JP6039351B2 - 高強度アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法 - Google Patents

高強度アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、輸送機器、特に、自動車用熱交換器等に使用されるアルミニウム合金ブレージングシートに関し、好適には高温圧縮空気や冷媒の通路構成材として使用される高強度アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法に関する。
アルミニウム合金は軽量かつ高熱伝導性を備えており、適切な処理により高耐食性が実現できるため、自動車用熱交換器、例えば、ラジエータ、コンデンサ、エバポレータ、ヒータ、インタークーラなどに用いられている。これら自動車用熱交換器の流路形成部品用の材料として、アルミニウム合金からなる心材と、この心材にろう材や犠牲陽極材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートが使用されている。具体的には、JIS3003合金に代表されるAl−Mn系合金等を心材とし、一方の面にAl−Si系合金等のろう材、又は、Al−Zn系合金等の犠牲陽極材をクラッドした2層クラッド材や、心材の内面側にAl−Zn系合金などの犠牲陽極材をクラッドすると共に、大気側にAl−Si系合金などのろう材をクラッドした3層クラッド材が使用されている。
熱交換器は通常、このようなクラッド材とコルゲート成形したフィンとを組み合わせ、600℃程度の温度でろう付することによって接合される。熱交換器として自動車に搭載された後、この流路形成部品が破壊し貫通すると、内部を循環している冷却水や冷媒の漏洩が生じる。そのため、製品寿命を向上させるために、ろう付後における強度に優れたアルミニウム合金ブレージングシートが必要不可欠とされている。
ところで、近年になって自動車の軽量化に対する要求が高まり、これに対応するため自動車用熱交換器の軽量化も求められている。そのため、熱交換器を構成する各部材の薄肉化が検討されており、これに伴いアルミニウム合金ブレージングシートのろう付け後の強度を更に向上させることが必要とされている。
例えば、輸送機器用のラジエータやヒータを構成する熱交換器のチューブ材として広く使用されている、上記のJIS3003合金に代表されるAl−Mn系合金などの心材とする2層又は3層のチューブ材についてみると、そのろう付け後強度は110MPa程度と強度的に不十分であり、その改善が求められている。
ここで、ブレージングシートの高強度化の手段としては、心材の高強度化が有効であり、その方法としてMg添加による時効硬化による強化法が提案されている。これは、心材にMgを添加することで、ろう付後に、心材に添加されているSiやろう付時にろう材から拡散するSiと共に金属間化合物(MgSi)を形成させ(時効硬化)、これにより心材の高強度化を実現するものである。
この心材のMg添加による心材の強化法について、例えば特許文献1では、心材に0.8%以下のMgを添加し、ろう付後に自然時効又は100〜250℃にて人工時効することにより、高い強度が得られるとしている。また、特許文献2では、心材に0.05〜0.6%のMgを添加し、ろう付後に人工時効するか、又は輸送機器に搭載され走行するときの温度が120℃以上200℃以下の場合はそれによって時効硬化し、高い強度が得られるとしている。
特表2002−513085号公報 特開2011−042823号公報
しかしながら、本発明者等によると、上記心材へのMg添加がなされた従来のブレージングシートを使用した場合、一般的なろう付の加熱時間では、時効硬化による強度上昇作用が十分に発揮されないことがあるという問題がある。このろう付の加熱時間に関して、熱交換器製造においては600℃での保持時間を3分程度に設定されるのが一般的であるが、この加熱時間で時効硬化が不十分となることが多い。そして、近年では熱交換器の生産を高効率化するため、ろう付の加熱処理を従来よりも更に短時間で行う技術開発が進んでいる。かかる背景を鑑みると、一般的なろう付加熱時間の場合はもちろんであるが、ろう付の加熱時間を短時間としても時効硬化による心材の強度上昇効果が十分に発揮されるブレージングシートが要求される。
そこで本発明は、良好なろう付性を有すると共に高い強度を有するアルミニウム合金ブレージングシートを提供することを目的とする。また、必要に応じて耐食性も良好なアルミニウム合金ブレージングシートも提供する。特に、自動車等の輸送機器用熱交換器の流体通路構成材として好適に使用可能なアルミニウム合金ブレージングシート、及び、その製造方法の提供を目的とする。
本発明者等は上記課題について検討を行い、Mgを添加したアルミニウム合金からなる心材を適用する従来のブレージングシートについて、時効硬化が十分に生じない要因について検討した。その結果、ろう付処理の加熱時におけるマトリックスへのMgの固溶が不十分であることが時効硬化に不足が生じる要因とした。時効硬化のための析出物の生成には、その前段階として析出物の構成元素であるMgが合金マトリックスに固溶していることが必要となる。ここで、Mgが添加されたアルミニウム合金からなる心材は、ろう付前においてMgを含む金属間化合物が析出・分散した状態にある。そして、このアルミニウム合金においては、ろう付処理の加熱によりMgを含む金属間化合物からMgを固溶させている。従来のブレージングシートにおいて、ろう付処理の加熱時間が短い場合に時効硬化が不十分となってしまうのは、加熱中にMgが完全に固溶できなかったためと考えられる。
従って、心材となるアルミニウム合金に十分に時効硬化を発現させるためには、短い加熱時間であっても金属間化合物中のMgを固溶させることが必要である。そこで、本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、特定の合金組成のアルミニウム合金心材であって特定の金属組織を有するものを供えるブレージングシートがこの目的に適合することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、アルミニウム合金からなる心材と、前記心材の少なくとも一方の面にクラッドされたAl−Si系合金からなるろう材とを備えるアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、前記心材は、Si:0.3〜1.5mass%、Fe:0.05〜1.0mass%、Mg:0.05〜0.6mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、前記ろう材は、Si:2.5〜13.0mass%、Fe0.05〜2.0mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、前記心材は、ろう付前の任意断面において、Mgを含有する金属間化合物であって面積が0.1μm以上ものを測定した際、その平均の面積が1μm以下であり、かつ、その数密度が1個/μm以下であることを特徴とする高強度アルミニウム合金ブレージングシートである。
以下、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法について詳細に説明する。尚、強度や耐食性に関する性能は、全てろう付後のものである。ろう付は通常、600℃程度まで加熱しその後に空冷することにより行なわれるものである。
上記の通り、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、所定組成のアルミニウム合金からなる心材に、所定組成のアルミニウム合金からなるろう材がクラッドされたものである。また、心材には必要に応じて犠牲陽極材がクラッドされる。以下の説明では、これら各構成について説明する。また、本願明細書において合金組成について単に「%」とする場合、mass%(質量%)を意味する。
