JP5528543B2 - 漏れ電流低減装置 - Google Patents

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Description

この発明は、例えば交流電源に接続され任意の交流電圧を出力する電力変換装置等で発生する漏れ電流を低減する漏れ電流低減装置に関する。
従来の漏れ電流低減装置としての高周波漏れ電流低減装置において、例えばインバータ装置と三相モータとの間に配線されている三相電源線に発生する高周波漏れ電流を低減するために、高周波漏れ電流を検出する電流検出コイルと、検出された高周波漏れ電流を増幅する高周波増幅手段と、増幅された高周波漏れ電流を逆位相で三相電源線に電磁的に注入する整合コイルとにより、高周波漏れ電流を低減させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開平09−215341号公報(段落番号0015及び図1)
従来の高周波漏れ電流低減装置においては、コモンモードの高周波漏れ電流を電流検出コイルで検出する。この電流検出コイルで検出された高周波漏れ電流は、高周波増幅器に供給されて電力増幅されるものである。しかし高調波増幅器や検出回路の遅れ時間により高調波漏れ電流と整合コイルに供給される電流の位相が反転し、インバータ装置から供給される高調波漏れ電流を増幅してしまうことが生じる。また、配線やそれに接続された機器のインピーダンスや整合コイルや電流検出コイルのインダクタンスなどにより、高調波増幅器が共振を起こし系統に無駄な電力を供給、もしくは高調波漏れ電流を増幅してしまうことが生じる。このため、コモンモードのノイズ電流の低減効果が期待できないという問題点があった。
また、コモンモードの高周波漏れ電流は増幅された後に、整合コイルを介して三相電源線に逆位相で電磁的に注入される。このようにして、零相の高周波漏れ電流に対して供給される逆位相電流が等しい場合、互いに打消し合うため高周波漏れ電流をゼロにすることができるものであり、注入する電流の振幅と位相が所望の値の場合に高周波漏れ電流がゼロとなる。しかし、実際には部品のバラつきや温度変化等により、十分なノイズ低減効果が得られなくなるという問題点があった。またこれらの影響をキャンセルするための制御回路を接続すると、部品点数が増加し回路が複雑化するという問題点があった。
さらに、インバータ装置と三相モータとの間の三相電源線に高周波漏れ電流低減装置が設置される場合、インバータ装置にエネルギーを供給する電源側については考慮されていない。例えば、電源側が交流電源でありこれを直流に変換してインバータ装置にエネルギーを供給する場合において、直流に変換する整流装置から発生する高周波漏れ電流の低減策については考慮されていないという問題点があった。
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、簡易な構成で漏れ電流を低減でき、かつ安定に動作する漏れ電流低減装置を得ることを目的とする。
この発明に係る漏れ電流低減装置においては、電圧検出手段と入力側フィルタと電圧増幅器と電圧印加手段とを有し、第1の電気装置と第2の電気装置との間に接続線を介して挿入される漏れ電流低減装置であって、上記電圧検出手段は、主巻線と漏れ電流検出用の巻線とを有し、上記主巻線は上記接続線を介して上記第1の電気装置と上記第2の電気装置との間に挿入され、上記漏れ電流検出用の巻線により上記接続線を流れる漏れ電流を検出電圧として検出するものであり、
上記入力側フィルタは、上記検出電圧が入力され、該検出電圧の周波数別の大きさと位相を調整して出力するものであり、上記電圧増幅器は、上記入力側フィルタの出力を増幅して出力電圧として出力するものである。
この発明によると、簡易な構成で漏れ電流を低減でき、かつ安定に動作する漏れ電流低減装置を得ことができる。
この発明の実施の形態1である高周波漏れ電流低減装置を示す構成図である。 実施の形態1である高周波漏れ電流低減装置の接続例を示す接続図である。 図2のコンバータの詳細を示す回路図である。 図2のインバータの詳細を示す回路図である。 図1の高周波漏れ電流低減装置における等価回路を示す回路図である。 従来の高周波漏れ電流低減装置における等価回路を示す回路図である。 実施の形態2である高周波漏れ電流低減装置を示す構成図である。 実施の形態3である高周波漏れ電流低減装置の別の接続例を示す接続図である。 実施の形態3である高周波漏れ電流低減装置のさらに別の接続例を示す接続図である。 実施の形態4である高周波漏れ電流低減装置を示す構成図である。
実施の形態1.
