図1に示すように、光学特性測定装置10は、光学フィルム11の光学特性として、主軸(進相軸)の方位αやレタデーション(遅相量)δ等、偏光に関する光学特性(以下、偏光特性という)を測定する測定装置であり、投光部12、受光部13、搬送ローラ14、制御部16等を備える。
光学フィルム11は、樹脂製であり、透明である。また、延伸等により形成されるが、正常に形成されていれば面内で一様な偏光特性を有する。後述するように、光学フィルム11の偏光特性は、投光部12によって円偏光の測定光を入射させ、その透過光を受光部13によって測定することにより、単位測定エリアE(後述)毎に測定される。また、光学フィルム11は、Y方向に一定の幅を持ち、Y方向に垂直なX方向に(幅と比較して十分に)長い形状を有するように形成されており、光学特性測定装置10内では搬送ローラ14によってX方向に平坦な状態を保ったまま搬送される。光学特性測定装置10による光学フィルム11の偏光特性の測定は、光学フィルム11の搬送を止めることなく、光学フィルム11を常に連続的に搬送しながら行われる。光学フィルム11は、光学特性測定装置10で偏光特性を測定された後、X方向及びY方向に所定の幅でシート状に切断され、液晶表示装置等に利用される。
投光部12は、少なくとも受光部13の視野13a内にほぼ一定条件の光を測定光として照射する面状の光源であり、投光面12aが光学フィルム11と平行になるように、かつ、受光部13に対向するように、光学フィルム11の下方(Z方向負側)の所定位置に設けられる。投光部12が光学フィルム11に照射する測定光は、所定波長の単色光であるとともに、視野13a内でほぼ一定の強度と偏光状態を有する光である。具体的な測定光の偏光状態は、後述するように円偏光である。
また、投光部12は、光源移動部12b上に配置される。光源移動部12bは、投光部12をX方向に沿って所定距離だけ移動可能に保持する。光源移動部12bは、後述するように投光部12のキャリブレーション時に投光部12を移動させ、光学フィルム11の偏光特性を測定するときには、前述のように受光部13に対向する所定位置に投光部12を保持する。
受光部13は、投光部12が光学フィルム11に照射し、光学フィルム11を透過した測定光を受光して、光学フィルム11を透過したことによる偏光状態の変化を測定するためのものであり、投光部12に対向するように光学フィルム11の上方(Z方向正側)に設けられる。受光部13で測定した測定値は、制御部16に入力される。また、受光部13は、Zアーム17に取り付けられており、Zアーム17は、搬送される光学フィルム11を跨ぐように設けられた支持台18に、光学フィルム11に対して垂直な方向(Z方向)に移動自在に取り付けられている。このため、受光部13は、投光部12に対向したまま、Z方向に移動自在に設けられている。Zアーム17による受光部13の移動は、制御部16によって制御され、制御部16はピント調節のために受光部13をZ方向に移動させる。
制御部16は、光学特性測定装置10の各部を統括的に制御する制御装置であり、例えば、制御用コンピュータ、及びキーボードやモニタ等の入出力デバイスを備える。例えば、制御装置16は、所定の回転速度で搬送ローラ14を制御することにより、光学フィルム11をX方向に一定の速度で搬送する。このとき、搬送ローラ14の駆動パルスをパルスカウンタ(図示しない)によって計数することにより、光学フィルム11の移動量、及び光学フィルム11内における視野13aの位置を把握する。また、制御部16は、受光部13による測定のタイミングを制御する。具体的には、光学フィルム11の搬送量及び搬送のタイミングと受光部13による測定は同期して行われる。さらに、制御部16は、投光部12のキャリブレーション時には、光源移動部12bによる投光部12の移動と受光部13による測定光の計測を制御する。
また、制御部16は、受光部13によって測定されたデータに基づいて、光学フィルム11の偏光特性を算出する。光学フィルム11の偏光特性は、後述する単位測定エリアE毎に算出される。
図2に示すように、投光部12は、面光源21、偏光板22、1/4波長板23を備える。面光源21は、平面状の発光面21aを有し、発光面21aから無偏光状態の平行光(以下、無偏光L1という)を発光面21a内でほぼ一様の強度で発する。偏光板22は、面光源21が発する無偏光L1を直線偏光L2に整えて1/4波長板23に入射させる。1/4波長板23は、直線偏光L2の偏光方向に対して遅相軸(進相軸)が45度の角度をなすように、偏光板22の光学フィルム11側に配置される。したがって、1/4波長板23は、偏光板22から入射する直線偏光L2を円偏光L3に整えて出射する。このため、投光部12は、円偏光L3を測定光(以下、測定光L3という)として光学フィルム11に投光する。
投光部12が測定光L3を照射する範囲は、受光部13の視野13aにほぼ一致している。但し、投光部12による測定光L3の照射範囲は、少なくとも視野13aの全体を含む範囲であれば、受光部13の視野13aよりも大きくても良い。
図3に示すように、受光部13は、分割波長板31、偏光板32、テレセントリックレンズ33、撮像素子34を備える。
分割波長板31は、第1波長板31a、第2波長板31b、第3波長板31c、第4波長板31dの4種の波長板を有する。分割波長板31を構成するこれらの各波長板31a〜31dは、受光部13の最前面(光学フィルム11側)に、光学フィルム11の搬送方向であるX方向に対して垂直な方向(光学フィルム11の幅方向であるY方向)に、第1〜第4波長板31a〜31dの順で配列される。また、第1〜第4波長板31a〜31dを1組として、分割波長板31は、Y方向に複数組の第1〜第4波長板31a〜31dがY方向に隙間なく配列される。第1〜第4波長板31a〜31dの組の数は、後述する撮像素子34の単位受光エリア数と同数である。投光部12から照射される測定光L3は、光学フィルム11を透過することによって、透過した箇所の偏光特性を担持された測定光L4となって分割波長板31に入射し、入射位置に応じて第1〜第4波長板31a〜31dのいずれかを透過して、偏光板32に入射する。
偏光板32は、分割波長板31を透過した測定光L4のうち、進相軸(遅相軸)に応じた所定方向の直線偏光成分をテレセントリックレンズ33に入射させる。
テレセントリックレンズ33は、分割波長板31及び偏光板32を透過して直線偏光となった測定光L4を撮像素子34の撮像面34aに入射させる。テレセントリックレンズ33は少なくとも物体側(光学フィルム11側)で光軸と主光線が平行とみなせる物体側テレセントリックレンズであり、さらに像側(撮像素子34側)においても光軸と主光線が平行とみなせる両側テレセントリックレンズであっても良い。また、テレセントリックレンズ33の倍率は視野13aの像を撮像面34aに結像させる所定の倍率(例えば1〜1/3倍程度)を有する。なお、テレセントリックレンズ33としては、倒立像を結像するテレセントリックレンズを用いてもよいが、以下では簡単のために視野13aの正立像が撮像面34aに結像されるものとする。すなわち、テレセントリックレンズ33によって、第1〜第4波長板31a〜31dを各々透過した測定光L4の撮像面34aへの入射位置は、それぞれ、撮像面34aにおいても上流側(X方向負側)から下流側(X方向正側)に向かって、第1〜第4波長板31a〜31dの配置順と同じ順序である。
