JP5512353B2 - エンジン用変速機構のオイル供給構造 - Google Patents

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Description

本発明は、自動二輪車等の車両に用いられるエンジン用変速機構のオイル供給構造に関する。
従来、上記オイル供給構造において、変速機ケースの上部に、その下方の変速機にオイルを適下するためのリブを設けた構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2007−285381号公報
ところで、上記従来の構成では、リブの幅方向(変速機の軸方向)全体の不特定箇所からオイルが滴下するため、変速機の変速段に応じて特にオイル供給が必要なギヤに集中的にオイルを供給することができなかった。
そこで本発明は、エンジン用変速機構のオイル供給構造において、変速機の変速段に応じて特にオイル供給が必要なギヤに集中的にオイルを供給可能とすることを目的とする。
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、多段の変速ギヤ列(38,39)を具備する変速機(4)と、前記変速機(4)の動力伝達ギヤを変更するシフト機構(50)とを備え、前記シフト機構(50)が、前記変速機(4)の上方に配置されたシフトドラム(30)の回転に伴って変速機(4)の動力伝達ギヤを変更するエンジン用変速機構のオイル供給構造であって、前記シフトドラム(30)内の中空部(37)がオイル溜まり(37a)とされ、前記シフトドラム(30)には前記中空部(37)から前記シフトドラム(30)の外周に開口する複数のオイル供給孔(H1〜H4)が形成され、これら各オイル供給孔(H1〜H4)が、前記変速機(4)の変速段に応じた前記シフトドラム(30)の回動位置にて、前記シフトドラム(30)の軸方向で異なる位置で下方に向けて開口するとともに、前記シフトドラム(30)が、その端面(33b)から前記中空部(37)に至る給油孔(33a)を有し、前記シフトドラム(30)の端面(33b)に検出面(66a)を対向させるドラム回転位置検出器(66)を備え、前記シフトドラム(30)の端面(33b)には、前記検出面(66a)に摺接する被検出部(67)が設けられ、前記被検出部(67)が、前記シフトドラム(30)の端面(33b)に形成された収容孔(67a)に収容されると共に、前記端面(33b)から突出するように軸方向で付勢され、前記給油孔(33a)が、前記シフトドラム(30)の端面(33b)と前記検出面(66a)との間の空間(33c)に連通することを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、前記各オイル供給孔(H1〜H4)が、前記変速機(4)の変速段に応じたギヤに対向するように開口することを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、前記変速機(4)が、エンジン(1)のクランク軸(9)から動力が入力されるメイン軸(5)と、このメイン軸(5)から動力が入力されるカウンタ軸(6)とを備え、前記メイン軸(5)に支持されたメイン変速ギヤ列(38)と前記カウンタ軸(6)に支持されたカウンタ変速ギヤ列(39)とが互いに噛合することで、前記メイン軸(5)及びカウンタ軸(6)間で動力伝達が可能とされ、前記メイン変速ギヤ列(38)が、前記メイン軸(5)の軸方向で並ぶ複数のギヤ(MG1〜MG4)を有し、前記シフトドラム(30)が、前記メイン変速ギヤ列(38)の上方で前記メイン軸(5)と平行に配置されることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、前記シフトドラム(30)が、シフトフォーク(35)のシフトピン(35b)を摺動可能に係合させるリード溝(32)を有し、前記シフトドラム(30)の回転により、前記リード溝(32)に沿って前記シフトフォーク(35)と前記メイン軸(5)上及びカウンタ軸(6)上の各シフター(MS,CS)とが軸方向移動することで、前記変速機(4)の変速動作が行われ、かつ前記変速動作の完了後には、前記シフトドラム(30)がドラムストッパ(55)により所定の回転位置に保持され、前記シフトピン(35b)が、前記シフトドラム(30)の下端を避けた位置で前記リード溝(32)に係合すると共に、前記シフトドラム(30)の前記各オイル供給孔(H1〜H4)の内の前記変速機(4)の変速段に対応するものが、前記シフトドラム(30)の下端位置で開口することを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、