JP5528753B2 - 電子ビーム露光装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電子ビーム露光装置に関し、特に、焦点補正に起因する収差及び照射位置ずれを補正可能な電子ビーム露光装置に関する。
近年、電子ビーム露光装置において、スループットの向上を図るために、マスクに可変矩形開口又は複数のマスクパターンを用意し、ビーム偏向によりそれらを選択して試料に転写露光することが行われている。
このような露光装置として、部分一括露光をする電子ビーム露光装置がある。部分一括露光では、マスク上に配置した複数個のパターンからビーム偏向により選択した一つのパターン領域にビームを照射し、ビーム断面をパターンの形状に成形する。さらにマスクを通過したビームを後段の偏向器で偏向振り戻し、電子光学系で決まる一定の縮小率で縮小し、試料上に転写する。
部分一括露光において、予め使用頻度の高いパターンをマスク上に用意すれば、可変矩形開口だけの場合より、必要な露光ショット数が大幅に減少し、スループットが向上する。
一方、可変矩形開口や部分一括パターンを用いて電子ビーム露光をすると、電子ビームのビームサイズがショット毎に異なり、電子ビームの焦点がずれてビームがぼける現象が発生する。例えば小さいビームサイズで試料表面に焦点を合わせた場合、大きなビームサイズで露光をすると、電子ビームの全電流が大きくなり、焦点距離が伸び、試料表面にはビームぼけが発生する。
このような電子ビームの焦点のずれを防止するために、ショット毎にリフォーカスコイルに流す電流を可変矩形開口の面積から算出して補正する方法が検討されている。特許文献1には、矩形ビームのサイズに同期して収束コイルを制御する方法が記載されている。
また、特許文献2には、電子ビームのリフォーカスを行う際に、ビーム軸の位置ずれを測定して補正をする方法が記載されている。
また、特許文献3には、四重極静電レンズを用いてフォーカスを補正する装置が記載されている。
特開昭56−94740号公報 特開昭58−121625号公報 特開2008−91827号公報
上記したように、可変矩形開口や部分一括パターンを用いた場合に、ショット毎に電子ビームの焦点を移動させるようにすることで、ビーム焦点のずれを防止することが可能である。
例えば、四重極静電レンズを設置した場合、整形したビームの断面積に応じた電圧を四重極静電レンズを構成する各電極に印加することにより、ビームの焦点を調整している。ビームサイズが大きい場合は、ビームの断面積に比例して、より大きな電圧を印加して電子ビームの収束作用を強くし、焦点を合わせるようにしている。
しかし、静電電極の形状や配置には機械加工や組み立て精度に限界があるため、必ずしも誤差のない理想的な電極を構成することはできない。そのため、理想的な構成において算出された電圧を四重極静電レンズの各電極に印加した場合であっても、配置誤差のずれを起因とした照射位置ずれや、非点収差が残ってしまい、露光精度が悪化してしまうことになる。
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みなされたものであり、リフォーカス用の静電レンズの電極の配置誤差に起因する収差及び照射位置ずれを補正可能な電子ビーム露光装置を提供することを目的とする。
上記した課題は、電子ビームを放射する電子銃と、前記電子ビームを整形するための開口を有する整形手段と、前記電子ビームを試料面上へ結像させる投影レンズと、前記投影レンズの上方に設置され、電子ビームの焦点を補正する静電多重極電極を光軸方向に所定の間隔で複数段重ねたリフォーカスレンズと、前記リフォーカスレンズの各電極に対して光軸の回りに回転させて配置した静電多重極電極からなる寄生収差補正用レンズと、前記整形手段により整形された前記電子ビームの断面の面積に応じた電圧を、前記リフォーカスレンズを構成する電極及び前記寄生収差補正用レンズを構成する静電多重極電極に印加する制御手段と、を備え、前記寄生収差補正用レンズを構成する多重極電極は、前記リフォーカスレンズを構成する電極の上方又は下方のいずれかに配置されるとともに、前記リフォーカスレンズを構成する電極に対し、隣接する2つの当該電極間の角度の1/2だけ光軸の周りに回転させた位置に配置され、前記制御手段は、前記リフォーカスレンズを構成する多重極電極を使用したときに発生する非点収差をゼロにする量の電圧を、前記寄生収差補正用レンズを構成する静電多重極電極に印加する電子ビーム露光装置により解決する。