撮像素子34は、例えばCCD型のイメージセンサであり、測定光L4により光学フィルム11を撮像する。撮像面34aには複数の画素Pが所定の配列で複数設けられている。各画素Pは、光電変換により入射光量に応じた信号電荷を発生させる。撮像素子34は、後述するように複数の画素Pを1単位の画素(以下、結合画素という)として扱う。このため、撮像素子34は、結合画素毎に、各画素Pで発生した各信号電荷を平均した値を測定値Dとして制御部16に出力する。また、後述するように、撮像素子34は、第1〜第4波長板31a〜31dの個数に対応して4個の結合画素を1つの組として、光学フィルム11を撮像する。
また、受光部13は、アライメント調節用に回転機構(図示しない)を備える。回転機構は、撮像素子34と、テレセントリックレンズ33,偏光板32,分割波長板31を一体に、光軸の周りに回転させる機構である。回転機構は、受光部13の視野13aの向きを光学フィルム11の搬送方向Xや幅方向Yと正確に合致させるために受光部13を回転させる。したがって、以下では、回転機構による受光部13の向きの調節により、分割波長板31の各波長板31a〜31dの境界線は搬送される光学フィルム11の幅方向Yに、各画素P(あるいは後述する単位受光エリアCP及び結合画素)の辺は光学フィルム11の搬送方向Xと幅方向Yに正確に一致しているものとする。
図4に示すように、第1〜第4波長板31a〜31dは、光学フィルム11の搬送方向(X方向)に長く、光学フィルム11の幅方向(Y方向)には各々均等な幅d/4で設けられる。このため、1組の第1〜第4波長板31a〜31dの全体としての幅はdである。そして、前述のように、分割波長板31は第1〜第4波長板31a〜31dの組を複数組有している。分割波長板31を構成する第1〜第4波長板31a〜31dの主軸(進相軸)方位は各々異なり、第2〜第4波長板31b〜31dの主軸方向は、第1波長板31aの主軸方向に対して、約36度ずつ回転した方向となっている。具体的には、第1波長板31aの主軸方位は、光学フィルム11の搬送方向Xに対して約20度の方向である。したがって、第2波長板31bの主軸方向は、搬送方向Xに対して約56度であり、第3波長板31cの主軸方向は、搬送方向Xに対して約92度である。第4波長板31dの主軸方向は、搬送方向Xに対して約118度である。第1〜第4波長板31a〜31dの遅相量は、いずれも135度である。
なお、第1〜第4波長板31a〜31dの主軸方向は、互いに異なっていれば良く、必ずしも上述の方向である必要はない。これは、後述するようにキャリブレーション時に実測により結合画素毎に受光部13の偏光伝達行列が求められ、各波長板31a〜31dの主軸方向は、配置のズレ等も併せて、この偏光伝達行列に反映されるからである。
また、図示しないが、偏光板32の透過軸は光学フィルム11の搬送方向Xと平行(0度)になるように配置される。
図5に示すように、撮像素子34の画素Pは、第1〜第4波長板31a〜31dと同じ幅(d/4)であり、撮像領域34a内には複数の画素Pが、光学フィルム11の搬送方向X及び幅方向Yに沿って配列される。これらの画素Pは、太線で囲んで示すように4×4画素が単位受光エリアCPを形成する。単位受光エリアCPは、測定の単位となるものであり、単位受光エリアCPの大きさで、測定の空間分解能が定まる。このため、単位受光エリアCPの大きさは、光学フィルム11の偏光特性に必要な測定精度に応じて予め定められる。同様に、以下では、光学フィルム11の偏光特性の測定に必要な空間分解能が得られる範囲内で、画素P,単位受光エリアCP,結合画素(後述)の大きさが定められているものとする。
また、単位受光エリアCP内には、分割波長板31の各波長板31a〜31dの幅に対応するように複数の結合画素が定められる。本例では、分割波長板31は、4種類の波長板で形成されているので、単位受光エリアCPをY方向に4分割した各エリアが結合画素CPa,CPb,CPc,CPdであり、例えば、各結合画素CPa,CPb,CPc,CPdは、4×1(X方向×Y方向)画素からなる。結合画素CPaは第1波長板31aのエリアに、結合画素CPbは第2波長板31bのエリアに、結合画素CPcは第3波長板31cのエリアに、結合画素CPdは第4波長板31dのエリアに、それぞれ対応する。
撮像素子34は、結合画素内の各画素Pの信号電荷に基づく信号の平均値を、結合画素による測定値Dとして出力する。図5に示すように、4×1画素の結合画素CPa〜CPdの場合、各々4画素の平均値が測定値Dとして出力する。また、上述の構成からわかるとおり、撮像素子34は、単位受光エリアCPから各結合画素CPa〜CPdが出力する4種類の測定値を出力する。
なお、ここではハッチングにより1つの単位受光エリアCPを取り上げたが、X方向及びY方向に複数の単位受光エリアCPが形成される。
このように、撮像素子34は、単位受光エリアCPを単位として光学フィルム11を測定するとともに、1つの単位受光エリアCPから、分割波長板31の各波長板31a〜31dに応じた4種類の測定値を出力する。
上述のように、光学特性測定装置10では、単位受光エリアCPを単位として光学フィルム11の偏光特性を測定するので、図6に示すように、光学フィルム11には、単位受光エリアCPに対応する大きさの領域E(以下、単位測定エリアという)に区画することができる。光学特性測定装置10では、光学フィルム11を単位測定エリアEの長さ分だけX方向に搬送するごとに、受光部13によって視野13a内の光学フィルム11が撮像される。したがって、ある1つの単位測定エリアEは、X方向にならぶ複数の単位受光エリアCPによって1回ずつ測定され、光学フィルム11の搬送により視野13aに入ってから視野13aを出るまでの間に、X方向に並んだ単位受光エリアCPの数と等しい回数の測定が行われ、単位受光エリアCPの数の4倍の数の測定値が取得される。
また、図7に示すように、投光部12についても、投光面12aを単位受光エリアCPに対応する大きさの領域F(以下、単位投光エリアという)に区画することができる。単位投光エリアFは単位受光エリアCPに一対一に対応し、ある単位投光エリアFから出射される測定光L3は、光学フィルム11を透過して、透過位置の偏光特性を担持した測定光L4となった後、対応する単位受光エリアCPに入射する。また、後述するように、投光部12のキャリブレーションにより、投光部12が光学フィルム11に照射する測定光L3のストークスパラメータ(以下、Sパラメータという)が測定されるが、ここで測定されるSパラメータは、単位投光エリアF毎に算出される。
上述のように構成される光学特性測定装置10では、以下に説明するように光学フィルム11の偏光特性の測定を行う。