図1〜図6は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1は高周波漏れ電流低減装置を示す構成図、図2は高周波漏れ電流低減装置の接続例を示す接続図である。図3はコンバータの詳細を示す回路図、図4はインバータの詳細を示す回路図である。図5は図1の高周波漏れ電流低減装置における等価回路を示す回路図、図6は従来の高周波漏れ電流低減装置における等価回路を示す回路図である。図1において、漏れ電流低減装置としての高周波漏れ電流低減装置100は第1及び第2のコモンモードトランス1,2及び電圧増幅器3を有する。電圧検出手段としての第1のコモンモードトランス1は、主巻線としての三相の巻線11,12,13と電圧検出用の巻線としてのコモンモード電圧検出用の巻線14を有する。巻線11,12,13及び巻線14は図示しない鉄心に所定回数、この実施の形態ではそれぞれ5回巻回されている。なお、各巻線11〜14の極性は図1において巻線の横に●で示す極性になるようにして巻回されている。
電圧印加手段としての第2のコモンモードトランス2は、主巻線としての三相の巻線21,22,23と電圧印加用の巻線としてのコモンモード電圧印加用の巻線24を有する。巻線21,22,23及び巻線24は図示しない鉄心に所定回数、この実施の形態ではそれぞれ5回巻回されている。なお、各巻線21〜24の極性は図1において巻線の横に●で示す極性になるようにして巻回されている。第1のコモンモードトランス1と第2のコモンモードトランス2とは三相の接続線8r,8s,8tにより接続されている。電圧増幅器3は、自己の動作用電力の供給を受ける電源端子3a,3b及び半導体素子としての電圧増幅用のトランジスタ3dを有するオペアンプにて構成され、図示しない外部電源から動作用電力の供給を受ける。コモンモード電圧検出用の巻線14の出力はフィルタ6を介して電圧増幅器3の正側端子に供給され、トランジスタ3dにて電圧増幅されて出力電圧として出力側フィルタとしてのコンデンサ7を介してコモンモード電圧印加用の巻線24に印加される。また、コモンモード電圧検出用の巻線14の一方の端子は接地されている。なお、電圧増幅器3の負側端子にアースとの間に抵抗9aが接続され、電圧増幅器3の出力端子との間に抵抗9bが接続され、ゲイン(G)を、抵抗9a,9bの抵抗比によって調整可能なようにしている。フィルタ6は、それぞれの通過周波数範囲を調整可能にされた図示しない複数の個別フィルタが並列あるいは直列もしくは直並列に接続されたものであり、各個別フィルタの定数を調整することにより周波数ごとのゲインを調整できるようにされている。周波数ごとのゲイン調整はフィルタではなく電圧増幅器3にて調整してもよいが、本実施の形態ではフィルタ6にて行う場合について説明する。
以上のように構成された高周波漏れ電流低減装置100は、図2に示すように、高周波漏れ電流低減装置100の第1のコモンモードトランス1が三相R,S,Tの接続線91r,91s,91tにより第1の電気装置としての交流電源40に接続されている。第2のコモンモードトランス2が三相R,S,Tの接続線93r,93s,93tにより第2の電気装置としてのコンバータ41に接続されている。コンバータ41は、三相フルブリッジ接続されたスイッチング素子及び半導体素子としてのIGBT41a(詳細は図3参照)を開閉制御することにより三相交流を可変電圧の直流に変換する。コンバータ41に接続線49P,49Nを介してインバータ42が接続されている。このインバータ42から接続線95r,95s,95tを介して負荷としての三相モータ43に可変周波数可変電圧の三相交流が供給される。なお、インバータ42は、三相フルブリッジ接続されたスイッチング素子及び半導体素子としてのIGBT42a(詳細は図4参照)を、相電圧指令と所定周波数の三角波または鋸波状のキャリアとを大小比較して発生するPWM信号により開閉制御することにより直流を可変電圧可変周波数の交流に変換する。なお、周知のように交流電源40、コンバータ41、インバータ42、三相モータ43及び第1及び第2のコモンモードトランス1,2の図示しないフレームないし筐体は接地(GND、アース)されており、大地浮遊静電容量を介して漏れ電流が流れる。