前記シフトドラム(30)が、前記中空部(37)と前記収容孔(67a)とを連通する連通孔(69)を有することを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、前記各オイル供給孔(H1〜H4)の少なくとも一つが、前記リード溝(32)内に設けられることを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、前記メイン軸(5)上のシフター(MS)がギヤ(MG4)を有し、このシフター(MS)が軸方向で他のギヤ(MG2,MG3)に挟まれて配置されると共に、前記メイン軸(5)に対してスプライン嵌合により軸方向移動可能であることを特徴とする。
請求項1に記載した発明によれば、変速機の変速段に応じたシフトドラムの回動位置にて、シフトドラムに設けた各オイル供給孔が異なる軸方向位置で下方に向けて開口することで、変速機の変速段に応じてオイル供給が必要なギヤに集中的にオイルを供給することが可能となる。すなわち、特別なバルブ等の機構を設けることなく、トランスミッションの変速段に応じたギヤに集中してオイル供給を行うことができる。
また、シフトドラムの端面に中空部に至る給油孔が開口することで、シフトドラムの回転位置に拠らず必要なオイル量をオイル溜まりに確保することができる。
また、シフトドラムの端面と検出面との間をオイルで満たすこととなり、検出面及び被検出部の磨耗や腐食を防止できる。
請求項2に記載した発明によれば、変速機の変速段に応じて特にオイル供給が必要なギヤに集中的にオイルを供給することができる。
請求項3に記載した発明によれば、メイン変速ギヤ列の各ギヤの軸方向配置に対応して、これら各ギヤのそれぞれに対してシフトドラムの各オイル供給孔からオイルを供給可能となる。
請求項4に記載した発明によれば、リード溝内にオイル供給孔を設けた場合にも、このオイル供給孔とシフトピンとが重ならないので、変速機の変速段に応じて、特にオイル供給が必要な動力伝達に用いるギヤのみに集中的にオイルを供給することができる。
請求項5に記載した発明によれば、収容孔をオイルで満たして被検出部の作動を良好にしつつ、前記給油孔と協働してシフトドラムの端面と検出面との間の空間内のオイルを循環させることができる。
請求項6に記載した発明によれば、リード溝内にもオイルを供給可能とし、変速動作をより滑らかにできる。
請求項7に記載した発明によれば、シフター両側の他のギヤに供給されたオイルがシフター両側のスプラインにも供給されるので、変速操作をより滑らかにできる。
本発明の実施形態におけるエンジンの左側面図である。 上記エンジンの主要軸の軸線に沿う展開端面図である。 上記エンジンの主要構成の右側面図である。 上記エンジンのトランスミッションの軸線に沿う展開断面図である。 上記トランスミッションの右側面図である。 上記トランスミッションのチェンジ機構の右側面図である。 (a)は上記チェンジ機構のシフトアップ操作時の右側面図、(b)は上記チェンジ機構のシフトダウン操作時の右側面図である。 上記チェンジ機構のシフトドラムの外周壁の展開平面図である。 上記シフトドラムの右側面図である。 図8に相当する展開平面図と図4の一部に相当する展開断面図とを組み合わせた作用説明図である。 図9に相当する右側面図を、上記トランスミッションの変速段が一速〜四速にあるとき毎に(a)〜(d)の順に並べた作用説明図である。 図4のシフトドラム周辺の拡大図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ図中適所に示す矢印FRを前方、矢印LHを左方、矢印UPを上方として説明する。
図1〜3に示すエンジン(内燃機関)1は、例えば自動二輪車等の鞍乗り型車両にその原動機として搭載されるもので、クランクシャフト9の回転中心軸線(クランク軸線)C1を左右方向に沿わせた空冷単気筒エンジンであり、そのクランクケース2の前端部からシリンダ3を略水平に(詳細にはやや前上がりに)前方に突出させた基本構成を有する。なお、図中符号C2はシリンダ3の突出方向に沿う軸線(シリンダ軸線)を示す。
クランクケース2は、左右方向に直交する分割面を境に左右ケース半体2a,2bに分割構成される。左右ケース半体2a,2bの外側方には、これらの一部をなす左右ケースカバー24,25がそれぞれ装着される。クランクケース2は、トランスミッション(変速機)4を収容するミッションケース(変速機ケース)も兼ねる。
シリンダ3は、クランクケース2側から順にシリンダ本体3a及びシリンダヘッド3bが連なる。シリンダ本体3a内にはシリンダボア3cが形成され、このシリンダボア3c内にピストン8が往復動可能に嵌装される。ピストン8はコネクティングロッド8aを介してクランクシャフト9のクランクピン9aに連結される。