図8に示すように、光学特性測定装置10によって光学フィルム11の偏光特性を測定する場合には、単位受光エリアCPの各結合画素CPa〜CPd毎に、予め偏光伝達行列を測定する(ステップS01)。偏光伝達行列は、各結合画素CPa〜CPdへの入射光のSパラメータを各結合画素CPa〜CPdによる測定値Dに対応付ける行列である。すなわち、入射光をSパラメータを用いて(S0′,S1′,S2′,S3′)Tで表すときに、測定値D=(A1,A2,A3,A4)・(S0′,S1′,S2′,S3′)Tを満たす行列A=(A1,A2,A3,A4)が偏光伝達行列である。偏光伝達行列Aには、結合画素CPa〜CPdを構成する各画素Pの光電変換特性や、テレセントリックレンズ33、偏光板32、分割波長板31(各結合画素CPa〜CPdに対応する波長板)の特性が反映される。
なお、S0′は光強度、S1′は水平直線偏光強度、S2′は45度直線偏光強度、S3′は右回り偏光強度である。また、偏光伝達行列Aは、受光部13の偏光伝達特性を表すミュラー行列の第1行の要素(各種変更状態の強度変化を表す要素)に対応するものであり、結合画素CPa〜CPdから測定値として得られる値は、Sパラメータでいえば光強度S0の値である。
ここで行う結合画素CPa〜CPd毎の偏光伝達行列の測定は、受光部13のキャリブレーションに相当し、修理等により受光部13の構成が変更されない限り、光学特性測定装置10を初めて使用するときに1度だけ行えば良い。測定された偏光伝達行列Aは、制御部16に記憶され、各結合画素CPa〜CPdによる測定値に基づいて光学フィルム11の偏光特性を算出するときに用いられる。
次に、光学フィルム11の偏光特性を測定する前に、単位投光エリアF毎に測定光L3のSパラメータを測定する(ステップS02)。これは、投光部12のキャリブレーションに相当し、投光部12の特性に変化がなければ1回行うだけで良いが、概ね光学特性測定装置10の使用開始時(1日の最初等)に行うことが好ましい。
光学フィルム11の偏光特性の測定は、上述の受光部13及び投光部12のキャリブレーションにより、結合画素CPa〜CPd毎の偏光伝達行列Aが既知であり、単位投光エリアF毎に測定光L3のSパラメータが既知である状態で行われる。
このとき、光学フィルム11のある単位測定エリアEを透過後の測定光L4のSパラメータからなるベクトル(ストークスベクトル)S′=(S0′,S1′,S2′,S3′)は、透過前の測定光L3のSパラメータS=(S0,S1,S2,S3)と、単位測定エリアEのミュラー行列(以下、M行列という)を用いて、S′=M・Sの関係にある。また、測定値Dは、前述のとおり、偏光伝達行列Aを用いて、D=A・S′である。したがって、D=A・(M・S)であり、偏光伝達行列A及び測定光L3のストークスベクトルSが既知なので、単位測定エリアEの偏光特性を算出する場合には、測定値DからM行列の要素Mij(i,j=1〜4)を求めれば、M行列要素Mijから単位測定エリアEの主軸方向αやレタデーションδ等の偏光特性を算出することができる。
しかし、M行列は4×4行列であり、全部で16の要素を有するが、D=M・Sは1本の方程式と同じであるため、1回(1種)の測定で得られるこの式だけでは、M行列の要素Mijを決定することはできない。M行列の全要素を決定するには、16の独立な方程式が必要である。
こうしたことから、光学特性測定装置10は、複数の単位受光エリアCP(n),n=1〜Nによる複数回(N回)の測定を行う。単位受光エリアCP(n)には、前述のように、4つの結合画素CPa〜CPdがあるため、単位受光エリアCP(1)〜CP(N)によるN回の測定で4N個の測定値D1〜D4Nが得られる。したがって、光学特性測定装置10は、4N個の測定値D=(D1,D2,・・・,D4N)をM行列の各要素Mijに対応付ける変換行列T+(以下、試料測定行列という)を予め算出する(ステップS03)。この試料測定行列T+は、キャリブレーションにより既知である各結合画素CP(n)の偏光伝達行列Anと、対応する単位投光エリアF(n)が照射する測定光L3のストークスベクトルSn=(S0n,S1n,S2n,S3n)Tを用いて算出される。
なお、以下では、単位受光エリアCP(n)と、この単位受光エリアCP(n)に属する4つの結合画素CPa(n)〜CPd(n)との対応関係を示すため、結合画素CPa(n)〜CPd(n)の偏光伝達行列をAan,Abn,Acn,Adnで区別する。例えば、単位受光エリアCP(n)に属する第1波長板31aに対応した結合画素CPa(n)の偏光伝達行列Aanは、Aan=(A1an,A2an,A3an,A4an)である。
なお、前述のように測定光L3のストークスベクトルSnは、装置の使用開始時に校正されるので、これに応じて試料測定行列T+も装置の使用開始時に算出し直される。
こうして試料測定行列T+が算出されると、光学フィルム11の偏光特性の測定が開始される。光学フィルム11の偏光特性の測定は、光学フィルム11をX方向に搬送しながら、投光部12より測定光L3を照射し、受光部13によって光学フィルム11を透過した測定光L4により光学フィルム11を撮像することにより行われる(ステップS04)。
このとき、制御部16は、各単位受光エリアCP(n)から得た測定値D1〜D4Nから試料測定行列T+を用いて、単位測定エリアE毎にM行列要素Mijを算出する(ステップS05)。そして、算出したM行列要素Mijを用いて、単位測定エリアEの偏光特性として、主軸方向αやレタデーションδを算出する(ステップS06)。
以下、各ステップの態様を詳細に説明する。
< 受光部のキャリブレーション >
受光部13のキャリブレーション(ステップS01)は、次のように行われる。
図9に示すように、受光部13のキャリブレーションには、基準投光部41が用いられる。基準投光部41は、Sパラメータが既知の基準光41aを発する光源であり、面光源42、1/4波長板43、偏光板44を備える。また、基準投光部41は投光部12とほぼ同様に構成され、基準光41aは円偏光であるが、1/4波長板43は、所定速度で回転するように設けられている。偏光板44の透過軸方向εは一定であるが、1/4波長板43の主軸(進相軸)方向γは時間で変化する。偏光板44の透過軸方向εと1/4波長板の主軸方向γは、受光部13に対する基準投光部41の配置により既知である。
受光部13のキャリブレーションでは、基準光41aは光学フィルム11を介さず、直接、受光部13に入射され、受光部13は結合画素毎に入射された基準光41aに基づく信号値(測定値)を出力する。
基準光41aのSパラメータをP0,P1,P2,P3、基準光41aのストークスベクトルPはP=(P0,P1,P2,P3)Tとすると、1つの結合画素が出力する測定値Dは、結合画素の偏光伝達行列AとストークスベクトルPを用いて、D=A・P=A1・P0+A2・P1+A3・P2+A4・P3で表される。
一方、基準光41aのストークスベクトルPは、1/4波長板43の主軸方向γ、偏光板44の透過軸方向εを用いて、下記数1の式で表される。但し、基準光41aの光強度K、C=cos2γ,S=sin2γである。また、これを用いて上述の測定値Dを表すと、下記数2の式となる。所定係数K′は、基準光41aの光強度Kと、撮像素子34の感度やゲイン等によって予め定まる係数である。
