本発明の第1実施形態に係る建物の断熱構造について説明する。
図1には、第1実施形態の建物10が示されている。建物10は、一例として、8個の建物ユニット12により構成されており、2階建てとなっている。建物ユニット12は、4本の柱14と、互いに平行に配置された長短二組の天井梁の一例としての天井大梁16と、これらの天井大梁16に対して上下に平行に配置された長短二組の床梁の一例としての床大梁22とを含んで構成されており、各梁の端部を天井と床の仕口に溶接することによりラーメン構造として構成されている。但し、建物ユニット12のユニット構成は上記に限られることなく、他の箱形の架構構造としてもよい。
天井大梁16及び床大梁22には、断面コ字形状のチャンネル鋼(溝形鋼)が用いられている。そして、天井大梁16が矩形枠状に組まれて天井フレーム24が構成されており、床大梁22が矩形枠状に組まれて床フレーム26が構成されている。天井フレーム24と床フレーム26との間には、前述の4本の柱14が立設されている。
ここで、天井フレーム24は、四隅に天井仕口部28を備えており、この天井仕口部28に長さが異なる天井大梁16の長手方向の端部がそれぞれ溶接されている。同様に、床フレーム26は、四隅に床仕口部30を備えており、この床仕口部30に長さが異なる床大梁22の長手方向の端部がそれぞれ溶接されている。そして、上下方向(図示の矢印Z方向)に対向して配置された天井仕口部28と床仕口部30との間に、柱14の上下端部が溶接により剛接合されることで、建物ユニット12が構成されている。
なお、以後の説明では、建物ユニット12の一階と二階の部材を区別する必要がある場合に、一階の建物ユニット12を構成する各部材の符号の数字の後にAを付記し、二階の建物ユニット12を構成する各部材の符号の数字の後にBを付記して、一階と二階の部材を区別する。
図2に示すように、一階の建物ユニット12Aでは、天井大梁16Aの下側に天井野縁36Aを介して天井材38Aが取り付けられている。また、二階の建物ユニット12Bでは、床大梁22Bの上側に、床下地材32Bを介して床面材34Bが取り付けられている。そして、天井材38Aの下側及び床面材34Bの上側には、内壁材40が立設されている。さらに、建物ユニット12A、12Bには、天井大梁16A及び床大梁22Bの外側(屋外側)に、これら天井大梁16A及び床大梁22Bとは間隔をあけて、外壁材42A、42Bが配置されている。
外壁材42Aの裏面(屋内側の面)には、側面視で上端側が開放された断面略コ字形状の第1支持部材の一例としての第1外壁フレーム44が取り付けられている。また、外壁材42Bの裏面(屋内側の面)には、側面視で下端側が開放された断面略コ字形状の第2支持部材の一例としての第2外壁フレーム46が取り付けられている。ここで、建物10の断熱構造の一例としての断熱部20は、第1外壁フレーム44、第2外壁フレーム46、後述する充填断熱材58及び通気スペーサ60を含んで構成されている。
図3に示すように、第1外壁フレーム44及び第2外壁フレーム46は、一例として、断面略コ字形状のチャンネル鋼(溝形鋼)が用いられている。第1外壁フレーム44は、水平方向に配置される底壁44Aと、底壁44Aの屋外側の端部で上方に立てられた側壁44Bと、底壁44Aの屋内側の端部で上方に立てられた側壁44Cとを有しており、底壁44Aには、長手方向(図2の奥行き方向)に沿って間隔をあけて厚さ方向に貫通した複数の第1通気孔45が形成されている。また、側壁44Bの高さは、側壁44Cの高さよりも高くなっている。
同様にして、第2外壁フレーム46は、水平方向に配置される天壁46Aと、天壁46Aの屋外側の端部で下方に立てられた側壁46Bと、天壁46Aの屋内側の端部で下方に立てられた側壁46Cとを有しており、天壁46Aには、長手方向(図2の奥行き方向)に沿って間隔をあけて厚さ方向に貫通した複数の第2通気孔47が形成されている。また、側壁46Bの高さは、側壁46Cの高さよりも低くなっている。
第1外壁フレーム44の側壁44Bの上端面と第2外壁フレーム46の側壁46Bの下端面とは離間して配置されており、側壁44Bの上端面及び側壁46Bの下端面を開口の縁部として、通気スペーサ60が挿入される挿入口49Aが形成されている。この挿入口49A及び後述する開口部49Bによって、後述する充填断熱材58及び通気スペーサ60が、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に挿入可能となっている。