次に、動作について説明する。第1のコモンモードトランス1は、そのコモンモード電圧検出用の巻線14により三相の接続線91r,91s,91tすなわち巻線11,12,13に流れる高周波漏れ電流であるコモンモード電流により発生するコモンモード電圧V1を検出する。高周波漏れ電流は、150kHz〜30MHzの帯域のものが一般的であるが、この帯域に限定されず適用することができる。コモンモード電圧V1は、フィルタ6を介して電圧増幅器3に入力され、ゲイン(G)倍に増幅されて、出力電圧V3が出力される。ゲイン(G)は、抵抗9a,9bの抵抗比によって決定する。フィルタ6は、複数の個別フィルタにより構成され、例えばインバータのキャリア周波数以下や、規格で定められた周波数範囲外、系統のインピーダンスにより電圧増幅器3が共振してしまう周波数における検出値のゲインを小さくするように設定する、もしくは低減対象となる周波数のゲインを高く調整するなど、フィルタ6の周波数別のゲインと位相を調整することができる。出力電圧V3は、コンデンサ7を介して直流成分が除去され第2のコモンモードトランス2のコモンモード電圧印加用の巻線24にコモンモード電圧V1と位相がほぼ一致するようにして電圧V4として印加される。これにより、三相R,S,Tの巻線21,22,23に上記高周波漏れ電流に対してインダクタンスとして作用するコモンモード電圧V1と位相がほぼ一致する印加電圧としての電圧V4が印加されるすなわち電圧が発生する。
すなわち、第1のコモンモードトランス1によりコモンモード電流により発生するコモンモード電圧V1を検出し、フィルタ6により周波数別のゲインが調整された電圧V2として出力される。この電圧V2を電圧増幅器3でG倍に増幅した出力電圧V3が電圧増幅器3から出力される。出力電圧V3は、コンデンサ7を通過することにより直流成分が除去され交流成分が電圧V4としてコンデンサ7から出力される。この電圧V4が第2のコモンモードトランス2の巻線24にコモンモード電圧V1と位相がほぼ一致するようにして印加される。これにより、コモンモードトランス2を用いて巻き線11,12,13に流れるコモンモード電流を電圧増幅器3より供給する。コモンモードトランス2よりコモンモード電流を供給する事により、三相RSTから供給されるコモンモード電流が小さくなるため、コモンモードトランス1により検出される電圧値V1が小さくなるため、必要以上の電圧増幅器3からのコモンモード電流の供給を抑えることができる。このため、電圧増幅器3のゲインの制限は上記フィルタの定数を調整することにより1倍以上に設定することができる。
ここで、図2に示すように接続された高周波漏れ電流低減装置100の等価回路を図5に示す。図5において、図2におけるコンバータ41及びインバータ42がノイズ発生源であり、まとめてノイズ電圧源800として表し、そのノイズ電圧をeとする。ノイズ電圧源800のコモンモードインピーダンスをZ、交流電源40のコモンモードインピーダンスをZmとする。第1のコモンモードトランス1の等価回路を一次側及び二次側巻線801a,801b(巻き数比1:1とする)を有するトランス回路801で表す。
第2のコモンモードトランス2の等価回路を一次側及び二次側巻線802a,802b(巻き数比1:1とする)を有するトランス回路802で表す。電圧増幅器3の等価回路を増幅器回路803で表す。トランス回路801の二次側巻線801b(コモンモード電圧検出用の巻線14)に増幅器回路803が接続され、その入力インピーダンスは高いため二次側巻線801bに電流は僅かしか流れない。従って、トランス回路801の一次側巻線801aには、コモンモード電流J2により電圧V1が発生する。また、トランス回路802の二次側巻線802b(巻線24)の両端には、増幅器回路803によりゲインG倍に増幅された電圧V3がコンデンサ7を介して巻線802bに印加される。従って、トランス回路802の一次側巻線802aの両端に発生する電圧V4により、コモンモード電流J2が抑制される。
一方、従来の漏れ電流低減装置の等価回路を図6に示す。図6において、電流を検出するためのトランス回路901、電流を注入するためのトランス回路902、及び電流注入源としてのトランジスタにて構成された電流増幅回路903が図示のように接続されている。トランス回路901は、一次側及び二次側巻線901a,901bを有する。トランス回路902は、一次側及び二次側巻線902a,902bを有する。トランス回路901の二次側巻線901bに電流増幅回路903が接続され、トランス回路901により検出されたコモンモード電流J3をk倍に増幅して、電流J4(=J3×k)を出力する。電流J4はトランス回路902の主巻線側である一次側巻線902aに流れる。ここで、k=1を想定すると、図6中のいずれの電線においてもコモンモード電流は打ち消しあう。このようにしてコモンモード電流J3が抑制される。ところが、実際には部品のバラつきや温度変化等によりk=1の条件が外れて、十分なノイズ低減効果が得られなくなるという問題点がある。
