JP5532515B2 - キセノンランプ点灯装置およびキセノンランプ点灯方法 - Google Patents

キセノンランプ点灯装置およびキセノンランプ点灯方法 Download PDF

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Description

本発明は、水平点灯される放電ランプの点灯装置および点灯方法に関するものであり、特に、デジタルプロジェクターの光源として用いられる放電ランプなどの放電ランプの点灯装置および点灯方法に係わるものである。
映画館等で映像を投射するプロジェクタ装置の光源には、放電空間内にキセノンガスを封入した放電ランプが広く使われている。従来、映画館での上映システムでは、標準的に35ミリのフィルムに放電ランプからの放射光を照射し、スクリーン上に投影するフィルムプロジェクターが用いられてきたが、近時、映画館の上映システムにおいては、映像品質が向上するデジタル技術を用いた高度なCG化が可能になり、フィルム劣化が無く、フィルム作製に伴うコストを削減できる、といった利点から、デジタルシネマが普及してきており、これに合わせてDLP(デジタルライトプロセッシング:登録商標)技術を利用したデジタルプロジェクターへの置き換えが急速に進んでいる。
該デジタルプロジェクター装置への置き換えに伴って、装置のコストダウン、コンパクト化が求められており、ランプを点灯するためのランプ電源も当然にその対象になっている。
このため、ランプの定格消費電圧に見合う仕様となるように電源装置が小型化してきており、このような電源装置は、最高到達電圧を従来のものと比較して低く設定することで絶対的な電圧値を下げ、小型のトランスを用いることによってランプ点灯装置全体の小型化が図られている。
しかしながら、このような低電圧化を図った小型の電源装置を用いた場合に、ランプの点灯始動時に立ち消えを起こして不点灯になるという事態がしばしば発生している。
この理由は、ランプ電源が小型化した結果、始動電圧印加時に電圧が不足して、従来では十分賄えたランプ電圧を供給することができなくなり、アークを維持することができなくなるためである。
このような立ち消えは、放電ランプが新しく電極の損耗がない場合には生じないが、ランプが点灯を繰り返して陰極の先端が損耗してくると発生する。
図6(A)において、水平配置された放電ランプ、例えば、キセノンランプ80において、点灯開始時に始動電圧が印加されると、陰極84と陽極83間で絶縁破壊が起こった後、突入電流が流れることによって両電極間にアークAが形成される。
このとき、アークAには放電空間内部に封入されたガスの熱対流及び浮力により、アークAを鉛直方向上側に持ち上げる力が働く。
ここで、使用時間の短いランプでは、陰極84に含有されるエミッタ(電子放射性物質)の量が十分であり、しかも陰極84先端の変形がなく、突入電流により該陰極84が十分に加熱されるため、熱電子放射に素早く移行する。該熱電子放射に移行後は、陰極84から陽極83に向かって進むアーク中の電子の流れに勢いがあるため、前述したガスの対流による鉛直方向の上側に持ち上げようとする力が作用しても、アーク自身がこれによって大きな影響を受けることがない。
ところが、ランプがある程度の時間(例えば1000時間程度)使用されてくると、陰極に含有されるエミッタが安定して供給されなくなると共に、図6(B)に示すように陰極84先端部の変形が大きくなってきると、前記点灯開始時の突入電流による該陰極84の加熱が十分ではなくなる。
このため、熱電子放射に素早く移行することができなくなり、陰極84から陽極83に向かって進むアーク中の電子の流れが弱くなる。そのため、アークAはガスの熱対流および浮力の影響を強く受け、持ち上げられてしまい、図6(B)に示すように、弓なりのアークA´が形成されてしまう。
その結果、アークA´の距離が長くなってしまい、電圧が上昇する。そして、ランプ電圧が電源の供給電圧を超えてしまい、小型の電源ではこれをまかないきれず、ランプが立ち消えしてしまうという現象が頻発する。
上記のように、キセノンランプなどの放電ランプでは、定常点灯時においてフリッカー等の点において何ら問題のないランプ、すなわち、フリッカー寿命に到達していない、使用期間がまだ短いランプにおいても、前述したように、陰極先端が損耗することで立ち消えが生じることがある。そのため、十分にランプを使用できないまま、新品のランプに交換しなければならないといった弊害が生じている。
資源的観点からもランプをフリッカー寿命まで十分に使用できるようにすることが望ましい。
