JP5516846B2 - ヤマビル及び不快害虫忌避剤とその忌避方法 - Google Patents
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例えば、従来、森林作業従事者、山間農村部での農作業従事者にあっては、ヤマビルが作業中に足下より這い上がりそれにより吸血される被害やヤブ蚊やアブ等の飛翔性不快害虫に刺される被害が後を絶たないし、さらにヤマビルにおいては、近年、山奥に生息するシカやイノシシなどの野生動物が人里に近づくことにより、山奥に生息していたヤマビルが人家のそばにまで出現し、住民が吸血され、また、ハイキングコースや山間部の児童公園などにおいても観光客や子供たちが吸血される被害が新聞(例えば非特許文献1参照)で報道されるに至るようになってきており、ヤブ蚊やアブなどの不快害虫と共に、その忌避対策が強く要望されている。
(1)(A)植物精油由来活性成分及び/又はピレスロイド化合物からなるヤマビル及び不快害虫用農薬活性成分、(B)該活性成分保持蒸散調節剤及び(C)極性有機溶媒より構成され、該活性成分保持蒸散調節剤にビニルアルコール−ビニルアセテート共重合体を用い、かつ粘度が50mPa・s以下であることを特徴とするヤマビル及び不快害虫忌避剤。
(2)ビニルアルコール−ビニルアセテート共重合体が、ガラス転移温度が50℃以下且つ鹸化度が50mol%以下の水難溶性のものである前記(1)に記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
(3)極性有機溶媒が、ビニルアルコール−ビニルアセテート共重合体を溶解可能な、炭素数1〜10の脂肪族アルコール系溶媒の中から選ばれた一種又は二種以上のものである前記(1)または(2)に記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
(4)脂肪族アルコール系溶媒が、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールの中から選ばれた一種又は二種以上である前記(3)に記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
(5)植物精油由来活性成分が、テルペン系アルデヒドの中から選ばれた一種又は二種以上のものである前記(1)〜(4)のいずれかに記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
(6)ピレスロイド化合物が、25℃における蒸気圧が1×10−3Pa以上である常温蒸散性のものである前記(1)〜(5)のいずれかに記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
(7)ピレスロイド化合物がメトフルトリンまたはトランスフルトリンである前記(6)に記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
(8)テルペン系アルデヒドの中から選ばれた一種又は二種以上の植物精油由来活性成分および/またはメトフルトリンおよび/またはトランスフルトリンと、ガラス転移温度が50℃以下且つ鹸化度が50mol%以下の水難溶性ビニルアルコール−ビニルアセテート共重合体と、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールの中から選ばれた一種又は二種以上の脂肪族アルコール系溶媒とより構成され、かつ粘度が50mPa・s以下であることを特徴とするヤマビル及び不快害虫忌避剤。
(9)ヤマビル忌避剤及び飛翔性害虫忌避剤である前記(1)〜(8)のいずれかに記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
(10)前記(1)〜(8)のいずれかに記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤を長靴、トレッキングシューズ等の靴類、および/または衣類に塗布し乾燥させて阻止皮膜を形成させることを特徴とするヤマビル及び不快害虫忌避方法。
また、本発明のヤマビル及び不快害虫忌避方法によれば、上記ヤマビル及び不快害虫忌避剤の使用時に簡便に長靴、トレッキングシューズ等の靴類および/または衣類等に塗布し乾燥するだけで、長時間にわたり活性成分を蒸散し続けることができるという格別の効果が奏される。
本発明のヤマビル及び不快害虫忌避剤における植物精油由来活性成分の含有量は、効力及びコストの観点からして、本発明のヤマビル及び不快害虫忌避剤全体に対し1〜50重量部添加することが望ましく、好ましくは2〜15重量部、更に好ましくは3〜10重量部である。
ピレスロイド系殺虫剤の例としては、以下のようなものが挙げられる。:2−(4−エトキシフェニル)−2−メチル−1−(3−フェノキシベンジル)オキシプロパン〔エトフェンプロックス〕、(RS−α−シアノ−3−フェノキシベンジジル(RS)−2−(4−クロロフェニル)−3−メチルブチレート〔フェンバレレート〕、(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル−(S)−2−(4−クロロフェニル)−3−メチルブチレート〔エスフェンバレレート〕、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル2,2,3,3−テトラメチルシックロプロパンカルボキシレート〔フェンプロパトリン〕、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1RS)−シス、トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔シペルメトリン〕、3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔ペルメトリン〕、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1RS、3Z)−シス−