JP5514711B2 - アーク溶接方法及びアーク溶接装置 - Google Patents
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Description
この現象を解消するため、例えば、図18や図19に示すように、アークトーチ100のノズルの先端からワークWに延びるアークAに磁場Bを作用させることにより、ローレンツ力Fを用いてアークAを前方へ振らせる技術が、特許文献1に開示されている。
すると、この曲がったアークAがノズルを焼くことなり、ノズルの先端部が消耗していくため、ノズルの先端部のチップの交換頻度が上がる。
また、アークAが根元側から前方へ曲がることで、アークAがワークWから浮いてしまい、入熱領域が浅くなるため、最終的に入熱量が低下する。
アークトーチ(例えば、後述のプラズマトーチ10、40)及び磁場生成機構(例えば、後述の電磁石20)を有するアーク溶接装置(例えば、アーク溶接装置1、2)が、ワーク(例えば、ワークW)に対してアーク溶接を施すアーク溶接方法であって、
前記ワークは非磁性体の治具(例えば、後述のクランプ31及びベース32)に固定され、
前記磁場生成機構が、前記アークトーチが進行する接合方向に対して略直交する方向の磁場(例えば、後述の磁場B)を前記ワークの内部に生成し、
且つ、S極とN極の磁石が、前記アークトーチの進行方向の前後に設けられて、キュリー点を超えている温度で加工される前記ワークの溶接部の前方に磁束を集中させ、
前記アークトーチからのアーク(例えば、後述のアークA)が、前記アークトーチと前記ワークとの間に流れる電流(例えば、後述の電流I)と、前記磁場とに起因したローレンツ力により、前記接合方向の前方に先端部が曲げられた状態で、前記ワークを溶接する。
これにより、磁場が最も強い箇所はワークの内部であり、ワークから離れるにしたがって磁場は弱くなる。したがって、アークを曲げるローレンツ力は、ワークに近いほど強く、アークトーチに近いほど弱くなる。そのため、アークの先端側のみをアークトーチの進行方向前方へ曲げることができ、ノズル先端部の消耗を低減しながらワークへの必要な入熱量を確保して、溶接速度を向上させることができる。
また、非磁性体のクランプ31及びベース32を採用することによって、磁場生成機構により生成される磁場における磁束が、ワーク以外の場所に逃げていくことを防げるので、ワーク内に流れる磁束の磁束密度を効率よく高めることができる。
ワーク(例えば、後述のワークW)に対してアーク溶接を施すアーク溶接装置(例えば、アーク溶接装置1、2)において、
前記ワークを固定する非磁性体の治具(例えば、後述のクランプ31及びベース32)と、
前記ワークに対してアーク溶接を施すためのアーク(例えば、後述のアークA)を放出するアークトーチ(例えば、後述のプラズマトーチ10、40)と、
前記アークトーチが進行する接合方向に対して略直交する方向の磁場(例えば、後述の磁場B)を前記ワークの内部に生成し、S極とN極の磁石が、前記アークトーチの進行方向の前後に設けられて、キュリー点を超えている温度で加工される前記ワークの溶接部の前方に磁束を集中させる磁場生成機構(例えば、後述の電磁石20)と、
を備え、
当該磁場と、前記アークトーチと前記ワークとの間に流れる電流(例えば、後述の電流I)とに起因したローレンツ力が、前記アークの先端部を前記接合方向の前方に曲げる。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るアーク溶接装置としてのプラズマアーク溶接装置1の斜視図である。
プラズマアーク溶接装置1は、ワークWを突き合わせ溶接することで、テーラードブランク材を形成する。図1では、板厚が比較的薄いワークW(1)と、ワークW(1)よりも板厚が厚いワークW(2)との突き合わせ溶接を示している。
