JP5098523B2 - レーザ溶接装置及びレーザ溶接方法 - Google Patents

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本発明は、レーザ光により金属材料の溶接を行うレーザ溶接装置とレーザ溶接方法に関し、詳しくは、磁力線を使用して溶接部分におけるプラズマを低減するレーザ溶接装置とレーザ溶接方法に関する。
レーザ光の照射により被溶接物たる金属材料を溶接するとき、金属蒸気の電離によってプラズマが発生する。このプラズマが溶接部分に存在すると、当該プラズマがレーザ光のエネルギーを吸収・散乱するため、レーザ溶接に悪影響を及ぼす。そこで、従来ではレーザ溶接の際にシールドガスを吹き付けることで、プラズマを溶接部分から除去していた。
ここで、プラズマの発生量はレーザ出力の大きさに比例して多くなる。そこで特許文献1では、大出力レーザ光による金属材料の溶接に際してシールドガスを吹き付けながら、レーザ加工トーチの片側に配した電磁石からなる磁場発生手段によって、レーザ光の進路と交差する磁力線を作用させている。このとき、磁力線とプラズマとの交差位置では磁束密度に勾配が生じている。このように、磁力線がプラズマ雲を透過する交差位置において磁束密度に勾配が生じていることによって、プラズマ雲中の荷電粒子が磁束密度の高い方から低い方へ移動する。これにより、溶接部分においてプラズマを低減させることができ、加工効率を向上させている。
特開平6−122085号公報
しかし特許文献1では、磁力線を使用すると共に従来と同様シールドガスも吹き付けているので、ランニングコストがかかる。また、磁場発生手段に加えてシールドガスを吹き付けるノズルも必要となり、装置の取り回し(設計)が困難となる。そのうえ、特許文献1では磁場発生手段をレーザ加工トーチの片側に固定していることで、磁場発生手段は金属材料の上方において溶接部分の片面のみに位置している。したがって、金属材料は磁場発生手段に対してプラズマが発生する溶接部分の反対側にも存在しており、金属材料が磁性体であれば磁力線が金属材料の影響を受けて磁束密度の勾配が乱れ、磁力線によってプラズマを効果的に低減できないおそれがある。
そこで本発明は上記課題を解決するものであって、シールドガスを用いなくとも磁力線によって溶接部分のプラズマを的確に低減させることができるレーザ溶接装置及びレーザ溶接方法を提供することを目的とする。
本発明のレーザ溶接装置は、レーザ光を照射するレーザ加工トーチと、前記レーザ加工トーチと被溶接物との間にレーザ光の進路と交差する磁力線を生じさせる磁場発生手段とを有し、当該磁場発生手段は、前記被溶接物をこれの左右両外方から挟むように対向状に2つ設置されている。そのうえで、前記2つの磁場発生手段の間には、一方の磁場発生手段から他方の磁場発生手段へ向かう直線状の磁力線からなる均等な磁束密度の磁場が生じている。レーザ光としては、例えばCOレーザを使用することができる。
また、本発明によれば、次のようなレーザ溶接方法も提供できる。すなわち、レーザ加工トーチと被溶接物との間に、前記被溶接物をこれの左右両外方から挟むように対向状に2つ設置した磁場発生手段によって、一方の磁場発生手段からレーザ光の進路と交差する状態で他方の磁場発生手段へ向けて直線状の磁力線を発生させ、均等な磁束密度の磁場中において前記被溶接物を溶接することができる。
本発明のレーザ溶接装置及びレーザ溶接方法によれば、磁場発生手段を被溶接物の左右両外方へ設けているので、磁力線が被溶接物の影響を受けて磁場が乱れることを避けられる。そのうえで、被溶接物を挟むように対向状に設置した2つの磁場発生手段の間に、一方の磁場発生手段から他方の磁場発生手段へ向かう直線状の磁力線を発生させていることで、プラズマを磁力線に沿って移動させることができる。したがって、本発明のレーザ溶接装置及びレーザ溶接方法によれば、シールドガスを使用せずに溶接部分におけるプラズマを低減させることができる。これにより、シールドガスを使用しない分ランニングコストを低減でき、かつシールドガスを噴射するノズルを設ける必要がないので、装置の取り回し(設計)が容易であると共に、コンパクト化が可能となる。
このように、本発明のレーザ溶接装置及びレーザ溶接方法によれば、例えプラズマの発生量が多くても、シールドガスを使用せずに溶接部分において有意にプラズマを低減できる。したがって、レーザ光としてCOレーザを使用した場合はプラズマの発生量が多いが、本発明のレーザ溶接装置及びレーザ溶接方法は、当該プラズマ発生量が多いCOレーザを使用した場合にも有効である。また、COレーザは汎用されているレーザ光の中でもレーザ出力が大きい。したがって、レーザ光としてCOレーザを使用していれば、装置コストを抑えながら溶接能力を上げられる。