前述のように1/4波長板の主軸方向γは一定の方向に回転するので、測定値Dは、回転する主軸方向γに対して時系列に得られる。また、所定係数Kは、基準光41aの光強度、撮像素子34の感度やゲイン等から得られる既知数であるので、得られた測定値Dを所定係数K′で規格化した値D/K′を、主軸方向γについて、離散フーリエ変換(DFT)することにより、直流(DC)成分FDC、cos4γ成分Fcos4γ、sin4γ成分Fsin4γ、sin2γ成分Fsin2γをそれぞれ求めることができる。
数2の式からわかるとおり、DFTにより得られた各成分FDC,Fcos4γ,Fsin4γ,Fsin2γは、偏光伝達行列Aの要素と係数Kを用いて、次のように表される。
偏光板44の透過軸方向εは既知(例えば0度)であるので、数3の式に基づいて、偏光伝達行列A=(A1,A2,A3,A4)を算出することができる。
なお、直流成分FDCには、撮像素子34の暗電流によるノイズがバックグラウンドBGとして重畳される。このため、撮像素子34を遮光して撮像する事により予め暗電流ノイズによるバックグラウンドBGを測定しておき、DFTにより求められたFDCから、バックグラウンドBGを減算したFDCが真の直流成分FDCであり、偏光伝達行列Aはこの真の直流成分FDCを用いて算出される。
また、図9では、基準投光部41が面光源42を備え、受光部13の全体に基準光41aを入射させる例を説明したが、これに限らない。基準投光部41は、少なくとも1つの結合画素CPにSパラメータが既知の基準光を入射させることができるものであれば良い。
< 投光部のキャリブレーション >
投光部12のキャリブレーション(ステップS02)は、次のように行われる。
図10に示すように、投光部12のキャリブレーションは、投光部12から測定光L3を照射しながら、光源移動部12bによってX方向の上流側から下流側に移動させることにより行う。これは、投光部12と受光部13の間には、光学フィルム11がない状態で行われ、受光部13は、投光部12から照射される測定光L3を測定する。
図11に示すように、X方向のある行に並んだ単位受光エリアCPを上流側から下流側にかけてCP(1),CP(2),・・・,CP(N)とすると、これらの各単位受光エリアCP(n)に対応するように、投光部12ではX方向に単位投光エリアF(1),F(2),・・・,F(N)が並ぶ。このため、光源移動部12bによって投光部12をX方向の上流側から下流側に移動させると、投光部12が受光部13の下方に入り始まってから、受光部13の下方からすべて抜ける迄に、各単位投光エリアF(n)から各々出射される測定光L3(n)は、全ての単位受光エリアCP(1)〜CP(N)で各々1回ずつ測定される。
例えば、最も下流側に位置する単位投光エリアF(N)に着目すると、単位投光エリアF(N)から出射される測定光L3(N)は、単位受光エリアCP(1),CP(2),・・・,CP(N)の順に各単位受光エリアCP(n)で測定される。このとき単位受光エリアCP(1)〜(N)において、各々4種の結合画素CPa〜CPdから出力される測定値をD1,D2,・・・、D4Nとすると、1つの単位投光エリアF(N)から出射される測定光L3(N)について4N個の測定値が得られる。
また、こうして測定される4N個の測定値D1〜D4Nの中には、分割波長板31のうち、第1波長板31aを通過して測定された測定値、第2波長板31bを通過して測定された測定値、第3波長板31cを通過して測定された測定値、第4波長板31dを通過して測定された測定値が含まれる。但し、結合画素毎に偏光伝達行列Aがそれぞれ異なるので、例えば単位受光エリアCP(1)〜CP(N)の第1波長板31aに対応する結合画素CPaで測定された測定値であっても、偶然に一致するような例外はあるが、基本的にこれらは同じ値にはならない。
したがって、投光部12のキャリブレーション時には、X方向に並ぶ単位受光エリアCP(1)〜CP(N)による全ての測定値D1〜D4Nを記憶する。このため、図12に示すように、分割波長板31に含まれる波長板の種類数(ここでは4)と、各波長板内でX方向に並ぶ単位受光エリアCPの個数(ここではN個)を指標とする2次元の記憶領域46が確保される。この記憶領域46は、例えば、1つの単位投光エリアF(n)について1つずつ確保され、各単位受光エリアCP(n)で得られた測定値Dnは、単位受光エリアCP(n)の位置と、波長板31a〜31dに対応付けられて記憶される。
上述のようにして得られた測定値D1〜D4Nに基づいて、測定光L3のSパラメータは、次のように算出される。
まず、第1波長板31aで得られた測定値の合計Da,第2波長板31bで得られた測定値の合計Db,第3波長板31cで得られた測定値の合計Dc,第2波長板31dで得られた測定値の合計Ddが算出される。各波長板31a〜31dにおける各々の測定値の合計Da〜Ddは下記数4の式で表される。
一方、受光部13のキャリブレーションにより、各結合画素CPa(n)〜CPd(n)の偏光伝達行列Aan=(A1an,A2an,A3an,A4an),Abn,Acn,Adnは既知なので、単位投光エリアF(j),j=1〜Nから出射される測定光L3(j)のストークスベクトルSjをSj=(S0j,S1j,S2j,S3j)Tとすると、各結合画素による測定値はAan・Sj,Abn・Sj,Acn・Sj,Adn・Sjである。これを用いると上述の数4の式は、下記数5の式で表される。
数5の式において、SパラメータS0j〜S3jの係数は、全て既知である偏光伝達行列Anの要素だけからなるので、数5の4個の方程式を解くことによって、単位投光エリアF(j)から出射される測定光L3(j)のSパラメータS0j〜S3jを決定することができる。ここでは、ある単位投光エリアF(j)を例にしたが、他の単位投光エリアFについても同様である。また、ここではX方向のある行の単位投光エリアFについて例示したが、他の行も同様である。したがって、制御部16は上述の方法で投光部12の全ての単位投光エリアFについて、出射される測定光L3のSパラメータを決定する。
< 光学フィルムの測定 >
光学フィルム11の偏光特性の測定(ステップS04)は、次のように行われる。
まず、図13に示すように、光学フィルム11の偏光特性を測定する場合には、光学フィルム11の搬送方向Xの方向に並ぶ単位受光エリアCP(1)〜CP(N)と、対応する単位投光エリアF(1)〜F(N)が各々対向するように投光部12と受光部13が対向配置される。すなわち、単位投光エリアF(n)から出射される測定光L3(n)は、光学フィルム11を透過した後、単位受光エリアCP(n)に入射する。
このように、単位受光エリアCP(n)と単位投光エリアF(n)が一対一に対応するように配置された状態で、光学フィルム11は、投光部12と受光部13の間をX方向に搬送される。このとき、投光部12は測定光L3を光学フィルム11に照射し、受光部13は光学フィルム11を透過した測定光L4によって、光学フィルム11の搬送量に同期した一定のタイミングで光学フィルム11を撮像する。
例えば、光学フィルム11上のある単位測定エリアEに着目すると、ある時、単位測定エリアEは、単位投光エリアF(1)から照射される測定光L3(1)を照射され、単位測定エリアEを透過した測定光L4(1)は、単位受光エリアCP(1)で撮像される。その後、光学フィルム11が搬送され、単位測定エリアEは単位受光エリアCP(2)に対応する位置に移動される。このとき、単位投光エリアF(2)から測定光L3(2)が照射され、受光器13は、単位測定エリアEを透過した測定光L4(2)によって単位受光エリアCP(2)で単位測定エリアEを撮像する。