A.心材
心材は、Si:0.3〜1.5mass%、Fe:0.05〜1.0mass%、Mg:0.05〜0.6mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。そして、このアルミニウム合金は、ろう付前の金属組織について特徴を有し、Mgを含む金属間化合物の状態が特定されたものである。
Siは、アルミニウム母相中に固溶して固溶強化により強度を向上させる他、ろう付後に人工時効を施すと、Mgとともに時効析出物を形成し、強度を向上させる。Siの含有量は、0.3〜1.5mass%である。含有量が0.1%未満ではその効果が十分でなく、1.5%を超えると心材の融点が低下して、ろう付時にろうによる心材の侵食が発生する。Siの好ましい含有量は、0.3〜1.0%である。
Feは、再結晶核となり得るサイズの化合物を形成し易い。ろう付後の結晶粒径を粗大にして、ろう付時のろうによる心材の侵食を抑制するためには、Feの含有量は、0.05〜1.0%である。含有量が0.05%未満では高純度アルミニウム地金を使用しなければならずコスト高となり、1.0%を超えるとろう付後の結晶粒径が微細となり、心材へのろうの侵食が生じる。Feの好ましい含有量は、0.1〜0.7%である。
Mgは、アルミニウム母相中に固溶して固溶強化により強度を向上させる他、ろう付後に人工時効を施すと、SiやCuとともに時効析出物を形成し、強度を向上させる。Mgの含有量は、0.05〜0.6%がである。含有量が0.05%未満ではその効果が十分でなく、0.6%を超えるとろう付が困難となる場合がある。Mgの好ましい含有量は、0.15〜0.4%である。
心材は、上記の必須構成元素に加えて、Mn、Cu、Ti、Zr、Cr、Vから成る群から選択される1種以上を含有しても良い。
Mnは、SiとともにAl−Mn−Si系の化合物を形成し、分散強化により強度を向上させ、またアルミニウム母相中に固溶して固溶強化により強度を向上させるので、添加するのが好ましい。Mnの含有量は、0.05〜2.0%である。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、2.0%を超えると鋳造時に巨大化合物が形成され易くなり、塑性加工性を低下させる。Mnのより好ましい含有量は、0.1〜1.8%である。
Cuは、固溶強化により強度を向上させ、またろう付後に人工時効を施すと、SiやMgとともに時効析出物を形成し、時効による強度向上を促進させるので、添加するのが好ましい。Cuの含有量は、0.05〜2.0%である。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、2.0%を超えるとアルミニウム合金が鋳造時に割れを発生する可能性が高くなる。Cuのより好ましい含有量は、0.3〜1.5%である。
Tiは、固溶強化により強度を向上させるので含有させるのが好ましい。Tiの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Tiのより好ましい含有量は、0.1〜0.2%である。
Zrは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Zr系の化合物が析出してろう付後の結晶粒粗大化に作用するので含有させるのが好ましい。Zrの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Zrのより好ましい含有量は、0.1〜0.2%である。
Crは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Cr系の化合物が析出してろう付後の結晶粒粗大化に作用するので含有させるのが好ましい。Crの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Crのより好ましい含有量は、0.1〜0.2%である。
Vは、固溶強化により強度を向上させるので含有させるのが好ましい。Vの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Vのより好ましい含有量は、0.1〜0.2%である。
これらMn、Cu、Ti、Zr、Cr、Vは、心材中に必要により少なくとも1種が添加されていればよい。また、不可避的不純物を各々0.05%以下、全体で0.15%以下含有していてもよい。
以上説明したアルミニウム合金からなる心材は、その材料組織においても特徴を有する。この金属組織は、ろう付前の任意断面において、Mgを含有する金属間化合物であって面積が0.1μm以上ものを測定した際、その平均の面積が1μm以下であり、かつ、その数密度が1個/μm以下となっているものである。そこで、次に、この金属組織について詳細に説明する。
ろう付前のブレージングシートの心材において、MgはSiやCuと共に金属間化合物の状態で存在している。このMgを含む金属間化合物は、製造工程中の入熱により生成するものである。本発明のブレージングシートではろう付時に心材中のMgを溶体化し、その後に人工時効を施すことにより、MgをSiやCuと共に時効析出物を形成させて高い強度を得ること意図する。
ここで、ろう付処理の加熱時間が短い場合(上記のように、通常は600℃で3分程度である)、溶体化処理の時間としては短時間であるため、上記Mgを含む金属間化合物が粗大であると、ろう付の過程で十分に溶体化されない。その場合、ろう付後に人工時効処理を施しても、時効硬化は効果的に生じず、十分な効果を得ることができない。
そこで、本発明では、ろう付前の金属組織として粗大なMgを含む金属間化合物を規制する。即ち、ろう付前の心材の任意断面において、Mgを含有する金属間化合物であって面積が0.1μm以上ものを測定した際、その平均の面積が1μm以下であり、かつ、その数密度が1個/μm以下である場合は、Mgがろう付によって十分に溶体化され、ろう付の後の人工時効によって十分な強度を得ることができる。他方、ろう付前の心材の任意断面において、Mgを含有する金属間化合物であって面積が0.1μm以上ものを測定した際、その平均の面積が1μmより大きい場合、又は、その数密度が1個/μmより大きい場合は、ろう付時にMgが十分に溶体化されず、ろう付後に人工時効を施しても十分な強度を得ることができない。
尚、面積が0.1μm未満のMgを含む金属間化合物は、ろう付時に固溶するため、存在していても悪影響を及ぼさない。また、Mgを含む化合物について、面積が1μm以上であるものは全て規制されるべきであるが、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、面積が100μmを超えるMgを含む金属間化合物が生成する可能性は極めて低い。
B.ろう材
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、心材の少なくとも一方の面にろう材がクラッドされる。このろう材は、Si:2.5〜13.0mass%、Fe0.05〜2.0mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。ろう材であるアルミニウム合金についての必須添加元素は、Si、Feである。
Siは、融点を低下させて液相を生じ、ろう付けを可能にする。Siの含有量は、2.5〜13.0%である。2.5%未満では、生じる液相が僅かでありろう付けが機能し難くなる。一方、13.0%を超えると、例えばフィンなどの相手材へ拡散するSi量が過剰となり、相手材の溶融が発生するおそれがある。Siの好ましい含有量は3.5〜12.0%であり、更に好ましい含有量は7.0〜12.0%である。