この形態に係る電子ビーム露光装置において、前記寄生収差補正用レンズを構成する多重極電極は、前記リフォーカスレンズを構成する電極に対し、隣接する2つの当該電極間の角度の1/2だけ光軸の周りに回転させた位置に配置されるようにしてもよく、前記寄生収差補正用レンズを構成する多重極電極は、前記リフォーカスレンズを構成する電極の上方又は下方のいずれかに配置されるようにしてもよい。また、前記制御手段は、前記リフォーカスレンズを構成する多重極電極を使用したときに発生する非点収差をゼロにする量の電圧を、前記寄生収差補正用レンズを構成する静電多重極電極に印加するようにしてもよく、前記制御手段は、前記リフォーカスレンズを構成する多重極電極を使用したときに発生する前記電子ビームの照射位置ずれをゼロにする量の電圧を、前記リフォーカスレンズを構成する静電多重極電極に印加するようにしてもよく、前記制御手段は、前記リフォーカスレンズを構成する多重極電極を使用したときに発生する前記電子ビームの照射位置ずれをゼロにする量の電圧を、前記リフォーカスレンズを構成する静電多重極電極及び前記寄生収差補正用レンズを構成する静電多重極電極に印加するようにしてもよい。
本発明では、電子ビームの焦点を調整するためのリフォーカスを行うために備えられている多段の静電電極にさらにもう一段の静電電極を設けるようにしている。その追加設置される静電電極は、リフォーカス用の静電電極と光軸を中心に水平方向に回転させた位置に設置するようにしている。これにより、リフォーカスのための多段の静電電極の設置誤差による寄生収差を追加した静電電極により補正することが可能となる。特に、電子ビームのスティグ(非点収差)及び照射位置の補正に有効である。
本発明に係る電子ビーム露光装置の構成図である。 本発明に係る電子ビーム露光装置におけるリフォーカスレンズの電極の構成図である。 リフォーカスレンズの各電極に印加する電圧を説明する図である。 1段の四重極電極における電子の偏向制御を説明する図である。 3段四重極静電電極の電子の軌道を説明する図である。 リフォーカスレンズの電極の設置誤差を説明する図(その1)である。 リフォーカスレンズの電極の設置誤差を説明する図(その2)である。 リフォーカスレンズの電極の設置誤差を説明する図(その3)である。 リフォーカスレンズの電極の設置誤差による電子ビームの影響を示す図である。 非点収差の発生及び非点収差の補正を説明する図である。 3段四重極レンズに起因する収差を補正する処理の一例を示すフローチャートである。 非点収差補正処理の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(電子ビーム露光装置の構成)
図1は、本実施形態に係る電子ビーム露光装置の構成図である。
この電子ビーム露光装置は、電子光学系コラム100と、電子光学系コラム100の各部を制御する制御部200とに大別される。このうち、電子光学系コラム100は、電子ビーム生成部130、マスク偏向部140及び基板偏向部150によって構成され、その内部が減圧される。
電子ビーム生成部130では、電子銃101から生成した電子ビームEBが第1電磁レンズ102で収束作用を受けた後、ビーム整形用マスク103の矩形アパーチャ103aを透過し、電子ビームEBの断面が矩形に整形される。
その後、電子ビームEBは、マスク偏向部140の第2電磁レンズ105によって露光マスク110上に結像される。そして、電子ビームEBは、第1、第2静電偏向器104、106により、露光マスク110に形成された特定のパターンSに偏向され、その断面形状がパターンSの形状に整形される。
なお、露光マスク110はマスクステージ123に固定されるが、そのマスクステージ123は水平面内において移動可能であって、第1、第2静電偏向器104、106の偏向範囲(ビーム偏向領域)を超える部分にあるパターンSを使用する場合、マスクステージ123を移動することにより、そのパターンSをビーム偏向領域内に移動させる。