即ち、ワークW(1)とのワークW(2)との突き合わせ部が、プラズマアーク溶接装置1により溶接される。そこで、以下、当該突き合わせ部のうち溶接される部位を、「溶接部」と適宜呼ぶ。
電磁石20N1,20N2を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「電磁石20N」と呼ぶ。同様に、電磁石20S1,20S2を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「電磁石20S」と呼ぶ。さらに、電磁石20N1,20N1,20S1,20S2を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「電磁石20」と呼ぶ。
図2に示すように、プラズマトーチ10は、棒状の電極11と、この電極11を囲んで設けられてプラズマガスを噴出する円筒形状の第1ノズル12と、この第1ノズル12を囲んで設けられてシールドガスを噴出する円筒形状の第2ノズル14と、を備える。
第2ノズル14の先端には、円環形状の第2噴出口15が形成されており、この第2噴出口15を通して、シールドガスが噴出する。
第2ノズル14の噴出口15は、第1ノズル12の噴出口13よりも、電極11の軸方向の先端側に位置している。
電磁石20N,20Sは、図3に示すように、プラズマトーチ10の進行方向(接合方向)に対して略直交する方向の磁場Bを、ワークWの内部に生成する。
すると、図3に示すように、この磁場Bと、プラズマトーチ10とワークWとの間に流れる電流Iとにより生ずるローレンツ力Fにより、アークAの先端側はプラズマトーチ10の進行方向前方へ曲げられる。
即ち、プラズマトーチ10の進行方向(接合方向)に向かって突き合わせ部の一側(本例では左側)には、下端がN極になる電磁石20N1,20N2が、接合方向の前後にそれぞれ配置される。
プラズマトーチ10の進行方向(接合方向)に向かって突き合わせ部の他側(本例では右側)には、下端がS極になる電磁石20S1,20S2が、接合方向の前後にそれぞれ配置される。
同様に、接合方向後方の電磁石20N2と電磁石20S2は、突き合わせ部の延びる方向(接合線)と直交する平面内で互いに対向して配置される。そのため、接合方向後方の電磁石20N2から電磁石20S2へ向かう磁場の方向Bは、突き合わせ部の延びる方向(接合線)と直交する。
支持フレーム30は、クランプ31との間で、4つの電磁石20及びプラズマトーチ10を支持する。
一対のクランプ31は、ワークW(ワークW(1)及びワークW(2))の上面を保持する。即ち、4つの電磁石20はそれぞれ、貫通溝33を通って、それらの下端面とワークWの上面との間に微小な間隙が形成されるように、支持フレーム30に支持される。
プラズマトーチ10は、その下端から延びるアークAが、ワークWの突き合わせ部を溶接可能な所定の高さに位置するように、支持フレーム30に支持される。
ベース32は、ワークWの下面を保持する。即ち、ベース32は、クランプ31と共にワークWを挟み込むように固定する治具として機能する。
また、支持フレーム30は、4つの電磁石20を上昇又は下降させる図示しない第2昇降機構と、4つの電磁石20を接合方向に水平移動させる図示しない第2移動機構と、を備える。第2移動機構により、4つの電磁石20は貫通溝33に沿って移動する。
さらにまた、支持フレーム30は、クランプ31をワークWの上面に配置させるクランプ駆動機構を備える。
具体的には、プラズマアーク溶接装置1が、厚みが薄い板材であるワークW(1)と、ワークW(1)よりも厚みが厚い板材であるワークW(2)を突き合わせ溶接して、テーラードブランク材を形成するまでの動作を説明する。
この状態で、図示せぬ電磁石制御部が、電磁石20Nに対しては下端がN極となるように、電磁石20Sに対しては下端がS極となるように、それぞれ電流を流す。すると、電磁石20Nから電磁石20Sへ向かう磁場Bが生ずる。
