因子は、共晶コーティング厚さ(接合離間のし易さ)、共晶コーティング組成(接合強度)および局所温度である。
なお、流動材Faの表面に実際にコーティングされた部分の詳細な分析結果から、このコーティング層は、共晶コーティング(KO−SiO:アルカリ珪酸塩層)Cであることが確認されている。この共晶コーティングCは、図3に示されるように、700℃にて溶融しはじめる。CFBボイラ1の流動材Fa中の温度、具体的には、800℃〜900℃においては、流動材Faである粒子同士を容易に付着、凝集させるものであることが確認できる。なお、図3は、KO−SiO状態図である。
次に、アグロメXの形成と酸化マグネシウム(MgO)との関係について図4及び図5を参照して説明する。図4は、MgO−SiO状態図であり、図5は、MgO−KO−SiO状態図である。なお、図3に示されるように、KO−4SiOの状態からMgOとなる過程を図5の直線Laで示し、さらに、MgOの割合が増える方向を矢印Daで示す。
一番最初の反応状態(第1反応状態)は図3に示されるように、700℃程度の低い温度で生じ、この第1反応状態では、KO−4SiOの形態にてコーティング等が形成される(図3参照)。次に、第2反応状態では、図5の矢印Daの方向に反応が進み、第1反応状態で形成されたKO−4SiOに対して、少しずつMgOが反応していく。MgOの反応が進んだ状態を直線La(図5参照)上で見ると、MgOの割合が数%(4%程度)で742℃の第1ポイントPbとなって融点が上がり(第3反応状態)、次に、MgOの割合が8%程度で1000℃の第2ポイントPaとなって融点が上がり、付着性の少ない層になる(第4反応状態)。
第2ポイントPa以上には、MgOは反応し難い。融点が1000℃以上となり固体となるので、MgO(固体)との反応が起こり難くなるからである。ここで、また が付着すると、例えば、第2ポイントPaから第1ポイントPbに戻り、742℃が融点になって付着が起こり易くなる。次に、第2反応状態に戻ってMgOが反応し、再び、第3反応状態及び第4反応状態が繰り返される。
図4に示されるように、MgOとSiOとの反応では、1543℃まで融体を形成しないことが容易に推察され、また、図5に示されるように、MgOとKO−SiOとの反応においても、1000℃程度まで融体を形成しないことが推察される。従って、アルカリ成分を多く含むバイオマス燃料を燃焼する際に、流動材Fa中に酸化マグネシウムを添加することによって低融点の共晶コーティング(KO−SiO:アルカリ珪酸塩相)Cの形成を抑制することができる。
ここで、図6を参照して、低融点の共晶コーティングCの形成を抑制することについて構造的に説明する。図6は、共晶コーティングCにMgOが作用する状態を模式的に示す説明図である。図6に示されるように、流動材Faの表面に共晶コーティングCが形成されると、その表面に融点が高いMgO−KO−SiOの層Sが形成されて固化し、融点が上がる。また、その表面に共晶コーティングCが形成されても、また融点が高いMgO−KO−SiOの層Sが形成されて固化し、融点が上がる。その結果として低融点である共晶コーティングCが形成されたとしても、その共晶コーティングCの表面に融点の高いMgO−KO−SiOの層Sが形成されることとなり、低融点化が抑制される。
次に、フェロニッケルスラグなどの製錬スラグについて説明する。製錬スラグは、例えば、フェロアロイ原料鉱石を製錬してフェロアロイを生成する際に生じるスラグであり、製錬方法には、電気炉法やテルミット法などの各種方法が適用できる。例えば、電気炉法では、原料鉱石の前処理の後に電気炉での精製処理が行われ、その精製処理において所望の金属を抽出した残りの残余物が製錬スラグとなる。本実施形態では、製錬スラグとしてフェロニッケルスラグを例示している。
図7は、フェロニッケルスラグである三つ試料の物性を示す図であり、例えば、試料A中には、重量パーセント濃度として28.1%の酸化マグネシウム(MgO)が含まれており、試料B中には、35.5%の酸化マグネシウム(MgO)が含まれており、試料C中には、50.0%〜55%程度の酸化マグネシウム(MgO)が含まれている。このように、フェロニッケルスラグ中には、少なくとも30%以上の酸化マグネシウムが含まれている。従って、CFBボイラ1の燃焼塔3内にフェロニッケルスラグを供給することにより、アグロメXの形成を抑制でき、流動不良を効果的に抑制できることが推察される。
