JP5531977B2 - 電池ケース用シートおよび電池装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電池装置および電池の構成要素を収納する電池ケース用シートに関する。
従来、電池の構成要素を収納する電池ケースには、大抵の場合、金属製のケースが用いられていた。しかし、ノート型パソコン、携帯電話など各種の電子機器の発達、普及に伴い、その軽量化、薄型化が進められると共に、これらに使用される電池についても、その重量をできるだけ軽くし、また、使用機器における電池用スペースを少なくできるよう軽量化、薄型化が求められている。
このような要求に応えるために、例えば、電池の電極や電解質などに、高分子材料を導入し、シート状に軽量、薄型化した種々のシート状電池が研究開発されている。ところが、これらのシート状電池に用いる電池ケースに関しては、その軽さおよび薄さと共に、強度、水蒸気その他のガスバリヤー性、耐久性、密封性、電極端子との接着性など、総合的に満足できるものは完成されていないのが実情である。
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、軽くて薄く、且つ、強度、耐久性のほか、水蒸気その他のガスバリヤー性、密封性、電極端子との接着性など、性能および加工性に優れ、軽量、薄型化された電池ケース用シートおよび電池装置を提供することを目的とする。
本発明は、内部に電池を収納する積層体シートからなる電池ケース用シートにおいて、積層体シートは第1の基材フィルム層と、第1の基材フィルム層の内側に配置された熱接着性樹脂層と、を備えたことを特徴とする電池ケース用シート、 電池と、電池を収納する電池ケースと、電池に接続され、電池ケース外方へ突出するタブと、を備えたことを特徴とする電池装置、および
電池と、電池に接続されたタブと、電池とタブとを収納する電池ケースとを備え、電池ケースの周縁部はシールされ、このシールされた周縁部のうちタブに対応する部分に切欠部が設けられていることを特徴とする電池装置である。
図1は本発明の第1の実施形態を示す図である。 図2は本発明の第1の実施形態を示す図である。 図3は本発明の第1の実施形態を示す図である。 図4は本発明の第1の実施形態を示す図である。 図5は本発明の第1の実施形態を示す図である。 図6は本発明の第2の実施形態を示す図である。 図7は本発明の第2の実施形態を示す図である。 図8は本発明の第2の実施形態を示す図である。 図9は本発明の第2の実施形態を示す図である。 図10は本発明の第3の実施形態を示す図である。 図11は本発明の第3の実施形態を示す図である。 図12は本発明の第3の実施形態を示す図である。 図13は本発明の第4の実施形態を示す図である。 図14は本発明の第4の実施形態を示す図である。 図15は本発明の第4の実施形態を示す図である。 図16は本発明の第4の実施形態を示す図である。 図17は本発明の第5の実施形態を示す図である。 図18は本発明の第5の実施形態を示す図である。 図19は本発明の第5の実施形態を示す図である。 図20は本発明の第5の実施形態を示す図である。 図21は本発明の第6の実施形態を示す図である。 図22は本発明の第6の実施形態を示す図である。 図23は本発明の第6の実施形態を示す図である。 図24は本発明の第7の実施形態を示す図である。 図25は本発明の第7の実施形態を示す図である。 図26は本発明の第7の実施形態を示す図である。 図27は本発明の第7の実施形態を示す図である。 図28は本発明の第7の実施形態を示す図である。 図29は本発明の第8の実施形態を示す図である。 図30は本発明の第8の実施形態を示す図である。 図31は本発明の第8の実施形態を示す図である。 図32は本発明の第8の実施形態を示す図である。 図33は本発明の第8の実施形態を示す図である。 図34は本発明の第9の実施形態を示す図である。 図35は本発明の第9の実施形態を示す図である。 図36は本発明の第9の実施形態を示す図である。 図37は本発明の第10の実施形態を示す図である。 図38は本発明の第10の実施形態を示す図である。 図39は本発明の第10の実施形態を示す図である。 図40は本発明の第10の実施形態を示す図である。 図41は本発明の第10の実施形態を示す図である。 図42は本発明の第10の実施形態を示す図である。 図43は本発明の第10の実施形態を示す図である。 図44は本発明の第10の実施形態を示す図である。 図45は本発明の第11の実施形態を示す図である。 図46は本発明の第11の実施形態を示す図である。 図47は本発明の第11の実施形態を示す図である。 図48は本発明の第11の実施形態を示す図である。 図49は本発明の第12の実施形態を示す図である。 図50は本発明の第12の実施形態を示す図である。 図51は本発明の第12の実施形態を示す図である。 図52は本発明の第12の実施形態を示す図である。 図53は本発明の第12の実施形態を示す図である。 図54は本発明の第12の実施形態を示す図である。 図55は本発明の第13の実施形態を示す図である。 図56は本発明の第13の実施形態を示す図である。 図57は本発明の第13の実施形態を示す図である。 図58は本発明の第14の実施形態を示す図である。 図59は本発明の第14の実施形態を示す図である。 図60は本発明の第14の実施形態を示す図である。 図61は本発明の第15の実施形態を示す図である。 図62は本発明の第15の実施形態を示す図である。 図63は本発明の第15の実施形態を示す図である。 図64は本発明の第15の実施形態を示す図である。 図65は本発明の第16の実施形態を示す図である。 図66は本発明の第16の実施形態を示す図である。 図67は本発明の第16の実施形態を示す図である。 図68は本発明の第16の実施形態を示す図である。 図69は本発明の第16の実施形態を示す図である。 図70は本発明の第17の実施形態を示す図である。 図71は本発明の第17の実施形態を示す図である。 図72は本発明の第18の実施の形態を示す図である。 図73は本発明の第18の実施の形態を示す図である。 図74は本発明の第19の実施の形態を示す図である。 図75は本発明の第19の実施の形態を示す図である。 図76は本発明の第20の実施の形態を示す図である。 図77は本発明の第20の実施の形態を示す図である。 図78は本発明の第21の実施の形態を示す図である。
第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図5により説明する。まず図5によりポリマー電池装置50について説明する。
ポリマー電池装置50は、電池ケース51と、電池ケース51内に収納されたポリマー電池50aと、ポリマー電池50aに接続されるとともに電池ケース51から外方へ突出する一対のタブ59,60とを備えている。
このうち電池ケース51は後述する積層体シートをヒートシールすることにより形成される。
またポリマー電池50aは、有機系電解液含有ゲル電解質53と、有機系電解液含有ゲル電解質53の上面および下面に各々設けられた正極55および負極56と、正極55および負極56に各々接続された集電体57,58とを有している。このうち正極55側の集電体57はAl製となっており、また負極56側の集電体58はCu製となっている。
さらに正極55側のタブ59はAl、SUS製(ステンレススチール)の金属タブとなっており、負極56側のタブ60はCu、Ni、SUS製の金属タブとなっている。
また、有機系電解液含有ゲル電解質53内に多孔質フィルムからなるセパレータ54が設けられているが、このセパレータ54は必ずしも設けなくてもよい。
またポリマー電池50aの構造は、捲回、積層、折り曲げのいずれも考えることができる。
さらにポリマー電池50aとしては、リチウムポリマー電池が考えられ、このうちリチウム−イオン型ポリマー電池(LIP)とリチウム金属型ポリマー電池(LP)の各部材料の詳細を下表に示す。
Figure 0005531977
図5に示すポリマー電池装置50において、ポリマー電池50aから延びるタブ59,60間に電位差が生じ、このタブ59,60より電気を得ることができる。
次に電池ケース51について説明する。電池ケース51は積層体シート(電池ケース用シート)をヒートシールすることにより形成される。
このシートは、下記(1)〜(4)のいずれかの構成の積層体で形成され、且つ、該積層体の第1の基材フィルム層、第2の基材フィルム層、第3の基材フィルム層が、それぞれ2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと略記)または2軸延伸ナイロンフィルム(以下ONフィルムと略記)となっている。
(1)第1の基材フィルム層/金属箔層/熱接着性樹脂層
(2)第1の基材フィルム層/第2の基材フィルム層/金属箔層/熱接着性樹脂層
(3)第1の基材フィルム層/金属箔層/第3の基材フイルム層/熱接着性樹脂層
(4)第1の基材フィルム層/第2の基材フィルム層/金属箔層/第3の基材フイルム層/熱接着性樹脂層
上記構成の電池ケース用シートは、その熱接着性樹脂層同士が内側に接するように重ね合わせ、周囲の端縁部をヒートシールして一端が開口する袋状の電池ケース51とし、内部に正極55、負極56、電解質53などの構成材料を収納すると共に、タブ59,60を内部からケース51の外側に延長し、開口部をシートの熱接着性樹脂層同士、および熱接着性樹脂層とタブ59,60とをヒートシールにより熱接着させて封止するものである。
従って、シートの熱接着性樹脂層には、それ自体同士が互いに熱接着性を有すると同時に、銅箔やアルミニウム箔などの導電性材料で形成されるたタブ59,60にも熱接着性を有する樹脂が用いられる。
このような構成を採ることにより、中間層の金属箔層が優れた水蒸気その他のガスバリヤー性を付与し、その両側に第1、第2、第3の基材フィルム層、熱接着性樹脂層のいずれかが積層されているため、金属箔層は保護され、ひび割れやピンホールの発生が防止されるので良好なガスバリヤー性が維持される。
そして、金属箔層の外側、または内側に積層される第1、第2、第3の基材フィルム層は、上記のように金属箔層を保護すると同時に、シートの強度その他の性能、各種耐性を向上させ、また、最内層の熱接着性樹脂層がシートに熱封緘性を付与するものである。
また、金属箔層の両側には、少なくとも第1の基材フィルム層、または、熱接着性樹脂層が積層されており、これらはいずれも非導電性材料であるため、電池ケース用シートは非導電性シートとして作用する。
また積層体の熱接着性樹脂層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂であって、その酸成分含有量が0.01重量%〜10重量%となっている。
このような構成をとることにより、熱接着性樹脂層の前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が、自己同士の熱接着性を有すると同時に、銅やアルミニウムなどのタブ59,60に対しても良好な熱接着性を有するため、一端が開口する袋状の電池ケースをヒートシールにより容易に形成できると共に、その内部に電池の構成材料を収納した後、銅やアルミニウムなどの金属箔などで形成されるタブ59,60が通る開口部も同様にヒートシールにより良好に熱接着させ、密封することができる。
以下に本発明の電池ケース用シートの製造に用いる材料、およびその加工方法など実施の形態について説明する。
本発明の電池ケース用シートは、前述のように中間層に水蒸気その他のガスバリヤー性に優れた金属箔層を用い、その外側、または両側に各種の強度および耐性に優れた第1、第2、第3の基材フィルム層を適宜積層し、更に、最内層に熱接着性樹脂層を積層して構成する。
上記の構成において、ガスバリヤー性を付与する中間層の金属箔層にはアルミニウム層、銅箔などを好適に使用することができる。中でもアルミニウム箔は比較的安価であり、貼り合わせなどの加工性にも優れていることから最も好ましく使用できる。このような金属箔層の厚さは5〜25μmが適当である。
そして、上記第1〜第3の基材フィルム層としては、例えばPETフィルム、ONフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを使用することができるが、耐久性なども含めた各種性能と共に加工性、経済性を加味した場合は、PETフィルム、ONフィルムが特に適している。
ここでPETフィルムとONフィルムの特性を比較すると、特別大きな差ではないが、PETフィルムは吸湿性が低く、剛性、耐擦傷性、耐熱性などに優れ、ONフィルムは吸湿性はやや高いが、柔軟性、突き刺し強度、折り曲げ強度、耐寒性などに優れている。
このような基材フィルムの厚さは、5〜100μmが好ましく、12〜30μmが更に好ましい。
最内層の熱接着性樹脂層は、先にも説明したように、自己同士の熱接着性に加えてタブ59,60の金属に対しても良好な熱接着性を有すると共に、ポリマー電池50aの電解液への水分の侵入を極力少なくするため、それ自体、吸湿性、或いは水分吸着性の低いものが好ましく、更に、電解液により膨潤したり、浸食されることがなく安定なものが好ましい。
このような熱接着性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体のほか、ポリエチレンもしくはポリプロピレンに前記共重合体の一種または二種以上をブレンドしたようなポリオレフィン系樹脂なども使用できるが、特に、酸変性ポリオレフィン系樹脂、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のような酸成分を共重合して変性したポリオレフィン系樹脂、或いは、ポリエチレン、ポリプロピレンや、それらの共重合体であるエチレンとポリプロピレンその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などのポリオレフィン系樹脂に、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸、或いは、その無水物をグラフト共重合して変性したポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
上記においてカルボン酸基を有するものは、Na+ 、Zn2+などの金属イオンで架橋したもの(例えば、アイオノマー)も好適に使用できる。
尚、上記の中、酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸成分含有量は、0.01〜10重量%の範囲が好ましい。酸成分含有量が0.01重量%未満の場合は、金属との熱接着性が不足し、酸成分含有量が10重量%を超える場合は、製膜性が劣るため好ましくない。
このような熱接着性樹脂層の厚さは10〜100μmの範囲が適当である。
以上のような各層を積層する方法は、例えば、2液硬化型のポリウレタン系接着剤などを使用する公知のドライラミネーション法で貼り合わせてもよく、また、ポリエチレンその他の熱接着性樹脂層を、貼り合わせを行う層間に溶融押し出しして圧着する押し出しラミネーション(サンドイッチラミネーション法とも呼ばれる)で貼り合わせてもよい。
特に、最内層の熱接着性樹脂層は、予めフィルム状に製膜しておくことにより、他の層と同様、ドライラミネーション法または押し出しラミネーション法で貼り合わせることもできるが、積層面に必要に応じてアンカーコート剤(AC剤、プライマーコートの一種)を塗布した後、直接、熱接着性樹脂を溶融押し出しコートして積層することもできる。
以下、実施例の図面に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
但し、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。また、図面に付した符号は、異なる図面においても同じ名称の部分には同じ符号を用いた。
図1、図2、図3、図4は、それぞれ本発明の電池ケース51を形成するシートの一実施例の構成を示す模式断面図である。
図1に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、金属箔層2、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
上記構成において、第1の基材フィルム層1aは、PETフィルムまたはONフィルムであり、金属箔層2には、例えばアルミニウム箔を用い、熱接着性樹脂層3には、酸成分含有量が0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
このような構成を採ることにより、電池ケース用シート10は、最外層の第1の基材フィルム層1a、即ち、PETフィルムまたはONフィルムにより、引っ張り強度、突き刺し強度、折り曲げ強度などの機械的強度、および、表面の耐擦傷性、耐水性、耐薬品性や、耐熱性、耐寒性などの耐性が付与され、中間層の金属箔層(例えばアルミニウム箔層)により、水蒸気その他の優れたガスバリヤー性が付与され、更に、最内層の熱接着性樹脂層、例えば酸成分含有量が、0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂層により、先に説明したように、優れた熱封緘性が付与される。
また、バリヤー性に関して、金属箔層に例えば厚さ9μmのアルミニウム箔を用いることにより、水蒸気透過度0.01g/(m2 ・24hrs )、(40℃、90%RH)以下の性能を容易に得られ、更にこれをレベルアップすることも容易である。
上記積層構成の代表的な具体例としては、例えば下記のような構成が挙げられる。
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
図2に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、第2の基材フィルム層1b、金属箔層2、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、前記図1に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層2の外側の第1の基材フィルム層1aの性能を向上させるため、第2の基材フィルム層を追加し、第1の基材フィルム層1aと第2の基材フィルム層1bとの2層で構成したものである。
この場合も、第1の基材フィルム層1aと第2の基材フィルム層1bには、それぞれPETフィルムまたはONフィルムが用いられる。
只、この場合、同種のフィルムを2枚積層してもよいが、第1の基材フィルム層1aにPETフィルムを用いた場合は、第2の基材フィルム層1bにはONフィルムを用いるというように異種のフィルムを組み合わせて積層することが、両者の弱点を補完でき、長所を兼ね備えさせ得る点でより好ましい。
上記積層構成の代表的な具体例としては、例えば下記のような構成が挙げられる。
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
従って、このような構成を採ることにより、電池ケース用シート20は、基材フィルム層がPETフィルムとONフィルムの両方の長所を兼ね備えたものとなり、各種の機械的強度や耐性などにおいて、総合的に優れた性能の電池ケース用シート20を得られる効果を奏する。
図3に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、金属箔層2、第3の基材フィルム層1c、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、前記図1に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層の保護効果を一層高めて、より安定したバリヤー性を得るため、第3の基材フィルム層1cを、中間層の金属箔層2とその内側の熱接着性樹脂層3との間に追加して積層し、金属箔層2の両側が、第1の基材フィルム層1aと、第3の基材フィルム層1cとで挟み込まれるように構成したものである。
この場合も、第1の基材フィルム層1aと第3の基材フィルム層1cには、それぞれPETフィルムまたはONフィルムが用いられる。
上記積層構成の代表的な具体例としては、下記のような構成が挙げられる。
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
(2)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
(3)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
(4)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
このような構成を採ることにより、前記図1に示した構成の電池ケース用シート10と比較して、第3の基材フィルム層1cが追加積層されたことにより各種の機械的強度および耐性の向上と共に、金属箔層2の両側が、第1の基材フィルム層1aと第3の基材フィルム層1cとで挟み込まれるため、外部からの衝撃や摩擦、その他物理的、化学的作用だけでなく、内部からの同様な作用に対しても金属箔層2の保護性が向上し、一層安定したバリヤー性を得られる効果を奏する。
図4に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、第2の基材フィルム層1b、金属箔層2、第3の基材フィルム層1c、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、前記図2に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層2とその内側の熱接着性樹脂層3との間に、第3の基材フィルム層1cを追加して積層した構成に相当する。
従って、図示されるように、金属箔層2の外側には、第1、第2の基材フィルム層1a、1bが積層され、金属箔層2の内側、即ち、金属箔層2と熱接着性樹脂層3との間には、第3の基材フィルム層1cが積層されている。
このような構成を採ることにより、上記第1、第2、第3の基材フィルム層1a、1b、1cによる各種の機械的強度および耐性の向上と共に、金属箔層2の両側が、第1、第2の基材フィルム層1a、1bと、第3の基材フィルム層1cとで挟み込まれるため、金属箔層2は一層高度に保護され、更に安定したバリヤー性を得られる効果を奏する。
以上、図1〜図4に示した構成の電池ケース用シート10において、表面に文字、絵柄などの印刷を施す場合には、最外層の第1の基材フィルム層の内面(積層面)に所謂裏刷り方式で予め印刷し、この面に次の層を積層して、電池ケース用シートを完成させることにより、表面の摩擦などで損なわれることのない印刷画像を形成することができる。
以上詳しく説明したように、本発明によれば、軽量で薄く、柔軟性があり、且つ、各種の機械的強度や耐性のほか、水蒸気その他のガスバリヤー性、熱封緘性などの性能および加工性に優れた電池ケース用シートを生産性よく提供できる効果を奏する。
第2の実施の形態
次に図6乃至図9により第2の実施の形態について述べる。第2の実施の形態は、電池ケース用シートであって、該シートが、下記(1)〜(4)のいずれかの構成の積層体で形成され、且つ、該積層体の熱接着性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂層と、酸成分含有量0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成されている点が異なるのみであり、他は第1の実施の形態と略同一である。
(1)第1の基材フィルム層/金属箔層/熱接着性樹脂層
(2)第1の基材フィルム層/第2の基材フィルム層/金属箔層/熱接着性樹脂層
(3)第1の基材フィルム層/金属箔層/第3の基材フイルム層/熱接着性樹脂層
(4)第1の基材フィルム層/第2の基材フィルム層/金属箔層/第3の基材フイルム層/熱接着性樹脂層
また、最内層の熱接着性樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂層と、酸成分含有量が0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成し、且つ、その酸変性ポリオレフィン系樹脂層が最内面となるように積層することにより、前記酸変性ポリオレフィン系樹脂層が、自己同士の熱接着性を有すると同時に、銅やアルミニウムなどの金属に対する熱接着性をも有するため、前記袋状の電池ケースの形成、および金属箔などで形成されるタブ59,60が介在するその開口部の封止に際して、ヒートシールにより良好に熱接着させ、密封することができる。
この時、ヒートシール強度には、前記ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との両方が熱接着性樹脂層として作用するため、十分なヒートシール強度が得られる。また、前記酸変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンと比較すると、その吸湿性、水分吸着性がやや高いため、水分を含有し易くなるが、熱接着性樹脂層中の酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さを薄くすることができるので、含有水分量は最小限に止めることができ、電解液への影響を防止することができる。
また、金属箔層の両側には、少なくとも第1の基材フィルム層、または熱接着性樹脂層が積層されており、これらはいずれも非導電性材料であるため、電池ケース用シートは非導電性シートとして作用する。
また積層体の第1の基材フィルム層、第2の基材フィルム層、第3の基材フィルム層が、それぞれ2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム)または2軸延伸ナイロンフィルム(以下、ONフィルム)で形成されている。
このような構成を採ることにより、PETフィルム、ONフィルムは、柔軟性があり、且つ引っ張り強度、折り曲げ強度、突き刺し強度などの強度や、耐擦傷性、耐熱性、耐寒性、耐薬品性などの耐性に優れるほか、積層時の加工性、経済性にも優れているため、これらの性能に優れた電池ケース用シートを生産性よく安価に提供することができる。
以下に本発明の電池ケース用シートの製造に用いる材料、およびその加工方法など実施の形態について説明する。
本発明の電池ケース用シートは、前述のように中間層に水蒸気その他のガスバリヤー性に優れた金属箔層を用い、その外側、または両側に各種の強度および耐性に優れた第1、第2、第3の基材フィルム層を適宜積層し、更に、最内層にポリオレフィン系樹脂と、酸変性ポリオレフィン系樹脂との積層体からなる熱接着性樹脂層を積層して構成する。
上記の構成において、ガスバリヤー性を付与する中間層の金属箔層にはアルミニウム箔、銅箔などを好適に使用することができる。中でもアルミニウム箔は比較的安価であり、貼り合わせなどの加工性にも優れていることから最も好ましく使用できる。このような金属箔層の厚さは5〜25μmが適当である。
そして、上記第1〜第3の基材フィルム層としては、例えばPETフィルム、ONフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを使用することができるが、各種の強度や耐性、および、その耐久性などを含めた各種性能と共に、加工性、経済性を加味した場合は、PETフィルム、ONフィルムが特に適している。
ここでPETフィルムとONフィルムの特性を比較すると、特別大きな差ではないが、PETフィルムは吸湿性が低く、剛性、引っ張り強度、耐擦傷性、耐熱性などに優れ、ONフィルムは吸湿性はやや高いが、柔軟性、突き刺し強度、折り曲げ強度、耐寒性などに優れている。
このような基材フィルムの厚さは、5〜100μmが好ましく、12〜30μmが更に好ましい。
最内層の熱接着性樹脂層は、先にも説明したように、自己同士の熱接着性に加えて電極端子の金属に対しても良好な熱接着性を有すると共に、電解液への水分の侵入を極力少なくするため、それ自体、吸湿性、或いは水分吸着性の低いものが好ましく、更に、電解液により膨潤したり、浸食されることがなく安定なものが好ましい。
このような条件を満たすために、本発明では、熱接着性樹脂層を、ポリオレフィン系樹脂層と酸成分含有量が0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂との積層体で形成した。
そして、上記酸変性ポリオレフィン系樹脂層は、電池ケース用シートの最内面になるように積層し、且つ、その厚さを必要最小限に薄くすることにより、金属箔などで形成される電極端子にも良好に熱接着し、且つ、含有水分量も極力少なくできるようにしたものである。
このような熱接着性樹脂層のポリオレフィン系樹脂層には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのほか、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などを使用することができ、これらは単独で用いてもよく、また、二種以上をブレンドして使用してもよい。
そして、熱接着性樹脂層の酸成分含有量が0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂層には、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のほか、前記ポリエチレン、ポリプロピレン、そして、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などのポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、或いは、その無水物で、グラフト重合変性した樹脂で、その酸成分含有量が0.01〜10重量%の樹脂が、金属に対する熱接着性にも優れており、使用することができる。
上記においてカルボン酸基を有するものは、Na+ 、Zn2+などの金属イオンで架橋したアイオノマーも好適に使用できる。
尚、上記酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸成分含有量は、0.01〜10重量%の範囲が好ましい。酸成分含有量が0.01重量%未満の場合は、金属との熱接着性が不足し、酸成分含有量が10重量%を超える場合は、製膜性が劣るため好ましくない。
只、上記のような酸変性ポリオレフィン系樹脂は、その酸変性により金属に対する熱接着性が向上する長所を有する反面、吸湿性、水分吸着性がやや高くなる欠点も有している。
従って、本発明では、上記酸変性ポリオレフィン系樹脂の長所を生かし、且つその欠点を最小限に抑えるため、熱接着性樹脂層をポリオレフィン系樹脂層と前記酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成し、酸変性ポリオレフィン系樹脂層を最内面側に用いると共に、この層をできるだけ薄くした構成を採り、水分の影響を最小限にしたものである。
このような熱接着性樹脂層の厚さは、総厚で10〜100μmの範囲が適当であり、その中、酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さは、1〜50μmが好ましく、5〜25μmが更に好ましい。
本発明の電池ケース用シートは、以上のような各層、即ち、第1〜第3の基材フィルム層、金属箔層、そして、ポリオレフィン系樹脂層と前記酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層構成で形成される熱接着性樹脂層を適宜積層することにより製造できる。そして、これらの各層を積層する方法は、第1〜第3の基材フィルム層および金属箔層に関しては、それぞれ公知のドライラミネーション法により、例えば2液硬化型のポリウレタン系接着剤などを用いて貼り合わせることができ、また、ポリエチレン、その他の熱接着性樹脂を、貼り合わせを行う層間に溶融押し出しして圧着する押し出しラミネーション法で貼り合わせることもできる。
また、熱接着性樹脂層に関しては、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層とを、予め多層インフレーション成形法などで所定の厚さのフィルム状に製膜しておくことにより、他の層と同様、ドライラミネーション法、または押し出しラミネーション法で貼り合わせることもでき、更に、前記第1〜第3の基材フィルム層および金属箔層が適宜積層された基材シート面に、アンカーコート剤(AC剤、プライマーコートの一種)を塗布した後、ポリオレフィン系樹脂と酸変性ポリオレフィン系樹脂とを、それぞれ所定の厚さになるように、公知の共押し出し装置により、共押し出しコートして積層することもできる。
以下、実施例の図面に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
但し、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。また、図面に付した符号は、異なる図面においても同じ名称の部分には同じ符号を用いた。
図6乃至図9は、それぞれ本発明の電池ケース用シートの実施例の構成を示す模式断面図である。
図6に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、金属箔層2、そして、ポリオレフィン系樹脂層3aと酸変性ポリオレフィン系樹脂3bからなる熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
上記構成において、第1の基材フィルム層1aには、PETフィルムまたはONフィルムを用いることが好ましく、金属箔層2には、例えばアルミニウム箔を用いることが好ましい。また、熱接着性樹脂層3の酸変性ポリオレフィン系樹脂層3b(シートの最内層)には、酸成分含有量が0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いる。
このような構成を採ることにより、電池ケース用シート10は、最外層の第1の基材フィルム層1a、即ち、PETフィルムまたはONフィルムにより、引っ張り強度、突き刺し強度、折り曲げ強度などの機械的強度、および、表面の耐擦傷性、耐水性、耐薬品性や、耐熱性、耐寒性などの耐性が付与され、中間層の金属箔層2(例えばアルミニウム箔層)により、水蒸気その他の優れたガスバリヤー性が付与され、更に、熱接着性樹脂層3のポリオレフィン系樹脂層3aと、酸成分含有量が0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bとにより、先に説明したように、優れた熱封緘性が付与され、且つ、その低水分含有性が維持される。
また、バリヤー性に関して、金属箔層に例えば厚さ9μmのアルミニウム箔を用いることにより、水蒸気透過度0.01g/(m2 ・24hrs )、(40℃、90%RH)以下の性能を容易に得られ、更にこれをレベルアップすることも容易である。
上記積層構成の代表的な具体例としては、例えば下記のような構成が挙げられる。
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
図7に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、第2の基材フィルム層1b、金属箔層2、そして、ポリオレフィン系樹脂層3aと酸変性ポリオレフィン系樹脂3bからなる熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、前記図6に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層2の外側の第1の基材フィルム層1aの性能を向上させるため、第2の基材フィルム層を追加し、第1の基材フィルム層1aと第2の基材フィルム層1bとの2層で構成したものである。
この場合も、第1の基材フィルム層1aと第2の基材フィルム層1bには、それぞれPETフィルムまたはONフィルムが用いられる。
只、この場合、同種のフィルムを2枚積層してもよいが、第1の基材フィルム層1aにPETフィルムを用いた場合は、第2の基材フィルム層1bにはONフィルムを用いるというように異種のフィルムを組み合わせて積層することが、両者の弱点を補完でき、長所を兼ね備えさせ得る点でより好ましい。
上記積層構成の代表的な具体例としては、例えば下記のような構成が挙げられる。
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
このような構成を採ることにより、前記図6に示した構成の電池ケース用シート10に記載した作用、効果に加えて、アルミニウム箔層の外側の基材フィルム層がPETフィルムとONフィルムの両方の長所を兼ね備えたものとなり、特に外側の各種の機械的強度や耐性が強化され、総合的に優れた性能の電池ケース用シート20を得られる効果を奏する。
図8に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、金属箔層2、第3の基材フィルム層1c、そして、ポリオレフィン系樹脂層3aと酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bからなる熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、前記図6に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層2に対する保護効果を一層高めて、より安定したバリヤー性を得るため、第3の基材フィルム層1cを、中間層の金属箔層2とその内側の熱接着性樹脂層3(直接的にはポリオレフィン系樹脂層3a)との間に追加して積層し、金属箔層2の両側が、第1の基材フィルム層1aと、第2の基材フィルム層1cとで挟み込まれるように構成したものである。
この場合も、第1の基材フィルム層1aと第3の基材フィルム層1cには、それぞれPETフィルムまたはONフィルムが用いられる。
上記積層構成の代表的な具体例としては、下記のような構成が挙げられる。
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(2)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(3)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(4)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
