JP5530133B2 - 時効硬化性アルミニウム合金ブレージングシート、その製造方法、およびそれを用いた熱交換器 - Google Patents

時効硬化性アルミニウム合金ブレージングシート、その製造方法、およびそれを用いた熱交換器 Download PDF

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Description

本発明は、自動車用熱交換器に使用されるアルミニウム合金ブレージングシートにおける高温圧縮空気や冷媒の通路構成材として好適に使用されるアルミニウム合金ブレージングシートおよびその製造方法に関する。
アルミニウム合金は軽量かつ高熱伝導性を備えているため、自動車用熱交換器、例えば、ラジエータ、コンデンサ、エバポレータ、ヒータ、インタークーラなどに用いられている。自動車用熱交換器は主にろう付法によって製造される。通常、ろう付はAl−Si系合金のろう材を用い、600℃程度の高温で行われる。ろう付を用いて製造するアルミニウム合金製熱交換器は、主に放熱を担うコルゲート成形したフィンと、空気や冷却水、冷媒を循環させるためのチューブとで構成される。この際、チューブが破損してしまうと、内部を循環している空気や冷却水、冷媒の漏洩が生じる。
一方、近年は自動車の軽量化に対する要求が高まっているため、熱交換器を構成する各部材の薄肉化が検討されており、かかる観点からも上述した破損の問題が生じやすくなっている。したがって、現在では、熱交換器の製品寿命向上と軽量化とを同時に達成するために、ろう付後の強度に優れたアルミニウム合金ブレージングシートが必要不可欠となっている。
従来、このアルミニウム合金ブレージングシートの心材として、3003合金の代表されるようなAl−Mn系合金が用いられてきた。しかし近年、BRICs諸国の急速な発展に伴う金属資源の需要増加などから、 「主要金属資源が二〇五〇年までに枯渇する」 との試算が独立行政法人の物質・材料研究機構によりなされた。中でも、3003合金の主要添加元素であり1%程度添加されるMnの耐用年数は40年と試算されている。この耐用年数はリサイクルを考慮に入れていないため、例えば缶ボディ材は同じ3XXX系合金を使用しているが、缶などは使用後再び缶ボディ材としてリサイクルすることが可能なので、Mn資源が少なくなってもリサイクルにより生産することが可能である。
これに対して、熱交換器には、心材に加えてろう材や犠牲陽極材がクラッドされているため、熱交換器をリサイクルしても、リサイクル材をそのままブレージングシートの心材に用いることはできない。しかも、ブレージングシートの心材においてはろう付性や耐食性などの観点からMg、Fe、Znなどの含有量が厳しく制限されるため、スクラップの再利用は難しく、Mnの添加はAl−Mn母合金に頼らざるを得ない。このような事情から、従来の3003合金に代えて、資源として潤沢なMgやSiを主要構成元素とし、Mnの添加を最小限に抑えた6XXX系合金をブレージングシートの心材に使用し、なおかつ従来技術以上の材料強度を有する熱交換器を開発することが必要とされる。
しかし、6XXX系合金として代表的な6061合金、6063合金、6022合金などをそのままブレージングシートの心材に転用することは、以下に示す理由により困難である。一つ目に、フラックスを用いたノコロックブレージングにおいては心材にMgを添加するとろう付性を低下させるため、Mgの添加量を制限しなければならない点である。二つ目に、一般的な組成の6XXX系合金は融点が低く、ろう付加熱時に心材の溶融が生じてしまう点である。三つ目に、6XXX系合金は再結晶の核生成を抑制する金属間化合物が3XXX系合金よりも少なく、結晶粒が微細になり、結晶粒界へのろう拡散が生じてしまう点である。四つ目に、6XXX系合金はろう付加熱後の強度が3XXX系合金よりも低いため、心材を適切な合金成分に限定し、しかもろう付加熱後に適切な時効処理を施さなければ従来技術以上の強度が得られない点である。
ノコロックブレージングで製造する熱交換器用のブレージングシートであり、ろう付加熱後の時効硬化を利用した提案として、既に特許文献1、2に示すような技術が知られている。しかし、これらの提案によるブレージングシートは既に述べたような問題点のいずれかが考慮されておらず、3XXX系合金を心材としたブレージングシート以上の性能は得られない。
例えば、特許文献1に示される技術は、心材のMnは0.1%以下と少量に制限されており6XXX系合金に分類されるべき成分であるが、Si添加量が0.7%以下、Cu添加量が0.08〜0.2%とされているだけであり、さらにろう付加熱後の時効硬化については自然時効による強化が記述されているだけである。既に述べたように、心材のMn添加量が少ない場合にはろう付加熱後の強度が低く、自然時効によって多少強度は増加するものの、それでは3XXX系合金を心材としたブレージングシート以上とならないのは明らかである。また、Mn、Cr、Zrの添加量を0.1%以下で許容しているものの、これらの元素による金属間化合物がろう付時の結晶粒粗大化に寄与することについては全く認識されておらず、結晶粒界へのろう拡散が生じてしまう問題に対する解決策を全く示唆し得ない。
一方、特許文献2に示されている技術は、ろう付加熱後の人工時効について記述されているが、心材のMn添加量が0.7〜1.5%であり、3XXX系合金に分類されるべき合金組成である。また、人工時効での適切な温度や時間に関する条件が記述されていない。
特表2007−500784号公報 特表2002−513085号公報
前述のようにブレージングシートの心材に6XXX系合金を用いながら、3XXX系合金を心材としたブレージングシート以上の強度やろう付性を得ることは、従来技術では困難であった。