次に、ボイラ燃料として低品位のバイオマス燃料を用いた場合のCFBボイラ1の燃焼方法について説明する。CFBボイラ1の燃焼塔3内には、ベットFを形成する流動材Faが既に投入されている。燃焼塔3中にバイオマス燃料に加えてフェロニッケルスラグを供給し、流動材Faの下部から空気を供給してベットFを形成しながら、図示しないバーナーによって燃焼する。燃焼塔3中の流動材Fa中にフェロニッケルスラグを添加することで、フェロニッケルスラグ中の酸化マグネシウムが寄与してアグロメXの形成を抑制し、ベットFの流動不良を効果的に抑制することができる。
ここで、図8及び図9を参照してフェロニッケルスラグを添加した場合の効果について、不添加の場合に比較して説明する。なお、図8は、フェロニッケルスラグを添加した場合における運転時間と、ベット温度およびベット差圧との関係を示すグラフであり、図9は、フェロニッケルスラグを添加しない(不添加)場合における運転時間と、ベット温度およびベット差圧との関係を示すグラフである。なお、ベット差圧とは、流動化しているベットF内における上下の位置での圧力差を示し、流動不良が発生するとベット差圧が急激に低下し最終的に“0”になる。また、図8及び図9で示す実験条件では、フェロニッケルスラグを添加しない場合のベットF中に含まれるカリウム濃度は0.6wt%(灰分ベース)であるのに対して、フェロニッケルスラグを添加する場合の方は、ベットF中に含まれるカリウム(K)の濃度は2.6wt%(灰分ベース)と高い。従って、フェロニッケルスラグを添加する場合の方が、アグロメXを形成し易い環境になっている。
図8に示されるように、フェロニッケルスラグを添加した場合には、ベット温度が800℃を超えてもベット差圧に大きな変化はなく、流動良好と判断できる。一方で、図9に示されるように、フェロニッケルスラグを添加しない場合には、ベット温度が800℃を超えて一定の時間が経過した後にベット差圧が急激に低下しており、この時点でのアグロメXの成長を推察でき、さらに、ベット差圧が“0”になっているので、流動不良と判断でき、結果として緊急の停止が必要になっている。これらの実験結果からも、フェロニッケルスラグを添加した場合には、ベットFの流動不良を効果的に抑制できることが確認できる。
さらに、本実施形態に係るCFBボイラ1の燃焼方法では、循環ライン9のループシール9a内にもフェロニッケルスラグを添加している。ループシール9aでの流動材Faの流動力は、燃焼塔3内に形成されたベットFでの流動力に比べて、著しく弱い。従って、ループシール9a内に積極的にフェロニッケルスラグを添加することによって、効果的に流動不良を防止できる。さらに、ループシール9a内に供給したフェロニッケルスラグは燃焼塔3内にも循環されるため、ベットFの流動不良の防止効果も得られる。
上記のCFBボイラ1の燃焼方法の効果について説明する。CFBボイラの燃料として、アルカリ含有バイオマス燃料を用いた場合には、カリウム(K)やナトリウム(Na)などのアルカリ成分と、流動材Faの主成分である石英粒子との間で化学反応が生じ、アルカリ珪酸塩が形成される。このアルカリ珪酸塩は、700℃程度で溶融する低融点化合物であり、流動材Faとしての粒子表面に粘着層Faを形成し、流動材Faの流動を阻害する可能性がある。
従って、従来のCFBボイラにおいてアルカリ含有バイオマス燃料の適応を可能にするためには、流動不良(アブロメ生成)を抑制するために運転温度を低く抑える必要があり、または流動不良を生じ難い炉内環境を形成するために、石炭との混焼、添加剤の投入もしくは流動材の入れ替え等の処理や複雑な制御管理が必要であり、CO削減効果があまり望めなかったり、添加剤資源の無駄遣いや運転コストの増加にもつながったり、さらには多量廃棄物(流動材の入れ替えに伴い発生する引き抜き廃棄流動材)を発生させたりして現実的ではなかった。従って、アルカリ含有バイオマス燃料をCFBボイラの燃料として用いた場合には、エネルギー回収効率の向上と流動不良を防止とを両立させることは非常に難しかった。