以下に、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明するが、これに限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、以下では適宜図面を基準として前後左右などの方向を説明するが、磁場発生手段やレーザ加工トーチに対する被溶接物の位置や溶接方向が本発明の要旨に合致する限り、ここで説明する方向に限られることはない。図1に、溶接部を中心に拡大図示したレーザ溶接装置の要部拡大正面図を示す。図2は、磁場発生手段と被溶接物との位置関係や、溶接方向及び磁界を示す溶接部の要部拡大平面図である。
図1においてレーザ溶接装置1は、レーザ光Lを照射するレーザ加工トーチ2(以下、トーチと称す)と、磁力線を発生させる磁場発生手段3とを有する。レーザ光Lは、図外のレーザ発振器からトーチ2内の集光レンズ(図示せず)で集束されて、トーチ2の先端から照射される。使用するレーザ光としては、炭酸ガス(CO)レーザ、ヘリウム・ネオンレーザ、アルゴンイオンレーザ、エキシマレーザ等の気体レーザや、クロムイオンをサファイア結晶に混入させたルビーレーザ、ネオジムイオンをイットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶に入れたYAGレーザ等の固体レーザなどを挙げることができるが、汎用レーザの中でもレーザ出力の高いCOレーザが好ましい。
磁場発生手段3は、トーチ2とは別個独立して対向状に2つ配設されている。具体的には、両磁場発生手段3として鉄芯10の外周にコイル11が巻回された電磁石を使用しており、支持台12によって不動状態で支持されている。被溶接物たる金属材料5は、2つの磁場発生手段3L・3Rの間に配した載置台7上に設置される。これにより、金属材料5をレーザ溶接装置1へ設置したとき、金属材料5は2つの磁場発生手段3L・3Rによって左右両外方から挟まれた位置関係となっている。なお載置台7は、金属材料5が鉄芯10の下端から上下方向中央部までの間の高さ位置にくるような高さ寸法に設計されている。好ましくは、金属材料5が鉄芯10の上下中央に位置する高さ寸法とする。金属材料5としては、レーザ光によって溶接し得るものであれば何でもよく、例えば鋼板などが挙げられる。
左右両磁場発生手段3L・3Rの鉄芯10へは、コイル11が同じ向きで巻回されており、鉄芯10は、これの軸方向がトーチ2の軸方向(レーザ光Lの照射方向)と直交する向きで配されている。そして、当該コール11へ図外の電源から同じ方向の直流電流を印加することで、トーチ2と金属材料5との間にはレーザ光Lの進路(垂直方向)と交差する水平方向の磁力線Mが生じている。詳しくは、図2に示すごとく一方の磁場発生手段3Lから他方の磁場発生手段3Rへ向かう、直線状の磁力線Mからなる均等な磁束密度の磁場が生じている。トーチ2は、レーザ溶接部位に応じて水平方向に移動自在となっている。本実施の形態では、トーチ2が磁力線Mの左右方向と直交する前後方向へ移動自在となっている。レーザ溶接により形成される溶接ビートの形成方向と磁力線の方向とが直交するようにしていれば、対向する2つの磁場発生手段間の距離に関係なく、長寸法での溶接が可能となる。
次に、このレーザ溶接装置1を用いて金属材料5を溶接する方法と、そのときのプラズマPと磁力線Mとの関係について説明する。まず、左右の磁場発生手段3L・3Rの間の載置台7上に、互いに溶接させる金属材料5を重ねて載置する。左右の磁場発生手段3L・3Rの間には、一方の磁場発生手段3Lから他方の磁場発生手段3Rへ向かう、左右方向に直線状の磁力線Mからなる均等な磁束密度の磁場が発生している。そして、トーチ2を磁力線Mの方向と直交する前後方向へ所定量移動させながらCOレーザ光を照射することで、この磁場中において金属材料5が所定範囲で溶接される。これにより、溶接ビート4も磁力線Mの方向と直交する前後方向に形成される。なお、シールドガスは使用していない。