本発明は、この問題点を解消するべく行われたものであって、心材に6XXX系合金を用いたアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう付時のろう拡散を防止して良好なろう付けを実現し、且つろう付後に適切な時効処理を施すことにより優れた強度を有するアルミニウム合金ブレージングシート、特に自動車用熱交換器の流体通路構成材として好適に使用できるアルミニウム合金ブレージングシートおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは上記課題について鋭意研究を重ねた結果、特定の合金組成であり、特定の合金組織を有するクラッド材がその目的に適合することを見出し、これに基づき本発明をなすに至った。
具体的には、請求項1の発明は、心材の片面または両面にAl−Si系ろう材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートであって、前記心材が、Si:0.2〜1.0%(質量%、以下同じ)、Fe:0.03〜0.4%、Mg:0.1〜0.5%、Cu:0.05〜1.0%の第1の元素群と、Mn:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.3%、Cr:0.05〜0.3%のうち1種以上を有する第2の元素群と、残部Alと不可避的不純物とを含み、前記第1の元素群におけるSi含有量SicとCu含有量Cucとで定まるX値:X=6×Sic+2.5×Cucが、2.0≦X≦6.0の関係を満足する組成であり、最終冷間圧延後の金属組織が、断面組織の観察において0.05μm以上1μm以下の金属間化合物を1μmあたり5個以上50個以下含むことを特徴とする、時効硬化性アルミニウム合金ブレージングシートに関するものである。
請求項2の発明は、前記心材は、Ti0.02〜0.3%及びV0.02〜0.3%の少なくとも1種を有する第3の元素群を含むことを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の時効硬化性アルミニウム合金ブレージングシートにおいて、前記心材の、前記ろう材が形成されていない面において、Zn:2.0〜6.0%、Fe:0.05〜0.4%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を含む犠牲陽極材が形成されてなることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項3に記載の時効硬化性アルミニウム合金ブレージングシートにおいて、前記犠牲陽極材は、Si1.0%以下、Mn0.3%以下、Ti0.02〜0.3%、V0.02〜0.3%のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかの請求項中に記載されたアルミニウム合金ブレージングシートを製造するための方法であって、請求項1もしくは請求項2中に記載された成分組成のアルミニウム合金心材用の素材の片面もしくは両面にAl−Si系合金ろう材を重ね合わせてこれらを加熱し、熱間圧延を行ってクラッド材とする熱間クラッド圧延工程において、圧延前の加熱温度が450℃以上550℃以下、加熱時間が2時間以上20時間以下であり、板厚が20mmに達した時点での温度を400℃以上に制御し、熱間圧延終了時の温度を300℃以上に制御することを特徴とするものである。
請求項6の発明は、複数のタンクと、これらのタンク間に架設された複数のチューブと、各チューブにろう付されたフィン材とが具備されてなる自動車用熱交換器であって、前記チューブ材として請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートを用いており、ろう付後の冷却速度が50℃/min以上であり、自動車走行中における熱交換器の最高到達温度が120℃以上200℃以下であり、自動車走行中に前記チューブ材が時効硬化を生じることにより高い強度を有することを特徴とするものである。
請求項7の発明は、複数の冷媒用タンクと、これらのタンク間に架設された複数のチューブと、各チューブにろう付されたフィン材とが具備されてなる熱交換器であって、前記チューブ材として請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材を用いており、ろう付後の冷却速度が50℃/min以上であり、ろう付後に150℃〜180℃において3時間〜20時間の人工時効処理を施すことにより前記チューブ材が高い強度を有し、自動車走行中における熱交換器の最高到達温度が120℃未満であることを特徴とするものである。
請求項8の発明は、複数のタンクと、これらのタンク間に架設された複数のチューブと、各チューブにろう付されたフィン材とが具備されてなる自動車用熱交換器であって、前記チューブ材として請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートを用いており、ろう付後の冷却速度が50℃/min以上であり、ろう付後、自動車に搭載され走行を開始するまで14日間以上の期間を有し、自動車走行中における熱交換器の最高到達温度が120℃未満であることを特徴とするものである。
本発明によって製造されるアルミニウム合金ブレージングシートは、心材に6XXX系合金を用いたものであり、資源枯渇が懸念されるMnの使用量を従来技術より大幅に減らすことができる。そしてこのブレージングシートは、ろう付後に本発明で示される時効処理を施すことにより、心材に3XXX系合金を用いたもの以上の強度を持つ。さらにこのブレージングシートは、フィン接合率、耐エロージョン性などろう付性に優れ、自動車用の熱交換器として軽量で熱伝導性に優れ、自動車用の熱交換器のチューブ材として好適に用いられるものである。