Feは、Si、MnとともにAl−Fe−Mn−Si系の化合物を形成し、分散強化により強度を向上させる。Feの添加量は、0.05〜2.0%である。含有量が0.05%未満では、高純度アルミニウム地金を使用しなければならずコスト高となる。一方、2.0%を超えると鋳造時に巨大化合物が形成され易くなり、塑性加工性を低下させる。Feの好ましい含有量は、0.05〜1.5%である。
また、ろう材は、任意の添加元素として、Zn、Cu、Mn、Ti、Zr、Cr、V、Na、Srを含むことができる。
Znは、電位を卑にすることができ、心材との電位差を形成することで犠牲陽極効果により耐食性を向上できるので含有させるのが好ましい。Znの含有量は、0.3〜8.0%が好ましい。0.3%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、8.0%を超えると、例えばフィンなどの相手材との接合部にZnが濃縮し、これが優先腐食して相手材が剥離する場合がある。Znのより好ましい含有量は、0.5〜3.0%である。
Cuは、固溶強化により強度を向上させる。Cu含有量は、0.05〜2.0%とするのが好ましい。0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、2.0%を超えると鋳造時におけるアルミニウム合金の割れ発生の可能性が高くなる。Cu含有量は、より好ましくは0.3〜1.5%である。尚、ろう材がZnを含有する場合は、Cuはろう材の電位を貴にさせ、犠牲防食効果を失わせてしまうため、含有量は0.05〜0.5%とするのが好ましい。
Mnは、SiとともにAl−Mn−Si系の化合物を形成し、分散強化により強度を向上させ、またアルミニウム母相中に固溶して固溶強化により強度を向上させるので、添加するのが好ましい。Mnの含有量は、0.05〜2.0%である。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、2.0%を超えると鋳造時に巨大化合物が形成され易くなり、塑性加工性を低下させる。Mnのより好ましい含有量は、0.1〜1.8%である。
Tiは、固溶強化により強度を向上させるので含有させるのが好ましい。Tiの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Tiのより好ましい含有量は、0.1〜0.2%である。
Zrは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Zr系の化合物が析出してろう付後の結晶粒粗大化に作用するので含有させるのが好ましい。Zrの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Zrのより好ましい含有量は、0.1〜0.2%である。
Crは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Cr系の化合物が析出してろう付後の結晶粒粗大化に作用するので含有させるのが好ましい。Crの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Crのより好ましい含有量は、0.1〜0.2%である。
Vは、固溶強化により強度を向上させるので含有させるのが好ましい。Vの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Vのより好ましい含有量は、0.1〜0.2%である。
NaとSrは、Al−Si系ろう材に添加することにより、Al−Si系ろう材中のSi粒子のサイズを細かく均一に分散させて、粗大なSi粒子の発生を制御し、心材やフィンとの接合部の局部溶融やエロージョンを抑制させるので含有させるのが好ましい。Na又はSrの含有量は0.001〜0.05%とするのが好ましい。NaやSrの0.001%未満ではその効果が十分に得られない場合がある。一方、NaとSrはアルミニウムの酸化を促進させるため、0.05%を超えるとろう付時にろうの酸化が進み、ろうの流動性やろう付性を低下させてしまう。Na又はSrの含有量は、より好ましくは0.005〜0.02%である。
これら、Zn、Cu、Mn、Ti、Zr、Cr、V、Na及びSrは、ろう材中に必要により少なくとも1種が添加されていればよい。また、不可避的不純物を各々0.05%以下、全体で0.15%以下含有していてもよい。尚、ろう材は心材の少なくとも一方の面にクラッドされる。
C.犠牲陽極材
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、心材の一方の面にろう材がクラッドされ、他方の面にアルミニウム合金からなる犠牲陽極材をクラッドしたものも適用できる。例えば、熱交換器の使用環境において高い耐食性が求められるような場合に、心材の一方の面にクラッドされる。この犠牲陽極材は、Zn:0.3〜8.0mass%、Si:0.05〜1.5mass%、Fe:0.05〜2.0mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。犠牲陽極材であるアルミニウム合金についての必須添加元素は、Zn、Si、Feである。
Znは、電位を卑にすることができ、心材との電位差を形成することで犠牲陽極効果により耐食性を向上できる。Znの含有量は、0.3〜8.0%である。含有量が0.3%未満ではその効果が十分ではなく、8.0%を超えると腐食速度が速くなり早期に犠牲陽極材が消失し、耐食性が低下する。Znの好ましい含有量は、0.5〜6.0%である。
Siは、Fe、MnとともにAl−Fe−Mn−Si系の化合物を形成し、分散強化により強度を向上させたり、或いは、アルミニウム母相に固溶して固溶強化により強度を向上させる。また、ろう付時に心材から拡散してくるMgと反応してMgSi化合物を形成することで、強度を向上させる。Siの含有量は、0.05〜1.5%である。含有量が0.05%未満では、高純度アルミニウム地金を使用しなければならずコスト高となる。一方、1.5%を超えると犠牲陽極材の電位を貴にするため、犠牲陽極効果を阻害して耐食性を低下させる。Siの好ましい含有量は、0.05〜1.2%である。
Feは、Si、MnとともにAl−Fe−Mn−Si系の化合物を形成し、分散強化により強度を向上させる。Feの添加量は、0.05〜2.0%である。含有量が0.05%未満では、高純度アルミニウム地金を使用しなければならずコスト高となる。一方、2.0%を超えると鋳造時に巨大化合物が形成され易くなり、塑性加工性を低下させる。Feの好ましい含有量は、0.05〜1.5%である。
犠牲陽極材は、上記の必須構成元素に加えて、Mn、Mg、Ti、Zr、Cr、Vから成る群から選択される1種以上を含有しても良い。
Mnは、SiとともにAl−Mn−Si系の化合物を形成し、分散強化により強度を向上させ、またアルミニウム母相中に固溶して固溶強化により強度を向上させるので、含有させるのが好ましい。Mnの含有量は、0.05〜2.0%が好ましい。2.0%を超えると鋳造時に巨大化合物が形成され易くなり、塑性加工性を低下させる場合があり、また犠牲陽極材の電位を貴にするため、犠牲陽極効果を阻害して耐食性を低下させる場合がある。一方、0.05%未満では、その効果が十分に得られない場合がある。Mnのより好ましい含有量は、0.05〜1.5%である。