図2に示すように、外壁材42Aは、第1外壁フレーム44の側壁44C(図3参照)が、ボルト48及びナット50で屋内側から天井大梁16Aに固定されることで、天井大梁16Aに取り付けられている。同様にして、外壁材42Bは、第2外壁フレーム46の側壁46C(図3参照)が、ボルト48及びナット50で屋外側から床大梁22Bに固定されることで、床大梁22Bに取り付けられている。
外壁材42Aの上端面と外壁材42Bの下端面は、離間して配置されており、外壁材42Aの上端面及び外壁材42Bの下端面を開口の縁部として、開口部49Bが形成されている。そして、開口部49Bは、外壁材42A、42Bの外側に取り付けられた化粧胴差70によって塞がれている。なお、後述する充填断熱材58及び通気スペーサ60は、開口部49B及び挿入口49Aを通って第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に挿入されている。また、建物10では、開口部49Bを塞ぐ様にして止水シート51が設けられている。
止水シート51は、上部の一方の面が第2外壁フレーム46の側壁46B(図3参照)の内面に貼り付けられており、下部の他方の面が外壁材42Aの外側面に貼り付けられている。そして、止水シート51の中央部は、側壁46Bの下端から外壁材42Aの上端まで斜めに配置され、開口部49Bを覆っている。なお、止水シート51の貼り付け方法としては、一例として、両面テープを用いた貼り付け方法がある。
一方、内壁材40Aと外壁材42Aとの間、及び内壁材40Bと外壁材42Bとの間には、内壁材40A、40Bの外側に密着し且つ外壁材42A、42Bからは離間するようにして、壁用断熱材52A、52Bが設けられている。
また、建物ユニット12Aにおいて、天井大梁16Aと外壁材42Aとの間には、壁用断熱材52Aから第1外壁フレーム44まで梁用断熱材54Aが設けられている。梁用断熱材54Aは、壁用断熱材52Aよりも厚さが薄く形成されている。同様に、建物ユニット12Bにおいて、床大梁22Bと外壁材42Bとの間には、壁用断熱材52Bから第2外壁フレーム46まで梁用断熱材54Bが設けられている。梁用断熱材54Bは、壁用断熱材52Bよりも厚さが薄く形成されている。
さらに、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間、及び天井大梁16Aと床大梁22Bとの間には、充填断熱材58が充填されている。壁用断熱材52A、52B、梁用断熱材54A、54B、及び充填断熱材58は、柔軟性及び弾性を有しており、一例として、グラスウール、ロックウール等の繊維系断熱材を用いることができる。なお、本実施形態では、充填断熱材58の一例として、スプレー98(図9(C)参照)で吹き付けられることにより充填形成されるセルロース断熱材を用いている。
ここで、壁用断熱材52Aと外壁材42Aとの間の空間、壁用断熱材52Bと外壁材42Bとの間の空間、梁用断熱材54Aと外壁材42Aとの間の空間、及び梁用断熱材54Bと外壁材42Bとの間の空間は、通気層56とされている。また、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間には、屋内側及び屋外側に配置された充填断熱材58で挟まれると共に、一階の通気層56と二階の通気層56とを連通させる通気部材の一例としての通気スペーサ60が配置されている。充填断熱材58及び通気スペーサ60は、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に挟持されている。
次に、通気スペーサ60について説明する。
図4に示すように、通気スペーサ60は、上下方向に開口した筒部62と、筒部62を水平方向に貫通すると共に、孔壁により該筒部62を複数の第1通気孔45及び第2通気孔47(図3参照)の配置方向で複数の通気路62A、62B、62Cに分割する充填孔64A、64Bと、筒部62の下端で水平方向に拡幅された拡幅部66Aと、筒部62の上端で水平方向に拡幅された拡幅部66Bと、を有している。そして、拡幅部66A、通気路62A、62B、62C、及び拡幅部66Bの内側は連通しており、矢印Aで示すように、内部を空気が流れるようになっている。