実施例における繰り返し耐圧性評価に供する試験片の概略構成図である。 実施例における高温耐圧試験装置の概略構成図である。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートおよびその製造方法の好ましい実施の態様について、詳細に説明する。
まず、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートを構成する心材、ろう材、犠牲陽極材の成分元素の添加理由および添加範囲について説明する。
[1.心材]
心材は、主として、Si、Mg、Cuを含有し、さらにMn、Zr、Crのうち1種以上を含有し、残部Alと不可避的不純物からなる。また、各元素の含有量及びそれに基づく作用効果は、以下に説明するようなものである。
Siは、Mgと反応してMgSi化合物を形成することでろう付け加熱後の時効硬化によって強度を増大させ、MnやFeとともにAl−Mn−Si系またはAl−Fe−Mn−Si系の金属間化合物を形成し、ろう付後の結晶粒粗大化に作用し、或いはアルミニウム母相中に固溶して固溶強化により強度を向上させる効果がある。Siの含有量は、0.2〜1.0%(組成の%は質量%を表す、以下同じ)の範囲であり、0.2%未満ではその効果が小さく、1.0%を超えると心材の融点が低下し、溶融が起こる可能性が高くなる。好ましくは、0.4〜0.8%である。
Feは、MnやSiとともにAl−Fe−Mn−Si系またはAl−Fe−Si系の金属間化合物を形成し、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。Feの含有量は、0.05〜0.4%であり、0.4%を超えると金属間化合物のサイズが粗大になり、ろう付時に再結晶核となるため、ろう付後の結晶粒径が微細になり、ろう拡散が生じる恐れがある。0.05%未満では高純度アルミニウム地金を使用しなければならずコスト高となる。好ましくは、0.1〜0.2%である。但し、コストを考慮しない場合、Feの含有量は少ないほど好ましい。
Cuは、固溶強化により強度を向上させ、また時効硬化を促進する効果がある。Cuの含有量は、0.1〜1.0%の範囲であり、0.1%未満ではその効果が小さく、1.0%を超えると心材の融点が低下し、溶融が起こる可能性が高くなる。好ましくは、0.3〜0.8%である。
Mgは、上述したように、Mgと反応してMgSi化合物を形成することでろう付け加熱後の時効硬化によって強度を増大させ、或いはアルミニウム母相中に固溶して固溶強化により強度を向上させる効果がある。Mgの含有量は、0.05〜0.5%であり、0.05%未満ではその効果が小さく、0.5%を超えるとろう付性が低下する。好ましくは、0.15〜0.4%である。
Mnは、SiやFeとともにAl−Mn−Si系またはAl−Fe−Mn−Si系の金属間化合物を形成し、ろう付後の結晶粒粗大化に作用し、或いはアルミニウム母相中に固溶して固溶強化により強度を向上させる。Mnの含有量は、0.05〜0.3%であり、0.05%未満ではその効果が小さく、0.3%を超えるとMnの使用が多くなってしまい、本発明の目的と合致しない。好ましくは、0.1〜0.2%である。
Zrは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Zr系の金属間化合物が析出し、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。好ましい含有量は、0.05〜0.3%であり、0.05%未満ではその効果は得られず、0.3%を超えると巨大金属間化合物を形成しやすくなり、塑性加工性を低下させる。より好ましくは、0.1〜0.2%である。
Crは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Cr系の金属間化合物が析出し、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。好ましい含有量は、0.05〜0.3%であり、0.05%未満ではその効果は得られず、0.3%を超えると巨大金属間化合物を形成しやすくなり、塑性加工性を低下させる。より好ましくは、0.1〜0.2%である。
なお、強度向上の関係から、心材は請求項4に記載のようにTi及びVの少なくとも一方を含むことができる。
Tiは、固溶強化により強度を向上させる。好ましい含有量は、0.05〜0.3%であり、0.05%未満ではその効果は得られず、0.3%を超えると巨大金属間化合物を形成しやすくなり、塑性加工性を低下させる。より好ましくは、0.1〜0.2%である。
Vは、固溶強化により強度を向上させる。好ましい含有量は、0.05〜0.3%であり、0.05%未満ではその効果は得られず、0.3%を超えると巨大金属間化合物を形成しやすくなり、塑性加工性を低下させる。より好ましくは、0.1〜0.2%である。
さらに、ろう付加熱時の心材の溶融を防ぎ、なおかつろう付加熱後の時効硬化性を確保するためには、上述のSi量(Sic)とCu量(Cuc)とは、それぞれ個別の範囲内に規制するだけではなく、これらで定まるX値:X=6×Sic+2.5×Cucが、下記の不等式(1)を満たすことが必要である。
2.0≦X≦6.0・・・(1)