このような構成を採ることにより、前記図6に示した構成の電池ケース用シート10に記載した作用、効果に加えて、第3の基材フィルム層1cが追加積層されたことにより各種の機械的強度および耐性の向上と共に、金属箔層2の両側が、第1の基材フィルム層1aと第3の基材フィルム層1cとで挟み込まれるため、外部からの衝撃や摩擦、その他物理的、化学的作用だけでなく、内部からの同様な作用に対しても金属箔層2に対する保護性が向上し、一層安定したバリヤー性を得られる効果を奏する。
図9に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、第2の基材フィルム層1b、金属箔層2、第3の基材フィルム層1c、そして、ポリオレフィン系樹脂層3aと酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bからなる熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、前記図7に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層2とその内側の熱接着性樹脂層3(直接的にはポリオレフィン系樹脂層3a)との間に、第3の基材フィルム層1cを追加して積層した構成に相当する。
従って、図示されるように、金属箔層2の外側には、第1、第2の基材フィルム層1a、1bが積層され、金属箔層2の内側、即ち、金属箔層2と熱接着性樹脂層3との間には、第3の基材フィルム層1cが積層されている。
このような構成を採ることにより、前記図7に示した電池ケース用シート20に記載した作用、効果に加えて、上記第3の基材フィルム層1cを追加したことによる各種の機械的強度および耐性の向上と共に、金属箔層2の両側が、第1、第2の基材フィルム層1a、1bと、第3の基材フィルム層1cとで挟み込まれるため、金属箔層2は一層高度に保護され、更に安定したバリヤー性を得られる効果を奏する。
以上、電池ケース用シート10において、表面に文字、絵柄などの印刷を施す場合には、最外層の第1の基材フィルム層1aの内面(積層面)に所謂裏刷り方式で予め印刷し、この面に次の層を積層して、電池ケース用シートを完成させることにより、表面の摩擦などで損なわれることのない印刷画像を形成することができる。
以上詳しく説明したように、本発明によれば、軽量で薄く、柔軟性があり、且つ、各種の機械的強度や耐性のほか、水蒸気その他のガスバリヤー性、熱封緘性などの性能および加工性に優れると共に、内部に収納される電池の構成材料に対して水分の影響を与えることのない電池ケース用シートを生産性よく提供できる効果を奏する。
第3の実施の形態
次に図10乃至図12により第3の実施の形態について述べる。第3の実施の形態は、電池ケース用シートであって、該シートが、下記(1)〜(3)のいずれかの構成の積層体で形成され、且つ、該積層体の第1の基材フィルム層、第2の基材フィルム層が、酸化珪素もしくは酸化アルミニウムの薄膜層、またはポリ塩化ビニリデンの塗膜層のいずれかで被覆された2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム)または2軸延伸ナイロンフィルム(以下、ONフィルム)または2軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPフィルム)であり、また、前記熱接着性樹脂層が、酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層、またはポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成されている点が異なるのみであり、他は第1の実施の形態と略同一である。
(1)第1の基材フィルム層/熱接着性樹脂層
(2)第1の基材フィルム層/第2の基材フィルム層/熱接着性樹脂層
(3)第1の基材フィルム層/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層/第2の基材フイルム層/熱接着性樹脂層
このような構成を採ることにより、例えば、前記(1)の構成の場合、第1の基材フィルム層が、PETフィルムまたはONフィルムまたはOPPフィルムの表面に酸化珪素もしくは酸化アルミニウムの薄膜層、またはポリ塩化ビニリデンの塗膜層を被覆したものであり、PETフィルムまたはONフィルムまたはOPPフィルムが、引っ張り強度、折り曲げ強度、突き刺し強度などの強度や、耐擦傷性、耐熱性、耐寒性、耐薬品性などの耐性を付与すると共に、その表面を被覆する酸化珪素もしくは酸化アルミニウムの薄膜層、またはポリ塩化ビニリデンの塗膜層が、水蒸気その他のガスバリヤー性を付与する。
ここでPETフィルムとONフィルムの特性を比較すると、特別大きな差ではないが、PETフィルムは吸湿性が低く、剛性、引っ張り強度、耐擦傷性、耐熱性などに優れ、ONフィルムは吸湿性はやや高いが、柔軟性、突き刺し強度、折り曲げ強度、耐寒性などに優れている。また、OPPフィルムは特に吸湿性が低く、防湿性に優れると共に、引っ張り強度、剛性に優れている。
そして、熱接着性樹脂層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層、またはポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成され、後者の場合は、ポリオレフィン系樹脂層を第1の基材フィルム層側に配置し、酸変性ポリオレフィン系樹脂層が電池ケース用シートの最内面となるように積層されるが、いずれの場合も最内面層は酸変性ポリオレフィン系樹脂層であり、これが自己同士の熱接着性と共に、銅やアルミニウムなどの金属に対する熱接着性も有しているため、前記袋状の電池ケース51の形成、および金属箔などで形成されるタブ59,60が介在する開口部の封止に際して、ヒートシールにより良好に熱接着させ、密封することができる。
また、最内層に用いる酸変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンと比較して、金属に対する熱接着性に優れているが、同時に、吸湿性、水分吸着性が高くなる傾向があり、取り扱いによっては、僅かではあるが空気中の水分を吸収することが考えられる。この点は、水分を嫌う電解液に対してはマイナス要因となる。
従って、前記のように熱接着性樹脂層をポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成することにより、相対的に酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さを薄くできるため、例え水分を吸収することがあっても、その量は僅かであり、良好な熱接着性を維持しつつ、水分の影響をより少なくすることができる。
また、(2)の構成は、基材フィルム層を第1の基材フィルム層と第2の基材フィルム層との2層で構成したものであり、このような構成を採ることにより、前記(1)の構成に記載した作用、効果に加えて、基材フィルムに、例えばPETフィルムとONフィルムとを組み合わせて用いることができ、両者の特徴が生かされ、前記強度や耐性を一層向上できると共に、表面に被覆されている酸化珪素もしくは酸化アルミニウムの薄膜層、またはポリ塩化ビニリデンの塗膜層も2層となり、万一いずれか一方が損傷を受けても他方でカバーすることができ、一層優れた水蒸気その他のガスバリヤー性を付与することができる。
そして、(3)の構成は、前記(2)の構成に対して、更に、水蒸気その他のガスバリヤー性を向上、安定化させるため、第1の基材フィルム層と第2の基材フィルム層との間にエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を追加して積層したものである。
このような構成を採ることにより、前記(2)の構成に記載した作用、効果に加えて、バリヤー性付与層が3層となるため、更に、高度で安定した水蒸気その他のガスバリヤー性を付与することができる。
以上のように、本発明の電池ケース用シートは、いずれもバリヤー性を付与するために、アルミニウム箔などの導電性金属箔を使用しておらず、シートの全層が非導電性材料で形成されている。従って、電池ケース51の外側に延出されたタブ59,60が折れ曲がるようなことがあっても、シートでショートするようなことはなく、安全性にも優れている。
また、酸変性ポリオレフィン系樹脂層が、酸成分含有量0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂で形成されている。
このような構成をとることにより、酸変性ポリオレフィン系樹脂層は、その製膜性がよく、且つ、自己同士の熱接着性と同時に、銅やアルミニウムなどの金属に対する熱接着性も確実に持つようになる。従って、袋状の電池ケースの形成、および金属箔などで形成されるタブ59,60が介在する開口部の封止に際して、ヒートシールにより確実に熱接着させ、密封することができる。
以下に本発明の電池ケース用シートの製造に用いる材料、およびその加工方法など実施の形態について説明する。
本発明の電池ケース用シートにおいて、基材となる第1の基材フィルム層および第2の基材フィルム層には、酸化珪素もしくは酸化アルミニウムの薄膜層、またはポリ塩化ビニリデンの塗膜層のいずれかが、ガスバリヤー層として積層されたPETフィルムまたはONフィルムまたはOPPフィルムを用いる。
酸化珪素もしくは酸化アルミニウムの薄膜層は、基材のPETフィルムまたはONフィルムまたはOPPフィルム上に必要に応じて公知のプライマーコートを施した後、その上に真空蒸着法、スパッタリング法などにより積層することができる。
酸化珪素もしくは酸化アルミニウムの薄膜層の厚さは150〜2000Åの範囲が好ましく、300〜800Åの範囲が更に好ましい。
また、ポリ塩化ビニリデンの塗膜層は、基材のPETフィルムまたはONフィルム上に公知のコーティング方式で積層することができ、その厚さは1〜10μmの範囲が適当である。
ガスバリヤー層には、上記のほかにエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を用いることができ、この場合は、予め製膜されたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルムを公知のドライラミネーション法で基材フィルムに積層してもよく、また、押し出しラミネーション法で積層してもよい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層の厚さは10〜40μmの範囲が適当である。
次に、電池ケース用シートの内面側に積層される熱接着性樹脂層は、先にも説明したように、自己同士の熱接着性に加えて電極端子の金属に対しても良好な熱接着性を有すると共に、電解液への水分の侵入を極力少なくするため、それ自体、吸湿性、或いは水分吸着性の低いものが好ましく、更に、電解液により膨潤したり、浸食されることがなく安定なものが好ましい。
このような熱接着性樹脂層には、酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用することができ、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のほか、ポリエチレン、ポリプロピレンや、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などのポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸、或いは、その無水物でグラフト重合変性した樹脂が挙げられる。
上記においてカルボン酸基を有するものは、Na+ 、Zn2+などの金属イオンで架橋したアイオノマーも好適に使用できる。
このような酸変性ポリオレフィン系樹脂は、その酸成分含有量が、0.01〜10重量%の範囲のものが好ましい。酸成分含有量が0.01重量%未満の場合は、金属との熱接着性が不足し、酸成分含有量が10重量%を超える場合は、製膜性が劣るため好ましくない。
熱接着性樹脂層は、以上のような酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層、または、ポリオレフィン系樹脂層と上記酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成する。
積層体で形成する場合のポリオレフィン系樹脂層には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのほか、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、或いは、これらの三元共重合体などを使用することができる。これらは単独で使用してもよく、また、二種以上をブレンドして使用してもよい。
このような熱接着性樹脂層の厚さは、総厚で10〜100μmの範囲が適当であり、その中、酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さは、1〜50μmが好ましく、5〜25μmが更に好ましい。
本発明の電池ケース用シートは、以上のような各層、即ち、第1の基材フィルム層、第2の基材フィルム層、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層、そして、前記酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層、またはポリオレフィン系樹脂層と前記酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体のいずれかで形成される熱接着性樹脂層を適宜組み合わせて積層することにより製造できる。
これらの各層の積層は、公知のドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、押し出しコーティング法を適宜利用して積層することができる。
即ち、(1)に記載した構成の場合は、第1の基材フィルム層に対してアンカーコート(プライマーコートの一種)を施した後、その上に、熱接着性樹脂層の酸変性ポリオレフィン系樹脂、またはポリオレフィン系樹脂と酸変性ポリオレフィン系樹脂とを押し出しコート(多層共押し出しも可)して積層してもよく、また、熱接着性樹脂層を予めインフレーション成形などにより所定の厚さのフィルム状に製膜しておくことにより、例えば2液硬化型のポリウレタン系接着剤などを用いるドライラミネーション法、または、ポリエチレン、その他の熱接着性樹脂層を貼り合わせを行う層間に溶融押し出しして圧着する押し出しラミネーション法により積層することもできる。
(2)に記載した構成の場合は、第1の基材フィルム層と第2の基材フィルム層とは、前記ドライラミネーション法と押し出しラミネーション法のいずれでも積層することができ、熱接着性樹脂層については、前記(1)の構成の場合と同じ方法で積層することができる。
(3)に記載した構成の場合は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を予め所定の厚さのフィルム状に製膜しておくことにより、第1の基材フィルム層とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層と第2の基材フィルム層とは、前記ドライラミネーション法と押し出しラミネーション法のいずれでも積層することができ、また、熱接着性樹脂層については、前記(1)の構成の場合と同じ方法で積層することができる。
以下、実施例の図面に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
但し、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。また、図面に付した符号は、異なる図面においても同じ名称の部分には同じ符号を用いた。
図10乃至図12は、それぞれ本発明の電池ケース用シートの一実施例の構成を示す模式断面図である。
図10(a)に示した電池ケース用シート10は、外側に第1の基材フィルム層1aを配し、その内側の面に、熱接着性樹脂層3として酸変性ポリオレフィン系樹脂層を積層して構成したものである。
上記構成において、第1の基材フィルム層1aには、酸化珪素もしくは酸化アルミニウムの薄膜層、またはポリ塩化ビニリデンの塗膜層のいずれかで表面が被覆されたPETフィルムまたはONフィルムまたはOPPフィルムが用いられる。そして、この被覆面は摩擦などで損傷されないように、熱接着性樹脂層3との積層面側に向けて用いることが好ましい。
また、酸変性ポリオレフィン系樹脂層3には、酸成分含有量が0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
このような構成を採ることにより、電池ケース用シート10は、外側の第1の基材フィルム層1aのPETフィルムまたはONフィルムまたはOPPフィルムにより、引っ張り強度、突き刺し強度、折り曲げ強度などの機械的強度、および、表面の耐擦傷性、耐水性、耐薬品性や、耐熱性、耐寒性などの耐性が付与され、その表面に被覆された酸化珪素もしくは酸化アルミニウムの薄膜層、またはポリ塩化ビニリデンの塗膜層により、水蒸気その他の優れたガスバリヤー性が付与され、更に、熱接着性樹脂層3の酸変性ポリオレフィン系樹脂層により、優れた熱封緘性が付与される。
尚、酸変性ポリオレフィン系樹脂層は、通常のポリオレフィン系樹脂と比較すると吸湿性、水分吸着性が若干高くなるが、高温多湿の場所に長期間保管するようなことがなけば、吸湿量は僅かであり、実質的に問題はない。
図10(b)に示した電池ケース用シート10は、前記図10(a)に示した電池ケース用シート10の構成において、熱接着性樹脂層3を酸変性ポリオレフィン系樹脂層から、ポリオレフィン系樹脂層3aと酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bとの積層体に替えて積層した構成である。
尚、図10(a)(b)において、例えば、第1の基材フィルム層1aと熱接着性樹脂層3との間には、その積層方法により、アンカーコート剤またはドライラミネート用接着剤などの接着層が介在するが、補助的になものであるため省略した。この点は、以下の図11、図12についても同様である。
このような構成を採ることにより、図10(b)に示す電池ケース用シート 10は、熱接着性樹脂層3の中の酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さを図10(a)の場合相対的に薄くできるため、この層に吸湿が生じた場合でも、その量は少なく、吸湿に対する安全性が高められる。
上記図10(a)(b)の構成の代表的な具体例としては、例えば下記のような構成が挙げられる。
(1)PETフィルム(厚さ16μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
(2)PETフィルム(厚さ16μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(3)ONフィルム(厚さ16μm)・ポリ塩化ビニリデン塗膜層(厚さ3μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
図11(a)に示した電池ケース用シート10は、前記図10(a)に示した電池ケース用シート10の構成に、第2の基材フィルム層1bを追加積層して構成したものである。即ち、外側から順に、第1の基材フィルム層1、第2の基材フィルム層1b、そして、熱接着性樹脂層3として酸変性ポリオレフィン系樹脂層を積層した構成である。
このような構成を採ることにより、第1の基材フィルム層1aと第2の基材フィルム層1bには同種のものを積層してもよいが、例えば、一方をPETフィルムタイプとし、もう一方をONフィルムタイプとすることにより、両者の弱点が補完され、長所を兼ね備えさせることができる。従って、前記図10(a)に示した電池ケース用シート10に記載した作用、効果に加えて、各種の機械的強度や耐性が一層強化されると共に、酸化珪素もしくは酸化アルミニウムの薄膜層、またはポリ塩化ビニリデンの塗膜層のいずれかによるバリヤー性付与層も2層となるため、水蒸気その他のガスバリヤー性も一層向上する。
図11(b)に示した電池ケース用シート10は、前記図11(a)に示した電池ケース用シート10の構成において、熱接着性樹脂層3を酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層から、ポリオレフィン系樹脂層3aと酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bとの積層体に替えて積層した構成である。
このような構成を採ることにより、熱接着性樹脂層3の中の酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さを薄くすることができるため、良好な熱接着性を維持しつつ、吸湿に対する安全性を向上させることができる。
上記図11(a)(b)の構成の代表的な具体例としては、例えば下記のような構成が挙げられる。
(1)ONフィルム(厚さ15μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/PETフィルム(厚さ12μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
(2)PETフィルム(厚さ12μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/ONフィルム(厚さ15μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
図12(a)に示した電池ケース用シート10は、前記図11(a)に示した電池ケース用シート10の構成に、第1の基材フィルム層1aと第2の基材フィルム層1bとの間に、バリヤー性付与層としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層9を追加積層して構成したものである。即ち、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層9、第2の基材フィルム層1b、そして、熱接着性樹脂層3として酸変性ポリオレフィン系樹脂層を積層した構成である。
このような構成を取ることにより、バリヤー性付与層が3層となるため、前記図11(a)に示した電池ケース用シート10よりも更に水蒸気その他のガスバリヤー性を向上させることができる。
図12(b)に示した電池ケース用シート10は、前記図12(a)に示した電池ケース用シート10の熱接着性樹脂層3を、酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層から、ポリオレフィン系樹脂層3aと酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bとの積層体に替えて積層した構成である。
即ち、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層9、第2の基材フィルム層1b、ポリオレフィン系樹脂層3a、酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bを積層して構成したものである。
このような構成を採ることにより、熱接着性樹脂層3の中の酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さを薄くできるため、良好な熱接着性を維持しながら吸湿に対する安全性を向上させることができ、総合的な面で最も優れた性能の電池ケース用シートを提供できる効果を奏する。
上記図12(a)(b)の構成の代表的な具体例としては、例えば下記のような構成が挙げられる。
(1)PETフィルム(厚さ12μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層(厚さ25μm)/PETフィルム(厚さ12μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
(2)PETフィルム(厚さ12μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層(厚さ25μm)/PETフィルム(厚さ12μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(3)PETフィルム(厚さ12μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層(厚さ25μm)/ONフィルム(厚さ15μm)・酸化珪素薄膜層(厚さ500Å)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
以上、図10〜図12に示した構成の電池ケース用シート10において、表面に文字、絵柄などの印刷を施す場合には、最外層の第1の基材フィルム層の内面(積層面)に所謂裏刷り方式で予め印刷し、この面に次の層を積層して、電池ケース用シートを完成させることにより、表面の摩擦などで損なわれることのない印刷画像を形成することができる。
以上詳しく説明したように、本発明によれば、軽量で薄く、柔軟性があり、且つ、各種の機械的強度や耐性のほか、水蒸気その他のガスバリヤー性、熱封緘性などの性能および加工性に優れると共に、内部に収納される電池の構成材料を良好に密封でき、また、これらの水分の影響を与えることがなく、更に、電池ケースの外側に延出された導電性金属による電極端子が折れ曲がった場合にも、ケースのシートでショートするようなこともないという安全性にも優れた電池ケース用シートを生産性よく提供できる効果を奏する。
第4の実施の形態
次に図13乃至図16により第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態は、電池ケース用シートであって、該シートが、下記(1)〜(4)のいずれかの構成の積層体で形成され、且つ、該積層体の第1の基材フィルム層、第2の基材フィルム層、第3の基材フィルム層が、それぞれ2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは2軸延伸ナイロンフィルムまたは2軸延伸ポリプロピレンフィルムのいずれかで形成され、また、熱接着性樹脂層が酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層、またはポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成され、更に、該積層体の金属箔層が、少なくとも電池ケース用シートの一端の端縁部において、他の層よりも小さく、積層体の端部に露出しないように形成されている点が異なるのであり、他は第1の実施の形態と略同一である。
(1)第1の基材フィルム層/金属箔層/熱接着性樹脂層
(2)第1の基材フィルム層/第2の基材フィルム層/金属箔層/熱接着性樹脂層
(3)第1の基材フィルム層/金属箔層/第2の基材フィルム層/熱接着性樹脂層
(4)第1の基材フィルム層/第2の基材フィルム層/金属箔層/第3の基材フィルム層/熱接着性樹脂層
従って、前記のような構成を採ることにより、電池ケース用シートは、少なくともその一端の端縁部において、中間層の金属箔層が、他の層よりも小さく、積層体の端部に露出しないように形成されているので、この部分を電池ケースの開口部、即ち、タブ59,60を内部からケース51の外側に延長し封止する部分に用い、また、金属箔層の寸法を、例えば開口部を封止するヒートシール幅の一部に金属箔層の端部が入る程度とすることにより、タブ59,60が折れ曲がった場合でも電池ケース51とショートすることがなく、安全性を向上できると同時に、金属箔層による優れた水蒸気その他のガスバリヤー性なども得られるようになる。
そして、金属箔層の両側には第1、第2、第3の基材フィルム層、熱接着性樹脂層のいずれかが積層されているため、金属箔層は保護され、ひび割れやピンホールの発生が防止されるので優れたバリヤー性が維持される。
また、金属箔層の外側、または内側に積層される第1、第2、第3の基材フィルム層には、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム)または2軸延伸ナイロンフィルム(以下、ONフィルム)または2軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPフィルム)のいずれかを用いているので、上記のように金属箔層を保護すると同時に、シートの強度その他の性能、各種の耐性を向上させることができる。
そして、内面側の熱接着性樹脂層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層、または、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成されており、いずれの場合も最内面層が酸変性ポリオレフィン系樹脂層であり、自己同士の熱接着性に優れると同時に、銅やアルミニウムなどの金属に対する熱接着性にも優れているため、前記袋状の電池ケースの形成、および金属箔などで形成されるタブ59,60が介在するその開口部の封止に際して、ヒートシールにより良好に熱接着させ、密封することができる。
また、最内層に用いる酸変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンと比較して、金属に対する熱接着性に優れているが、同時に、吸湿性、水分吸着性が高くなる傾向があり、取り扱いによっては、僅かではあるが空気中の水分を吸収することが考えられる。
この程度の水分の吸収は、実質上問題になることは少ないが、更に品質の向上を図るため、本発明では、前記のように、熱接着性樹脂層をポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成する方法も採り、酸変性ポリオレフィン系樹脂の厚さを薄くできるようにした。
このような構成を採ることにより、仮に水分をきりするようなことがあっても、その量は僅かであり、良好な熱接着性を維持しつつ、水分の影響をより少なくすることができる。
前記熱接着性樹脂層の酸変性ポリオレフィン系樹脂層の酸成分含有量が、0.01〜10重量%である。
このような構成をとることにより、酸変性ポリオレフィン系樹脂層は、その製膜性がよく、且つ、自己同士の熱接着性と同時に、銅やアルミニウムなどの金属に対する熱接着性も確実に持つようになる。従って、袋状の電池ケース51の形成、および金属箔などで形成されるタブ59,60が介在する開口部の封止に際して、ヒートシールにより確実に熱接着させ、密封することができる。
以下に本発明の電池ケース用シートの製造に用いる材料、およびその加工方法など実施の形態について説明する。
本発明の電池ケース用シートは、前述のように中間層に水蒸気その他のガスバリヤー性に優れた金属箔層を用い、その外側、または両側に各種の強度および耐性に優れた第1、第2、第3の基材フィルム層を適宜積層し、更に、その内面側に、熱接着性樹脂層として、酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層、または、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体を積層した構成とし、更に、前記中間層の金属箔層が、少なくとも電池ケース用シートの一端の端縁部において、他の層よりも小さく、積層体の端部に露出しないように積層して構成したものである。
上記の構成において、水蒸気その他のガスバリヤー性を付与する中間層の金属箔層にはアルミニウム箔、銅箔などを好適に使用することができる。中でもアルミニウム箔は比較的安価であり、貼り合わせなどの加工性にも優れていることから最も好ましく使用できる。このような金属箔層の厚さは5〜25μmが適当である。
そして、前記第1〜第3の基材フィルム層としては、例えばPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを使用することができるが、各種の強度や耐性、および、その耐久性などを含めた各種性能と共に、加工性、経済性などを加味した場合は、PETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムが好適に使用できる。
ここでPETフィルムとONフィルムの特性を比較すると、特別大きな差ではないが、PETフィルムは吸湿性が低く、剛性、引っ張り強度、耐擦傷性、耐熱姓などに優れ、ONフィルムは吸湿性はやや高いが、柔軟性、突き刺し強度、折り曲げ強度、耐寒性などに優れている。
このような基材フィルムの厚さは、5〜100μmが好ましく、12〜30μmが更に好ましい。
最内層の熱接着性樹脂層は、先にも説明したように、自己同士の熱接着性に加えてタブ59,60の金属に対しても良好な熱接着性を有すると共に、電解液への水分の侵入を極力少なくするため、それ自体、吸湿性、或いは水分吸着性の低いものが好ましく、更に、電解液により膨潤したり、浸食されることがなく安定なものが好ましい。
このような条件を満たすために、熱接着性樹脂層を、酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層、または、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成したものである。
また、上記酸変性ポリオレフィン系樹脂は、その酸成分含有量が0.01〜10重量%のものが好ましい。
上記熱接着性樹脂層のポリオレフィン系樹脂層には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのほか、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などを使用することができ、これらは単独で用いてもよく、また、二種以上をブレンドして使用してもよい。
そして、熱接着性樹脂層の酸変性ポリオレフィン系樹脂層には、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のほか、前記ポリエチレン、ポリプロピレン、そして、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などのポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸、或いは、その無水物で、グラフト重合変性した樹脂を使用することができる。
上記において、カルボン酸基を有するものは、Na+ 、Zn2+などの金属イオンで架橋したアイオノマーも良好に使用できる。
上記酸変性ポリオレフィン系樹脂は、その酸成分含有量が0.01〜10重量%の樹脂が、製膜性もよく、自己同士の熱接着性のほか、金属に対する熱接着性にも優れており、好適に使用することができる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸成分含有量が、0.01重量%未満の場合は、金属との熱接着性が不足し、酸成分含有量が10重量%を超える場合は、製膜性が劣るため好ましくない。
只、上記のような酸変性ポリオレフィン系樹脂は、その酸変性により金属に対する熱接着性が向上する長所を有する反面、吸湿性、水分吸着性がやや高くなる欠点も有している。
従って、本発明では、熱接着性樹脂層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層で形成したもののほかに、熱接着性樹脂層をポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成し、酸変性ポリオレフィン系樹脂層を最内層に用いると共に、この層をできるだけ薄くし、水分の影響を最小限にしたものを含んでいる。
このような熱接着性樹脂層の厚さは、総厚で10〜100μmの範囲が適当であり、これを前記2層で形成する場合、両者の配分は適宜決めてよいが、酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さは、1〜50μmが好ましく、5〜25μmが更に好ましい。
本発明の電池ケース用シートは、以上のような各層、即ち、第1〜第3の基材フィルム層、金属箔層、そして、熱接着性樹脂層を適宜積層して形成するが、中間層の金属箔層が、電池ケース用シートの少なくとも一端の端縁部において、他の層よりも小さくなるように積層するものである。
このような積層シートの製造方法は、第1〜第3の基材フィルム層および金属箔層の積層は、公知のドライラミネーション法により、例えば2液硬化型のポリウレタン系接着剤などを用いて貼り合わせることができ、また、ポリエチレン、その他の熱接着性樹脂を、貼り合わせを行う層間に溶融押し出しして圧着する押し出しラミネート法で貼り合わせることもできる。
また、熱接着性樹脂層の積層は、前記基材フィルム層と金属箔層との積層シートの積層面に、アンカーコート剤(AC剤、プライマーコートの一種)を塗布した後、その面に酸変性ポリオレフィン系樹脂、または、ポリオレフィン系樹脂と酸変性ポリオレフィン系樹脂とを、所望の厚さで押し出しコートまたは共押し出しコートして積層することもでき、また、熱接着性樹脂層を予め多層インフレーション成形法などで所望の厚さに製膜しておいて、これを前記ドライラミネーション法で貼り合わせることもできる。
尚、前記第1〜第3の基材フィルムと金属箔との貼り合わせにおいて、所定幅の基材フィルムに対して、それよりも、例えば両側が、各10〜15mm程度幅の狭い金属箔を貼り合わせておいて、これに熱接着性樹脂層を積層した後、両側を例えば、金属箔層の幅よりも1〜2mm程度外側でスリット(トリミング)することにより、端部に金属箔層が露出しない電池ケース用シートを容易に製造することができる。
以下、実施例の図面に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
但し、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。また、図面に付した符号は、異なる図面においても同じ名称の部分には同じ符号を用いた。