また、露光マスク110の代わりに、電子ビームを所定の形状に可変可能な開口部を配置してもよい。
露光マスク110の上下に配された第3、第4電磁レンズ108、111は、それらの電流量を調節することにより、電子ビームEBを基板W上で結像させる役割を担う。
露光マスク110を通った電子ビームEBは、第3、第4静電偏向器112、113の偏向作用によって光軸(ビーム軸)Cに振り戻された後、第5電磁レンズ114によってそのサイズが縮小される。
マスク偏向部140には、第1、第2補正コイル107、109が設けられており、それらにより、第1〜第4静電偏向器104、106、112、113で発生するビーム偏向収差が補正される。
その後、電子ビームEBは、基板偏向部150を構成する遮蔽板115のアパーチャ115aを通過し、リフォーカスレンズ128によって、電子ビームEBの断面積に応じた焦点の調整が行われ、第1、第2投影用電磁レンズ116、121によって基板W上に投影される。これにより、露光マスク110のパターンの像が、所定の縮小率、例えば1/10の縮小率で基板Wに転写されることになる。
基板偏向部150には、第5静電偏向器119と電磁偏向器120とが設けられており、これらの偏向器119、120によって電子ビームEBが偏向され、基板Wの所定の位置に露光マスクのパターンの像が投影される。
更に、基板偏向部150には、基板W上における電子ビームEBの偏向収差を補正するための第3、第4補正コイル117、118が設けられる。
基板Wは、モータ等の駆動部125により水平方向に移動可能なウェハステージ124に固定されており、ウェハステージ124を移動させることで、基板Wの全面に露光を行うことが可能となる。
一方、制御部200は、電子銃制御部202、電子光学系制御部203、マスク偏向制御部204、マスクステージ制御部205、ブランキング制御部206、基板偏向制御部207、ウェハステージ制御部208及びリフォーカス制御部209を有する。これらのうち、電子銃制御部202は電子銃101を制御して、電子ビームEBの加速電圧やビーム放射条件等を制御する。また、電子光学系制御部203は、電磁レンズ102、105、108、111、114、116及び121への電流量等を制御して、これらの電磁レンズが構成される電子光学系の倍率や焦点位置等を調節する。ブランキング制御部206は、ブランキング電極127への印加電圧を制御することにより、露光開始前から発生している電子ビームEBを遮蔽板115上に偏向し、露光前に基板W上に電子ビームEBが照射されるのを防ぐ。
基板偏向制御部207は、第5静電偏向器119への印加電圧と、電磁偏向器120への電流量を制御することにより、基板Wの所定の位置上に電子ビームEBが偏向されるようにする。ウェハステージ制御部208は、駆動部125の駆動量を調節して基板Wを水平方向に移動させ、基板Wの所望の位置に電子ビームEBが照射されるようにする。
リフォーカス制御部209は、露光マスク110を透過して整形される電子ビームEBの断面積に応じて、リフォーカスレンズを構成する各電極に必要な電圧を供給するようにする。
上記の各部202〜209は、ワークステーション等の統合制御系201によって統合的に制御される。
(リフォーカスレンズ)
図2は、本実施形態で用いるリフォーカスレンズの構成を示している。図2(a)は、投影用レンズ116、121の電子銃101側の上方に設置されるリフォーカスレンズ128を示している。また、図2(b)は、4段で構成されるリフォーカスレンズ128を、各段毎に間隔を離して電極の配置が分かるように表示した図を示している。
図2に示すように、リフォーカスレンズ128は、静電電極を4つ用いた静電四重極レンズを光軸方向(Z軸方向)に所定の間隔で重ねて構成する。リフォーカスレンズは、第1段LS1から第4段LS4の4段で構成されている。第1段LS1から第3段LS3は、焦点を補正するための主リフォーカスレンズを構成し、第4段LS4は、主リフォーカスレンズによって焦点が補正される際に発生した収差やビーム照射位置のずれ等、寄生収差を補正するための寄生収差補正用レンズを構成している。