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロプ−1−エニル)−2,2ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔シハロトリン〕、(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1R)−シス−3−(2,2−ジブロモビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔デルタメトリン〕、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(RS)−2,2−ジクロロ−1−(4−エトキシフェニル)シクロプロパンカルボキシレート〔シクロプロトリン〕、α−シアノ−3−フェノキシベンジルN−(2−クロロ−α、α、α−トリフルオロ−p−トリル)−D−バリネート〔フルバリネート〕、2−メチル−3−フェノキシベンジル (1RS、3Z)−シス−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔ビフェントリン〕、2−(4−ブロモジフルオロメトキシフェニル)−2−メチル−1−(3−フェノキシベンジル)メチルプロパン〔ハルフェンプロックス〕、(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル (1R)−シス−3−(1,2,2,2−テトラブロモエチル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔トラロメトリン〕、(4−エトキシフェニル)−{3−(4−フルオロ−3−フェノキシフェニル)プロピル}ジメチルシラン〔シラフルオフェン〕、3−フェノキシベンジル(1R)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔d−フェノトリン〕、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1R)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔シフェノトリン〕、5−ベンジル−3−フリルメチル(1R)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔d−レスメトリン〕、(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1R、3Z)−シス−(2,2−ジメチル−3−{3−オキソ−3−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルオキシ)プロペニル}シクロプロパンカルボキシレート〔アクリナトリン〕、(RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル 3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔シフルトリン〕、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル(1RS、3Z)−シス−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔テフルトリン〕、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル(1R)−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート〔トランスフルトリン〕、3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル(1RS)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔テトラメトリン〕、(RS)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペニル)−2−シクロペンテン−1−イル(1RS)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔アレトリン〕、(S)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)−2−シクロペンテン−1−イル(1R)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔プラレトリン〕、(RS)−1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル(1R)−シス、トランス−2,2−2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔エムペントリン〕、2,5−ジオキソ−3−(2−プロピニル)イミダゾリジン−1−イルメチル(1R)−シス、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート〔イミプロトリン〕、5−(2−プロピニル)フルフリル2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルメチルベンジル(1R)−トランス−3−(1−プロペニル(E:Z=1:8))−2,2−メチルシクロプロパンカルボキシレート〔メトフルトリン〕
本発明のヤマビル及び不快害虫忌避剤における上記活性成分保持蒸散調節剤の含有量は、0.5〜15重量部であり、好ましくは1〜8重量部、更に好ましくは2〜7重量部である。この範囲を逸脱すると、該活性成分の保持蒸散能力が充分発揮できないし、本発明のヤマビル及び不快害虫忌避剤の製造が困難になり好ましくない。