そのためには、始動時のランプ電圧を賄えるような大型の電源装置を用いれば何も問題がない。しかしながら、このような立ち消えが生じる期間は、始動後の0.3sという短い期間であり、この微少期間の電圧値を上げるためだけに大型の電源装置を用いることは、装置のコストダウンやコンパクト化を実現できなくなり、ユーザー要求からも逸脱してしまう。
ところで特開2003−051286号公報(特許文献1)には、放電ランプの電極形状の径時変化(損耗)に由来した電子の軌道(つまりアーク)の変化により発光領域が移動することを低減するため、電子の流れに作用する磁界を発生する磁石を放電ランプの近くに配置した放電ランプ装置が開示されている。
しかしながら、この従来技術では、ランプが安定点灯している状態において電子の軌道(アーク)が変動した場合にこれを修正しようとするものであって、ランプの近傍で定常的に磁界を発生させるものであり、ランプ始動時の立ち消えを解消しようとするものではない。
しかも、陰極に含まれるエミッタ(電子放射性物質)は、ある程度積算点灯時間を経ると、その含有量が減少してきて、陰極先端に安定してエミッタの供給が行われなくなるが、このようなときに、安定点灯しているアークに磁束を供給し続けると、反ってその影響を受けて、逆にアークがふらついてしまうという問題が発生する。
特開2003−051286号公報
この発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、放電ランプにおける陰極の損耗に由来して生じるアークの変動による始動電圧の上昇を抑制し、小型の電源装置を使用したとしても高い点灯確率を実現できる放電ランプ点灯装置および放電ランプ点灯方法を提供することである。
上記課題を解決するために、この発明に係る放電ランプ点灯装置は、水平点灯される放電ランプの近傍に磁束供給手段を備えるとともに、該磁束供給手段を制御する制御手段を備え、該制御手段は、前記放電ランプへの始動電圧印加時に、アークを下側に誘引する方向に前記磁束供給手段から磁束を供給し、前記放電ランプが安定状態に達したときに、前記始動電圧印加時の磁束密度よりも小さな磁束密度にするように制御することを特徴とする。
また、この発明に係る放電ランプ点灯方法は、水平点灯される放電ランプの周囲に磁束を供給する磁束供給手段を備え、始動電圧印加時に、アークを下側に誘引する方向に磁束を供給し、放電ランプが安定状態に達したときには、前記始動電圧印加時の磁束密度よりも小さな磁束密度にするようにしたことを特徴とする。
この発明の放電ランプ点灯装置および点灯方法によれば、放電ランプの始動電圧印加時に、磁束供給手段によりアークが下向きの力を受けるような磁束を供給することにより、放電空間内の対流で持ち上げられて中央部が弓状に変形していたアークが、その中央弓状部が下方に移動して直線状となり、その放電距離が短くなって、ランプ電圧を下げることができる。
それにより、電源装置として最高到達電圧値の設定を小さく小型化した装置であっても、始動時の立ち消えが生じることなくランプを点灯することができる。そして、放電ランプの点灯が安定した後には、始動電圧印加時の磁束密度よりも小さな磁束密度(0を含む)にしたことで、点灯後のアークがふらつきを生じることなく安定した点灯状態を維持することができるようになる。
従って、最高到達電圧の設定が小さい電源装置を用いても、放電ランプを確実に点灯でき、点灯後のアークのふらつきも生じないランプ点灯装置およびランプ点灯方法を提供することができるようになる。
本発明の放電ランプ点灯装置の第1の実施例の構成を示す斜視図。 本発明の放電ランプ点灯装置の構成を示すブロック図。 放電ランプの始動電圧印加後の電圧変動の一例を示す図。 本発明の放電ランプ点灯装置の作用説明図。 本発明の放電ランプ点灯装置の第2の実施例の平面断面図。 従来技術のランプにおけるアークの挙動説明図。
図1は、第1実施例の斜視図であり、放電ランプ10の発光管11内には例えば、キセノンガスが20気圧で封入されている。該放電ランプ10には、発光管11から突出する封止管12,12が設けられ、該封止管12の先端には口金15,16が設けられており、ランプハウスH内で、それぞれ給電構造を備えた支持部17,18によりランプの管軸Lがほぼ水平方向となるように支持されている。
放電ランプ10の周囲には、ここでは図示を省略するが発光部を取り囲むように反射ミラーが配置されており、ランプ10から放射された光は集光されてランプハウスHの一方の面に形成された光投射口20より出射される。なお反射ミラーは通常アークの中心に第1焦点を備え、第2焦点を管軸L上に備える回転楕円面より構成される。
