以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本実施形態においては、マイクロ波ドップラーセンサーを用いたトイレ装置のうち、図1に示されるように、トイレ室内にマイクロ波ドップラーセンサーを用いて人体検知や尿流検知を行う小便器洗浄装置Aを複数隣接させて配置した小便器洗浄装置システムSに関して説明する。
図2は本発明の実施形態における小便器洗浄装置Aの全体構成図、図4は小便器洗浄装置AのコントロールユニットCUの概略構成図である。
図2に示されるように、本実施形態における小便器洗浄装置Aは、小便器1と、ボール部2と、給水路3の中途部に設けられ、小便器1のボール部2内へ洗浄水を供給する給水バルブ4と、ボール部2の底部に配置され、小便器1のボール部内の汚水を排水する排水路5と、この排水路5に連通するトラップ管路6とを備えている。更に、小便器洗浄装置Aは、小便器1のボール部2に向けて送信波としてマイクロ波を送信し、その反射波を受信してドップラー信号を生成するドップラーセンサーDSと、このドップラーセンサーDSから出力されるドップラー信号に基づいて人体検知や尿流検知を行い、この人体検知や尿流検知の結果に応じて給水バルブ4を制御し、ボール部2内に洗浄水を供給するコントロールユニットCUとを有している。なお、給水バルブ4は、電磁弁などから構成される。
ドップラーセンサーDSは、小便器1の上部背面側に配置され、ボール部2を含む斜め下前方に向けて電波を放射して送信し、この電波の反射波を受信するものであり、小便器1のボール部2に尿が流れたこと(尿流)のほか、小便器1に人体が近づいてきたこと(人体近接)や小便器から人体が遠ざかったこと(人体離反)を検知するために用いられるものであり、図4に示されるように構成されている。
図4に示されるように、ドップラーセンサーDSは、小便器1の上部背面側から正面側のボール部2に向けて電波を送信するために10.525GHzの電気信号である送信信号S1を生成する発振回路10と、発振回路10から出力される送信信号S1を10.525GHzのマイクロ波として送信する送信部11と、送信部11から送信されたマイクロ波が検知対象物によって反射され、その反射波を受信して電気信号に変換した受信信号S2を出力する受信部12と、送信信号S1の周波数と受信信号S2の周波数との差分信号であるドップラー信号S3を出力する差分検知手段13から構成される。また、発振回路10と送信部11との間には、スイッチSW1が設けられており、このスイッチSW1がコントロールユニットCUによってオンされることによって送信部11へ送信信号S1が供給され、コントロールユニットCUによってオフされることによって送信部11への送信信号S1の供給が停止する。
このドップラーセンサーDSは、ドップラー効果を利用して以下の式(1)に基づいて検知対象物の動きを検知するために用いられるものである。
基本式:ΔF=FS―Fb=2×FS×ν/c (1)
ΔF:ドップラー周波数(ドップラー信号S3の周波数)
FS:送信周波数(送信信号S1の周波数)
Fb:反射周波数(受信信号S2の周波数)
ν:検知対象物の移動速度
c:光速(300×106m/s)
すなわち、送信部11から送信された周波数FSのマイクロ波は、速度νで移動している検知対象物に反射する。この反射波は、相対運動によるドップラー周波数シフトを受けているためその周波数はFbとなり、受信部12によって受信される。そして、差分検知手段13によって、送信波と反射波の周波数差ΔFであるドップラー信号S3が検知信号として取り出され、このドップラー信号S3に基づいて、人体検知(人体接近検知や人体離反検知)及び尿流検知が行われる。
ドップラーセンサーDSから出力されるドップラー信号S3は、A/D変換手段であるA/Dコンバーター22によってデジタルドップラー信号S4へ変換される。その後、このデジタルドップラー信号S4は、デジタルフィルター回路23によって、人体検知及び尿流検知に必要な帯域以外の周波数成分が除去され、対象物検知部24に入力される。
対象物検知部24は、入力されたデジタルドップラー信号S4に基づいて、人体検知や尿流検知の判定を行う。対象物検知部24で人体検知や尿流検知が判定されたとき、制御部25は所定の条件に従い給水バルブ4(機能部)を制御して、ボール部2内に洗浄水を供給する。