図2(b)に示すように、各段は、それぞれ4つの静電電極で構成され、光軸を中心に回転対称に配置されている。
第1段の静電四重極レンズLS1は、4本の静電電極P11、P12,P13,P14で構成され、光軸(Z軸)を中心にX軸方向、Y軸方向に等間隔に2本ずつ配置される。例えば、各電極の長さは10mmである。
第2段の静電四重極レンズLS2は、4本の静電電極P21,P22,P23,P24で構成され、第1段の静電四重極レンズLS1の下段に配置される。第2段の静電四重極レンズLS2の4つの各電極は、第1段の静電四重極レンズLS1の4つの各電極とZ軸方向に所定の間隔で重なるように配置される。この所定の間隔は、例えば5mmである。第2段の静電四重極レンズLS2の各電極の長さは第1段の静電四重極レンズLS1の各電極の長さの2倍の長さとなっている。
第3段の静電四重極レンズLS3は、4本の静電電極P31,P32,P33,P34で構成され、第2段の静電四重極レンズLS2の下段に配置される。第3段の静電四重極レンズLS3の4つの各電極は、第2段の静電四重極レンズLS2の4つの各電極とZ軸方向に所定の間隔で重なるように配置される。この所定の間隔は、例えば5mmである。
第3段の静電四重極レンズLS3の各電極(P31,P32,P33、P34)の形状及び配置は第1段の静電四重極レンズLS1の各電極(P11,P12,P13,P14
の形状及び配置と同一である。
さらに、寄生収差補正用レンズの静電四重極レンズLS4は、4本の静電電極P41,P42,P43,P44で構成され、第3段の静電四重極レンズLS3の下段に配置される。寄生収差補正用レンズの静電四重極レンズLS4の4つの各電極は、上記第1段から第3段の4つの各電極に対して光軸の回りに45度回転させ、Z軸方向に所定の間隔となるように配置される。この所定の間隔は、例えば5mmである。
なお、寄生収差補正用レンズは、主リフォーカスレンズの上側に配置するようにしてもよい。その場合にも、静電四重極レンズLS4の4つの電極は、第1段から第3段の4つの各電極に対して光軸の回りに45度回転させて配置する。
また、回転角度は45度に限らず、30度や60度等、0度から90度の範囲で、0度、90度でなければよい。
図2のように構成したリフォーカスレンズの各電極には、リフォーカス制御部209によって所定の電圧が印加され、リフォーカスレンズ128全体としてリフォーカス、収差補正及びビーム照射位置補正に必要な電界を発生するようにしている。
本実施形態では、図3に示すような極性の電圧を印加する。図3(a)から図3(d)は、便宜的に第1段から第4段の静電四重極レンズ(LS1、LS2,LS3,LS4)の各平面図を示している。
図3(a)から図3(d)は、リフォーカス、収差補正及びビーム照射位置補正に必要な印加電圧を記載している。まず、リフォーカスに必要な電圧について説明する。リフォーカスは、第1段から第3段の3段四重極レンズによって行われる。図3では、各電極に印加する電圧を大文字で表記している。
図3(a)に示すように、静電電極P11とP13に+V1の電圧を供給し、P12とP14に−V1の電圧を供給する。
次の段のLS2の各電極には、図3(b)に示すように、LS1の各電極と電位が反対になるように電圧を印加する。すなわち、P21とP23に−V2を印加し、P22とP24に+V2を印加する。
また、3段目のLS3の各電極には図3(c)に示すように、1段目のLS1と同じ電圧を印加する。すなわち、P31とP33に+V1の電圧を供給し、P32とP34に−V1の電圧を供給する。
これらの電圧は、リフォーカス制御部209が整形された電子ビームの断面積にリフォーカス係数を乗じて算出し、各電極に供給する。
リフォーカスによって、焦点補正がなされた場合であっても、電子ビームに非点収差が存在する場合がある。この非点収差を補正するために、第4段の静電四重極レンズLS4の各電極に、後述する非点収差補正処理において決定される電圧が各電極に印加される。例えば、図3(d)に示すように、電極P41と電極P43に−V4の電圧が印加され、電極P42と電極P44には+V4の電圧が印加される。