充填孔64Aの一方の孔壁は、通気路62Aの側壁の一部を構成しており、充填孔64Aの他方の孔壁は、通気路62Bの側壁の一部を構成している。同様に、充填孔64Bの一方の孔壁は、通気路62Bの側壁の一部を構成しており、充填孔64Bの他方の孔壁は、通気路62Cの側壁の一部を構成している。このようにして、通気路62A、62B、62Cそれぞれが筒状の流路となっている。なお、本実施形態では、拡幅部66A、66Bだけでなく、通気路62A、62B、62Cの上端部、下端部においても、通気路62A、62B、62Cがそれぞれ連通している。
図2に示すように、通気スペーサ60は、拡幅部66Aの下面から拡幅部66Bの上面までの長さ(高さ)が、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間隔以上の長さ(大きさ)となっている。これにより、拡幅部66Aの下面が第1外壁フレーム44の底壁44A(図3参照)の上面に密着すると共に、拡幅部66Bの上面が第2外壁フレーム46の天壁46A(図3参照)の下面に密着している。
また、拡幅部66A、66Bの拡幅方向(水平方向)の幅は、第1外壁フレーム44の側壁44Bと側壁44Cとの間隔、第2外壁フレーム46の側壁46Bと側壁46Cとの間隔とほぼ等しい大きさとなっている。これにより、拡幅部66Aが第1通気孔45を覆うように配置され、拡幅部66Bが第2通気孔47を覆うように配置されている。そして、第1通気孔45から通気スペーサ60内へ流入した空気は、通気スペーサ60の外側へ洩れることなく第2通気孔45から流出するようになっている。
ここで、建物10において、挿入口49A及び開口部49Bの上下方向の開口幅の長さは、通気スペーサ60の上下方向の長さに比べて短くなっているが、通気スペーサ60は、透明で可撓性を有する材料で構成されているため、挿入口49A及び開口部49Bが形成された後であっても、挿入口49A及び開口部49Bからの挿入が可能となっている。また、通気スペーサ60が透明であることから、挿入口49A及び開口部49Bを屋外側から見て、天井大梁16Aと床大梁22Bとの隙間が視認可能となっている。
図5に示すように、通気スペーサ60の配置の他の例として、二階建ての建物80において、複数の通気スペーサ60を桁方向に間隔をあけて配置してもよく、連続して(並べて)配置してもよい。また、断熱材充填用の充填孔74が複数形成された長尺の通気スペーサ72を配置するようにしてもよい。
次に、天井大梁16A及び床大梁22Bへの断熱材の取り付けについて説明する。
図2に示すように、天井大梁16A及び床大梁22Bは、外側の面が断熱部材82で覆われている。なお、天井大梁16A側の断熱部材82と床大梁22B側の断熱部材82は、長さが異なっているものの他の構成は同様であるため、ここでは天井大梁16A側の断熱部材82について説明し、床大梁22B側の断熱部材82についての説明を省略する。
図6(A)に示すように、断熱部材82は、一例として、樹脂発泡系の断熱シート84と、断熱シート84の上端、下端が一方の面に接着された熱収縮性シート86とで構成されている。そして、天井大梁16Aの外側の面に断熱シート84を接触させた状態で断熱部材82を加熱することにより、熱収縮性シート86が収縮して、天井大梁16Aの外側の面に断熱部材82(断熱シート84)が取り付けられている。
断熱シート84の例としては、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム等がある。また、熱収縮性シート86の例としては、1軸収縮性(梁の断面方向には伸縮するが幅方向には伸縮しない、2軸でも可)で、密着後の周りの温度が上昇しても形状を維持できるものが好ましく、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート等がある。
図6(B)に示すように、断熱部材82を用いた他の実施例として、鋼管88の外周面に断熱材を取り付ける場合に、断熱シート84の一端を熱収縮性シート86の一端に接着して他端を自由端としておき、鋼管88の外周面に巻き付けた状態で熱収縮性シート86を加熱して取り付けてもよい。