ここで、本実施形態においては、人体として検知するためのドップラー信号を50Hz以下とし、尿流として検知するためのドップラー信号を100〜180Hzとしている。なお、50Hz以下のドップラー信号は、検知対象物の速度νが約0.7m/s以下の速度であるときにドップラーセンサーDSから出力され、100〜180Hzのドップラー信号は、検知対象物の速度νが約1.4〜2.6m/sの速度のときにドップラーセンサーDSから出力されるものである。
ドップラーセンサーDSから50Hz以下の所定閾値以上のドップラー信号S3が所定期間連続して出力されると、対象物検知部24は人体接近検知を行う。このように人体接近検知が行われると制御部25は、給水バルブ4を制御して、ボール部2内に所定量の洗浄水を供給する。
その後、ドップラーセンサーDSから100〜180Hzの所定閾値以上のドップラー信号S3が所定期間連続して出力されると、対象物検知部24は尿流検知を行う。その後更に、ドップラーセンサーDSからら50Hz以下のドップラー信号S3が所定期間連続して出力されると、対象物検知部24は人体離反検知を行う。このように尿流検知後、人体離反検知が行われると制御部25は、給水バルブ4を制御して、ボール部2内に所定量の洗浄水を供給して、小便器1の洗浄を行う。
ところで、小便器洗浄装置Aを複数隣接した小便器洗浄装置システムSにおいては、図3に示すように、隣接するドップラーセンサーDS同士が互いに影響しあい、人体や尿流の誤検知を発生する恐れがある。
そこで、図4,図5に示されるように、本実施形態におけるコントロールユニットCUに、ドップラーセンサーDSを等間隔のサンプリング周期T1で間欠動作させるセンサー制御部20を設け、ドップラーセンサーDSをサンプリング周期T1で間欠動作させるようにして、隣接する小便器洗浄装置AのドップラーセンサーDS同士が同時に動作する可能性を低減している。
より具体的には、ナイキストのサンプリング定理を用いて、ドップラーセンサーDSを間欠駆動させることによって、ドップラーセンサーDSの動作時間を可及的に低減させるのである。本実施形態においては、対象物検知のために180Hzまでのドップラー信号を得ることができればよいため、サンプリング周波数は、360Hzよりも高い周波数であればよい。そこで、本実施形態においては、図5に示すように、等間隔のサンプリング周期T1(動作間隔期間)を2ms(サンプリング周波数500Hz)としている。また、1回のサンプリングのためにドップラーセンサーDSを動作させるための送信期間T2を10μsとしている。
本実施形態では、タイマーTma、タイマーTmb、タイマーTmcと、メモリーRとを備えている。タイマーTmaは、後述する干渉検知処理、干渉調整処理、シフト処理の一連の処理を実行するタイミングを計時するためのタイマーとして機能している。タイマーTmbは、サンプリング周期T1を計時するためのタイマーとして機能している。タイマーTmcは、複数のサンプリング周期T1に渡って、後述する干渉検知処理、干渉調整処理、シフト処理の一連の処理を実行する場合の、時間を計時するためのタイマーとして機能している。メモリーRは、干渉検知処理で検知した受信波に関する情報を格納するためのメモリーである。
以上のようなサンプリング周期T1での間欠動作に加え、さらにドップラーセンサーDS同士が同時に動作する可能性を低減するために、送信期間T2をシフトさせるためのシフト処理及びそれに付帯する干渉検知処理及び干渉調整処理を行っている。引き続いて、送信期間T2をシフトさせるための、コントロールユニットCUで実行される干渉検知処理、干渉調整処理、及びシフト処理について図6〜図12を参照しながら説明する。
図6は、送信期間T2をシフトさせるための、干渉検知処理、干渉調整処理、及びシフト処理についてのメインルーチンを示すフローチャートである。図7は、図6のステップF110における干渉調整処理のサブルーチンを示すフローチャートである。図8は、図6のステップF110における干渉調整処理のサブルーチンの別例を示すフローチャートである。図9は、図7及び図8のステップF210におけるタイミング検索処理のサブルーチンを示すフローチャートである。図10は、図9のタイミング検索処理を説明するためのタイムチャートである。図11は、図7及び図8のステップF210におけるタイミング検索処理のサブルーチンの別例を示すフローチャートである。図12は、図11のタイミング検索処理を説明するためのタイムチャートである。