クランクシャフト9は、クランクピン9aを支持する左右クランクウェブ9bと、これら左右クランクウェブ9bから左右外側に突出する左右ジャーナル部9cと、これら左右ジャーナル部9cからさらに左右外側に延出する左右支持軸9dとを有する。左支持軸9dの基端側には、シリンダヘッド3b内のカムシャフト11駆動用のカムドライブスプロケット12が同軸に設けられる。
カムシャフト11は、シリンダヘッド3b内においてクランクシャフト9と平行に配置され、その左右側部がシリンダヘッド3bに回転可能に支持される。カムシャフト11の左端にはカムドリブンスプロケット13が同軸に設けられ、このカムドリブンスプロケット13と前記カムドライブスプロケット12とにカムチェーン14が巻き掛けられる。シリンダ3の左側部内にはカムチェーン14等を収容するカムチェーン室15が設けられる。
なお、図中符号16はエンジン始動用のキックアームが取り付くキックスピンドルを、符号17は同じくエンジン始動用のスタータモータを、符号17aはスタータギヤ群を、符号18はシリンダヘッド3bの上側(吸気側)に接続されるキャブレター等の燃料供給装置を、符号19はシリンダヘッド3bの下側(排気側)に接続される排気管をそれぞれ示す。
ここで、図1を参照し、クランクケース2内の左側には、カムチェーン14に所定の張力を付与するカムチェーンテンショナ81が配設される。カムチェーンテンショナ81は、カムチェーン14の弛み側(カムドライブスプロケット12からの送り出し側、上側)に上方(巻回領域外側)から転接するテンショナローラ82と、このテンショナローラ82を前端に軸支すると共に前後中間部がクランクケース2に上下揺動可能に支持される揺動アーム83と、この揺動アーム83の後端を上方に押圧してテンショナローラ82をカムチェーン14側に付勢するリフター84とを有する。
カムドライブスプロケット12の斜め前下方には、カムチェーン14の張り側(カムドライブスプロケット12による引き込み側、下側)に下方(巻回領域外側)から摺接するスライダ85が設けられる。スライダ85は、側面視で上方に凸のハット形状をなし、クランクケース2の内壁面に形成されたホルダ部85aに保持、固定される。各スプロケット間であってシリンダ3の左側部内(カムチェーン室15内)には、カムチェーン14の弛み側及び張り側に挟まれてこれらに転接するアイドルローラ86が設けられる。
図1〜3を参照し、クランクシャフト9の回転動力は、クランクケース2内右側に収容された各クラッチ21,22及びクランクケース2内後部に収容されたトランスミッション4を介して、クランクケース2の後部左側に配置されたドライブスプロケット23に出力され、その後に不図示のドライブチェーン等を介して駆動輪に伝達される。
クランクシャフト9の右端部上には、当該エンジン1を搭載する車両の発進用クラッチである遠心クラッチ21が同軸支持される。
図2を参照し、遠心クラッチ21は、右方に開放する有底円筒状をなしてクランクシャフト9の右端部に相対回転可能に支持されるクラッチアウタ21aと、このクラッチアウタ21aの内周側にてクランクシャフト9の右端部に一体回転可能に支持されるクラッチインナ21bと、クラッチアウタ21aの内周側にてクラッチインナ21bに揺動可能に支持される例えば一対の遠心ウェイト21cとを有する。
各遠心ウェイト21cは、クランクシャフト9の停止時又は低速回転時にはクラッチアウタ21aの内周面から離間するように付勢されており、これら各遠心ウェイト21cがクランクシャフト9の回転速度の上昇に伴い付勢力に抗して外周側へ揺動することで、各遠心ウェイト21cがクラッチアウタ21aの内周面に摩擦係合してクラッチアウタ21a及びクラッチインナ21b間のトルク伝達が可能となる。
クラッチインナ21bは、その右方に同軸支持された遠心分離式のオイルフィルタ26の内側壁を形成する。遠心クラッチ21及びオイルフィルタ26の周囲は、右ケースカバー25により覆われる。なお、クランクシャフト9の左端部上にはジェネレータ27が同軸支持され、その周囲は左ケースカバー24により覆われる。
クラッチアウタ21aのハブ部21dは左方に延出し、その先端外周にプライマリドライブギヤ21eが一体回転可能に設けられる。クランクシャフト9の後方には、トランスミッション4のメインシャフト5及びカウンタシャフト6が前方から順に配置される。メインシャフト5及びカウンタシャフト6はそれぞれ中実(ソリッド)に形成され、かつそれぞれの回転中心軸線C3,C4を左右方向に沿わせて(クランク軸線C1と平行にして)配置される。以下、特に記載がなければ、各軸線C1,C3,C4に沿う方向を軸方向とし、各軸線C1,C3,C4に沿う矢視を軸方向視として説明する。
