JP5521190B2 - コラーゲン組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
更に、コラーゲンの3重らせん構造は、コラーゲンの強靭な強さ、及び細胞への接着性に関係している。従って、コラーゲンは、再生医療における細胞の足場材料として、医薬品への応用が広がっている。
従来、コラーゲンは、そのほとんどが牛皮など家畜の組織から採取されていた。近年、ウシのBSE(牛海綿状脳症)やヒツジの振戦病の原因物質が、プリオンと呼ばれる伝染性蛋白質であることが報告され、家畜由来の原料を用いたコラーゲン製品から、ヒトにプリオンなどの病原体が感染する危険性が指摘されている。そのため、安全性と資源量等の観点から、人畜共通伝染病の存在しない魚類由来コラーゲンが化粧品材料、食品材料及び医薬品材料として俄に脚光を浴びてきている。魚類のコラーゲンの原料としては、皮又は鱗が多く用いられているが、特に鱗はコラーゲンの収量の点で、魚皮に劣るものの、脂質が比較的少ないために魚臭が生じにくく、高付加価値のコラーゲンの原料として用いられてきている。
コラーゲンが特異な「3重らせん構造」を作るのは、ポリペプチド鎖のアミノ酸の配列が関与している。ポリペプチド鎖は3個のアミノ酸が並んだユニット「G−X−Y」のつながりからできている。Gはグリシンを表し、Xはプロリン、そしてYはヒドロキシプロリンであることが多い。ヒドロキシプロリンは、通常のタンパク質に含まれておらず、コラーゲンに特有のアミノ酸であるが、ヒドロキシプロリンの水酸基と水和水との水素結合によって3重らせん構造が安定すると考えられている。
3重らせん構造を有するコラーゲンを、その構造を溶液状態で維持する方法として、酸性の溶液にコラーゲンを溶解させる技術が知られている。しかしながら、pHが酸性から中性若しくはアルカリ性に変化したり、又は塩濃度が上昇したりすると、容易に繊維化が起こり、溶液が白濁する。また、中性付近でコラーゲンを繊維化させない方法としては、コラーゲンのアスパラギン又はグルタミンの酸アミドを加水分解し、アスパラギン酸又はグルタミン酸にする方法がある。しかしながら、この方法はコラーゲンの重要な機能である保水性、保湿性、及び細胞接着性が低下するという欠点があった。更に、加熱することにより、繊維化を防ぐことができるが、コラーゲンが変性して3重らせん構造が壊れたゼラチンとなるため、コラーゲンの細胞親和性、細胞接着性、保水性、及び保湿性などの性質が失われる。一方、界面活性剤、有機溶剤、又は油剤を含んだ溶液との単純な混合では、コラーゲンの高い繊維化能により繊維形成が起こり、凝集及び不溶化により、溶液が白濁する。
本発明者は、コラーゲンの細胞親和性、細胞接着性、保水性、及び保湿性などの優れた性質を維持するために、3重らせん構造を維持したまま、溶液の白濁を防ぐためにコラーゲンの繊維化能を制御することのできるコラーゲン組成物及びその製造方法について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、親水性基及び疎水性基を有する直鎖状の特定の構造の化合物を用いることにより、コラーゲンが3重らせん構造を維持したまま、繊維化により白濁することのない、コラーゲン組成物を得ることができることを見出した。更に、親水性基及び疎水性基を有する分岐状の特定の構造の化合物を添加することにより、コラーゲンの3重らせん構造が安定化し、また繊維化により白濁が起こりにくくなることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
本発明のコラーゲン組成物の好ましい態様においては、前記親水性基が、−CH2CH2O−、又は−CH2CH2OCH2CH2−であり、前記炭化水素基が、炭素数10〜30の直鎖状アルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数10〜30のシクロアルキレンアルキレンシクロアルキレン基、炭素数10〜30のアルキレンシクロアルキレンアルキレン基、炭素数10〜30のアリーレンアルキレンアリーレン基、炭素数10〜30のアルキレンアリーレン基、炭素数10〜30のアリーレンアルキレン基、炭素数10〜30のアルキレンシクロアルキレン基、又は炭素数10〜30のシクロアルキレンアルキレン基であり、特には、前記化合物が、一般式(2)
で表される1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体である。