Mgは、MgSiの析出により強度を向上させる。また、犠牲陽極材自身の強度を向上させるだけでなく、ろう付することにより心材へMgが拡散して心材の強度も向上させる。これらの理由から、Mgを含有させるのが好ましい。Mgの含有量は、0.5〜3.0%が好ましい。0.5%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、3.0%を超えると熱間クラッド圧延時の圧着が困難となる場合がある。Mgのより好ましい含有量は、0.5〜2.0%である。尚、Mgはノコロックろう付におけるろう付性を阻害するため、犠牲陽極材が0.5%以上のMgを含有する場合は犠牲陽極材にノコロックろう付をすることができない。この場合には、例えばチューブ同士の接合には溶接などの手段を用いる必要がある。
Tiは、固溶強化により強度を向上させ、また耐食性の向上を図ることができるので含有させるのが好ましい。Tiの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。0.05%未満では、その効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Tiのより好ましい含有量は、0.05〜0.2%である。
Zrは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Zr系の化合物が析出してろう付後の結晶粒粗大化に作用するので含有させるのが好ましい。Zrの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Zrのより好ましい含有量は、0.1〜0.2%である。
Crは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Cr系の化合物が析出してろう付後の結晶粒粗大化に作用するので含有させるのが好ましい。Crの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。含有量が0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Crのより好ましい含有量は、0.1〜0.2%である。
Vは、固溶強化により強度を向上させ、また耐食性の向上が図ることができるので含有させるのが好ましい。Vの含有量は、0.05〜0.3%が好ましい。0.05%未満ではその効果が十分に得られない場合があり、0.3%を超えると巨大化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる場合がある。Vのより好ましい含有量は、0.05〜0.2%である。
これら、Mn、Mg、Ti、Zr、Cr及びVは、犠牲陽極材中に必要により少なくとも1種が添加されていればよい。また、不可避的不純物を各々0.05%以下、全体で0.15%以下含有していてもよい。尚、犠牲陽極材は、例えば熱交換器の使用環境において高い耐食性が求められるような場合に、心材の一方の面にクラッドされる。
次に、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法について説明する。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造工程は、心材、及び、皮材であるろう材、犠牲陽極材となるアルミニウム合金をそれぞれ鋳造する工程と、鋳造された心材の少なくとも一方の面に鋳造された皮材を組み合わせて合わせ材とする合わせ工程と、合わせ工程後において合わせ材を加熱保持する加熱工程と、加熱工程後において合わせ材を熱間圧延するクラッド熱延工程と、クラッド熱延後に冷間圧延する冷延工程と、冷延工程の途中又は後に1回以上の焼鈍を施す焼鈍工程とを含むものである。尚、皮材は、合わせ工程において、心材の片面のみ又は両面にろう材を合わせても良いし、心材の片面にろう材、もう一方の面に犠牲陽極材を合わせても良い。また、ろう材又は犠牲陽極材皮材を合わせる際、それらを所定の厚さにする方法について特に制限は無いが、通常は鋳塊を400℃〜550℃程度で熱間圧延することにより行われる。
そして、既に述べたように、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、ろう付前の心材において、Mgを含む化合物の平均面積及び数密度を規定し、粗大な金属間化合物を低減させていることを特徴とする。かかる状態を実現するため、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造工程においては、加熱工程及びクラッド熱延工程における材料温度の制御が重要となる。
発明者等は、製造工程における材料温度とMgを含む金属間化合物の状態との関係について鋭意研究を行い、その結果、材料温度が300〜480℃のとなっているときにこの金属間化合物が粗大となる傾向があることを見出した。そして、この知見に基づき、上記した製造工程の中で加熱工程、クラッド熱延工程、及び、クラッド熱延工程後における適切な制御範囲を見出した。
即ち、加熱工程においては、加熱温度を480〜550℃、加熱保持時間を0〜10時間とする。このようにすることで、もともと心材鋳塊に分布していたMgを含む化合物はアルミニウム母相中に固溶し、また、この加熱中は面積が0.1μm以上のMgを含む粗大な化合物は析出しないため、その面積の平均が1μm以下であり、その数密度が1個/μm以下の状態を得ることができる。
この加熱温度が480℃未満の場合は、加熱中にMgを含む粗大な化合物が生成し、その面積及び数密度が大きくなりすぎる場合がある。一方、加熱温度が550℃を超える場合は、合わせられたろう材に溶融が生じてしまうおそれがある。また、加熱時間が10時間を超える場合は、材料の性能の面では問題ないが、加熱時間が長すぎるため製造性を著しく損なってしまう。尚、加熱温度は、より好ましくは500〜550℃である。
そして、クラッド熱延中は熱延によるひずみの導入による析出が誘起され、Mgを含む粗大な化合物がより生成しやすいため、より厳密な温度制御が必要である。本発明に係る製造方法では、熱延開始時の合わせ材温度を480〜550℃とし、クラッド熱延時に合わせ材の温度が300〜480℃となっている時間を30分以下とする。これにより、面積が0.1μm以上であるMgを含む化合物を測定したとき面積の平均が1μm以下であり、その数密度が1個/μm以下である状態を得ることができる。
クラッド熱延開始時の合わせ材温度が480℃未満の場合は、加熱中にMgを含む粗大な化合物が生成し、その面積及び数密度が大きくなりすぎる場合がある。一方、熱延開始時の合わせ材温度が550℃を超える場合は、合わせられたろう材に溶融が生じてしまうおそれがある。また、クラッド熱延時に合わせ材の温度が300〜480℃となっている時間が30分を超える場合は、クラッド熱延中にMgを含む粗大な化合物が生成し、その面積及び数密度が大きくなりすぎる場合がある。クラッド熱延時に合わせ材の温度が300〜480℃となっている時間が短い場合は、材料の性能の面では問題ないが、例えば5分以下にする場合、熱延の1パスにおける圧下率が大きすぎて、材料に割れなどが生じる場合がある。
更に、クラッド熱延後の材料温度は高温となり、Mgを含む化合物の生成が進行するおそれがあるため、熱延後の材料温度を制御することも重要である。そこで、本発明では熱延終了時の材料温度を320℃以下とする。熱延後の材料温度が320℃以下であれば、熱延後におけるMgを含む化合物の生成は起こりにくく、面積が0.1μm以上であるMgを含む化合物を測定したとき、Mgを含む化合物の面積の平均が1μm以下であり、その数密度が1個/μm以下である状態を得ることができる。
クラッド熱延後の材料温度が320℃を超える場合は、熱延後にMgを含む粗大な化合物が生成し、その面積及び数密度が大きくなりすぎる場合がある。熱延後の温度が低い場合は材料の性能の面では問題ないが、通常の熱延設備では150℃以下となるよう制御することは困難である。