さらに、リフォーカスによって、焦点補正がなされた場合であっても、ビーム照射位置がずれる場合がある。このビーム照射位置のずれを補正するための電界を発生させるために各電極に印加する電圧を図3では小文字(va〜vh)で表記している。例えば、図3(a)に示すように、電極P11に対して、+V11にさらに+vaを印加し、電極P13に対して、+V11にさらに−vaを印加する。なお、図3において、va〜vhで示した電圧値はゼロも含まれる。
次に、このように構成したリフォーカスレンズによって電子の焦点や照射位置ずれを調整できることについて説明する。まず、1段の静電四重極レンズについて、その間を通過した後の電子の偏向量について説明する。
図4に1段の静電四重極レンズの平面図を示す。このレンズの電位分布φは、φ=A(x2−y2)/r0 2と表される。ここで、Aは印加電圧であり20[V]とし、r0=3[mm] とする。
この中をZ軸方向に通過する電子は、X軸方向及びY軸方向に力を受けて進行する。
x=1mmの点における電界は、E(x=1)=−dφ/dx=40/9[V/mm]となる。ここで、ビーム軸から1mmの距離を通過する電子が、Z軸方向に5000mm離れた位置での偏向量について検討する。
仮に、平行平板間を電子が通過するときの電子の偏向量に対応させて考える。平行平板の両端部での電界の乱れを無視すると、電極から長さh離れた位置における偏向量Dは、次式で表される。
D=(hb/2d)×(Vd/V0) …(1)
ここで、bは平行平板の長さ、Vdは平板間に印加する電圧、V0は電子の入射電圧(例えば、50kV)である。
この式で、2Vd/dは電界Eであるので、D=hbE/4V0となる。
式(1)において、b=10[mm]、E=40/9[V/mm]、V0=50000[V]、h=5000[mm]とすると、偏向距離Dは1.11[mm]となる。
すなわち、焦点をビーム軸上にするためには1[mm]偏向すればよいため、電極に印加する電圧を調整することによって目的を達することができる。このように、1段の四重極レンズによって、電子の焦点等を調整することが可能となる。よって、四重極レンズが多段に構成された場合であっても、電子の焦点を調整することが可能となる。
図5は、3段四重極静電電極による電子の軌道を説明する図である。図5のz軸をビーム軸とし、電子ビームが図の左から右へ進行するものとする。
図5のx軸側はX方向の電子ビームの軌道C1を示し、y軸側は電子ビームのY方向の軌道C2を示している。図5に示すように、X方向の軌道C1に注目すると、1段目の四重極レンズは凸レンズの働きをし、2段目の四重極レンズは凹レンズの働きをし、3段目の四重極レンズは凸レンズの働きをしている。また、Y方向の軌道C2に注目すると、1段目の四重極レンズは凹レンズの働きをし、2段目の四重極レンズは凸レンズの働きをし、3段目の四重極レンズは凹レンズの働きをする。そして、最終焦点Z2への入射角度がX方向及びY方向ともほとんど同じ角度にすることができる。よって、この3段四重極静電電極を使用することにより、焦点の調整を容易に行うことが可能になる。
このように、3段の四重極電極を配置し、それぞれの電極に適切な電圧を印加することにより、電子ビームの焦点が試料上になるように調整することができる。
しかし、配置される電極の配置誤差がゼロになるとは限らず、様々な配置誤差が発生してしまう。図6〜図8は配置誤差の例を示した図である。図6は、各段の4つの電極間の位置関係に誤差はないが、第2段の電極の軸がずれている例を示している。図6(a)において、第2段の破線は正しい配置位置を示している。図6(b)に示すように、中心軸が第2段のところでずれてしまっている。このような状態で電子ビームを照射すると、第2段の電極による電場が変化し、ビーム照射位置がずれてしまうことになる。
図7は、4つの電極のうちの一つの電極の配置がずれた例を示している。このように一つの電極の配置がずれると、発生する電界の対称性が崩れ、収差の増加及び電子ビームの軸ずれが大きくなる。