同様に、光学フィルム11は単位受光エリアCPに対応するステップでX方向に搬送されることにより、順次、光学フィルム11は対応する単位投光エリアF(1),F(2),・・・からの測定光L3の照射を受け、対応する位置の単位受光エリアCP(1),CP(2),・・・によって撮像される。
ここでは、簡単のために、ある単位測定エリアEに着目して説明したが、受光部13は視野13aの全面を撮像するので、複数の単位測定エリアEが同時に撮像される。例えば、着目した単位測定エリアEと同行に位置するN個の単位測定エリアが、単位受光エリアCP(1)〜CP(N)で各々撮像される。同様にN個の単位受光エリアCPが並ぶ行が、光学フィルム11の幅方向Yにも複数行あるが、これらについても同様である。
但し、光学特性測定装置10は、前述の投光部12のキャリブレーション時と同様に、1つの単位測定エリアEに対して、2次元の記憶領域46を確保し(図12参照)、単位測定エリアE毎にまとめて4N個全ての測定値D1〜D4Nを記憶する。
上述のようにして得られた単位測定エリアEについて4N個の測定値D1〜D4Nは、制御部16において、予め算出された試料測定行列T+を用いて単位測定エリアEのM行列要素Mijに変換される。その後、制御部16は、算出した単位測定エリアEのM行列要素Mijを用いて、単位測定エリアEにおける主軸方位αやレタデーションδを偏光特性として算出する。
< 試料測定行列 >
上述のように光学フィルム11の偏光特性の測定が行われることをふまえ、試料測定行列T+は次のように算出される(ステップS03)。
まず、単位投光エリアF(n)から照射する測定光L3(n)のストークスベクトルをSn、ある単位測定エリアEのM行列、単位測定エリアEを透過後の測定光L4(n)のストークスベクトルをS′nとすると、S′n=M・Snの関係にあり、具体的に書けば下記数6の式で表される。
また、単位測定エリアEを透過後の測定光L4(n)は、単位投光エリアF(n)に対応する位置にある単位受光エリアCP(n)に入射する。このとき単位受光エリアCP(n)の4つの結合画素で得られるそれぞれ測定値Dは、測定光L4(n)のストークスベクトルをS′nと、各結合画素の偏光伝達行列Aan〜Adn,を用いて、Dn=Axn・S′n(x=a〜d)であり、例えば、結合画素CPa(n)について具体的に書けば、下記数7の式で表される。
そして、上述の数6を数7の式に代入すれば、測定値Dnは測定光L3(n)のストークスベクトルをSnと、単位測定エリアEのM行列によって、Dn=An・(M・Sn)と表せ、例えば、結合画素CPa(n)について具体的に書けば、下記数8の式で表される。
上述の数8の式は、単位受光エリアCP(n)の結合画素CPa(n)による測定値Dnであり、単位受光エリアCP(n)には4つの結合画素CPa(n)〜CPd(n)があり、さらに、単位測定エリアEは、単位受光エリアCP(1)〜(N)で撮像されるので、1つの測定値Eに対して測定値D1〜D4Nが得られる。これは1つの単位測定エリアEにつき、4N個の方程式が得られることを意味する。
また、数8の式においては、偏光伝達行列Aの要素及び測定光L3のSパラメータはキャリブレーションにより全て既知量であり、未知量は単位測定エリアEのM行列要素Mijである。このため、上述の数8の式を測定値D1〜D4Nの順に並べ、測定値D1〜D4Nを配列した測定値ベクトルDをD=(D1,D2,・・・,D4N)、単位測定エリアEのM行列要素Mijを再配列したベクトルM′(以下、M要素ベクトルという)をM′=(M11,・・・,M14,M21,・・・,M24,M31,・・・,M34,M41,・・・,M44)Tとして行列形式でまとめて書くと、D=T・M′で表される。これを具体的に書けば、下記数9になる(測定値Dの添字と、波長板及び結合画素の対応は図12参照)。測定値ベクトルDは4N個の要素からなり、M要素ベクトルM′は16個の要素からなる。また、行列Tは、M行列要素Mijを測定値D1〜D4Nに対応付ける変換行列であり、4N×16行列である。
数9の式からわかるとおり、M要素ベクトルM′を測定値ベクトルDに対応付ける変換行列Tの要素は、既知量である偏光伝達行列Aの要素及び測定光L3のSパラメータからなる。このため、制御部16は、受光部13と投光部12のキャリブレーションが完了した段階で、各結合画素及び各単位投光エリアFについて得られた偏光伝達行列A及び測定光L3のSパラメータを用いて、予め変換行列Tを算出する。
一方、測定により得られるデータは測定値D1〜D4N(測定値ベクトルD)なので、数9の式とは逆に測定値ベクトルDを、M要素ベクトルM′に対応付けるように、変換行列Tの逆行列T+を算出する。こうして算出される変換行列Tの逆行列が試料測定行列T+である。
変換行列Tは、前述のとおり4N×16行列であり、X方向に並んだ単位受光エリアCPの数Nによっては正方行列ではないので、正確には変換行列Tの擬似逆行列が試料測定行列T+である。変換行列Tの逆行列(擬似逆行列)が存在しない場合もあるが、試料を直線複屈折に限定して特定すべきM要素を削減することで試料測定行列T+を算出することができる。以下、光学特性測定装置10では、試料測定行列T+が算出可能な構成となっているとする。
制御部16は、光学フィルム11の偏光特性の測定開始前に、上述のように受光部13及び投光部12のキャリブレーションで得られた偏光伝達行列A及び測定光L3のSパラメータから試料測定行列T+を予め算出し、保持している。また、ここではX方向のある行に並ぶ単位受光エリアCP(1)〜CP(N)及び単位投光エリアF(1)〜F(N)を例に説明したが、他の行についても同様に試料測定行列T+を予め算出する。このため、制御部16は、単位測定エリアEがX方向に並ぶ全ての単位受光エリアCP(1)〜CP(N)で測定されると同時に、得られた測定値D1〜DNと試料測定行列T+を用いて、単位測定エリアEのM行列要素Mijを算出する。
< 偏光特性の算出 >
単位測定エリアEの偏光特性は、上述のように算出される単位測定エリアEのM行列要素Mijに基づいて、次のように算出される(ステップS06)。単位測定エリアEのM行列要素Mijが全て特定されることにより、直線複屈折、直線2色性、円複屈折、円2色性、偏光解消等の偏光特性を算出可能であるが、以下では、簡単のために、光学フィルム11の偏光特性が直線複屈折とみなせ、この直線複屈折の主軸方位αとレタデーションδを算出する例を説明する。
光学フィルム11の偏光特性が直線複屈折とみなせる場合、単位測定エリアEのM行列は下記数10の式で表される。また、Q1〜Q5は、単位測定エリアEの主軸方位αとレタデーションδを用いて数11で表される量である。但し、K1=cos2α、K2=sin2αである。
したがって、制御部16は、単位測定エリアEのM行列要素Mijを用いて、例えば、主軸方位αをtan2α=Q4/Q5によって、レタデーションδをsinδ=Q4/Q2によって算出する。