図6に示されるように、ステップF101では、干渉検知処理を行う間隔を計時するためのタイマーTmaをスタートさせる。ステップF101に続くステップF102では、サンプリング周期T1を計時するためのタイマーTmbをスタートさせる。
ステップF102に続くステップF103では、ドップラーセンサーDSの送信部11からマイクロ波を送信し、ドップラーセンサーDSの受信部12でその反射波を受信する。差分検知手段13によって、送信波と反射波の周波数差ΔFであるドップラー信号S3が検知信号として取り出される。ドップラーセンサーDSから出力されるドップラー信号S3は、A/D変換手段であるA/Dコンバーター22によってデジタルドップラー信号S4へ変換される。その後、このデジタルドップラー信号S4は、デジタルフィルター回路23によって、人体検知及び尿流検知に必要な帯域以外の周波数成分が除去され、対象物検知部24に入力される。
ステップF103に続くステップF104では、対象物検知部24は、入力されたデジタルドップラー信号S4に基づいて、人体検知や尿流検知の判定を行う。対象物検知部24で人体検知や尿流検知が判定されたとき、制御部25は所定の条件に従い給水バルブ4を制御して、ボール部2内に洗浄水を供給する。
ステップF104に続くステップF105では、タイマーTmbが所定の時間(本実施形態では2ms)を経過してタイムアップしているか判断する。タイマーTmbがタイムアップしていなければステップF105の処理をループし、タイマーTmbがタイムアップしていればステップF106の処理に進む。ステップF106では、タイマーTmbを停止する。
ステップF106に続くステップF107では、タイマーTmaが所定の時間(本実施形態では30分)を経過してタイムアップしているか判断する。タイマーTmaがタイムアップしていなければステップF102の処理に戻り、タイマーTmaがタイムアップしていればステップF108の処理に進む。
ステップF108では、対象物としての人体を検知中であるか判断する(ステップF104の処理結果に基づく)。人体検知中であれば、干渉検知処理を行わずにステップF102の処理に戻り、人体検知中でなければ、ステップF109の処理に進む。
ステップF109では、タイマーTmaを停止する。ステップF109に続くステップF110では、干渉検知処理、干渉調整処理、及びシフト処理を行い、干渉防止タイミングを検知するサブルーチンを実行する。
続いて、図7を参照しながら、図6のステップF110における干渉調整処理及びシフト処理のサブルーチンを説明する。
ステップF201では、メモリーRの記憶領域の中から、受信部12の反射波受信回数を格納した全ての領域(本実施形態の場合この領域は複数に区分されている)の値をクリアして0に戻す。ステップF202では、タイマーTmcをスタートさせる。タイマーTmcは、複数のサンプリング周期T1に渡って(本実施形態の場合、3つのサンプリング周期T1に渡って)、後述する干渉検知処理、干渉調整処理、シフト処理の一連の処理を実行する場合の、時間(3つのサンプリング周期T1であるから、3×2ms=6ms)を計時するためのタイマーとして機能している。
ステップF202に続くステップF203では、サンプリング周期T1を計時するためのタイマーTmbをスタートさせる。
ステップF203に続くステップF204では、ドップラーセンサーDSの送信部11からマイクロ波を送信し、ドップラーセンサーDSの受信部12でその反射波を受信する。差分検知手段13によって、送信波と反射波の周波数差ΔFであるドップラー信号S3が検知信号として取り出される。ドップラーセンサーDSから出力されるドップラー信号S3は、A/D変換手段であるA/Dコンバーター22によってデジタルドップラー信号S4へ変換される。その後、このデジタルドップラー信号S4は、デジタルフィルター回路23によって、人体検知及び尿流検知に必要な帯域以外の周波数成分が除去され、対象物検知部24に入力される。
ステップF204に続くステップF205では、対象物検知部24は、入力されたデジタルドップラー信号S4に基づいて、人体検知や尿流検知の判定を行う。対象物検知部24で人体検知や尿流検知が判定されたとき、制御部25は所定の条件に従い給水バルブ4を制御して、ボール部2内に洗浄水を供給する。