以上説明したように、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造工程では、合わせ工程後の加熱工程、クラッド熱延工程、及び、クラッド熱延工程後において材料温度を制御することを要する。
クラッド熱延工程後のクラッド材はその後冷間圧延に供されるが、最終板厚に達するまでの間に1〜2回程度の中間焼鈍を施しても良い。中間焼鈍は、150〜550℃の温度で行われることが好ましい。最後に中間焼鈍を行なってから最終板厚に達するまでの圧延率は、通常は10〜80%程度である。最終板厚は、通常は0.1〜0.6mm程度である。更に、最終板厚まで冷間圧延した後に、成形性の向上などを目的として仕上げ焼鈍を施しても良い。仕上げ焼鈍は、150〜550℃で行われることが好ましい。尚、前記中間焼鈍工程おおび仕上げ焼鈍工程には、バッチ式の炉を用いても良いし、連続式の炉を用いても良い。
尚、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造工程においては、ろう付前の成形性向上などを目的として、心材の鋳造工程の後に、均質化処理工程を経てもよい。均質化処理は、温度は480〜620℃、保持時間は1〜20時間とするのが好ましい。温度が480℃未満の場合は、加熱中にMgを含む粗大な化合物が生成し、その面積及び数密度が大きくなりすぎる場合がある。温度が620℃を超える場合は、心材鋳塊に溶融が生じるおそれがある。保持時間が1時間未満の場合は、均質化処理の効果が十分でなくなる。保持時間が20時間以上の場合は、時間が長すぎるため製造製を著しく損なってしまう。
また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの厚さ、ろう材層や犠牲陽極材層のクラッド率に特に制限はないが、通常、輸送機器用熱交換器のチューブ材として用いる場合には、約0.6mm以下の薄肉ブレージングシートとすることができる。但し、この範囲内の板厚に限定されるものではなく、0.6〜5mmの比較的厚肉の材料として使用することも可能である。ろう材層及び犠牲陽極材層における片面クラッド率は、通常3〜20%程度である。
ここで、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートに関し、そのろう付け接合の方法について説明する。このろう付け接合の工程について、一般的なろう付の条件は、600℃付近で3〜5分程度保持を行うのが通常である。図1は、このろう付時の温度チャートを模式的に示したものであるが、前記の600℃付近で3〜5分程度保持というろう付条件に対しては、580℃以上に保持される時間が12分よりも長くなるのが一般的な温度制御の方法である。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートでは、ろう付が短時間である場合、具体的にはろう付中に580℃以上に保持される時間が12分以下の場合に発明の効果を最大限に発揮することができる。このように580℃以上に保持される時間を従来よりも短くした場合、従来のアルミニウム合金ブレージングシートでは、ろう付前の心材におけるMgを含む化合物の面積及び数密度が大きいため、ろう付時のMgの溶体化が不十分となり、その後に時効処理を施しても耐クリープ性を得ることが困難であった。これに対し、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートでは、MgとSiを含む化合物の面積及び数密度を小さくしているため、ろう付が短時間であってもMgが十分に溶体化され、その後の時効処理によって優れた耐クリープ性を得ることができる。
勿論、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートについて長時間のろう付を行っても、従来技術と同等かそれ以上の耐クリープ性を得ることができる。但し、ろう付け時間の短時間化とろう付け後の耐クリープ性の確保とを両立させ、本発明の効果を最大限に発揮するためのろう付条件としては、ろう付中に580℃以上に保持される時間を12分以下とする。より好ましくは、5分以下である。
尚、ろう付において到達する材料温度は、580〜620℃である。580℃より低いと流動するろうの量が不十分のためろう付不良が生じる場合があり、620℃より高いと心材やフィンがろうによって侵食されるおそれがある。また、加熱後の冷却は、300℃までの冷却速度が30℃/min以上であることが好ましい。300℃までの冷却速度が30℃/min未満の場合は、冷却中にMgとSiを含む化合物の析出が生じ、その後人工時効処理を施しても十分な耐クリープ性を得られない場合がある。300℃までの冷却速度は、より好ましくは50℃/min以上である。
次に、ろう付後の人工時効処理について説明する。既に述べたように、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、ろう付によってMgがアルミニウム母相中に固溶するため、その後人工時効することによりMgがSiやCuと共に時効析出物となって時効硬化が生じ、耐クリープ性を向上させることができる。時効析出物は、微細で高密度であるほどその効果が大きく、時効の温度が低いほど形成される時効析出物は高密微細となる。但し、時効の温度が低すぎると、時効析出物の形成される速度が遅く、十分な耐クリープ性を得るには長時間を要してしまう。
人工時効処理の条件は、温度は160〜180℃、時間は1分〜10時間である。温度が160℃未満の場合は、時効析出物の形成される速度が遅く、工業的に現実的な時間では十分な耐クリープ性を得ることができない。温度が180℃を超える場合は、時効析出物が粗大となり、十分な耐クリープ性を得ることができない。時間が1分未満の場合は、時効析出物を形成するための時間が不十分であり、十分な耐クリープ性を得ることができない。時間が10時間を超える場合は、熱交換器が輸送機器に積載されて輸送機器が走行する間に受ける熱によって過時効となる場合があり、十分な耐クリープ性を得ることができない場合がある。尚、人工時効処理のより好ましい条件は、温度は170〜180℃、時間は1時間〜5時間である。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、自動車等の輸送機器用熱交換器の構成材料として好適である。ここで、発明者等の検討によると、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートを用いた熱交換器は、輸送機器に積載された後に輸送機器が走行する際の温度及び発生ひずみにより、本発明の効果を最大限に発揮することができる。
即ち、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、ろう付後の熱交換器における流路形成部品人工時効されることによって優れた耐クリープ性を得ることができるのは上記の通りであるが、更に、輸送機器に積載された後に輸送機器が走行する際、この流路形成部品が適切な温度に晒されるとその間にも時効硬化が生じる。そして、ここに適切なひずみが流路形成部品に発生する場合には、ブレージングシート心材の時効硬化がさらに促進され、より優れた耐久性を得ることができる。
この輸送機器走行時の適切な条件とは、流路形成部品の最高到達温度が80℃〜190℃であり、尚かつ流路形成部品に0.4%以上のひずみが加わることである。
最高到達温度が80℃未満の場合は、時効硬化がほとんど発生しないため、より優れた耐久性を得ることができない。最高到達温度が190℃を超える場合は、輸送機器の走行中にブレージングシート心材が過時効となってしまうため、より優れた耐久性を得ることができない。また、流路形成部品に加わるひずみが0.35%未満の場合は、輸送機器走行中に生じるブレージングシート心材の時効硬化が、ひずみによって十分に促進されず、より優れた耐久性を得ることができない。流路形成部品の最高到達温度は、より好ましくは120〜180℃であり、発生ひずみは、より好ましくは0.40%以上である。