図8は、電極配置の位相がずれている例を示している。図8(a)に示すように、第2段の電極間の位置関係に誤差はなく、中心となる軸も他の段の電極とのずれはないが、軸を中心に回転して配置されている。このように位相のずれがあると、第2段の電極による電場が変化し、ビーム照射位置がずれることになる。
図9は、図6〜図8に示したような機械的誤差に起因する矩形電子ビームの誤差を示している。図9(a)は、焦点が試料上に合った矩形ビームを示している。図9(b)は、焦点が試料上に合っていない状態であり、図9(a)になるように3段の四重極レンズによって調整する。図9(c)は、3段四重極レンズによって焦点が補正できたとしても、図6〜図8に示したような機械的誤差が存在すると、照射位置が大きくずれてしまう例を示している。また、図9(d)は、照射位置はずれていないが、X方向の焦点は合っているものの、Y方向の焦点が合っていない状態を示している。
これらの機械的誤差によって発生する収差や位置ずれを、追加する1段の四重極静電電極によって補正する処理について以下に説明する。
3段四重極レンズによって焦点が補正されたとしても、ビームにスティグ(非点収差)が残っているとき、4段目の四重極レンズを使用してこの非点収差を補正する。4段目の四重極レンズの電極は、非点収差の補正を効率的に行うことができるように他の3段の四重極レンズの電極に対して光軸の回りに45度ずらした位置に配置している。
なお、本実施形態では、リフォーカスレンズの各段は4つの静電電極で構成される四重極の場合を対象に説明しているが、例えば、八重極で構成するようにしてもよい。その場合には、4段目の八重極レンズの電極は、他の3段の八重極レンズの電極に対して光軸の回りに22.5度ずらした位置に配置する。すなわち、他の段の回転対称に構成された隣接する2つの電極間の角度の1/2だけ位相をずらした位置に配置する。
図10は、非点収差をベクトルで表した図である。図10(a)は、3段の四重極レンズにより非点収差が発生しない理想的な場合を示している。1段目の四重極レンズに起因する非点収差ベクトルST1と3段目の四重極レンズに起因する非点収差ベクトルST3の合成ベクトルと、2段目の四重極レンズに起因する非点収差ベクトルST2とは同一軸上で反対方向になるため、同一軸上の非点収差は存在しなくなる。
しかし、図10(b)に示すように、電界の状況によっては、非点収差ベクトルが同一軸上にない場合が起こり、非点収差ΔFが残ってしまうことがある。4段目の四重極レンズの各電極に印加する電圧の正負の方向及び大きさを調整して非点収差ΔFを打ち消すような電場を生じさせて、非点収差を解消させる。
このように、3段の四重極レンズの対向する電極の軸方向とは異なる方向に非点収差が存在する場合、3段の四重極レンズの電極と同位相の電極の配置ではその非点収差を補正することはできない。非点収差ΔFの方向は、電極間の角度(90度)のいずれかの向きに発生するが、中間の45度の位置に4段目の電極を配置することによって、22.5度の範囲で最も効率よく非点収差の検出や補正を行うことができる。
非点収差をなくすために、電子ビームのX方向及びY方向のぼけの量が同量かつ最小になるように四重極レンズの電極に印加する電圧を調整するようにしている。
また、3段四重極レンズによって焦点が補正されたものの、電子ビームの照射位置がずれることが発生した。このずれ量が微小であれば偏向器によって補正することも可能であるが、ずれ量が大きい場合にはリフォーカスレンズにおいて補正するようにしている。
この照射位置ずれの補正では、3段の四重極レンズの各電極に印加する電圧、及び非点収差補正のために4段目の四重極レンズの各電極に印加する電圧に対して、さらに微小電圧を加えて印加するようにしている。これらの電圧値は、図3の各電極において小文字のvで示したものである。
具体的には、四重極電極のうちの対向する2極を偏向電極とみなし、偏向場をかけて補正するようにしている。片側の電極に+vaの電圧をかけた場合は、対向する電極には−vaの電圧をかけて偏向場を発生させる。この電圧を本来の四重極電極の印加電圧(図3において大文字のVで表記した電圧)に加算する。例えば、四重極電極に印加する電圧が10[V]であり、偏向場が0.1[V]であれば、対向する2極に印加する電圧は、10.1[V]と9.9[V]となる。