この(1)式は後述する実施例でも示しているように、本発明者等の詳細かつ多数の実験により求められたものである。すなわちX値が2.0より小さい場合には、ろう付加熱後に十分な時効硬化が起こらず、強度が不足する。またX値が6.0を越える場合には、心材の融点が低いためにろう付時に心材が溶融し、ろう材が心材へ侵食してしまうことが判明している。なお、X値のより好ましい範囲は、下記の不等式(2)である。
3.0≦X≦6.0・・・(2)
[2.ろう材]
ろう材は通常使用されているAl−Si系合金ろう材を使用することができ、特に制限されるものではなく、例えば、JIS4343、4045、4047合金(Al−7〜13wt%Si)が好ましい。
[3.犠牲陽極材]
心材の両面あるいは片面には前記ろう材をクラッドするが、熱交換器の使用環境において高い耐食性が求められる場合には、心材のろう材が形成されていない面には犠牲陽極材をクラッドしても良い。この犠牲陽極材は、主としてZn、残部Alと不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。なお、各元素の含有量及びそれに伴う作用効果は以下に示すようなものである。
Znは、電位を卑にすることができ、心材との電位差を形成することで犠牲陽極効果により耐食性を向上できる。Znの含有量は、1.0〜6.0%であり、1.0%未満ではその効果が十分ではなく、6.0%を超えると、腐食速度が速くなり早期に犠牲陽極材が消失し、耐食性が低下する。好ましくは、2.0〜5.0%である。
Feは、MnやSiとともにAl−Fe−Mn−Si系またはAl−Fe−Si系の金属間化合物を形成し、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。Feの含有量は、0.05〜0.4%であり、0.4%を超えると金属間化合物のサイズが粗大になり、ろう付時に再結晶核となるため、ろう付後の結晶粒径が微細になり、ろう拡散が生じる恐れがある。0.05%未満では高純度アルミニウム地金を使用しなければならずコスト高となる。好ましくは、0.1〜0.2%である。但し、コストを考慮しない場合、Feの含有量は少ないほど好ましい。
犠牲陽極材として用いるAl−Zn系合金におけるZn、Fe以外の成分については、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良いが、主として強度向上のため、請求項3において規定しているように、Si、Mn、Ti、Vのうちから選ばれた1種または2種以上を添加しても良い。犠牲陽極材におけるこれらの選択的添加元素の添加理由について次に説明する。
Siは、Fe、MnとともにAl−Mn−Si系またはAl−Fe―Mn−Si系の化合物を形成し、分散強化として作用し、或いはマトリクスに固溶して固溶強化により強度を向上させる。また、ろう付時に心材から拡散してくるMgと反応してMgSi化合物を形成することで強度が向上する。好ましいSi含有量は、1.0%以下である。1.0%を超えると犠牲陽極材の融点が低下し、溶融が起こる可能性が高くなる。また犠牲陽極材の電位を貴にするため、犠牲陽極効果を阻害し、耐食性が低下する。より好ましくは、0.8%以下である。
Mnは、Fe、SiとともにAl−Mn−Si系またはAl−Fe―Mn−Si系の化合物を形成し、分散強化として作用し、或いはアルミニウム母相中に固溶して強度と耐食性を向上させる。好ましい含有量は、0.3%以下である。0.3%を超えるとMnの使用が多くなってしまい、本発明の目的と合致しない。より好ましくは、0.1〜0.2%である。
Tiは、固溶強化により強度を向上させ、また耐食性の向上が図れる。好ましい含有量は、0.02〜0.3%以下である。0.3%を超えると巨大金属間化合物を形成しやすくなり、塑性加工性を低下させる。より好ましくは、0.1〜0.2%である。
Vは、固溶強化により強度を向上させ、また耐食性の向上が図れる。好ましい含有量は、0.02〜0.3%であり、0.02%未満ではその効果は得られず、0.3%を超えると巨大金属間化合物を形成しやすくなり、塑性加工性を低下させる。より好ましくは、0.1〜0.2%である。
これら、Si、Mn、Ti、Vは、犠牲陽極材中に必要により少なくとも1種が添加されていればよい。
さらに、請求項1〜請求項4に記載したアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、合金の成分組成を前述のように調整するばかりではなく、金属組織条件として、最終圧延板の心材における粒子径0.05μm以上1μm以下の金属間化合物の存在する密度が重要であり、心材のマトリクス中に、断面組織の観察において0.05μm以上1μm以下の金属間化合物を1μmあたり5個以上50個以下含むことが必要となる。なお、金属間化合物とは、例えば上述したようなAl−Mn−Si系、Al−Fe−Mn−Si系、Al−Cr系、Al−Zr系、あるいはMgSiに代表される化合物であり、ここでの粒子径とは円相当径のことである。0.05μm以上1μm以下の金属間化合物は、ろう付加熱時にマトリクス中に溶解せず、心材が再結晶する際に核発生を抑制し、ろう付加熱後の結晶粒を粗大化させ、ろうが心材の粒界に侵食するのを防ぐ効果がある。
0.05μm以上1μm以下の金属間化合物が1μmあたり5個未満では、結晶粒の粗大化が不十分であり、ろうの侵食が生じてしまう。また、0.05μm以上1μm以下の金属間化合物を1μmあたり50個よりも多く存在させることは、本発明で規定する合金成分では困難である。金属間化合物のサイズに関して、0.05μm未満のものはろう付加熱時にマトリクスに溶解してしまうので、結晶粒を粗大化させる効果を持たない。また、1μm以上のものは再結晶の核生成サイトとなり、結晶粒を微細化してしまう。
