JP5517770B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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エアフローメータは、動作原理によって熱線式、カルマン渦式等のタイプがあるが、設置部に所定の直線区間等のスペースを要し、大型化する。このため、エンジンルームのスペースが限られた産業用車両等においては、エアフローメータを省略して省スペース化することが望まれている。
これら、エンジン回転数、吸気圧力、吸気温度、および酸素濃度センサの信号を用いて、前記排気マニホールドよりも下流側に設置される酸素濃度センサによって検出される酸素濃度の応答遅れを表す伝達特性に基づいて前記排気マニホールド位置での酸素濃度を推定する状態推定器と、該状態推定器によって推定された排気マニホールド位置の酸素濃度を基にシリンダに流入する燃焼前の吸気の酸素濃度を算出する吸気酸素濃度算出手段と、吸気エアフローメータを設けずに前記吸気酸素濃度算出手段によって算出された吸気酸素濃度を用いて内燃機関の燃焼を制御する燃焼制御手段と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明によれば、状態推定器によって、排気マニホールド下流側の酸素濃度センサによって検出された酸素濃度から排気マニホールド位置の酸素濃度を推定し、さらに吸気酸素濃度算出手段によって、シリンダに流入する燃焼前の吸気の酸素濃度を算出するので、排気通路後流に設置されたことで生じる酸素濃度センサの計測遅れを補償することができ、排ガス中の有害物質の制御にとって重要な燃焼前の酸素濃度を精度よく推定できる。
このように、燃焼前のシリンダ内の酸素濃度を精度よく推定できることによって、燃焼前酸素濃度の制御性が向上し、排ガス中の有ガス物質(NOX、PM)の低減が可能になる。
具体的には、EGRガス流量の時間微分値およびEGRガス中の酸素濃度の時間微分値の情報をさらに用いて、状態推定器の状態方程式に基づいて排気マニホールド位置での酸素濃度を推定することによって、燃焼前のシリンダ内酸素濃度の推定精度がさらに向上できる。
さらに、本発明によれば、状態推定器によって、排気マニホールドよりも下流側の酸素濃度センサによって検出された酸素濃度から排気マニホールド位置の酸素濃度を推定し、さらに吸気酸素濃度算出手段によって、シリンダに吸入する燃焼前の吸気の酸素濃度を算出するので、排気通路後流に設置されることで生じる酸素濃度センサの計測遅れを補償することができ、排ガス中の有ガス物質の制御にとって重要な燃焼前の酸素濃度を精度よく推定できる。
エンジン1には、吸気マニホールド3を介して吸気通路5を通って流入した新気が各気筒に供給されるようになっている。また、排気マニホールド7を介して排気通路9が接続されている。
吸気通路5には、排気過給機11のコンプレッサ11aが設けられている。コンプレッサ11aは後述する排気タービン11bに同軸駆動されるものである。吸気通路5のコンプレッサ11aよりも下流側には、コンプレッサ11aで加圧された給気を冷却するインタークーラ13が設けられている。
EGRクーラー29は、EGRバルブ31よりも排気マニホールド7側に設けられ、EGRクーラー29を通過するEGRガスは冷却水とで熱交換によって温度低下される。また、EGRバルブ31によって、EGR通路27を流れるEGRガスの流量が制御されるようになっている。EGRバルブ31はEGRバルブ駆動回路32を介して制御装置25と接続され、吸気スロットルバルブ15は、スロットルバルブ駆動回路34を介して制御装置25と接続されている。
酸素濃度センサ21の位置が排気マニホールド7下流側で、さらに排気タービン11bの下流側に設けられているため設置位置の差による遅れ、および酸素濃度センサ21自体が有している応答遅れのため、酸素濃度センサ21によって検出された酸素濃度はエンジン1の燃焼状態を精度よく表しているとは言えない。
そこで、状態推定器41によって、排気マニホールド7下流側の酸素濃度センサ21によって検出された酸素濃度から応答遅れ表す伝達特性を基に排気マニホールド7内の酸素濃度を推定する。
MOEX=OAir・MAir+OEGR・MEGR−OAir・Lth・MFuel (1)
MOEX=OMEX・MEX (2)
燃焼前の酸素量に関する式として式(3)が成り立つ。
MOCYL=OCLY・MCLY=MOEX+OAir・Lth・MFuel (3)
MCLY:吸気質量流量
MEGR:EGRガスの質量流量、
MEX :排ガス質量流量、
MFuel:燃料質量流量、
MOEX:排ガス中の酸素質量流量、
MOMEX:酸素濃度センサ位置での排ガス中の酸素質量流量
MOCYL:吸気中の酸素質量流量、
OAir:新気(大気)の酸素濃度、
OCLY:吸気の酸素濃度、
OEGR:EGRガスの酸素濃度、
OEX:排ガスの酸素濃度 (燃焼後のシリンダ内酸素濃度)
OMEX:酸素濃度位置における排ガス中の酸素濃度(センサ値)、
Lth:理論空燃比、
MOEX=OAir・MCLY−OAir・Lth・MFuel (4)
式(4)の両辺を微分して式(5)を得る。
d(MOEX)/dt=OAir・d(MCLY)/dt−OAir・Lth・d(MFuel)/dt (5)
d(OMEX)/dt=−(1/Tsens)・OMEX+(1/T)・OEX (6)