また、本発明のコラーゲン組成物の別の好ましい態様においては、前記Xが、一般式(5)
で表され、特には、前記一般式(3)で表される化合物が、一般式(6)
で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。
更に、本発明は、前記コラーゲン組成物を含む、医薬組成物に関する。
で表される化合物とを混合し、混合物を得る工程を含む、コラーゲン組成物の製造方法に関する。
本発明のコラーゲン組成物の製造方法の好ましい態様においては、前記混合物に、一般式(3)
で表される化合物を、更に混合する工程を含む。
本発明のコラーゲン組成物は、一般式(1)
で表される化合物(以下、直鎖状親水/疎水化合物と称することがある)を含む。
親水性基−CH2CH2O−からなる親水性領域は、エチレングリコールを重合することによって作成することができ、親水性基−CH2CH2OCH2CH2−からなる親水性領域は、ジエチレングリコールを重合することによって、作成することができる。
また、前記親水性基R1と疎水性基R2とを含む繰り返し単位の数、すなわちmは、1〜10であり、好ましくは1〜8であり、より好ましくは2〜6であり、最も好ましくは3〜5である。
前記炭化水素基に含まれるシクロアルキレン基は、炭素数3〜12が好ましく、炭素数4〜8が好ましく、炭素数6のシクロアルキレン基が最も好ましい。前記炭化水素基に含まれるアリーレン基は、フェニレン基又はナフチレン基が好ましく、フェニレン基が最も好ましい。
また、前記直鎖状親水/疎水化合物の分子量は、平均分子量で300〜10000であり、好ましくは600〜5400であり、最も好ましくは900〜3600である。
で表される1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体を挙げることができる。
本発明のコラーゲン組成物において、前記直鎖状親水/疎水化合物によって魚類由来コラーゲンの3重らせん構造が安定的に維持される理由は、完全に解明されているわけではないが、以下のように推論することができる。しかしながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。
魚類由来コラーゲンはα1、α2、及びα3の3本のポリペプチドからなり、3重らせん構造の周囲は、大量の水和水が保持されている。これはコラーゲンに特有のアミノ酸であるヒドロキシプロリンが、水和水の双極子を引きつけて安定化させるためである。
魚類由来コラーゲンは、長さ300nmで、直径1.5nmの細長い直線状の棒のような形態をしており、その表面には疎水性部分と親水性部分が散在しており、前記直鎖状親水/疎水化合物を添加すると、直鎖状親水/疎水化合物の疎水性基が、魚類由来コラーゲンの疎水性部分と疎水結合し、直鎖状親水/疎水化合物の親水性基(親水性領域)が、魚類由来コラーゲンの親水性部分と結合して、魚類由来コラーゲンの周囲を取り囲み、安定化させ、コラーゲンの変性を抑制していると考えられる。従って、直線状の魚類由来コラーゲンに結合するために、前記直鎖状親水/疎水化合物も、疎水性基及び親水性基(親水性領域)が散在した直鎖状の形態をとる化合物が好ましいと考えられる。
また、魚類由来コラーゲンは、溶液のpHが6以上に変化した場合、及び/又は塩濃度が上昇した場合に、それぞれの魚類由来コラーゲンの分子同士が、疎水結合及びイオン結合によって整列し、緻密な繊維を形成する。直鎖状親水/疎水化合物は、前記のように魚類由来コラーゲン分子の周囲を取り囲むことによって、魚類由来コラーゲンの分子同士の疎水結合及びイオン結合を阻害し、魚類由来コラーゲンの繊維形成を制御することができると考えられる。
また、直鎖状親水/疎水化合物の濃度は、魚類由来コラーゲンの変性、又は繊維化を抑制することのできる濃度であれば、特に限定されることはなく、魚類由来のコラーゲンの濃度に合わせて、適宜決定することができる。すなわち、溶液中に存在する魚類由来コラーゲンの3重らせん構造の分子の周囲を取り囲み、安定化させることのできる濃度であり、当業者であれば、適宜決定することができるが、例えば、1〜99%であり、好ましくは5〜80%であり、より好ましくは10〜70%である。
また、魚類由来コラーゲンと直鎖状親水/疎水化合物の結合モル比は、1:1〜1:10000が好ましく、1:5〜1:5000がより好ましく、1:10〜1:1000が更に好ましく1:100〜1:600が最も好ましい。
で表される化合物(以下、分岐状親水/疎水化合物と称することがある)を、更に含むことができる。