なお、上述した大きさの結晶粒を有する金属間化合物は、以下に説明する製造方法に起因して形成することができる。
次に、請求項1〜請求項4に記載した、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法について説明する。前述のように、心材のマトリクス中に0.05μm以上1μm以下の金属間化合物の存在する密度が1μmあたり5個以上50個以下含となるためには、熱間圧延前の加熱や熱間圧延を特定の条件に制御し、熱間圧延中の析出を促すことが必要となる。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、前記記載の合金からなる心材の片面または両面にAl−Si系ろう材をクラッドすることで製造される。
心材として、前記した所望の成分組成を有するアルミニウム合金をそれぞれ溶解し、鋳造する。鋳造時に生成する金属間化合物を微細にするため、鋳造時の冷却速度は0.5℃/s以上であることが好ましい。この鋳塊を面削して仕上げ、熱間圧延前に、鋳塊の均質化処理を行わないか、または550℃以上で行うことが好ましい。心材の均質化処理を行なわないことで、鋳造時に得られる金属間化合物が微細な状態を維持したままその後の工程に供することができる。或いは、心材の均質化処理を550℃以上で行うことで、心材中の金属間化合物を再固溶させ、その後の工程で再び微細に析出させることが可能となる。
得られた心材は、公知のろう材あるいは前記犠牲陽極材と共に組み合わせ、その状態で加熱して熱間クラッド圧延に供する。ここで、この熱間クラッド圧延について、以下では単に「熱間圧延」と記す。なお熱間圧延前の重ね合せ材の厚みは特に限定しないが、通常は通常は250〜800mm程度(好ましくは300〜600mm程度)である。
この組み合わせ材の熱間圧延前の温度を450℃以上550℃以下かつ2時間以上20時間以下とし、熱間圧延工程中において板厚が20mmに達した時点での温度を400℃以上に制御し、熱間圧延終了時の温度を300℃以上に制御することにより、クラッド材を作製する。このような制御によって、熱間圧延前の加熱中、熱間圧延中、熱間圧延後において微細な金属間化合物の析出が起こり、金属間化合物の適正な分布が得られる。
熱間圧延前の温度が450℃未満あるいは2時間未満では、加熱中の金属間化合物の析出が少なく、上述した適正な金属間化合物の分布が得られない。熱間圧延前の加熱が550℃以上では加熱中に金属間化合物が再固溶してしまい、適正な金属間化合物の分布が得られず、加熱時間が20時間を越える場合には量産における経済性を著しく損なってしまう。また熱間圧延工程中において板厚が20mmに達した時点での温度が400℃未満では熱間圧延中の金属間化合物の析出が少なく、適正な金属間化合物の分布が得られない。なおこの時点における温度の上限値は特に設定しないが、500℃より高い温度に制御するのは困難である。さらに熱間圧延終了時の温度が300℃未満では、コイルに巻き取った後の金属間化合物の析出が少なく、適正な金属間化合物の分布が得られない。なおこの時点における温度の上限値は特に設定しないが、400℃より高い温度に制御するのは困難である。
熱間圧延によって得られたクラッド材は、その後冷間圧延によって所定の板厚まで圧延される。冷間圧延の途中または冷間圧延後において、1〜2回程度の焼鈍工程を経ても良い。焼鈍工程は、通常はバッチ式の炉を用いて200〜500℃において1〜10時間の条件で行なわれるか、連続式の炉を用いて200℃〜550℃で行なわれる。
なお、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの厚さ、ろう材層のクラッド率には特に制限はないが、通常、熱交換器のチューブ材として使う場合では、約0.6mm程度以下の薄肉ブレージングシートとすることができる。ただし、この範囲内の板厚に限定されるものではなく、0.6mm程度以上、5mm程度以下の比較的厚肉の材料として使用することも可能であることはもちろんである。ここでろう材層、陽極犠牲材層のクラッド率は通常3〜20%程度である。
次に、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートをチューブ材に用いて製造した熱交換器の製造方法と、ろう付加熱後の熱処理について説明する。
本発明の熱交換器は、チューブ、フィン、ヘッダなどの部品を成形、組み合わせた後、600℃で加熱してろう付することによって製造される。熱交換器はろう付後に空冷などによって冷却されるが、この時の冷却速度が50℃/min以上の時、本発明のブレージングシートを用いたチューブ材は過飽和に固溶したMgやSiを十分に含有し、適切な時効処理を施せば十分な強度を得ることができる。冷却速度が50℃/minより小さい場合は、冷却中に析出する粗大化したMgSiの量が多くなり、過飽和に固溶したMgやSiを十分に含有せず、ろう付加熱後の時効処理中に析出するMgSiの析出量が減少するため、、適切な時効処理を施しても十分な強度を得ることができない。ろう付加熱後のより好ましい冷却速度は100℃/minである。
熱交換器が自動車に搭載された後、自動車の走行中における熱交換器の最高到達温度が120℃以上の場合には、自動車の走行中に熱交換器のチューブ材が時効硬化するため、ろう付加熱後に熱処理を施す必要はない。熱交換器の最高到達温度が120℃以上であれば、12時間程度の走行により、従来技術と同程度の強度に達する。熱交換器は通常100万回以上の疲労による負荷がかかることにより破壊に至るため、走行開始初期の強度が低くても破壊に至ることはない。一方、熱交換器の最高到達温度が200℃を超える場合には、長時間の走行中に過時効となりチューブ材の強度が低下するため、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは適さない。熱交換器の最高到達温度は、より好ましくは180℃以下である。