ステップF205に続くステップF206では、送信部11からマイクロ波を送信していないサンプリング周期T1において、受信部12が反射波を受信したか判断する。受信部12が反射波を受信していなければ、ステップF209の処理に進む。受信部12が反射波を受信していれば、ステップF207の処理に進む。
ステップF207では、メモリーRの記憶領域の中から、受信部12の反射波受信回数を格納した領域の値に1を加算する。ステップF207に続くステップF208では、メモリーRの記憶領域の中から、受信部12が反射波を受信したタイミングでのタイマーTmcの値を格納する。ステップF206において受信部12が反射波を受信するのは、他のトイレ装置からの送信波によるものと考えられ、この送信波の送信タイミングを保持するためである。従って、このステップF207の処理が複数回実行される場合には、メモリーRの異なる記憶番地(記憶領域)にタイマーTmcの値を格納する。
ステップF209では、タイマーTmbが所定の時間(本実施形態では2ms)を経過してタイムアップしているか判断する。タイマーTmbがタイムアップしていなければステップF206の処理に戻り、タイマーTmbがタイムアップしていればステップF210の処理に進む。ステップF210では、タイマーTmbを停止する。
ステップF211では、タイマーTmcが所定の時間(本実施形態では6ms)を経過してタイムアップしているか判断する。タイマーTmcがタイムアップしていなければステップF203の処理に戻り、タイマーTmcがタイムアップしていればステップF212の処理に進む。ステップF212では、タイマーTmcを停止する。
ステップF213では、メモリーRに記憶した受信部12の反射波受信回数が0であるか判断する。メモリーRに記憶した受信部12の反射波受信回数が0であればサブルーチンの処理を終了し、メモリーRに記憶した受信部12の反射波受信回数が0でなければステップF214の処理に進む。
ステップF214では、干渉調整処理としてのタイミング検索を行うサブルーチンを実行する。ステップF214に続くステップF215では、ステップF214の結果に基づいて、送信部11の電波送信タイミングを調整するように、送信部11からの電波送信を待機させ、シフト処理を実行する。
続いて、図8を参照しながら、図6のステップF110における干渉調整処理及びシフト処理のサブルーチンの別例を説明する。図8に示す例では、他のトイレ装置からの送信電波を検知する動作の間には、自身の送信部11から電波を送信しないようにするようにし、より検知精度を高めている。
ステップF201aでは、メモリーRの記憶領域の中から、受信部12の反射波受信回数を格納した領域の値をクリアして0に戻す。ステップF202aでは、タイマーTmcをスタートさせる。タイマーTmcは、複数のサンプリング周期T1に渡って(本実施形態の場合、3つのサンプリング周期T1に渡って)、後述する干渉検知処理、干渉調整処理、シフト処理の一連の処理を実行する場合の、時間(3つのサンプリング周期T1であるから、3×2ms=6ms)を計時するためのタイマーとして機能している。
ステップF202aに続くステップF203aでは、受信専用のRモードにするため、送信部11からのマイクロ波の送信を停止する。
ステップF203aに続くステップF204aでは、受信部12が反射波を受信したか判断する。受信部12が反射波を受信していれば、ステップF205aの処理に進む。受信部12が反射波を受信していなければ、ステップF207aの処理に進む。
ステップF205aでは、メモリーRの記憶領域の中から、受信部12の反射波受信回数を格納した領域の値に1を加算する。ステップF205aに続くステップF206aでは、メモリーRの記憶領域の中から、受信部12が反射波を受信したタイミングでのタイマーTmcの値を格納する。ステップF204aにおいて受信部12が反射波を受信するのは、他のトイレ装置からの送信波によるものと考えられ(自身の送信部11からマイクロ波を送信していない)、この送信波の送信タイミングを保持するためである。従って、このステップF206aの処理が複数回実行される場合には、メモリーRの異なる記憶番地(記憶領域)にタイマーTmcの値を格納する。