この状態で、図示せぬガス噴出部が、第1ノズル12の第1噴出口13からプラズマガスを噴出させつつ、図示せぬ電源部が、電極11とワークWとの間に電圧を印加することによって、アークAを発生させる。また、図示せぬガス噴出部が、第2ノズル14の第2噴出口15から、アークAの周囲を囲むようにシールドガスを噴出させる。第1移動機構及び第1昇降機構により、突き合わせ部の溶接始端上の所定の高さ位置に、プラズマトーチ10を配置する。
先ず、図4乃至図7を参照して、クランプ31及びベース32の材質として、鉄等の磁性体を採用した場合について説明する。
一般に、原子の磁気モーメントは、低温では同一方向に整列しているが、温度が上昇すると熱エネルギーの影響で、その方向が揺らぎ始める。そのため、全体の磁気モーメント(自発磁化)が少しずつ減少する。更に温度が上昇すると自発磁化の減少が急激に進行し、原子の磁気モーメントは、ある温度以上では完全にバラバラな方向になり、自発磁化は0となる。このように、自発磁化が0となる温度がキュリー温度又はキュリー点と呼ばれている。
即ち、キュリー温度未満では磁性体となっている物体でも、キュリー温度以上になると、非磁性体になる。
従って、ワークWが鉄の場合、そのキュリー温度は約770℃であるため、アーク溶接中の溶融部は、キュリー温度(約770℃)を超える温度になっているので、非磁性体となる。
電磁石20Nから20Sに向かう磁束の経路(以下、「磁気経路」と呼ぶ)としては、磁束BmがワークW内を通過する磁気経路と、ワークWから漏れた磁束Beがクランプ31やベース32を通過する磁気経路と、が存在する。
なお、ワークWからの漏れ磁束Beは、図4においてはあたかもベース32のみを通過するように図示されているが、これは説明の便宜上のためであって、実際には、一部クランプ31も通過する場合がある。
ここで、ワークWを通る磁気経路には、ワークW(1)とワークW(2)との突き合わせ部Dが存在する。
アーク溶接前では、ワークWは何れの場所でもキュリー点未満の温度となっているため、磁束BmがワークW内を通過する磁気経路における磁気抵抗は、何れの場所でもほぼ均一である。よって、図5(A)に示すように、磁束Bmは、電磁石20Nから電磁石20Sに向けて、ワークW内の何れの場所でも略同一の磁束密度になる。
ところが、アーク溶接中では、突き合わせ部Dのうちアーク溶接がなされた溶接部Pは、キュリー点を超えた溶融池となっており、非磁性となり磁気抵抗が大きくなる。よって、図5(B)に示すように、磁束Bmは、電磁石20Nから電磁石20Sに向けて、非磁性体たる溶接部Pをほぼ通過せずに、溶接部Pからみて、プラズマトーチ10の進行方向(接合方向)の前方の磁性体の部分(キュリー点未満のため)を通過するか、漏れ磁束Beとなって磁性体たるベース32やクランプ31を通過する。
図4に示すように、この漏れ磁束Beが大きく、その結果、全体の磁束Bmが低下するため、ローレンツ力Fも低下し、アークAを曲げることができなくなる。この様子が、図6及び図7に示されている。
図6において、横軸は、接合方向(プラズマトーチ10の進行方向)のプラズマトーチ10からの距離(mm)を示している。即ち、横軸において、0mmはプラズマトーチ10の位置を示し、右側のプラス方向は接合方向を示し、左側のマイナス方向は接合方向の逆方向を示している。
縦軸は、ワークWを通過する磁束密度Bmのうち、各位置における磁束密度を示している。
また、点線は、アーク溶接前のワークWの磁束密度Bmの分布を示しており、実線は、アーク溶接中のワークWの磁束密度Bmの分布を示している。
しかしながら、図6の点線と実線とを比較すると容易にわかることであるが、磁性体のクランプ31やベース32に漏れ磁束Beが通過するため、その分だけ、磁束Bmが減少している。
このため、十分なローレンツ力Fが生じずに、図7に示すように、アークAが接合方向(プラズマトーチ10の進行方向)に十分に曲がらない。
図7の横軸は、図6の横軸と同一、即ち、接合方向(プラズマトーチ10の進行方向)のプラズマトーチ10からの距離(mm)を示している。