熱交換器が自動車に搭載された後、自動車の走行中における熱交換器の最高到達温度が120℃未満の場合には、長時間走行しても従来技術と同程度の強度には達しないため、疲労破壊に至ってしまう。そのため、ろう付加熱後に熱処理することによって時効硬化させることが必要である。適切な時効処理の条件は、150℃以上180℃以下において、3時間以上20時間以下であり、この条件にて熱処理された熱交換器のチューブ材は従来技術と同程度の強度を有する。
温度が150℃未満の場合や、時間が5時間未満の場合には、時効硬化が足りず従来技術と同程度の強度には達しない。温度が180℃を超える場合には過時効となり、従来技術と同程度の強度には達しない。また時間が20時間を超える場合には、量産における経済性を著しく損なってしまう。より好ましくは、時効処理の時間は5時間以上10時間未満である。自動車の走行中における熱交換器の最高到達温度が120℃を超える場合にこのような時効処理を施した場合、走行中にチューブ材が過時効となってしまい、従来技術以上の強度とはならない。
また、ろう付加熱後に長時間室温で放置し、自然時効させた場合には、チューブ材の強度は上記のごとく熱処理した場合の強度には達しないものの、従来技術に近い強度を得ることができる。このようにろう付加熱後に長時間自然時効した熱交換器は、自動車の走行中における熱交換器の最高到達温度が120℃未満であっても、さほど高い強度が必要とされない場合、例えば小型車に搭載される熱交換器などには適用可能である。自然時効の期間が14日間以上であれば、熱交換器のチューブ材は従来技術に近い強度を有する。自然時効の期間が14日間未満の場合は、時効硬化が足りず従来技術に近い強度は得られない。
なお、自動車の走行中における熱交換器の最高到達温度が120℃未満の熱交換器とは、例えばエバポレータ、ラジエータ、ヒータコアなどであり、最高到達温度が120℃以上200℃未満の熱交換器とは、例えばコンデンサやインタークーラなどである。
このようにして得られる熱交換器は、疲労による負荷を長時間にわたって受けても破壊に至らず、良好な耐久性を発揮することができ、しかもろう付性に優れており、高い熱交換機能を有するから、自動車用熱交換器として好適に使用することができる。
以下にこの発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。なおこの実施例は、飽くまでこの発明の効果を説明するためのものであり、この発明の技術的範囲が実施例により制限されるものではないことはもちろんである。
表1、2に示す合金成分および組成を有する心材、皮材合金(犠牲陽極材用合金)をそれぞれDC鋳造法により鋳造して、各々両面を面削して厚さ500mmに仕上げた。なお、心材成分についてはX値:X=6×Sic+2.5×Cucを算出し、表1中に付記した。ろう材には、JIS4045合金を用い、ろう材、犠牲陽極材を常法に従って熱間圧延によりそれぞれ50mmの厚さまで圧延した。これらの合金を用い、心材の片面には前記ろう材を組み合わせ、もう一方の面には皮材合金としてろう材もしくは表2の犠牲陽極材を組み合わせ、重ね合せた。その状態での合計厚みは、600mmであった。なおその状態でのクラッド率は全て片面あたり10%であった。このような重ね合わせ材について、表3に示す条件で加熱および熱間圧延を行い、3.5mmの3層クラッド材とし、さらにこのクラッド材に、1次冷間圧延、中間焼鈍、最終冷間圧延を施して、H1n調質の板厚0.4mmの板材とし、さらに軟化焼鈍を施した。なお心材合金、皮材合金、製造工程の組み合わせは表4に示す。
得られたブレージングシートについて、金属間化合物分布密度を下記に示す方法で調査し、その結果を表4に示す。さらに各ブレージングシートについて、ろう付・時効後の室温強度、フィン接合率、耐エロージョン性、巨大金属間化合物、耐食性を下記に示す方法で評価し、その結果を表4に示す。なお耐食性に関しては、皮材に犠牲陽極材を用いたもののみを評価対象とし、犠牲陽極材を用いずろう材をクラッドしたものは評価対象外とした。さらに、表4中No.1のブレージングシートを用い、下記(7)の方法にて行なった繰返し耐圧試験における時効処理の条件および試験結果を表5に示す。
(1)供試材の金属間化合物の密度:
最終冷間圧延まで実施した冷間圧延板の心材のL−LT面を研磨で面出しし、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行うことで調べた。等厚干渉縞から観察部の膜厚を測定し、膜厚が約0.1〜0.2μmの箇所でのみTEM観察を行った。観察した面積は、複数視野の合計で100μmである。各サンプル50倍の倍率で10視野ずつ観察を行い、それぞれの視野のTEM写真を画像解析することで、ろう付後の金属間化合物の密度を求めた。表記したろう付後の金属間化合物の密度は、各10視野より求めた値の平均値とした。
(2)ろう付後の室温強度:
600℃×3分のろう付加熱後、200℃/minの冷却速度で冷却した。このサンプルを1日間室温にて放置した後、150℃/8hの時効処理に供した。これを引張速度10mm/min、ゲージ長50mmの条件で、JIS Z2241に従って引張試験に供した。得られた応力−ひずみ曲線から引張強さを読み取り、表4に記載した。
(3)フィン接合率:
