JP5525489B2 - コンクリート床版の接合構造 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート床版の接合構造に関するものである。
橋梁や人工地盤等の床版を場所打ちコンクリートにより施工する場合は、支保工等を設置するための十分な施工スペースが必要である。また、コンクリートの打設、養生、脱型等に日数を要するため、工期の短縮化が困難であった。
一方、プレキャスト製の床版部材を使用すると、工期短縮化を図ることができる。
このような床版部材としては、プレストレストコンクリート(PC)構造の床版と、鉄筋コンクリート(RC)構造の床版とがある。
RC構造の床版では、自動車荷重等の繰り返し載荷により、床版の接合部において疲労損傷が生じるおそれがある。一方、PC構造の床版は、RC構造の床版と比較して疲労耐久性に優れている。
また、PC構造の床版は、RC構造の床版と比較して、軽量化が可能であるため、床版架設時のクレーン能力や完成時の地震荷重に対しても優位である。
このような、PC構造の床版の接合構造として、接合部をリブ構造とする場合がある(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
従来の接合構造では、接合面が床版上面からリブ下面まで連続して形成されているため、リブの下面において継目が露出することになる。
床版の上面から下面まで連続する接合面を有する接合構造では、床版接合部に正曲げモーメント(床版の上側に圧縮応力が発生し、下側に引張応力が発生する曲げモーメント)が作用した際に、接合部の下縁に曲げ引張応力による目開きが生じるおそれがあった。
なお、特許文献1では、リブ構造を貫通する締め付けボルトを配設することにより接合部の下縁における目開きを防止している。
また、特許文献2では、継目を跨ぐように配設された締め付けボルトにより接合部の下縁における目開きを防止している。
特開平8−246415号公報 特開2010−261246号公報
ところが、特許文献1および特許文献2の接合構造では、締め付けボルトを配設して締め付ける作業が、工期短縮化の妨げとなっていた。
また、継目が下面に露出しているため、接合部の下方において上向きで目地部の処理作業を行う必要があり、その作業に手間を要していた。
本発明は、前記課題を解決するものであって、工期の短縮化を可能とし、施工性にも優れた床版の接合構造を提案することを課題とする。
前記の課題を解決する本発明の床版の接合構造は、第一床版部材および第二床版部材の端面同士を突き合せた状態で接合するものであって、前記第一床版部材は、その本体部から前記第二床版部材に向って張り出す張出部を有し、前記第一床版部材の本体部の端面と前記第二床版部材の端面との間に縦目地が形成されており、前記第一床版部材の張出部の上面と前記第二床版部材の下面との間に横目地が形成されており、前記縦目地および前記横目地には充填材が充填されており、前記縦目地および前記横目地は連続しており、前記縦目地の上端と前記横目地の先端が外面に面していることを特徴としている。
かかる床版の接合構造によれば、縦目地と横目地とが連続していることで、継目が下面に露出していないため、接合部の下縁において曲げ引張応力による目開きが生じるおそれがない。そのため、締め付けボルトの設置に要する手間を省略あるいは簡略化することができ、工期の短縮化を図ることができる。
また、目地が下面に露出していないため、上向きでの目地の処理作業を要しない。
なお、充填材は、セメント系充填材であってもよいし、接着剤であってもよい。
前記床版の接合構造において、前記第一床版部材および前記第二床版部材のそれぞれに凹部が形成されており、前記両凹部が前記縦目地または前記横目地を挟んで対峙していて、前記各凹部に前記充填材が充填されている場合には、硬化した充填材がせん断キーとして機能する。
また、前記第一床版部材および前記第二床版部材の一方に凹部が形成されているとともに他方に凸部が形成されており、前記凹部および前記凸部が前記縦目地または前記横目地を挟んで対峙していて、前記凹部に前記凸部が入り込んでいる場合には、この凹部と凸部がせん断キーとして機能する。
前記床版の接合構造において、前記第二床版部材の端部には、これを上下に貫通する貫通孔が形成されており、前記第一床版部材の張出部には、その上面が開口する有底の挿入孔が形成されており、前記挿入孔は、前記貫通孔の直下に位置し、前記挿入孔および前記貫通孔に目開き防止部材が挿入されている場合には、横目地の目開きを抑制する目開き防止部材の設置作業を容易に行うことができる。
前記床版の接合構造において、一端が前記第二床版部材に埋設されて、他端が前記第一床版部材の張出部に埋設された目開き防止部材を備えていれば、横目地を引き離すような上下方向の引張力が発生した場合であっても、目開きを抑制することができる。
本発明の床版の接合構造によれば、工期の短縮化を可能となり、また、施工性にも優れている。