前記式(4)で表される基は、A及びEのそれぞれの基からなる、親水性領域A及び親水性領域E、及びB及びDのそれぞれの基からなる疎水性領域B及び疎水性領域Dを有している。
で表される基である。
また、前記直鎖状親水/疎水化合物の分子量は、平均分子量で300〜10000であり、好ましくは600〜5400であり、最も好ましくは900〜3600である。
で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を挙げることができる。前記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の1分子中の酸化エチレンの個数、すなわちs+t+u+x+y+zは、20〜80であるが、好ましくは、30〜70であり、より好ましくは40〜60である。後述の実施例で用いているポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の1分子中の酸化エチレンの個数は50であるが、40又は60のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、全く同じ効果が得られる。
本発明のコラーゲン組成物において、前記分岐状親水/疎水化合物によって魚類由来コラーゲンの3重らせん構造が安定的に維持される理由は、完全に解明されているわけではないが、以下のように推論することができる。しかしながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。
本発明のコラーゲン組成物に含まれる魚類由来コラーゲンは、前記のように直鎖状親水/疎水化合物の疎水性基が、魚類由来コラーゲンの疎水性部分と疎水結合し、直鎖状親水/疎水化合物の親水性基(親水性領域)が、魚類由来コラーゲンの親水性部分と結合して、魚類由来コラーゲンの周囲を取り囲み、安定化させていると考えられる。
本発明のコラーゲン組成物に含むことのできる分岐状親水/疎水化合物は、更に直鎖状親水/疎水化合物の親水性基(親水性領域)に、分岐状親水/疎水化合物の親水性領域A、又は親水性領域Eが結合し、直鎖状親水/疎水化合物の疎水性基に、分岐状親水/疎水化合物の疎水性領域B及び疎水性領域Dが結合し、魚類由来コラーゲンを、更に安定化させているものと考えられる。
本発明の化粧料は、前記コラーゲン組成物に加えて、通常、基剤(又は担体)、有効成分(保湿剤など)、又は添加剤を含むことができる。
前記ゲル基剤の粘液質としては、動植物系粘液質(クインシードガム、トラガントガム、キサンタンガムなどのガム類;ペクチン、デンプンなどの糖類;アイリッシュモス;アルギン酸ナトリウム、プロピレングリコールアルギネートなどのアルギン酸類;ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コンドロイチンヘパリンなどの多糖類;カゼイン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ケラチン、エラスチン、ローヤルゼリーなどのタンパク質類など)、セルロース又はその誘導体(セルロース;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)、合成ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、高分子量のポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコールなど)など)、無機系粘液質(ビーガム、ベントナイト、有機変性ベントナイト、膨潤性ベントナイトなど)などが挙げられる。
有効成分の割合は、化粧料全体に対して、0.001〜90重量%、好ましくは0.01〜80重量%、更に好ましくは0.1〜60重量%程度であってもよい。
前記添加剤の割合は、化粧料全体に対して、0.001〜40重量%、好ましくは0.01〜30重量%、0.1〜20重量%程度であってもよい。
本発明の医薬組成物は、担体を含むことができる。また、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を含むことができる。
本発明のコラーゲン組成物の製造法は、一般式(1)
で表される化合物(直鎖状親水/疎水化合物)と、魚類由来コラーゲンとを混合し、混合物を得る工程を含む。
一般式(3)
で表される化合物(分岐状親水/疎水化合物)を混合する工程(以下、混合工程(2)と称する)を含むことができる。