図13乃至図16は、それぞれ本発明の電池ケース用シートの一実施例の構成を示す模式断面図である。
図13に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、金属箔層2、そして、ポリオレフィン系樹脂層3aと酸変性ポリオレフィン系樹脂3bからなる熱接着性樹脂層3が積層された構成であり、金属箔層2は、図13において右側の端縁部で他の層よりも小さく形成されていて、電池ケース用シート10の端部に露出しない構成となっている。
従って、この部分が電池ケース51の開口部となるように電池ケース用シート10を用いることにより、ケース51の内部から外側に延長されるタブ59,60が折れ曲がった場合にも、金属箔層2でタブ59,60がショートするようなことがなく、安全性が高められる。
尚、上記構成において、第1の基材フィルム層1aには、PETフィルム、 ONフィルム、OPPフィルムのいずれかが用いられ、金属箔層2には、例えばアルミニウム箔を用いることが好ましく、また、熱接着性樹脂層3の酸変性ポリオレフィン系樹脂層3b(シートの最内層)には、酸成分含有量が0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いることが特に好ましい。
このような構成を採ることにより、電池ケース用シート10は、最外層の第1の基材フィルム層1aにより、引っ張り強度、突き刺し強度、折り曲げ強度などの機械的強度、および、表面の耐擦傷性、耐水性、耐薬品性や、耐熱性、耐寒性などの耐性が付与され、中間層の金属箔層2(例えばアルミニウム箔層)により、水蒸気その他の優れたガスバリヤー性が付与され、更に、熱接着性樹脂層3のポリオレフィン系樹脂層3aと、酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bとにより、先に説明したように、優れた熱封緘性が付与され、且つ、その低水分含有性も維持することができる。
また、バリヤー性に関して、金属箔層に例えば厚さ9μmのアルミニウム箔を用いることにより、水蒸気透過度0.01g/(m2 ・24hrs )、(40℃、90%RH)以下の性能を容易に得られ、更にこれをレベルアップすることも容易である。
上記積層構成の代表的な具体例としては、例えば下記のような構成が挙げられる。
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(3)OPPフィルム(厚さ25μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
図14に示した電池ケース用シート20は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、第2の基材フィルム層1b、金属箔層2、そして、ポリオレフィン系樹脂層3aと酸変性ポリオレフィン系樹脂3bからなる熱接着性樹脂層3を積層して構成され、この場合も金属箔層2は、電池ケース用シート20の一端の端縁部、即ち、図において右側の端縁部で他の層よりも小さく形成されていて、電池ケース用シート20の端部に露出しない構成となっている。
この構成は、前記図13に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層2の外側の第1の基材フィルム層1aの性能を向上させるため、第2の基材フィルム層を追加し、第1の基材フィルム層1aと第2の基材フィルム層1bとで外側の基材フィルム層を構成したものである。
この場合も、第1の基材フィルム層1aと第2の基材フィルム層1bには、それぞれPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムのいずれかが用いられる。只、この場合、同種のフィルムを2枚積層してもよいが、例えば、第1の基材フィルム層1aにPETフィルムを用いた場合は、第2の基材フィルム層1bにはONフィルムを用いるというように異種のフィルムを組み合わせて積層した方が、両者の弱点を補完でき、長所を兼ね備えさせることができる点でより好ましい。
上記積層構成の代表的な具体例としては、例えば下記のような構成が挙げられる。
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(3)PETフィルム(厚さ12μm)/OPPフィルム(厚さ25μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(4)ONフィルム(厚さ15μm)/OPPフィルム(厚さ25μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
このような構成を採ることにより、アルミニウム箔層の外側の基材フィルム層が、例えば、PETフィルムとONフィルムなどのように両方の長所を兼ね備えたものとなり、特に外側の各種の機械的強度や耐性が強化され、総合的に優れた性能の電池ケース用シート10を得られる効果を奏する。
図15に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、金属箔層2、第3の基材フィルム層1c、そして、ポリオレフィン系樹脂層3aと酸変性ポリオレフィン系樹脂3bからなる熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、前記図13に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層2に対する保護効果を一層高めて、より安定したバリヤー性を得るため、第3の基材フィルム層1cを、中間層の金属箔層2とその内側の熱接着性樹脂層3(直接的にはポリオレフィン系樹脂層3a)との間に追加して積層し、金属箔層2の両側が、第1の基材フィルム層1aと、第3の基材フィルム層1cとで挟み込まれるように構成したものである。
この場合も、金属箔層2は、少なくとも電池ケース用シート10の一端の端縁部、即ち、図では右側の端縁部において、他の層よりも小さく、電池ケース用シート10の端部に露出しないように積層されている。
また、第1の基材フィルム層1aと第3の基材フィルム層1cには、それぞれPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムのいずれかが用いられる。
上記積層構成の代表的な具体例としては、下記のような構成が挙げられる。
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(2)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(3)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/OPPフィルム(厚さ25μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(4)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
(5)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/OPPフィルム(厚さ25μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)
このような構成を採ることにより、第3の基材フィルム層1cが追加積層されたことによる各種の機械的強度および耐性の向上と共に、金属箔層2の両側が、第1の基材フィルム層1aと第3の基材フィルム層1cとで挟み込まれるため、外部からの衝撃や摩擦、その他物理的、化学的作用だけでなく、内部からの同様な作用に対しても金属箔層2に対する保護性が向上し、一層安定したバリヤー性を得られる効果を奏する。
図16に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、第2の基材フィルム層1b、金属箔層2、第3の基材フィルム層1c、そして、ポリオレフィン系樹脂層3aと酸変性ポレオレフィン系樹脂層3bからなる熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、前記図14に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層2とその内側の熱接着性樹脂層3(直接的にはポリオレフィン系樹脂層3a)との間に、第3の基材フィルム層1cを追加して積層した構成に相当する。
また、この場合も、金属箔層2は、少なくとも電池ケース用シート10の一端の端縁部、即ち、図では右側の端縁部において、他の層よりも小さく、電池ケース用シート10の端部に露出しないように積層されており、第1〜第3の基材フィルム層1a,1b,1cには、それぞれPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムのいずれかが用いられる。
このような構成を採ることにより、上記第3の基材フィルム層1cを追加したことによる各種の機械的強度及び耐性の向上と共に、金属箔層2の両側が、第1、第2の基材フィルム層1a,1bと、第3の基材フィルム層1cとで挟み込まれるため、金属箔層2は一層高度に保持され、更に安定したバリヤー性を得られる効果を奏する。
以上、図13乃至図16に示した構成の電池ケース用シート10において、表面に文字、絵柄などの印刷を施す場合には、最外層の第1の基材フィルム層1aの内面(積層面)に所謂裏刷り方式で予め印刷し、この面に次の層を積層して、電池ケース用シートを完全させることにより、表面の摩擦などで損なわれることのない耐久性に優れた印刷画像を形成することができる。
以上詳しく説明したように、本発明によれば、軽量で薄く、柔軟性があり、且つ、各種の機械的強度や耐性のほか、水蒸気その他のガスバリヤー性、熱封緘性、電極端子との熱接着性などの性能および加工性に優れると共に、内部に収納される電池の構成材料に対して水分の影響を与えることがなく、更に、電池ケースに加工した際、電極端子が電池ケースの金属箔層でショートするようなこともなく安全性にも優れた電池ケース用シートを生産性よく提供できる効果を奏する。
第5の実施の形態
次に、図17乃至図20により本発明の第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態は電池ケース用シートであって、該シートが、下記(1)〜(4)のいずれかの構成の積層体で形成され、且つ、該積層体の第1の基材フィルム層、第3の基材フィルム層が、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルムのいずれかで形成され、また、少なくとも最内層の酸変性ポレオレフィン系樹脂層には、ブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤のいずれか一種または二種以上が添加されている点が異なるのみであり、他は第2の実施の形態と略同一である。
(1)第1の基材フィルム層/金属箔層/酸変性ポレオレフィン系樹脂層(最内層)
(2)第1の基材フィルム層/金属箔層/ポレオレフィン系樹脂層/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(最内層)
(3)第1の基材フィルム層/金属箔層/第3の基材フィルム層/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(最内層)
(4)第1の基材フィルム層/金属箔層/第3の基材フィルム層/ポリオレフィン系樹脂層/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(最内層)
上記(1)〜(4)の構成において、各層の間には必要に応じて接着層を設けるが、ここでは省略して記載した。
また、ヒートシール用の熱接着性樹脂層(シートラント層)は、(1)および(3)の構成では、酸変性ポリオレフィン系樹脂層単独で構成され、(2)および(4)の構成では、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポレオレフィン系樹脂層とが順に積層された2層構成である。
以下、2軸延伸ポレエチレンテレフタレートフィルムはPETフィルム、2軸延伸ナイロンフィルムはONフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルムはOPPフィルムと略記する。
前記のような構成を採ることにより、中間層の金属箔層によって、優れた水蒸気その他のガスバリヤー性が付与され、金属箔層の外側または両側に積層された第1、第3の基材フィルム層、即ち、PETフィルム、またはONフィルム、またはOPPフィルムによって、金属箔層が保護され、そのひび割れやピンホールの発生が防止されると共に、積層シートにこれらの優れた各種の強度や耐性が付与される。
そして、内面側のシーラント層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂層単独、または、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポレオレフィン系樹脂層とを順に積層した2層で構成される。
いずれの場合も最内層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂層であり、この酸変性ポリオレフィン系樹脂層は、自己同士の熱接着性を有すると同時に、銅やアルミニウムなどの金属に対する熱接着性も有しており、また、この酸変性ポリオレフィン系樹脂層には、ブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤の一種または二種以上が添加されているので、その欠点があった滑り性、耐ブロッキング性の不足が解消される。
従って、袋状の電池ケースの作製に際して、その作業性およびヒートシール適性がよくなり、更に、その内部に電池の構成材料を収納し、電池を作製する際も、その口開き性がよくなり、且つ、タブ59,60が介在する開口部のヒートシールも良好に行うことができる。
また、前記シーラント層を、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層とを順に積層した2層構成とした場合は、シーラント層としては、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との両方が作用するため、優れた熱接着性を維持でき、且つ、酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さは薄くすることができるので、その欠点である吸湿性により、万一吸湿を生じた場合でも、その量は微量であり、電池の構成材料に対する悪影響を防止することができる。
更に、酸変性ポリオレフィン系樹脂層を薄くすることにより、この層に添加するブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤の使用量を少なくすることができ、また、酸変性ポリオレフィン系樹脂自体の使用による材料コストの上昇も低減できるため経済性の面でも有利になる。
前記金属箔層は、少なくとも前記積層シートの一端の端縁部において、他の層よりも小さく該積層シートの端面に露出しないように積層されている。
このような構成を採ることにより、積層シートの金属箔層が他の層よりも小さく積層された端部を、袋状の電池ケースの開口部に用いることができ、それにより、内部から開口部を通して外側に延長されたタブ59,60が折れ曲がった場合でも、タブ59,60が金属箔層と接触することがなくなり、安全性を一層高めことができる。
以下に本発明の電池ケース用シートの製造に用いる材料、および電池ケース用シートの製造方法など実施の形態について説明する。
本発明の電池ケース用シートは、前述したように、中間層に水蒸気その他のガスバリヤー性に優れた金属箔層を用い、その外側、または両側に各種の強度および耐性に優れた第1、第2の基材フィルム層を適宜積層し、更に、その内面側にシーラント層として、酸変性ポリオレフィン系樹脂層単独、または、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との2層を順に積層し、且つ、少なくとも最内層となる酸変性ポリオレフィン系樹脂層には、ブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤のいずれか一種または二種以上を添加して構成したものである。
上記の構成において、ガスバリヤー性を付与する中間層の金属箔層にはアルミニウム箔、銅箔などを好適に使用することができる。中でもアルミニウム箔は比較的安価であり、貼り合わせなどの加工性にも優れていることから最も好ましく使用できる。このような金属箔層の厚さは5〜25μmが適当である。
そして、前記第1、第3の基材フィルム層としては、例えばPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを使用することができるが、各種の強度や耐性、および、その耐久性などを含めた各種性能と共に、加工性、経済性を加味した場合は、PETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムが特に適している。
特に、PETフィルムは、吸湿性が低く、剛性、引っ張り強度、折り曲げ強度、衝撃強度、耐擦傷性、耐熱性、耐水性などに優れ、総合的にバランスの採れた性能を有し、欠点の少ないフィルムである。
ONフィルムは、吸湿性はやや高いが、柔軟性に富み、突き刺し強度、衝撃強度、折り曲げ強度、耐寒性などに優れている。
OPPフィルムは、防湿性、耐水性、耐薬品性のほか、引張り強度、折り曲げ強度などに優れ、また、特に安価であることも大きな利点である。
このような基材フィルムの厚さは、5〜100μmが好ましく、12〜30μmが更に好ましい。
最内層のシーラント層は、先にも説明したように、自己同士の熱接着性に加えて電極端子の金属に対しても良好な熱接着性を有すると共に、内部に収納される電池の構成材料に対して水分の影響を与えないよう、その自体も、吸湿性が低く水分を含まないものが好ましい。
このような条件を満たすために、本発明では、シーラント層を、酸変性ポリオレフィン系樹脂層単独、または、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層とを順に積層した2層構成で形成し、且つ、最内層となる酸変性ポリオレフィン系樹脂層の滑り性、耐ブロッキング性の不足を解消するため、この層にブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤の一種または二種以上を添加して構成したものである。
このようなシーラント層のポリオレフィン系樹脂層には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのほか、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などを使用することができ、これらは単独で用いてもよく、また、二種以上をブレンドして使用してもよい。
また、シーラント層の酸変性ポリオレフィン系樹脂層には、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のほか、前記ポリエチレン、ポリプロピレン、そして、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などのポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸、或いは、その無水物で、グラフト重合変性した樹脂を用いることができ、その酸成分含有量は0.01〜10重量%の樹脂が、自己同士の熱接着性のほか、金属に対する熱接着性にも優れ、また、製膜性もよく良好に使用することができる。
酸成分含有量が0.01重量%未満の場合は、金属との熱接着性が不足し、酸成分含有量が10重量%を超える場合は、製膜性が劣るため好ましくない。
尚、上記においてカルボン酸基を有するものは、Na+ 、Zn2+などの金属イオンで架橋したアイオノマーも同様に好適に使用することができる。
このようなシーラント層の厚さは、総厚で10〜120μmが好ましく、20〜100μmが更に好ましい。
特に、シーラント層をポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との2層で形成する場合は、酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さは薄くてよく1μm以上あればよい。例えば、総厚を100μmとした場合でも、酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さは、1〜50μmが好ましく、5〜25μmが更に好ましい。
また、前記酸変性ポリオレフィン系樹脂は、その酸変性により、樹脂が軟らかくなり、自己密着性を生じるため、積層シートの滑り性の低下や、袋状にした時の内面密着の問題を生じる。
このような問題を解決するために、本発明では、少なくとも最内層の酸変性ポリオレフィン系樹脂層に、ブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤のいずれか一種または二種以上を添加している。
ブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤は、それぞれ公知のものを使用することができ、例えば、ブロッキング防止剤としては、シリカ、ゼオライト、タルク、硅そう土、ジカルボン酸エステルアミド、ポリエチレンなど、滑剤としては、ステアリルアルコール、フッ素樹脂エラストマーなど、スリップ剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。
これらの添加量は、それぞれの材質により異なるため、一律には言えないが、例えば、シリカを単独で使用する場合、樹脂100重量部に対してシリカ0.2〜0.5重量部が適当であり、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪酸アミドを使用する場合は、樹脂100重量部に対して脂肪酸アミド0.5〜1.0重量部が適当である。
次に、以上のような各層を積層して形成される本発明の電池ケース用シートの製造方法について説明する。
先ず、中間層の金属箔層と第1または第3の基材フィルム層との積層は、それぞれ公知のドライラミネーション法により、例えば、2液硬化型のポリウレタン系接着剤などを用いて貼り合わせることができ、また、ポリエチレンその他の熱接着性樹脂を、貼り合わせを行う層間に溶融押し出しして圧着する押し出しラミネーション法で貼り合わせることもできる。
そして、シーラント層の積層は、前記基材フィルムと金属箔層との積層シートに対して行うが、その積層面は金属箔層面または第2の基材フィルム層面であり、この面にアンカーコート(プライマーコートの一種)を施した後、その上に酸変性ポリオレフィン系樹脂(ブロッキング防止剤などを添加したもの)、または、ポリオレフィン系樹脂と酸変性ポリオレフィン系樹脂(ブロッキング防止剤などを添加したもの)とを、それぞれ所望の厚さで押し出しコートまたは共押し出しコートして積層することができ、また、シーラント層を予め単層または多層インフレーション成形法などで所望の厚さに製膜しておいて、これを前記ドライラミネーション法、または、押し出しラミネーション法で貼り合わせることもできる。
尚、前記第1、第3の基材フィルムと金属箔層との貼り合わせの際、所定幅の基材フィルムに対して、それよりも例えば両側が各10mm程度幅の狭い金属箔を貼り合わせておいて、これにシーラント層を積層した後、両側を金属箔層の幅よりも1〜2mm程度外側で、仕上げのスリット(トリミング)を行うことにより、端面に金属箔層が露出しない電池ケース用シートを容易に製造することができる。
以下、実施例の図面に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
但し、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。また、図面に付した符号は、異なる図面においても同じ名称の部分には同じ符号を用いた。
図17乃至図20は、それぞれ本発明の電池ケース用シートの一実施例の構成を示す模式断面図である。
図17に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、接着層5a、金属箔層2、接着層5b、そして、最内層のシーラント層3として、ブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤の一種又は二種以上が添加された酸変性ポリオレフィン系樹脂層を積層して構成され、中間層の金属箔層2は、図において右側の端縁部で他の層よりも小さく、電池ケース用シート10の端面に露出しないように構成されている。
図18に示した電池ケース用シート10は、前記図17に示した電池ケース用シート10の構成において、最内層のシーラント層3のみをポリオレフィン系樹脂層3aと、ブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤の一種又は二種以上が添加された酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bとが順に積層された2層構成に変えて積層したものであり、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、接着層5a、金属箔層2、接着層5b、そして、シーラント層3として、ポリオレフィン系樹脂層3a、ブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤の一種又は二種以上が添加された酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bが積層された構成である。
この場合も金属箔層2は、図において右側の端縁部で他の層よりも小さく、電池ケース用シート10の端面に露出しないように構成されている。
図19に示した電池ケース用シート10は、前記図17に示した電池ケース用シート10の構成において、金属箔層2の内側、即ち、金属箔層2とシーラント層3のブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤の一種又は二種以上が添加された酸変性ポリオレフィン系樹脂層との間に、第3の基材フィルム層1cを追加して積層した構成であり、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、接着層5a、金属箔層2、接着層5b、第3の基材フィルム層1c、そして、シーラント層3として、ブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤の一種又は二種以上が添加された酸変性ポリオレフィン系樹脂層が積層された構成である。
この場合も金属箔層2は、図において右側の端縁部で他の層よりも小さく、電池ケース用シート10の端面に露出しないように構成されている。
図20に示した電池ケース用シート10は、前記図19に示した電池ケース用シート10の構成において、最内層のシーラント層3のみを、ポリオレフィン系樹脂層3aとブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤の一種又は二種以上が添加された酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bとが順に積層された2層構成に変えて積層したものであり、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、接着層5a、金属箔層2、接着層5b、第3の基材フィルム層1c、ポリオレフィン系樹脂層3a、ブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤の一種又は二種以上が添加された酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bが積層された構成である。
この場合も金属箔層2は、図において右側の端縁部で他の層よりも小さく、電池ケース用シート10の端面に露出しないように構成されている。
以上、図17〜図20に示した電池ケース用シート10の構成において、第1、第3の基材フィルム層1a,1b,1cには、PETフィルムまたはONフィルムまたはOPPフィルムを用いることが好ましく、金属箔層2には、アルミニウム箔を用いることが好ましい。
そして、第1の基材フィルム層1aと金属箔層2との間に設けられる接着層5aは、両者の接着を良好にするものであり、両者の積層をドライラミネーション法で行う場合は、2液硬化型ポリウレタン系接着剤などの接着剤層であり、押し出しラミネーション法で積層する場合は、ポリエチレンその他の熱接着性樹脂層となる。
金属箔層2の内面側、即ち、シーラント層側に設けられる接着層5bは、図17、図18の電池ケース用シート10では、金属箔層2とシーラント層3との接着を良好にするものであり、シーラント層3を単層または多層共押し出しコート法で積層する場合はアンカーコート剤層であり、また、シーラント層3を予めフィルム状に製膜して積層する場合は、積層方法がドライラミネーション法、または押し出しラミネーション法となるため、ドライラミネート用接着剤層、またはポリエチレンその他の熱接着性樹脂層となる。
そして、図19、図20の電池ケース用シート10では、接着層5bは、金属箔層2とその内側の第3の基材フィルム層1cとの間に設けられ、両者の接着を良好にするものである。この場合も、金属箔層2の外側の接着層5aと同様、その積層方法がドライラミネーション法、または押し出しラミネーション法となるため、接着層5bは、ドライラミネーション用接着剤層、またはポリエチレンその他の熱接着性樹脂層となる。
また、上記電池ケース用シート10では、シーラント層3は、第3の基材フィルム層1cの内面側(図において下側)に積層される。従って、図には示していないが、第3の基材フィルム層1cとシーラント層3との間にも接着層を設けることが好ましく、シーラント層3を単層または多層共押し出しコート法で積層する場合は、接着層としてアンカーコート剤層を設け、また、シーラント層3を予めフィルム状に製膜して積層する場合は、ドライラミネーション法、または押し出しラミネーション法を採るため、ドライラミネーション用接着剤層、またはポリエチレンその他の熱接着性樹脂層が設けられる。
以上のような構成を採ることにより、例えば、図17に示した電池ケース用シート10では、最外層の第1の基材フィルム層1a、即ち、PETフィルムまたはONフィルムまたはOPPフィルムが、中間層の金属箔層2を保護すると共に、引っ張り強度、突き刺し強度、折り曲げ強度などの機械的強度、および、表面の耐擦傷性、耐水性、耐薬品性や、耐熱性、耐寒性などの耐性を付与し、中間層の金属箔層2(例えばアルミニウム箔)が、優れた水蒸気その他のガスバリヤー性を付与し、更に、最内層にシーラント層3として積層されたブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤の一種又は二種以上が添加された酸変性ポリオレフィン系樹脂層(以下、ブロッキング防止剤添加酸変性ポリオレフィン系樹脂層と略記する)が、優れた熱接着性、および良好な滑り性、耐ブロッキング性を付与する。
従って、袋状の電池ケースを作製する際、生産性よくヒートシールすることができ、また、その内部に電池の構成材料を収納し、開口部をヒートシールする際も、ケースの開口部の口開き性がよく、金属箔などによるタブ59,60が介在する開口部も接着性よくヒートシールすることができる。
また、電池ケース用シート10は、少なくともその一端の端縁部において、中間層の金属箔層2が、他の層よりも小さく、電池ケース用シート10の端面に露出しないように積層されているので、この部分が電池ケースの開口部となるように電池ケース用シート10を用いることにより、開口部を通して外側に延長された電極端子が折れ曲がった場合でも、金属箔層2と接触しショートするようなことがなく安全性においても一層優れたものとなる。
また、図18に示した電池ケース用シート20は、前記図17に示した電池ケース用シート10の構成において、シーラント層3のブロッキング防止剤添加酸変性ポリオレフィン系樹脂層を、ポリオレフィン系樹脂層3aとブロッキング防止剤添加酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bとの2層構成に変えて積層したものである。
このような構成を採ることにより、前記図17に示した電池ケース用シート10で記載した作用、効果に加えて、ブロッキング防止剤添加酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bの厚さを、必要最小限までは薄くすることができるので、優れた熱接着性および滑り性、耐ブロッキング性を維持しながら、万一、ブロッキング防止剤添加酸変性ポリオレフィン系樹脂層3bが吸湿した場合でも、その量を少なくすることができ、内部の電池の構成材料に対する水分の悪影響を防止することができる。
そして、図19に示した電池ケース用シート10は、前記図17に示した電池ケース用シート10の構成において、金属箔層2とシーラント層3のブロッキング防止剤添加酸変性ポリオレフィン系樹脂層との間に、第3の基材フィルム層1cを追加して積層した構成であり、また、図20に示した電池ケース用シート10は、前記図18に示した電池ケース用シート10の構成において、金属箔層2とシーラント層3のポリオレフィン系樹脂層3aの面との間に、第3の基材フィルム層1cを追加して積層した構成である。
従って、このような構成を採ることにより、図19に示した電池ケース用シート10は、図17に示した電池ケース用シート10に対して、また、図20に示した電池ケース用シート10は、図18に示した電池ケース用シート10に対して、それぞれ第3の基材フィルム層1cの追加積層による各種の強度および耐性など性能の向上効果の付加と共に、金属箔層2の両面が、第1の基材フィルム層1a、または第3の基材フィルム層1cにより、強固に保護されるため、金属箔層2による優れた水蒸気その他のガスバリヤー性を一層確実に安定して得られ効果が付加される。
特に、第3の基材フィルム層1cとして、吸湿性が低く、各種の強度および耐性、中でも耐熱性に優れたPETフィルムを用いることにより、電極端子が介在する開口部のヒートシートに際して、過酷な温度や圧力が加えられても、PETフィルムが断裂するようなことはなく、確実に金属箔層2を保護できるため、安心してヒートシールを行うことができる。
尚、バリヤー性に関して、金属箔層に例えば厚さ9μmのアルミニウム箔を用いた場合、水蒸気透過度0.01g/(m2 ・24hrs )、(40℃、90%RH)以下の性能を容易に得られ、これをレベルアップすることも容易である。
以上、図17〜図20に示した電池ケース用シートの積層構成の代表的な具体例としては、下記のような構成が挙げられる。
但し、積層に用いる接着層は省略して記載する。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂層はブロッキング防止剤、滑剤、スリップ剤のいずれか一種又は二種以上が添加されたものである。
(図17の構成の例)
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ50μm)(最内層)
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ50μm)(最内層)
(3)OPPフィルム(厚さ20μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ50μm)(最内層)
(図18の構成の例)
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリオレフィン層(厚さ35μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ15μm)(最内層)
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリオレフィン層(厚さ35μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ15μm)(最内層)
(3)OPPフィルム(厚さ20μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ポリオレフィン層(厚さ35μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ15μm)(最内層)
(図19の構成の例)
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)(最内層)
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)(最内層)
(3)OPPフィルム(厚さ20μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)(最内層)
(図20の構成の例)
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)(最内層)
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)(最内層)
(3)OPPフィルム(厚さ20μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)(最内層)
(4)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)(最内層)
前記図17〜図20に示した構成の電池ケース用シート10において、表面に文字、絵柄などの印刷を施す場合には、最外層の第1の基材フィルム層1aの内面(積層面)に所謂裏刷り方式で予め印刷し、この面に次の層を積層して、電池ケース用シートを完成させることにより、表面の摩擦などで印刷画像が損なわれることもなく、各種耐性など性能に優れた印刷画像を形成することができる。
