JP5516963B2 - 地上pcタンク - Google Patents
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図中、符号1は基礎版、2はその基礎版1の外周縁部に一体に形成されてそこから立ち上げられた円筒状の側壁、3はそれら基礎版1および側壁2に埋設されている鉄筋であり、これら基礎版1および側壁2は頑強な鉄筋コンクリート造とされてタンクの躯体を構成するものである。
側壁2の下端部にはその外側方向に壁厚が下方に向かって若干増大するハンチ部2aが形成されており、それにより側壁2の下端部の壁厚は下方に向かって漸次厚くなるようにされている。
これら第3のPC鋼材6は隣り合う第2のPC鋼材5の間に多数(図示例では10本)配設されることからそれらの相互間隔を十分に確保できないことが通常であり、そのため、特許文献2においては図示例のように第3のPC鋼材6を1本ごとに交互に上下方向にずらすことでそれぞれの両端部の定着強度を確保するようにしている。
また、図示例のように基礎版1の外周縁部にも周方向に沿ってPC鋼材7を配設してそこにもプレストレスを導入することが好ましい。
そのことについて図6を参照して説明する。図6は側壁2においてひび割れが発生する状況を概念的に示すもので、横軸は側壁2の外面での発生応力、縦軸はひび割れ発生に対する限界応力であり、グラフが縦軸よりも右側にあれば発生応力が限界応力を超えて許容幅以上のひび割れが発生し、左側にあればひび割れが発生しないことをイメージとして示すものである。
グラフ(2)はその対策のために第2のPC鋼材5を配設した場合であり、この場合は第2のPC鋼材5によるプレストレス力によって側壁全体に大きな圧縮応力を生じさせ(グラフ(1)全体を左側に大きく平行移動させる)、側壁2の下端部および上端部が縦軸の左側にくるようにプレストレス力を導入すればそこでのひび割れの発生を防止できる。しかし、そのためには第2のPC鋼材5に対して大きなプレストレス力を導入する必要があるし、側壁2の中間部に対しては無駄にプレストレスを導入して必要以上の圧縮応力が生じることになり、不合理である。
そこで、側壁2の下端部に第3のPC鋼材6を配設してグラフ(3)のようにその第3のPC鋼材6によって下端部に対するプレストレス力を局所的に増強したうえで、第2のPC鋼材5によるプレストレス力を全体的に低減する(グラフ(2)を右側にずらす)ことにより、側壁2各部での発生応力を限界応力以下に維持(グラフ(3)全体を縦軸の左側に収める)しつつ、第2のPC鋼材5による無駄なプレストレス力を軽減でき、したがって第2のPC鋼材5の所要本数やその緊張力を低減でき、全体として合理的にひび割れ防止効果が得られるのである。
特に、図5に示しているように、第1のPC鋼材4を側壁2の外層部にタガのように配設してその内側に第2のPC鋼材5を配設し、それら第1、第2のPC鋼材4,5の間の狭隘な隙間に第3のPC鋼材6をさらに配置しなければならず、またその周辺には多くの鉄筋3も配筋されることから、第3のPC鋼材6を設置するためのスペースを確保してそれを精度良く施工することは設計的にも施工的にも容易ではなく、その点で有効な改善策が望まれている。
したがって本発明によれば、従来に比べてPC鋼材を大幅に削減することが可能であるのでそれによるコスト削減を図ることができるばかりでなく、側壁全体でのPC鋼材や配筋の納まりが容易となるので設計的にも有利であるし、施工性を大きく改善することができる。
また、下端部上下方向PC鋼材を密に配設する場合においては、各下端部上下方向PC鋼材の位置を交互に上下方向にずらすことにより、両端部の定着強度を支障なく確保することができる。
さらに、側壁の下端部にハンチ部を設けて下端部上下方向PC鋼材をハンチ部に沿わせて外側に傾斜させた状態で配設することにより、側壁の下端部に生じる曲げモーメントに応じて断面を大きくでき、かつ下端部上下方向PC鋼材による偏心曲げモーメントを大きく取ることができる。
そして、本実施形態では、従来の地上PCタンクにおける第1のPC鋼材4に相当してそれと同様に機能する周方向PC鋼材4を周方向に配設し、従来の地上PCタンクにおける第3のPC鋼材6に相当してそれと同様に機能する下端部上下方向PC鋼材6を側壁2の下端部に配設している。
加えて、本実施形態では、側壁2の頂部に上下方向に沿う頂部上下方向PC鋼材8を配設しており、それら周方向PC鋼材4、下端部上下方向PC鋼材6、頂部上下方向PC鋼材8によって側壁2に対して所望のプレストレスを導入している。
下端部上下方向PC鋼材6の下部定着部は基礎版1内に設け、上部定着部はハンチ部2a内の適宜のコンクリート打継部付近またはハンチ部2a上部のコンクリート打継部付近に設ける。
なお、側壁2の外層部とは、側壁2の壁厚方向中心位置よりもタンクに対して外側にある部分、内層部とは逆にタンクに対して内側にある部分をいう。