縦軸は、プラズマトーチ10からの先端の距離(mm)を示している。即ち、縦軸において、0mmはプラズマトーチ10の先端の位置を示し、下側のプラス方向はワークWに向けた下方向を示し、上側のマイナス方向は上方向を示している。
図7に示すように、アークAが接合方向(プラズマトーチ10の進行方向)に十分に曲がっていないことがわかる。
このため、クランプ31及びベース32の材質として鉄等の磁性体を採用した場合には、次の第1乃至第3の問題点が生じる。
第1の問題点とは、アークAを接合方向(プラズマトーチ10の進行方向)に曲げるための大きさのローレンツ力Fを生じさせるためには、漏れ磁束Beを考慮して、電磁石20の励磁電流を大きくしなければならない(本例では30A以上にしなければならない)、という問題点である。
第2の問題点とは、漏れ磁束Beを考慮して、アークA前方のワークW内の磁束Bmを制御することは困難である、という問題点である。
第3の問題点とは、クランプ31及びベース32の連続使用に伴う磁化により、ワークW内の磁束Bmを制御することがより困難になる、という問題点である。
本発明人らは、これらの第1乃至第3の問題点のうち少なくとも1つを解決したい場合、クランプ31及びベース32の素材を、ステンレス等の非磁性体にすると好適であるという知見を得た。
そこで、以下、図8乃至図10を参照して、クランプ31及びベース32の材質として、ステンレス等の非磁性体を採用した場合について説明する。
電磁石20Nから20Sに向かう磁気経路としては、磁束BmがワークW内を通過する磁気経路と、ワークWから漏れた磁束Beがクランプ31やベース32を通過する磁気経路と、が存在する。
ただし、図4と図8とを比較して容易にわかるように、クランプ31やベース32を通過する漏れ磁束Bmは、磁性体である場合(図4の場合)と比較して、非磁性体である場合(図8の場合)の方が圧倒的に小さくなる。
その結果、ワークWを通過する全体の磁束Bmはほぼ低下しない。ただし、図5を参照して上述したように、磁束Bmは、キュリー点を超えている溶接部Pを通過しにくいため、その前方(アークAの前方)に集中して高くなる。これにより、十分な大きさのローレンツ力Fが生じて、アークAが接合方向(プラズマトーチ10の進行方向)に十分に曲がるようになる。この様子が、図9及び図10に示されている。
図9において、横軸は、図6の横軸と同一、即ち、接合方向(プラズマトーチ10の進行方向)のプラズマトーチ10からの距離(mm)を示している。縦軸も、図6の縦軸と同一、即ちワークWを通過する磁束密度Bmのうち、各位置における磁束密度を示している。
また、点線は、アーク溶接前のワークWの磁束密度Bmの分布を示しており、実線は、アーク溶接中のワークWの磁束密度Bmの分布を示している。
ただし、ここで注目すべき点は、アーク溶接前のワークWの各位置の磁束を、図6の初期状態(点線)とほぼ同一にするために必要な電磁石20の励磁電流である。即ち、クランプ31及びベース32の材質として磁性体を採用した場合(図6の場合)には30Aも必要であったのに対して、クランプ31及びベース32の材質として非磁性体を採用した場合(図9の場合)には5Aで済む点に注目すべきである。
このため、十分なローレンツ力Fが生じて、図10に示すように、アークAが接合方向(プラズマトーチ10の進行方向)に十分に曲がるようになる。
図10の横軸は、図7の横軸と同一、即ち、接合方向(プラズマトーチ10の進行方向)のプラズマトーチ10からの距離(mm)を示している。図10の縦軸も、図7の横軸と同一、即ち、プラズマトーチ10からの先端の距離(mm)を示している。
図7と図10とを比較するに、クランプ31及びベース32の材質として磁性体を採用した場合(図7の場合)よりも遥かに、クランプ31及びベース32の材質として非磁性体を採用した場合(図9の場合)の方が、アークAが接合方向(プラズマトーチ10の進行方向)に曲がっていることがわかる。