以上詳しく説明したように、本発明によれば、プラスチックを主とする積層シートで形成され、薄くて軽い、柔軟性があり、且つ、各種の強度や耐性のほか、水蒸気その他のガスバリヤー性、熱封緘性、そして、金属箔などによる電極端子との熱接着性などの性能に優れると共に、電極端子が電池ケース用シートとショートするようなこともなく安全で、しかも、積層シートの内面側のシーラント層は、その吸湿を少なくでき、且つ、滑り性、耐ブロッキング性がよく、加工性および使用適性に優れた電池ケース用シートを生産性よく提供できる効果を奏する。
第6の実施の形態
次に図21乃至図23により、本発明の第6の実施の形態について説明する。図6の実施の形態は電池ケース用シートであって、該シートが下記(1)〜(3)のいずれかの構成の積層体で形成され、且つ、該積層体の金属箔層の一方の面、または両方の面に隣接して積層されるポリオレフィン系樹脂層の厚さが、10〜100μmである点が異なるのみであり、他は第1の実施の形態と略同一である。
(1)第1の基材フィルム層/ポリオレフィン系樹脂層/金属箔層/第3の基材フィルム層/熱接着性樹脂層(最内層)
(2)第1の基材フィルム層/金属箔層/ポリオレフィン系樹脂層/第3の基材フィルム層/熱接着性樹脂層(最内層)
(3)第1の基材フィルム層/ポリオレフィン系樹脂層/金属箔層/ポリオレフィン系樹脂層/第3の基材フィルム層/熱接着性樹脂層(最内層)
前記のような構成を採ることにより、中間層の金属箔層が優れた水蒸気その他のガスバリヤー性を付与し、その両側の第1および第2の基材フィルム層が、各種の強度や耐性を付与すると共に、金属箔層を保護し、そのひび割れやピンホールの発生を防止するので良好なバリヤー性が維持される。
また、金属箔層とその両側の基材フィルム層との間には、そのいずれか一方、または両方の間にポリオレフィン系樹脂層が、10〜100μmの厚さで金属箔層と隣接するように積層されている。このポリオレフィン系樹脂は、熱接着性がよく、また、融点もしくは軟化点が比較的低く熱流動性に優れている。
従って、積層シートの端縁部をヒートシールして電池ケースを作製する際、特に、その開口部をシールする際、その端部を含む領域を、やや強目の条件(高い温度や圧力)でヒートシールすることにより、このポリオレフィン系樹脂層は、熱流動性がよく、且つ十分な厚さを有するため、加熱軟化されて端面に押し出され、そこに露出している金属箔層が覆い隠される。
その結果、内部から外側に延長されるタブ59、60が折れ曲がった場合でも、タブ58、59は、シートの金属箔層と接触することがなく、安全性が向上される。
そして、シートの最内層には熱接着性樹脂層が積層されているので、袋状の電池ケースの形成、および、その内部に電池の構成材料を収納した後の開口部の封止に際して、ヒートシールにより容易に熱接着させ、密封することができる。
前記積層体の第1の基材フィルム層、第3の基材フィルム層が、それぞれ2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは2軸延伸ナイロンフィルムまたは2軸延伸ポリプロピレンフィルムのいずれかとなっている。
以下、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムはPETフィルム、2軸延伸ナイロンフィルムはONフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルムはOPPフィルムと略記する。
上記PETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムは、引っ張り強度、折り曲げ強度、衝撃強度、突き刺し強度などの強度と共に、耐水性、耐薬品性、耐溶剤性のほか、耐擦傷性、耐熱性、耐寒性などの耐性、およびその耐久性などに優れるほか、印刷、ラミネートなどの加工性もよく、また、汎用フィルムとして需給が容易で安価であり経済性にも優れている。
従って、上記のような構成を採ることにより、総合的に優れた性能の電池ケース用シートを生産性よく安価に提供することができる。
また前記金属泊層に隣接して積層されるポリオレフィン系樹脂層が、酸変性ポリオレフィン系樹脂、またはシングルサイト触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体で形成されている。
このような構成をとることにより、酸変性ポリオレフィン系樹脂や、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンと比較して、融点もしくは軟化点が低く、熱流動性がよいため、前記シート端縁部のヒートシールにより、一層容易にシートの端面に押し出して金属箔層の端部を覆い隠すことができる。
特に、酸変性ポリオレフィン系樹脂は、金属箔層との熱接着性にも優れるため、押し出しラミネーション法によっても、積層強度に優れた積層シートが得られ、また、シングルサイト触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体は、分子量分布の幅が狭く、共重合比も安定しており、低温ヒートシール性、熱間シール性に優れる特徴を有するため、ヒートシールによるシート端面への押し出しが容易であり、いずれも金属箔の端部隠蔽用に好適に使用することができる。
前記積層体の最内層の熱接着性樹脂層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層、またはポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成されている。
上記積層体の最内層の熱接着性樹脂には、ポリエチレンのほか、種々のポリオレフィン系樹脂を使用できるが、特に酸変性ポリオレフィン系樹脂は、自己同士の熱接着性と同時に、金属に対しても良好な熱接着性を有している。
従って、上記のような構成を採ることにより、先ず、熱接着性樹脂層を酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層で形成した場合は、袋状の電池ケースの開口部に、電極端子として裸の金属箔などが介在した場合でも、ヒートシールにより良好に熱接着させ密封することができる。
そして、熱接着性樹脂層をポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成した場合は、酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さを相対的に薄くできるので、保存条件などで万一、酸変性ポリオレフィン系樹脂層が吸湿するようなことがあっても、その量は微量であり、前記電極端子の金属との良好な熱接着性を維持しつつ、内部の電池の構成材料に対する水分の影響も少なくすることができる。
以下に本発明の電池ケース用シートの製造に用いる材料、およびその加工方法などの実施の形態について説明する。
本発明の電池ケース用シートは、前述したように中間層に水蒸気その他のガスバリヤー性に優れた金属箔層を用い、そのいずれか一方の面、または両方の面に隣接するように厚さ10〜100μmのポリオレフィン系樹脂層を積層し、その両側に各種の強度および耐性に優れた第1、または第2の基材フィルム層を積層し、更に、最内層に熱接着性樹脂層を積層して構成したものである。
上記の構成において、水蒸気その他ガスバリヤー性を付与する中間層の金属箔層にはアルミニウム箔、銅箔などを好適に使用することができる。中でもアルミニウム箔は比較的安価であり、貼り合わせなどの加工性にも優れていることから特に好ましく使用できる。
このような金属箔層の厚さは5〜25μmが適当である。厚さが5μm未満の場合は、ピンホールが多くなりバリヤー性が低下するため好ましくない。また、25μmを超える厚さは、既に充分なバリヤー性を有するため必要性がなく、むしろ塑性変形を生じ易く、経済性の面で不利となるため好ましくない。
例えば、金属箔層に厚さ9μmのアルミニウム箔を用いた場合、水蒸気透過度0.01g/(m2 ・24hrs)、(40℃、90%RH)以下の性能が充分に得られ、更にこれをレベルアップすることも容易である。
金属箔層に隣接して積層するポリオレフィン系樹脂層は、先にも説明したように、電池ケースの開口部などシートの端縁部のヒートシールにより、この樹脂をシートの端面に押し出して、そこに露出する中間層の金属箔層を覆い隠すために設けるものであり、そのためには、厚さは10〜100μmであることが好ましい。
厚さが10μm未満の場合は、ヒートシールにより開口部などシートの端面に押し出して金属箔層を覆い隠すことが難しくなるため好ましくない。また、100μmを超える厚さは、過剰であり、熱伝導のためにヒートシール時間を長くする必要を生じ、生産性を低下させると同時に経済性の面でも不利となるため好ましくない。
上記ポリオレフィン系樹脂層は、適度の厚さを有すると同時に、熱流動性がよく、また、熱接着性のよいことも必要であり、使用する樹脂としては、ポリエチレン、またはその共重合体、或いは、それらにオレフィン系エラストマーをブレンドした樹脂などが挙げられる。例えば、ポリエチレンを用いる場合は、密度が0.910〜0.940g/cm3 で、MFI(メルトフローインデックス)が4.0〜14.0g/10min.の範囲のものが好ましい。
そして、特に熱流動性や、金属との熱接着性を重視する場合は、酸変性ポリオレフィン系樹脂、または、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
上記酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のほか、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンもしくはその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などのポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸、或いは、その無水物で、グラフト重合変性した樹脂などを使用することができる。
上記においてカルボン酸基を有するものは、Na+ 、Zn2+などの金属イオンで架橋してアイオノマーも好適に使用できる。
前記酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸成分含有量は、0.01〜10重量%の範囲が好ましい。酸成分含有量が0.01重量%未満の場合は、金属に対する熱接着性向上効果が不足し、酸成分含有量が10重量%を超える場合は、製膜性が劣るため好ましくない。
次に、前記第1および第3の基材フィルム層としては、例えばPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを使用することができるが、各種の強度や耐性、および、その耐久性などを含めた各種性能と共に、加工性、経済性を加味した場合は、PETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムが特に適している。
ここでPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムの特性を比較すると、特別大きな差ではないが、PETフィルムは吸湿性が低く、剛性、引っ張り強度、耐擦傷性、耐熱性などに優れ、ONフィルムは吸湿性はやや高いが、柔軟性、引張り強度、突き刺し強度、折り曲げ強度、耐寒性などに優れている。また、OPPフィルムは特に吸湿性が低く防湿性に優れるほか、引張り強度、耐薬品性などに優れている。
このような基材フィルムの厚さは、5〜100μmが好ましく、12〜30μmが更に好ましい。
最内層の熱接着性樹脂層は、積層シートを袋状に加工して電池ケースを作製する際、積層シートにヒートシール性を付与するものであり、基本的には自己同士の熱接着性を有し、内部に収納される電解液で膨潤したり、浸食されることがなく安定で、且つ、吸湿性が低く、電解液など電池の構成材料に水分の影響を与えないものが好ましい。
この点では、以下のようなポリオレフィン系樹脂、即ち、ポリエチレン、ポリプロピレンのほか、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンもしくはその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などを使用することができ、これらは単独で用いてもよく、また、二種以上をブレンドして使用してもよい。
只、先にも説明したように、電池の構成材料をケース内に密封する際、ヒートシール部にタブ59、60が介在することがあり、このような場合には、更にタブ59、60に対する熱接着性が必要となる。
以上のような要求を略満足させ得る熱接着性樹脂としては、先に金属箔層に隣接して積層されるポリオレフィン系樹脂の中で説明した酸変性ポリオレフィン系樹脂があり、これらを使用することができる。
だ、酸変性ポリオレフィン系樹脂は、その酸変性により、金属に対する熱接着性を向上させることができるが、それと同時に水分に対する親和性が生じ、吸湿性がやや増加する傾向がある。
このため、最内層の熱接着性樹脂層に酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いた場合、例えば多湿の環境下で長期間保存すると、僅かとは言え最内層が吸湿する恐れがあり、この点では、電解液など電池の構成材料に対してはマイナス要因となる。
従って、最内層の熱接着性樹脂層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層で形成するか、或いは、万一吸湿してもその量を少なくできるよう、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成し、最内層となる酸変性ポリオレフィン系樹脂層を薄くすることが好ましい。
この場合のポリオレフィン系樹脂層には、比較的広範囲のものを使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのほか、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンもしくはその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などを使用することができ、これらは単独、または二種以上をブレンドして使用することができる。
このような熱接着性樹脂層の厚さは、総厚で10〜100μmの範囲が適当であり、熱接着性樹脂層をポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成する場合は、酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さは、1〜50μmが好ましく、5〜25μmが更に好ましい。
酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さが1μm未満の場合は、金属に対する熱接着性の向上効果を充分に得られず、また製膜自体も難しくなるため好ましくない。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚さが50μmを超える場合は、吸湿した時の水分量の抑制効果が少なくなるため好ましくない。
本発明の電池ケース用シートは、以上のような各層、即ち、第1、第3の基材フィルム層、金属箔層、金属箔層に隣接して積層されるポリオレフィン系樹脂層、そして、熱接着性樹脂層を、公知の押し出しラミネーション法、ドライラミネーション法、単層または多層共押し出しコート法などを適宜利用して積層することにより製造することができる。
積層方法および積層の順序は、必ずしも限定されず、積層シートの性能、生産性、ロス率などを考慮して自由に選定することができる。
(1)の構成、即ち、第1の基材フィルム層/ポリオレフィン系樹脂層/金属箔層/第3の基材フィルム層/熱接着性樹脂層(最内層)の場合は、例えば、押し出しラミネーション法により、第1の基材フィルム層と金属箔層との間に所定の厚さでポリオレフィン系樹脂を溶融押し出しし、圧着して積層し、次いで、その金属箔層面にドライラミネーション法で第3の基材フィルム層を積層し、更に、その第3の基材フィルム面に、単層または多層共押し出しコート法により、熱接着性樹脂層を押し出しコートして積層し、電池ケース用シートを製造することができる。
また、最内層の熱接着性樹脂層をポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成する場合は、多層インフレーション成形法などで予め両者の積層フィルムを所定の厚さで作製しておいて、そのポリオレフィン系樹脂層面を前記積層シートの第3の基材フィルム層面にドライラミネーション法で貼り合わせて積層することもできる。この点は、以下の(2)、(3)の構成においても同様である。
尚、上記押し出しラミネート、および、押し出しコートの際、それぞれの積層面に、必要に応じてアンカーコート(プイラマーコートの一種)を施し、接着強度を向上させることができる。
そして、(2)の構成、即ち、第1の基材フィルム層/金属箔層/ポリオレフィン系樹脂層/第3の基材フィルム層/熱接着性樹脂層(最内層)の場合は、例えば、ドライラミネーション法により、第1の基材フィルム層と金属箔層とを貼り合わせ、次いで、その金属箔層面と第3の基材フィルム層面とを、押し出しラミネーション法により、両者の間にポリオレフィン系樹脂を溶融押し出しして圧着、積層し、更に、その第3の基材フィルム層面に、前記(1)の構成の場合と同じ方法で、熱接着性樹脂層を積層して電池ケース用シートを製造することができる。
また、(3)の構成、即ち、第1の基材フィルム層/ポリオレフィン系樹脂層/金属箔層/ポリオレフィン系樹脂層/第3の基材フィルム層/熱接着性樹脂層(最内層)の場合も、前記(1)、(2)と類似した構成であり、同様に押し出しラミネーション法、またはドライラミネーション法、単層または多層共押し出しコート法を適宜利用して積層し、電池ケース用シートを製造することができる。
尚、前記(1)、(2)、(3)の構成において、金属箔層に隣接して積層されるポリオレフィン系樹脂層を予めインフレーション成形法などで所定の厚さに製膜してもよく、その場合は、それぞれの間をドライラミネーション法で貼り合わせることにより積層することができる。
以下、実施例の図面に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
但し、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。また、図面に付した符号は、異なる図面においても同じ名称の部分には同じ符号を用いた。
図21乃至図23は、それぞれ本発明の電池ケース用シートの一実施例の構成を示す模式断面図である。
図21に示した電池ケース用シート10は、(1)の構成に相当し、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、ポリオレフィン系樹脂層6a、金属箔層2、第3の基材フィルム層1c、そして、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
図22に示した電池ケース用シート10は、(2)の構成に相当し、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、金属箔層2、ポリオレフィン系樹脂層6b、第3の基材フィルム層1c、そして、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
また、図23に示した電池ケース用シート10は、(3)の構成に相当し、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、ポリオレフィン系樹脂層6a、金属箔層2、ポリオレフィン系樹脂層6b、第3の基材フィルム層1c、そして、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
以上、図21〜図23に示した構成の電池ケース用シート10において、第1の基材フィルム層1aと第3の基材フィルム層1cには、PETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムのいずれかを用いることが好ましい。
本発明の電池ケース用シートでは、袋状に形成された電池ケースの開口部に金属箔などからなるタブ59、60が介在し、且つ開口部の端縁部を強目の条件でヒートシールすることから、特に、第3の基材フィルム層1cは、ヒートシールの際、タブ59、60で断裂されるようなことがなく、シートの中間層の金属箔層を確実に防御できることが必要であり、そのためには機械的強度と耐熱性に優れることが必要である。この点では上記の中でもPETフィルムが特に好ましい。
そして、第1の基材フィルム層1aと第3の基材フィルム層1cには、同種のフィルムを用いてもよく、また、異種のフィルムを組み合わせて用いてもよい。
金属箔層2には、アルミニウム箔を用いることが好ましく、これに隣接して積層されるポリオレフィン系樹脂層6a、6bの厚さは、10〜100μmの範囲である。
そして、熱接着性樹脂層3は、ポリオレフィン系樹脂単独の層で形成することもできるが、先に説明したようにタブ59、60に裸の金属箔などが用いられる場合は、これとの熱接着性もよくするために、酸変性ポリオレフィン系樹脂で形成することが好ましく、また、酸変性ポリオレフィン系樹脂の水分吸収に対する安全性を高めるためには、ポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成することが更に好ましい。
図21〜図23に示した積層構成の代表的な具体例としては、下記のような構成が挙げられる。
(図21の構成の例)
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ50μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)〔最内層〕
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/シングルサイト触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体(厚さ50μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)〔最内層〕
(3)OPPフィルム(厚さ20μm)/シングルサイト触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体(厚さ40μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)〔最内層〕
(図22の構成の例)
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ50μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)〔最内層〕
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/シングルサイト触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体(厚さ50μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)〔最内層〕
(3)OPPフィルム(厚さ20μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/シングルサイト触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体(厚さ40μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)〔最内層〕
(図23の構成の例)
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ30μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ30μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)〔最内層〕
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/シングルサイト触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体(厚さ30μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/シングルサイト触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体(厚さ30μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)〔最内層〕
(3)OPPフィルム(厚さ20μm)/シングルサイト触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体(厚さ30μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/シングルサイト触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体(厚さ30μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン層(厚さ30μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ10μm)〔最内層〕
このような構成を採ることにより、電池ケース用シート10は、中間層の金属箔層2の両側が第1の基材フィルム層1aと第3の基材フィルム層1cとで保護されるため、両側の第1および第3の基材フィルム層1a、1cにより、引っ張り強度、衝撃強度、突き刺し強度、折り曲げ強度などの優れた機械的強度のほか、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性や、耐熱性、耐寒性などの優れた耐性が付与されると同時に、金属箔層2(例えばアルミニウム箔層)により、水蒸気その他の優れたガスバリヤー性が確実に付与され、更に、最内層の熱接着性樹脂層4を酸変性ポリオレフィン系樹脂単独の層、またはポリオレフィン系樹脂層と酸変性ポリオレフィン系樹脂層との積層体で形成することにより、前者の場合は自己同士の熱接着性と同時に金属に対する熱接着性も付与され、後者の場合は更に吸湿に対する安全性も高められる。
また、金属箔層2と、第1の基材フィルム層1aまたは第3の基材フィルム層1cのいずれか一方の間、または両方の間には、金属箔層2に隣接するようにポリオレフィン系樹脂層6a、6bが10〜100μmの厚さで積層されているので、袋状に加工された電池ケースの開口部をヒートシールする際、開口端を含む領域をやや強目の条件でヒートシールするだけで、このポリオレフィン系樹脂層6a、6bの一部が端面に押し出され、そこに露出する金属箔層2の端面を覆い隠すことができる。従って、電池ケースの内部から、開口部を通して外側に延長されるタブ59、60が折れ曲がった場合でも、金属箔層2と接触することはなく、電池の安全性を向上できる。
以上、図21〜図23に示した構成の電池ケース用シート10において、表面に文字、絵柄などの印刷を施す場合には、最外層の第1の基材フィルム層の内面(積層面)に所謂裏刷り方式で予め印刷しておいて、この面に他の層を積層して、電池ケース用シートを完成させることにより、表面の摩擦などで画像が損なわれることがなく、耐擦傷性に優れた印刷画像を形成することができる。
以上詳しく説明したように、本発明によれば、軽量で薄く、柔軟性があり、各種の機械的強度や耐性のほか、水蒸気その他のガスバリヤー性、熱封緘性などの性能および加工性に優れると共に、内部に収納される電池の構成材料に対して水分の影響を与えることがなく、更に、電池ケースの内部から外側に延長される金属箔などによる電極端子が折れ曲がった場合にも、電池ケース用シートの中間層に積層された金属箔層と接触するようなことがなく、安全性にも優れた電池ケース用シートを生産性よく提供できる効果を奏する。
第7の実施の形態
次に図24乃至図28により本発明の第7の実施の形態について説明する。第7の実施の形態は電池ケース用シートであって、該シートが、少なくとも一種の基材フィルム層と熱接着性樹脂層とが積層された積層シートからなり、且つ、該熱接着性樹脂層がパターン状に積層されていることを特徴とする電池ケース用シートからなる点が異なるのみであり、他は第1の実施の形態と略同一である。
上記電池ケース用シートは、その内面の熱接着性樹脂層同士が接するように重ね合わせ、例えばヒートシールにより一端が開口する袋状の電池ケースとし、内部にポリマー電池50aの構成材料を収納した後、タブ59、60を内部から開口部を通して外側に延長し、更に、開口部をヒートシールにより密封して電池とするものである。
従って、熱接着性樹脂層のパターンは、特に限定するものではないが、少なくとも電池ケース用シートの周囲の端縁部にヒートシール幅に相当する幅で積層されていればよい。このような熱接着性樹脂層は、熱接着性樹脂の塗布液を作製し、これを例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷などの印刷手段で所定のパターンに塗布し、乾燥することにより積層することができる。
電池ケース用シートを以上のように構成することにより、基材フィルム層が各種の強度および耐性を付与し、また、熱接着性樹脂層がパターン状に積層されているので、無駄がなく、必要最小量の熱接着性樹脂で有効に熱封緘性(ヒートシール性)を付与することができる。
また、パターン状の熱接着性樹脂層の形成には、印刷手段などを利用でき、熱接着性樹脂を塗布液として使用できるので、より広い範囲の樹脂の中から適するものを選択して使用することができ、所望のパターンと塗布量で容易に熱接着性樹脂層を形成することができる。
前記積層シートに、更に、ガス、水蒸気に対してバリヤー性を有するバリヤー層が積層されていてもよく、前記バリヤー層は、金属箔、または、金属もしくは無機酸化物の薄膜層、または、ポリ塩化ビニリデンもしくはポリアクリロニトリルもしくはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の樹脂層のいずれかとなっている。
このような構成を採ることにより、積層シートに、更に水蒸気その他のガスバリヤー性を付与することができる。
このようなバリヤー層を積層シートに積層する場合、基材フィルム層の間にバリヤー層が挟み込まれるように積層することが好ましく、それにより、バリヤー層が保護され、損傷を受けることがないため、バリヤー層の性能を一層確実に発揮させることができる。
また、前記バリヤー層の中でも、金属箔は、最もバリヤー性に優れており、金属箔が基材フィルム層の間に挟み込まれるように積層することにより、一層優れたバリヤー性の電池ケース用シートを確実に提供することができる。
一方、バリヤー層として、無機酸化物の薄膜層、または、ポリ塩化ビニリデンもしくはポリアクリロニトリルもしくはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の樹脂層を中間層などに用いた場合は、これらが非導電性材料であるため、積層シート全体が非導電性材料であり、仮に電極端子に裸の金属箔などを用いても、積層シートでショートするようなことがなく、バリヤー性と共に、安全性にも優れた電池ケース用シートを提供することができる。
基材フィルム層は、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルムのいずれかとなっている。
以下、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムはPETフィルム、2軸延伸ナイロンフィルムはONフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルムはOPPフィルムと略記する。
このような構成を採ることにより、上記フィルムは、各種の強度および耐性、その他印刷、ラミネート等の加工適性など総合的に優れた性能を有し、しかも比較的安価であるため、性能と共に経済性にも優れた電池ケース用シートを容易に提供することができる。
以下に本発明の電池ケース用シートの製造に用いる材料、およびその加工方法など実施の形態について説明する。
本発明の電池ケース用シートは、前述したように、内部に電池の構成材料を収納し、電池を形成するために用いる電池ケース用シートであって、該シートを、少なくとも一種の基材フィルム層と熱接着性樹脂層とを積層した積層シートで形成し、且つ、該熱接着性樹脂層をパターン状に積層して構成したものであり、更に、必要に応じて、ガス、水蒸気に対してバリヤー性を有するバリヤー層を基材フィルム層の間などに積層して構成したものである。
上記の構成において、基材フィルム層としては、例えばPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを使用することができるが、各種の強度および耐性と共に、印刷、ラミネートなどの加工適性、経済性などを加味した場合は、PETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムが特に適している。
特に、PETフィルムは、吸湿性が低く、剛性、引っ張り強度、折り曲げ強度、衝撃強度、耐擦傷性、耐熱性、耐水性などに優れ、総合的にバランスの採れた性能を有し、欠点の少ないフィルムである。
ONフィルムは、吸湿性はやや高いが、柔軟性に富み、突き刺し強度、衝撃強度、折り曲げ強度、耐寒性などに優れている。
OPPフィルムは、防湿性、耐水性、耐薬品性のほか、引張り強度、折り曲げ強度などに優れ、また、特に安価であることも大きな利点である。
このような基材フィルムの厚さは、5〜100μmが好ましく、12〜30μmが更に好ましい。
また、基材フィルム層としては、上記フィルムを単独で用いてもよいが、同種または異種のフィルムを貼り合わせた積層フィルムを用いることもできる。
次に、ガス、水蒸気に対してバリヤー性を有するバリヤー層としては、前述したように、金属箔、または、金属もしくは無機酸化物の薄膜層、または、ポリ塩化ビニリデンもしくはポリアクリロニトリルもしくはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の樹脂層などを用いることができる。
金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔などが適しており、特にアルミニウム箔は、軽量で価格も比較的安く、貼り合わせなどの加工適性にも優れていることから最も好ましく使用できる。
このような金属箔の厚さは5〜25μmが適当である。
尚、バリヤー層に、例えば、厚さ9μmのアルミニウム箔を用いた場合、その水蒸気透過度として、0.01g/(m2 ・24hrs)、(40℃、90%RH)以下の性能が容易に得られ、更に、これをレベルアップすることも容易である。
バリヤー層に、金属もしくは無機酸化物の薄膜層を用いる場合、金属では、アルミニウム、スズ、ニッケルなどを用いることができ、中でもアルミニウムが好適である。また、無機酸化物では、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウムなどを用いることができ、このうち酸化珪素、酸化アルミニウムが特に適している。
これらの薄膜層は、真空蒸着法、スパッタリング法などで形成することができ、プラスチックの基材フィルム上に、これらを厚さ100〜2000Åの範囲で真空蒸着またはスパッタすることにより、バリヤー性を有する薄膜層を積層することができる。
尚、これらの薄膜層を設ける面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、或いは、ウレタン系樹脂などによるプライマーコートなど、公知の前処理を施すことにより、薄膜層の接着性を向上させることができる。
バリヤー層に、ポリ塩化ビニリデンもしくはポリアクリロニトリルもしくはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の樹脂層を用いる場合は、これらのフィルムをドライラミネーション法または押し出しラミネーション法で、例えば基材フィルムの間に貼り合わせてもよく、特に、ポリ塩化ビニリデンの場合は、その塗布液を基材フィルムにコーティングして積層することもでき、また、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の場合は、基材フィルム面に押し出しコートして積層することもできる。
これらのバリヤー性樹脂層の厚さは、2〜25μmの範囲が適当である。
次に、最内層に積層する熱接着性樹脂層(シーラント層)は、パターン状に積層するため、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シクルスクリーン印刷などの印刷手段を用いて積層することができる。
従って、熱接着性樹脂は、使用する加工手段に応じて、これに適した溶液、エマルジョン、ディスパージョンなどの塗布液状にしたものを用いる。
熱接着性樹脂自体は、自己同士の熱接着性、および電極端子の表面との熱接着性を有することが必要であり、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合体系樹脂、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体系樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、ウレタン・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また、二種以上をブレンドして用いてもよい。
これらの中から、積層面の材質や電極端子表面の材質などに応じて、適するものを適宜選択して使用することができる。
このような熱接着性樹脂の塗布量は、4〜10g/m2 (固形分)程度が適当である。
尚、熱接着性樹脂層を積層する場合も、基材フィルムとの接着性が不足する場合は、その積層面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理や、プライマーコートなどの公知の前処理を施すことができる。