しかし、本実施の形態によれば第2のコモンモードトランス2の巻線21、22、23の両端におけるインダクタンスが増加するため、三相の巻線21、22、23に流れるコモンモード電流を抑制することができる。また、電圧増幅器3は、例えばオペアンプによる簡単な増幅回路を適用できるため、構成を簡易化することができる。
以上のように、三相の巻線21、22、23にコモンモードの電圧が発生するため、第1のコモンモードトランス1のインダクタンスがフィルタ6及び電圧増幅器3により周波数別に調整されたゲインG倍のインダクタンスが第2のコモンモードトランス2の両端に発生したことと等価になる。フィルタ6の設定は、例えば複数のハイパスフィルタとローパスフィルタとを組み合わせて周波数別のゲインを調整し、ノイズが大きく発生している周波数帯のゲインを大きくする。なお、コモンモード電圧印加用の巻線24に印加される出力電圧V4は、コモンモード電圧V1と厳密に位相が一致しなくてもよく、この発明の目的を損なわない範囲ですなわちほぼ同じ位相に印加されればよい。
このように、フィルタ6やコンデンサ7により選別された周波数において、第2のコモンモードトランス2の巻線21、22、23の両端におけるインダクタンスが増加するため、三相の巻線21、22、23に流れるコモンモード電流を抑制することができる。また、電圧増幅器3は、例えばオペアンプによる簡単な増幅回路を適用できるため、構成を簡易化することができる。さらに、ノイズ検出にトランス(コモンモードトランス)を用いることで、主回路である接続線91r,91s,91t及び接続線93r,93s,93tに対してフィルタ6及び電圧増幅器3を絶縁し、フィルタ6を介してノイズ成分のみ検出することができる。このため、フィルタ6及び電圧増幅器3に使用する電子部品は耐圧の大きなものを使用する必要がなく、装置の小型化、低コスト化が実現できる。
なお、ノイズの発生状況に応じてコンデンサ7のみもしくはフィルタ6のみを設けた構成としてもよい。
また、第1のコモンモードトランス1によりコモンモード電圧V1を検出するが、巻線14の両端電圧を精度良く検出できるように電圧増幅器3の入力インピーダンスは大きい値に設定されている。これは、入力インピーダンスを小さくするとコモンモード電圧V1の検出精度が低下するためである。一方、従来例ではコモンモード電流を検出する必要があるため、入力インピーダンスは比較的小さく設定して電流を流す必要がある。このため、従来例では電流検出用のトランス(電流検出用コイル)で発生するコモンモード電圧は巻線(図1の巻線14に相当)の出力側で概ね短絡されるためコモンモードインピーダンスが殆ど発生しない。一方、この実施の形態では第1のコモンモードトランス1によりコモンモード電圧が発生する状態で電圧を検出するため、第1のコモンモードトランス1により発生するコモンモードインピーダンスによるノイズ低減効果が重畳され、さらなるノイズ低減効果を奏する。
また、電圧増幅器3の接続される回路のインピーダンス、内蔵する図示しないオペアンプの遅れ時間などの特性により、検出したコモンモード電圧V1とオペアンプの出力電圧V3の位相が反転してしまう周波数や配線の共振周波数においては、電圧増幅器3がノイズを増幅してしまう現象が発生する。さらに、インバータが接続されている場合(詳細は後述する実施の形態3である図8の高周波漏れ電流低減装置300及びインバータ42参照)、インバータのキャリアの周波数付近など除去する必要のない低い周波数領域のノイズが混在するため、上記周波数帯のゲインを上記フィルタにより下げることにより、ノイズを増幅することなく低減したい周波数帯のノイズのみを低減することができる。
また、フィルタ6の定数を調整することにより、位相が反転する周波数を調整することができるため、オペアンプなどの遅れ時間などに起因する電圧増幅器3から出力される出力電圧V4(第2のコモンモードの巻線24に印加される電圧である)の位相がコモンモード電圧V1に対して反転する周波数を調整することができる。これにより、位相反転する周波数帯のゲインに余裕がとれるため、低減したい周波数帯のノイズに対するオペアンプのゲインを大きくとることができ、安定に動作させることができる。周波数帯は、例えばノイズ規格で決められた周波数帯である150kHz以上の周波数帯域や、系統や母線のノイズを測定した結果を基にノイズ成分の大きかった周波数帯域になるようにフィルタ定数を調整し、これら周波数帯域の漏れ電流によるノイズを効果的に低減できるようにする。