金属材料5にレーザ光Lが照射されると、当該レーザ光Lの照射部分が溶融すると共に、そのときの金属蒸気が電離することでプラズマPが発生する。ここで、プラズマ中の荷電粒子は磁力線の方向に沿って螺旋状に移動するサイクロトロン運動する性質を持つ。したがって、金属蒸気の電離によって発生したプラズマPは、図2に示すごとくレーザ光Lの進路と交差する直線状の磁力線Mに沿って順次右方へ移動していく。これにより、溶接部分においてプラズマPが低減される。このとき、左右の磁場発生手段3L・3R間の磁束密度は均等であり、かつトーチ2を磁力線Mの方向と直交する方向へ移動させていることで、どの溶接部分においても的確にプラズマPが低減される。なお、プラズマPの移動速度は、トーチ2の移動速度に対して十分に速い。このように、高温のプラズマPは他方の磁場発生手段3Rへ向かって移動していくので、少なくとも他方の磁場発生手段3Rの表面には、例えばアルミニウム合金などの耐熱性に優れる素材からなるシール材を貼着しておくことが好ましい。
<溶接能力比較試験>
上記レーザ溶接装置1を用いて、各種条件によりレーザ溶接し、そのときの溶接貫通速度を比較した。その結果を表1に示す。なお、各種条件は次の通りである。
溶接方法1:シールドガス及び磁力線の双方使用せず。
溶接方法2:シールドガスを使用せず、電磁石電量13Aの磁力線を発生させる。このときの磁束密度は、0.78Tであった。
溶接方法3:シールドガスを使用せず、電磁石電量20Aの磁力線を発生させる。このときの磁束密度は、0.93Tであった。
溶接方法4:磁力線を使用せず、シールドガス吹き付けのみ。
溶接方法5:シールドガスと電磁石電量20A(磁束密度0.93T)の磁力線との双方使用。
また、溶接方法1〜5に共通する溶接条件は次の通りである。
金属材料:SPC980 縦100mm 横30mm 厚み1.2mm
レーザ光:COレーザ 出力4.5kw
溶接範囲:前後方向60mm
シールドガス:アルゴンガス
Figure 0005098523
表1の結果より、シールドガスも磁力線も使用していない溶接方法1では、溶接部分にプラズマが滞留していることにより、金属材料が貫通しなかった。これに対し溶接方法2,3では、確実に溶接できている。これにより、磁力線を的確に調性すれば、磁力線のみでも十分に溶接部分のプラズマを低減できることがわかる。また、シールドガスと磁力線とを併用した場合(溶接方法5)、シールドガスのみの場合(溶接方法4)よりも貫通速度が遅くなっている。これは、シールドガスの方向に対して磁力がプラズマを拘束し、滞留してしまうためと考えられる。
以上、本発明の代表的な実施の形態について説明したが、この他にも種々の変形が可能である。例えば、被溶接物を確り固定するために、磁場発生手段の一方または双方を左右方向へ移動自在として、被溶接物を磁場発生手段で挟持させてもよい。磁力発生手段としては、電磁石に限らず永久磁石を使用することもできる。先の実施形態ではプラズマの熱に対して耐熱性シールを使用したが、左右の磁場発生手段の距離を大きくとることで、これに対応させてもよい。
直線状の磁力線からなる均等な磁束密度の磁場中において確実に溶接させるために、トーチの水平移動距離(溶接ビート長さ)は磁場発生手段の前後長さより小さくしておく。しかし、広い範囲を溶接したい場合は磁場発生手段を大きくするにも限界がある。この場合はトーチを不動として、載置台を水平方向に移動自在としたり、載置台に代えて例えばベルトコンベアを使用することで、被溶接物自体を水平方向へ移動させながら溶接すればよい。これによれば、確実に磁場中において広い範囲を溶接できる。このとき、磁場中でレーザ溶接できている限り、トーチが移動自在であっても構わない。
レーザ溶接装置の要部拡大正面図である。 溶接部分の要部拡大平面図である。
符号の説明
1 レーザ溶接装置
2 レーザ加工トーチ
3 磁場発生手段
4 溶接ビート
5 金属材料(被溶接物)
7 載置台
10 鉄芯
11 コイル
L レーザ
M 磁力線
P プラズマ

Claims (2)

  1. CO 2 レーザ光を照射するレーザ加工トーチと、前記レーザ加工トーチと被溶接物との間にレーザ光の進路と交差する磁力線を生じさせる磁場発生手段とを有し、
    前記磁場発生手段は、前記被溶接物をこれの左右両側方から挟むように対向状に2つ設置されており、
    前記2つの磁場発生手段の間には、一方の磁場発生手段から他方の磁場発生手段へ向かう直線状の磁力線からなる均等な磁束密度の磁場が生じているレーザ溶接装置。
  2. CO 2 レーザ加工トーチと被溶接物との間に、前記被溶接物をこれの左右両側方から挟むように対向状に2つ設置した磁場発生手段によって、一方の磁場発生手段からレーザ光の進路と交差する状態で他方の磁場発生手段へ向けて直線状の磁力線を発生させ、均等な磁束密度の磁場中において前記被溶接物を溶接するレーザ溶接方法。

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