以下、図面に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
但し、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。また、図面に付した符号は、異なる図面においても同じ名称の部分には同じ符号を用いた。
図24、図25は、それぞれ本発明の電池ケース用シートの一実施例の構成を示す模式断面図である。
図26は、本発明の電池ケース用シートの最内層に積層される熱接着性樹脂層のパターンの一例を示す平面図であり、電池ケース用シートの内面側を上にした時の平面図である。
図27は、本発明の電池ケース用シート(図26に示した電池ケース用シート)を用いて作製される電池ケースの一実施例の構成を示す斜視図である。
図28は、図27に示した電池ケースを用いて作製した電池の一実施例の構成を示す正面図である。
図24に示した電池ケース用シート10は、基材フィルム層(第1の基材フィルム層)1aの一方の面(内面側)に熱接着性樹脂層3がパターン状に積層された構成である。
この場合、基材フィルム層1aは、単独のフィルムで構成してもよく、また、複数のフィルムを公知のドライラミネーション法、または押し出しラミネーション法などで貼り合わせた積層フィルムで構成してもよい。
上記積層構成の代表的な具体例として、下記のような構成が挙げられる。但し、積層に用いる前処理や接着層は省略して記載する。
(1)PETフィルム(厚さ25μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(2)OPPフィルム(厚さ30μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(3)ONフィルム(厚さ25μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(4)PETフィルム(厚さ12μm)/OPPフィルム(厚さ20μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ6μm)〔シーラント層〕
(5)PETフィルム(厚さ12μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ6μm)〔シーラント層〕
図25に示した電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、バリヤー層12、第3の基材フィルム層1cが積層され、更にその内面側の第3の基材フィルム層1c面に、熱接着性樹脂層3がパターン状に積層された構成である。
この場合も、基材フィルム層1a、1cは、それぞれ単独のフィルムで構成してもよく、また、複数のフィルムをドライラミネーション法、または押し出しラミネーション法などで貼り合わせた積層フィルムで構成してもよい。
上記積層構成の代表的な具体例として、下記のような構成が挙げられる。この場合も、積層に用いる前処理や接着層は省略して記載する。
(1)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(3)OPPフィルム(厚さ20μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(4)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/OPPフィルム(厚さ20μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(5)PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(6)PETフィルム(厚さ12μm)/酸化珪素の薄膜層(厚さ600Å)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm) 〔シーラント層〕
(7)ONフィルム(厚さ15μm)/酸化珪素の薄膜層(厚さ600Å)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm) 〔シーラント層〕
(8)OPPフィルム(厚さ20μm)/酸化珪素の薄膜層(厚さ600Å)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm) 〔シーラント層〕
(9)PETフィルム(厚さ12μm)/酸化珪素の薄膜層(厚さ600Å)/OPPフィルム(厚さ20μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm) 〔シーラント層〕
(10)PETフィルム(厚さ12μm)/酸化珪素の薄膜層(厚さ600Å)/ONフィルム(厚さ15μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(11)PETフィルム(厚さ12μm)/ポリ塩化ビニリデンの塗膜層(厚さ3μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(12)ONフィルム(厚さ15μm)/ポリ塩化ビニリデンの塗膜層(厚さ3μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(13)OPPフィルム(厚さ20μm)/ポリ塩化ビニリデンの塗膜層(厚さ3μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(14)PETフィルム(厚さ12μm)/ポリ塩化ビニリデンの塗膜層(厚さ3μm)/OPPフィルム(厚さ20μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(15)PETフィルム(厚さ12μm)/ポリ塩化ビニリデンの塗膜層(厚さ3μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(16)PETフィルム(厚さ12μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(17)ONフィルム(厚さ15μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(18)PETフィルム(厚さ12μm)/OPPフィルム(厚さ20μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(19)PETフィルム(厚さ12μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層(厚さ20μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(20)ONフィルム(厚さ15μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層(厚さ20μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕
(21)PETフィルム(厚さ12μm)/OPPフィルム(厚さ20μm)/ポリアクリロニトリルフィルム(厚さ20μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/パターン状熱接着性樹脂層(厚さ5μm)〔シーラント層〕などである。
図26は、本発明の電池ケース用シートの最内面に積層される熱接着性樹脂層のパターンの一例を示す平面図であり、電池ケース用シートの内面側を上にした時の平面図である。
図26において、電池ケース用シート10は、第1の基材フィルム層1aの周囲の端縁部に、熱接着性樹脂層3がパターン状に積層された構成である。
このような電池ケース用シート10は、例えば、その中心部に示した折り畳み線16で、熱接着性樹脂層3同士が接するように半折し、両側の熱接着性樹脂層3同士をヒートシールすることにより、図27に示すような一端が開口する袋状の電池ケース51を作製することができる。
尚、このような電池ケース用シート10を同じ寸法のものを2枚用意し、その熱接着性樹脂層3同士が接するように重ね合わせて、三方の端縁部をヒートシールする方法でも、一端が開口する袋状の電池ケース51を作製することができる。
図27に示した電池ケース51は、底部が電池ケース用シートを折り返して形成され、その両側がヒートシール部17でヒートシールされ、上部が開口部18で開口する袋状に形成された構成である。
このような電池ケース51は、前述したように、例えば前記図26に示したような電池ケース用シート10を、その中心部の折り畳み線16で、熱接着性樹脂層3同士が接するように折り返し、両側の熱接着性樹脂層3同士をヒートシール部17でヒートシールすることにより形成することができる。この場合、電池ケース51の開口部18の上部端縁部の内面には、熱接着性樹脂層3がパターン状に所定の幅で積層されているので、内部に電池50aの構成材料を収納し、内部から開口部18を通して外側にタブ59、60を延長した後、この部分で開口部18をタブ59、60と共にヒートシールして封止することができる。
図28に示したポリマー電池50は、前記図27に示した電池ケース51の内部に電池50aの構成材料を収納し、内部から上部の開口部18を通して外側にタブ59、60を延長し、開口部18を上部のヒートシール部17でタブ59、60と共にヒートシールして封止した構成である。
以上詳しく説明したように、本発明によれば、プラスチックを主とする積層シートで形成され、薄くて軽く、柔軟性があり、且つ、各種の強度や耐性のほか、水蒸気その他のガスバリヤー性などの性能に優れると共に、積層シートの内面側に熱接着性樹脂層をパターン状に積層しているので、必要部分のみに熱接着性樹脂層を積層することができ、無駄がなく効果的に、袋状の電池ケースを形成でき、更に、その電池ケースの内部に電池の構成材料を収納し、内部から開口部を通して外側に電極端子を延長した後、その電極端子が介在する開口部を良好にヒートシールして密封し電池を作製することのできる電池ケース用シートを生産性よく提供できる効果を奏する。
第8の実施の形態
次に図29乃至図33により本発明の第8の実施の形態について説明する。第8の実施の形態は電池ケースであって、該ケースの少なくとも一部に、アルミニウム箔層を中間層として両面に合成樹脂層が積層された積層フィルムが用いられ、且つ、該積層フィルムの少なくとも一方の面に、レーザー光照射によるハーフカット部が設けられている点が異なるのみであり、他は第1の実施の形態と略同一である。
尚、本発明において、ハーフカット部(防爆構造)は、積層フィルムの厚さ方向の全層のうち、中間層のアルミニウム箔層を境にして、レーザー光照射により、その照射側の合成樹脂層の全層または一部の層が線状に溶融、ミスト化されて除去された部分を指すものである。
また、防爆構造は、積層フィルムに前記ハーフカット部を所定の形状で設けることにより、その部分の破裂強度を弱くし、一定の範囲の圧力で積層フィルムが破断されるようにした部分を指すものである。
このような構成を採ることにより、電池ケースに用いる積層フィルムは、中間層にアルミニウム箔層を有し、水蒸気その他のガスバリヤー性に優れると共に、その少なくとも一方の面に、レーザー光照射によるハーフカット部を設けて破裂強度を低く調節した防爆構造を備えているので、アルミニウム箔層がその加工時に傷つけられることもなく、優れたバリヤー性が維持され、且つ、異常時に電池の内圧が上昇しても、一定の内圧で防爆構造が破断して内圧が開放されるため、爆発するようなことがなく、安全性にも優れた電池ケースを提供することができる。
また前記ハーフカット部による防爆構造の破裂強度が、5〜10kg/cm2 となっている。
このような構成を採ることにより、電池ケースの破裂強度が適度に調節されているので、異常時に電池の内圧が上昇しても防爆構造が機能して爆発するようなことがなく、一層確実な安全性が得られる。
前記破裂強度が、5kg/cm2 未満の場合は、積層フィルムの破断強度なども低下するため、電池の取り扱い中などに積層フィルムが損傷される恐れがあり好ましくない。また、破裂強度が、10kg/cm2 を超える場合は、破裂時の危険性が増し、防爆構造としての効果が低くなるため好ましくない。
さらに前記ハーフカット部が、互いに交差、または交わる線の組み合わせで形成されている。
このような構成を採ることにより、ハーフカット部による防爆構造の破裂強度の調節の際、低圧側での調節が容易になり、そのバラツキも小さくでき、安定した防爆構造を形成することができる。
また、前記ハーフカット部は、前記積層フィルムの両面に、同位置に重なるように設けられている。
このような構成を採ることにより、ハーフカット部による防爆構造の破裂強度を、更に低い値で、且つ、そのバラツキを小さくできるので、一層安全な防爆構造を確実に形成することができる。
そして、前記電池ケースは、前記積層フィルムを袋状に熱接着してなる袋体からなり、且つ、前記ハーフカット部が、該袋体の周縁部近傍に設けられている。
このような構成を採ることにより、電池ケースを積層フィルムのみで形成できるので、一層薄く、軽量にできると同時に、価格も安価にでき、且つ、ハーフカット部を袋体の周縁部近傍に設けることにより、内圧が生じた際、その応力が掛かりやすく、防爆構造の機能を一層確実に得ることができる。
以下に、本発明の防爆構造を備えた電池ケースの材料、加工方法など、その実施の形態について説明する。
本発明の防爆構造を備えた電池ケースは、前述したように、内部に電池の構成材料を収納し、電池を形成するために用いられる電池ケースであって、該ケースの少なくとも一部に、アルミニウム箔層を中間層として両面に合成樹脂層が積層された積層フィルムが用いられ、且つ、該積層フィルムの少なくとも一方の面に、レーザー光照射によるハーフカット部が設けられてなる防爆構造を備えたことを特徴とするものである。
このような電池ケースは、上記防爆構造を設けた積層フィルムを袋状に製袋して、積層フィルムのみで形成することが好ましいが、例えば、プラスチック成形体などによる枠体に、壁面材などの形で前記防爆構造を設けた積層フィルムを一部に用いて電池ケースとすることもできる。
上記積層フィルムは、バリヤー層、レーザー光遮断層としてのアルミニウム箔層を中間層として、その両面、即ち、電池ケースの外側になる面と、内側になる面に合成樹脂層を積層して構成する。
そして、外側の合成樹脂層は、各種の強度と耐性を有すると共に、レーザー光照射によりハーフカット部を設けるため、レーザー光を吸収して発熱し、溶融、ミスト化できることが必要であり、また、印刷やラミネートなどの加工適性を有することが好ましく、例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ナイロンフィルムのほか、2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルムなどを使用することができる。
これらは単独のフィルムを用いてもよく、他のフィルムと積層した積層フィルムを用いてもよい。
以下、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムはPETフィルム、2軸延伸ナイロンフィルムはONフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルムはOPPフィルムと略記する。
上記プラスチックフィルムのうち、特にPETフィルムは、吸湿性が低く、剛性、引張り強度、折り曲げ強度、衝撃強度、耐擦傷性、耐熱性、耐水性などに優れ、総合的にバランスの採れた性能を有し、且つ、価格も比較的安価で経済性にも優れていることから好適に使用することができる。
ONフィルムは、吸湿性はPETフィルムよりやや高いが、柔軟性に富み、突き刺し強度、衝撃強度、折り曲げ強度、耐寒性などに優れており、このような性能が重視される場合には、好適に使用することができる。
OPPフィルムは、防湿性、耐水性、耐薬品性のほか、引張り強度、折り曲げ強度などに優れ、また、特に安価であることも大きな利点である。
このようなプラスチックフィルムを公知のドライラミネーション法などで中間層のアルミニウム箔に積層することにより、前記外側の合成樹脂層を積層することができる。
このようなプラスチックフィルム、即ち、外側の合成樹脂層の厚さは8〜80μmが好ましく、12〜30μmが更に好ましい。
次に、積層フィルムの内側の合成樹脂層は、積層フィルムの強度を補強し、また、中間層のアルミニウム箔層を保護すると同時に、レーザー光照射によりハーフカット部が設けられるため、その加工適性を有し、更に、袋状に製袋し、且つ電極端子が介在する開口端縁部も良好に熱封緘するためには、自己同士の熱接着性と共に、電極端子の表面に対する熱接着性も有することが必要である。
只、このような性能を単独の樹脂層(フィルムなど)で兼ね備えることは難しいため、少なくとも2層で構成することが好ましい。
例えば、前記外側の合成樹脂層に用いたものと同様なプラスチックフィルム層と、熱接着性樹脂層(シーラント層)との2層で構成し、プラスチックフィルム層を中間層のアルミニウム箔層側に積層し、熱接着性樹脂層が最内層となるように積層して構成することができる。
そして、熱接着性樹脂層には、ポリエチレンのほか、その共重合体であるエチレン−α−オレフィン共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合体系樹脂、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体系樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体系樹脂、その他、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アイオノマーなどを使用することができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上をブレンドして用いてもよい。
これらの中から、電極端子の表面の材質(表面被覆の有無)を考慮して、適するものを適宜選択して使用することができる。
前記内側の合成樹脂層に用いるプラスチックフィルム層の厚さは、それほど厚くする必要はなく、8〜30μm程度が適当である。
そして、最内層の熱接着性樹脂層の厚さは15〜100μmが好ましく、30〜80μmが更に好ましい。
また、中間層のアルミニウム箔層の厚さは、5〜25μmが好ましく、7〜15μmが更に好ましい。
アルミニウム箔層の厚さが、5μm未満の場合は、ピンホールが多くなり、水蒸気その他のガスバリヤー性が低下するため好ましくなく、また、25μmを超える厚さは、既に充分なガスバリヤー性があり、その必要性がなく、むしろハーフカット部の破裂強度が大きくなるため好ましくない。
尚、中間層に、例えば、厚さ9μmのアルミニウム箔を用いた場合、その水蒸気透過度として、0.01g/(m2 ・24hrs)、(40℃、90%RH)以下の性能が容易に得られ、これを更にレベルアップすることも容易である。
本発明では、以上のような材料で構成される積層フィルムの一部に、レーザー光を照射して、アルミニウム箔層の両面に積層された合成樹脂層の全部または一部を、所定の線状のパターンに溶融、ミスト化させて取り除き、ハーフカット部を形成することにより、この部分の破裂強度を5〜10kg/cm2 迄低下させて防爆構造とする。
このようなハーフカット部を設けるためには、公知のレーザー光照射手段を用いることができ、特に炭酸ガスレーザーが適している。
炭酸ガスレーザー光の波長は10.6μmであり、前記積層フィルムの合成樹脂層に挙げたPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムなどは、これを吸収し、発熱するため、ハーフカット部を容易に形成することができる。
只、熱接着性樹脂として汎用される低密度ポリエチレンは、この波長のレーザー光を殆ど吸収せず透過してしまうため、発熱することがなくレーザー光による加工適性がない。しかし、前記PETフィルムや、ONフィルム、OPPフィルムなどと積層して用いた場合は、これらが発熱するため、その熱により溶融し、同様にハーフカット部を形成することができる。
従って、本発明における積層フィルムの内面側の合成樹脂層のように、PETフィルムや、ONフィルム、OPPフィルムなどと熱接着性樹脂層との2層構成で、熱接着性樹脂層に仮に低密度ポリエチレンを用いたような場合、両者の相対的な厚さ構成と、レーザー光の照射条件の調整により、例えば、内面側の合成樹脂層の全層を線状のパターンで除去したハーフカット部を形成することもでき、また、レーザー光を吸収するPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムなどの層のみが線状のパターンで除去され、低密度ポリエチレン層は、一旦溶融して線状のパターンで開裂した後、再融着してつながり、線状のパターンで空洞状となったハーフカット部を形成することもできる。
以下、図面を参照して本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。
図29は、本発明の防爆構造を備えた電池ケースに用いる積層フィルムの構成を説明する模式断面図である。
図30は、本発明において、積層フィルムにレーザー光照射により設けるハーフカット部のパターンの代表的な例を示す図であり、その(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ一例を示す図である。
図31の(a)、(b)は、それぞれ積層フィルムに設けられた一実施例のハーフカット部の断面形状を示す模式図である。
図32は、本発明の防爆構造を備えた電池ケースを三方シール形式の袋状に作製する際の電池ケースの展開図である。
図33は、図32の展開図に示した電池ケースを用いて作製した電池の構成を示す正面図である。
図29に示した積層フィルムシート10は、中間層にアルミニウム箔層(金属箔層)2を用い、その外側の面(図において上側の面)に外側の合成樹脂層(第1の基材フィルム層)1aを積層し、内側の面(図において下側の面)に内側の合成樹脂層(第3の基材フィルム層)1cを積層した構成である。
そして、外側の合成樹脂層1aは、具体的にはPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムなどで構成され、また、内側の合成樹脂層1cは、中間層のアルミニウム箔層2面に積層されるPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムなどからなり、その上に最内層の熱接着性樹脂層3が積層されている。
上記積層フィルムの構成において、外側の合成樹脂層1aのPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムおよび内側の合成樹脂層1cのPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムは、これらの単独のフィルムを用いてもよく、これらのフィルムに他のフィルムを積層した積層フィルムを用いてもよい。
また、内側の熱接着性樹脂層3についても、単独の熱接着性樹脂層で形成してもよいが、複数の熱接着性樹脂層で形成することもできる。
尚、中間層のアルミニウム箔層2にPETフィルム、ONフィルム、OPPフィルムからなる第1および第3の基材フィルム層1a、1cを積層する方法は、接着剤を使用する公知のドライラミネーション法を用いることが好ましいが、熱接着性樹脂を介在させる押し出しラミネーション法を用いることもできる。
更に、最内層の熱接着性樹脂層3を積層する方法についても、押し出しコート法を採ることが簡便であるが、予めフィルム状に製膜した熱接着性樹脂フィルムを前記ドライラミネーション法、または押し出しラミネーション法で積層することもできる。
上記積層フィルムの構成の代表的な具体例として、下記のような構成が挙げられる。尚、積層に使用する前処理や接着層などは省略して記載した。
(1)PETフィルム(厚さ16μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/熱接着性樹脂層(厚さ40μm)〔シーラント層〕
(2)ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/熱接着性樹脂層(厚さ40μm)〔シーラント層〕
(3)OPPフィルム(厚さ20μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/熱接着性樹脂層(厚さ40μm)〔シーラント層〕
(4)PETフィルム(厚さ16μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/OPPフィルム(厚さ20μm)/熱接着性樹脂層(厚さ40μm)〔シーラント層〕
(5)PETフィルム(厚さ16μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/熱接着性樹脂層(厚さ40μm)〔シーラント層〕
(6)ONフィルム(厚さ15μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/熱接着性樹脂層(厚さ40μm)〔シーラント層〕
(7)PETフィルム(厚さ12μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/熱接着性樹脂層(厚さ40μm)〔シーラント層〕
(8)PETフィルム(厚さ12μm)/OPPフィルム(厚さ20μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/熱接着性樹脂層(厚さ40μm)〔シーラント層〕
本発明では、以上のような積層フィルムにレーザー光を照射してパターン状のハーフカット部を設け、その破裂強度を5〜10kg/cm2 に調整することにより、これを防爆構造とするものである。
このような目的で形成されるハーフカット部のパターンは、特に限定されるものではなく、積層フィルムの合成樹脂層の材質、厚さにより、任意のパターンで形成することができる。
このようなハーフカット部20に効果的に使用できるパターンとして、例えば、図30(a)−(d)に示したようなパターンが挙げられる。
即ち、図30(a)−(d)に示したハーフカット部20のパターンは、いずれも中心点から外側に向かって放射状に伸びる直線で形成されたものであり、(a)は中心点から3本の直線が、その中心角が120°をなすように放射状に形成されたパターンで、(b)は中心点から4本の直線が、その中心角が90°をなすように放射状に形成されたパターン、また、(c)は中心点から6本の直線が、その中心角が60°をなすように放射状に形成されたパターン、そして、(d)は中心点から8本の直線が、その中心角が45°をなすように放射状に形成されたパターンである。
上記のパターンでは、その直線の数の増加に伴って、その破裂強度の低減効果が大きくなるので、これらの中から積層フィルムシートの構成により、適宜選択して使用することができる。また、これらのパターンの大きさは、特に限定はされないが、直線の長さが10〜15mm程度、即ち、パターンの差し渡し長さが20〜30mm程度が適当である。
このようなパターン状のハーフカット部20は、積層フィルムの片側、例えば、外側の合成樹脂層のみに設けてもよいが、両側の合成樹脂層に、同位置に重なるように設けることにより、一層その破裂強度の低減効果を大きくすることができる。
図31は、積層フィルムシート10として、外側から順にPETフィルム層1a/アルミニウム箔層2/PETフィルム層1c/ポリオレフィン系樹脂層(シーラント層)3が積層された積層フィルムを用い、これにレーザー光を前記のようなパターン状に、両側の合成樹脂層の同位置に重なるように照射してハーフカット部20を設けた場合の、その直線部分の断面形状を示す模式図である。
そして、特に内側の合成樹脂層1cでは、最内層のポリオレフィン系樹脂層3が低密度ポリエチレンのようにレーザー光を吸収しない樹脂層の場合、その厚さと、レーザー光の照射条件の調節により、図31(a)、(b)に示すように二通りの形状に設けることができる。
即ち、通常は図31(a)に示すように、中間層のアルミニウム箔層2を残し、両側の合成樹脂層1a、1cおよびシーラント層3が線状に取り除かれた形状のハーフカット部20が形成されるが、ポリオレフィン系樹脂層の厚さを、例えば40μm以上のように厚くし、且つ、レーザー光の照射エネルギーを一定の条件に調節することにより、図31(b)に示すように、内側の合成樹脂層1cのPETフィルム層が発熱し、全体が線状に溶融、ミスト化して開裂した後、シーラント層3のポリオレフィン系樹脂層が再溶着し、結果として、(b)に示すように内側の合成樹脂層1cのPETフィルム層がトンネル状に取り除かれた形状のハーフカット部20を設けることができる。
図32は、本発明の防爆構造を備えた電池ケース51を三方シール形式の袋状に作製する際の電池ケースの展開図である。
この展開図に示した電池ケースは、前記図29に示した積層構成の積層フィルムシート10で形成され、図に示すように長方形に所定の寸法でカットされると共に、その長辺方向の中央部の折り畳み線16の近傍に、中心点から外側に向かって4本の直線が、その中心角が90°をなすように放射状に形成されたパターンのハーフカット部20が積層フィルムの両面に同位置に重なるように設けられ、また、上記長方形の積層フィルム10の周囲の端縁部には、袋状にヒートシールする際のヒートシールスペースとして、左右両側に胴部ヒートシール部17a、17b、17c、17dが設けられ、上下両側に開口部ヒートシール部18a、18bが設けられた構成である。
従って、このような積層フィルム10を、その折り畳み線16で、その熱接着性樹脂層同士が対向するように半折し、左右両側の端縁部を胴部ヒートシール部17a、17b、17c、17dでヒートシールすることにより、折り畳み線16部を底部とし、その近傍にハーフカット部20を備え、両側部が胴部ヒートシール部17a、17b、17c、17dで封止され、上部、即ち、開口部ヒートシール部18a、18bが未シールで開口する長方形の袋状の電池ケースを作製することができる。
このような袋状の電池ケース51に、上部の開口部から電池の構成材料を充填し、また、内部からタブ59、60を開口部を通して外側に延長し、開口部を電池ケースの熱接着性樹脂層同士および熱接着性樹脂層とタブ59、60との間でヒートシールして封止することにより、図33に示すようなハーフカット部20による防爆構造を備えたポリマー電池装置50を作製することができる。
即ち、図33は、前記図32の展開図に示した電池ケース51を用いて作製した電池の構成を示す正面図であり、電池装置50は、その表面の電池ケース51が前記図32に示した電池ケース用積層フィルムシート10を前述したように半折し、両側部を胴部ヒートシール部17a、17b、17c、17dで封止して形成され、更に、その内部に上部の開口部から電池の構成材料を充填すると共に、タブ59、60を内部から開口部を通して外側に延長し、開口部ヒートシール部18a、18bを前述したようにヒートシールにより密封して形成され、その底部の近傍にハーフカット部20による防爆構造を備えた構成である。
以上詳しく説明したように、本発明によれば、中間層にアルミニウム箔層を有し、その両側に合成樹脂層が積層された積層フィルムで形成され、薄くて軽く、柔軟性があり、且つ、各種の強度や耐性のほか、水蒸気その他のガスバリヤー性、熱封緘性などの性能に優れると共に、誤使用などで内部が発熱し内圧が上昇した場合でも、所定の圧力で内圧を開放できる防爆構造を備え、安全性にも優れた電池ケースを生産性よく提供できる効果を奏する。
第9の実施の形態
次に図34乃至図36により本発明の第9の実施の形態について説明する。第9の実施の形態は電池を形成するために用いられる電池ケース用シートであって、第1の基材層/金属箔層/接着性樹脂層/第3の基材層/熱接着性樹脂層構成の積層体で形成され、前記金属箔層と第3の基材層、第3の基材層と熱接着性樹脂とがサンドイッチラミネーションまたは押出しコート法により積層された積層体であって、かつ、前記接着性樹脂層および/または熱接着性樹脂層が酸変性ポリオレフィン系樹脂からなるポリマー電池ケース用シートであって、前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が100℃以上の融点を有するものである点が異なるのみであり、他は第1の実施の形態と略同一である。
図34は、本発明の電池ケース用シートの実施例の構成を示す模式断面図である。図35は、本発明の電池ケース用シートの別の実施例の構成を示す模式断面図である。図36(a)は、本発明のポリマー電池を示す斜視図であり、図36(b)は、図36(a)のX−X部断面図である。
本発明におけるポリマー電池は、図36に示すように、電池50aから延長されたタブ59、60がケース51により密封包装されたものである。タブ59、60はケース51の外部に突出させるため、その一部はケース51のシール部17において、ケース51内面樹脂と接着される。
上記構成の電池ケース用シートは、その熱接着性樹脂層同士が内側に接するように重ね合わせ、周囲の端縁部をヒートシールして一端が開口する袋状の電池ケース51とし、内部に正負の電極や電解質などの電池50aの構成材料を収納すると共に、タブ59、60を内部からケース51からの外側に延長し、開口部をシートの熱接着性樹脂同士、および熱接着性樹脂層とタブ59、60とをヒートシールにより熱接着させて封止し、電池を形成するものである。
従って、シートの熱接着性樹脂層には、それ自体同士が互いに熱接着性を有すると同時に、タブ59、60の形成材料である銅箔やアルミニウム箔などの導電性材料で形成されているタブ59、60にも熱接着性を有する樹脂が用いられる。
また、前記ポリマー電池ケース用シートは、積層体は、外部基材層とバリア性のために金属箔層、熱接着性樹脂層から構成するものであり、通常は、前記金属箔層の屈曲や突き刺しによるピンホールの発生さらに破れの防止のために、金属箔層と熱接着性樹脂層との間にさらに第3、および追加の第3の基材層を形成する。このような構成を採ることにより、中間層の金属箔層が優れた水蒸気その他のガスバリア性を付与し、その両側に基材層、熱接着性樹脂層のいずれかが積層されているため、金属箔層は保護され、ひび割れやピンホールの発生が防止されるので良好なガスバリア性が維持される。
そして、金属箔層の外側、または内側に積層される基材層は、上記のように金属箔層を保護すると同時に、シートの強度その他の性能、各種耐性を向上させ、また、最内層の熱接着性樹脂層がシートに熱封緘性を付与するものである。
また、金属箔層の両側には、少なくとも第1の基材層、または、第3の基材層が積層されており、これらはいずれも非導電性材料であるため、電池ケース用シートは非導電性シートとして作用する。
更に、種々の検討の結果、電池のケースに用いる積層体の層構成としては、ケースとしての表面側を第1の基材層とし、バリア層を積層体し、さらに、バリア層の内側に第3の基材層を積層することによって、前記バリア層を基材層で挟持させた状態として、電池が外部内部から受ける衝撃あるいは突き刺しに対する耐性を付与するものとした。
さらに、ケースは熱融着によって成形(製袋)するが、そのために積層体の最内層は、熱接着性樹脂層とする。そして、前記熱接着性樹脂層は、電極端子Tの金属に対しても熱融着可能である酸変性ポリオレフィン系樹脂により形成する。
このような構成を採ることにより、熱接着性樹脂層の前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が、自己同士の熱接着性を有すると同時に、銅やアルミニウムなどの金属に対しても良好な熱接着性を有するため、一端が開口する袋状の電池ケースをヒートシールにより良好に熱接着させ、密封することができる。
上記のような積層体の形成法として、一般的に用いられるドライラミネーション法を用いると、保存等経時変化において前記ケースとして用いられた積層体の層間において剥離することがあった。前記剥離の原因を分析したところ、ポリマー電池の電解液はカーボネート系の有機溶剤であるため、溶剤系の接着剤であるドライラミネーションの接着剤は長期の保存中に、電解液によって溶解することが判明した。つまり、電池の構成成分である電解液が経時的に前記ケースの樹脂層を浸透して前記接着剤の存在する接着界面に達して、前記接着剤を溶解し、積層体が、最終的に接着面において層間剥離することによる現象である。
また、電池は、高温状態において使用され、また放置されることがある。電池のケースに耐熱性がないと、高温状態において、そのヒートシール部が、剥離し、電解液等が漏れでてくるおそれがある。例えば、電池がセットされた電子機器が車中に放置された場合(ダッシュボードテストと呼ばれる)にも耐えられることが要求される。具体的には100℃の環境下で5時間保持し液漏れしないことが求められる。
前記課題に対して、種々の積層体構成およびそれぞれの材質を研究した結果、ポリマー電池用のケースとしての具備すべき条件を満足する積層体構成として、次のような材質構成とすることにより、前記課題を解決することができることを見出し本発明を完成するに到った。
第1の基材層は、積層体の構成の基材として、印刷、ラミネーション等の積層体の製造時において、強度があって加工性がよいなどのものが望ましく、また、電池の表面層として、耐摩擦性をはじめ各種の特性が求められる。
また、ポリマー電池に限らず電池のケースとしては、水蒸気をはじめ各種のガスバリア性が必要である。本発明においては、該バリア性を付与する層として、金属箔を用いる。該金属箔からなるバリア層を保護する目的および電池ケースの強度を補強するために第3の基材層を金属箔の内側に設け、最内層に熱接着性樹脂を設けた構成とする。すなわち、本発明の材質構成は少なくとも、金属箔からなるバリア層を含み基材層及び熱接着性樹脂層とからなるものとする。
前記金属箔層と第3の基材層との貼り合わせは、接着性樹脂を用いてサンドイッチラミネーションにより行う。さらに、前記の材質構成において、前記熱接着性樹脂としては酸変性ポリオレフィン系樹脂を用い、かつ、該酸変性ポリオレフィン系樹脂は100℃以上の耐熱性を有するものを用いる。
以下、本発明のポリマー電池用のケース51について、詳細に説明する。
本発明においては、前記積層体の構成において、バリア層よりも内面にある層の積層体を製造する際に、有機系溶剤タイプの接着剤層を含まず、各層間の接着は接着性樹脂を用いてサンドイッチラミネーション法により積層し、最内層は熱接着性樹脂を押出しコートして形成するものとする。