200ml容ガラス容器に秤量したエタノール(関東科学社製試薬1級)88重量部にインド産シトロネラール精油(輸入元:オーエム科学製)5重量部、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルメチルベンジル(1R)−トランス−3−(1−プロペニル(E:Z=1:8))−2,2−メチルシクロプロパンカルボキシレート〔以後「メトフルトリン」と呼称。住友化学社製〕 2重量部を室温にて、5分間攪拌し完全に溶解した。更にこの溶液を30℃に加温したのち、ビニルアルコール−ビニルアセテート重合体(商品名「ゴーセファイマーL−7514」日本合成社製)5重量部を攪拌機(製品名「MAZELA Z−2110」東京理化機械製)用いて300rpmにて30分間プロペラ攪拌し完全に溶解し、ヤマビル及び不快害虫忌避剤(2)を得た。
こうして得られたヤマビル及び不快害虫忌避剤は、透明均一溶液の外観を呈し、10mPa・sの粘度(ブルックフィールド粘度計モデルLV、スピンドルNo.3、60rpmで測定)を示した。
以下、製剤例2と同様にして、表1に示す配合処方に従い本発明におけるヤマビル及び不快害虫忌避剤(1),(3)〜(8)を得た。
表2に示す配合処方に従い製剤例2と同様にして、比較のためのヤマビル及び不快害虫忌避剤を得た。
一般家庭用品店で購入した黒色光沢の塩ビ製長靴から直径10cmの円形状片を切り出し、この長靴片に本発明における製剤例1,4,5,6及び比較製剤例1,4のヤマビル及び不快害虫忌避剤を0.5g/cm2づつ塗布し、試験片とした。
さらにこれら各試験片をそれぞれ、内径23cm、深さ4cmのトレイの中央に配置し、その周囲にヤマビル10頭づつを放し、ヤマビルの動態を観察した。
その結果を表3に示す。
一般家庭用品店で購入した黒色光沢の塩ビ製長靴に製剤例1,4,5,6及び比較製剤 例1,4のヤマビル及び不快害虫忌避剤を長靴底面から15cmの高さまで、約0.5g/cm2ずつスプレー塗布し、乾燥したのち、これらの試験用長靴を着用し、ヤマビル生息数の重篤発生地域において、約60分間静止した状態で長靴底面から20cm以上はい上がってきたヤマビルを鉗子で一頭ずつ捕獲して、各表記時間までの両足における捕獲総頭数をカウントした。その結果を表4に示す。
以上より、本発明のヤマビル及び不快害虫忌避剤は、それを長靴等の靴類に塗布することで、ヤマビルの人体への接近を阻止し、その吸血被害から人体を守ることが可能である事が判明した。
実施例2の試験完了後、長靴を着用して静止した地点を中心に半径1mの範囲におけるヤマビルの存在頭数を確認した。その結果を表5に示す。
同条件で本発明のヤマビル及び不快害虫忌避剤を塗布した実施例2における長靴を1週間屋内放置し、実施例2と同様に長靴にはい上がってきた、各表記時間までのヤマビル総頭数をカウントした。その結果を表6に示す。
実施例2と同様に本発明のヤマビル及び不快害虫忌避剤を塗布した長靴を、2L/分の水量の水道水で10分間水洗したのち風乾し、実施例2と同様の試験を実施した時の長靴へはい上がってきたヤマビル頭数をカウントした結果を表7に示す。
以上より、本発明のヤマビル及び不快害虫忌避剤は、ヤブ蚊の如き飛翔性不快害虫にも忌避効果を発揮することが判明した。
Claims (10)
- (A)植物精油由来活性成分及び/又はピレスロイド化合物からなるヤマビル及び不快害虫用農薬活性成分、(B)該活性成分保持蒸散調節剤及び(C)極性有機溶媒より構成され、該活性成分保持蒸散調節剤にビニルアルコール−ビニルアセテート共重合体を用い、かつ粘度が50mPa・s以下であることを特徴とするヤマビル及び不快害虫忌避剤。
- ビニルアルコール−ビニルアセテート共重合体が、ガラス転移温度が50℃以下且つ鹸化度が50mol%以下の水難溶性のものである請求項1に記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
- 極性有機溶媒が、ビニルアルコール−ビニルアセテート共重合体を溶解可能な、炭素数1〜10の脂肪族アルコール系溶媒の中から選ばれた一種又は二種以上のものである請求項1または2に記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
- 脂肪族アルコール系溶媒が、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールの中から選ばれた一種又は二種以上である請求項3に記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
- 植物精油由来活性成分が、テルペン系アルデヒドの中から選ばれた一種又は二種以上のものである請求項1〜4のいずれかに記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
- ピレスロイド化合物が、25℃における蒸気圧が1×10−3Pa以上である常温蒸散性のものである請求項1〜5のいずれかに記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
- ピレスロイド化合物がメトフルトリンまたはトランスフルトリンである請求項6に記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
- テルペン系アルデヒドの中から選ばれた一種又は二種以上の植物精油由来活性成分および/またはメトフルトリンおよび/またはトランスフルトリンと、ガラス転移温度が50℃以下且つ鹸化度が50mol%以下の水難溶性ビニルアルコール−ビニルアセテート共重合体と、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールの中から選ばれた一種又は二種以上の脂肪族アルコール系溶媒とより構成され、かつ粘度が50mPa・s以下であることを特徴とするヤマビル及び不快害虫忌避剤。
- ヤマビル忌避剤及び飛翔性害虫忌避剤である請求項1〜8のいずれかに記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のヤマビル及び不快害虫忌避剤を長靴、トレッキングシューズ等の靴類、および/または衣類に塗布し乾燥させて阻止皮膜を形成させることを特徴とするヤマビル及び不快害虫忌避方法。
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