3003合金のフィン材をコルゲート成形し、供試材のろう材面とあわせた後、これを5%のフッ化物フラックス水溶液中に浸漬し、200℃で乾燥後に600℃×3分のノコロックろう付加熱を行った。この試験コアのフィン接合率が95%以上のものはろう付性が良好「○」、95%未満のものはろう付性が不十分「×」と表4に記載した。
(4)耐エロージョン性:
上記と同様の条件で試験コアを作製後、断面ミクロ観察を行い、エロージョン発生の有無を確認した。エロージョン無しは「○」、エロージョン有りは「×」と表4に記載した。
(5)製造性:
最終冷間圧延まで実施した冷間圧延板の表面を観察し、表面に割れを生じていなかったものは製造性十分として「○」、割れを生じていたものは製造性不十分として「×」と表4に記載した。
(6)耐食性評価:
引張試験試料と同様、600℃×3分のろう付加熱を行った後、ろう材側をシールし、Cl500ppm、SO 2−100ppm、Cu2+10ppmを含む88℃の高温水中で8h、室温放置で16hのサイクル浸漬試験を3ヶ月実施し、腐食貫通の生じなかったものは「○」、生じたものは「×」と表4に記載した。
(7)繰り返し耐圧性評価:
表4中No.1のブレージングシートを電縫加工により偏平なチューブ状に成形し、一方3003合金のフィン材をコルゲート成形して、図1に示すように、その偏平チューブ1と2枚のコルゲートフィン2、および厚さ1mmの2枚のブレージングシート3と厚さ10mmの2枚の3003合金板4とを組み合わせて、5%のフッ化物フラックス水溶液中に浸漬し、200℃で乾燥後に600℃×3分のノコロックろう付加熱を行なって、試験コア5を作製した。なおブレージングシート3は、3003合金心材の両面に4045合金ろう材を5%クラッドしたものである。
試験コア5をろう付した後の冷却速度を表5に付記した。この試験コア5を、ろう付加熱後に時効処理に供したが、その時の室温放置の期間、加熱処理の温度と時間の条件を表5に示す。その後、図2に示すような高温耐圧試験装置の一対の治具8の間にパッキング9を介して挟み込んで固定し、試験コア5の偏平チューブ1内に、図示しない油圧装置から配管6を介して、表6に示す温度、圧力170kPa、周波数1Hzの条件で繰返し油圧を加えた。その結果、繰返し数100万回以上で異常のなかったものは耐久性が非常に優れているものとして「◎」印を、繰返し数70万回以上100万回未満でチューブ欠陥が生じたものは合格として「○」印を、繰返し数70万回未満でチューブ欠陥が生じたものは不合格として「×」印を、それぞれ表5中に記入した。
Figure 0005530133
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表4から明らかなように、本発明例であるNo.1〜12、27〜29は、心材の合金成分および熱延条件が本発明で規定する条件を満たしており、最終圧延後の金属組織が、0.05μm以上1μm未満の金属間化合物が5個/μm以上50個/μm以下となっており、本発明で規定する金属組織の条件を満たしている。
それに対してNo.13〜26は、心材の合金成分が本発明で規定する条件を満たしていない。中でもNo.20〜No.25は、個々の合金成分は本発明で規定する範囲を満たしているが、X値が本発明で規定する範囲を満たしていない例である。No.30〜32は、心材の合金成分は本発明で規定する条件を満たしているが、製造工程が条件を外れており、その結果金属組織の条件からも外れている。
表4から明らかなように、本発明例であり、前記のごとく金属組織の規定を満たしているNo.1〜12、27〜29は、ろう付・時効処理後の引張強さが160MPa以上と高く、またフィン接合率、耐エロージョン性などのろう付性が優れており、さらに圧延中割れが生じず製造性に優れている。
それに対して、No.13は、フィンの接合率が95%未満と不十分であり、しかも製造が不十分であった。No.14〜17、24、25は、引張強さが160MPa未満であり、本発明例よりも低い水準であった。No.13、18〜23、26は、ろう付においてエロージョンが発生した。製造工程が本発明で規定する条件を外れているNo.30〜32は、ろう付においてエロージョンが発生した。
心材の片面に犠牲陽極材をクラッドしているNo.33〜38について耐食性の評価を行なった。本発明例であるNo.33〜36については腐食貫通が見られず、耐食性が良好であった。それに対して、比較例であるNo.376、38は腐食貫通が生じており、耐食性が不十分であった。なおNo.33〜37はろう付・時効処理後の引張強さが160MPa以上と高く、皮材を犠牲陽極材としたことは時効硬化性には影響していない。
また表5において、No.39〜41の試験コアは、ろう付後の冷却速度、ろう付後の時効処理が本発明で規定する範囲で、なおかつ試験温度が120℃未満のものであり、No.42、43の試験コアは、ろう付後の冷却速度が本発明で規定する範囲で、ろう付後に時効処理を行なわず、試験温度が120℃以上のものである。本発明例であるこれらの試験コアは、繰り返し耐圧試験において100万回以上チューブに欠陥が生じず、熱交換器としての耐久性が非常に優れている。またNo.44、45の試験コアは、ろう付後の冷却速度、室温放置の条件が本発明で規定する範囲内で、試験温度が120℃未満のものである。これらの試験コアは、繰返し耐圧試験においてチューブに欠陥が生じるまでの繰返し数が70万回以上100万回未満であり、No.39〜43の試験コアには劣るものの、熱交換器の耐久性としては十分な水準であった。