(1)魚燐のアルカリ処理
ナイルテラピアの鱗を水で十分に洗浄し、鰭等の夾雑物を除去した後風乾した後、冷凍庫で保管したものをコラーゲン取得に供した。乾燥魚鱗50gを500mLの0.1M水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、攪拌羽根を用いて24時間穏やかに攪拌した。金網で魚鱗をろ過し、1000mLの0.1M水酸化ナトリウム水溶液に加えて同様の操作を行った。魚鱗を水でpHが中性を示すまで繰り返し洗浄した。
上記魚鱗を1000mLの0.5M酢酸水溶液に加え、攪拌羽根を用いて25℃±1℃(以下、単に室温と表記する)で3日間穏やかに攪拌した。この水溶液を遠心(10000×g,20分)し、魚鱗を沈殿させた。5gのペプシン(和光純薬、ペプシン1:100)を含む1000mLの0.5M酢酸水溶液に前記魚鱗を加え、攪拌羽根を用いて室温で3日間穏やかに攪拌した。この水溶液を遠心(10000×g、20分)し、魚鱗を沈殿させた。上清を回収し、ガラスフィルター(SHIBATA、151G P16)を用いて吸引ろ過した。ろ液に0.5g/Lになるようにペプシンを加え、室温で24時間攪拌した。魚鱗残渣を上記と同様のペプシン含有酢酸水溶液に加え、同様に攪拌した。この操作を4回繰り返し、4バッチの上清を得た。
ペプシン処理を終えた上清に対し、終濃度が0.9Mになるように塩化ナトリウム水溶液を加え、ガラス棒で混合した後、4℃で24時間静置して塩析した。これを遠心(10000×g、20分)し、沈殿物を300mLの0.5M酢酸水溶液に溶解した。この塩析工程を3回繰り返し、コラーゲンの酢酸水溶液をセルロースチューブに入れて蒸留水に対して透析し、凍結乾燥した。コラーゲンの合計収率は1.70(%)であった。
1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体(polyolprepolymer−50;日光ケミカルズ株式会社)1.0g、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(NIKKOL HCO−50;日光ケミカルズ株式会社)1.2gを、精製水87.9gに、80℃で溶解し溶液Aを得た。得られた溶液Aを室温に放置し、50℃まで冷却した。1,3−ブチレングリコール8g、フェノキシエタノール(防腐剤)0.4g、カッコンエキス、アロエベラエキス、及びクロレラエキス混合液0.5gを混合し、溶液Bを得た。50℃に冷却した90.1gの溶液Aに、8.9gの溶液Bを加えた。得られた混合溶液を、室温に放置し、30℃まで冷却した。30℃の混合溶液に、前記製造例1で得られた魚鱗由来コラーゲンの0.3%溶液を、1.0%加え、溶解した。
魚鱗由来コラーゲンは繊維化せず、透明なコラーゲン組成物が得られた。
キサンタンガム0.9gを精製水92.3gに80℃で溶解し、溶液Aを得た。得られた溶液Aを室温に放置し、50℃まで冷却した。1,3−ブチレングリコール5.0g、フェノキシエタノール(防腐剤)0.2g、メチルパラベン(防腐剤)0.1g、カッコンエキス、アロエベラエキス、及びクロレラエキス混合液を0.5gを混合し、溶液Bを得た。50℃に冷却した93.2gの溶液Aに、5.8g溶液Bを加えた。得られた混合溶液を、室温に放置し、30℃まで冷却した。30℃の混合溶液に、前記製造例1で得られた魚鱗由来コラーゲンの0.3%溶液を、1.0g加え、溶解した。
魚鱗由来コラーゲンは繊維化を起こし、不透明なコラーゲン組成物となった。
1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体(polyolprepolymer−50;日光ケミカルズ株式会社)10gに、前記製造例1で得られた魚鱗由来コラーゲンの0.3%溶液を、10g加え、コラーゲン組成物E2を得た。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(NIKKOL HCO−50;日光ケミカルズ株式会社)1.0gを、精製水88.6gに、80℃で溶解し溶液Aを得た。得られた溶液Aを室温に放置し、50℃まで冷却した。1,3−ブチレングリコール8.0g、フェノキシエタノール(防腐剤)0.4g、を混合し、溶液Bを得た。50℃に冷却した89.6gの溶液Aに、8.4gの溶液Bを加えた。得られた混合溶液を、室温に放置し、34℃まで冷却した。34℃の混合溶液に、前記実施例2で得られたコラーゲン組成物を、2.0g加え、化粧料E3を得た。