このため、クランプ31及びベース32の材質として鉄等の磁性体を採用した場合に生じる上述した第1乃至第3の問題点を、何れも解決することが可能になる。
(1)4つの電磁石20によりに磁場Bを生成することができる。この場合、磁場Bが最も強い箇所はワークWの内部(磁場Bm)であり、ワークWから離れるにしたがって磁場Bは弱くなる。したがって、アークAを曲げるローレンツ力Fは、ワークWに近いほど強く、プラズマトーチ10に近いほど弱くなる。そのため、アークAの先端側のみを接合方向前方へ曲げることができる。
(2)アークAの先端側のみを接合方向前方へ曲げることができるため、例えばアークAが根元側から曲がる場合のように、アークAがワークWから浮いてしまうことがなく、深い入熱領域が得られる。そのため、十分な溶け込み深さを確保することができる。
(3)アークAの先端側のみを接合方向前方へ曲げて、しかも十分な溶け込み深さを確保することができるため、アークAの接合方向前方に十分な入熱量を確保することができる。そのため、溶接速度を向上させることができる。
(4)アークAの先端側のみを接合方向前方へ曲げることができるため、例えばアークAが根元側から曲がる場合のように、曲がったアークAがノズル自体を焼いてしまうことがなく、ノズルにダメージを及ぼさない。そのため、ノズル先端部の消耗を低減することができる。
(5)非磁性体のクランプ31及びベース32を採用することで、磁性体のものを採用した場合と比較して、漏れ磁束Beを小さくすることができるので、電磁石20に対する励磁電流を小さくしたままで、ワークWを流れる磁束密度Bmを大きくすることができる。
(6)非磁性体のクランプ31及びベース32を採用することで、磁性体のものを採用した場合と比較して、漏れ磁束Beを小さくすることができるので、プラズマトーチ10からみて接合方向(プラズマトーチ10の進行方向)の前方向へ磁束Bmの集中度が高まるので、磁束Bmの制御が容易となる。
(7)非磁性体のクランプ31及びベース32を採用することによって、クランプ31及びベース32が磁化されないので、クランプ31及びベース32の管理が容易になると共に、磁気Bmの制御がより容易となる。
(8)ワークの溶接部がキュリー点を超えている温度で加工されているので、溶接部分は非磁性体となり磁束が通り難くなっている。磁場生成機構により生成される磁場における磁束が、キュリー点に達していないためにまだ磁性体である溶接部前方部分へ回り込み、その部分に磁束が集中するので、磁場生成機構により生成される磁場における磁束がさらに少なくてもよい。
図11は、本発明の第2実施形態に係るアーク溶接装置としてのプラズマアーク溶接装置2の斜視図である。このプラズマアーク溶接装置2において、第1実施形態に係るプラズマアーク溶接装置1と同様の部分には、同一の符号を付けて示し、重複する説明は省略する。
プラズマアーク溶接装置2は、ワークWを突き合わせ溶接することで、テーラードブランク材を形成する。図11では、板厚が比較的薄いワークW(1)と、ワークW(1)よりも板厚が厚いワークW(2)との突き合わせ溶接を示している。
プラズマアーク溶接装置2は、アークトーチとしてのプラズマトーチ40と、磁場生成機構としての4つの電磁石20N1、20N2、20S1、20S2と、クランプ31と、ベース31と、支持フレーム30と、を備える。
電磁石20N1,20N2を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「電磁石20N」と呼ぶ。同様に、電磁石20S1,20S2を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「電磁石20S」と呼ぶ。さらに、電磁石20N1,20N1,20S1,20S2を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「電磁石20」と呼ぶことは、第1実施形態と同様である。