ここで、図3を参照し、メインシャフト5は、その軸線C3がクランクシャフト9及びカウンタシャフト6の各軸線C1,C4を含む略水平な平面Hよりも上方に位置するように配置される。このように、メインシャフト5がクランクシャフト9及びカウンタシャフト6よりも上方に配置されることで、各シャフト5,6,9が前後に詰めて配置されてクランクケース2ひいてはエンジン1のコンパクト化が図られると共に、比較的重量物であるクランクシャフト9の位置を下げることで、エンジン1ひいてはこれを搭載する車両の低重心化が図られる。
図2を参照し、プライマリドライブギヤ21eは、メインシャフト5の右端部上に支持された比較的大径のプライマリドリブンギヤ22eに噛み合う。メインシャフト5の右端部は遠心クラッチ21よりも左方(エンジン内側)で終端し、この右端部上にプライマリドリブンギヤ22e及びその右方に隣接する多板クラッチ22がそれぞれ同軸支持される。
多板クラッチ22は当該エンジン1を搭載する車両の変速用クラッチであり、右方に開放する有底円筒状をなしてメインシャフト5の右端部に相対回転可能に支持されるクラッチアウタ22aと、このクラッチアウタ22aの内周側にてメインシャフト5の右端部に一体回転可能に支持されるクラッチインナ22bと、クラッチアウタ22a及びクラッチインナ22b間にて軸方向で積層される複数のクラッチ板22cとを有する。クラッチアウタ22aの底壁左側にはプライマリドリブンギヤ22eが一体回転可能に支持される。
多板クラッチ22の周囲も右ケースカバー25により覆われる。この右ケースカバー25と右ケース半体2bとにより、各クラッチ21,22を油密に収容するクラッチ室28が形成される。
ここで、図3を参照し、クラッチ室28(右ケースカバー25)の上壁部28aにおける多板クラッチ22の軸中心(軸線C3)よりも前方に位置する部位は、軸方向視でクランクシャフト9及びメインシャフト5の各軸線C1,C3を結ぶ直線T1と略平行となるように前下がりに傾斜する(以下、当該部位を傾斜部28bという)。このように、クランクシャフト9及びメインシャフト5の配置に合わせるようにクランクケース2の上壁部28a(傾斜部28b)が前下がりに傾斜することで、クランクケース2の前部上側がコンパクト化されてスタータモータ17等の配置が容易になる。
上壁部28a(傾斜部28b)の上方にはブリーザ口29が設けられ、このブリーザ口29から延びるブリーザホース29aが、傾斜部28bに沿って後上がりに傾斜して延びた後、適宜屈曲しつつ上方に延びて不図示のエアクリーナボックスに至る。このため、ブリーザホース29a内にオイルが溜まることなくブリーザ口29からクラッチ室28内に戻される。
なお、図中矢印F1はクランクシャフト9におけるエンジン運転時の回転方向(正転方向)を、矢印F2はメインシャフト5におけるエンジン運転時の回転方向を、矢印F3はカウンタシャフト6におけるエンジン運転時の回転方向をそれぞれ示す。
ここで、図1,3を参照し、エンジン1は、燃焼室内での最大圧力時(燃焼(膨張)行程初期、ピストン8が上死点付近にあるとき)におけるピストン8のシリンダボア3c内面への押し付け力(摺動抵抗)の低減等を図るべく、シリンダ軸線C2に対してクランク軸線C1が上方(ピストン8が上死点付近にあるときのクランクピン9aの移動方向上流側)に所定量Zだけオフセットしたオフセットクランク機構を採用する。換言すれば、シリンダ軸線C2がクランク軸線C1に対して下方(ピストン8が上死点付近にあるときのクランクピン9aの移動方向下流側)へ所定量Zだけオフセットしている。
図2〜4に示すように、トランスミッション4は、メインシャフト5及びカウンタシャフト6と、これら両シャフト5,6に跨って支持される変速ギヤ群7とを備える。クランクシャフト9の回転動力は、メインシャフト5から変速ギヤ群7の任意のギヤを介してカウンタシャフト6に伝達される。
変速ギヤ群7は、両シャフト5,6にそれぞれ支持された変速段数分のギヤにより構成される。トランスミッション4は、両シャフト5,6間で変速ギヤ群7の対応するギヤ同士が常に噛み合った常時噛み合い式とされる。両シャフト5,6に支持された各ギヤは、対応するシャフトに対して相対回転可能なフリーギヤと、対応するシャフトに対して一体回転可能な固定ギヤと、対応するシャフトにスプライン嵌合するスライドギヤとに分類され、これら各ギヤがトランスミッション4の変速段に応じて選択的に係合する。
図3〜5に示すように、トランスミッション4のギヤ変更は、その上方に配置されたチェンジ機構50により、前記スライドギヤを軸方向移動させることで行われる。