尚、輸送機器が走行する際に発生するひずみの原因としては、例えば、熱交換器の加熱、冷却の繰返しによる。具体例としては、ラジエータのチューブ内部に流入するエンジン冷却水は、最高で100℃程度の高温となる。すると、チューブは熱膨張により長手方向に伸びようとすることとなる。このとき熱交換器全体の形状はプレートなどにより拘束されているため、チューブの長さは変化できず、その結果、熱膨張分だけチューブに圧縮ひずみがかかることとなる。この圧縮ひずみが時効硬化を促進させることとなる。ただし、輸送機器が走行する際に発生するひずみの原因は上記に限定されるものではなく、例えば、チューブやタンク内の物質による内圧などによって生じる場合もある。
以上説明したように、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、ろう付後に高強度を有するものである。このブレージングシートはフィン接合率、耐エロージョン性等、ろう付性に優れる。また、適切な成分のろう材又は犠牲陽極材、或いは、それらを同時に用いることにより優れた耐食性が達成できる。本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、上記特徴とともに軽量性と高熱伝導性の特徴により、特に輸送機器用の熱交換器のチューブ材として好適に用いられる。
ろう付加熱時の温度チャートを模式的に示した図。 本実施形態におけるろう付性の評価のための試験片の図。 本実施形態における熱交換器における定ひずみ高温疲労試験のための試験コアの図。
以下、本発明例と試験No.に基づいて本発明を更に詳細に説明する。表1に示す合金組成を有する心材合金、表2に示す合金組成を有するろう材合金、表3に示す合金組成を有する犠牲陽極材合金をそれぞれDC鋳造により鋳造し、各々両面を面削して仕上げた。尚、心材合金に均質化処理は施していない。
Figure 0006039351
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これらの合金を用い、心材合金の一方の面には「皮材1」として表2のろう材合金を組み合わせ、他方の面には「皮材2」として表2のろう材合金、又は、表3の犠牲陽極材合金を組み合わせた。尚、皮材2を組み合わせず2層材としたものもある。そして、これらの合わせ材を加熱工程とクラッド熱延工程にかけ、3.5mm厚さの2層又は3層のクラッド材を作製した。加熱工程及び熱間クラッド圧延工程の条件を表4に示す。また、クラッド材の構成(心材、皮材1、皮材2の組合せ)を表5に示す。
Figure 0006039351
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作製した各クラッド材について、400℃で5時間保持の中間焼鈍、及び、最終冷間圧延を施して、H1n調質の最終板厚0.5mmのブレージングシート試料を作製した。中間焼鈍後の冷間圧延率は、いずれも40%とした。
このブレージングシート試料の製造工程においては製造性を評価している。この評価は、問題が発生せず、0.5mmの最終板厚まで圧延できた場合は製造性を「○」とした。一方、鋳造における割れ、加熱工程におけるろう材の溶融、クラッド熱延工程における犠牲陽極材の過剰な伸びや心材と犠牲陽極材との圧着不良、冷間圧延中の割れが生じてブレージングシート試料を製造できなかった場合は製造性を「×」と評価した。表5には、この評価結果も示している。
製造したブレージングシート試料について下記の各評価試験に供した。尚、各評価試験について、ろう付後の評価項目におけるろう付条件は、表6の組み合わせから選択した。また、ろう付後に施した人工時効処理の条件は、表7に示す組み合わせから選択した。また、人工時効処理は、ろう付後10分以内に開始した。
Figure 0006039351
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(化合物の面積及び数密度の測定)
各ブレージングシート試料の心材部分についてL−LT面を研磨で面出しし、走査型透過電子顕微鏡(STEM)観察を行うことにより調べた。この際、電子分光装置(EELS)を用いて観察部の膜厚を測定し、膜厚が0.1〜0.15μmの箇所でのみSTEM観察を行って、各サンプルにつき10μm×10μmの視野を観察し、それぞれの視野において画像解析によって、面積が0.1μm以上であり、かつ、Mgを含む化合物の平均面積及び数密度を調べた。尚、化合物がMgを含んでいるかどうかの同定は、同じ視野をエネルギー分散型X線分析装置(EDS)によって元素マッピングした結果と照らし合わせることにより行った。
(ろう付後における耐クリープ性の評価)
表7から選択した条件でろう付相当の加熱を施したブレージングシート試料に、表8から選択した人工時効処理を施した。このサンプルを温度150℃、応力110MPaの条件で、JIS Z2271に従ってクリープ試験に供した。得られた結果から、クリープ試験開始から破断に至るまでに要した時間を測定した。その結果、試験開始から破断に至るまでの時間が100時間以上300時間未満の場合を合格(○)とし、100時間未満の場合を不合格(×)とし、300時間に至るまで破断が生じなかった場合を優秀(◎)とした。
(ろう付性の評価)
ブレージングシート試料の試験面となる面をマスキングし、50℃のNaOH溶液に浸漬することにより逆面の皮材を除去した。その後、3003合金をコルゲート成形し、山数20を有するフィンとしたものを、ブレージングシート試料のろう材面に配置して図2のように組み合わせた。即ち、ブレージングシート試料とフィンとの接点は40箇所存在することとなる。これを5%のフッ化物フラックス水溶液中に浸漬し、600℃で3分のろう付加熱に供した。この試料のフィンを剥し、ブレージングシート試料とフィンとの接点の中でフィレットが形成されていたものの数をNとし、接合率(%)をN/40として求めた。この接合率が95%以上であり、かつ、ブレージングシート試料の心材もしくは3003合金フィン材に溶融が生じていない場合をろう付性が合格である(○)とし、フィン接合率が95%未満又はブレージングシート試料の心材もしくは3003合金フィン材に溶融が生じた場合をろう付性が不合格(×)であるとした。尚、この評価試験において、ろう材が両面にクラッドされている場合は、皮材1のみを試験面とした。また、皮材2に犠牲陽極材がクラッドされている場合、又は、皮材2がクラッドされていない場合は、皮材2は試験面としなかった。
(腐食深さの測定)
ブレージングシート試料に、表7から選択した条件でろう付相当の加熱を施した後、表8から選択した人工時効処理を施し、50mm×50mmに切り出し、試験面の逆側を樹脂によってマスキングした。この評価試験で試験面とは、ろう材にZnが添加されている試料についてはろう材面を試験面とし、犠牲陽極材がクラッドされている試料については犠牲陽極材面を試験面とした。いずれ該当しない試料については耐食性の評価を行なわなかった。そして、試験面がろう材の場合は、ASTM−G85に基づいてSWAAT試験に供し、500時間で腐食貫通の生じなかったものを合格(○)とし、腐食貫通の生じたものを不合格(×)とした。また、試験面が犠牲材の場合は、Cl:500ppm、SO 2−:100ppm、Cu2+:10ppmを含有する88℃の高温水中で8時間、室温放置16時間を1サイクルとするサイクル浸漬試験を3ヶ月間実施し、腐食貫通の生じなかったものを合格(○)とし、生じたものを不合格(×)とした。
(熱交換器における定ひずみ高温疲労試験)