本発明の実施の形態に係る床版の接合構造における床版部材の設置状況を示す斜視図である。 第一の実施の形態に係る床版の接合構造を示す拡大図である。 (a)は第一の実施の形態に係る床版の接合構造による曲げモーメントに対する抵抗メカニズムを示す図、(b)〜(d)は応力分布図である。 第二の実施の形態に係る床版の接合構造を示す拡大図である。 第三の実施の形態に係る床版の接合構造を示す拡大図である。 第四の実施の形態に係る床版の接合構造を示す拡大図である。 第五の実施の形態に係る床版の接合構造を示す拡大図である。
本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。
以下に示す実施形態では、図1に示すように、橋軸方向に沿って複数のプレキャストコンクリート製の床版部材10,10,…を連結することにより、橋梁を構築する場合について説明する。なお、図面において、符号20は主桁である。
<第一の実施の形態>
第一の実施の形態に係る床版の接合構造1は、図2に示すように、隣り合う床版部材10同士(第一床版部材10aおよび第二床版部材10b)の端面同士を突き合せた状態で接合するものである。
床版部材10は、図1に示すように、版状の本体部11と、一方の端部に形成された張出部12と、他方の端部に形成された増厚部13とを備えて構成されている。
また、床版部材10には、床版の部材厚を下方向に増厚するように、中間リブ16が所定の間隔毎に形成されている。なお、中間リブ16は、必要に応じて形成すればよく、その数や形状も限定されるものではない。
張出部12は、図2に示すように、床版部材10(第一床版部材10a)の一方の端部において、本体部11から隣接する他の床版部材10(第二床版部材10b)に向って張り出す部分である。
張出部12は、本体部11の下面に突設されている。本実施形態の張出部12は、本体部11の下面から下方向に延びる第一片12aと、第一片12aの下端から第二床版部材10b方向に延びる第二片12bとにより、L字状に形成されている。
第二片12bは、隣り合う床版部材10,10の端面同士を突き合わせた状態で、他方の床版部材10(第二床版部材10b)の下面端部を覆う。
なお、張出部12の形状は、本体部11の下面から隣接する他の床版部材10に向って張り出す形状であれば限定されるものではない。
本実施形態では、床版部材10の一方の端部には、二つの溝15a,15b(凹部15)が形成されている。溝15a,15bは、橋軸直角方向に連続しており、本体部11の端面および張出部12(第二片12b)の上面にそれぞれ形成されている。
本実施形態では、断面台形状の溝15a,15bを形成するが、溝15a,15bの断面形状は限定されるものではない。
増厚部13は、床版部材10の他方の端部において、下方向に増厚するように形成された部分であり、本体部11の下面に突設されている。
床版部材10の他方の端部には、二つの溝15a,15bが形成されている。溝15a,15bは、橋軸直角方向に連続しており、本体部11の端面および増厚部13の下面に、それぞれ形成されている。なお、溝15a,15bは、必ずしも連続している必要はなく、間欠的に形成されていてもよい。
床版部材10同士(第一床版部材10aおよび第二床版部材10b)の接合は、本体部11の端面同士を突き合わせるとともに、第一床版部材10aの張出部12と第二床版部材10bの増厚部13とを重ね合わせることにより行う。
増厚部13の下に張出部12を位置させつつ本体部11の端面同士を突き合わせると、第一床版部材10aの本体部11の端面と第二床版部材10bの端面との間には縦目地J1(隙間)が形成され、第一床版部材10aの張出部13(第二片13b)の上面と第二床版部材10bの増厚部13の下面との間には横目地J2(隙間)が形成される。
縦目地J1と横目地J2は、側面視L字状に連続する。
また、張出部12と増厚部13とを重ね合わせることにより、床版部材10同士の接合部において、床版の部材厚を下方向に増厚するリブ部14が形成される。つまり、本実施形態の床版の接合構造1では、橋軸方向と直交するリブ部14が形成されている。
第一床版部材10aの本体部11の端面に形成された溝15aと第二床版部材10bの本体部11の端面に形成された溝15aは、縦目地J1を挟んで対峙している。
また、第一床版部材10aの張出部13の上面に形成された溝15bと第二床版部材10bの増厚部13の下面に形成された溝15bは、横目地J2を挟んで対峙している。
縦目地J1、横目地J2および各溝15a,15bには充填材30が充填されている。本実施形態では、充填材30として、セメント系充填材を採用する。なお、充填材30を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、セメント系充填材に急結材を混入した急結性セメント系充填材、セメント系充填材に補強繊維を混入したセメント系繊維補強充填材、セメントに樹脂を混入したレジンモルタル系充填材等を使用してもよい。