チェンジ機構50は、両シャフト5,6と平行な中空円筒状のシフトドラム30と、このシフトドラム30の外周に形成された複数(二本)のリード溝32にそれぞれ係合する複数(二つ)のシフトフォーク35とを有する。各シフトフォーク35は、シフトドラム30の回転により各リード溝32のパターンに応じて適宜軸方向移動することで、変速ギヤ群7における両シャフト5,6間の動力伝達に用いるギヤを切り替える。なお、図中符号C5はシフトドラム30の回転中心軸線を示す。これらトランスミッション4とチェンジ機構50とを併せてエンジン用変速機構が構成される。
図4,5を参照し、シフトドラム30は、円筒状の外周壁31の外面に各リード溝32を形成すると共に、軸方向両端部にはそれぞれ左右ケース半体2a,2bに回転可能に支持される左右軸支部33,34を形成する。シフトドラム30は、メインシャフト5のほぼ真上に位置するように配置される。シフトドラム30の斜め下後方にはシフトフォークシャフト36が位置し、このシフトフォークシャフト36が支持する各シフトフォーク35のシフトピン35bが、シフトドラム30の各リード溝32にシフトドラム30の斜め下後方から(シフトドラム30の下端を避けた位置から)それぞれ係合する。
なお、図中矢印Uはシフトドラム30の正転方向(シフトアップ方向)を、矢印Dはシフトドラム30の逆転方向(シフトダウン方向)を示す。シフトドラム30は、その正転によりトランスミッション4のシフトポジションをニュートラル、一速、二速、三速、四速の順に切り替える。トランスミッション4が所定のシフトポジションにあるときのシフトドラム30の回転は、その右端に固定されたストッパプレート54等により規制される。
また、トランスミッション4が四速のシフトポジションにありかつカウンタシャフト6が正転しているとき(当該エンジン搭載車両の走行時)のシフトドラム30の正転(四速からニューラルへの切り替え)は、カウンタシャフト6上にフリクション支持されたストッパアーム56が自身のウェイト56aの付勢力に抗してシフトドラム30側に揺動してこれに係合することで規制される。
図5を参照し、各シフトフォーク35の一方はシフトドラム30とメインシャフト5との間に配置され、他方はシフトドラム30とカウンタシャフト6との間に配置される。各シフトフォーク35は、これらの基端部35aを貫通する単一のシフトフォークシャフト36に軸方向移動可能に支持される。
各シフトフォーク35の基端部35a及びシフトフォークシャフト36は、シフトドラム30の斜め下後方に位置する。各シフトフォーク35の基端部35aからは、シフトドラム30の各リード溝32に係合するシフトピン35bがそれぞれ突出する。これら各シフトピン35bが各リード溝32に斜め下後方から係合した状態で、シフトドラム30が回転して各シフトフォーク35を軸方向移動させる。
一方、各シフトフォーク35の先端部35cは二股状に分岐し、これら各先端部35cが変速ギヤ群7における対応するスライドギヤ(シフター)に係合する。これにより、各シフトフォーク35の軸方向移動に伴い前記スライドギヤが軸方向移動してトランスミッション4のシフトポジションを切り替える。
図3,6に示すように、カウンタシャフト6の下方には、これと平行に配置されたチェンジスピンドル51が配置される。チェンジスピンドル51にはマスターアーム52の基端部が溶接固定され、これらチェンジスピンドル51及びマスターアーム52と前記ストッパプレート54等との協働により、シフトドラム30が段階的に正逆回転してトランスミッション4の五段階のシフトポジションを一段ずつ切り替える。
マスターアーム52はチェンジスピンドル51の斜め後上方に延出し、その先端部には斜め前上方に延びるチェンジアーム53の基端部が回動可能に連結される。チェンジアーム53の先端部は、シフトドラム30の右端部に一体回転可能に同軸固定された略星型のストッパプレート54の右側方に至る。ストッパプレート54には、右方(チェンジアーム53側)に突出する複数(五本)の送りピン54aが圧入固定される。各送りピン54aは、シフトドラム30におけるトランスミッション4の各シフトポジションに応じた回転位置に対応するように、周方向で等間隔に配置される。これら各送りピン54aに、チェンジアーム53の先端部が選択的に係合する。
トランスミッション4が所定のシフトポジションにあるときは、各送りピン54aの何れかがストッパプレート54の真下に位置する。この送りピン54aとその斜め上前方に位置する送りピン54aとが、チェンジアーム53先端部の斜め上後側に形成された係合凹部53a内に入り込む。これら一対の送りピン54aに係合凹部53aの底部を押し付けるように、チェンジアーム53がマスターアーム52に対して付勢されている。