ただし、金属箔層の外側における積層においては、前記ドライラミネーション法にって貼り合わせてもよい。
このように、金属箔層より内側の積層において溶剤系の接着剤層を設けないことにより、接着界面に電解液が浸透することによって、接着剤層を溶解して積層体の層間でのデラミネーションを起こすおそれがなくなった。
次に、本発明にかかるポリマー電池ケース用シートの積層体を形成する個々の層についてさらに説明する。
本発明の電池ケース用シートは、前述のように中間に水蒸気その他のガスバリア性に優れた金属箔層を用い、その外側、または内側に各種の強度および耐性に優れた第1、第3、および追加の第3の基材層を適宜積層し、更に、最内層に熱接着性樹脂層を積層して構成する。
上記の構成において、ガスバリア性を付与する中間の金属箔層にはアルミニウム箔、銅箔などを好適に使用することができる。中でもアルミニウム箔は比較的安価であり、貼り合わせなどの加工性にも優れていることから最も好ましく使用できる。このような金属箔層の厚さは5〜25μmが適当である。
そして、上記基材層としては、例えば2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム又は、PET)、2軸延伸ナイロンフィルム(以下、ONフィルム又はON)、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを使用することができるが、耐久性などを含めた各種性能と共に加工性、経済性を加味した場合は、PETフィルム、ONフィルムが特に適している。
ここでPETフィルムとONフィルムの特性を比較すると、特別大きな差ではないが、PETフィルムは吸湿性が低く、剛性、耐擦傷性、耐熱性などに優れ、ONフィルムは吸湿性はやや高いが、柔軟性、突き刺し強度、折り曲げ強度、耐寒性などに優れている。
このような基材層として用いられるフィルムの厚さは、5〜100μmが好ましく、12〜30μmが更に好ましい。
最内層の熱接着性樹脂層は、先にも説明したように、自己同士の熱接着性に加えて電極端子の金属に対しても良好な熱接着性を有すると共に、電解液への水分の浸入を極力すくなくするため、それ自体、吸湿性、或いは水分吸着性の低いものが好ましく、更に、電解液により膨潤したり、浸食されることがなく安定なものが好ましい。
このような熱接着性樹脂としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体のほか、ポリエチレンもしくはポリプロピレンに前記共重合体の一種または二種以上をブレンドしたようなポリオレフィン系樹脂なども使用できるが、特に、酸変性ポリオレフィン系樹脂、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のような酸成分を共重合して変性したポリオレフィン系樹脂、或いは、ポリエチレン、ポリプロピレンや、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などのポリオレフィン系樹脂に、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸、或いは、その無水物をグラフト共重合して変性したポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
そしてこれらの樹脂の中から融点が100℃以上の樹脂を用いることによって、電池ケースとしての耐熱性に優れるものとなる。熱接着性樹脂層に用いられる酸変性ポリオレフィン系樹脂の融点が100℃未満の場合、電池が高温状態に置かれた時に、ケースのシール部において剥離現象が起きて、電解液が漏れ出ることがある。
尚、上記の中、酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸成分含有量は、0.01〜10重量%の範囲が好ましい。酸成分量が0.01%未満の場合は、金属との熱接着性が不足し、酸成分含有量が10%を超える場合は、製膜性が劣るため好ましくない。
このような熱接着性樹脂層の厚さは10〜100μmの範囲が適当である。
以上のような各層を積層する方法として、本発明においては、前記金属箔層の内側における積層方法として、接着性樹脂を、貼り合わせを行う2層の間に溶融押出して圧着するサンドイッチラミネーション法によって貼り合わせる。
前記接着性樹脂としても、前述の酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いる。
また、最内層の熱接着性樹脂層は、第3の基材層に、直接、酸変性ポリオレフィン系樹脂を溶融押出しコートして積層する。本発明にかかるポリマー電池ケース用シートの積層体の形成において、金属箔層の内側の積層には、有機系接着剤を用いるドライラミネーション法を採用することなく、酸変性ポリオレフィン系樹脂を接着性樹脂とするサンドイッチラミネーション法とするが、前記金属箔層の外側での積層においては、ドライラミネーション法を採用しても良い。
以下、実施例の図面に基づいて本発明を更に説明する。
但し、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。また、図面に付した符号は、異なる図面においても同じ名称の部分には同じ符号を用いた。
図34、図35は、それぞれ本発明の電池ケース用シートの実施例の構成を示す模式断面図である。
図34に示した電池ケース用シート10は、外側から順に第1の基材層(第1の基材フィルム層)1a、接着性樹脂層5、金属箔層2、接着性樹脂層4、第3の基材層(第3の基材フィルム層)1c、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
上記構成において、第1の基材層1aは、PETフィルムまたはONフィルムであり、金属箔層2には、例えばアルミニウム箔を用い、接着性樹脂層及び熱接着性樹脂層3には、酸成分含有量が0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いる。
このような構成を採ることにより、電池ケース用シート10は、最外層の第1の基材層1a、即ち、PETフィルムまたはONフィルムにより、引っ張り強度、突き刺し強度、折り曲げ強度などの機械的強度、および、表面の耐擦傷性、耐水性、耐薬品性や、耐熱性、耐寒性などの耐性が付与され、中間層の金属箔層(例えばアルミニウム箔層)により、水蒸気その他のガスに対する優れたバリア性が付与され、更に、最内層の熱接着性樹脂層3としては、例えば酸成分含有量が、0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂とすることにより、先に説明したように、優れた熱封緘性が付与される。
また、バリア性に関して、金属箔層2に例えば厚さ9μmのアルミニウム箔を用いることにより、水蒸気透過度0.01g/m2 ・24hrs(40℃、90%RH)以下の性能が容易に得られ、更にこれをレベルアップすることも容易である。
上記積層構成の代表的な具体例としては、下記のような構成が挙げられる。
(1)PET(厚さ12μm)/AL(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂(厚さ15μm)/PET(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂(厚さ30μm)
(2)PET(厚さ12μm)/AL(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂(厚さ15μm)/ON(厚さ15μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂 (厚さ30μm)
(3)ON(厚さ15μm)/AL(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂(厚さ15μm)/PET(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂 (厚さ30μm)
(4)ON(厚さ15μm)/AL(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂(厚さ15μm)/ON(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂(厚さ30μm)
このような構成を採ることにより、第3の基材層1cが追加積層されたことによる各種の機械的強度および耐性の向上と共に、金属箔層2の両側が、第1の基材層1aと第3の基材層1cとで挟み込まれるため、外部からの衝撃や摩擦、その他物理的、化学的作用だけでなく、内部からの同様な作用に対しても金属箔層2の保護性が向上し、一層安定したバリア性が得られるという効果を奏する。
図35に示した電池ケース用シート20は、外側から順に、第1の基材層1a、金属箔層2、接着性樹脂層5、第3の基材層1c、接着性樹脂層4、追加の第3の基材層1d、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、中間層の金属箔層2の内側の第3の基材層1cの性能を向上させるため、追加の第3の基材層1dを追加し電池ケース用シート10としての強度をさらに向上したものである。
この場合も、第1の基材層1aと第3の基材層1cおよび追加の第3の基材層1dには、PETフィルムまたはONフィルムが用いられる。
只、この場合、全ての基材層に同種のフィルムを積層してもよいが、第1の基材層1aにPETフィルムを用いた場合は、第3の基材層1c又は追加の第3の基材層1dにはONフィルムを用いるというように異種のフィルムを組合せて積層することが、両者の弱点を補完でき、長所を兼ね備えさせ得る点でより好ましい。
図35に示した構成は、前記図34に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層2の内側に基材層を2層設け、ケースとしての強度を更に向上させた積層体としたものである。前記積層体の製造において、第1の基材層と金属箔層2との接着層5はドライラミネーション法、サンドイッチラミネーション法のいずれかの方法により形成されたものであってもよいが、金属箔層2より内側における積層、つまり、金属箔層2と第3の基材層1c、第3の基材層1cと追加の第3の基材層1dとのラミネーション等は、いずれも接着性樹脂4を用いてサンドイッチラミネーション法とし、また、熱接着性樹脂層3は押出コート法により積層する。前記サンドイッチラミネーションにおける接着性樹脂及び熱接着性樹脂層はいずれも酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いる。
なお、前記第3の基材層1cまたは追加の第3の基材層1dには、前記酸変性ポリオレフィン系樹脂との接着性向上のために、その表面にコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を施すことができる。また、熱接着性樹脂と金属箔層または基材層との接着性向上のために、積層後に積層体を加圧加熱する(アフターヒート)ことも可能である。
従って、図35に示すように、金属箔層2の外側には、第1の基材層1a、が積層され、金属箔層2の内側には接着性樹脂層4を介して第3の基材層1cさらに接着性樹脂層4を介して追加の第3の基材層1dそして最内層として熱接着性樹脂層3が押出コート法により設けられている。前記金属箔層2と第3の基材層1cとの積層、また、第3の基材層1cと追加の第3の基材層1dとの積層については、いずれも酸変性ポリオレフィン系樹脂を接着性樹脂とするサンドイッチラミネーション法を用いる。そして、最内層の熱接着性樹脂層3は押出しコート法により形成する。また、この場合、第3の基材層1c、1dとしては、ONフィルムが望ましい。
このような構成を採ることにより、本発明の電池ケース用シートは上記第1、第3基材層1a、1c、1dによる各種の機械的強度および耐性の向上とともに、金属箔層2の両側が、第1の基材層1a、第3の基材層1cとで挟み込まれ、さらに追加の第3の基材層1dがその内側に積層されて、特に、内部からの突き刺し等に対する強度が向上するとともに、金属箔層を保護し、電池用シートとして更に安定したバリア性が得られるという効果を奏する。
図34〜図35に示した構成の電池ケース用シート10において、表面に文字、絵柄などの印刷を施す場合には、最外層の第1の基材層の内面(積層面)に所謂裏刷り方式で予め印刷し、この面に次の層を積層して、電池ケース用シートを完成させることにより、表面の摩擦などで損なわれることのない印刷画像を形成することができる。
以上詳しく説明したように、本発明によれば、軽量で薄く、柔軟性があり、且つ、各種の機械的強度や耐熱性のほか、水蒸気その他のガスバリア性、熱封緘性などの性能および加工性に優れた電池ケース用シートを生産性よく提供できる効果を奏する。
金属層より内側の積層に溶剤系の接着剤層を用いない積層体とすることによって、電池の電解液による剥離が無くなった。
また、接着性樹脂層および熱接着性樹脂層として、融点が100℃の酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いることによって、電池が高温状態におかれても、電池ケースのシール部において剥離現象が起きて、電解液が漏れ出ることがなくなった。
第10の実施の形態
次に図37乃至図44により本発明による第10の実施の形態について説明する。第10の実施の形態は電池ケースであって、前記電池ケースの外部に位置する部位の各極端子毎に少なくとも1箇所の切欠き部を備えた絶縁性シートにより前記電極の端子を被覆したことを特徴とする電池装置であって、次の各発明、前記電池ケースの内面と前記絶縁シートの外面とが熱融着されること、前記絶縁性シートの少なくとも片面に電極と熱融着可能な層を設けたこと、前記絶縁性シートの基材がポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネートからなること及び前記、電池ケースおよび/または絶縁性シートに印刷が設けられていることが異なるのみであり、他は第1の実施の形態と略同一である。
本発明は、各種電池のなかでも薄型の電池であり、柔軟性のあるシートを用いて電池ケースを形成し、電池を密封すると共に前記電池から延長されたフラットなタブを絶縁性フィルムにより被覆し、被覆フィルムの所定の位置に切欠き部を設けることにより、対象機器への接続を可能としたものである。
図37は、発明の電池ケースの電極構造について説明する図で、(a)は電池の全体斜視図、(b)は電池の起電部および電極端子の斜視図であって電極に保護フィルムを被覆した状態、(c)は(a)のX1 −X1 (X2 −X2 )の断面図である。
図38は、電極に保護フィルムを被覆する方法を説明する斜視図で、(a)は被覆前、(b)は被覆後を示す。図39は、本発明の電池ケースの電極構造の実施例について説明する。(a)は電池ケースの電池本体を封入する前の電池ケースの状態を示す斜視図、(b)は(a)のX2 −X2 部断面図である。図40は、前記実施例による電池ケースの電極構造からなる電池の上面図である。図41(a)は図40のX3 −X3 (X4 −X4 )部断面図、(b)は(a)のW部拡大図であり、図42(a)は図40のY1 −Y1 部断面図、(b)は(a)のY2 −Y2 部断面図である。図43は、本発明の電極保護フィルムの材質構成を説明する断面図である。図44は、従来技術による電池ケースの電極構造を説明する図であり、(a)は電池ケースの材質を示す層構成の断面図、(b)は従来技術による電池の斜視図、(c)はZ矢視の拡大図である。
図44(a)および図44(c)に示すように電池ケース51を形成するフレキシブルな包装材料シート10中に、金属箔等の導電層2が含まれている場合、ケースを形成する際に包装材料10中の前記が電池ケース51としての端部断面10aに露出し、また、タブ59、60が柔軟性のある金属箔などのシート状であると、電池の使用前または使用時に前記タブ59、60と電池ケース51断面に露出された導電性の層2とが接触する危険がある。なお。シート10は、第1の基材フィルム層1a、金属箔層2、第3の基材フィルム層1c、熱接着樹脂層3を接着剤層5a、5bにより貼合せて構成されている。
接触トラブルが発生すると、電池の放電によって起電力が低下し、または起電力ゼロとなる。使用対象機器の中で前記接触トラブルが発生すると、機器の機能障害または該機器の故障の原因ともなることがある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意研究の結果、前記電極の構造を以下に述べるような構造にすることによって解決することができた。
図37に示すように、シート状のタブ59、60の特に電池ケース51の端部に挟持される部分までを含むタブ59、60の引出し部を絶縁性を有する電極保護フィルム61により被覆することにより前記の接触トラブルを防止することが可能となった。
前記電極保護フィルム61によるタブ59、60の被覆の程度は特に限定しないが、電極であるためには、全面を被覆してはならない。すなわち、電池として用いられる相手の機器への入力端部と接触するための導電性を示す露出部(以下、接触域と記載する)を設ける必要がある。
具体的には、前記電極保護フィルム61に切欠き部62を形成して、該電極保護フィルム61をタブ59、60の両面から被覆すると、前記切欠き部62のタブ59、60は、露出して電池としての対象機器との接触域となる。
前記接触域の形成にあたっては、電極保護フィルム61とタブ59、60とを接着する際に接触域に接着剤などによる絶縁皮膜を形成しないようにする。
本発明の電池ケース51は、ヒートシール技法により組み立てられることが望ましいけれども、接着剤を用いる等他の技法でも本発明の目的に合致した電池ケース51とその電極構造が得られる方法であれば、その技法を使用してもよい。
本発明に用いる電池ケース51の材質としては、密封系を形成することができること、極めて長期間にわたって、外部からの水蒸気あるいは腐食性ガス等が、ケース内に進入することを防止する性質、いわゆるバリアー性が良好であること、基本的な熱的条件として耐熱性及び耐寒性を有することと、またケースの外面材質および最内面材質は絶縁性を有するものとする。
前記のような要求物性を満たす電池ケース用シート10としては、種々の材質が考えられるが、フレキシブルなフィルムまたは金属箔等を接着することにより得られる積層材料とすることが望ましい。すなわち、前記フィルムあいるは金属箔等の有する優れた物性を生かし、逆に、それぞれのフィルムまたは金属箔が有する欠点を補完しあうことができる。
ケース51の形成方法としては、特に限定するものではなく、接着剤を用いる方法、超音波、高周波等のシール方法あるいは、加熱圧着による接着するヒートシール法等が利用できる。
本発明においては、ケース51を形成する積層材料の内面材料としては熱融着可能な材料として、必要部位をヒートシールによって積層してケースの形成をすることが望ましい。
本発明の電池ケースを形成する積層材料シート10について具体的に説明する。
前記積層材料シートとして具体的な層構成の実施例としては、図37(d)に示すように次のような構成とすることができる。
(外側)最外層1a/バリア層2/補強層1c/シーラント(内側)層3
前記の各層間はドライラミネーションあるいはサンドイッチラミネーションにより積層が可能である。
上記層構成の総厚みとしては50〜200μmが好ましい。その総厚みが50μm未満の場合には水蒸気バリア性に劣り、電解液へ水分が入り込む危険性がある。上記層構成の総厚みが200μmを超えると、できるだけ軽く、薄くしたいというポリマー電池の基本構想から外れてしまうとともに、水蒸気や各種ガスの遮断性等に対し、200μmを超えた厚さの効果は期待できない。
前記例における積層材料の各層はそれぞれの物性により選択される。
具体的な積層材料として、次のような構成とすることができる。
(外側)PET/AL/PET(またはNy/シーラント(内側)
[略号 PET:ポリエチレンテレフタレート、AL:アルミニウム(箔)、Ny:ナイロン]
最外層(第1の基材フィルム層)1aは、電池ケースの表面層となるため、絶縁性を有すること、そして表面が平滑であり、耐薬品性をはじめ、耐摩擦性があり、引張りや突刺し等に対する強度を有するもので電池ケースが外部から受ける種々の物理的、化学的破損または分解から電池を保護する機能が求められる。具体的な材質は、各種樹脂、好ましくはPETから製膜される二軸延伸フィルムが望ましい。
最外層1aの厚みは5〜30μmが望ましい。最外層1aの厚みが5μm未満では外部からの突き刺しに劣り、ピンホールの発生の危険性が大きい。30μmを超える厚さではケース形成時のヒートシール性に影響する。
前記最外層1aの次にバリア層(金属箔層)2を設けることが好ましい。該バリア層2は、特に水蒸気や各種ガスが電池ケース内に浸入または透過させないための遮断機能(バリア機能)のための材料である。エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体等からなるフィルム、または、ポリエチレンテレフタレートフィルム等に金属、酸化珪素などの無機酸化物等を蒸着したフィルム、ポリ塩化ピニリデン等のバリアコート剤を塗布したフィルム等を用いてもよいが、さらに、ハイバリアとするために、アルミ箔等の金属を用いることが望ましい。バリア層2としてアルミ箔を用いる場合には、その厚さは5〜30μm程度が望ましい。前記アルミ箔の厚さが5μm未満の場合ではピンホール数が多くバリア性に劣る。前記アルミ箔の厚さが30μmを超えるとケース形成時のヒートシール性に支障を及ぼす。
前記バリア層2の内側に補強層(第3の基材フィルム層)1cを設けることが好ましい。該補強層1cを付加することによって電池ケースとしての強度が補強できる。特に突起物による電池ケースの損傷に対しての補強が望まれる。補強層1cとしては二軸延伸フィルム好ましくは、PETあるいはNy等を用いることができる。補強層1cの厚みとしては5〜30μmが望ましい。補強層の厚みが5μm未満では内部(電池本体)からの耐突き刺し性に劣り、ピンホールを発生し易く、電解液の漏れ、デラミ等をおこす可能性がある。また、補強層1cの厚さが30μmを超えると成形時のシール性に影響する。
積層材料のシーラント層(熱接着性樹脂層3)の材料は、電池ケース21の成形において、必要部位を接着するが、前述のように、電池ケースの形成法としては熱融着による接着法(ヒートシール法)が作業性、密封性などの点で望ましい。前記ヒートシールする場合には、熱融着性を有する樹脂から選択することになるが、後述するタブ59、60または被覆材料61とも熱融着可能な材料とする。
シーラント層3としては、内面同士のヒートシール性、前記のように、電極端子の金属箔または、端子の被覆フィルムに熱融着可能な材料を用いる。具体的には、エチレンアクリル酸(EAA)、エチレンメタクリル酸(EMAA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、アイオノマー等を用いることができる。
シーラント層3の形成は、予め、前記の樹脂を用いて製膜したフィルムを前記補強層1cの面にラミネートしても良いし、前記補強層1cの面に押出機により樹脂を溶融押出しすることにより層を形成してもよい。
厚みとしては10〜100μmが望ましい。シーラント層3の厚みが10μm未満では内部電池本体からの耐突き刺し性に劣り、ピンホールを発生し易く、電解液の漏れ、デラミ等をおこす危険性がある。また、シーラント層3の厚みが100μmを超えるとシーラント層のフィルム自体の絶対吸湿量が多くなり、内側前記注出口には、内容物を吸引する際の袋の閉塞防止手段が設けられていること水分が入り込む危険性がある。
前記最外層1a、バリア層2、補強層1cおよびシーラント層3の各層間の接着は、前述のように、ポリウレタン系接着剤によるドライラミネーションや、接着性樹脂を前記各層間に押出して接着させるサンドイッチラミネーション等の技法により積層することができる。
次に本発明にかかる電極端子について説明する。本発明におけるタブ59、60は金属箔等のフラットな端子であって、前述のように、接触域、すなわち対象機器への接続部を除く該端子の両面を絶縁性を有する電極保護フィルム61によって被覆することを特徴とする。
被覆の方法の実施例としては、図38(a)に示すように、被覆フィルム61の所定の位置に切欠き部62を設けて、2つ折りする。図38の例ではプラス電極、マイナス電極それぞれのタブ59、60の接触域とすべき位置に前記切欠き部62が一致するようにして設け、2つ折りした電極保護フィルム61の間にタブ59、60を載置し、ヒートシール等の方法により、被覆フィルム61をタブ59、60と接着して被覆し、また、前記端子間縁部は電極保護フィルム61の内面同士を熱融着させる。
タブ59、60への被覆の接着方法としては、前記ヒートシール法以外の例えば、電極保護フィルム61の内面に接着剤を塗布して直ぐにタブ59、60を被覆し所定時間加圧状態に保持して接着してもよい。
前記被覆において、電池の電池50a近傍部であって電池ケース51の中に位置する部分には非被覆部67があってもよいが、特に端子の電池ケース51の端部断面10aに位置する部分には十分な被覆領域とし、タブ59、60の折れ曲がりによる電池ケース51端部断面10aの導電層(金属箔層)2への接触トラブルの発生のないようにする。
つぎに、本発明においてタブ59、60を被覆する電極保護フィルム61について説明する。電極保護フィルム61としては、絶縁性を有し、前記タブ59、60の面に接着可能なものであればよく、図43(a)に示すように単体フィルム(接着層71)からなるもの、図43(b)に示すように支持層72と接着層71からなる2層でもよく、また、図43(c)に示すように支持層72の片面に接着層71、接着層と反対の面に外層73を積層した3層からなるものでもよい。
前述のように電池ケースがヒートシール法により形成することが好ましいが、電極端子への被覆についても事情は同じである。
電極保護フィルム61の接着層71及び外層73に用いる材質としては、電極端子の金属箔等に熱融着可能な材質が用いられ、具体的には、エチレンアクリル酸(EAA)、エチレンメタクリル酸(EMAA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、アイオノマー等を挙げることができる。
支持層72としては、熱による伸縮の少ない、また、抗張力に優れたフィルム等を選択する。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネートからなる二軸延伸フィルムが好ましく用いられる。
本発明の電極は、平板であり、導電性素材からなるものである。具体的には、アルミニウム、銅、錫等の金属又はこれらの金属の2種以上からなる合金を箔加工したもの等を挙げることができる。
本発明にかかる電極保護フィルム61による被覆について、更に詳細に説明する。本発明のタブ59、60部分は、電池装置50としての対象機器端子に接続し導電するために、接触域として露出させた領域となるが、その他の部分、特に電池ケース端部断面10aの近傍は電極保護フィルム61により被覆することにより、本発明の課題であるケース用包装材料中の導電層2とタブ59、60とのショートによるトラブルを防止できた。そして、その他の部分は被覆してもよいしまた被覆しなくともよいが、電池ケースから突出した電極部が柔軟であり、電池として使用前または使用する際に、タブ59、60が変形により、対象機器との接触不良原因となるので、前記接続のために必要な接触域以外のタブ59、60は、可能な限り電極保護フィルム61による被覆をすることが望ましい。
タブ59、60の所定の部位を露出し、その他の部位を電極保護フィルム61による被覆する具体的な方法は、図38に示すように、タブ59、60の先端において折り込んで、その表裏を被覆するとともに、その左右の幅を越す電極保護フィルム61を用意し、電極を被覆したときの所定の位置に切欠き部62を設ける。
前記切欠き部62により露出するタブ59、60が電池50としてのタブ59、60の接触部となる。前記切欠き部62は、タブ59、60の片面に設けてもよいし、また、タブ59、60の表裏両面に設けてもよく、さらにタブ59、60の先端断面または左右の両側断面を含む面積の切欠き部62として設けてもよい。
本発明におけるタブ59、60への電極保護フィルム61の被覆においては、タブ59、60の接触域の導電性を維持させることが条件である。そのために、前記電極保護フィルム61の少なくともタブ59、60に接着する層には、前記タブ59、60と熱融着可能な材質からなる層とし、前記切欠き部62を形成後に熱融着する。また、電極保護フィルム61に接着剤を塗布して前記タブ59、60と接着する場合には、電極保護フィルム61に切欠き部62を形成してから、その切欠き部62を除く接着層に接着剤を塗布してからタブ59、60と接着する。
最も好ましい実施態様は、前述のように前記電極保護フィルム61の少なくとも片面に、前記タブ59、60と熱融着性を有する材質からなるものを積層したものを用いて、前記切欠き部62を形成後、前記熱融着層面の間に電極を挟み、加圧加熱により、タブ59、60の面に絶縁シートを被覆接着させることである。
本発明の電池ケースの電極構造とすることにより、電池ケース51の端部断面10aとタブ59、60とのショートによるトラブルが解消され、さらに電池ケース51の外側のタブ59、60の補強の効果が認められた。
また、本発明の電池ケース51は、積層構造の材料からなるが、最外層1aに透明性を有するフィルムを用いて、商品名、使用方法または、使用の際の注意事項等を印刷できる。更に、必要ならば、電極保護フィルム61にも印刷が可能である。この場合には、電極保護フィルム61としては、図43(b)または図43(c)に示したように支持層72を含む積層フィルムとすることにより、前記支持層72に印刷した後に、該印刷面に接着層71または/及び外層72をラミネートする。このようにして設けたそれぞれの印刷層は、いずれもフィルムの裏刷りが可能のため、その印刷部が表面でなく層間に位置することになり印刷部の耐磨耗性に優れる。すなわち、インキとして、特に耐摩擦性を必要としない通常の印刷インキを用いることができる。
実施例
電池ケース51を形成する包装材料の最外層1aとなる表面の材質として12μmの厚さのポリエチレンテレフタレート、ルミラー(東レ株式会社製 商品名)を用い、ポリウタレン系の2液型接着剤を用いて、バリア層2となるアルミ箔15μm(三菱アルミニウム株式会社製)を中間層として積層した。
前記ポリウタレン系接着剤は、主剤としてイソシアネート、タケラックA511(武田薬品工業株式会社製 商品名)、及びポリオールA50(武田薬品工業株式会社製 商品名)を用い接着剤としてのコート量は、3〜5g/m2 とした。
次に、前記積層したアルミ箔面に、補強層1cとして、厚さ12μmの2軸延伸ナイロンフィルム、エンブレム(ユニチカ株式会社製 商品名)を、前記と同じポリウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法により積層し、前記ナイロン面に、シーラント層3としてエチレンメタクリル酸(EEA)、ニュークレル(三井ポリケミカル株式会社製 商品名)を50μmの厚さに押出し法により積層した。
別に、電極保護フィルム61として、12μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム、ルミラー(東レ株式会社製 商品名)の両面に、前記電池ケース用積層材として用いたエチレンメタクリル酸(EEA)、ニュークレル(三井ポリケミカル株式会社製 商品名)を、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に20μmの厚さに押出し法により形成した。
次に、前記電池ケース用の積層された包装材料シート10を用いて、図39(a)に示すようにシール部65と開放部66を有するケース51を形成した。
電池50aから延長されたタブ59、60は、銅箔の40μmであり、その幅はプラス、マイナス端子ともに15mm、長さは30mmである。電極保護フィルムへの切欠き部2の形成および電極端子Pへの被覆は、前記図38に示した方法で行った。
次に、前記電池ケースとなる図39(a)の開放部66から電池50aと50aから延長したタブ59、60に電極保護フィルム61を被覆したものを挿入し、前記電極保護フィルム61を被覆したタブ59、60を挟持して、前記開放部66をヒートシールして、図40に示すようにポリマー電池装置50を得た。
本実施例では、前記切欠き部62(電極としては接触部となる)は楕円形状とし、プラス電極、マイナス電極ともに両面に設けた。
得られたポリマー電池装置50の電池ケース51の電極構造は、図41及び図42に示すように、タブ59、60の切欠き部62(接触部)はタブ59、60の先端に近い部位に設けてあり、電池ケース51の端部断面10aの近傍の端子は絶縁性の電極保護フィルム61により被覆されているため、従来のようなショートによるトラブルは皆無となった。
本実施例の電極保護フィルム61を被覆した電池ケース51の電極構造によって、前述のようにタブ59、60を折り曲げてもショートしないことはもちろん、電極としても曲がり難いので、タブ59、60としての補強効果が認められた。
電池ケースを構成する積層材の金属箔と電極とがショートすることが皆無となり、安定したケース及び電極を提供できた。
電極を絶縁性シートによって被覆することにより、電池ケースの端面から先に延長した電極端子部の剛性が向上し、電池として使用する際に前記端子が折れ曲がったりすることがなくその使用の安定性がよくなった。
第11の実施の形態
次に図45乃至図48により本発明の第11の実施の形態について説明する。第11の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分は同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本発明にかかる電池の具体的な構造とガス発生時の機能について図面等を用いて説明する。
図45は、本発明のポリマー電池装置の実施例とその構造を説明する図で、(a)はその上面図、(b)は通電状態の(a)のX1−X1部の断面図、(c)は通電遮断時の(a)のX1−X1部断面図であり、(d)は(b)のY1 の拡大図、(e)は(c)のY2 の拡大図である。図46は、本発明の加圧装置の実施例を示す図で、(a)は板バネの例、(b)は巻きバネの例を示し、(c)は(a)のX2 −X2 部の断面図、(d)は(b)のX3 −X3 部の断面図である。図47は、本発明の加圧装置が、電池を用いる器具に装着されている例を示す概念図である。図48は、本発明のポリマー電池のケースの材質を説明する積層体の断面図である。
本発明はポリマー電池の基本的な構造を変更することなく、電池ケース内にガスが発生した場合に、電池の通電が遮断する機構を付与するものである。
本発明にかかる電池の具体的な構造例としては、前記ポリマー電池のケースに用いられる積層フィルムを、各種の強度、耐性のほか、水蒸気その他のガスバリア性、熱封緘性を有する構成で形成すると共に、ケース内のタブの本体からシール部に至る中間部において、重複重合により接触する構造の部分(以下、タブ重合部と記載する)を設ける。該タブ重合部は、正極、負極のいずれか一方に設けても良いし、また、両方に設けてもよい。
図45(a)は本発明のポリマー電池の実施例を示す包装外観である。本実施例におけるケース51は、四方シール袋形式である。図45(b)に示すように、電池50aは、前記四方シール形式のパウチ(ケース)51内に包装される。そして、タブ59,60は、前記電池50aから延長され、シール部78を貫通しているが、タブの一方の部材59a,60aは、電池50aから延長されてケース51内部の中間位置までの長さとし、他方の部材59b,60bは、前記一方の部材59a,60aと重複接触しシール部78を貫通するものとする。この一方の部材59a,60aと他方の部材59b,60bとによってタブ重合部77が構成される。
つまり、タブ59,60の断面が、図45(b)のとき、外部への通電が可能となる。
ポリマー電池装置50は、電池の構成材料である電解液及びその含浸体支持体或いは、正極集電体、負極集電体、タブ等を電池ケース51に収納し真空状態において密封シールすることによって作られる。前記タブ重合部77は、大気圧により前記ケース51が常に圧着されているために、図45(b)または図45(d)に示すように、タブ重合部77において接触し通電状態に保持されている。
ところが、ポリマー電池装置50においてガスが発生すると、ケース51内の真空系が解除され、前記タブ重合部77付近のケース51は、正常な状態においては、図45(d)に示すようにタブ重合部77において、一方の部材59a,60cと他方の部材59b,60bとは接触しているが、内圧の上昇によって、ケース51内の真空状態が緩み、ケース51は矢印方向に広がる。その広がりは、内圧の上昇により、図45(e)に示すように最大にまで広がる。その結果、前記タブ重合部77において、一方の部材59a,60aと他方の部材59b,60bとが分離し、接触通電が遮断することになる。図45(e)からも明らかに、重合タブ部77において、タブ59,60が接しているケース51内面とタブ59,60とが接着されていると、前記分離がより確実となる。
前記のような構造において、一方の部材59a,60aはケース51の下側フィルムに融着されていること、他方の部材59b,60bはケース51の上側フィルムに融着される構造とすることにより、電池内に発生するガスの発生によって、前記重合タブ部77において、より確実に分離される。
ポリマー電池装置50は、その取扱い易さ、電池そのものの外圧からの保護等のために硬質な材料からなる外容器(ケース)51aに収納し、ポリマー電池パックとすることがある。本発明にかかるポリマー電池装置において、前記ポリマー電池パックとした場合には、前記タブ重合部77をより確実に接触させるために、さらに、電池の外容器51aに前記タブ重合部をより確実に押圧するための加圧装置を設けることができる。
前記加圧装置は電池50の内部から発生するガスによる内圧の上昇により袋体内部のタブ重合部77において剥離し、電流が遮断するものであれは加圧の方法を問わない。
例えば、図46(a)に示すように、外容器51aの内側に板バネ76Pを装着しても良いし、また、図46(b)に示すように、スプリングバネ76Sによる加圧であってもよい。