上述のように、光学特性測定装置10は、分割波長板31によって光学フィルム11の搬送方向Xに4種類の波長板31a〜31dを配列した受光部13で光学フィルム11を撮像し、偏光特性の算出に必要な複数の偏光状態での測定を行う。このため、光学特性測定装置10は、光学フィルム11の搬送を止めずに、常にX方向に搬送しながら迅速に偏光特性の測定を行うことができる。例えば、空間分解能1mm□、軸方位測定精度0.1度の条件で所定サイズの光学フィルム11を測定する場合、従来のように受光部13を移動させるたびに光学フィルム11の搬送を止めながら測定を行うと約10分を要するところ、光学フィルム11の搬送を止めない光学特性測定装置10によれば約2分半で偏光特性の測定を完了することができる。
また、光学特性測定装置10は、撮像素子34の各画素Pで取得されるデータを測定値とするのではなく、単位受光エリアCPを単位として光学フィルム11の偏光特性の測定を行い、単位受光エリアCPに含まれる結合画素毎に複数の画素Pの平均値を測定値とするので、撮像素子34のノイズを低減し、高精度な偏光特性の測定を行うことができる。
さらに、単位受光エリアCPは、分割波長板31内の各波長板31a〜31dのそれぞれに対して4つの結合画素を有し、これら全ての結合画素から得られる測定値D1〜D4Nを用いて光学フィルム11の偏光特性を算出する。これは、複数回の測定を行って平均すること同等の作用があり、1つの波長板で1回の測定を行って偏光特性を算出する場合よりもS/N比を向上させることができる。したがって、光学特性測定装置10では特に高精度な偏光特性の測定を行うことができる。
特性測定装置10は、受光部13のキャリブレーションにより複数の結合画素の偏光伝達行列Aをそれぞれ求め、投光部12のキャリブレーションにより各結合画素CPに対応する単位投光エリアFから出射される測定光L3のSパラメータを算出し、さらに、得られた偏光伝達行列Aと測定光L3のSパラメータに基づいて、試料測定行列T+を光学フィルム11の偏光特性の測定前に予め算出しておく。そして、光学フィルム11の偏光特性の測定時には、各結合画素で得られる測定値D1〜D4Nと、試料測定行列T+とを用いて、光学フィルム11(単位測定エリアE)のM行列要素Mijを算出し、算出したM行列要素Mijを用いて偏光特性を算出する。このため、光学特性測定装置10によれば、直線複屈折、直線2色性、円複屈折、円2色性、偏光解消等の種々の偏光特性を、迅速かつ正確に算出することができる。
なお、前述のように、光学特性測定装置10は、受光部13の視野13aにほぼ一致するように測定光L3を照射する投光部12を備える。これにより、光学特性測定装置10は、投光部12のキャリブレーションを迅速に行うことができる。例えば、受光部13の視野13a外まで測定光L3を照射する大面積の投光部を用い、受光部13を移動させながら光学フィルム11の偏光特性を測定する場合には、光学フィルム11の偏光特性の測定開始に先立って、投光部12による測定光L3の照射範囲(投光面12a)の全体について、キャリブレーションにより測定光L3のSパラメータを決定しなければならない。この場合と比較すると、光学特性測定装置10は、Sパラメータを決定しなければならない面積が小さいのでキャリブレーションに要する時間は短い。また、投光部12のサイズも必要最小限であるので、投光部12にかかるコストも少なく済む。
なお、上述の実施形態では、投光部12は、受光部13の視野13a内でほぼ一様な円偏光を測定光L3として照射するが、単位投光エリアF毎に照射する測定光L3のSパラメータが異なる例を説明したが、これに限らない。例えば、全ての単位投光エリアFでSパラメータが均一な測定光L3を照射する投光部12を用いても良い。この場合、単位投光エリアF毎のSパラメータは全て同一値であり、上述の実施形態では単位投光エリアF(1)〜F(N)で各々区別していたストークスベクトルSnは単一のS=(S0,S1,S2,S3)とすることができる。このため、前述の数8に対応する式は、Sパラメータについて単位投光エリアF(n)を区別する添字nをなくし、下記数12で表される。
したがって、前述の数9と同様に、測定値D1〜DNの式を並べ、測定値ベクトルD、M要素ベクトルM′を用いて、M要素ベクトルM′を測定値ベクトルDに対応付ける行列式を書くと、下記数13になる。
さらに、光学フィルム11の偏光特性が直線複屈折とみなせる場合には、単位測定エリアEのM行列は前述の数10で表せるので、これを用いて上述の数13を整理すると、下記数14のように書ける。そして、M行列要素が0となる行を削除すると下記数15となり、さらに整理すると、下記数16となる。
したがって、数16において、各結合画素の偏光伝達行列Aの要素からなる行列T′とし、その逆行列をT′+とすれば、下記数17となる。但し、Φ、ψ、ξは、下記数18で表される。
また、測定値D1〜D4N(測定値ベクトルD)から数18の左辺の要素(S0,Φ、ψ、ξ)を算出することができれば、これらの各要素を用いて、主軸方位α及びレタデーションδは下記数19の式で求めることができる。
このため、制御部16は、試料測定行列として行列T′+を算出しておき、測定値D1〜DNから数18の左辺の要素(S0,Φ、ψ、ξ)を算出し、数19に基づいて主軸方位α及びレタデーションδを算出するようにしても良い。
なお、上述の実施形態では、分割波長板31に第1〜第4波長板31a〜31dの4種の波長板を設ける例を説明したが、これに限らない。例えば、偏光特性を精度良く測定するためには、分割波長板31に設ける波長板の種類(種類は主軸方向と遅相量で決まる)は4以上であっても良い。このように、分割波長板31内の波長板の種類を増加させると、各結合画素の測定値Dに含まれるノイズの遮断周波数を高くし、より高精度に光学フィルム11の偏光特性を測定することができるようになる。
但し、分割波長板31内の波長板の種類を単に増加し過ぎると、1つの波長板の面積が小さくなるために、前述のような平均効果が小さくなり、測定値の信頼度が低下する。また、分割波長板31内の波長板の境界を跨ぐ単位受光エリアCP及び結合画素は測定に使用できないので、分割波長板31内の波長板の種類を多くするほど、使用できない単位受光エリアCPの数も増大し、撮像素子34の実質的な受光面積が小さくなる。これは、S/N比の低下を意味する。こうしたことから、分割波長板31内の波長板の種類は、偏光特性の算出に必要な最小限の4種類以上であれば良く、多くとも40種類以下であることが好ましい。
なお、上述の実施形態では、第1〜第4波長板31a〜31dの主軸方向は、第1波長板31aの主軸方向を基準として36度ずつ回転した方向としたが、これは、第1〜第4波長板31a〜31dの各主軸方向が最も離れるように、180度を均等に分割する角度である。したがって、N(4以上)個の波長板で分割波長板31を構成する場合には、1つの波長板の主軸方向を基準として、他の波長板の主軸方向が180/(N+1)度ずつ回転した向きになっていることが好ましい。但し、前述のように、キャリブレーション時に実測して受光部13の偏光伝達行列が求められるので、厳密さは不要であり、例えば、上述の値の概ね±0.5度の範囲内であれば良い。