また、電圧増幅器3のオペアンプの出力電圧V3にオフセットなどにより直流成分が発生している場合、オペアンプ出力が直接第2のコモンモードトランス2に印加されると、オペアンプに接続された負荷が第2のコモンモードトランス2の巻き線の抵抗分のみとなりほぼ短絡状態となってしまうため、正常に動作しなくなったり、余分な制御電力が必要となってしまう。しかし、この実施の形態においては、オペアンプの出力電圧V2はコンデンサ7を介し第2のコモンモードトランス2に入力されるため、オフセット電圧などによる直流電流がコンデンサ7により遮断されるため、オペアンプの過電流動作を防止し、正常に動作させることができる。
ところで、コンバータ41のFET41aやインバータ42のIGBT42aなどのスイッチング素子として、昨今、ワイドバンドギャップ半導体の例として炭化珪素(シリコンカーバイド、SiC)、窒化ガリウム系材料、ダイヤモンド等にて形成されたスイッチング素子が用いられ、スイッチング動作をさらに高速化できるようになってきたが、高速化と相まってノイズの発生量が増加傾向にある。この実施の形態の高周波漏れ電流低減装置によれば、上記のような問題点があっても、スイッチング素子の種類を選ぶことなく高周波漏れ電流を低減して発生するノイズを小さくするように動作可能である。従って、炭化珪素等にて形成され高速でスイッチング動作するスイッチング素子が発生するノイズを効果的に低減できる。また同様に、電圧増幅器3において、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、ダイヤモンド等のワイドバンドギャップ半導体にて形成されたFET3dなどの半導体素子によって増幅する場合であっても、ノイズ発生の影響を軽減し、高周波の漏れ電流を低減することができる。
なお、図2に示すように、交流電源40とコンバータ41との間に高周波漏れ電流低減装置100を設置すると、コンバータ41やインバータ42が発生する全てのコモンモード電流が抑制の対象となるため、交流電源40へのノイズ伝播を効果的に抑制することができる。
実施の形態2.
図7は、実施の形態2である高周波漏れ電流低減装置の構成を示す構成図である。図7において、漏れ電流低減装置としての高周波漏れ電流低減装置200は、図2における高周波漏れ電流低減装置100の代わりに用いられているものであり、電圧増幅器3の動作用電力(電源)を、接続線91s,91tから供給するものである。高周波漏れ電流低減装置200は、ダイオード30の陽極側がS相の接続線91sに接続され、陰極側は抵抗31を介してコンデンサ33とコンデンサ34との直列回路のコンデンサ33側に接続されている。コンデンサ33とコンデンサ34との直列回路のコンデンサ34側はT相の接続線91tに接続され、コンデンサ33とコンデンサ34との接続点は接地されている。また、コンデンサ33とコンデンサ34との直列回路に並列にツェナーダイオード32が接続されている。
S相及びT相の接続線91s,91t間には交流電圧が発生するので、ダイオード30により半波整流され、抵抗31とツェナーダイオード32により分圧されて、コンデンサ33及び34において電圧増幅器3を駆動するための電源4及び5が得られる。なお、電源4及び5は、電圧増幅器3の電源端子3a,3bに接続される。その他の構成については、図1〜図4に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
このように、この実施の形態によれば、電圧増幅器3を駆動する直流の電源4,5を交流電源側から供給できるため、絶縁トランスやフライバックコンバータが不要となり、電源部分の小型化、低コスト化を図ることができる。
なお、図7では接続線91s,91tを用いて交流電源40(図2参照)から電圧増幅器3を駆動する直流の電源4,5を得ているが、接続線8r,8s,8tから整流して直流の電源を得てもよいし、図2における接続線49Pと接続線49Nとの間に同様のコンデンサ2個の直列回路を接続して直流の電源を得るようにしても同様の効果を奏する。
実施の形態3.