また、天井大梁16Aへの断熱部材の他の取り付け例として、図7に示すように、天井大梁16Aの外側の面にスプレー99でループ状態の繊維層87を吹き付け、断熱シート84の一方の面にフック89を設ける。そして、フック89を繊維層87に引っ掛けることにより、面ファスナーの様に断熱シート84を取り付ける方法がある。
さらに、天井大梁16Aへの断熱部材の他の取り付け例として、図8(A)に示すように、断熱シート84の一方の面に複数の凸部84Aを形成しておき、他方の面に保護フィルム92を貼り付けておく。そして、図8(B)に示すように、予め天井大梁16Aの天壁及び側壁に形成された孔部94に凸部84Aを圧入することで、断熱シート84を取り付ける方法がある。
次に、第1実施形態の作用について説明する。
まず、断熱部20の施工方法について説明する。
図9(A)に示すように、第1外壁フレーム44をボルト48及びナット50で天井大梁16Aに締結し外壁材42Aを固定する。同様にして、第2外壁フレーム46をボルト48及びナット50で床大梁22Bに締結し外壁材42Bを固定する。なお、梁用断熱材54A、54Bは設置済みとなっている。
続いて、図9(B)に示すように、通気スペーサ60の筒部62を曲げながら、拡幅部66Bを開口部49B及び挿入口49Aを通して第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に挿入する。このとき、充填孔64A、64B(図4参照)は、通気スペーサ60の挿入方向を向いて開口している。そして、拡幅部66Bの上面を第2外壁フレーム46の天壁46Aの下面に接触させる。
続いて、図9(C)に示すように、拡幅部66Aを開口部49B及び挿入口49Aを通して第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に挿入する。そして、拡幅部66Aの下面を第1外壁フレーム44の底壁44Aの下面に接触させる。これにより、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に通気スペーサ60が設けられる(通気スペーサ60は自立している)。また、通気スペーサ60が設けられたことにより、一階の通気層56から第1通気孔45へ流れる空気は、通気スペーサ60内へ流入すると共に通気スペーサ60内を上方へ流れ、第2通気孔47から二階の通気層56へ流れる。これにより、建物10の一階、二階の通気層56が連通する。
ここで、拡幅部66A、66Bは、第1外壁フレーム44、第2外壁フレーム46の屋内外方向の幅に近い大きさとなっており、且つ外壁材42A、42Bに沿った奥行き方向の複数箇所で第1通気孔45、第2通気孔47を覆うので、第1通気孔45、第2通気孔47の位置を確認しながら配置する必要が無い。このため、通気スペーサ60の設置が容易に行える。
続いて、通気スペーサ60が立設された後、開口部49B及び挿入口49Aを通して第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間へ、スプレー98を用いて充填断熱材58を吹き付ける。そして、通気スペーサ60の屋外側に吹き付けられた充填断熱材58は、通気スペーサ60の充填孔64A、64Bを通って屋内側に充填され、さらに、天井大梁16Aと床大梁22Bとの間に充填される。なお、通気スペーサ60が透明な部材であるため、天井大梁16Aと床大梁22Bとの間に充填断熱材58が充填されたかどうかを確認しながら充填することができる。
続いて、図2に示すように、第2外壁フレーム44の内側に止水シート51の一端部を貼り付け、外壁材42Aの屋外側の面に止水シート51の他端部を貼り付ける。そして、開口部49Bの周縁部に化粧胴差70を取り付けて開口部49Bを封止する。このようにして、断熱部20が形成される。
次に、断熱部20の作用について説明する。
図2に示すように、断熱部20では、通気スペーサ60の屋内側と屋外側に充填断熱材58が配置されているので、屋内外方向への熱の移動が、屋内、屋外の2層の充填断熱材58で抑制される。これにより、建物10の断熱効果を高めることができる。また、通気スペーサ60が第1通気孔45と第2通気孔47とを連通させるので、外壁材42Aと天井大梁16Aとの間、及び外壁材42Bと床大梁22Bとの間の通気性を確保することができる。さらに、天井大梁16A及び床大梁22Bの外側の面には、断熱部材82が取り付けられているので、天井大梁16A及び床大梁22Bを介した屋内側への熱の伝達を抑えることができる。