図12に示すように、プラズマトーチ40は、棒状の電極41と、この電極41を囲んで設けられてプラズマガスを噴出する円筒形状の第1ノズル42と、この第1ノズル42を囲んで設けられてシールドガスを噴出する円筒形状の第2ノズル47と、を備える。
この第1ノズル42は、筒状の内筒部44と、この内筒部44を囲んで設けられた外筒部45と、を備える。
外筒部45の先端部分は、先端に向かうに従って細くなる略円錐形状であり、この外筒部45の先端部分の外周面には、電極41の軸方向に対して傾斜した複数の溝部46が形成される。この溝部46は、外筒部45の先端まで延びている。
第2ノズル47の噴出口48は、電極41から離れる方向に向いている。また、第2ノズル47の噴出口48は、第1ノズル42の噴出口43よりも、電極41の軸方向の基端側に位置している。
また、上述の第1ノズル42の溝部46は、第2ノズル47の噴出口48まで延びている。
また、第1ノズル42の第1噴出口43からプラズマガスを噴出させつつ、電極41とワークW(1)、W(2)との間に電圧を印加してアークAを発生させる。また、第2ノズル47の第2噴出口48から、アークAの周囲を囲むようにシールドガスを噴出させる。
具体的には、図15に示すように、ワークW(1)、W(2)の8箇所にシールドガスが吹き付けられ、各箇所でのシールドガスの流れる方向は、図15中黒矢印で示すようになる。
(9)厚みの異なるワークW(1)、W(2)を溶接する場合、螺旋状に流れるシールドガスを溶融池Pの表面に吹き付けて、アークAの進行方向後側の溶融金属を、薄い方のワークW(1)に向かって移動させることができる。これにより、この移動した溶融金属により薄い方のワークW(1)の母材の凹んだ部分を埋めることができる。その結果、薄い方のワークW(1)の板厚がアンダカットにより薄くなるのを抑制して、溶接後のワークWの強度を確保できる。
例えば、ワークW内に磁場を生成する磁場生成機構は、電磁石20である必要は特になく、例えば永久磁石であってもよい。
また例えば、アーク溶接の種類は、プラズマアーク溶接である必要は特になく、例えばTIGアーク溶接であってもよい。
10、40・・・プラズマトーチ
20N1、20N2、20S1、20S2・・・電磁石
31・・・クランプ
32・・・ベース
Claims (2)
- アークトーチ及び磁場生成機構を有するアーク溶接装置が、ワークに対してアーク溶接を施すアーク溶接方法であって、
前記ワークは非磁性体の治具に固定され、
前記磁場生成機構は、前記アークトーチが進行する接合方向に対して略直交する方向の磁場を前記ワークの内部に生成し、且つ、S極とN極の磁石が、前記アークトーチの進行方向の前後に設けられて、キュリー点を超えている温度で加工される前記ワークの溶接部の前方に磁束を集中させ、
前記アークトーチからのアークが、前記アークトーチと前記ワークとの間に流れる電流と、前記磁場とに起因したローレンツ力により、前記接合方向の前方に先端部が曲げられた状態で、前記ワークを溶接する、
ことを特徴とするアーク溶接方法。 - ワークに対してアーク溶接を施すアーク溶接装置において、
前記ワークを固定する非磁性体の治具と、
前記ワークに対してアーク溶接を施すためのアークを放出するアークトーチと、
前記アークトーチが進行する接合方向に対して略直交する方向の磁場を前記ワークの内部に生成し、S極とN極の磁石が、前記アークトーチの進行方向の前後に設けられて、キュリー点を超えている温度で加工される前記ワークの溶接部の前方に磁束を集中させる磁場生成機構と、
を備え、
当該磁場と、前記アークトーチと前記ワークとの間に流れる電流とに起因したローレンツ力が、前記アークの先端部を前記接合方向の前方に曲げる、
ことを特徴とするアーク溶接装置。
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