横目地J2の開口端(リブ部14の側面に現れる横目地J2の開口)は、シール材Sにより閉塞されている。
なお、シール材Sを構成する材料は限定されるものではなく、例えば、可撓性のあるクロロプレンゴム、天然ゴム、加硫ゴム、スポンジゴム、ウレタン樹脂等を使用すればよい。また、モルタル漏洩防止テープを採用してもよい。
本実施形態の床版の接合構造1の施工は、以下の手順により行う。
まず、図1に示すように、主桁20上に配設された第一床版部材10aに隣接して、第二床版部材10bを配置する。このとき、第二床版部材10bは、増厚部13が第一床版部材10aの張出部12上に位置するように配置する。
次に、図2に示すように、縦目地J1の上面から充填材30を注入して、縦目地J1、横目地J2および溝15a,15bを充填する。充填材30が硬化すると、溝15a,15bに入り込んだ充填材30がせん断キーとなる。
なお、充填材30を充填する際には、横目地J2の側端面をシール材Sにより予め閉塞しておく。また、接合部の側端面(図2における紙面前側の開口端と奥側の開口端)には、図示しない型枠を設置しておく。
充填材30に所定の強度が発現したら、脱型するとともに、緊張材(床版部材10,10に配索された緊張材または橋梁全体にわたって配索された緊張材(外ケーブル))を緊張し、床版接合部または床版全体に圧縮応力を導入する。
これにより、床版部材10同士が一体に接合された橋梁が形成される。
本実施形態の床版の接合構造1によれば、床版部材10同士の接合部の下面に、接合面(目地)が露出しておらず、張出部が引張抵抗材として機能することで、接合部の下縁において目開きが生じることはない。
図3の(a)に示すように、床版の接合構造1に正の曲げモーメントMが作用した場合の中心部CLにおける応力分布は、図3の(b)のようになる。ここで、正の曲げモーメントMとは、図3の(a)に示すように、床版の上縁に曲げ圧縮応力c、下縁に曲げ引張応力tが作用するようなモーメントMをいう。また、プレストレス導入による応力分布は図3の(c)のようになるから、正の曲げモーメントMによる応力分布とこれらを合成すると、図3の(d)のような応力分布となる。
図3に示すように、床版部材10同士の接合部では、緊張材により導入されたプレストレスPのより、接合部に緊張圧縮応力が導入されるが、リブ部14に導入される緊張圧縮応力は、本体部11に導入させる緊張圧縮応力よりも小さくなるため(図3の(c)参照)、リブ構造の下縁接合部では、曲げモーメントMによる引張応力が残存する(図3の(d)参照)。
そのため、接合部の下縁において目地が露出している従来の接合構造では、下縁の接合部に十分な緊張応力が導入されていないため、正の曲げモーメントMが作用した場合に目開きが発生してしまう。
一方、本実施形態の床版の接合構造1によれば、接合面に十分な緊張応力を実現することができない場合であっても、接合部の下縁は、張出部12により形成されたリブ部14の一部であるため、接合面の下縁において目開きが生じる従来の接合構造が有する問題点を解消することができる。
なお、一般的にコンクリート材料は、設計的には引張応力の発生に対しては抵抗を無視して設計するが、コンクリートは圧縮強度の1/10程度の引張強度を有していることが知られている。また、床版コンクリートとして、セメントと、シリカフュームやフライアッシュと、高炉スラグなどの混和材粒子と、細砂や珪砂などの骨材と、高性能減水剤と水とを混入して得られるセメント系マトリックスに、直径が0.1mm〜0.3mm、長さが10mm〜30mmの形状を有する繊維を容積で1%〜4%混入して得られる、いわゆる高強度繊維補強コンクリートを適用した場合には、圧縮強度が150N/mm〜200N/mm、曲げ引張強度が25N/mm〜45N/mmの特性を有することができるため、より効果的である。
また、本実施形態の床版の接合構造1によれば、横目地J2についても、目開きが生じることはない。
つまり、正の曲げモーメントMが接合部に作用すると、水平方向の曲げ引張応力は発生するものの、鉛直方向の引張応力は発生しない。そのため、正の曲げモーメントMによっては、リブ部14の側面(横目地J2)における目開きは発生しない。
また、リブ部14に発生するせん断力により、横目地J2には引張応力(第二片12bと増厚部13を引き離そうとする力)が働くが、床版に導入されたプレストレスPにより接合面に働く垂直抗力が増し、接合面での最大摩擦力が大きくなるので、横目地J2に引張応力が作用しても第二片12bと増厚部13が離間しなくなる。
さらに、縦目地J1には、せん断キーKが設けられているため、高いせん断剛性を保持しながらせん断抵抗し、横目地J2における引張力の発生(ずれの発生)を抑制することができる。