製造した各ブレージングシートを電縫加工により偏平なチューブ状に成形した。その一方で、3003合金のフィン材をコルゲート成形した。そして、図3に示すように、3本の偏平チューブ1と、2枚のコルゲートフィン2、及び厚さ2mmの2枚の3003合金板3とを組み合わせた。ここで、2枚の3003合金板材3の表面同士の長さは100mmとなるようにした。これを5%のフッ化物フラックス水溶液中に浸漬し、200℃で乾燥後に表7から選択した条件でノコロックろう付を行なって、試験コア4を作成した。
この試験コア4に、表8から選択した人工時効処理を施し、高温疲労試験機の上下のチャックに厚さ10mmの2枚の3003合金板3を挟んで試験を行った。尚、試験時の加熱方法は試験片全体を恒温槽で覆うことにより行った。試験条件として、周波数は20Hz、最小ひずみは0でそれぞれ共通とし、試験温度及び最大ひずみは表9に示す条件とした。尚、ひずみは入力する変位Lに対して、L÷100として算出した。試験開始からチューブの破断により発生荷重が最大時の50%となるまでの繰返し数が10回以上10回未満の場合を合格(○)とし、10回未満の場合を不合格(×)とし、10回でチューブの破断が生じなかった場合を優秀(◎)とした。
以上の評価結果を、表8、9に示す。尚、表6における製造性「×」のものについては試料を製造できなかったため、評価は行なうことができなかった。
Figure 0006039351
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以下、各評価試験による評価結果をブレージングシートの構成(心材、ろう材、犠牲陽極材)を考慮しつつ説明する。また、ブレージングシートのろう付条件、人工時効処理条件に関する検討結果も説明する。
(a)心材の組成について
本願発明の実施例である試験No.1〜10は、心材の組成について本発明で規定する条件を満たしており、製造性、化合物の面積及び数密度、ろう付後の耐クリープ性、ろう付性、腐食深さ、熱交換器における定ひずみ高温疲労のいずれも合格であった。
これに対して、比較例となる試験No.11〜15は、必須構成元素が本発明で規定する条件を満たしていないため、下記の通り、耐クリープ性、ろう付性のいずれかが不合格であった。
試験No.11では、心材のSi成分が少なすぎたため、ろう付後の耐クリープ性が不合格であった。
試験No.12では、心材のMg成分が少なすぎたため、ろう付後の耐クリープ性が不合格であった。
試験No.13では、心材のSi成分が多すぎため、ろう付時にブレージングシート心材の溶融が生じ、ろう付性が不合格であった。
試験No.14では、心材のMg成分が多すぎため、ろう付時にフィンの未接合が生じ、ろう付性が不合格であった。
試験No.15では、心材のFe成分が多すぎため、ろう付時に心材へのろうの侵食が生じ、ろう付性が不合格であった。
また、心材の任意添加元素についてみると、試験No.16〜18は本発明で規定する条件を満たしていないため。下記の点で耐クリープ性、ろう付性のいずれかが不合格であった。
試験No.16では、心材のCr、Zr、Ti、V成分が多過ぎたため圧延中に割れが生じ、ブレージングシートを製造することができなかった。
試験No.17では、心材のMn成分が多過ぎたため圧延中に割れが生じ、ブレージングシートを製造することができなかった。
試験No.18では、心材のCu成分が多過ぎたため鋳造時に割れが生じ、ブレージングシートを製造することができなかった。
(b)ろう材の組成について
上記の通り、本願発明の実施例である試験No.1〜10は、ろう材の組成についても本発明で規定する条件を満たしているため、各評価結果は良好であった。尚、ろう材にZnを添加している本発明例5、6については、ろう材面の腐食深さについても優れていた。これに対して、試験No.19、20、22は、ろう材の必須構成元素の観点から下記の点で製造性、ろう付性のいずれかが不合格であった。
試験No.19では、ろう材のSi成分が少な過ぎたためフィンとの未接合が生じ、ろう付性が不合格であった。
試験No.20では、ろう材のSi成分が多過ぎたためフィンの溶融が生じ、ろう付性が不合格であった。
試験No.22では、ろう材のFe成分が多過ぎたため圧延中に割れが生じ、ブレージングシートを製造することができなかった。
また、試験No.21、23〜27は、ろう材の任意添加元素の観点から下記の点で製造性、ろう付性、耐食性のいずれかが不合格であった。
試験No.21では、ろう材のCu成分が多過ぎたため鋳造時に割れが生じ、ブレージングシートを製造することができなかった。
試験No.23では、ろう材のCr、Zr、Ti、V成分が多過ぎたため圧延中に割れが生じ、ブレージングシートを製造することができなかった。
試験No.24では、ろう材のMn成分が多過ぎたため圧延中に割れが生じ、ブレージングシートを製造することができなかった。
試験No.25では、ろう材のNa及びSr成分が多過ぎたためフィンとの未接合が生じ、ろう付性が不合格であった。
試験No.26では、ろう材のZn成分が多過ぎたため、耐食性が不合格であった。
試験No.27では、ろう材のZn成分が少な過ぎたため、耐食性が不合格であった。
(c)犠牲陽極材の組成について、
本発明に係るブレージングシートは、必要に応じて犠牲陽極材を備えることができる。本願発明の実施例である試験No.1〜10は、好適組成の犠牲陽極材を備え各評価結果は良好であった。これに対し、比較例である試験No.28〜34は、以下の通り、犠牲陽極材の組成が本発明で規定する条件を満たしていないため、製造性、耐食性が不合格となった。
試験No.28では、犠牲陽極材のSi成分が多過ぎたため、耐食性が不合格であった。
試験No.29では、犠牲陽極材のFe成分が多過ぎたため圧延中に割れが生じ、ブレージングシートを製造することができなかった。
試験No.30では、犠牲陽極材のCr、Zr、Ti、V成分が多過ぎたため圧延中に割れが生じ、ブレージングシートを製造することができなかった。
試験No.31では、犠牲陽極材のMn成分が多過ぎたため圧延中に割れが生じ、ブレージングシートを製造することができなかった。
試験No.32では、犠牲陽極材のZn成分が少な過ぎたため、耐食性が不合格であった。
試験No.33では、犠牲陽極材のZn成分が多過ぎたため、耐食性が不合格であった。
試験No.34では、犠牲陽極材のMg成分が多過ぎたため、熱間圧延において心材と犠牲陽極材を圧着できず、ブレージングシートを製造することができなかった。
(d)心材の金属組織について
本発明はろう付前の心材の金属組織を規定するものである。そして、この金属組織は製造条件(加熱工程、クラッド熱延工程における材料温度)を適切にすることにより発現する。本発明の試験No.1〜10、及び、35〜41は、好適組成の材料を好適な製造条件のもと製造されたものであり、製造性、化合物の面積及び数密度、ろう付後の耐クリープ性、ろう付性、腐食深さ、熱交換器における定ひずみ高温疲労のいずれも合格であった。
これに対し、比較例である試験No.42〜46は、加熱工程の保持温度、クラッド熱延工程の開始温度等が好ましい範囲になかったため、製造性が不合格であったものや、製造はできてもろう付前の心材におけるMgを含む化合物の面積及び数密度において本発明で既定する条件を逸脱したものとなり強度面で不合格となった。
試験No.42では、加熱工程における保持温度が高すぎたため、ろう材に溶融が生じ、ブレージングシートを製造することができなかった。
試験No.43では、加熱工程における保持温度及びクラッド熱延開始時の温度が低すぎたため、ろう付前の心材におけるMgを含む化合物の面積及び数密度が大きすぎ、耐クリープ性及び熱交換器における定ひずみ疲労が不合格であった。