リフォーカスや非点収差補正のために電極に印加する電圧値は、照射ビームの面積とリフォーカス係数や非点収差補正係数とを乗算することによって決定する。
リフォーカス係数や非点収差補正係数は周知の方法によって算出する。例えば、異なるビームサイズの複数の電子ビームについて、ビームエッジぼけ量を検出し、ビームエッジぼけ量が最小になるように各電極に印加する電圧を調整して、それぞれの係数を算出する。この係数とビームサイズとから相関関係を求め、任意のサイズの電子ビームに対するリフォーカス係数又は非点収差補正係数を決定する。
(3段四重極レンズに起因する収差の補正処理)
次に、上記した電子ビーム露光装置における収差の補正処理について、図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、3段の四重極レンズに起因する収差を補正する処理の一例を示したフローチャートである。なお、本実施形態では、3段の四重極レンズにおけるリフォーカス係数は予め算出されているものとする。
まず、図11のステップS11において、3段四重極レンズを用いて焦点補正を施したビーム照射を行う。このビーム照射では、予め算出されているリフォーカス係数を用いて各電極に印加する電圧が決定される。
次のステップS12において、ビーム照射結果に収差が存在するか否かを判定する。収差があるか否かは、照射されたビームにぼけがあるか否かによって判定される。収差があるときはステップS13に移行し、収差がないときは4段目の四重極レンズによる補正を必要としないため、本処理は終了する。
次のステップS13において、非点収差(スティグ)が存在するか否かを判定する。非点収差が存在するときは、次のステップS14に移行し、非点収差が存在しないときは、ステップS16に移行する。
次のステップS14において、非点収差に対する補正を行う。図12は、非点収差の補正処理の一例を示している。以下に、図12を参照しながら、非点収差補正処理について説明する。
図12のステップS21において、測定対象とする矩形ビームとして、断面積の異なる複数の矩形ビームを選択する。
次のステップS22において、選択した矩形ビームのX方向及びY方向のぼけ量が最小かつ同量になるように4段目の四重極レンズの各電極に印加する電圧を調整する。
次のステップS23において、選択した複数の矩形ビームに対して印加電圧を調整する処理が終了したか否かを判定する。当該処理が終了していなければステップS22に戻り、その他の選択した矩形ビームに対して印加電圧を調整する処理を継続する。調整処理が終了したときは、ステップS24に移行する。
次のステップS24において、非点収差補正係数を算出する。非点収差補正係数は、複数の選択した矩形ビームの断面積とステップS22において検出されるぼけ量を最小にする電圧との関係を基に決定する。
図11に戻り、ステップS15において、照射位置にずれあるか否かを判定する。照射位置ずれがある場合は、ステップS17に移行し、照射位置ずれがないときは、本処理は終了する。
一方、ステップS13において、非点収差がなかったと判定されたときは、ステップS16に移行し、照射位置ずれがあるか否かを判定する。ステップS16において、照射位置ずれがないと判定されたときは、3段四重極レンズによる焦点補正後のビーム照射に誤差が生じなかったため本処理は終了する。
ステップS17において、照射位置ずれの調整を行う。照射位置ずれの調整は、少なくとも主リフォーカスレンズの電極又は寄生収差補正用レンズの電極に印加する電圧を調整することにより行う。
例えば、照射位置ずれの距離が小さいときは、寄生収差補正用レンズの電極に印加する電圧を調整して照射位置ずれを補正するようにする。また、照射位置ずれの距離が大きく、寄生収差補正用レンズの電極だけでは補正が困難な場合には、主リフォーカスレンズの各電極に印加する電圧を調整するようにする。
また、非点収差が存在するときと存在しないときとで、調整する電極を選択するようにしてもよい。