それに対して、No.46の試験コアは、ろう付後の冷却速度が本発明で規定する範囲を外れているものであり、No.47、48の試験コアは、ろう付加熱後の時効処理が本発明で規定する範囲を外れているものであり、No.49の試験コアは、試験温度が120℃以上であるにもかかわらず試験前に時効処理を施したものであり、No.50の試験コアは、試験温度が200℃を超えるものである。また、No.51、52の試験コアは、試験温度が120℃未満であるにもかかわらず、室温放置の条件が本発明で規定する範囲を外れているものである。これらの試験コアは、繰返し耐圧試験において70万回未満でチューブに欠陥が生じてしまった。
以上のように、本発明によれば、時効処理によって優れた強度を有し、ろう付性が良好で、巨大金属間化合物を含まず生産性に優れる、熱交換器チューブ用材に適したアルミニウム合金クラッド材を得ることができる。
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。

Claims (8)

  1. 心材の片面または両面にAl−Si系ろう材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートであって、前記心材が、Si:0.2〜1.0%(質量%、以下同じ)、Fe:0.03〜0.4%、Mg:0.1〜0.5%、Cu:0.05〜1.0%の第1の元素群と、Mn:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.3%、Cr:0.05〜0.3%のうち1種以上を有する第2の元素群と、残部Alと不可避的不純物とを含み、前記第1の元素群におけるSi含有量SicとCu含有量Cucとで定まるX値:X=6×Sic+2.5×Cucが、2.0≦X≦6.0の関係を満足する組成であり、最終冷間圧延後の金属組織が、断面組織の観察において0.05μm以上1μm以下の金属間化合物を1μmあたり5個以上50個以下含むことを特徴とする、時効硬化性アルミニウム合金ブレージングシート。
  2. 前記心材は、Ti0.02〜0.3%及びV0.02〜0.3%の少なくとも1種を有する第3の元素群を含むことを特徴とする、請求項1に記載の時効硬化性アルミニウム合金ブレージングシート。
  3. 前記心材の、前記ろう材が形成されていない面において、Zn:2.0〜6.0%、Fe:0.05〜0.4%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を含む犠牲陽極材が形成されてなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の時効硬化性アルミニウム合金ブレージングシート。
  4. 前記犠牲陽極材は、Si1.0%以下、Mn0.3%以下、Ti0.02〜0.3%、V0.02〜0.3%のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴とする、請求項3に記載の時効硬化性アルミニウム合金ブレージングシート。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかの請求項中に記載されたアルミニウム合金ブレージングシートを製造するための方法であって、請求項1もしくは請求項2中に記載された成分組成のアルミニウム合金心材用の素材の片面もしくは両面にAl−Si系合金ろう材を重ね合わせてこれらを加熱し、熱間圧延を行ってクラッド材とする熱間クラッド圧延工程において、圧延前の加熱温度が450℃以上550℃以下、加熱時間が2時間以上20時間以下であり、板厚が20mmに達した時点での温度を400℃以上に制御し、熱間圧延終了時の温度を300℃以上に制御することを特徴とする、時効硬化性アルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
  6. 複数のタンクと、これらのタンク間に架設された複数のチューブと、各チューブにろう付されたフィン材とが具備されてなる自動車用熱交換器であって、前記チューブ材として請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートを用いており、ろう付後の冷却速度が50℃/min以上であり、自動車走行中における熱交換器の最高到達温度が120℃以上200℃以下であり、自動車走行中に前記チューブ材が時効硬化を生じることにより高い強度を有することを特徴とする熱交換器。
  7. 複数の冷媒用タンクと、これらのタンク間に架設された複数のチューブと、各チューブにろう付されたフィン材とが具備されてなる熱交換器であって、前記チューブ材として請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金クラッド材を用いており、ろう付後の冷却速度が50℃/min以上であり、ろう付後に150℃〜180℃において3時間〜20時間の人工時効処理を施すことにより前記チューブ材が高い強度を有し、自動車走行中における熱交換器の最高到達温度が120℃未満であることを特徴とする熱交換器。
  8. 複数のタンクと、これらのタンク間に架設された複数のチューブと、各チューブにろう付されたフィン材とが具備されてなる自動車用熱交換器であって、前記チューブ材として請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートを用いており、ろう付後の冷却速度が50℃/min以上であり、ろう付後、自動車に搭載され走行を開始するまで14日間以上の期間を有し、自動車走行中における熱交換器の最高到達温度が120℃未満であり、自動車走行中に前記チューブ材が時効硬化を生じることにより高い強度を有することを特徴とする熱交換器。
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