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(NIKKOL HCO−50;日光ケミカルズ株式会社)1.0gを、精製水88.1gに、80℃で溶解し溶液Aを得た。得られた溶液Aを室温に放置し、50℃まで冷却した。1,3−ブチレングリコール8.0g、フェノキシエタノール(防腐剤)0.4g、カッコンエキス、アロエベラエキス、及びクロレラエキス混合液0.5gを混合し、溶液Bを得た。50℃に冷却した89.1gの溶液Aに、8.9gの溶液Bを加えた。得られた混合溶液を、室温に放置し、34℃まで冷却した。34℃の混合溶液に、前記実施例2で得られたコラーゲン組成物を、2.0g加え、化粧料E4を得た。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(NIKKOL HCO−50;日光ケミカルズ株式会社)1.0gを、精製水85.9gに、80℃で溶解し溶液Aを得た。得られた溶液Aを室温に放置し、50℃まで冷却した。1,3−ブチレングリコール8.0g、フェノキシエタノール(防腐剤)0.4g、クエン酸0.2g、クエン酸ナトリウム2.0g、ビタミンCエチル0.5gを混合し、溶液Bを得た。50℃に冷却した86.9gの溶液Aに、11.1gの溶液Bを加えた。得られた混合溶液を、室温に放置し、34℃まで冷却した。34℃の混合溶液に、前記実施例2で得られたコラーゲン組成物を、2.0g加え、化粧料E5を得た。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(NIKKOL HCO−50;日光ケミカルズ株式会社)1.0gを、精製水88.1gに、80℃で溶解し溶液Aを得た。得られた溶液Aを室温に放置し、50℃まで冷却した。1,3−ブチレングリコール8.0g、フェノキシエタノール(防腐剤)0.4g、を混合し、溶液Bを得た。50℃に冷却した89.1gの溶液Aに、8.4gの溶液Bを加えた。得られた混合溶液を、室温に放置し、34℃まで冷却した。コラーゲン組成物の配合されていない化粧料CE2を得た。
1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体(polyolprepolymer−50;日光ケミカルズ株式会社)1.0gを、精製水98.0gに溶解した。得られた溶液に、前記製造例1で得られた魚鱗由来コラーゲン0.3%溶液を1.0g加え、コラーゲン組成物E6を得た。
本実施例では、前記実施例6において得られたコラーゲン組成物E6に含まれる魚鱗由来コラーゲンの3重らせん構造が維持されていることを、円偏光二色性分光法により確認した。
CD分光計(Jasco model725 spectrometer)を用い、2mLのコラーゲン組成物E6を、光波長2mmの石英セルに入れ、スキャンスピード50nm/分で測定した。図1に示すように、円偏光二色性スペクトルにおいて、221nm〜226nm付近にコラーゲンの3重らせん構造(α―へリックス構造)に対応するピークが観察された。このことは、1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体の添加によって、魚鱗由来コラーゲンの3重らせん構造が、安定に維持されていることを示している。
前記実施例6で得られたコラーゲン組成物E6、及び中性コラーゲン(1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体が未添加)について、コラーゲンの変性温度を測定した。
コラーゲンの変成温度は、International Journal of Biological Macromolecules, 32199(2003)に記載の方法に従って、CD分光計(Jasco model725 spectrometer)を使用してコラーゲン水溶液の温度を段階的に上昇させることによって求めた。
サンプルをpH3の希塩酸100mLに溶解し、光路長2mmの石英セルに入れた。セルの温度を1℃/min(60℃/時間)で上昇させ、226nmにおける旋光度を0.2℃ごとに測定した。各温度における旋光度を温度に対してプロットすると、旋光度の値がコラーゲン螺旋の値からランダムコイルの値へと急激に変化する変成曲線が得られる。それらの旋光度値の中間値を与える温度、すなわち、螺旋率(Helicity;%)が50%になるときの温度を変成温度とした。この測定は3回行い、平均値を使用した。