以上説明したように、本実施形態の電子ビーム露光装置では、電子ビームの焦点を調整するためのリフォーカスを行うために備えられている多段の静電電極にさらにもう一段の静電電極を設けるようにしている。その追加設置される静電電極は、リフォーカス用の静電電極と光軸を中心に水平方向に回転させた位置に設置するようにしている。これにより、リフォーカスのための多段の静電電極の設置誤差による寄生収差を追加した静電電極により補正することが可能となる。特に、電子ビームのスティグ(非点収差)及び照射位置の補正に有効である。
また、リフォーカスは予め求められている条件(電極構成やリフォーカス係数)を使用して行い、リフォーカス以外の収差や照射位置ずれを追加した静電電極により補正するようにしている。これにより、1段の4つの電極を調整すればよいため、電圧調整が容易になる。
なお、本発明は、国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「マスク設計・描画・検査総合最適化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)である。
100…電子光学系コラム、101…電子銃、102…第1電磁レンズ、103…ビーム整形用マスク、103a…矩形アパーチャ、104…第1静電偏向器、105…第2電磁レンズ、106…第2静電偏向器、107…第1補正コイル、108…第3電磁レンズ、109…第2補正コイル、110…露光用マスク、111…第4電磁レンズ、112…第3静電偏向器、113…第4静電偏向器、114…第5電磁レンズ、115…遮蔽板、115a…アパーチャ、116…第1投影用電磁レンズ、117…第3補正コイル、118…第4補正コイル、119…第5静電偏向器、120…電磁偏向器、121…第2投影用電磁レンズ、123…マスクステージ、124…ウェハステージ、125…駆動部、127…ブランキング電極、128…リフォーカスレンズ。

Claims (4)

  1. 電子ビームを放射する電子銃と、
    前記電子ビームを整形するための開口を有する整形手段と、
    前記電子ビームを試料面上へ結像させる投影レンズと、
    前記投影レンズの上方に設置され、電子ビームの焦点を補正する静電多重極電極を光軸方向に所定の間隔で複数段重ねたリフォーカスレンズと、
    前記リフォーカスレンズの各電極に対して光軸の回りに回転させて配置した静電多重極電極からなる寄生収差補正用レンズと、
    前記整形手段により整形された前記電子ビームの断面の面積に応じた電圧を、前記リフォーカスレンズを構成する電極及び前記寄生収差補正用レンズを構成する静電多重極電極に印加する制御手段と、を備え、
    前記寄生収差補正用レンズを構成する多重極電極は、前記リフォーカスレンズを構成する電極の上方又は下方のいずれかに配置されるとともに、前記リフォーカスレンズを構成する電極に対し、隣接する2つの当該電極間の角度の1/2だけ光軸の周りに回転させた位置に配置され、
    前記制御手段は、前記リフォーカスレンズを構成する多重極電極を使用したときに発生する非点収差をゼロにする量の電圧を、前記寄生収差補正用レンズを構成する静電多重極電極に印加することを特徴とする電子ビーム露光装置。
  2. 前記制御手段は、前記リフォーカスレンズを構成する多重極電極を使用したときに発生する前記電子ビームの照射位置ずれをゼロにする量の電圧を、前記リフォーカスレンズを構成する静電多重極電極に印加することを特徴とする請求項に記載の電子ビーム露光装置。
  3. 前記制御手段は、前記リフォーカスレンズを構成する多重極電極を使用したときに発生する前記電子ビームの照射位置ずれをゼロにする量の電圧を、前記リフォーカスレンズを構成する静電多重極電極及び前記寄生収差補正用レンズを構成する静電多重極電極に印加することを特徴とする請求項に記載の電子ビーム露光装置。
  4. 前記リフォーカスレンズは、四重極静電電極を光軸方向に3段有することを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
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