そして、ランプハウスHにおいて放電ランプ10の発光管11の側面近傍にロッド状の電磁石31が配置されている。この電磁石31の一端部と他端部にはそれぞれ給電線32a,32bが接続され、電磁石用電源32に接続されている。この電磁石31は、軸方向が水平であって、その一端部が陽極13と陰極14の中間位置に向くように不図示の支持部材で支持されている。
このように本実施例では電磁石31と電源32とからなる磁束供給手段30を備えている。
図2は本発明に係るランプ点灯装置の構成を説明するブロック図であり、磁束供給手段30の制御の制御について説明する。
磁束供給手段30の制御は、図2に示す制御手段50により行われる。
この制御手段50は、放電ランプ10の積算点灯時間、ランプ入力、点灯回数などのランプ点灯履歴情報から、磁束供給手段30の駆動タイミングを演算するCPU52を備えた演算手段51と、ランプ10の点灯情報を記憶するメモリ53とを基本的に備えて構成されている。
該メモリ53は、放電ランプ10の点灯履歴、点灯時間や入力(電力値、電圧、電流)、点灯回数などの基本動作情報と共に、該放電ランプ10の始動直後の電圧値をランプの始動毎に記録する。
前記制御手段50は、メモリ53に記憶された始動直後の電圧値を基に、立ち消えの危険性を察知し磁力の供給が必要であるか否かを演算によって判断する。磁束供給手段30は、制御手段50の判断に基づき磁力が必要な状態であると判断された場合には電磁石用電源32から電磁石31に電流を供給して放電ランプ10に磁束を供給する。
また、制御手段50はランプの点灯状態が安定域に到達した際に、電磁石用電源32による電磁石31への電流の供給を小さくするか若しくは停止するよう磁束供給手段30に対して信号を送信する。これにより、安定点灯状態のランプに対しては、点灯始動時に供給される磁束密度よりも小さな磁束密度が供給されることになる。
上記において、点灯始動時の磁束密度よりも小さな磁束密度とは、アークに対して実質的に影響を及ぼさない大きさの磁束密度という意味であって、磁束密度0、即ち磁束が供給されないことも包含するものであり、以下においても同様である。
なお、放電ランプの点灯状態において安定状態に到達したことは、放電ランプの定格電圧に対する電圧値を検出することにより判断する。以下、この例について説明する。
図3は、定格消費電力が2kWの水平点灯の放電ランプにおける始動電圧印加後に、絶縁破壊が生じてから定格電圧に移行するまでの電圧変動の一例を示す図である。なお、この例においては電源装置として、最高到達電圧が比較的高い仕様のものを用いて放電ランプを点灯した例である。
図3において、時間tが0sの時点は絶縁破壊が起こった瞬間であり、突入電流が流れることによって電極間にアークが形成される。この段階から約10s後までの間は陰極が十分に加熱されておらず、アークは不安定な状態であるため、ガスの熱対流および浮力によって鉛直方向に持ち上げられて弓形の形状を形成し、放電距離が長くなる。従って、ガス圧が比較的低い状態であるにもかかわらず、ランプ電圧は高い状態が継続する。
その後、電極が十分に加熱され、アークが安定するに従い徐々に電圧が低下していく。電圧が低下しきった後は、ランプ内のガス温度が上昇し、これに従って電圧が上昇する。この結果、絶縁破壊後、数分後に定格電圧に落ち着く。アークは、ランプ電圧が定格電圧の95%に到達すると十分安定した状態となり、放電ランプからの光量も十分な域に到達する。
本発明においては、ランプの安定点灯状態を検出すると磁束供給手段30に対して磁束密度を小さくするような措置を取る。
ランプの安定点灯状態をランプ電圧によって検出する場合は、上述したような相関が得られることから、ランプ電圧が定格電圧に対して95%に到達した時点とするのが好適である。
なお、図3を参照してランプが安定するまでの時間に関する具体的数値の一例を挙げると、定格消費電力2kW、定格電圧27Vの放電ランプであれば、定格電圧に対して95%である25.7Vとなったときは約70sである。
ここで、磁束供給による放電ランプの始動時のアーク変動について、図4を参照して具体的例を説明する。図4(A)は放電ランプ10および電磁石31を上方向から見た平面断面図、(B)はこのランプ10を横方向から見た(A)のA−A断面図、(C)は(B)のB−B断面図である。
放電ランプ10は、積算点灯時間の増加に伴って陰極14の先端が損耗してくる。陰極14の先端形状が変形して丸みを帯びてくると、当該先端部分の熱容量が増してきて、ランプの始動期間において、陰極14先端からの電子放射が十分ではない期間においては、該陰極14先端の温度が上昇せず、電子放射が一層難しくなるためにアークに勢いがなくなり、対流によって容易に持ち上げられ、弓なりに形成されることにより電圧値が上昇する。