本実施形態の床版の接合構造1によれば、橋軸直角方向に沿ってリブ部14が形成されているため、床版に働く曲げモーメントが、曲げ剛性の高いリブ部14により、橋軸直角方向に分配される。つまり、リブ部14の主方向(橋軸直角方向)に曲げモーメントが分配されるので、接合部として負担しなければならない引張応力が減少する。
なお、床版は版構造であるため、自動車荷重や自重等の設計荷重による設計断面力としては、主に曲げモーメントが卓越する。自動車荷重等により床版に作用する卓越した曲げモーメントは、一般的に橋軸直角方向となるため、床版は橋軸方向で接合するのが合理的である。つまり、床版補強の主方向は、橋軸直角方向になるので、床版に作用する橋軸方向の曲げモーメントを小さくするのが設計上有利である。特に、床版同士の接合部では、橋軸方向の曲げモーメントが小さい方が有利となる。
床版の接合構造1は、接合部にリブ部14が形成されているため、床版部材10の製作精度や架設精度などの影響により、接合部において上下左右のズレが生じる場合であっても、リブ部14において誤差を吸収することができるため、高品質施工が可能となる。
また、溝15a,15aに充填された充填材30が硬化することで、縦目地J1にせん断キーKが形成されるため、縦目地J1に面する接合面に作用するせん断力が大きい場合であっても、せん断キーKにより抵抗することで、接合部にズレが生じることが防止されるとともに横目地J2において、上下方向の引張応力が発生することを防ぐことが可能となる。
また、溝15b,15bに充填された充填材30が硬化することで、横目地J2にせん断キーKが形成されるため、第二片12bと増厚部13が横目地J2において重ね梁となることを防ぐことが可能となる。
なお、本実施形態では、縦目地J1に面するように溝15a,15aを形成するとともに横目地J2に面するように溝15b,15bを形成したが、溝15a,15b(凹部15)の数や位置は限定されるものではない。例えば、縦目地J1のみに面して凹部15を形成してもよいし、横目地J2のみに面して凹部15を形成してもよい。
充填材30を充填する際に設置する型枠として、接合部の両側面に設置して、リブ部14に沿って配置する型枠を省略または低減することができるため、従来の接合構造と比較して、大幅に数量を削減することが可能となり、早期施工および施工費の削減が可能となる。
接合部が床版の下面に露出していないため、床版の下方での上向き作業が減り、その結果、施工性が向上する。
また、床版の上面で大部分の作業を行うことができるため、広い作業スペースを確保でき、施工性に優れている。
<第二の実施の形態>
第二の実施の形態に係る床版の接合構造2は、図4に示すように、隣り合う床版部材10,10(第一床版部材10aおよび第二床版部材10b)の端面同士を突き合せた状態で接合するものである。
第一床版部材10aは、本体部11の端部に形成された張出部12を備えており、第二床版部材10bは、本体部11の端部に形成された増厚部13を備えている。
本実施形態の張出部12は、図2の溝15a,15bが形成されていない点で、第一の実施の形態の張出部12と異なっている。この他の張出部12の構成は、第一の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態の増厚部13は、図2の溝15a,15bが形成されていない点で、第一の実施の形態の増厚部13と異なっている。
また、増厚部13の下面は、先端(縦目地J1側)に向う従って高くなるように、傾斜している。なお、増厚部13の下面は、必ずしも傾斜している必要はない。
この他の増厚部13の構成は、第一の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
第一床版部材10aと第二床版部材10bの接合は、図4に示すように、互いの端面同士を突き合わせるとともに、第一床版部材10aの張出部12と第二床版部材10bの増厚部13とを重ね合わせることにより行う。
張出部12と増厚部13とを重ね合わせると、床版部材10同士の接合部において、床版の部材厚を下方向に増厚するリブ部14が橋軸方向と直交するように形成される。
第一床版部材10aの本体部11の端面と第二床版部材10bの端面との間には縦目地J1が形成されており、第一床版部材10aの張出部12(第二片12b)の上面と第二床版部材10bの増厚部13の下面との間には横目地J2が形成されている。
縦目地J1と横目地J2は、側面視L字状に連続している。
縦目地J1および横目地J2には充填材30が充填されている。充填材30の構成は、第一の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
また、横目地J2のリブ部14の側面に面する端部は、シール材Sにより遮蔽されている。シール材Sの構成は、第一の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態の床版の接合構造2によれば、横目地J2が傾斜しているため、充填材30を充填する際に、横目地J2内の空気が上方に抜けて空気溜まりの発生が防止される。