ステップF207aでは、タイマーTmcが所定の時間(本実施形態では6ms)を経過してタイムアップしているか判断する。タイマーTmcがタイムアップしていなければステップF204aの処理に戻り、タイマーTmcがタイムアップしていればステップF208aの処理に進む。ステップF208aでは、タイマーTmcを停止する。
ステップF209aでは、メモリーRに記憶した受信部12の反射波受信回数が0であるか判断する。メモリーRに記憶した受信部12の反射波受信回数が0であればサブルーチンの処理を終了し、メモリーRに記憶した受信部12の反射波受信回数が0でなければステップF210aの処理に進む。
ステップF210aでは、干渉調整処理としてのタイミング検索を行うサブルーチンを実行する。ステップF210aに続くステップF211aでは、ステップF210aの結果に基づいて、送信部11の電波送信タイミングを調整するように、送信部11からの電波送信を待機させ、シフト処理を実行する。
続いて、図9を参照しながら、図7のステップF214及び図8のステップF210aにおける干渉調整処理のサブルーチンを説明する。図9に示すサブルーチンは、メモリーRに格納された情報に基づいて、他のトイレ装置から送信される送信波と干渉を起こさないタイミングを検索するルーチンである。図10に、このサブルーチンの説明の理解を容易にするために参照するタイムチャートを示す。図10に示すタイムチャートは、タイマーTmcが計測する時間6msをサンプリング周期T1(2ms)ごとに3段に分割し、対応する時刻においてメモリーRにどのような情報が格納されていて、どのタイミングで送信波を送信すれば干渉が起きないかを示すものである。
図9及び図10において、「a」は、それぞれのサンプリング周期T1におけるポジションを示し、1〜10の値を取るものとする。換言すれば、サンプリング周期T1を10分割して、それぞれを「a」で示している。「b」は、3つのサンプリング周期T1のうちのどのサンプリング周期T1に属するかを示すものであり、0〜2の値を取るものとする。図10において、メモリーRに格納されている受信波の時刻情報に基づいてプロットしたメモリー値を、メモリー値m1,m2,m3,m4,m5,m6,m7,m8の8個例示している。
ステップF301では、「a」に「1」を設定し、「b」に「0」を設定する。ステップF302では、次式(2)が成立するメモリー値が存在するか検索する。
検索式:メモリー値−50μs≦(200μs×a)+(2ms×b)≦メモリー値+50μs (2)
つまり、メモリー値の前後50μsの領域に、「a」に「1」を設定し、「b」に「0」を設定したポイントが含まれるか検索する。メモリー値の前後50μsの領域に、「a」に「1」を設定し、「b」に「0」を設定したポイントが含まれていれば、干渉の恐れがあるのでこのポイント以外のポイントを検索するためステップF303の処理に進む。メモリー値の前後50μsの領域に、「a」に「1」を設定し、「b」に「0」を設定したポイントが含まれていなければ、干渉の恐れがないので、更に次の周期のポイントを検索するためステップF304の処理に進む。図10に示す例では、この式を満たすメモリー値がないので、ステップF304の処理に進む。
ステップF303の処理では、「a」の既存値に「1」を加算し、「b」は「0」のままとする。ステップF303に続くステップF307では、「a」が「10」を超えたか否かを判断する。「a」が「10」を超えていれば、干渉の恐れが無いポイントが検索できなかったので処理を終了する。「a」が「10」以下であれば、ステップF302の処理に進む。
ステップF304では、「b」の既存値に「1」を加算する。ステップF304に続くステップF305では、「b」が上限値を超えたか判断する。「b」が上限値を超えていればステップF306の処理に進み、「b」が上限値を超えていなければステップF302の処理に進む。本実施形態の場合は、上限値は「3」であり、「3」以上となれば、ステップF306の処理に進む。