前記加圧装置の代表的なものとして、図46にバネによる方法を2例を例示したが、前記加圧装置は、外容器51a内に発生するガスの圧力に対し後退する作用を示す機構であれば、材質・構造ついてはどのようなものでも良い。
例えば、図示はしないが、前記タブ重合部77を押圧する位置において、外容器51aの身蓋により圧縮力がかかるように、弾性体の高さを設定して、タブ重合部77を加圧する弾性を有する弾性体を挿入する方法によることもできる。
本発明の電池装置50においては、外容器51aの内面に加圧装置を装着するが、図47に示すように加圧装置が当該電池を使用する機器79の電池格納部内に装着されていてもよい。
本発明の電池ケース51は、前述のように柔軟な材質からなり、電池のケース51として要求される機能を発揮するために、それぞれに特徴を有する素材をラミネートすることにより形成される積層体としている。そして、前記積層体を袋状に成形し電池本体を収納して密封することによりポリマー電池装置50とする。
前記積層体の基本的な材質構成は図48に示すように、第1の基材フィルム層1a、金属箔層2、第3の基材フィルム層1cおよび熱接着性樹脂層3からなる。
次に本発明のポリマー電池装置50において用いられる素材及びケース51の積層体構成などについて説明する。本発明に係る電極構造のタブ59,60は、銅、アルミニウム等の金属箔を用いることが多い。一方、電池のケース51は、柔軟な積層体からなっている。
本発明のポリマー電池50aを収納するケース51は、外部からの水蒸気、腐食性ガス等を遮断し、また、セルが輸送中や使用時に受ける突き刺し、摩擦等により損傷しないように保護する材質とするために、各種素材をラミネートした積層体とする。
前記積層体として具体的な層構成の実施例としては、図48に示すように次のような構成とすることができる。
(外側)最外層/バリア層/補強層/シーラント層(内側)
そして、前記の各層間はドライラミネーションあるいはサンドイッチラミネーションにより積層が可能である。
上記積層体10の総厚みとしては50μm〜400μmが好ましい。その総厚みが50μm未満の場合には水蒸気バリア性およびフィルム強度に劣り、電解液へ水分が入り込む危険性がある。上記層構成の総厚みが400μmを超えると、ヒートシール適性が低下しケースとしての重量が増加し、器具の軽量化に逆行する。また、水蒸気やガス遮断性等の点からも、400μmを超えた厚さの効果は期待できない。前記例における積層材料を構成する各層はそれぞれの物性により選択される。具体的な積層材料として、次のような構成例とすることができる。
(外側) PET/AL/PET/(またはNy)/EMAA (内側)
〔略号 PET:ポリエチレンテレフタレート、AL:アルミニウム(箔)、Ny:ナイロン、EMAA:エチレンメタクリル酸〕
前記最外層(第1の基材フィルム層)1aは、ケース51の表面層となるため、絶縁性を有すること、そして表面が平滑であり、耐薬品性をはじめ、耐摩擦性があり、引っ張りや突き刺し等に対する強度を有するもので器具のケース外部から受ける種々の物理的、化学的破損または分解から器具を保護する機能が求められる。最外層としての具体的な材質は、各種樹脂好ましくはPETから製膜される二軸延伸フィルムが望ましい。最外層の厚みは5〜30μmが好ましい。最外層の厚みが5μm未満では外部からの突き刺しに対する抵抗する強度が劣り、また、ピンホールの発生の危険性が大きい。最外層が30μmを超える厚さではケース成形時のヒートシール製に影響し、生産効率の低下の要因となる。
前記最外層1aの次にバリア層(金属箔層)2を設けることが好ましい。該バリア層2は、特に水蒸気や各種ガスが器具のケース内に浸入または透過させないための遮断機能(バリア機能)のための材料である。前記バリア層2を構成する具体的な材質としては、アルミ箔等の金属を用いることが望ましい。バリア層2としてアルミ箔を用いる場合には、その厚さは5〜30μm程度が望ましい。前記アルミ箔の厚さが5μm未満の場合ではピンホール数が多くなりバリア性に劣る。前記アルミ箔の厚さが30μmを超えるとケース形成の生産性に支障を及ぼす。そして、前記アルミ箔等の金属箔が、積層体の素材として含むケースの場合に、タブTと前記金属箔等の導電性の素材の端部断面とが接触しショートなどのトラブルを起こす要因となる。バリア層2として、非導電性素材をもちいれば、前記ショートなどのトラブルは避けられるが、バリア性の低下は避けられない。
前記バリア層2の内側に補強層(第3の基材フィルム層)1cを設けることが好ましい。該補強層1cを付加することによって電池ケース51としての強度が補強できる。特に突起物による電池ケース51の損傷に対しての補強が望まれる。補強層1cとしてはポリエチレンテレフタレートあるいはナイロン等の二軸延伸フィルムを好適に用いることができる。補強層1cの厚さは5〜30μmが望ましい。補強層1cの厚さが5μm未満であると電池50aからの耐突き刺し性に劣り、ピンホールを発生し易く、また、補強層1cの厚さが30μmを超えると成形時のシール性に影響する。
電池ケース51の積層体10の最内層は熱接着性樹脂層3とする。前記熱接着性樹脂層3の材質としては、ケースの成形において、必要な部位を接着するが、前述のように、電池のケースの形成法としては熱融着による接着法(ヒートシール法)が作業性、密封性などの点で望ましい。前記ヒートシールする場合には、熱融着性を有する樹脂から選択することになるが、タブ59,60に対しても熱融着可能な材質とする。熱接着性樹脂層3としては、積層体の内面同士のヒートシール性、前記のようにタブTの金属箔に熱融着可能な材料を用いる。具体的には、エチレンアクリル酸(EAA)、エチレンメタクリル酸(EMAA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、アイオノマー等のようなポリオレフィンの共重合体を用いることが望ましい。
熱接着性樹脂層3の形成は、あらかじめ、前記の樹脂を用いて製膜したフィルムを前記補強層1cの面にラミネーションしても良いし、前記補強層1cの面に押出機を用いて樹脂を溶融押出しすることにより層を形成してもよい。シーラントの厚さとしては10〜100μmが望ましい。熱接着性樹脂層3の厚さが10μm未満ではケース内部に収納した器具本体からの耐突き刺し性に劣り、ピンホールを発生し易い。また熱接着性樹脂層3の厚みが100μmを超えるとケース51形成における熱融着(ヒートシール)に時間を要し、生産効率が悪くなる。
前記最外層1a、バリア層2、補強層1cおよび熱接着性樹脂層3の各層間の接着は、前述のように、ポリウレタン系接着剤によるドライラミネーション、接着性樹脂を前記各層間に押出して接着させるサンドイッチラミネーション等の技法により積層することができる。
本発明のポリマー電池装置50の硬質の外容器51aは、硬質の材質、通常はプラスチック樹脂を用いて、射出成形法により薄型の形状に成形する。前記プラスチック樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリロニトリル・スチレン、ポリウレタン等が挙げられる。
以上説明したように、本発明のポリマー電池は、電池ケース51を破袋することなく通電を遮断するため、内容物が外に出ることがない。
電極の遮断に、内圧の上昇によって押し戻されるバネを使うことにより、温度による影響を受けず、動作圧力も任意に選ぶことが可能になる。
また、電極の遮断に、内圧の上昇によって押し戻されるバネを使うことにより動作圧力も任意に選ぶことが可能になる。内部構造が簡略化された為、その生産性がよい。
ポリマー電池における従来の安全対策は、ガス抜きが中心であったが、本発明のポリマー電池のケースはハイバリアーを保持でき、内部にガスが発生してもガスを漏洩させることがない。
実施例
薄型ポリマー電池装置においてそのケース及びタブ構造を下記のように設定し、試作、評価した。
ポリマー電池装置:
電池ケース:サイズ60mm×95mm(外寸)の三方シールタイプのパウチ タブ重合部:タブ(正極)に重合部を設けた。タブ巾5mmで重合の長さ5mmとした。
ケースの積層体は、次のような構造とした。
PET12/AL15/DL/ON15/酸変性ポリオレフィン※1)40
[略号 ON:2軸延伸ナイロンフィルム]
※1)アドマーNF0060(三井石油化学工業株式会社製 商品名)
タブとケース内面とはヒートシールによるポイントシールによりスポット的に熱融着した。
ケースの密封は真空包装機械を用いてシールした。得られたポリマー電池装置のケースに空気注入のゴム栓を接着して、使用する機器に装着し、通電中に空気を注入したところ通電が遮断した。
さらに、前記ポリマー電池装置を、ABS製の外容器に収納し、加圧部面積3mm2 の円盤により前記タブ重合部を押圧した。
そして、前記と同様にして使用機器に装着して通電状態において空気を注入したところ通電が遮断した。
本発明のポリマー電池装置は、そのケース内部にガスが発生した場合に、ケースを破壊することなく通電を遮断することができるため内容物が外に出ない。
内圧の上昇によって押し戻されるバネを使うことにより、通電を遮断するために、温度内容物の影響を受けず、動作圧力も任意に選ぶことが可能になる。
特に袋の強度を落とすことなく、極低圧での安定動作が可能となる。
第12の実施の形態
次に図49乃至図54により本発明の第12の実施の形態について説明する。第12の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図49は、本発明の電池装置の実施例を示し、(a)はタブを含む電池装置の外観を示す斜視図、(b)は(a)のG1 からの矢視拡大図、(c)は(b)のX1 −X1 部拡大断面図、(d)はタブが折れ曲がった状態を示す図である。図50は、本発明の電極構造の別の実施例を示し、(a)は電極を含む電器器具の外観を示す斜視図、(b)は(a)のG2 からの矢視拡大図、(c)は(b)のX2 −X2 部拡大断面図、(d)はタブが折れ曲がった状態を示す図である。図51は、本発明の構造からなる電池をケースに収納する状態を説明する図である。図52は、本発明の電極構造におけるケースとして用いることのできる袋形状の説明図である。図53は、ケースを構成する積層体の実施例を示す断面図である。図54は、ケース端部に後退を設ける方法の説明図で、(a)(b)は積層体ロールの中間積層体の部分を示す平面図、(c)(d)は電池挿入前のケースの斜視図である。
本発明にかかる電極構造は、導電性の素材からなる導電層(金属箔層)2を含む積層体からなる、一般的には柔軟なケース51に収納された電池から延長された柔軟なタブ59,60が前記積層体からなるケース51から突出した形状となっている。
前記積層体として具体的な層構成の実施例としては、図53に示すように次のような構成が挙げられ、本発明に関する以下の説明においても、この構成例を用いて説明する。
(外側)最外層/バリア層/補強層/熱接着性樹脂層 (内側)
前記構成の例におけるバリア層2として、水蒸気その他のガスの遮断のためにアルミニウム等の金属箔が用いられる。
前記積層体10の各層間はドライラミネーションあるいはサンドイッチラミネーションにより積層が可能である。
前記積層体10の詳細な構成については後述するが、このような積層体を用いて、ケース51とするが、通常ヒートシールによる製袋の方法が用いられる。
本発明の電池50aを収納するケース51の形状としては、積層体10を用いて主としてヒートシール方法によりヒートシール部83または背張部84を形成して袋状に成形または製袋されるものであればよく、具体的な形状としては、図52に示すように(a)(d)三方シール袋、(b)(e)四方シール袋、(c)(f)ピロー袋等が挙げられる。
袋としての形状は、図52に示すように種々のタイプがあり、本発明にかかる電極構造においては、いずれのタイプの袋も利用可能である。
ここで図52(d)は(a)のX3 −X3 線断面図、図52(e)は(b)のX4 −X4 線断面図、図52(f)は(c)のX5 −X5 線断面図である。
本発明の課題である、ケース断面において、タブTが折れ曲がってケースの断面に露出した導電性素材2の断面との接触を避けるために、種々の研究の結果、図49に示すように、タブ59,60が突出しているケース51の端面において、ケース51を形成している積層体の少なくとも導電層2がその端面より後退させること(以下、後退と記載する)によって前記のようなショートのトラブルは殆ど皆無となる。前記後退は、端部全域であっても良いし、また、タブ59,60の突出している部分を含む周辺領域であっても良い。
本発明の電極構造におけるこのような後退のあるケースの製造法は特に限定するものではないが、例えば、つぎのような加工法により製造することができる。前記積層体の構成例において、最外層の材料(一般に2軸延伸されたプラスチックフィルム)に印刷を施し、所定の方法により、バリア層(金属箔)をラミネートする。印刷およびバリア層のラミネートはいずれもロール状の材料により加工され巻き取られる。
次に、得られたラミネートされた巻き取りロールを、ロータリーダイカッター等を用いて、図54(a)及び(b)に示すように、所定の形状および寸法からなる打ち抜きをして切欠部(後退)82を形成してロールに巻き取る。
この際、端部全域に後退部を形成する場合には、図54(a)に示すように、前記切欠部82をロールの流れ方向とすることによって、抜き部形成工程においてロール切断の危険はない。
また、前記後退82をタブの突出部の周辺領域とするには、例えば、図54 (b)に示すように、前記切欠部82を、ロールの流れ方法と交差するように、設ければよい。
いずれの場合にも、次の工程として前記切欠部82を設けた前記ロールを繰り出して前記バリア面に補強層1c及び熱接着性樹脂層3を前面に積層する。
これにより打ち抜きにおいて形成される切欠部82の形状および寸法によって、前記後退が可能となるのである。
ちなみに、図54(a)に例示したケースは、電池ケースは、Mを折り返し線とする三方シール形式であり、また、1列取りである。また、図54(b)に例示したケースは、電池ケースは、ピロータイプであり、断裁線BC3とBC4とによる列およびBC5とBC6とによる列との2列取りである。
得られた積層体の層の状態等は、例えば、図49(b)又は図50(b)に示すように、最外層とバリア層の無い領域が形成されており、電器器具のケースとなったときに、タブ59,60の突出部の端部において後退しており、本発明の電極構造を完成するものである。
前記切欠部82の形状によって、ケース51として成形した時にケースの端部全域に後退を形成することもできるし、また、端部から突出したタブ59,60を含む部分的な領域の後退としてもよい。
このようにして前記タブ59,60と前記積層体10に含まれる導電層2とが接触することによるショートのおそれのない構造としたものである。
すなわち、図49(d)又は図50(d)に示すように、電器器具の使用において、タブ59,60が折れ曲がっても、後退したバリア層2の導電性素材の断面に接触することは皆無に等しい。
次に本発明の電極構造において用いられる素材及びケースの積層体構成などについて説明する。
本発明に係る電極構造のタブ59,60は、銅、アルミニウム等の金属箔を用いることが多く、前述のように柔軟で折れ曲がり易いものである。一方、ポリマー電池装置50のケース51は、導電性素材を含む柔軟な積層体からなっている。
本発明の電池50aを収納するケース51は、外部からの水蒸気、腐食性ガス等を遮断し、また、電池50aが輸送中や使用時に受ける突き刺し、摩擦等により損傷しないような材質とするために、各種素材をラミネートした積層体10とする。
前記積層体として具体的な層構成の実施例としては、図53に示すように次のような構成とすることができる。
(外側)最外層/バリア層/補強層/熱接着性樹脂層(内側)
そして、前記の各層間はドライラミネーションあるいはサンドイッチラミネーションにより積層が可能である。
上記層構成の総厚みとしては50〜400μmが好ましい。その総厚みが50μm未満の場合には水蒸気バリア性およびフィルム強度に劣り、電解液へ水分が入り込む危険性がある。上記層構成の総厚みが400μmを超えると、ヒートシール適性が低下しケースとしての重量が増加し、器具の軽量化に逆行する。また、水蒸気やガス遮断性等の点からも、400μmを超えた厚さの効果は期待できない。
前記例における積層材料を構成する各層はそれぞれの物性により選択される。具体的な積層材料として、次のような構成例とすることができる。
(外側) PET/AL/PET/(またはNy)/EMAA (内側)
〔略号 PET:ポリエチレンテレフタレート、AL:アルミニウム(箔)、Ny:ナイロン、EMAA:エチレンメタクリル酸共重合体〕
前記最外層(第1の基材フィルム層)1aは、ケースの表面層となるため、絶縁性を有すること、そして表面が平滑であり、耐薬品性をはじめ、耐摩擦性があり、引っ張りや突き刺し等に対する強度を有するもので器具のケース外部から受ける種々の物理的、化学的破損または分解から器具を保護する機能が求められる。最外層1aとしての具体的な材質は、各種樹脂好ましくはPETから製膜される二軸延伸フィルムが望ましい。最外層1aの厚みは5〜30μmが好ましい。最外層の厚みが5μm未満では外部からの突き刺しに対する抵抗する強度が劣り、また、ピンホールの発生の危険性が大きい。最外層1aが30μmを超える厚さではケース成形時のヒートシール性に影響し、生産効率の低下の要因となる。
前記最外層の次にバリア層(金属箔層)2を設けることが好ましい。該バリア層2は、特に水蒸気や各種ガスが器具のケース内に浸入または透過させないための遮断機能(バリア機能)のための材料である。前記バリア層2を構成する具体的な材質としては、アルミ箔等の金属を用いることが望ましい。バリア層2としてアルミ箔を用いる場合には、その厚さは5〜30μm程度が望ましい。前記アルミ箔の厚さが5μm未満の場合ではピンホール数が多くなりバリア性に劣る。前記アルミ箔の厚さが30μmを超えるとケース形成の生産性に支障を及ぼす。そして、前記アルミ箔等の金属箔が、積層体10の素材として含むケースの場合に、タブ59,60と前記金属箔等の導電性の素材の端部断面とが接触しショートなどのトラブルを起こす要因となる。バリア層2として、非導電性素材をもちいれば、前記ショートなどのトラブルは避けられるが、バリア性の低下は避けられない。
前記バリア層の内側に補強層(第3の基材フイルム層)1cを設けることが好ましい。該補強層1cを付加することによってケース51としての強度が補強できる。特に突起物による器具のケースの損傷に対しての補強が望まれる。補強層としてはポリエチレンテレフタレートあるいはナイロン等の二軸延伸フィルムを好適に用いることができる。補強層1cの厚さは5〜30μmが望ましい。補強層1cの厚さが5μm未満であると電池50aからの耐突き刺し性に劣り、ピンホールを発生し易く、また、補強層1cの厚さが30μmを超えると成形時のシール性に影響する。
ケースの積層体10の最内層は熱接着性樹脂層3とする。前記熱接着性樹脂層3としては、ケースの成形において、必要な部位を接着するが、前述のように、器具のケースの形成法としては熱融着による接着法(ヒートシール法)が作業性、密封性などの点で望ましい。前記ヒートシールする場合には、熱融着性を有する樹脂から選択することになるが、タブに対しても熱融着可能な材質とする。熱接着性樹脂層3としては、積層体の内面同士、すなわち、熱接着性樹脂層3同士のヒートシール性、前記のようにタブ59,60の金属箔に熱融着可能な材料を用いる。具体的には、エチレンアクリル酸(EAA)、エチレンメタクリル酸(EMAA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、アイオノマー等を用いることができる。
熱接着性樹脂層3の形成は、あらかじめ、前記の樹脂を用いて製膜したフィルムを前記補強層1cの面にラミネーションしても良いし、前記補強層1cの面に押出機を用いて樹脂を溶融押出しすることにより層を形成してもよい。
熱接着性樹脂層3の厚さとしては10〜100μmが望ましい。熱接着性樹脂層3の厚さが10μm未満ではケース内部に収納した器具本体からの耐突き刺し性に劣り、ピンホールを発生し易い。また、熱接着性樹脂層3の厚みが100μmを超えるとケース形成における熱融着(ヒートシール)に時間を要し、生産効率が悪くなる。
前記最外層1a、バリア層2、補強層1cおよび熱接着性樹脂層4の各層間の接着は、前述のように、ポリウレタン系接着剤によるドライラミネーション、接着性樹脂を前記各層間に押出して接着剤させるサンドイッチラミネーション等の技法により積層することができる。
実施例
電器器具として薄型電池において本発明による電極構造を作製した。
タブ:アルミニウム箔50μm
ケース:袋形状はピロータイプ
材質:以下の積層体とした。
最外層:2軸延伸ポリエステルフィルム12μm
バリア層:アルミニウム箔12μm
補強層:2軸延伸ナイロンフィルム20μm
熱接着性樹脂層:エチレンアクリル酸メチル(EMA)60μm
但し、最外層/バリア層、バリア層/補強層は、2液硬化型接着剤を用いてドライラミネーション法により積層した。
後退の形状:(1)全域 端部からの後退2mm
(2)部分 端部からの後退3mm
タブの巾 正極、負極ともに7mm、後退の巾は各10mmとした。
<結果>
得られた電極構造ののケース外部にあるタブを、折り曲げてみたが、電池ケースの断面に露出した導電性素材に接触するおそれは、全く無かった。
本発明の電極構造とすることにより、ケースの導電性素材とタブとが接触する恐れがなくなった。多くの器具のタブに応用できる電極構造とすることが可能となった。
第13の実施の形態
次に図55乃至図57により本発明の第13の実施の形態について説明する。第13の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図55は、本発明の電池装置の実施例を示し、(a)は電池装置の外観を示す斜視図、(b)は(a)のG1 からの拡大図、(c)は(b)のX1 −X1 部拡大断面図である。図56は、本発明の電池をケースに収納する状態を説明する図である。図57は、本発明におけるタブへの絶縁皮膜層の塗布部位を示す斜視図である。
本発明にかかる電池装置50は、導電性の素材からなる導電層2を含む積層体フィルム10(図53参照)からなる、一般的には柔軟なケースに収納された電池50aから延長された柔軟なタブ59,60が積層体からなるケース51のヒートシール部94から突出した形状となっており、前記タブ59,60と前記積層体10に含まれる導電層2とが接触し、ショートするおそれのない構造としたものである。
本発明に係る電極構造のタブ59,60は、銅等の金属箔を用いることが多く、柔軟で折れ曲がりやすいものである。一方、電池装置50のケース51は、導電性素材を含む柔軟な積層体からなっており、前記タブ59,60がケース51の外部に延長されている場合、従来の電池装置50では、ケース51断面とタブ59,60とが極めて近接した位置関係となる。タブ59,60が折れ曲がったりすると、積層体10の導電性素材の露出した断面において接触する恐れがある。このような接触があると、電池装置50が正常に機能しないばかりか、故障の原因となることがある。また、電池装置50が電池等の場合、放電となり、蓄電量の減少または、完全に放電してしまって電池の機能がなくなることがある。
本発明者らは前記課題に対して鋭意研究の結果、図55に示すように、電池装置50における電極構造において、タブ59,60に接触領域93を残して絶縁皮膜部92を設けることにより本発明に至ったものである。より具体的には、図57に示す様に前記タブ59,60の表面に絶縁皮膜部92をパターン状に設けることにより解決することを見い出した。詳細は後述するが、前記絶縁皮膜部92を形成する材質としては、酸変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とするホットメルト型樹脂あるいはエポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、反応型アクリル系樹脂、ゴム系樹脂が好適に用いられる。
従来の積層体構造からなるケースの材質と電極構造におけるショートのトラブルの発生は、前述のようにケースを構成する積層体のなかの導電性素材の端面とタブとが極めて接近した位置にあり、タブが柔軟で折れ曲がり易いためにおこる。本発明においては、前記タブがケース端面から露出する境界を含む所定の面積に絶縁皮膜をパターンコート状に設けることにより、前記ショートのトラブルの発生を阻止し得ることを見いだした。
前記絶縁皮膜92としては、形成された皮膜として絶縁抵抗値が1013Ω以上であることが望ましい。
このような条件に適合する皮膜を形成する材質として、種々のコート剤を検討したところ、具体的には、酸変性ポリオレフィンを主成分とするホットメルト型コート剤あるいは、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、反応型アクリル系樹脂、ゴム系樹脂等からなるコート剤が好適に使用可能である。
前記酸変性ポリオレフィン系ホットメルト型コート剤としては、具体的にはエチレンアクリル酸(EAA)、エチレンメタクリル酸(EMAA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、アイオノマー等を用いることができる。
本発明に係る電極構造において、酸変性ポリオレフィン系ホットメルト型コート剤からなる絶縁皮膜材をタブに塗布する方法は、ノズル、ローラー、スロット、スプレー、メルトプロウン、ホィール、スクリーン法等を用いることができる。本発明の電極構造に用いるタブへの絶縁皮膜は、電池50aに接合した状態にしてから形成してもよいし、タブ形状に裁断または打ち抜きする前の状態において塗布してもよい。絶縁皮膜の形成は、例えば、ケースに収納する前の電池50aの状態において、タブ59,60にホットメルトアプリケーターを用いて、タブ59,60の所定の位置に、前記ホットメルト型酸変性ポリオレフィン樹脂を塗布することができる。
また、前記、裁断前または打ち抜き前のタブ59,60への塗布は、タブ原反が巻取状であれば、グラビアコート法やロールコート法等により、所定の位置に塗布し、後工程において、裁断、または、打ち抜きを行って所定の寸法にしてから器具主部Cと接合してもよい。
絶縁皮膜部92を設ける部位としては、ケース51の端部からタブ59,60が外部に露出する部分を境界として、ケース51の端部の内外にまたがった領域に設ける。図57に示すMが前記境界とすれば、Mの前後にわたる巾に塗布する。塗布巾は、少なくともケース51の積層体フィルム10の厚み以上とし、タブ59,60が折れ曲がってもショートしない程度であればよい。
また、前記絶縁皮膜部92は、前記タブ59,60の両面に設けるものとする。さらに、必要があれば、図57(b)に示すように前記表裏間の側面にも、設けることができる。
電池50aをケース51内に挿入し、前記タブ59,60がタブ表面に形成した絶縁皮膜部92部分からケース1の外に突出する位置、図57(a)または(b)のM点においてケース51を密封する。密封方法としてはヒートシール方法が好ましく、ケース51を構成する積層体10の最内面のシーラント層3が、タブ59,60の前記絶縁皮膜部92および前記絶縁皮膜の非形成面のいずれの部位にも接着し得るものが好ましい。
本発明の電極構造に係るタブ59,60へパターンコートする絶縁皮膜92として、前記酸変性ポリオレフィン系ホットメルト型コート剤の他に、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、反応型アクリル系樹脂、ゴム系樹脂からなるコート剤であってもよい。
前記エポキシ系樹脂以下の成分からなるコート剤をタブ59,60に塗布する方法としては、タブ材料を断裁する前の長尺の状態において、グラビア、グラビアオフセット、凸版、オフセット、シルクスクリーン等の印刷技法によるパターンコートにより可能である。
また、これらのコート剤の塗布位置または面積に関しては、前記酸変性ポリオレフィン系ホットメルト型コート剤の場合と同じである。
実施例
<実施例1>
*器具:薄膜電池装置
*器具のケース:ピロータイプのパウチ
*パウチを形成する材料(積層体)の層構成
ex) PET/AL/ON/LLDPE
*タブの材質:アルミ箔 50μm
*タブに設ける絶縁皮膜部の材質
タブの表裏面に酸変性ポリオレフィン プリマコール(ダウケミカル日本株式会社性 商品名)をホットメルトアプリケーターを用い、30μmの厚さに塗布した。
*塗布パターン:ケース端面から露出するタブの前記露出開始部を境界として、露出部8mm、ケース内に8mmの計16mmの巾に、タブの表裏にコートした。*絶縁被覆層のコート方法:器具主部にタブを接合後、ホットメルトアプリケーターを用いてコートした。
<結果>
以上の条件によって得られた器具のケース端部から露出した部分のタブを強制的に折り曲げして、ケース端部の露出した導電性素材層と接触を試みたがショートの現象は再現せず、本実施例による絶縁皮膜部が確実に機能していることが判明した。
ちなみに、絶縁皮膜部を形成しない他は、実施例と同じ条件として作成したものは、折り曲げによりショート現象が起こった。
本発明の電極構造とすることにより、ケースの導電性素材とタブとが接触する恐れがなくなった。多くの器具のタブに応用できる電極構造とすることが可能となった。
第14の実施の形態
次に図58乃至図60により本発明の第14の実施の形態について説明する。第14の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本発明にかかるポリマー電池装置について、図等を用いて詳細に説明するが、本発明は、その発明の範囲内において、適宜変更することができる。
図58は、本発明の電池装置の実施例を示し、(a)は電池装置の外観を示す斜視図、(b)は(a)のG1 からの矢視拡大図、(c)は(b)のX1 −X1 部拡大断面図であり、図59は、本発明の電池装置をケースに収納する状態を説明する図である。
図60は、本発明におけるタブへの絶縁皮膜シートの接着位置を示す図である。
本発明に係る電池装置50は、図58(a)、(b)及び(c)に示すように導電性の素材からなる導電層12を含む積層体フィルム10(図53参照)からなる一般的には柔軟なケース51に収納された電池50aから延長された柔軟なタブ59,60が積層体からなる前記ケース51から突出した形状の電極であって、タブ59,60のケース内挟持部からタブ59,60の外部に露出する部分に接触領域93を残して熱接着性の絶縁皮膜シート(絶縁被覆部)92を接着することにより、前記タブ59,60と前記積層体10に含まれる導電層2とが接触し、ショートするおそれのない構造としたものである。なお、ケース51は積層体フィルム10をヒートシールしてヒートシール部94および背張部95を形成することにより得られる。
本発明に係る電極構造のタブ59,60は、銅等の金属箔を用いることが多く、柔軟で折れ曲がりやすいものである。一方、ケース51は、金属箔等の素材からなる導電層2を含む柔軟な積層体10からなっており、前記タブ59,60がケース51の外部に延長されている場合、従来の器具では、ケース51を構成する積層体10の導電層2とタブ59,60とが極めて近接した位置関係となる。前記タブ59,60が折れ曲がったりすると、積層体10の導電層2が露出した断面部においてタブ59,60と接触する恐れがある。このような接触があると、電池装置50が正常に機能しないばかりか故障の原因となることがある。また、器具が電池等の場合、放電となり、蓄電量の減少または、完全に放電してしまって電池の機能がなくなることがある。
本発明者らは、前記課題に対して鋭意研究の結果、図58に示すように、電気器具における電極構造において、タブ59,60がケース51の外部に露出するケース端部の部分付近に絶縁皮膜シート92を被覆し、接着することにより、前述のような接触を防止することが出来ることを見いだし本発明に至ったものである。
本発明にかかる電極構造に用いられるタブ59,60は、銅、アルミニウム、錫、金、銀等からなる箔または前記金属の合金を箔状にしたもの等であり、柔軟である。
次に、前記絶縁皮膜シートについて説明する。当発明者らは、前記タブ59,60が前記ケース51の端面からケースの外へ露出する境界部を含むタブ59,60の一定面積に絶縁皮膜シート92を接着することにより本発明の課題を解決できた。前記タブ59,60の一定面積とは、タブ59,60が折れ曲がってケース端面の前記導電層2の露出断面に接触する可能性のあるタブの部分を指し、前記境界部Mからケース内およびケース外にそれぞれ5mm〜20mm程度の範囲である。その面積は、ケース1を構成する積層体10の厚さおよびタブ59,60の柔軟性等から適宜設定すればよい。図58(a)に示すようにタブ59,60の先端部分または先端部分に近接した位置には、前記絶縁皮膜シートを設けない領域を他の器具の電極との接触領域93とする。
前記接触領域93の形状は、図示はしないが、前記のような短冊型でなく、絶縁皮膜シート92をタブ59,60の全域を被覆する大きさとし、被覆して、タブ59,60の先端部になる部分に、予め打抜き等により丸穴を設けて、該丸穴部を接触域とすることもできる。
本発明の電極構造に係る接着性絶縁皮膜シートについて説明する。
本発明の電極構造にかかる接着絶縁皮膜シート92は、タブ59,60の材質およびケース51の最内層3の樹脂とヒートシールが可能であるものとする。ケース51の端部において、タブ59,60を覆うように接着性絶縁皮膜シート92を巻き付けヒートシールする際、前記接着性絶縁皮膜シート92は、タブ59,60に接着し、また、ケース51の最内層4の樹脂ともヒートシールが可能であって、電池50aとして密封性のより優れた構造とすることができた。前記条件を充足する絶縁皮膜シート92としては、酸変性ポリオレフィン樹脂からなるものが好適に利用できる。酸変性ポリオレフィン樹脂とは、エチレンアクリル酸 (EAA)、エチレンメタクリル酸(EMAA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、アイオノマー等である。
絶縁皮膜シート92をタブ59,60に接着する方法としては、電池50aに接続されたタブ59,60の場合には、予め製膜したシート92を所定の面積に断裁し、図60(a)に示すようにタブ59,60表裏両面に熱圧により接着させる。その際、その接着位置は、電極構造として、タブ59,60がケース端部から露出する境界部Mを含むようにする。
次いで、電池50aをケース51内に収納し、前記タブ59,60部を含む開放辺をヒートシールすることにより、タブ59,60を挟持した状態に密封シールされる。
前記タブ59,60への絶縁皮膜シート92の接着は、図60(b)または図60(c)に示すように、タブ59,60の側面までも被覆したり、またタブ59,60の巾以上のシートとしてタブ側面を被覆してもよい。ここで図60(e)は図60(a)のX2 −X2 線断面図、図60(f)は図60(b)のX3 −X3 断面図、図60(g)は図60(c)のX4 −X4 断面図である。
タブ59,60の金属箔等が断裁される前の状態の巻き取り状態において、絶縁皮膜シート92を連続してテープ状に接着し、所定サイズに断裁することによって、図60(a)のようなタブとして、電池に接続する方法も可能である。
仮着しておき、電池50aをケース51内に挿入後、開口部を加熱加圧することにより、電池50aをケース51内に密封することができる。
前述のように、絶縁皮膜シート92の材質を、金属箔等からなるタブ59,60への接着性がよく、また、ポリエチレン等の耐水性、防湿性に優れるポリオレフィンへのヒートシール性のよいことから、酸変性ポリオレフィンとした。この結果、従来、金属箔等への熱接着性のためだけに、ケース51の最内面層3を酸変性ポリオレフィン樹脂層としていたが、本発明の場合、前記絶縁皮膜シート92のみを酸変性ポリオレフィン樹脂とすることによって、タブ59,60との接着、前記絶縁皮膜シート92とケース最内層3との接着が確実となり、酸変性ポリオレフィンからなる端面は、タブ59,60がケース端面から露出する部分に接着した部分だけとなる。従って、端面の殆どの部分はポリオレフィン樹脂からなるシーラント層となり、防水、防湿性は格段に向上し、電気器具が長期にわたる性能保持に寄与することになった。
実施例
器具:電池装置
器具のケースの形状:ピロータイプ
ケースの材質構成PET12/AL40/ONy25/CPP70
接着性絶縁皮膜のシートの材質:EMAA30μm
タブの材質:銅箔50μm
アルミ箔50μm
<結果>
以上の条件によって得られた器具のケース端部から露出した部分のタブを強制的に折り曲げして、ケース端部の露出した導電性素材層と接触を試みたがショートの現象は再現せず、本実施例による絶縁皮膜シートが確実に機能していることが判明した。
ちなみに、絶縁皮膜シートを接着しない他は、実施例と同じ条件として作成したものは、折り曲げによるショート現象が起こった。
本発明の電極構造とすることにより、ケースを構成する積層体のなかの導電層断面にタブが接触する恐れがなくなった。多くの器具のタブに応用できる電極構造とすることが可能となった。
絶縁皮膜シートの材質を酸変性ポリオレフィン樹脂とすることによって、ケースの最内面層にポリオレフィン樹脂を利用できることになり、その結果、電気器具のケースとして、防湿性、防水性が向上し、ケース内への水分の浸入がなく、電気器具の性能の低下を防止することができるようになった。
第15の実施の形態
次に図61乃至図65により本発明の第15の実施の形態について説明する。第15の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本発明に係る電池装置は、導電性の素材を含む積層体からなる、一般的には柔軟なケースに収納された電池から延長されたタブと前記積層体に含まれる導電性素材とが接触し、ショートするおそれのない構造としたものである。
図61は、本発明の電池装置の実施例を示す、(a)は電池装置の概観を示す斜視図、(b)はタブを具備した電池装置とそれを収納するケース、(c)はケースの展開図である。図62(a)は図61(a)のX1 −X1 断面図、(b)は図61(a)のX2 −X2 部断面図である。図63は、図62のY部の拡大図である。図64は、本発明におけるケースの各種の形式を示す図である。ここで図64(d)は(a)のX2 −X2 線断面図、図64(e)は(b)のX3 −X3 線断面図、図64(f)は(c)のX4 −X4 線断面図である。
