JP5514282B2 - 強化ガラス基板のスクライブ方法およびスクライブ装置 - Google Patents
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Description
ここで、「強化ガラス」とは、製造工程中におけるイオン交換による化学的処理により、ガラス基板の基板表面層に圧縮応力が残留する圧縮応力層が形成され、基板内部に引張応力が残留するように製造されたガラスをいう。
強化ガラスの特徴は、圧縮応力層の影響で外力に対し割れにくい性質を有する反面、一旦、基板表面に亀裂が生じて残留引張応力が存在する基板内部まで進むと、今度は逆に亀裂が深く浸透しやすくなる性質を有している。
前者のスクライブラインを形成する工程では、基板表面に対して円盤状のカッターホイール(スクライビングホイールともいう)を押しつけながら転動させることによりスクライブする方法が知られており、例えば特許文献1などで開示されている。カッターホイールとして、円周稜線部に連続した小さな凹凸を有する溝付きカッターホイールと、稜線部に凹凸を有しないノーマルカッターホイールとがあり、基板の種類や厚みに応じて使い分けされている。
このように外切りと内切りとは、それぞれ長所と短所を有している。そのため、基板の種類や用途によって、外切りと内切りとを使い分けている。
また、スクライブラインを形成する際の刃先の食い込みが容易になるので、スクライブライン形成時におけるカッターホイールの押圧荷重を、最初の起点の溝形成時の押圧荷重より小さくしても充分にスクライブラインを形成することができ、これにより、スクライブライン形成時における基板に対するカッターホイールの無理な荷重を軽減して基板の破断や完全分断をなくすことができる。
これにより、カッターホイールの食い込み起点となる溝の加工を確実に行うことができるとともに、スクライブラインの形成を迅速に行うことができる。
図1は、強化ガラス基板にスクライブラインを形成するために使用されるスクライブ装置の一例を示す概略的な正面図である。
ガイドバー6には、X方向に水平に延びるガイド8が設けられ、このガイド8に沿って移動できるようにスクライブヘッド9が設けられており、モータ12によって駆動されるようになっている。
スクライブヘッド9の下端にはホルダ10が昇降可能に装着され、ホルダ10にはカッターホイール11が取り付けられている。本発明では、このカッターホイール11として、円周稜線部に連続した小さな凹凸を有する溝付きカッターホイールが用いられる。
制御部20では、あらかじめ制御に必要な設定情報をメモリ22に記憶させておくことにより、制御プログラムと設定情報とにより所望のスクライブ動作を行うことができる。
記憶される設定情報の内、本発明で関係する情報について具体的に説明すると、スクライブするときのスクライブヘッドの移動速度情報22a、基板を押圧する押圧荷重情報22b、スクライブヘッドの移動距離情報22cが、加工開始前にあらかじめ入力により設定される。
まず、あらかじめカッターホイール11がスクライブ加工のスタート地点P1の直上にくるようにして、カッターホイール11の移動方向とスクライブ予定ラインとが一致するようにテーブル1上に基板Mをセットする。基板Mのセットはテーブル1に位置決め用のストッパ(不図示)を取り付け、これに当接して位置決めする方法が一般的であるが、搬送ロボットで定位置に基板を載置するようにしてもよい。また、基板載置までの動作は手動でも自動でもよい。
そして、図3(a)、(b)に示すように、基板Mのスクライブ予定ライン上で、基板Mの一端縁(図の左端縁)より内側(例えば3mm内側)に入り込んだスタート地点P1に溝付きカッターホイール11を降下させ、あらかじめ予備実験で求めた押圧荷重(第一押圧荷重情報として記憶された荷重)、例えば0.05MPa程度で押しつけながら、スタート地点近傍の折返し地点P2(移動距離情報として記憶された距離)まで前進転動させる(図3(c)参照)。
さらに、折返し地点P2で先の押圧荷重を維持させたまま折返してスタート地点P1まで後退転動させて溝(傷)Tを形成する(図3(d)参照)。
その後、先の押圧荷重より小さな押圧荷重(第二押圧荷重として記憶された荷重)、例えば0.01MPa程度でスクライブ予定ラインの終点地点P3まで前進転動させてスクライブラインSを形成する(図3(e)参照)。
また、スクライブラインSを形成する際の刃先の食い込みが容易であるので、スクライブライン形成時におけるカッターホイール11の押圧荷重を、溝Tの形成時の押圧荷重より小さくしても充分にスクライブラインSを形成することができる。これにより、スクライブライン形成時における基板に対するカッターホイールの無理な荷重を軽減して、基板の破断や完全分断をなくすことができる。