また、床版部材10同士の接合部の下面に、接合面(目地)が露出しておらず、張出部が引張抵抗材として機能することで、接合部の下縁において目開きが生じることはない。
また、床版に導入されたプレストレスにより縦目地J1における接合面に摩擦力が働くため、上下方向のずれが生じ難くなり、ひいては、横目地J2における目開きも生じ難くなる。
本実施形態の床版の接合構造2によれば、橋軸方向に対して直角方向にリブ部14が形成されているため、このリブ14により、第一の実施の形態の床版の接合構造1と同様の作用効果を得ることができる。
充填材30を充填する際に設置する型枠としては、リブ部14の両端面に設置するものだけでよく、リブ部14の長手方向(紙面垂直方向)に沿って配置する型枠は省略または低減することができる。そのため、従来の接合構造と比較して、大幅に型枠の数量を削減することが可能となり、早期施工および施工費の削減が可能となる。
なお、床版部材10の端面、張出部12の上面および増厚部13の下面は、必ずしも平面に形成されている必要はなく、曲面や多角形面であってもよい。
<第三の実施の形態>
第三の実施の形態に係る床版の接合構造3は、図5に示すように、隣り合う床版部材10(第一床版部材10aおよび第二床版部材10b)の端面同士を突き合せた状態で接合するものである。
第一床版部材10aは、版状の本体部11の端部に形成された張出部12を備えており、第二床版部材10bは、本体部11の端部に形成された増厚部13を備えている。
張出部12および増厚部13の構成は、第二の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態では、床版部材10の一方の端部に凸部17が形成されているとともに、他方の端部に凹部15が形成されている。
第一床版部材10aと第二床版部材10bの接合は、図5に示すように、互いの端面同士を突き合わせるとともに、第一床版部材10aの張出部12(一方の端部)と第二床版部材10bの増厚部13(他方の端部)とを重ね合わせることにより行う。
張出部12と増厚部13とを重ね合わせると、床版部材10同士の接合部において、床版の部材厚を下方向に増厚するリブ部14が橋軸方向と直交するように形成される。
第一床版部材10aの本体部12の端面と第二床版部材10bの端面との間には縦目地J1が形成されており、第一床版部材10aの張出部13(第二片13b)の上面と第二床版部材10bの増厚部13の下面との間には横目地J2が形成されている。
縦目地J1と横目地J2は、側面視L字状に連続している。
第一床版部材10aの端面に形成された凸部17と第二床版部材10bの端面に形成された凹部15は、縦目地J1を挟んで対峙していて、凹部15は凸部17に入り込んでいる。
縦目地J1および横目地J2には接着剤31(充填材)が充填されている。接着剤31の種類は限定されるものではないが、例えばエポキシ系やアクリル系の接着剤を使用すればよい。
本実施形態の床版の接合構造3の施工は、以下の手順により行う。
まず、主桁20上に配設された第一床版部材10aに隣接して、第二床版部材10bを配置する(図1参照)。このとき、第一床版部材10aの接合面(本体部11の端面や張出部12の上面等)には、接着剤31を予め塗布しておく。なお、接着剤31は、第二床版部材10bの接合面に塗布しておいてもよいし、第一床版部材10aおよび第二床版部材10bの両方に塗布してもよい。
次に、図示せぬ緊張材を緊張し、床版接合部または床版全体に緊張による圧縮応力(プレストレス)を導入する。
これにより、床版部材10同士が一体に接合された橋梁が形成される。
本実施形態の床版の接合構造3によれば、床版部材10同士の接合部の下面に、接合面(目地)が露出しておらず、張出部が引張抵抗材として機能することで、接合部の下縁において目開きが生じることはない。
また、本実施形態の床版の接合構造3によれば、横目地J2についても、目開きが生じることはない。
つまり、正の曲げモーメントMが接合部に作用すると、水平方向の曲げ引張応力は発生するものの、鉛直方向の引張応力は発生しない。そのため、正の曲げモーメントMによっては、リブ部14の側面(横目地J2)における目開きは発生しない。
また、床版に導入されたプレストレスにより縦目地J1における接合面に摩擦力が働くため、上下方向のずれが生じ難くなり、ひいては、横目地J2における目開きも生じ難くなる。さらに、縦目地J1には、凹部15に凸部17が入り込むことにより形成されたせん断キーKが設けられているため、高いせん断剛性を保持しながらせん断抵抗し、横目地J2における引張力の発生を抑制することができる。