排ガス流量の時間変化が小さいと仮定すると、次式(7)となる。
d(MOMEX)/dt=−(1/Tsens)・MOMEX+(1/T)・MOEX (7)
ここで、Tsensとは、酸素濃度センサ21の時定数(センサ取り付け位置による計測遅れ、センサ自体の応答遅れの両方を含む。)である。
dX/dt=A・X+B・U+L(yM−y) (8)
y=C・X (9)
ここで、X=[MOEX MOMEX]T
U=[d(MCLY)/dt d(MFuel)/dt]T
y=MOMEX
yM=OMEX・MEX
具体的には、酸素濃度制御手段49によって、吸気酸素濃度算出手段によって算出された吸気酸素濃度が目標酸素濃度になるように、EGRバルブ31もしくは吸気スロットルバルブ15の少なくとも何れか一方を制御する。また、燃料噴射時期調整手段51によって、吸気酸素濃度算出手段43によって算出された燃焼前のシリンダ内酸素濃度が設定された目標酸素濃度より高いか低いかに応じて、燃料噴射時期を調整する。
以上の構成を有する制御装置25における制御フローについて以下に説明する。図2を参照して全体のフローをまず説明する。
ステップS1で制御を開始すると、ステップS2で初期化を行い、次に、ステップS3でセンサ値の取り込みを行う。センサ値は酸素濃度センサ21、エンジン回転数センサ33、吸気温度センサ17、吸気圧力センサ19のそれぞれのセンサ値を読み込む。次に、ステップS4で状態推定器41による推定演算を行う。状態推定器41は、排気マニホールド7内の酸素濃度と排気マニホールド7より下流側の酸素濃度センサ21での酸素濃度との応答遅れを制御対象とする状態方程式を有して構成されている。この状態方程式を用いて排気マニホールド7内の酸素濃度を推定する(詳細については、図3のフローチャート参照)。
すなわち、式(3)によって、シリンダに吸入される酸素質量流量(MOCYL)は、排ガス中の酸素質量流量(MOEX)+燃焼に寄与して消費した酸素質量流量(OAir・Lth・MFuel)の関係を基に、シリンダ内に吸入する酸素質量流量を算出しさらに酸素濃度を算出できる。
そして、以上のステップS3〜S7の手順が繰り返される。
ステップS11で制御が開始すると、ステップS12では、シリンダ流入ガス量すなわち吸気質量流量(MCLY)の変化率および燃料噴射量(MFuel)の変化率、つまり時間微分d(MCLY)/dt、d(MFuel)/dtを算出する。
MCLY=Pm/(Tm・R)・(Ne/60)・NCYL/ICYC・2・EV (10)
ここで、Pm:吸気圧力
Tm:吸気温度
R: 気体定数
Ne:エンジン回転数
NCYL:シリンダ数(4気筒エンジンであれば4)
ICYC:サイクル数(4サイクルであれば4)
EV : 体積効率
図4のステップS21で制御がスタートすると、ステップS22で基本EGRバルブの操作量を計算する。この基本量の計算は、予めエンジン回転数と燃料噴射量とをパラメータとするEGRバルブ基本開度が設定されたマップに基づいて、基本開度量が算出される。
図5のステップS31で制御がスタートすると、ステップS32で基本主噴射タイミング計算を行う。この基本タイミングの計算は、予めエンジン回転数と燃料噴射量とをパラメータとする基本燃料噴射タイミングが設定されたマップに基づいて、基本燃料噴射タイミングが算出される。
目標酸素濃度より高い場合には、NOX排出が増大傾向になるため、NOX排出量を低減させるために燃料噴射タイミングを遅らせるように制御する。また、目標酸素濃度より低い場合には、着火し難く着火が遅くなるため、着火性を改善するために燃料噴射タイミングを早めるように制御する。
このように制御して、ステップS35で最終主噴射タイミングを設定する。そしステップS35で、リターンする。
また、第1実施形態によれば、状態推定器41によって、排気マニホールド7よりも下流側の酸素濃度センサ21によって検出された酸素濃度を基に、排気マニホールド位置、すなわち排気マニホールド内の酸素濃度を推定し、さらに吸気酸素濃度算出手段43によって、シリンダに吸入する燃焼前の吸気の酸素濃度を算出することができるので、排気通路9の後流側に設置されたことで生じる酸素濃度センサ21の計測遅れを補償することができ、排ガス中の有ガス物質の制御にとって重要な燃焼前の酸素濃度を精度よく推定できる。
また、排ガス中の酸素濃度の変動に大きな要因となるシリンダ流入ガス量および燃料噴射量の変化率によって推定するので的確な推定が可能となる。
次に図6、7を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態は、図6に示すように、ステップS46において、補正ゲインLの選択をすることが第1実施形態と相違し、その他のステップS41〜S45まで、およびS47〜S51までについては第1実施形態の図3に示すフローチャートと同様である。
図7で示すように、補正ゲインLをエンジン回転数Neの変化率で変化させることによって、燃焼前のシリンダ内酸素濃度の推定精度のバランスをとることができる。
次に、図8、9を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態は、図8に示すように、ステップS70において、酸素濃度補正処理をすることが第1実施形態と相違し、その他のステップS61〜S69までについては第1形態の図3に示すフローチャートと同様である。