また、上述の実施形態では、第1〜第4波長板31a〜31dの遅相量はいずれも135度である。このように、各波長板31a〜31dの主軸方向が互いに最も離れる角度になるように配置し、かつ、遅相量が約135度であることで、試料測定行列T+(及び偏光特性)を算出するときに最も誤差を小さくできる。
上述の各波長板31a〜31dの遅相量は、シミュレーションの結果によって定めた値である。具体的には、図14及び図15に示すように、試料測定行列T+を算出するときの計算誤差は、波長板の種類数(4種類を4分割と表す)によらず、波長板の遅相量が概ね120〜140度の場合、及び220〜240度の場合に最小になることがわかる。より詳細なシミュレーションによれば、遅相量が約135度または約225度の場合に計算誤差が採用になることがわかった。こうしたことから、分割波長板31内の波長板は、遅相量が、70度以上170度以下または190度以上290度以下の範囲(図15で相対誤差が概ね20以下となる範囲)であれば良く、100度以上160度以下または200度以上260度以下の範囲(図15で相対誤差が2桁に収まる範囲)であることが好ましく、上述のように誤差が概ね最小になる120度以上140度以下または220度以上240度以下であることがより好ましく、約135度または約225度であることが特に好ましい。
なお、上述の実施形態では、分割波長板31と偏光板32がテレセントリックレンズ33の前(光学フィルム11側)に配置される例を説明したが、これに限らない。例えば、図16に示すように、撮像素子34とテレセントリックレンズ33の間に分割波長板31と偏光板32を配置しても良い。この場合、テレセントリックレンズ33の前に設ける場合と比較して、分割波長板31や偏光板32を小さくすることができるので、面積が小さい分、分割波長板31及び偏光板32のコストを低減することができる。但し、結合画素の偏光伝達行列Aの誤差が大きくなりやすい。
なお、上述の実施形態では、1×4画素を1つの結合画素とする例を説明したが、これに限らない。図17に示すように、結合画素を構成する画素数(以下、結合数という)が大きくなるほど、結合画素毎の出力値(測定値)のばらつきが小さくなる。このため、結合数をある程度大きくして測定しなければ、同じ単位測定エリアEに対して測定回数(撮像回数)を増やして平均化する等しない限り、撮像素子34のノイズのために、単位測定エリアEの偏光特性を精度良く測定することができない。このため、上述の実施形態で説明したように、画素P毎の出力値を測定子として用いるのではなく、少なくとも2以上の画素で形成される結合画素を測定の単位として用いることが好ましい。
図17のグラフは、撮像素子34として12ビット出力のCCD型撮像素子(1/1.8インチ、200万画素、画素Pのサイズは4.4μm□)を用い、比較的明るい一定の光(出力値が3740付近になる光)を入射させ、結合数(x)を変えながら、256回の測定を行って得られた全出力値のうち最大値から最小値を引いた値をばらつき(y)としてプロットしたものである(黒丸)。各点から得られる近似曲線(破線)は、y=171.68x−0.5006であり、結合数xに対してほぼ−1/2乗に比例していることから、撮像素子34の出力に重畳するノイズは、ランダムノイズの性質がある。
なお、上述の実施形態では、投光部12や受光部13は移動せず、光学フィルム11をX方向に搬送しながら偏光特性の測定を行う例を説明したが、これに限らない。光学フィルム11の偏光特性の測定には、投光部12及び受光部13の組と、光学フィルム11が所定方向(X方向)に相対的に移動していれば良いので例えば、光学フィルム11を固定し、投光部12や受光部13を一体に移動させながら偏光特性の測定を行っても良い。また、光学フィルム11と、投光部12及び受光部13をともに相対的に移動させながら偏光特性の測定を行っても良い。
なお、上述の実施形態では、受光部13の視野13aが光学フィルム11の幅方向(Y方向)の一部分であり、光学フィルム11の偏光特性が測定される領域は、視野13aを光学フィルム11の搬送方向Xに延ばした帯状の領域であり、光学フィルム11の一部である。したがって、光学フィルム11の全面の偏光特性を測定する場合、例えば、図18に示すように、光学フィルム11の幅方向に複数組の投光部12A〜12D、受光部13A〜13Dを設けることが好ましい。この場合、投光部及び受光部の各組は、幅方向に1列に並んで配置される必要はなく、光学フィルム11が搬送されたときに、投光部及び受光部の各組によって光学フィルム11の全面が隙間なく測定される配置であれば良い。
また、図18では、光学フィルム11の幅方向に複数組の投光部12A〜12D、受光部13A〜13Dを設ける例を説明したが、図19に示すように、1組の投光部12及び受光部13を幅方向に掃引して、光学フィルム11の全面を漏れなく測定するようにしても良い。
なお、上述の実施形態では、投光部12は、視野13a内にほぼ一様な円偏光の測定光L3を照射する例を説明し、また、投光部12が照射する測定光L3が視野13a内で完全に一様であり、各単位投光エリアFでSパラメータに区別がない変形例を説明した。しかし、投光部12が照射する測定光L3が視野13a内で完全に一様であることに加え、受光部13においてX方向に並ぶ単位受光エリアCP間で同じ波長板に対応する各結合画素に区別がないほど受光部13が精巧に形成されている場合には、試料測定行列T+が算出できないことがある。
これは、単位投光エリアF毎に測定光L3のSパラメータに区別がなく、かつ、同じ波長板に対応する各結合画素間で偏光伝達行列Aにも区別がない場合に相当する。具体的には、例えば前述の数9において、S0n〜S3nとA1an〜A4an,A1bn〜A4bn,A1cn〜A4cn,A1dn〜A4dnの添字nによる区別がない場合である。この場合、各測定値D1〜D4Nも、波長板31a〜31dの数に応じて4種類の値になる。したがって、数9の式は、未知数が全16個(M行列要素Mij)あるにもかかわらず、4本の方程式と実質的に同じものになってしまい、試料測定行列T+は算出できず、M行列要素Mijも決定できない(あるいは極めて誤差が大きい)ので、偏光特性も算出できない。
こうしたことを鑑みて、測定光L3を時間的に変調することにより、測定光L3のSパラメータに単位投光エリアF毎の区別を積極的に生じさせ、上述のような不具合が発生しないようにしても良い。この場合には、これまで進めてきた直線複屈折試料であるという限定が解除され、数13における擬似逆行列は存在し、試料のM要素のすべてを測定することが可能になる。
測定光L3を時間的に変調するには、例えば、図20に示すように、投光部12を、面光源21,偏光板22,1/4波長板51で構成する。面光源21及び偏光板22は、1/4波長板51の形状に合わせて、模式的に、円形に形成されているが、上述の実施形態で説明した面光源21,偏光板22と同じものである。一方、1/4波長板51は、モータ52によって測定光L3の照射光軸53のまわりに回転するように設けられる。1/4波長板51の回転は、制御部16によって制御され、右回りまたは左回りに、光学フィルム11の搬送量や受光部13の撮像タイミングと同期した所定速度で回転される。これにより、1/4波長板の主軸方位γが変化する。