本発明に係る電池装置は、図61に示すように、所定の位置に切欠部96を設けたケース51内に電池50aを収納して密着シールされた電極構造であり、前記切欠部96にタブ59,60が露出した接触域を形成するものであり、以下図等により詳細に説明するが、本発明は、その発明の範囲内において、適宜変更することができる。
本発明に係る電極構造において用いられるケース51は、各種素材をラミネートなどの方法により貼りあわせた積層体10を用いることが多く、特に器具本体Dを加圧、突き刺し、摩擦等から守り、かつ、水蒸気その他の腐食性ガスによる化学変化から器具を保護する目的で、前記積層体10に導電性の素材を含むことがある。
本発明のケース51の形状としては、図53に示す積層体10を用いて主としてヒートシール方法によりヒートシール部94および背張部95を形成して袋状に成形または製袋されるものであればよく、具体的な形状としては、図52に示すように三方シール袋(a)(d)、四方シール袋(b)(e)またはピロー袋(c)(f)等が挙げられる。以下の説明においては、ピロー袋により例示したが、前記三方シール袋、四方シール袋を用いてもよい。
本発明の電池装置50は、タブ59,60を含めた大きさのケース51の開口部から電池50aを挿入して収納し、前記開口部をヒートシールして密封するものとし、電池50aのケース51のうち、収納した器具のタブ59,60に重合する部分に、所定の大きさの切欠部96を設けておくことが特徴である。前記切欠部96を設ける位置は、最終的にケース51を密封したときに、タブ59,60の接触領域とする部位とする。切欠部62は2ケ所としてタブ59,60の片面に正極、負極2ケ所とするか、また、図61(b)(c)に示す様に4ケ所の切欠部62を設けて、タブ59,60の表裏両面に4ケ所の接触域を形成してもよい。電池50aを収納し、タブ59,60を含む開口部を密着シールすることによって、電池装置50として完成する。密着シールにおいて、ケース51内の空気を減圧するか排除した状態においてシールすることにより、電池50aとケース51とが密着し、電池装置50としての使用性がよくなる。また、前述のようにケース51を構成する積層体10のシーラント層3の材質を酸変性ポリオレフィンとすることによって、タブ59,60の表面にも接着する。その結果、前記接触域におけるケースの端面からの水蒸気その他のガスのケース51内への進入もなく、電池50aが長期にわたって良好な状態に保たれる。
ケース51の所定の位置に切欠部96を設ける方法としては、ケース51の積層体10をケースに成形する前のフラットな状態において行うのが好ましく、ダイセット等の打ち抜き装置により、所定の位置および所定の数を打ち抜くことにより切欠部を形成することができる。本発明に係る電池装置50のケース51の成形は、製袋機械を用いて成形し、別工程において電池50aを収納し、所定の密封シールをするか、成形、電池50aを収容、密封シール迄を行う自動包装方式のいずれかにより行われるが、両方ともに、ケース51を構成する積層体10は巻き取りとして供給される。前記切欠部96を設ける位置は、ケース51の印刷の際に見当合わせマーク(アイマーク)を印刷しておき、該アイマークを光電管により識別して、正確な位置において打ち抜くために、前記積層体10の巻き取りのテンションコントロール等により位置調整をする。
本発明に係る電極構造において用いるケース51を構成する積層体10のシーラント層3に酸変性ポリオレフィン樹脂を用いることにより、ケース51の内面同士の熱融着(ヒートシール)が確実であり、また、タブ59,60の表面にも接着するため、電極部におけるタブ59,60の固定が可能となり、従来のように、タブ59,60の折れ曲がりがなく、ケース51の端部に露出した導電層断面にタブ59,60が接触するおそれはなくなった。
本発明による電池装置50は、図63に示す様にタブ59,60の露出部が形成され、相手側電極との接触領域5となるが、その他の部位は、ケース51の積層体10とヒートシールにより融着しているので、金属箔単体と比較して、剛性のある状態となっている。その結果、タブ59,60が折れ曲がることはなく、本発明の課題である積層体10の導電層2の断面にタブ59,60が接触する恐れはなくなった。
実施例
厚さ300μmの銅箔をタブとした薄膜電池装置を、ケースに収納し密着シールして本発明の電極構造とした。その際の条件は次の通りであった。
薄膜電池:電池主部のサイズ 50mm×100mm×厚さ2mm
タブは、巾10mm、長さ20mm、厚さ20μm 主部の側面から2極延長。
ケース :材質構成は次の通り。
(外側)PET12/AL40/ONy25/EAA70(電池側)
形式はピロー袋とし、巾75mm、長さ内寸として130mm、上下及び背貼りの各シール巾はいずれも7mmとした。
切欠部 :袋を形成する前に、2極のタブの表裏に接触域を形成するように、ケースの所定の位置4ケ所に設けた。
収納とシール:前記ケース内に薄膜電池を収納し、タブを含む開口部を210℃に加熱した熱板により、2秒間加圧して、密封シールするとともに、接触域を除くタブ表面と重合したケース内面とを熱融着した。
結果、得られた薄膜電池の電極部分を、強制的に折り曲げたが、ケース端部に露出したアルミ断面とタブとを接触させることができなかった。すなわち、接触によるショートのない電極構造であった。
本発明の電極構造とすることにより、ケースの導電性素材とタブとが接触する恐れがなくなった。加えて、タブがその接触域を除いてケースを構成する積層体により被覆かつ接着した状態となるため、剛性が向上しその使用時に安定した電極となった。
第16の実施の形態
次に本発明の第16の実施の形態について、図65乃至図69により説明する。第16の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図65は、本発明に係る電池装置の実施例を示し、(a)は電池装置の外観を示す斜視図、(b)は(a)のG1 からのからの矢視拡大図、(c)は(b)のX1 −X1 部拡大断面図である。図66は、電気器具をケースに収納する状態を説明し、(a)は開口状態のケースと器具本体の斜視図、(b)は(a)のX2 −X2 部断面図である。図67は、本発明におけるケース端部被覆の実施例を示す。図68は、本発明におけるケースの各種の形式を示す。
図65(a)、(b)及び(c)に示すように、導電性の素材からなる導電層2を含む積層体フィルム10(図53)からなる一般的には柔軟なケース51に電池50aが収納され、電池50aから延長された柔軟なタブ59,60が積層体からなる前記ケース51から突出している。タブ59,60のケース51の突出部端面を被覆材102により被覆することにより、前記タブ59,60と前記積層体10に含まれる導電層2とが接触し、ショートするおそれのない構造となっている。
本発明に係る電極構造のタブ59,60は、銅等の金属箔を用いることが多く、柔軟で折れ曲がりやすいものである。一方、器具のケース51は、金属箔等の素材からなる導電層2を含む柔軟な積層体フィルム10をヒートシールしてヒートシール部94および背張部95を形成することにより形成され、タブ59,60がケース51の外部に延長されている場合、従来の器具では、ケース51を構成する積層体10の導電層2とタブ59,60とが極めて近接した位置関係となる。前記タブ59,60が折れ曲がったりすると、積層体10の導電層2が露出した断面部においてタブ59,60と接触する恐れがある。このような接触があると、電池装置50が正常に機能しないばかりか故障の原因となることがある。また、電池装置50が放電したり蓄電量の減少または、完全に放電してしまって電池の機能がなくなることがある。
本発明者らは、前記課題に対して鋭意研究の結果、図65に示すように、電池装置50において、タブ59,60がケース51の外部に露出するケース51端部を被覆材102により被覆することにより、前述のような接触によるトラブルを防止することが出来ることを見いだし本発明に至ったものである。
本発明の電池50のケース51の形状とそれを形成する積層体およびその各素材について説明する。
本発明の電池50のケース51の形状として、積層体10を用いて主としてヒートシール方法により袋状に成形または製袋されるものであればよい。
次にケース51の開放部98の端部断裁面を絶縁性を有する被覆材102について説明する。
被覆の位置は、最終的に電池50aをケース51内に収納して、前記タブ59,60がケース51から突出する部位に位置するケース51端部であって、突出するタブ59,60の両側のケース端部を被覆する。被覆材102の巾は、図67に示すように、タブ59,60の巾に近似した巾でも良いし、図68に示すように、2枚のタブ59,60に跨がる広巾状に被覆してもよい。
前記被覆材102としては、少なくともその表面材質は絶縁性を有する材質とし、その裏面材質は、ケースの表裏面に接着可能であって、長期にわたり、剥離や破損のない材質とする。前記ケース51の表裏への接着方法は、接着剤を塗布して接着してもよいし、ヒートシール等の熱融着による接着であってもよいが、ケース最外層1aは、前述のように、例えばポリエチレンテレフタレートなどからなる2軸延伸フィルムのような、ヒートシール性が望めない材質とすることが多く、前記被覆材102を熱融着するには、ケース表面に、熱融着可能な層を設ける等の対策が必要となる。本発明の前記被覆材102としては、絶縁性を有する基材に粘着剤加工をしたテープ(以下、粘着テープと記載する)を用いることが好ましい。
被覆材102が積層体からなる粘着テープの場合、その基材層102aは、絶縁性を有し、耐屈曲性のよい材質が望まれ、具体的には前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをはじめ、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、テフロン等からなるフィルムが挙げられる。これらのフィルムも1軸または2軸延伸されたものがより好ましい(図69)。
また、前記粘着テープの粘着層102bをなす粘着剤としては、ゴム系、合成ゴム系、シリコンゴム等の中から、ケースの表裏材質への接着性のよいタイプを前提すればよい。また、粘着面の反対側にはシリコン等の溌水処理を施してもよい。
被覆材102をケース開放部98の端部断面を含めての被覆は、ケース51として、袋状に成形(製袋)し、開放部98が開いた状態において被覆してもよいし、ケース51を成形する前のフラットな状態のケース51の積層体フィルム10の所定の端部に被覆してから成形してもよい。
被覆材102は、少なくとも、ケース51端部から突出しているタブ59,60の巾よりも広いことが必要であり、前述のように、タブ59,60の2枚を含む広い巾の被覆とすることにより、前記接触の機会は減少するのでより望ましい。
また、図66(b)に示す被覆材102のシール部内側の長さn1 及び表面の長さn2 は、該被覆材102が剥離しない程度であればよく、n1 は基本的にタブ59,60と完全に接着しなくとも良い。またn1 はヒートシール部94より短いことが必須である。
実施例
電気器具:薄膜電池装置
寸法:50mm×100mm 厚さ3.5mm
ケース材質:PET12/AL40/ONy25/EAA70
タブ:厚さ 30μmの銅箔×14mm 長さ45mm 器具主部の側面から2極延長
被覆材:ポリエチレンテレフタレート(25μm厚さ)に、ウレタン系の粘着材を20mm厚さに塗布したシート
本発明により、ケースの導電性素材とタブとが接触する恐れがなくなった。その結果、多くの器具のタブに応用できる電極構造とすることができた。
第17の実施の形態
次に図70および図71により本発明の第17の実施の形態について説明する。図70および図71に示すように、一枚の粘着シート112を折曲線117で2つ折りにして、タブ59,60を挟み被覆する。その粘着シート112は、図71(a)に示すように、折曲線117を中心線とした2枚折りタイプであり、最終的に電極の接触域となる位置に切欠部113を形成しておく。図70(b)に示すように、該粘着シート112によりタブ59,60を挟みタブ59,60の存在しない部位は粘着剤同士を確実に接着しておく。ついで、電池50aをケース51に収納し、開放辺を密着シールしてシール部94を形成することによって、図70(a)に示すような電池50が得られる。
前記粘着シート112は、図71(b)に示すように基材層112aと粘着層112bから構成されるものである。前記基材層112aとしては、絶縁性を有し、粘着加工適性のよいものとするが、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン等の樹脂を製膜した延伸または未延伸のフィルム等である。
前述のように、本発明の電極構造においては、粘着シートを挟持してケース51の開放辺をヒートシールするが、前記粘着シート112の基材層112aとケース積層体10のシーラント層3とが熱融着することが望ましい。前記粘着シート112の基材層112aとして2軸延伸ポリエチレンテレフタレート等を用いると、ケース51の積層体10のシーラント層3との熱接着が困難であるが、粘着シート112の表面層112aとケース51の積層体10におけるシーラント層3とのヒートシール性をよくするために、図71(c)示すように、粘着シート112の基材層112aのさらに表面に前記シーラント層3とのヒートシールを容易にする易接着層112cを積層してもよい。前記易接着層112cを構成する樹脂としては、前記ケース51のシーラント層3と同系の樹脂とすることで可能なる。また、本発明に用いる粘着シート112における粘着剤112bとしては、タブ59,60の表面に強固に接着し、長期にわたり剥離等のない、かつ、耐熱性に優れたものが用いられる。具体的には、SBR、水添ロジンのグリセロールエステル、石油系炭化水素等からなるもの等が利用できる。
第18の実施の形態
次に図72および図73により本発明の第18の実施の形態について説明する。第18の実施の形態は一対の積層体シート10の周縁部115を熱接着することによりケース51を作製すると共に、この周縁部115の端面のバリヤー性を向上させたものである。
内容物が酸素および水蒸気を嫌うものである場合、かかる内容物を保護するためには、その包装材として、高いバリアー性をもつ材料を積層させたものが使用される。
しかし、袋等の包装材を形成した際、シールするための接着層は、一般的には、バリアー性がないため、シール層端面から、酸素や水蒸気等が透過し、内容物に悪影響を及ぼすという問題点が生じていた。
かかる問題点を解決するためには、シール層自体にバリアー性の樹脂を使用することも考えられるが、現時点において、シール層に要求される接着機能を持ち、かつ、バリアー性機能をもつ樹脂は見出されていない。
そこで、端面からのバリアー性を向上させるための方法としては、図73(a)に示すように、シール層(熱接着樹脂層3)自体を薄くすることも考えられる。
しかし、シール層を薄くすると、シール層つまりは接着層が薄くなりすぎるため、熱劣化が生じ、シール層の強度が低下し、更には、袋自体にねぎれが生じるという問題点があった。
更には、図73(b)に示すように、一対の積層シート10、10の周縁部115を外方から押圧して、周縁部115を断面波形に成形することも考えられる。
しかし、この方法も、上記と同様に、シール強度が低下し、袋に必要な所望のシール強度が得られず、更には、袋自体にねぎれが生じるという問題点があった。
そこで、袋に必要な所望のシール強度を損なわず、かつ、端面からのバリアー性を向上させるための手段として、種々鋭意検討した結果、袋の表面および裏面を構成するバリアー層同士を接近あるいは接触させることにより、上記問題点を解決できることが見出された。
以下、具体的な構成を、図面に基づいて、詳述する。
先ず図72(a)に示すように、一対の積層シート10、10の周縁部115を上下2方向から加圧して凹部16を形成し、シール層3を排除しながら、袋の表面および裏面を構成するバリアー層2同士を接近あるいは接触させた構成をとることができる。
また、図72(b)に示すように、一対の積層シート10、10の周縁部115を上方あるいは下方のいずれか一方から加圧して凹部116を形成し、シール層3を排除しながら、袋の表面および裏面を構成するバリアー層2同士を接近あるいは接触させた構成をとってもよい。
また、図72(c)には、一対の積層シート10、10の周縁部115の端部の部位を、上下2方向から加圧して、シール層を排除しながら、袋の表面および裏面を構成するバリアー層2同士を接近あるいは接触させた構成が示されている。
更には、図72(c)の他の実施例として、一対の積層シート10、10の周縁部115の端部を、上方あるいは下方のいずれか一方向から加圧して、シール層を排除しながら、袋の表面および裏面を構成するバリアー層2同士を接近あるいは接触させた構成をとってもよい。
上記加工方法としては、熱板あるいは、超音波にて、シール層を排除しながら、袋の表面および裏面を構成するバリアー層2同士を接近あるいは接触させる方法が考えられる。
また、上記加工は、袋を形成する表面シートまたは裏面シートに上記加工を施してから袋を形成してもよいし、また、袋を成形した後に上記加工を施してもよいし、更には、袋を形成するのと同時に上記加工を施してもよい。
また、袋を構成する層構成としては、シール層3とバリア層2の少なくとも2層が含まれていればよいのであって、かかる2層の他に、強度層等他の層を複層、積層してもよい。
また、上記バリアー層2を構成する素材としては、アルミニウム箔等の金属箔、又は、アルミニウム等の金属を蒸着した樹脂のフィルムないしシート、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、MXDナイロン6等のポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂等のバリア性を有する樹脂のフィルムないしシート、更には、酸化珪素(SiO)、酸化アルミ ニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)等の無機酸化物の蒸着膜を設けた樹脂のフィルムないしシート等を使用することができる。
なお、上記の無機酸化物の蒸着膜を樹脂フィルムないしシートに形成する方法としては、例えば、プラズマ化学蒸着法等の化学気相成長法(CVD法)または真空蒸着法等の物理気相成長法(PVD)法等を挙げることができる。
上記において、無機酸化物の蒸着膜は、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜の1層またはその2層以上の複層でもよい。
更に、本発明においては、化学気相成長法と物理気相成長法とを併用し、その両者からなる多層膜を用いてもよく、その蒸着膜の形成順序は、いずれを先にしてもよい。
具体的には、例えば、酸化珪素の蒸着膜を施してから、酸化アルミニウムの蒸着膜を形成させてもよく、その逆であってもよい。
更には、上記の無機酸化物の蒸着膜の上には、上記のバリアー性樹脂を含む樹脂組成物をコーティングして、無機酸化膜の蒸着膜とバリア性樹脂によるバリア性コーティング膜との複合膜であってもよいものである。
第19の実施の形態
次に図74および図75により本発明の第19の実施の形態について説明する。電池ケース用シートの積層体シートの製造方法として、一般的に用いられるドライラミネーション法を用いると、保存等経時変化において前記ケースとして用いられた積層体の金属箔面と内層との接着面においてデラミすることがある。前記デラミの原因を分析したところ、ポリマー電池の電解液はカーボネート系の有機溶剤であるため、溶剤系の接着剤であるドライラミネーションの接着剤は長期の保存中に、電解液によって溶解することが判明した。つまり、電池の構成成分である電解液が経時的に前記ケースの樹脂層を浸透して前記接着剤の存在する接着界面に達して、前記接着剤を溶解し、積層体が、最終的に接着面においてデラミすることによる現象である。
本発明者は、電池ケース用シートの積層体の製造において、金属箔面とラミネーションする内層のラミネート面をプラズマ処理することにより、電解液によるデラミが防止され、金属面との接着法としてドライラミネーション法、または、熱ラミネート法を用いても安定した耐電解液性を有する電池ケース用シートが得られることを見出した。
前記プラズマ処理する面は、少なくとも金属箔面とラミネートされるフィルム面である。例えば、積層シート10の構成が、図74に示すように、
第1の基材フィルム(PET)1a/LMD(ドライラミネート)125/アルミニウム箔層2/第3の基材フィルム層(ON)Ic/ヒートシール層3(酸変性ポリオレフィンの押出コート)の場合には第3の基材Ic、すなわちONのラミネート面にプラズマ処理面126を設ける。
また、積層体の別の構成として、図75に示すように、第1の基材フィルム層(PET)1a/LMD125/アルミニウム箔層2/熱接着シート(熱ラミネート)126/第3の基材フィルム層(ON)1c/LMD125/追加の第3の基材フィルム層(EVOH)1d/ヒートシール層3(酸変性ポリオレフィンの押出コート)の場合には熱ラミネートに用いる熱接着シート127のアルミニウム箔2側のラミネート面にプラズマ処理面126を設ける。
図74および図75において、積層体シート10は外層122と内層123と熱接着樹脂層3とを有している。
また、プラズマ処理は、処理すべき材料であるフィルムをチャンバー内にセットし、望ましくは真空チャンバー内を真空状態にして、原料ガスとして官能基を含む溶液に希ガスを通して得られた官能基含有ガス、または、官能基を含むガスを希ガスと予め混合して得られたガスを前記チャンバー内に導入し前記フィルムの処理すべき面をプラズマ発生装置により処理する。
前記希ガスとしてAr、He、Kr、Xe、Rn等を用いることができるが中でもArが好ましい。また、前記希ガスと混合するガスあるいは溶液として、酸、ケトン、アルコール、フッ化水素、フッ炭素、フッ化ケイ素、フッ化窒素、炭化水素、酸化炭素、硫化酸素、チオール、アンモニア、ハロゲン化炭素、ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物、アミン、ジイソシアネート、アクリル酸エステルモノマー、水蒸気、窒素、水素、ハロゲン等の担体あるいはこれらを組み合わせたものを用いることができる。
また、前記真空チャンバー内におけるプラズマ処理の他、フィルムを連続的に大気圧グロー放電プラズマ処理する方法を用いてもよい。
本発明においては、生産性のよい、前記大気圧グロー放電プラズマ処理方法を用いて、フィルムのラミネート面を連続的に処理することが望ましい。
プラズマ処理は、前記原料ガスの存在下において、第1電極と第2電極との間に処理するフィルムを介在させて、前記電極間に高周波電圧を印加することで電極間にグロー放電領域が形成され前記フィルムを該グロー放電領域中を移動させることによって連続的にプラズマ処理が施される。
前記内層122のラミネート面へプラズマ処理面126を設け、金属箔2と前記プラズマ処理された内層122のラミネート面とをドライラミネートして得られる電池ケース用シート10により形成した電池においては、長期の過酷な条件における保存試験でも、電解液の浸透による接着面のデラミの発生がなかった。
本発明においては、前記積層体シートの構成において内層123の前記金属箔2面とのラミネート面にプラズマ処理を施すことを特徴とするが、その他のラミネート面には必ずしもプラズマ処理を施す必要はない。
例えば、第1基材フィルム層1aと金属箔2とのラミネートにおいて、第1基材フィルム層1aのラミネート面にはプラズマ処理を施す必要はない。電池の電解液は、ヒートシール層3、第3の基材フィルム層1c等を透過して、金属箔2面に到達し、接着面を溶解または浸食することにより、デラミを発生させるが、金属箔2の外側には透過しないためである。また、前記第3の基材フィルム層1cとヒートシール層3とをラミネートする場合にも、必ずしもそれぞれのラミネート面にプラズマ処理を施さなくとも、このラミネート面でのデラミは発生することがないことを確認した。これは、電解液が、該接着面を通過はするが、滞留して溶解または浸食することがなく、前述のように、金属箔面においてデラミを誘発する挙動を示すものと考えられる。
具体的実施例
以下、実施例の図面に基いて本発明を更に説明する。
但し、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
電池50aは、電池構成材料としてポリマー電解液として、リチウムイオン型ポリマー、および炭素材を用い、集電体57、58の端部において、タブ59、60を連結し、タブ59、60の先端部をケース51の外部に突出させた。また、タブ59、60の材質は、銅(正極)およびアルミニウム(負極)とした。
次のような積層体を作成し、電池としての性能の試験をした。構成は略号で示したが、略号の数字はそれぞれの層の厚さである(単体 μm)。
実施例1
PET12/LMD/AL15/LMD/P・T−ON15/HS50
PET:2軸延伸ポリエステルフィルム
LMD:2液硬化型ポリウレタン接着剤によるドライラミネート層
P・T:プラズマ処理
ON :2軸延伸ナイロンフィルム
HS :ヒートシール層、酸変性ポリオレフィン系樹脂*)の押出コート。
*)酸変性ポリオレフィン系樹脂 アドマー(三井石油化学工業株式会社製 商品名)
実施例2
PET12/LMD/AL15/LMD/P・T−ADF40/ON15/HS50
ADF:熱接着シートVE300(東セロ株式会社製 商品名)
AL箔とONとを熱接着シートによる熱ラミネートとし、プラズマ処理を前記接着フィルムの金属箔とのラミネート面に施したこと以外は実施例1と同条件とした。
比較例1
PET12/LMD/AL15/LMD/ON15/HS50
ONへのプラズマ処理を施さないこと以外は、実施例1と同条件とした。
比較例2
PET12/LMD/AL15/LMD/ADF40/LMD/ON15/HS50
ADFへのプラズマ処理を施さないこと以外は、実施例2と同条件とした。
<保存条件>
得られた各条件の電池ケース用シートを用いて作成した電池各10ケずつを40℃、90%RHの恒温恒湿層に入れ6ケ月後に電池の性能を確認した。
<結果>
実施例1:全数、性能低下なし
実施例2:全数、性能低下なし
比較例1:全数にデラミ発生した
比較例2:デラミ発生は3/10であった
図1〜図2に示した構成の電池ケース用シート10において表面に文字、絵などの印刷を施す場合には、最外層の第1の基材層の内面(積層面)に所謂裏刷り方式で予め印刷し、この面に次の層を積層して、電池ケース用シートを完成させることにより、表面の摩擦などで損なわれることのない印刷画像を形成することができる。
以上詳しく説明したように、本発明によれば、軽量で薄く、柔軟性があり、且つ、各種の機械的強度や耐熱性のほか、水蒸気その他のガスバリア性、耐熱繊性などの性能および加工性に優れた電池ケース用シートを生産性よく提供できる効果を奏する。金属箔面と内層とのラミネートにおいて、前記内層の金属箔面とラミネートする面にプラズマ処理を施すことによって電池を長期保存する際に見られた金属箔面の接着におけるデラミがなくなった。
また、接着性樹脂層および熱接着性樹脂層として、融点が100℃の酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いることによって、電池が高温状態に放置されても、電池ケースのシール部において剥離現象が起きることなく、従って電解液が漏れ出ることがなくなった。
第20の実施の形態
次に図76および図77により本発明の第20の実施の形態について説明する。
第3の基材フィルム層1cとして、従来、ナイロンフィルムが用いられていた。第3の基材フィルム層1cとして、ナイロンフィルムは、電池構成材料の突起部に対する突き刺し防止、また、ヒートシール層を形成する酸変性ポリオレフィン系樹脂との接着性に優れること、一般的に電池ケースを形成するためのヒートシールの際の電極端子部においてヒートシール樹脂が熱と圧力により薄くなり、電池ケース用シートの積層対の中の金属箔と接触する危険があるが、前記第3の基材フィルム1cのナイロンの存在により、前記接触の危険を防ぐ(ナイロンフィルムは薄くならない)こと等の理由から内層に基材として用いられていた。
図76および図77において、積層体シート10は外層122と、内層123と、熱接着樹脂層3とからなっている。
しかし、このような、材質構成による積層体を用いて実際に電池ケースを作成し、電池構成材料を収納した電池を恒温恒湿に長期保存すると、ケース内部に水分が侵入することがある。
その原因を詳細に検討したところ、図77に示すように、水分が前記第3の基材フィルム層1cに用いたナイロンフィルムの電池ケース51の端面からヒートシール層3の層内を通って、矢印方向に前記ナイロン層1cに侵入し、電池ケース5内部において、ヒートシール層3を透過して電池ケース51内に侵入することを確認した。
従来、第3の基材フィルム層1cとしては、6、または66ナイロンのような脂肪族系ナイロンからなるフィルムを用いていた。
前記脂肪族系ナイロンからなるフィルムは吸湿性があり、電池ケース用シート10として用いるには、より吸湿性の低いフィルム、例えばポリエステル樹脂からなる延伸フィルム等が考えられる。本発明におけるヒートシール層との接着において安定した接着強度が得られるナイロンが用いられていた。
そこで、本発明は、第3の基材フィルム層1cとしての必要条件を備え、吸湿性の少ない材質として、芳香族ナイロンが好適に利用できることを見いだした。
ただし、芳香族ナイロンのみからなる層は、層が硬くストレスクラック等の発生のおそれがあり、その対策として、芳香族ナイロン樹脂に直鎖脂肪族ナイロン樹脂をブレンドすることにより安定したものとなった。
具体的実施例
本発明を実施例により具体的に説明する。
電池構成材料としては、ポリマー電解液して、リチウムイオン型ポリマー、および炭素材を用い、集電体57、58の端部において、タブ59、60を連結し、タブ59、60の先端部をケース51の外部に突出させた。また、タブ59、60の材質は銅(正極)およびアルミニウム(負極)とした。
実施例1
PET12/LMD/AL箔15/ADF40/ON−A15/HS50
PET:2軸延伸ポリエステルフィルム
LMD:ポリウレタン系樹脂によるドライラミネーション
AL箔:アルミニウム箔
ADF:酸変性ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムを用いて熱ラミネートによる貼り合わせ
ON−A:2軸延伸ナイロンフィルム(ナイロン樹脂は芳香族系)
使用した樹脂は、ノバミッドX21(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製 商品名)
HS :酸変性ポリオレフィン樹脂の押出しコート
実施例2
PET12/LMD/Al箔15/ADF40/ON−A15/HS50
ON−B:2軸延伸ナイロンフィルム(ナイロン樹脂は芳香族系100重量部と脂肪族系10重量部とのブレンド)
第3の基材フィルム層をON−Bとした以外は、実施例1と同条件で積層体を作成した。
比較例1
PET12/LMD/AL箔15/ADF40/ON−C15/HS50
ON−C:2軸延伸ナイロンフィルム(ナイロン樹脂は脂肪族系)
第3の基材フィルム層をON−Cとした以外は、実施例1と同条件で積層体を作成した。
第3の基材フィルム層として、6ナイロン樹脂からなるフィルムであること以外は、実施例1と同じ条件とした。
<保存試験条件>
得られた電池を、実施例および比較例とも各10ケずつを40℃、90%RHの恒温恒湿層の中に入れ3ケ月に電池の性能を確認した。
<結果>
実施例1および実施例2ともに電池の性能として全数異常が無かったが、比較例1は10ケ中3ケに性能の低下が見られた。
すなわち、第3の基材フィルム層として、芳香族系ナイロンを用いるか、芳香族ナイロン樹脂西棒族ナイロン樹脂をブレンドした樹脂から製膜したフィルムを用いることにより、ケース端面からの吸湿のおそれのない材質の電池ケース用シートとすることができた。
図76に示した構成の電池ケース用シート10において、表面に文字、絵柄などの印刷を施す場合には、外層122の第1の基材フィルム層1aの内面(積層面)に所謂裏刷り方式で予め印刷し、この面に次の層を積層して、電池ケース用シートを完成することにより、表面の摩擦などで損なわれることのない印刷画像を形成することができる。
以上詳しく説明したように、本発明の電池ケース用シートとして、第1の基材層、金属箔層、第2の基材層、ヒートシール層の順に積層される少なくとも4層以上の積層体とし、前記第2基材を芳香族ナイロン樹脂、または芳香族ナイロン樹脂と脂肪族ナイロン樹脂とのブレンド樹脂から成膜されたナイロンフィルムとすることによって、軽量で薄く、柔軟性があり、かつ、各種の機械的強度や耐熱性のほか、長期保存しても電池ケース内に水分が浸入しない、水蒸気その他のガスバリア性が安定した電池ケース用シートとすることができた。
第21の実施の形態
次に図78により本発明の第21の実施の形態について説明する。
図78は積層体シート10を示す図である。積層体10において金属箔層2と内層123とを熱接着シート127を用いて熱ラミネート法で接着することを特徴としている。
実施例1
図78(a)に示す積層体シート10は、PET12/LMD/AL箔12/ADF50/ON15/HS40からなっており、この場合の数値は厚さμmを示す。
ここで、PET:2軸延伸ポリエステルフィルム(第1の基材フィルム層1a)、LMD:ドライラミネート系接着剤(接着剤125)、AL:アルミニウム (金属箔層2)、ADF:接着フィルムVE300(東ロ株式会社製 商品名)(熱接着シート127)、ON:2軸延伸ナイロンフィルム(エンブレム ユニチカ株式会社製 商品名)(第3の基材フィルム層1c)、HS:ヒートシール層 アドマーの押し出しコート(三井石油化学工業株式会社製 商品名)(熱接着樹脂層4)
熱ラミネート条件:高周波ウェルダー法により接着、PET12/LMD/AL箔12のAL箔面とONとの間にADFを挟み加圧状態において高周波を照射した。高周波条件は19KHzであった。
実施例2
図78(b)に示す積層体シート10は、PET12/LMD/AL箔12/ADF50/ON15/LMD/EVOH20/LMD/HS40からなっている。
ここで、EVOH:エバールフィルム(クラレ株式会社製 商品名)(追加の第3の基材フィルム層1d)
熱ラミネート条件:熱圧着法により接着、PET12/LMD/AL箔12のAL箔面とONとの間にADFを挟み、加圧着により接着した。熱圧着条件として160℃、1秒であった。
比較例1
図78(c)に示す積層体シート10は、PET12/LMD/AL箔12/SL15/ON15/HS40からなっている。
ここで、SL:サンドイッチラミネート層128、ミラソン(三井石油化学工業株式会社製 商品名)
ラミネート条件:PET12/LMD/AL箔12のAL箔面とONとを前記SLを接着性樹脂としてサンドイッチラミネートした。
比較例2
図78(d)に示す積層体シート10は、PET12/LMD/AL箔12/LMD/ON15/LMD/EVOH20/HS40からなっている。
ラミネート条件:PET12/LMD/AL箔12のAL箔面とONとを2液硬化型ポリウレタン接着剤を用いてドライラミネートした。
<結果>
得られたシートを用いてケースを作成し、カーボネート系の有機溶媒からなる電解液を用いる電池構成材料を収納して保存試験を実施した。
保存試験:40℃、90%の恒温恒湿層に3ケ月放置し、金属箔層と内層とのデラミを確認した。いずれも、デラミ数/10検体で表示した。
実施例1 0/10
実施例2 0/10
比較例1 10/10
比較例2 2/10
以上説明したような構成をとることにより、電解液による金属箔層2と内層122との間でデラミのおそれがなくなり、更に、上記第1、第3、場合によっては追加第3の基材フィルム1a、1c、1dによる各種の機械的強度および耐性の向上とともに、金属箔層2の両側が、第1の基材フィルム層1aと第3の基材フィルム層1cとで挟み込まれ、更に追加の第3の基材フィルム層1dがその内側に積層されて、特に、内部から突き刺し等に対する強度が向上するとともに、金属箔層を保護し、電池用シートとして更に安定し多バリア性が得られるという効果を奏する。
また電池ケース用シートに文字、絵柄などの印刷を施す場合には、最外層の第1の基材フィルム層1aの内面(積層面)に所謂裏刷り方式で予め印刷し、この面に次の層を積層して、電池ケース用シートを完成させることにより、表面の摩擦等で損なわれることのない印刷画像を形成することができる。

Claims (5)

  1. 電池と、
    電池を収納する電池ケースと、
    電池に接続され、電池ケース外方へ突出するタブと、
    を備え、
    電池ケースは積層体シートからなり、
    この積層体シートは少なくとも外側から順に配置された、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、2軸延伸ナイロンフィルムと、アルミニウム箔層と、熱接着性樹脂層とを有し、最内層がポリオレフィン系樹脂層からなり、
    タブは絶縁性被覆材により覆われており、
    電池ケースの内面と絶縁性被覆材の外面とが熱融着され、
    絶縁性被覆材は支持層と、電池ケース側の接着層とを有し、この支持層はポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはテフロンのいずれかのフィルムからなることを特徴とする電池装置。
  2. タブは電池ケースの端部において、一対の前記絶縁性被覆材により挟持され、各絶縁性被覆材は電池ケースの端面を覆うことを特徴とする請求項1記載の電池装置。
  3. 前記絶縁性被覆材は粘着テープからなることを特徴とする請求項1記載の電池装置。
  4. タブは表面層に絶縁性を有する粘着シートが部分的に貼着されていることを特徴とする請求項記載の電池装置。
  5. 内部に電池を収納する積層体シートからなり、請求項1記載の電池装置に用いられる、電池ケース用シートにおいて、
    この積層体シートは少なくとも外側から順に配置された、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、2軸延伸ナイロンフィルムと、アルミニウム箔層と、熱接着性樹脂層とを有し、最内層がポリオレフィン系樹脂層からなることを特徴とする電池ケース用シート。
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