本実施形態の床版の接合構造3によれば、橋軸方向に対して直角方向にリブ部14が形成されているため、このリブ14により、第一の実施の形態の床版の接合構造1と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、縦目地J1に面して凹部15または凸部17を形成するものとしたが、横目地J2に面して凹部15または凸部17を形成してもよいし、縦目地J1と横目地J2の両方にそれぞれ凹部15または凸部17を形成してもよい。
<第四の実施の形態>
第四の実施の形態に係る床版の接合構造4は、図6に示すように、隣り合う床版部材10同士(第一床版部材10aおよび第二床版部材10b)の端面同士を突き合せ、床版部材10,10の端部に目開き防止部材40を配置した状態で接合するものである。
第一床版部材10aは、版状の本体部11の端部に形成された張出部12を備えている。第二床版部材10bは、本体部11の端部に形成された増厚部13を備えているとともに、端部(本体部11および増厚部13)を上下に貫通する貫通孔18が形成されている。
貫通孔18は、橋軸直角方向に沿って間隔をあけて複数形成されている。
なお、貫通孔18の形状は限定されるものではない。
貫通孔18の内面には、充填材との付着性を向上させるために、凹凸が設けられているのが望ましい。貫通孔18の内面に凹凸を形成する場合には、例えば、スパイラルシースを型枠として使用すればよい。
張出部12は、第一床版部材10aの端部において、本体部11から第二床版部材10bに向って張り出す部分である。
本実施形態の張出部12は、第二片12bに、橋軸直角方向に連続する溝が形成されていない代わりに、上面が開口する有底の挿入孔19が形成されている点で、第一の実施の形態の張出部12と異なっている。
挿入孔19は、貫通孔18の配置ピッチに応じて形成するものとし、床版部材10の端面同士を突き合わせた状態で、貫通孔18の直下に位置するように形成されている。
また、挿入孔19の深さ(底面の位置)は、第二片12bの下面から所定のコンクリート被り厚さを確保することが可能な大きさとしている。
挿入孔19の内面には、充填材との付着性を向上させるために、凹凸が設けられているのが望ましい。挿入孔19の内面に凹凸を形成する場合には、例えば、スパイラルシースを型枠として使用すればよい。
この他の張出部12の構成は、第一の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
増厚部13は、床版部材10の他方の端部において、下方向に増厚するように形成された部分である。
本実施形態の増厚部13は、凹部15が形成されていない点で、第一の実施の形態の増厚部13と異なっている。この他の増厚部13の構成は、第一の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態では、床版部材10の端部には、本体部11の端面に凹部15が形成されている。なお、凹部15は必要に応じて形成すればよく、必ずしも形成されている必要はない。
目開き防止部材40は、貫通孔18と挿入孔19とに挿入する。このようにすると、目開き防止部材40の一端が第二床版部材10bに埋設され、他端が第一床版部材10aの張出部12に埋設されるようになる。
本実施形態は、目開き防止部材40として、線材41を主体として構成されたものを使用する。なお、線材としては、鋼材などの金属材料のほか、炭素繊維補強樹脂などの剛性樹脂材料など、選択材料の制限はない。また、充填材との付着性の向上を目的として、異形鉄筋のように表面に凹凸が設けられているのが望ましい。
線材41の両端には、線材41の直径よりも大きな幅を有した定着材42,42が形成されている。なお、定着材42は、線材41の長さにより十分な定着長が確保できれば省略してもよいし、一方の端部にのみ形成してもよい。
張出部12と増厚部13とを重ね合わせることにより、床版部材10同士の接合部において、床版の部材厚を下方向に増厚するリブ部14が形成される。つまり、本実施形態の床版の接合構造4では、橋軸方向と直交するリブ部14が形成されている。
第一床版部材10aの本体部12の端面と第二床版部材10bの端面との間には縦目地J1が形成されており、第一床版部材10aの張出部13(第二片13b)の上面と第二床版部材10bの増厚部13の下面との間には横目地J2が形成されている。
縦目地J1と横目地J2は、側面視L字状に連続している。
第一床版部材10aの端面に形成された凹部15と第二床版部材10bの端面に形成された凹部15は、縦目地J1を挟んで対峙している。
縦目地J1、横目地J2、凹部15,15、貫通孔18および挿入孔19には充填材30が充填されている。また、横目地J2のリブ部14の側面に面する端部は、シール材Sにより遮蔽されている。
なお、充填材30およびシール材Sの詳細は、第一の実施形態で示したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態の床版の接合構造4の施工は、以下の手順により行う。
まず、主桁20上に配設された第一床版部材10aに隣接して、第二床版部材10bを配置する。このとき、第二床版部材10bは、増厚部13が第一床版部材10aの張出部12上に位置するように配置する。