こうして1/4波長板51が回転される場合、図21に示すように、ある単位測定エリアEに着目すると、1回目の測定は単位受光エリアCP(1)によって行われ、このとき照射される測定光L3は、1/4波長板51の主軸方位γに応じたSパラメータの測定光となる。次いで、光学フィルム11が単位受光エリアCPの幅分だけ搬送され、単位受光エリアCP(2)に対応する位置に入ると、2回目の測定が行われる。2回目の測定では、1/4波長板51が回転しているので主軸方位γの方向が変化し、単位測定エリアEに照射される測定光L3のSパラメータは、単位受光エリアCP(1)による1回目の測定時から変化している。このため、単位受光エリアCP(1)と単位受光エリアCP(2)に偏光伝達行列Aに差がなくても、各々で得られる測定値D1,D2は異なり、前述の数8の式で表される式も互いに独立のものとなる。そして、3回目の測定以降も同様である。
したがって、上述のように、投光部12の1/4波長板を回転させ、測定光L3を時間的に変調することにより、前述の数9に含まれるN本の方程式を互いに独立なものになる。これにより、試料測定行列T+、M行列要素Mij、種々の偏光特性を安定して算出することができる。
なお、上述のように投光部12の1/4波長板を回転させる場合には、主に回転角に応じて測定光L3のSパラメータが変化する。このため、回転角とSパラメータとの対応関係を1度求めておけば、測定開始時の投光部12のキャリブレーションは、必ずしも毎回は必要ない。したがって、投光部12の1/4波長板や偏光板を回転させて測定光L3を時間変調する場合には、投光部12のキャリブレーションに要する時間が削減でき、速やかに光学フィルム11の偏光測定を開始することができる。
なお、測定光L3を積極的に、空間的に変調することによっても同目的を達成することができる。このように、測定光L3を空間変調する場合には、例えば図22に示すように、投光部12の1/4波長板を、X方向に複数種類の1/4波長板を並べた分割波長板61とすれば良い。但し、投光部12の分割波長板61は、受光部13の分割波長板31よりも分割数を細かくし、少なくとも各波長板31a〜31dに、複数の1/4波長板61a,61b・・・が含まれるようにすることが好ましい。
投光部12の分割波長板61を形成する各1/4波長板61a,61b,・・・は、主軸方向γの配列は任意であり、時間変調の例と対応するように周期的に変化するように配置しても良いし、ランダムでも良い。
なお、上述の実施形態では、光学フィルム11の搬送量と受光部13による測定タイミングが同期され、単位測定エリアEは各単位受光エリアCPで1回ずつ、合計でN回測定される例を説明したがこれに限らない。例えば、より測定精度を向上させるためには、より測定回数を増加させることが好ましい。
この場合、図23に示すように、光学フィルム11の搬送量に対して、例えば2倍の回数、測定を行うようにする。ある単位測定エリアEについて、単位受光エリアCP(n−1)において2n−2回目の測定を行った後、光学フィルム11を単位測定エリアEの半分の長さだけ搬送したときに受光部13は光学フィルム11を撮像する。この2n−2回目の測定では、単位測定エリアEによるデータは単位受光エリアCP(n−1)と単位受光エリアCP(n)で測定されることになる。その後も、単位測定エリアEの半分の長さだけ光学フィルム11を搬送したときに、受光部13が光学フィルム11を撮像するようにする。
こうすると、(a),(c),(d)で示す2n−2回目,2n回目,2n+2回目の測定で得られる測定値は、上述の実施形態で得られるものと同じであるが、(b)(d)で示す2n−1回目、2n+1回目の測定のように、単位測定エリアEが2つの単位受光エリアCPにまたがって測定される分、多くの測定値が得られる。
単位測定エリアEが2つの単位受光エリアCPにまたがって測定される場合の測定値の扱いは次のようにすれば良い。例えば、図24に示すように、単位測定エリアEが単位受光エリアCP(n−1)と単位受光エリアCP(n)にまたがって測定された場合には、単位受光エリアCP(n−1)で得た測定値Dn−1と、単位受光エリアCP(n)で得た測定値Dnを、単位測定エリアEが両単位受光エリアCP(n−1),CP(n)に重複している割合に応じて混合した値を、この測定回における単位測定エリアEの測定値とする。具体的には、今の場合、単位測定エリアEが両単位受光エリアCP(n−1),CP(n)に重複している割合は、単位受光エリアCP(n−1)で1/2、単位受光エリアCP(n)で1/2なので、1/2・Dn−1+1/2・Dnをこの測定での単位測定エリアEの測定値とすれば良い。したがって、単位測定エリアEが、単位受光エリアCP(n−1)の3/10の位置、かつ、単位受光エリアCP(n)の7/10の位置にあるときに測定した場合には、3/10・Dn−1+7/10・Dnをこの測定での単位測定エリアEの測定値とすれば良い。
なお、上述の実施形態では、受光部13のキャリブレーション時に、各波長板31a〜31dにおける各々の測定値の合計Da〜Ddを算出し、これを用いて単位投光エリアFのSパラメータを算出する態様を説明したが、これに限らない。例えば、各波長板31a〜31dで、任意に代表とする単位受光エリアCPを各々定める。すると、各波長板31a〜31dについて1つずつ、D代表=A代表・Sjの式が得られる。したがって、これらの4つの方程式を解くことによっても測定光L3のストークスベクトルSjを算出するようにしても良い。但し、上述の実施形態のように各波長板31a〜31dにおける各々の測定値の合計Da〜Ddを利用するほうが、高精度に測定光L3のストークスベクトルSjを算出することができる。
なお、上述の実施形態では、撮像素子34としてCCD型の撮像素子を用いる例を説明したが、撮像素子34としてCMOS型の撮像素子を用いても良い。この場合も、上述のCCDの場合と同様、単位受光エリアCPを測定単位とする。また、結合画素の結合数等を決定法もCCDの場合と同様である。
なお、上述の実施形態では、幅方向Yと比較して、搬送方向Xにほぼ無限の長さを有する光学フィルム11の偏光特性を測定する例を説明したが、光学特性測定装置10で測定する光学フィルム11の態様はこれに限らない。例えば、液晶表示装置等に用いるために、適切なサイズに切断された光学フィルムの偏光特性も光学特性測定装置10で好適に測定することができる。
また、上述の実施形態では、光学フィルム11の偏光特性を測定する例を説明したが、これに限らず、測定光L3を透過するものであれば、その偏光特性を光学特性測定装置10で測定することができる。例えば、フィルムというには厚い板状の素子(あるいは材料)、表面に凹凸等の加工が施された素子等の偏光特性も、測定光L3を透過するものであれば、光学特性測定装置10で好適に測定することができる。
さらに、上述の実施形態では、光学フィルム11が一様な偏光特性を有するものとしたが、光学特性測定装置10は、測定対象物の偏光特性、あるいは偏光特性の分布等によらず、その偏光特性を測定することができる。例えば、部分的に偏光特性が異なるような素子や周期的に偏光特性が異なるような素子であっても光学特性測定装置10でその偏光特性を好適に測定することができる。