試験No.44では、クラッド熱延開始時の温度が低すぎたため、ろう付前の心材におけるMgとSiを含む化合物の面積及び数密度が大きすぎ、耐クリープ性及び熱交換器における定ひずみ疲労が不合格であった。
試験No.45では、クラッド熱延開始において材料温度が300〜480℃となっている時間が長すぎたため、ろう付前の心材におけるMgを含む化合物の面積及び数密度が大きすぎ、耐クリープ性及び熱交換器における定ひずみ疲労が不合格であった。
試験No.46では、クラッド熱延終了時の温度が高すぎたため、ろう付前の心材におけるMgを含む化合物の面積及び数密度が大きすぎ、耐クリープ性及び熱交換器における定ひずみ疲労が不合格であった。
(e)ろう付条件、人工時効処理条件について
本発明に係るブレージングシートは、ろう付条件を適切にすることで、ろう付性を良好なものとすることができる。また、ろう付後の人工時効処理についても好ましい条件にて行うことで、ろう付後の耐クリープ性等をより高くすることができる。この検討結果を表10に示す。表10の試験は、上記と同様の材料を使用し、評価方法も同様とした。
Figure 0006039351
ろう付条件について、これを最適なものとする試験No.47〜51は、ろう付性に優れまた耐クリープ性等の強度面でも良好な結果を得た。一方、参考例となる試験No.54では、ろう付時の到達温度が低すぎたため、フィンとの未接合が生じ、ろう付性が不合格であった。また、試験No.55では、ろう付時の到達温度が高すぎたため、ろう付時にブレージングシート心材及びフィンの溶融が生じ、ろう付性が不合格であった。また、試験No.52は、材料温度580℃以上の保持時間が12分を超えたため、耐クリープ性がやや劣った。また、試験No.53は、材料温度300℃までの冷却速度やや遅かったため耐クリープ性がやや劣った。但し、試験No.52、53は、耐クリープ性がやや劣るとはいえ合格の範囲にある。
また、人工時効処理条件について、これを最適なものとする試験No.56〜61は、良好な耐クリープ性を有することが確認された。一方、参考例となる試験No.62は、処理時間が短く耐クリープ性がやや劣った。試験No.63は、処理時間が長く耐クリープ性がやや劣った。また、試験No.64は、処理温度が低く耐クリープ性がやや劣った。試験No.65は、処理温度が高く耐クリープ性がやや劣った。但し、試験No.62〜65は、耐クリープ性がやや劣るとはいえ合格の範囲にある。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、ろう付後の耐クリープ性が高く、フィン接合率、耐エロージョン性などのろう付性や耐食性にも優れる。特に、軽量性と高熱伝導性にも優れるので、特に輸送機器用熱交換器のチューブ材として好適に用いられる。

Claims (8)

  1. アルミニウム合金からなる心材と、前記心材の少なくとも一方の面にクラッドされたAl−Si系合金からなるろう材とを備えるアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、
    前記心材は、Si:0.3〜1.5mass%、Fe:0.05〜1.0mass%、Mg:0.05〜0.6mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、
    前記ろう材は、Si:2.5〜13.0mass%、Fe0.05〜2.0mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、
    前記心材は、ろう付前の任意断面において、Mgを含有する金属間化合物であって面積が0.1μm以上ものを測定した際、その平均の面積が1μm以下であり、かつ、その数密度が1個/μm以下であることを特徴とする高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
  2. 心材が、更に、Mn:0.05〜2.0mass%、Cu:0.05〜2.0mass%、Ti:0.05〜0.3mass%、Zr:0.05〜0.3mass%、Cr:0.05〜0.3mass%、及び、V:0.05〜0.3mass%から成る群から選択される1種以上を含有する請求項1に記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
  3. 心材の少なくとも一方の面にクラッドされたろう材が、更に、Zn:0.3〜8.0mass%、Cu:0.05〜2.0mass%、Mn:0.05〜2.0mass%、Ti0.05〜0.3mass%、Zr:0.05〜0.3mass%、Cr:0.05〜0.3mass%、V:0.05〜0.3mass%、Na:0.001〜0.05%、Sr:0.001〜0.05%から成る群から選択される1種以上を含有する請求項1又は請求項2に記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
  4. 心材の一方の面にろう材がクラッドされ、前記心材の他方の面にはアルミニウム合金からなる犠牲陽極材がクラッドされており、
    前記犠牲陽極材は、Zn:0.3〜8.0mass%、Si:0.05〜1.5mass%、Fe:0.05〜2.0mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
  5. 犠牲陽極材が、更に、Mn:0.05〜2.0mass%、Mg:0.5〜3.0mass%、Ti:0.05〜0.3mass%、Zr:0.05〜0.3mass%、Cr:0.05〜0.3mass%及びV:0.05〜0.3mass%から成る群から選択される1種以上を含有する、請求項4に記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシートの製造方法であって、
    心材及びろう材のアルミニウム合金をそれぞれ鋳造する工程と、
    鋳造された心材の少なくとも一方の面に鋳造されたろう材を組み合わせて合わせ材とする合わせ工程と、
    前記合わせ工程後において合わせ材を加熱保持する加熱工程と、
    前記加熱工程後において合わせ材を熱間圧延するクラッド熱延工程と、
    前記クラッド熱延後に冷間圧延する冷延工程と、
    前記冷延工程の途中又は後に1回以上の焼鈍を施す焼鈍工程とを含み、
    前記加熱工程において、加熱温度を480〜550℃、温度到達後の保持時間を0〜10時間とし、
    前記クラッド熱延工程において、熱延開始時の合わせ材温度を480〜550℃とし、クラッド熱延時に合わせ材の温度が300〜480℃となっている時間を30分以下とし、熱延終了時の材料温度を320℃以下とする、
    高強度アルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
  7. 合わせ工程で、鋳造された心材の一方の面に鋳造されたろう材を組み合わせ、心材の他方の面に鋳造された犠牲陽極材を組み合わせて合わせ材とする請求項6に記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
  8. 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシートを流路形成部品用の材料として用いる熱交換器の製造方法であって、
    前記高強度アルミニウム合金ブレージングシートをろう付け接合する工程を含み、
    前記ろう付け接合の加熱後の冷却において、300℃までの冷却速度を30℃/min以上とし
    ろう付後に温度160〜180℃、時間1分〜10時間の人工時効処理を施す、熱交換器の製造方法
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