図8、図9は、実施の形態3を示すものであり、図8は高周波漏れ電流低減装置の別の接続例を示す接続図、図9はさらに別の接続例を示す接続図である。図8において、交流電源40に第1の電気装置としてのコンバータ41が接続され、このコンバータ41と第2の電気装置としてのインバータ42との間に漏れ電流低減装置としての高周波漏れ電流低減装置300が介挿されている。インバータ42の交流出力側は三相モータ43に接続され、三相モータ43を可変電圧可変周波数の三相交流で駆動する。なお、高周波漏れ電流低減装置300は、直流側に設置されるのでその直流が流れる主巻線が2つですむなど交流側に設置される図1に示した高周波漏れ電流低減装置100とは構成が若干異なるが、図1に示した高周波漏れ電流低減装置100と同様の機能を有するものである。
以上のように、インバータ42が接続されている場合、インバータ42のキャリアの周波数付近など除去する必要のない低い周波数領域のノイズが混在するため、上記周波数帯のゲインをフィルタ6により下げることにより、ノイズを増幅することなく低減したい周波数帯のノイズのみを低減することができる。また、このようにコンバータ41とインバータ42との間に設置すると、接続線は正負(49Pと49N)の2本しか存在しないため、第1のコモンモードトランス1及び2の巻線を各1個ずつ減らすことができ、高周波漏れ電流低減装置のさらなる小型化・低コスト化が実現できる。
また、図9に示すように第1の電気装置としてのインバータ42と第2の電気装置としての三相モータ43との間に漏れ電流低減装置としての高周波漏れ電流低減装置400を設置し、これらを図9における高周波漏れ電流低減装置400の左方の接続線95r,95s,95t及び図9における高周波漏れ電流低減装置400の右方の接続線96r,96s,96tにて接続することもできる。なお、高周波漏れ電流低減装置400は、仕様は若干異なるが図1の高周波漏れ電流低減装置100と同様の機能を有するものである。
なお、電圧増幅器3を駆動する直流の電源は、図8の高周波漏れ電流低減装置300においては、コンバータ41側の接続線49P,49Nあるいはインバータ42側の接続線49P,49Nから得てもよい。また、図9の高周波漏れ電流低減装置400においては図8に示した高周波漏れ電流低減装置300と同様にして接続線95r,95s,95tあるいは接続線96r,96s,96tから交流を得て、この交流を整流して直流の電源を得るようにすることもできる。
実施の形態4.
図10は、実施の形態4を示す高周波漏れ電流低減装置の構成図である。図10においいて、高周波漏れ電流低減装置600は、電圧印加手段としての電圧注入回路62を有する。電圧注入回路62は、図1の第2のコモンモードトランス2の代わりに設けられたものである。電圧注入回路62は、電圧注入用コンデンサとしてのコモンモード電圧印加用のコンデンサ621,622,623とインピーダンス装置としての接地抵抗器624とを接続して構成されている。具体的には、一対の端子を有するコンデンサ621,622,623は、一方の端子が三相の接続線93r,93s,93tにそれぞれ接続され、他方の各端子が中性点である共通接続点62Nにて共通に接続されてY結線とされている。そして、共通接続点62Nが接地抵抗器624を介して接地されている。接地抵抗器624を設けることにより、ノーマルモードノイズなどの影響によりY結線されたコンデンサ621,622,623の共通接続点62Nの電位を安定させることができる。また、フィルタ67の図示しないコンデンサと接地抵抗器624とによりハイパスフィルタを形成し、規格周波数以下の電圧の注入を防ぐ機能を有するようにもできる。
コモンモード電圧検出用の巻線14の出力はフィルタ6を介して電圧増幅器3の正側入力端子に供給され、FET3dにて電圧増幅されて出力側フィルタとしてのフィルタ67を介してコンデンサ621,622,623の共通接続点62Nと接地抵抗器624との接続点に出力電圧として印加される。その他の構成については、図1に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
フィルタ6で周波数別にゲインを調整することにより、コモンモードトランス1が検出したコモンモード電圧V1と電圧増幅器3に内蔵された図示しないオペアンプの出力電圧V3の位相が反転してしまう位相反転周波数帯を調整することができるため、オペアンプなどの遅れ時間などに起因する電圧増幅器3の位相が反転する周波数を調整することができる。これにより位相反転する周波数帯のオペアンプのゲインに余裕が取れるため、低減したい周波数帯のノイズに対するオペアンプのゲインを大きくとることができる。