その始動電圧印加時において、図4(A)に示すように、磁束供給手段30より電磁石31に対してランプ10側の一端部がN極、他端部がS極となる極性を有するよう磁力を供給する。すなわち、図4(B)において、電流が流れる方向をX方向とすると、磁束の方向は紙面に垂直に表面側から裏面側に向かうZ方向に供給される。
この結果、陰極14と陽極13の間のアークAには、フレミングの左手の法則に従い下向きのY方向の力が加わる。そのため、放電空間内の対流で持ち上げられていたアークAを下に移動することができ、放電距離が伸びることを抑制してランプ電圧の上昇を抑えることができる。
また、放電ランプ10が点灯してアークAが安定状態になった後は、図2の説明で述べたように、制御手段50により磁束供給を少なくする。なお、この場合、磁束の供給を停止することも含まれることは上記した通りである。
供給する磁束密度を小さくする理由は、ある程度積算点灯時間を経ると陰極に含まれるエミッタ(電子放射性物質)の含有量が少なくなるため、該陰極14先端へのエミッタの供給が安定して行われなくなるので、安定点灯状態のランプ10の発光管11の近傍に磁束が供給されると、反ってその影響を受けてしまいアークのふらつきを大きくしてしまうからである。そのため、アークに影響を及ぼすような磁束を供給する期間はランプ始動時にとどめて、ランプ安定時(安定状態)に到達した時点で、供給する磁束密度を小さくするようにしたものである。
図5は本発明の第2の実施例を説明する図で、ランプを上方からみた平面断面図である。
この実施例では磁束供給手段30として永久磁石からなる磁束供給部33を備えた例である。この磁束供給部33は、放電ランプの始動時にN極がランプ側を向くように配置されて磁束をランプ10の発光管11に供給しており、ランプが安定点灯状態に移行した後は、不図示の支持部を介して当該磁束供給部33に接続された駆動モータ34により磁束供給部33の軸がランプ10の管軸と略平行になるよう90度回転して、ランプへの磁束の供給を停止する。
この磁束供給部33の駆動のタイミングは、図2に示されたランプ点灯装置に具備された制御手段50の演算手段51によって演算して求めることができる。これにより、N極、S極の方位が、アークを下側(同図においては、紙面の垂直裏面側)に誘引する方向に磁束を供給するような方向になるよう制御するものである。
以上説明したように、本発明に係る放電ランプの点灯装置および点灯方法によれば、ランプ始動時に該ランプに磁束を与えることによって、ランプの使用時間の経過に伴う陰極先端の損耗によって発生する始動時のランプ電圧の上昇を抑えることができ、電源装置として最高到達電圧値の設定を小さく小型化した装置を用いたとしても、立ち消えが生じることなくランプを点灯することができるという効果を奏する。
また、ランプが安定点灯状態に至った後には当該磁束の供給をアークに影響を及ぼさない程度に密度を小さくしたものとするので、ランプが安定点灯しているときにアークに不所望の磁束をかけることがなく、当該アークのふらつきを生じさせることがない。
10 放電ランプ
11 発光管
13 陽極
14 陰極
30 磁束供給手段
31 電磁石
32 電磁石用電源
40 電源装置
50 制御手段
51 演算手段
52 CPU
53 メモリ


Claims (2)

  1. 水平点灯されるキセノンランプと、該キセノンランプを点灯する電源装置とを備えたキセノンランプ点灯装置において、
    前記キセノンランプの近傍に磁束供給手段を備えるとともに、該磁束供給手段を制御する制御手段を備え、
    該制御手段は、前記キセノンランプへの始動電圧印加時に、アークを下側に誘引して直線状とし、放電距離を短くする方向に前記磁束供給手段から磁束を供給し、前記キセノンランプが安定状態に達したときに、前記始動電圧印加時の磁束密度よりも小さな磁束密度にするように制御することを特徴とするキセノンランプ点灯装置。
  2. 水平点灯されるキセノンランプの始動時に直流電流を供給して点灯する電源装置によってキセノンランプを点灯するキセノンランプ点灯方法において、
    前記キセノンランプの周囲に磁束を供給する磁束供給手段を備え、始動電圧印加時に、アークを下側に誘引して直線状とし、放電距離を短くする方向に磁束を供給し、キセノンランプが安定状態に達したときには、前記始動電圧印加時の磁束密度よりも小さな磁束密度にするようにしたことを特徴とするキセノンランプ点灯方法。
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