次に、第二床版部材10bの上面から貫通孔18内に目開き防止部材40を挿入する。目開き防止部材40の挿入は、貫通孔18を貫通して、貫通孔18の直下に形成された挿入孔19内に下端部が配置されるように行う。
さらに、縦目地J1の上面または貫通孔18の上端から充填材30を注入し、縦目地J1、横目地J2、凹部15,15、貫通孔18および挿入孔19に充填材30を充填する。
充填材30に所定の強度が発現したら、脱型し、図示せぬ緊張材を緊張することにより、床版接合部または床版全体に圧縮応力(プレストレス)を導入する。
床版部材10,10に設けられたシースを挿通する緊張材または橋梁全体にわたって配置された緊張材(外ケーブル)により、床版接合部または床版全体に緊張による圧縮応力を導入する。
これにより、床版部材10同士が一体に接合された橋梁が形成される。
なお、目開き防止部材40は、貫通孔18および挿入孔19の内部に充填材30を充填した後に、配置してもよい。こうすることで、目開き防止部材40の周囲は、貫通孔18および挿入孔19の一部に空気溜まりが発生することを防止できる。
本実施形態の床版の接合構造4によれば、目開き防止部材40が横目地J2の上下に跨って配設されているため、横目地J2において目開きが発生することを防止できる。
つまり、床版の厚みに対するリブ部14の幅と高さの相対比率や、接合部に作用する正の曲げモーメントMが大きくなることや、経済設計の観点から接合部に付与する緊張力を少なくした場合に、横目地J2に鉛直方向の引張応力が発生することが想定されるが、このような場合であっても、目開き防止部材40の引張抵抗力により、目開きを抑制することができる。
目開き防止部材40の配置は、貫通孔18から差し込むことにより容易に行うことができるため、施工性に優れている。
この他の第四の実施の形態に係る床版の接合構造4の作用効果は、第一の実施の形態と同様なため、詳細な説明は省略する。
<第五の実施の形態>
第五の実施の形態に係る床版の接合構造5は、図7に示すように、隣り合う床版部材10同士(第一床版部材10aおよび第二床版部材10b)の端面同士を突き合せた状態で接合するものである。
第一床版部材10aは、版状の本体部11の端部に形成された張出部12を備えている。第二床版部材10bは、本体部11の端部に形成された増厚部13を備えている。
張出部12は、第一床版部材10aの端部において、本体部11から第二床版部材10bに向って張り出す部分である。
本実施形態の張出部12は、第二片12bに、橋軸直角方向に連続する溝が形成されていない代わりに、上面が開口する有底の挿入孔19が形成されている点で、第一の実施の形態の張出部12と異なっている。
本実施形態では、挿入孔19を所定の間隔により複数形成するが、挿入孔19のピッチは限定されるものではない。挿入孔19の深さ(底面の位置)は、第二片12bの下面から所定のコンクリート被り厚さを確保することが可能な大きさとしている。
挿入孔19の内面には、充填材との付着性を向上させるために、凹凸が設けられているのが望ましい
この他の張出部12の構成は、第一の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
増厚部13は、床版部材10の他方の端部において、下方向に増厚するように形成された部分である。
本実施形態の増厚部13の下面には、目開き防止部材40が下方向に突設されている。
本実施形態の目開き防止部材40は、上下2箇所に孔43,43が形成された、いわゆる孔あき鋼板により構成されている。なお、目開き防止部材40に形成される孔43の数、配置、形状は限定されるものではない。
目開き防止部材40は、第一床版部材10aに形成された挿入孔19と同ピッチにより、一端が第二床版部材10bに埋設されている。
第一床版部材10aの張出部12と第二床版部材10bの増厚部13とを重ね合わせると、目開き防止部材40の他端が挿入孔19に挿入される。つまり、目開き防止部材40は、一端が第二床版部材10bに埋設されるとともに、他端が第一床版部材10aの張出部12に埋設された状態となる。
張出部12と増厚部13とを重ね合わせることにより、床版部材10同士の接合部において、床版の部材厚を下方向に増厚するリブ部14が形成される。つまり、本実施形態の床版の接合構造5では、橋軸方向と直交するリブ部14が形成されている。
第一床版部材10aの本体部12の端面と第二床版部材10bの端面との間には縦目地J1が形成されており、第一床版部材10aの張出部13(第二片13b)の上面と第二床版部材10bの増厚部13の下面との間には横目地J2が形成されている。
縦目地J1と横目地J2は、側面視L字状に連続している。
縦目地J1、横目地J2および挿入孔19には充填材30が充填されている。また、横目地J2のリブ部14の側面に面する端部は、シール材Sにより遮蔽されている。