そして、トランスミッション4が所定のシフトポジションにある上記状態から、チェンジスピンドル51及びマスターアーム52が正逆何れかの方向に回動すると、チェンジアーム53がストッパプレート54及びシフトドラム30を同じく正逆何れかの方向に回動させる。チェンジスピンドル51及びマスターアーム52が正逆回転する際の回動量は、マスターアーム52の中間部に形成されたガイド孔52a及びクランクケース2に固定されたガイドピン52bにより所定角度に規定される。
なお、図中矢印U’はチェンジスピンドル51及びマスターアーム52の正転方向(シフトアップ方向)を、矢印D’はチェンジスピンドル51及びマスターアーム52の逆転方向(シフトダウン方向)をそれぞれ示す。
図7を併せて参照し、係合凹部53aは、チェンジスピンドル51及びマスターアーム52の正転方向への前記所定角度の回動に伴い、ストッパプレート54及びシフトドラム30を正転方向へ所定角度(トランスミッション4を一段シフトアップさせる角度)だけ回動させる。その際、係合凹部53aの斜め下後方に位置する下爪部53bが、ストッパプレート54の真下に位置する送りピン54aに係合してこれを斜め上前方に押し上げることで(図7(a)参照)、ストッパプレート54及びシフトドラム30が正転方向へ前記所定角度だけ回動する。
その後、チェンジアーム53、マスターアーム52及びチェンジスピンドル51が不図示の戻しバネの付勢力により前記回動前の状態に戻る際には、下爪部53bが先に係合していた送りピン54aの逆転方向に隣接する送りピン54aに傾斜辺53cを摺接させて乗り上げることで、この送りピン54aに係合することなく(ストッパプレート54及びシフトドラム30を逆転方向に回動させることなく)、前記回動前の状態に戻る。
同様に、係合凹部53aは、チェンジスピンドル51及びマスターアーム52の逆転方向への前記所定角度の回動に伴い、ストッパプレート54及びシフトドラム30を逆転方向へ所定角度(トランスミッション4を一段シフトダウンさせる角度)だけ回動させる。その際、係合凹部53aの斜め上前方に位置する上爪部53dが、ストッパプレート54の斜め上前方に位置する送りピン54aに係合してこれを斜め下後方に引き下げることで(図7(b)参照)、ストッパプレート54及びシフトドラム30が逆転方向へ前記所定角度だけ回動する。
その後、チェンジアーム53、マスターアーム52及びチェンジスピンドル51が不図示の戻しバネの付勢力により前記回動前の状態に戻る際には、上爪部53dが先に係合していた送りピン54aの正転方向に隣接する送りピン54aに傾斜辺53eを摺接させて乗り上げることで、この送りピン54aに係合することなく(ストッパプレート54及びシフトドラム30を正転方向に回動させることなく)、前記回動前の状態に戻る。
このようなチェンジスピンドル51等の正逆回転の一往復動により、シフトドラム30が正逆それぞれの回転方向に間欠送りされてトランスミッション4のシフトポジションを一段ずつ変化させる。
図6を参照し、ストッパプレート54の外周には、シフトドラム30におけるトランスミッション4の各シフトポジションに応じた回転位置に対応するように、複数の外周凹部54bが周方向で等間隔に形成される。各外周凹部54bには、クランクケース2に揺動可能に支持されたストッパアーム55先端のストッパローラ55aが弾接可能であり、このストッパローラ55aが各外周凹部54bの何れかに弾性的に係合することで、ストッパプレート54及びシフトドラム30がトランスミッション4の各シフトポジションに応じた所定の回転位置に保持される。
また、ストッパローラ55aが各外周凹部54bの何れかに係合した状態でも、ストッパプレート54及びシフトドラム30に所定以上の回動力が加わった際には、ストッパローラ55aが外周側に変位して当該外周凹部54bを乗り越えることで、ストッパローラ55a及びシフトドラム30の回動を許容する。
なお、トランスミッション4がニュートラル状態にあるときのシフトドラム30の逆転は、このときストッパローラ55aが係合する外周凹部54b(図中符号54b’で示す)の側縁が起立してストッパローラ55aを乗り越えさせないようにすることで規制される。
図3を参照し、クランクケース2の底部にはオイルパン2eが一体成形され、このオイルパン2e内に貯留されたエンジンオイルが、不図示のオイルポンプにより吸入、吐出されてエンジン内を循環する。この循環において、エンジンオイルは前記オイルフィルタ26及び不図示のオイルクーラ等を通過して適宜ろ過、冷却される。エンジン内各部に供給されたエンジンオイルは、自然滴下等によりオイルパン2eに戻される。