上述のようにステップF302,F303,F304,F305,F306の処理を繰り返すと、「a」が「1」〜「10」の値であり、それぞれについて「b」が「0」〜「2」の値を取る30のポイントすべてについて、メモリー値m1〜m8との干渉の有無を検証することが可能となる。図10に示す例では、「a」が「3」「b」が「0」の場合にメモリー値m1と干渉し、「a」が「9」「b」が「0」の場合にメモリー値m2と干渉し、「a」が「2」「b」が「1」の場合にメモリー値m3と干渉し、「a」が「10」「b」が「1」の場合にメモリー値m4と干渉し、「a」が「1」「b」が「2」の場合にメモリー値m5と干渉し、「a」が「4」「b」が「2」の場合にメモリー値m6と干渉し、「a」が「7」「b」が「2」の場合にメモリー値m7と干渉し、「a」が「8」「b」が「2」の場合にメモリー値m8と干渉している。従って、「a」が「5」及び「6」の値を取るポジションは、「b」が「0」「1」「2」のいずれの値の場合も、メモリー値m1〜m8とは干渉しない。
図10に示す例において、上述のようにステップF302,F303,F304,F305,F306の処理を繰り返すと、「a」が「5」の値を取るポジションは、「b」が「0」「1」「2」のいずれの値の場合も、メモリー値m1〜m8とは干渉しないことが先に検索される。そこでステップF306では、200μs×5を検索結果時間(送信期間T2をシフトさせる時間)として図7のステップS215又は図8のステップS211aに進む。図7のステップS215及び図8のステップS211aでは、この検索結果時間分のシフトを支持する調整信号を、センサー制御部20に出力する。
図9及び図10を参照しながら説明した、検索結果時間を検索し干渉調整処理を行うフローは、メモリー値が各周期においてランダムに発生した場合にも対応できるものである。一方、実際には、メモリー値が各周期において略同じタイミングで記憶される場合も想定されるので、そのような場合に適合し、より簡易な干渉調整処理のフローを図11及び図12を参照しながら説明する。
図11に示すサブルーチンは、メモリーRに格納された情報に基づいて、他のトイレ装置から送信される送信波と干渉を起こさないタイミングを検索するルーチンである。図12に、このサブルーチンの説明の理解を容易にするために参照するタイムチャートを示す。図12に示すタイムチャートは、タイマーTmcが計測する時間6msの間に、メモリーRに格納されたメモリー値をプロットしたものである。図11及び図12において、メモリーRに格納されたメモリー値の個数は、3c個であるものとしている。
ステップF401では、受信回数(メモリーRに格納されたメモリー値の個数、本実施形態の場合は3c個)を、タイマーTmcが計測する時間6ms内に含まれるサンプリング周期T1の数n(本実施形態の場合は「3」)で割り、一つのサンプリング周期T1に含まれるメモリー値の個数(本実施形態の場合は「c」個)を算出する。この例が想定する前提では、他のトイレ装置から送信される送信波を受信していれば、各周期ごとにメモリー値が出現するものと想定される。
ステップF401に続くステップF402では、最初のサンプリング周期T1に含まれる各メモリー値について、サンプリング周期T1の開始タイミング又は直前のメモリー値からの時間を示す時間メモリー値を算出する。具体的には、図12に示すように、メモリー値1に対応する時間メモリー値1´は、メモリー値1が記録された時刻から時刻0を減算し、時刻0からメモリー値1が記録された時刻までの時間を示している。また、メモリー値2に対応する時間メモリー値2´は、メモリー値2が記録された時刻からメモリー値1が記録された時刻を減算し、メモリー値1が記録された時刻からメモリー値2が記録された時刻までの時間を示している。このようにして、サンプリング周期T1に含まれる、メモリー値1〜メモリー値cに対して時間メモリー値1´〜時間メモリー値c´を算出する。最後に、メモリー値cが記録された時刻からサンプリング周期T1の終期である2msに相当する時刻までの時間を示す時間メモリー値c+1´も算出する。
ステップF402に続くステップF403では、ステップF402で算出した時間メモリー値1´〜時間メモリー値c+1´のうちの最大値を、メモリー値Xとして定義する。図12に示す例では、時間メモリー値3´がメモリー値Xと定義される。
ステップF403に続くステップF404では、メモリー値Xとして定義された時間メモリー値を算出する際に、減算した側のメモリー値をメモリー値Yとして定義する。図12に示す例では、メモリー値2がメモリー値Yとして定義される。