また、対象とする三相電源の系統が1相接地されている場合、電圧増幅器3の出力に電源系統の1相分の電圧が印加されることがある。この電圧により電圧増幅器3の動作に悪影響が生じてしまうため、電圧増幅器3の出力側にフィルタ67を接続し、電圧注入回路62を通じて電源系統の1相分の電圧が印加されるのを防ぐことができる。なお、フィルタ67はコンデンサと抵抗器からなるハイパスフィルタで構成されている。上記フィルタ67の抵抗器の代わりに電圧増幅器3の出力インピーダンスで代用できる場合は、フィルタ67としてコンデンサのみで構成してもよい。
なお、電圧注入回路62の変形例としては、接地抵抗器624の代わりにインピーダンスとしてのコンデンサを設ける構成とすることもできる。電圧増幅器3が接続される回路のインピーダンス、電圧増幅器3に内蔵された図示しないオペアンプの遅れ時間などの特性により、コモンモードトランス1が検出したコモンモード電圧V1と電圧増幅器3のオペアンプの出力電圧V3の位相が反転してしまう位相反転周波数や配線との共振周波数においては、電圧増幅器3が異常な電圧を出力してしまう現象が発生する。しかし、コンデンサ621,622,623の容量を調整することにより上記位相反転周波数や共振周波数を調整することができ、上記のような異常が発生する周波数をノイズ規格により定められた低減すべき周波数から離すことができる。
以上のように、この実施の形態における漏れ電流低減装置としての高周波漏れ電流低減装置600においては、電圧印加手段としての電圧注入回路62は、一方及び他方の一対の端子を有する電圧注入用コンデンサとしての複数のコンデンサ621〜623を有し、一方の端子が複数の接続線93r,93s,93tにそれぞれ接続され他方の端子が共通接続点62Nにおいて共通に接続されるとともに共通接続点62Nがインピーダンス装置としての接地抵抗器624を介して接地されたものであり、共通接続点62Nとアースとの間に電圧増幅器3からの出力である電圧V4が印加されることにより接続線に検出電圧と位相がほぼ一致する印加電圧が発生するようにされたものである。
なお、上記各実施の形態においては、第1のコモンモードトランス1は、巻線11,12,13及び巻線14が図示しない鉄心にそれぞれ同数の5回巻回されているものを示した。また、第2のコモンモードトランス2は、巻線21,22,23及び電圧印加用の巻線としてのコモンモード電圧印加用の巻線24が図示しない鉄心にそれぞれ同数の5回巻回されているものを示した。しかし、これに限定されるものではなく、コモンモード電圧検出用の巻線14の巻数を巻線11,12,13の巻数に対してN(Nは2以上の整数)倍とすることもできる。この場合、コモンモード電圧の検出値はV1×Nとなる。
このようにコモンモード電圧の検出値をN倍とし、すなわちコモンモード電圧検出用の巻線14の巻数を巻線11,12,13の巻数よりも大きくして、検出電圧を大きくすることにより、第1のコモンモードトランス1のインダクタンスのN×G(Gはゲイン)倍のインダクタンスが第2のコモンモードトランス2の巻線24に印加されることになる。従って、接続線91r〜91t及び巻線21,22,23に流れるコモンモード電流をさらに抑制することができる。また、巻数比Nを大きく設定する場合には電圧増幅器3のゲインGを相対的に小さく設定することも可能であり、電圧増幅器3のゲイン誤差やオフセット誤差の発生を抑制することができる。また、第1のコモンモードトランス1を小型化してインダクタンスが小さいものを適用してもNを大きく設定すれば充分な大きさのコモンモード電圧が検出可能となる。また、巻線24はコモンモード電圧検出を目的としており電流はそれほど流れないことから細い電線を使用できるためNを大きく設定することは比較的容易である。
また、第1のコモンモードトランス1は、巻線11,12,13の巻数をコモンモード電圧検出用の巻線14の巻数に対してN(N2以上の整数)倍とすることもできる。このようにコモンモード電圧検出用の巻線14の巻数を巻線11,12,13の巻数の1/Nとすることによりコモンモード電圧の検出値はV1/Nとなるが、適用する第1のコモンモードトランス1の巻線11,12,13の巻数が大きい場合でも、コモンモード電圧検出用の巻線14を小さく設定できるため、巻線14の実装が容易となるという効果が得られる。なお、コモンモード電圧の検出値はV1/Nとなるが、電圧増幅器3のゲインGを大きく設定することにより所望の漏れ電流低減効果を得ることができる。
また、上記各実施の形態では、第1及び第2のコモンモードトランスは鉄心に巻回された巻線11〜13,14や21〜23,24等を有するものを示したが、これに限られるものではなく、例えば環状の鉄心を接続線91r,91s,91tが貫通するものであって上記環状の鉄心にコモンモード電圧検出用の巻線14やコモンモード電圧印加用の巻線24が巻回されたものであっても、同様の効果を奏する。
なお、フィルタ6は、1個あるいは複数の個別フィルタにて、かつこれらの個別フィルタを通過周波数特性を調整できるものや固定のものを、並列や直並列に接続するなど適宜組み合わせて、所望の特性を有するフィルタを構成することができる。