なお、充填材30およびシール材Sの詳細は、第一の実施形態で示したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態の床版の接合構造5の施工は、以下の手順により行う。
まず、主桁20上に配設された第一床版部材10aに隣接して、第二床版部材10bを配置する。このとき、第二床版部材10bは、増厚部13が第一床版部材10aの張出部12上に位置するように配置する。
次に、縦目地J1の上面から充填材30を注入し、縦目地J1、横目地J2および挿入孔19に充填材30を充填する。
充填材30に所定の強度が発現したら、脱型し、図示せぬ緊張材を緊張し、床版接合部または床版全体に圧縮応力(プレストレス)を導入する。
これにより、床版部材10同士が一体に接合された橋梁が形成される。
本実施形態の床版の接合構造5によれば、目開き防止部材40が横目地J2の上下に跨って配設されているため、横目地J2において目開きが発生することを防止できる。
この他の第五の実施の形態に係る床版の接合構造5の作用効果は、第一の実施の形態と同様なため、詳細な説明は省略する。
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記各実施形態では、橋梁を構築する場合について説明したが、本発明の床版の接合構造により構築される構造物は限定されるものではない。例えば、人工地盤を構築する場合に採用してもよい。
前記各実施形態では、一方の端部に張出部、他方の端部に増厚部を備える床版部材を接合する場合について説明したが、両端部に張出部を備える床版部材と両端部に増厚部を備える床版部材とを交互に配置して接合してもよい。
また、床版部材は、必ずしも増厚部を備えていなくてもよい。
前記各実施形態では、縦目地と横目地とがL字状に連続している場合について説明したが、目地の形状はこれに限定されるものではない。例えば、縦目地と横目地により円弧状に連続した目地が形成されていてもよい。また、縦目地と横目地は直角に交わる必要もない。
また、第一床版部材と第二床版部材との当接面は、必ずしも平行に形成されている必要はない。
また、縦目地および横目地は直線状である必要はなく、例えば、円弧状に形成されていてもよいし、波型に形成されていてもよく、その形状は限定されるものではない。
さらに、縦目地および横目地は、垂直または水平である必要はなく、傾斜していてもよい。
1,2,3,4,5 床版の接合構造
10 床版部材
10a 第一床版部材
10b 第二床版部材
11 本体部
12 張出部
15 凹部
17 凸部
18 貫通孔
19 挿入孔
30 充填材
40 目開き防止部材
J1 縦目地
J2 横目地
K せん断キー

Claims (5)

  1. 第一床版部材および第二床版部材の端面同士を突き合せた状態で接合する床版の接合構造であって、
    前記第一床版部材は、その本体部から前記第二床版部材に向って張り出す張出部を有し、
    前記第一床版部材の本体部の端面と前記第二床版部材の端面との間に縦目地が形成されており、
    前記第一床版部材の張出部の上面と前記第二床版部材の下面との間に横目地が形成されており、
    前記縦目地および前記横目地には充填材が充填されており、
    前記縦目地および前記横目地は連続しており、
    前記縦目地の上端と前記横目地の先端が外面に面していることを特徴とする、床版の接合構造。
  2. 前記第一床版部材および前記第二床版部材のそれぞれに凹部が形成されており、
    前記両凹部は、前記縦目地または前記横目地を挟んで対峙していて、
    前記各凹部には、前記充填材が充填されていることを特徴とする、請求項1に記載の床版の接合構造。
  3. 前記第一床版部材および前記第二床版部材の一方に凹部が形成されているとともに他方に凸部が形成されており、
    前記凹部および前記凸部は、前記縦目地または前記横目地を挟んで対峙していて、
    前記凹部に前記凸部が入り込んでいることを特徴とする、請求項1に記載の床版の接合構造。
  4. 前記第二床版部材の端部には、これを上下に貫通する貫通孔が形成されており、
    前記第一床版部材の張出部には、その上面が開口する有底の挿入孔が形成されており、
    前記挿入孔は、前記貫通孔の直下に位置し、
    前記挿入孔および前記貫通孔に目開き防止部材が挿入されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の床版の接合構造。
  5. 一端が前記第二床版部材に埋設されて、他端が前記第一床版部材の張出部に埋設された目開き防止部材を備えることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の床版の接合構造。
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