OCLY=MOEX/MCLY+OAir・Lth・MFuel /MCLY+OH(Ne、MFuel ) (11)
OH(Ne、MFuel )=OH(Ne、MFuel )+α(OAir−OCLY) (12)
次に、図10を参照して第4実施形態について説明する。第4実施形態は、図10に示すように、EGRガス流量(MEGR)を検出するEGR流量センサ55をEGR通路27に設置し、式(8)の状態方程式の入力項にEGR量の変化率およびEGRの酸素濃度変化率をさらに追加するものである。
d(MOEX)/dt=OAir・d(MAir)/dt+d(OEGR)/dt・MEGR0+OEGR0・d(MEGR)/dt−OAir・Lth・d(MFuel)/dt (13)
MAir=MCLY−MEGR+VMdρM/dt
ρM=PM/(RTM)
なお、以上の第1実施形態から第4実施形態については適宜組み合わせてよいことは勿論である。
3 吸気マニホールド
5 吸気通路
7 排気マニホールド
9 排気通路
13 インタークーラ
15 吸気スロットルバルブ
17 吸気温度センサ
19 吸気圧力センサ
21 酸素濃度センサ
29 EGRクーラー
31 EGRバルブ
33 エンジン回転数センサ
41 状態方程式
43 吸気酸素濃度算出手段
45 吸気酸素濃度補正手段
47 燃焼制御手段
49 酸素濃度制御手段
51 燃料噴射時期調整手段
55 EGR流量センサ
L 補正ゲイン
Claims (8)
- 排ガス再循環装置(EGR)を備えた内燃機関の制御装置において、
エンジン回転数センサと、吸気スロットルバルブより下流側の吸気圧力を検出する吸気圧力センサと、吸気スロットルバルブより下流側の吸気温度を検出する吸気温度センサと、排気マニホールドよりも下流側に設けられた酸素濃度センサとを備え、
これら、エンジン回転数、吸気圧力、吸気温度、および酸素濃度センサの信号を用いて、前記排気マニホールドよりも下流側に設置される酸素濃度センサによって検出される酸素濃度の応答遅れを表す伝達特性に基づいて前記排気マニホールド位置での酸素濃度を推定する状態推定器と、
該状態推定器によって推定された排気マニホールド位置の酸素濃度を基にシリンダに流入する燃焼前の吸気の酸素濃度を算出する吸気酸素濃度算出手段と、
吸気エアフローメータを設けずに前記吸気酸素濃度算出手段によって算出された吸気酸素濃度を用いて内燃機関の燃焼を制御する燃焼制御手段と、を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記状態推定器は、前記排気マニホールド位置の酸素濃度と排気マニホールド下流側の酸素濃度センサでの酸素濃度との応答遅れを制御対象とする状態方程式を有して構成され、該状態方程式はシリンダ流入ガス量と燃料噴射量との変化率を入力項とすることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
- 前記状態方程式には、酸素濃度センサの設置位置での酸素濃度推定値と該酸素濃度センサの検出値との偏差を用いた補正項を有し、該補正項の補正ゲインが内燃機関の運転状態に応じて、過渡運転時には補正ゲインを小さくして酸素濃度センサの検出値の影響度を小さくし、定常運転時には補正ゲインを大きくして酸素濃度センサの検出値の影響度を大きくすることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の制御装置。
- 前記吸気酸素濃度算出手段は、エンジンのシリンダ内に吸入した酸素量から燃焼に寄与して消費した酸素量を差し引いた酸素量が排出される関係を基に、前記状態推定器によって推定された排気マニホールド位置の酸素濃度からシリンダに吸入する燃焼前の吸気の酸素濃度を算出することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
- 前記燃焼制御手段は、前記吸気酸素濃度算出手段によって算出された吸気酸素濃度が設定された目標酸素濃度になるように、EGRバルブもしくは吸気スロットルバルブの少なくとも何れか一方を制御する酸素濃度制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
- 前記燃焼制御手段は、前記吸気酸素濃度算出手段によって算出された燃焼前のシリンダ内酸素濃度が設定された目標酸素濃度より高いか低いかに応じて、燃料噴射時期を調整する燃料噴射時期調整手段を備えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
- EGRバルブが全閉でかつ内燃機関の運転が安定時において、前記吸気酸素濃度算出手段によって算出された燃焼前のシリンダ内酸素濃度が大気中の酸素濃度である21%となるように補正値を算出し、該補正値をEGRバルブが全閉でかつ安定時以外の運転時における調整値として加算する吸気酸素濃度補正手段を備えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
- EGRガス流量を検出するEGR流量センサをEGR配管に設置し、前記状態推定器への入力信号としてEGRガス質量流量、EGRガス中の酸素濃度をさらに用いることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
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