また、図1及び図7に示した出力側フィルタとしてのコンデンサ7の代わりに図10の第2のフィルタとしてのフィルタ67を用いることもできる。さらに、フィルタ6を省略することもできる。

Claims (13)

  1. 電圧検出手段と入力側フィルタと電圧増幅器と電圧印加手段とを有し、第1の電気装置と第2の電気装置との間に接続線を介して挿入される漏れ電流低減装置であって、
    上記電圧検出手段は、主巻線と漏れ電流検出用の巻線とを有し、
    上記主巻線は上記接続線を介して上記第1の電気装置と上記第2の電気装置との間に挿入され、上記漏れ電流検出用の巻線により上記接続線を流れる漏れ電流を検出電圧として検出するものであり、
    上記入力側フィルタは、上記検出電圧が入力され、該検出電圧の周波数別の大きさと位相を調整して出力するものであり、
    上記電圧増幅器は、上記入力側フィルタの出力を増幅して出力電圧として出力するものであり、
    上記電圧印加手段は、上記電圧増幅器の出力電圧に基づいて上記接続線に上記漏れ電流を低減するための印加電圧を発生させるものである、
    漏れ電流低減装置。
  2. 上記入力側フィルタは、該入力側フィルタの出力の内、上記電圧増幅器の出力電圧の位相が上記検出電圧に対して反転する周波数の成分を抑える、
    請求項1に記載の漏れ電流低減装置。
  3. 上記電圧印加手段は、上記電圧増幅器の出力電圧に基づいて上記接続線に上記検出電圧と位相がほぼ一致する印加電圧を発生させるものである
    請求項1または請求項2に記載の漏れ電流低減装置。
  4. 上記電圧印加手段は、主巻線と電圧印加用の巻線とを有し、
    上記電圧検出手段の上記主巻線と上記電圧印加手段の上記主巻線とが直列に接続されるとともに上記接続線を介して上記第1の電気装置と上記第2の電気装置との間に挿入されるものであり、
    上記電圧印加用の上記巻線に上記電圧増幅器の出力電圧が印加されることにより上記電圧印加手段の上記主巻線に上記検出電圧と位相がほぼ一致する印加電圧を発生するものである
    請求項3に記載の漏れ電流低減装置。
  5. 出力側フィルタを有する漏れ電流低減装置であって、
    上記電圧印加手段は、上記電圧印加用の上記巻線に上記出力側フィルタを介して上記電圧増幅器の出力電圧が印加されるものである
    請求項4に記載の漏れ電流低減装置。
  6. 上記入力側フィルタは、通過周波数範囲を調整可能にされたものである
    請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の漏れ電流低減装置。
  7. 上記入力側フィルタは、それぞれの通過周波数範囲を調整可能にされたフィルタが並列もしくは直列、または直並列多段に接続されたものである
    請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の漏れ電流低減装置。
  8. 上記入力側フィルタは、その定数が調整可能であって、上記定数を変更することにより上記電圧増幅器の出力電圧の位相が上記検出電圧に対して反転する周波数を調整可能にされたものである、
    請求項6に記載の漏れ電流低減装置。
  9. 上記電圧増幅器は、その出力電圧における、上記検出電圧に対して位相が反転する周波数の成分を抑制すると共に、該周波数を調整可能にされたものである、
    請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の漏れ電流低減装置。
  10. 上記第1及び第2の電気装置の一方はパルス幅変調方式のインバータであり、
    上記入力側フィルタは、上記検出電圧の周波数成分のうちの上記インバータのキャリアの周波数以下の周波数成分の通過を制限するものである
    請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の漏れ電流低減装置。
  11. 上記第1の電気装置は交流電源であり、上記第2の電気装置は上記交流電源の交流電力を直流に変換するコンバータである
    請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の漏れ電流低減装置。
  12. 上記第1の電気装置は交流電力を直流電力に変換するコンバータであり、上記第2の電気装置は上記コンバータの上記直流電力を交流に変換するインバータである
    請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の漏れ電流低減装置。
  13. 上記第1の電気装置は直流電力を交流に変換するインバータであり、上記第2の電気装置は上記インバータにより駆動される負荷である
    請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の漏れ電流低減装置。
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