ステップF404に続くステップF405では、メモリー値Yにメモリー値Xを2で割ったものを加算し、その値を検索結果時間(送信期間T2をシフトさせる時間)として図7のステップS215又は図8のステップS211aに進む。図7のステップS215及び図8のステップS211aでは、この検索結果時間分のシフトを支持する調整信号を、センサー制御部20に出力する。
本実施形態においては、トイレ装置として小便器洗浄装置について説明したが、これに限られるものではなく、図13に示すような洋式便器洗浄装置50や自動水栓装置60などであってもよい。すなわち、図4に示すような構成を適用することができる限り、マイクロ波ドップラーセンサーを用いて自動的に給水制御を行なったり着座検知(着座検知に伴う便蓋開閉や便座暖房を含む)を行ったりするトイレ装置であれば、どのようなものであっても構わない。このように、本発明を、トイレブースで用いる小便器洗浄装置、洋式便器洗浄装置、温水洗浄便座装置、自動水栓装置、自動水栓機能付き洗面装置などの種々のトイレ装置に適用することによって、トイレブース内においてどのような組み合わせで配置されても、マイクロ波ドップラーセンサー同士の影響を低減することができる。
上述した本実施形態によれば、予め定められた一定の時間間隔からなるサンプリング周期T1(動作間隔期間)をおいて、継続的に複数回検知動作を実行しているので、動作間隔期間としてのサンプリング周期を変動させた場合に必要となる基準周期に合わせた信号値に変換する処理を行う必要がなく、制御部25を含むコントロールユニットCUを簡素な構成とすることができる。
受信部12が送信期間T2以外に受信動作を行えば、送信部11からは送信波が送信されていないので、送信波と受信派の差分であるドップラー信号はそれを反映したものとなり、有効な信号成分は出現しないはずである。そこで、送信期間T2以外においても何らかの有効な信号成分が出現すれば、ドップラー信号が他のトイレ装置から影響を受けた信号であると判断できるので、その影響を受けた信号と干渉しないタイミングとなるように、送信部11の電波送信タイミングを調整する調整信号をドップラーセンサー部DSに出力する干渉調整処理を実行している。
調整信号を受けたドップラーセンサー部DSの送信部11は、その調整された電波送信タイミングに合わせて送信期間T2をシフトさせるので、シフトされた送信期間T2を基準として検知動作を予め定められたサンプリング周期T1(動作間隔期間)をおいて継続的に複数回実行しても、他のトイレ装置から送信された電波を誤って検知することなく、簡素な構成で且つ確実に誤検知を防止できるトイレ装置を提供することができる。
また本実施形態では、干渉検知処理を複数のサンプリング周期T1(動作間隔期間)に渡って実行するので、他のトイレ装置から送信される電波も複数回の送信期間において送信されたものを受信することができる。従って、他のトイレ装置から送信される電波の検知漏れを防いで、より確実に干渉検知処理を実行することができる。
また本実施形態では、干渉検知処理の実行中は、送信部11が送信波の送信を行わないので、このトイレ装置の送信部11から送信される送信波と他のトイレ装置から送信される送信波とが混在することがなく、確実に干渉検知処理を実行することができる。
また、送信部11が送信波を送信する送信期間T2や、それを継続的に複数回実行するためのサンプリング周期T1(動作間隔期間)は、個々のトイレ装置が内蔵する計時手段としての水晶発振子を用いて計時された時刻に基づいて決定される。従って、計時手段としての水晶発振子の精度公差によっては、一端干渉回避のための調整を行っても、時間の経過と共に再び干渉が発生することも想定される。そこで、干渉検知処理、干渉調整処理、及びシフト処理を、定期的に実行することで、再干渉の発生を確実に防止することができる。
また本実施形態では、シフト処理を、サンプリング周期T1(動作間隔期間)よりも十分に長い間隔(図6参照、本例では30分)ごとに実行するので、再干渉の発生を防止しつつ、干渉防止処理が頻繁に行われることによる過負荷を防止することができる。
この本実施形態では、検知動作において対象物が検知されていない非検知状態において、他のトイレ装置から送信される送信波による干渉を検知し防止するための、干渉検知処理、干渉調整処理、及びシフト処理を実行するので、対象物を検知する動作に影響を与えずにそれらの処理を実行することができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。