また、断熱部20では、可撓性を有する通気スペーサ60が曲げられた状態で開口部49B及び挿入口49Aから挿入され、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間で伸ばされて立設される構成となっているため、通気スペーサ60の長さに比べて、挿入口49A及び開口部49Bの開口幅の長さを短く設定することが可能となる。これにより、発泡性の充填断熱材58を充填した場合でも、充填断熱材58が挿入口49Aから飛び出し難くなる。そして、開口部49Bの開口幅が短くなることから、開口部49Bを覆う化粧胴差70の幅を小さくすることができ、化粧胴差70の軽量化が可能となる。
さらに、断熱部20では、第1外壁フレーム44、第2外壁フレーム46のそれぞれの長手方向(奥行き方向)に複数形成された第1通気孔45及び第2通気孔47が、それぞれ1つの拡幅部66A、66B(図4参照)によって覆われることで、第1外壁フレーム44、第2外壁フレーム46と通気スペーサ60との隙間ができにくくなり、空気の洩れが抑えられる。このため、上下方向で第1通気孔45と第2通気孔47の形成位置が一致していなくても(形成位置が天井大梁16A、床大梁22Bの長手方向にずれていても)、拡幅部66A、66Bを介して第1通気孔45、第2通気孔47、及び通気スペーサ60の内部が相互に連通される。
このように、通気スペーサ60を用いることで、第1外壁フレーム44、第2外壁フレーム46に形成される第1通気孔45、第2通気孔47の形成位置に関わらず、外壁材42Aと天井大梁16Aとの間、及び外壁材42Bと床大梁22Bとの間の通気性を確保することができる。また、通気スペーサ60に充填孔64A、64Bが形成されているので、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に通気スペーサ60を設置した後であっても、充填孔64A、64Bを通して通気スペーサ60よりも屋内側に充填断熱材58を充填することができる。さらに、通気スペーサ60は、接着剤等で固定することなく、通気スペーサ60で自立する。このため、接着剤を使用した場合に発生する接着剤の劣化に伴う剥れ等がなく、メンテナンスが不要となる。
加えて、断熱部20では、通気スペーサ60が透明であるため、開口部49B及び挿入口49Aから第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に充填断熱材58を充填するとき、通気スペーサ60を通して天井大梁16Aと床大梁22Bとの隙間が視認可能となるので、天井大梁16Aと床大梁22Bとの隙間まで充填断熱材58が充填されたかどうかの充填状態を確認することができる。そして、断熱部20では、充填断熱材58によって天井大梁16Aと床大梁22Bとの隙間が塞がれているので、建物10における屋内外方向の熱の移動が充填断熱材58で抑制され、断熱効果を高めることができる。
なお、建物10では、止水シート51を設けているので、開口部49Bから雨水等が外壁材42A、42Bの内側へ侵入しようとしたとき、雨水等を止水シート51を介して外壁材42A、42Bの外側へ流すことができ、内部に配置されている通気スペーサ60及び充填断熱材58等が濡れることを阻止できる。
次に、本発明の第2実施形態に係る建物の断熱構造について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図10には、第2実施形態の建物10の断熱構造の一例としての断熱部100が示されている。断熱部100は、第1実施形態の断熱部20(図2参照)において、通気スペーサ60に換えて通気部材の一例としての複数の通気管110を用いた部分の構成が異なっている。また、第2実施形態の建物10では、断熱部100を除く他の部材が第1実施形態の建物10と同じ部材となっている。
図11に示すように、通気管110は、透明で可撓性を有する材料で形成されたチューブ状の部材であり、一端に第1通気孔45に挿入されて取り付けられる第1取付部114が設けられ、他端に第2通気孔47に挿入されて取り付けられる第2取付部116が設けられている。第1取付部114及び第2取付部116は、同様の構成となっており、通気管110の外周面から外側へ傘状に張り出された部材で構成されている。そして、第1取付部114及び第2取付部116には、通気管110の軸方向に沿って切れ込み(図示省略)が形成されている。