図2を併せて参照し、前記オイルポンプから吐出されたエンジンオイルの一部は、右ケースカバー25内に形成された第一油路71を通じてクランクシャフト9の右端部内に同軸形成された第二油路72に導入され、かつ第二油路72の右端部から径方向外側に流れてオイルフィルタ26の遠心分離室26aに導入される。この遠心分離室26a内で異物等を遠心分離されたエンジンオイルは、クランクシャフト9の右側部内に第二油路72と分離して同軸形成された第三油路73に導入され、この第三油路73、右クランクウェブ9b内に形成された第四油路74、及びクランクピン9aの右側部内に形成された第五油路75を通じてクランクピン内油室76に導入される。
クランクピン9aには、その外周面とクランクピン内油室76とを連通する油孔76aが形成され、この油孔76aを通じて、クランクピン9a外周とコネクティングロッド8aの大端部内周との間にエンジンオイルが供給される。なお、クランクシャフト9はクランクピン9aを介して左右分割体を一体に連結した分割式とされる。
ここで、遠心クラッチ21のクラッチインナ21bにおける前記オイルフィルタ26の遠心分離室26aの内側壁を形成する部位には、斜め左外周側に向けて開口する第一給油孔77が周方向で複数形成される。これら各第一給油孔77を通じて、遠心分離室26a内のエンジンオイルの一部が遠心クラッチ21内の各遠心ウェイト21c等に向けて供給される。
また、遠心クラッチ21の有底円筒状のクラッチアウタ21aにおける外周壁及び底壁間の屈曲部分には、斜め左外周側に向けて開口する第二給油孔78が周方向で複数形成される。これら各第二給油孔78を通じて、遠心クラッチ21内に供給されたエンジンオイルが遠心クラッチ21外で多板クラッチ22のクラッチインナ22b等に向けて供給される。
前記オイルポンプから吐出されたエンジンオイルの一部は、右ケース半体2bの側壁2dにおけるシリンダ本体3a近傍に形成されたオイルジャケット79に至り、このオイルの一部が右ケース半体2bに形成されたオイル噴射孔(オイルジェット)79aより下死点近傍にあるピストン8の排気側に向けて噴射される。
図2,3を参照し、多板クラッチ22は、遠心クラッチ21に対して軸方向内側(左方)にオフセットして配置される。多板クラッチ22は、その前部が遠心クラッチ21の後部の軸方向内側(左方)に隣接するように(遠心クラッチ21の後部と右ケース半体2bの側壁2dとの間に入り込むように)配置される。これにより、多板クラッチ22の前部と遠心クラッチ21の後部とが、側面視(軸方向視)で互いに重なるように配置される。
多板クラッチ22において、各クラッチ板22cの右方にはクラッチインナ22bに一体形成された右フランジ41が配置されると共に、各クラッチ板22cの左方にはクラッチインナ22bに対して例えば複数のコイルスプリング(クラッチスプリング)43により右方に付勢された押圧部材44の左フランジ42が配置され、これら各フランジ41,42間にて各クラッチ板22cが圧接されて一体的に摩擦係合することで、クラッチアウタ22a及びクラッチインナ22b間のトルク伝達が可能となる。
一方、前記各コイルスプリング43の付勢力に抗して押圧部材44(左フランジ42)を左方に変位させることで、各クラッチ板22cの圧接が解除される。この押圧部材44の左方への移動は、不図示のシフトペダルの変速操作に応じて多板クラッチ22右側のレリーズ機構45を介してなされる。すなわち、前記シフトペダルの変速操作時に連動して多板クラッチ22の動力伝達が一時的に解除される。これにより、トランスミッション4のシフトチェンジがよりスムーズになる。
ここで、図10を参照し、トランスミッション4の変速ギヤ群7は、メインシャフト5上に支持されるメイン変速ギヤ列38と、カウンタシャフト6上に支持されるカウンタ変速ギヤ列39とを備える。各変速ギヤ列38,39は、それぞれトランスミッション4の変速段数分(この実施形態では四速分)のギヤを有する。
メイン変速ギヤ列38において、一速に対応するメインローギヤMG1は右ボールベアリングMBRの左方に隣接してメインシャフト5に一体形成され、二速に対応するメインセカンドギヤMG2は左ボールベアリングMBLの右方に隣接してメインシャフト5に相対回転可能に支持され、三速に対応するメインサードギヤMG3はメインローギヤMG1の左方に隣接してメインシャフト5に相対回転可能に支持され、四速に対応するメイントップギヤMG4はメインセカンドギヤMG2及びメインサードギヤMG3の間でメインシャフト5にスプライン嵌合するメインシフターMSの左側に一体形成される。すなわち、メイントップギヤMG4が前記スライドギヤとなる。