また、カッターホイール11の転動速度は、往復動時の速度(第一移動速度として記憶された速度)を例えば3mm/秒程度と遅くし、スクライブラインSを形成する際の速度(第二移動速度として記憶された速度)を、例えば100mm/秒と速くするのがよい。これにより、最初のカッターホイール食い込み起点となる溝Tの加工を確実に行うことができるとともに、スクライブラインSの加工を迅速に行うことができる。
この試験では、直径2mmの溝付きカッターホイールで、稜線角度(α)の異なったものをそれぞれ8個(番号1〜8)用意し、本発明の内切りスクライブ法と、従来の内切りスクライブ法でスクライブ試験を行った。
その結果、従来のスクライブ法(表2)では、かかり不良や亀裂の先走りを示す×印が多く、スクライブラインの加工が非常に不安定であるのに対し、本発明のスクライブ法(表1)では、○印で示すように広い範囲でスクライブラインを安定して形成することができた。
また、上記実施例では、スクライブライン形成時におけるカッターホイール11の押圧荷重を、溝Tを加工するための往復時の押圧荷重よりも小さくしたが、往復時の押圧荷重を変えることなくスクライブ予定ライン全長にわたってスクライブするようにしてもよい。
その他本発明では、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
P1 スタート地点
P2 折返し地点
S スクライブライン
T 溝
11 カッターホイール
Claims (5)
- 基板表面に圧縮応力層が形成されている強化ガラス基板に対し、スクライブラインを形成する基板スクライブ方法であって、
刃先稜線に連続した凹凸を有する溝付きカッターホイールを用いて、
(a)前記基板の一端縁より内側に入り込んだスタート地点に前記カッターホイールを下降当接させ、スクライブ予定ラインの方向でスタート地点近傍の折返し地点との間で、少なくとも一往復の前進転動と後退転動を第一の押圧荷重での押圧状態で行ってカッターホイールの食い込み起点となる溝を形成し、
(b)続いて、カッターホイールを前記スタート地点から前記溝上を通過するようにして、スクライブ予定ラインの終点地点まで前記第一の押圧荷重よりも小さい第二の押圧荷重にて押圧転動させてスクライブラインを形成するようにした強化ガラス基板のスクライブ方法。 - カッターホイールの前記往復動時の転動速度よりも、スクライブラインを形成する際の転動速度を速くした請求項1に記載の強化ガラス基板のスクライブ方法。
- 前記スタート地点から折返し地点までの距離が0.5mm〜3mmである請求項1または請求項2に記載の強化ガラス基板のスクライブ方法。
- ガラス基板の表面にスクライブラインを形成する基板スクライブ装置であって、
ガラス基板を載置するテーブルと、
刃先稜線に連続した凹凸を有する溝付きカッターホイールを保持するスクライブヘッドと、
前記ガラス基板の表面に対し前記カッターホイールが接触した状態と離隔した状態とをとるように前記スクライブヘッドを昇降させるスクライブヘッド昇降機構と、
前記スクライブヘッドを前記ガラス基板の表面に沿った方向に移動させる走査機構と、
前記スクライブヘッド昇降機構による昇降動作、および、前記走査機構によるスクライブヘッドの移動動作の制御を行う制御部と、
前記スクライブヘッドが基板に接触した状態での押圧荷重を第一押圧荷重および第二押圧荷重として別々に記憶可能な記憶部とを備え、
前記制御部が、前記基板の一端縁より内側に入り込んだスタート地点にスクライブヘッドがくるように前記基板がセットされた状態で制御が開始されると、
(a)前記スタート地点に前記カッターホイールを下降当接させ、スクライブ予定ラインの方向でスタート地点近傍の折返し地点との間で、少なくとも一往復の前進転動と後退転動を前記記憶部に記憶された第一押圧荷重による押圧状態で行ってカッターホイールの食い込み起点となる溝を形成し、
(b)続いて、カッターホイールを前記スタート地点から前記溝上を通過するようにして、スクライブ予定ラインの終点地点まで前記記憶部に記憶された第二押圧荷重により押圧転動させてスクライブラインを形成する動作を行う制御を行うことを特徴とするスクライブ装置。 - 前記制御部は、前記(a)の往復転動時と、前記(b)のスクライブ予定ラインの終点地点までの転動時とのスクライブヘッドの移動速度を別々に記憶可能な記憶部を備え、当該記憶部に記憶された移動速度に基づいて、前記(a)の往復転動と、前記(b)のスクライブ予定ラインの終点地点までの転動での移動速度を決定する請求項4に記載のスクライブ装置。
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