コラーゲン組成物E6では、35℃付近からα−へリックス構造に対するピーク(221〜226nm)が減少し、46℃付近で完全にピークが観察されなくなった。計算の結果、変性温度は38.0℃であった(図2A)。
一方、1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体が添加されていない中性コラーゲンは、変性温度は36.5℃であった(図2B)。
以上のことから、1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体の添加によって、魚鱗由来コラーゲンの変性温度が、1.5度上昇することが確認された。
前記実施例3〜5において得られた化粧料E3〜E5、及び比較例2において得られた化粧料CE2について、皮膚に塗布した場合の、保水性を検討した。
腕の内側に皮膚を、5つの区画に分割し、化粧料E3〜E5、化粧料CE2及び精製水(陰性コントロール)を、それぞれ0.5mLずつ、塗布した。室温24℃、湿度44〜46%の条件下で、塗布後、0分、15分、30分、60分、90分、及び120分後に、角質水分量を、Wave Cyber WSK−P500U(インフォワード社製)を用いて測定した。センサー部分を皮膚に押し当て、肌の静電容量を判別し、水分を表す価として計測した。生理食塩水を測定した状態の値を「飽和した状態(100)」とし、全く水分が存在しない状態の値を「ゼロの状態(0)」として計算している。結果を図3に示す。
精製水では、角質水分量は50%程度であった。1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体が、添加されていない化粧料CE2と比較して、化粧料E3〜E5を塗布した皮膚では、30分〜120分後において、角質水分量が高かった。
前記実施例3〜5において得られた化粧料E3〜E5、及び比較例2において得られた化粧料CE2について、皮膚に塗布した場合の、肌のキメへの影響を検討した。
腕の内側に皮膚を、5つの区画に分割し、化粧料E3〜E5、化粧料CE2及び精製水(陰性コントロール)を、それぞれ0.5mLずつ、塗布した。室温24℃、湿度44〜46%の条件下で、塗布後、0分、15分、30分、60分、90分、及び120分後に、角質水分量を、ロボスキンアナライザーTypeA(インフォワード社製)を用いて測定した。皮膚の状態を画像処理し、モノクロ画像中における暗部を皮溝、明部を皮丘とし、暗部明部をそれぞれ強調処理して二値化した結果が、一辺0.4mmの正三角形のきめモデルに近ければ近いほど、100点満点に高い点となるように判断した。結果を図4に示す。また、化粧料E4と精製水(陰性コントロール9については、塗布前及び120分後の、処理画像を図5に示す。
精製水及び化粧料CE2と比較して、化粧料E3〜E5は、30分〜120分後において、キメの値が高く、特に、120分後において、化粧料CE2との差異が大きかった。
Claims (8)
- 一般式(2)
で表される1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体、及び魚類由来コラーゲンを含むことを特徴とする、コラーゲン組成物。 - 一般式(3)
で表される化合物を、更に含む請求項1に記載のコラーゲン組成物。 - 前記Xが、一般式(5)
で表される、請求項2に記載のコラーゲン組成物。 - 前記一般式(3)で表される化合物が、一般式(6)
で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である、請求項2又は3に記載のコラーゲン組成物。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載のコラーゲン組成物を含む、化粧料組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のコラーゲン組成物を含む、医薬組成物。
- 魚類由来コラーゲンと、一般式(2)
で表される1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)ポリエチレングリコール共重合体とを混合し、混合物を得る工程を含む、コラーゲン組成物の製造方法。 - 前記混合物に、一般式(3)
で表される化合物を、更に混合する工程を含む、請求項7に記載のコラーゲン組成物の製造方法。
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