ここで、図11では、一例として、第1通気孔45の位置と第2通気孔47の位置が上下方向で一致しておらず、水平方向にずれた構成となっているが、通気管110の軸方向の長さが、挿入口49A及び開口部49B(図10参照)の開口幅の上下方向の長さに比べて長く、且つ第1取付部114、第2取付部116が第1通気孔45、第2通気孔47に挿通された状態で湾曲可能な長さとなっているため、第1通気孔45、第2通気孔47への通気管110の取り付けが可能となっている。
次に、第2実施形態の作用について説明する。
まず、断熱部100の施工方法について説明する。
図12(A)に示すように、第1外壁フレーム44をボルト48及びナット50で天井大梁16Aに締結し外壁材42Aを固定する。同様にして、第2外壁フレーム46をボルト48及びナット50で床大梁22Bに締結し外壁材42Bを固定する。なお、梁用断熱材54A、54Bは設置済みとなっている。
続いて、図12(A)、(B)に示すように、通気管110を曲げながら、第2取付部116側を開口部49B及び挿入口49Aから第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に挿入する。そして、第2通気孔47(図3参照)に第2取付部116を挿通する。ここで、第2取付部116は、傘状の部位が通気管110の外周面に沿って配置された状態で第2通気孔47に挿通された後、再び傘状に広がり、第2外壁フレーム46の天壁46Aの上面に接触して通気管110の一端側の抜けを防ぐ。
続いて、図12(C)に示すように、第1取付部114側を開口部49B及び挿入口49Aから第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に挿入する。そして、第1通気孔45(図3参照)に第1取付部114を挿通する。ここで、第1取付部114は、傘状の部位が通気管110の外周面に沿って配置された状態で第1通気孔45に挿通された後、再び傘状に広がり、第1外壁フレーム44の底壁44Aの下面に接触して通気管110の他端側の抜けを防ぐ。なお、図12(C)では、充填断熱材58の図示を省略している。
これらの工程を他の通気管110に対しても行うことで、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に複数の通気管110が設けられる。また、通気管110が設けられたことにより、一階の通気層56から第1通気孔45へ流れる空気は、通気管110内へ流入すると共に通気管110内を上方へ流れ、第2通気孔47から二階の通気層56へ流れる。これにより、一階、二階の通気層56が連通する。
続いて、複数の通気管110が設けられた後、開口部49B及び挿入口49Aから第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間へ、充填断熱材58(図10参照)を充填する。充填断熱材58は、複数の通気管110の間を通って屋内側へ充填され、天井大梁16Aと床大梁22Bとの間に充填される。なお、通気管110が透明な部材であるため、天井大梁16Aと床大梁22Bとの間に充填断熱材58が充填されたかどうかを確認しながら充填することができる。
続いて、図10に示すように、第2外壁フレーム44の内側に止水シート51の一端部を貼り付け、外壁材42Aの屋外側の面に止水シート51の他端部を貼り付ける。そして、開口部49Bの周縁部に化粧胴差70を取り付けて開口部49Bを封止する。このようにして、断熱部100が形成される。
次に、断熱部100の作用について説明する。
図10に示すように、断熱部100では、通気管110の屋内側と屋外側に充填断熱材58が配置されているので、屋内外方向への熱の移動が、屋内、屋外の2層の充填断熱材58で抑制される。これにより、建物10の断熱効果を高めることができる。また、通気管110が第1通気孔45と第2通気孔47とを連通させるので、外壁材42Aと天井大梁16Aとの間、及び外壁材42Bと床大梁22Bとの間の通気性を確保することができる。