しかしながら、上記のCFBボイラ1の燃焼方法では、アルカリ含有バイオマス燃料に加えてフェロニッケルスラグをCFBボイラ1の燃焼塔3に供給しており、フェロニッケルスラグ中には酸化マグネシウムが含まれているため、アルカリ珪酸塩の生成を抑制できる。従って、低融点化合物の生成に伴う流動不良発生の虞が低減し、CFBボイラ1の高温での運転が可能になる。その結果として、エネルギー回収効率の向上と流動不良を防止とを容易に両立させることが可能になった。
さらに、フェロニッケルスラグ中には炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムではなく酸化マグネシウムが含まれているため、その酸化マグネシウムがアルカリ珪酸塩の生成抑制に直接に寄与するので、炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムを添加する場合に比べて高いエネルギー回収効率を期待できる。
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、製錬スラグとしてフェロニッケルスラグを例示したが、鉱石の製錬によって生じる他の製錬スラグを用いることも可能である。
また、アルカリ成分を含有するような品質の悪い流動材を使用している流動床式ボイラの流動材への混合使用もしくは代替として製錬スラグを用いる事も可能であり、この場合には、製錬スラグを利用した流動床を形成できるため、流動床の流動不良を偏り無く効果的に抑制できる。
さらに、ボイラ蒸気過熱器伝熱チューブへの強固なファウリングおよびデポ付着に対して、それらの除去効果およびボイラ蒸気過熱器伝面チューブ腐食抑制効果が期待できる。
1…CFBボイラ(流動床式ボイラ)、3…燃焼塔(炉本体)、9a…ループシール(循環シール部)、F…ベット(流動床)、Fa…流動材、G…排ガス。

Claims (6)

  1. アルカリ成分含有の燃料を用いた流動床式ボイラの燃焼方法において、
    鉱石の製錬によって生じる製錬スラグを前記流動床式ボイラの流動材として投入し、
    流動中に前記燃料中のアルカリ成分と反応させて前記製錬スラグの表面に高融点のコーティングを形成させながら前記燃料を燃焼させることを特徴とする流動床式ボイラの燃焼方法。
  2. 前記流動床式ボイラは炉本体を備え、
    前記炉本体から排出された排ガスから分離された流動材に前記製錬スラグを供給し、前記燃料の供給とは別に、前記製錬スラグが供給された前記流動材を前記炉本体に戻すことを特徴とする請求項1記載の流動床式ボイラの燃焼方法。
  3. 前記流動床式ボイラは、炉本体と、前記炉本体から排出された排ガス中の流動材を前記排ガスから分離する分離部と、前記分離部で分離された前記流動材を前記炉本体からの逆流を防止しながら前記炉本体の内部に戻す循環シール部と、を備え、
    前記製錬スラグを前記循環シール部に供給することを特徴とする請求項1または2記載の流動床式ボイラの燃焼方法。
  4. アルカリ成分含有の燃料を用いた流動床式ボイラであって、
    記燃料を燃焼する炉本体を備え
    前記炉本体には、鉱石の製錬によって生じる製錬スラグが流動材として投入され、
    流動中に前記燃料中のアルカリ成分と反応させて前記製錬スラグの表面に高融点のコーティングを形成させながら前記燃料を燃焼させることを特徴とする流動床式ボイラ。
  5. 前記炉本体から排出された排ガスから分離された流動材には前記製錬スラグが供給され、前記燃料の供給とは別に、前記製錬スラグが供給された前記流動材が前記炉本体に戻されることを特徴とする請求項4記載の流動床式ボイラ。
  6. 前記炉本体から排出された排ガス中の流動材を前記排ガスから分離する分離部と、前記分離部で分離された前記流動材を前記炉本体からの逆流を防止しながら前記炉本体の内部に戻す循環シール部と、を更に備え、
    前記製錬スラグは前記循環シール部に供給されることを特徴とする請求項4または5記載の流動床式ボイラ。
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