なお、この頂部上下方向PC鋼材8としては下端部上下方向PC鋼材6と同様にPC鋼棒をコンクリート中に直接埋設して直接緊張し定着すれば良いが、その上部定着部は側壁2の上端部に設け、その下部定着部は側壁2の頂部付近において屋根変形により生じる引張曲げモーメントの影響が及ばない高さ位置に下げて設けられている。この頂部上下方向PC鋼材8は下端部上下方向PC鋼材6ほどは密に配設する必要はなく、したがって図示例のように単に上下を揃えて配設すれば良いが、仮に十分な相互間隔が確保できない程度に密に配設する必要がある場合には、下端部上下方向PC鋼材6と同様に1本ごとに交互に上下にずらして配設することにより定着強度を確保すれば良い。
図3は図6に対して本発明によるグラフ(4)を追加したものである。本発明では側壁2の下端部や頂部を除いた中間部に対しては上下方向のプレストレスを導入していないことから、基本的には第2のPC鋼材5を設けていないグラフ(1)と重って縦軸の左側にある。
そして、側壁2の下端部および頂部に対してそれぞれ下端部上下方向PC鋼材6および頂部上下方向PC鋼材8によりプレストレスを導入することにより、下端部および頂部のみが縦軸の左側に移動し、したがってグラフ(4)の全体が縦軸の左側となって側壁2全体にひび割れが生じないものとなる。
したがって本発明によれば、従来において単に第2のPC鋼材5を設ける場合(グラフ(2))や、第3のPC鋼材6により下端部のプレストレスを増強する場合(グラフ(3))に比べて、最も合理的にプレストレスを導入できることになる。
そして、本発明によれば、従来に比べてPC鋼材を大幅に削減することが可能であるのでコスト削減を図ることができるばかりでなく、側壁2全体でのPC鋼材や配筋の納まりが容易となるので設計的にも有利であるし、施工性を大きく改善することができ、施工精度を確保する点でも有利であり、ひいては側壁2の壁厚を削減することも可能である。
なお、従来においては図5に示したように第1のPC鋼材4(周方向PC鋼材4)を側壁2の外層部にタガのように配設してその内側に第3のPC鋼材6(下端部上下方向PC鋼材6)を配設していたのであるが、上記のように周方向PC鋼材4の位置を下端部上下方向PC鋼材6の内側に変更しても、それによるプレストレス力によって側壁2に発生する断面力は変化しないので構造上の特性は変わりがなく、ひび割れ性能に悪影響を及ぼすようなことはない。
いずれにしても、以上の説明で明らかなように下端部上下方向PC鋼材6によるプレストレス力を有効に活用するためにはその位置を可及的に側壁2の外層部に配置することが好ましいが、下端部上下方向PC鋼材6と側壁表面との間には所定のかぶり寸法を確保する必要があることはいうまでもないから、図2に示すように側壁2の外面側に配筋される鉄筋3の内側とすることが現実的であり、そのようにすべきである。
それから、ハンチ部2aとして図2の鎖線で示すように段階的に壁厚を増大させることが考えられる。この場合、個々の段階的増大部2a’における下部では、各PC鋼材6の配設位置が側壁2の外層部とはなるが、上部では外層部とはならない。このような場合でも外層部配置になる。つまり、段階的増大部2a’のようにすることは工事施工上の関係もあることから、外層部配置かどうかは、側壁2にかかる応力状態を実質的に考慮して判断するものである。
2 側壁
2a ハンチ部
2a’ 段階的増大部(ハンチ部)
3 鉄筋
4 周方向PC鋼材(第1のPC鋼材)
5 第2のPC鋼材
6 下端部上下方向PC鋼材(第3のPC鋼材)
7 PC鋼材
8 頂部上下方向PC鋼材
Claims (4)
- 基礎版上に筒状の側壁を一体に形成して立ち上げ、該側壁に周方向に沿う周方向PC鋼材を配設して周方向のプレストレスを導入し、かつ前記側壁の下端部と前記基礎版との間において上下方向に延在する下端部上下方向PC鋼材を配設して該下端部上下方向PC鋼材によって前記側壁の下端部に対して上下方向のプレストレスを導入してなり、
前記側壁の頂部に上下方向に延在する頂部上下方向PC鋼材を配設して、該頂部上下方向PC鋼材によって前記側壁の頂部に対して上下方向のプレストレスを導入してなることを特徴とする地上PCタンク。 - 請求項1記載の地上PCタンクであって、
前記下端部上下方向PC鋼材を前記側壁の外層部に配設してその内側に前記周方向PC鋼材を配設してなることを特徴とする地上PCタンク。 - 請求項1または2記載の地上PCタンクであって、
隣り合って配設される前記下端部上下方向PC鋼材の両端部の定着部の位置を上下方向にずらして配設してなることを特徴とする地上PCタンク。 - 請求項1,2または3記載の地上PCタンクであって、
前記側壁の下端部における壁厚を外側に漸次拡大するようにハンチ部を設け、前記下端部上下方向PC鋼材を該ハンチ部の傾斜面に沿って配設してなることを特徴とする地上PCタンク。
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