また、断熱部100では、可撓性を有する通気管110が曲げられた状態で開口部49B及び挿入口49Aから挿入され、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間に設けられる構成となっているため、通気管110の長さ(大きさ)に比べて、挿入口49A及び開口部49Bの開口幅の長さ(大きさ)を短く設定することが可能となる。これにより、発泡性の充填断熱材58を充填した場合でも、充填断熱材58が挿入口49Aから飛び出し難くなる。そして、開口部49Bの開口幅が短くなることから、開口部49Bを覆う化粧胴差70の幅を小さくすることができ、化粧胴差70の軽量化が可能となる。
さらに、断熱部100において、通気管110は、一端が第1通気孔45に挿入されて取り付けられ、他端が第2通気孔47に挿入されて取り付けられている構成のため、中央部が変形可能となっている。これにより、例えば、地震によって建物10が水平変位した後であっても、第1取付部114、第2取付部116が第1通気孔45、第2通気孔47から外れるのを抑えられる。そして、第1通気孔45と第2通気孔47との連通状態が維持されるので、外壁材42A、42Bと天井大梁16A、床大梁22Bとの間の通気性を確保することができる。
加えて、断熱部100では、通気管110が透明であるため、施工現場において開口部49B及び挿入口49Aから第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との隙間に充填断熱材58を充填するとき、通気管110を通して天井大梁16Aと床大梁22Bとの隙間が視認されるので、天井大梁16Aと床大梁22Bとの隙間まで充填断熱材58が充填されたかどうかを目視で確認することができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
図13に示すように、第1実施形態の建物10及び断熱部20において、天井大梁16Aと床大梁22Bとの間に充填断熱材58を充填せず、一階の建物ユニット12A上に二階の建物ユニット12Bを配設するときに、予め、断熱材124を挟み込んでおいてもよい。なお、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間には充填断熱材58が充填されるが、図13では充填断熱材58の図示を省略している。
図13及び図14に示すように、断熱材124は、1枚の断熱材を上下方向に立てた状態で、上端部と下端部をそれぞれ水平方向で逆向きとなるように直角に折り曲げた形状となっている。そして、断熱材124の下端部は、天井材38A上に敷き詰められた断熱材122上に載置されている。なお、図14に示すように、天井大梁16A上に凸部126を形成し、断熱材124の上端部(天井大梁16Aの上面に載置される部分)に凸部126の外形に合わせた大きさの切欠部124Aを形成しておき、凸部126と切欠部124Aとを係合させることで、断熱材124がずれるのを抑えてもよい。
ここで、図15(A)、(B)に示すように、断熱材124は、天井大梁16A上に載置した状態で床大梁22Bを天井大梁16Aに向けて降ろすことで、天井大梁16Aと床大梁22Bとの間で挟持される。なお、図15(A)、(B)では、断熱部材82及び第1外壁フレーム44、第2外壁フレーム46の図示を省略している。
また、第1実施形態の通気スペーサ60は、拡幅部66A、66Bを蛇腹状に形成して、第1外壁フレーム44、第2外壁フレーム46との密着性を高めてもよい。さらに、第1外壁フレーム44と第2外壁フレーム46との間への拡幅部66A、66Bの挿入の順番、又は第1取付部114と第2取付部116の挿入の順番は、実施形態と逆であってもよい。
また、第1実施形態では、通気スペーサ60の筒部62の下端、上端の両方に拡幅部66A、66Bを設けていたが、筒部62の下端及び上端のいずれか一方に設けてあってもよい。例えば、筒部62の下端に拡幅部66A、上端に第2取付部116を設けて、拡幅部66Aを用いて通気スペーサ60を立たせた状態で、第2通気孔に第2取付部116を挿入してもよい。一方、筒部62の上端に拡幅部66B、下端に第1取付部114を設けた構成では、第2外壁フレーム46と拡幅部66Bとが係合する係合部を第2外壁フレーム46、拡幅部66Bに形成しておく。そして、この係合部を用いて拡幅部66Bを第2外壁フレーム46に取り付けた後、第1通気孔に第1取付部114を挿入してもよい。