同様に、カウンタ変速ギヤ列39において、一速に対応するカウンタローギヤCG1は右ボールベアリングCBRの左方に隣接してカウンタシャフト6に相対回転可能に支持され、二速に対応するカウンタセカンドギヤCG2は左ボールベアリングCBLの右方に隣接してカウンタシャフト6に相対回転不能に支持され、三速に対応するカウンタサードギヤCG3はカウンタローギヤCG1の左方でカウンタシャフト6にスプライン嵌合するカウンタシフターCSの右側に一体形成され、四速に対応するカウンタトップギヤCG4はカウンタサードギヤCG3の左方にてカウンタシャフト6に相対回転可能に支持される。すなわち、カウンタサードギヤCG3が前記スライドギヤとなる。
メインシフターMSの右側及びメイントップギヤMG4の左側には、それぞれメインドッグMDが突設される。メインシフターMS及びメイントップギヤMG4は、メインシャフト5にスプライン嵌合することで、メインシャフト5に対して相対回転不能かつ軸方向移動可能であり、これらメインシフターMS及びメイントップギヤMG4が軸方向左側に移動することで、左メインドッグMDがメインセカンドギヤMG2に相対回転不能に係合し、各セカンドギヤMG2,CG2を介して各シャフト5,6間の動力伝達が可能となる。また、メインシフターMS及びメイントップギヤMG4が軸方向右側に移動することで、右メインドッグMDがメインサードギヤMG3に相対回転不能に係合し、各サードギヤMG3,CG3を介して各シャフト5,6間の動力伝達が可能となる。
同様に、カウンタシフターCSの右側及びカウンタサードギヤCG3の左側には、それぞれカウンタドッグCDが突設される。カウンタシフターCS及びカウンタサードギヤCG3は、カウンタシャフト6にスプライン嵌合することで、カウンタシャフト6に対して相対回転不能かつ軸方向移動可能であり、これらカウンタシフターCS及びカウンタサードギヤCG3が軸方向左側に移動することで、左カウンタドッグCDがカウンタトップギヤCG4に相対回転不能に係合し、各トップギヤMG4,CG4を介して各シャフト5,6間の動力伝達が可能となる。また、カウンタシフターCS及びカウンタサードギヤCG3が軸方向右側に移動することで、右カウンタドッグCDがカウンタローギヤCG1に相対回転不能に係合し、各ローギヤMG1,CG1を介して各シャフト5,6間の動力伝達が可能となる。
図8,9を参照し、シフトドラム30の各リード溝32は、軸方向で適宜変位しつつ周方向に延びるもので、その長手方向の所定位置にトランスミッション4の変速段数分(この実施形態では四速分)にニュートラルを加えた五つのシフト位置P1〜P4及びPNを規定する。各シフト位置P1〜P4及びPNは、例えばPN,P1,P2,P3,P4の順に軸線C5中心の角度で72度の等間隔をもって配置される。
これら各シフト位置P1〜P4及びPNの何れかがシフトドラム30の斜め下後方に位置するとき(当該シフト位置にて各シフトピン35bが各リード溝32に係合するとき)に、トランスミッション4が当該シフト位置に対応するシフトポジションとなる。以下、各シフト位置P1〜P4及びPNの何れかがシフトドラム30の斜め下後方に位置するとき(当該シフト位置で各シフトピン35bが係合するとき)のシフトドラム30の回転位置をそれぞれロー位置、セカンド位置、サード位置、トップ位置及びニュートラル位置という。
ここで、図12を併せて参照し、前記シフトドラム30内に形成された中空部37には、左ケース半体2aに形成された油路65a、左軸支部33の左方に形成された左端油室33c、及び左軸支部33に形成された給油孔33aを介して、前記オイルポンプから圧送されたエンジンオイルの一部が流入し、もって中空部37内にオイル溜まり37aが設けられる。
そして、シフトドラム30の外周壁31には、これを径方向で貫通してその外周側と中空部37とを連通する(外周側に向けて開口する)複数(四つ)のオイル供給孔H1〜H4が形成される。
図8〜11を参照し、各オイル供給孔H1〜H4は、互いにシフトドラム30の周方向及び軸方向で位置を異ならせるように配置される。各オイル供給孔H1〜H4は、シフトドラム30がトランスミッション4の各変速段に対応する回転位置にあるときには、これら各オイル供給孔H1〜H4の何れかがシフトドラム30の下端に位置してその下方に向けて開口する(図11(a)〜(e)参照)。このとき、当該オイル供給孔は、その下方に位置するメイン変速ギヤ列38におけるトランスミッション4の変速段に応じたギヤに対向する。
詳細には、各オイル供給孔H1〜H4の内のメインローギヤMG1と軸方向位置を略同一にするもの(ローオイル供給孔H1)は、シフトドラム30がロー位置にあるときに下方に開口してメインローギヤMG1に対向する。
以下同様に、各オイル供給孔H1〜H4の内のメインセカンドギヤMG2と軸方向位置を略同一にするもの(セカンドオイル供給孔H2)は、シフトドラム30がセカンド位置にあるときに下方に開口してメインセカンドギヤMG2に対向し、メインサードギヤMG3と軸方向位置を略同一にするもの(サードオイル供給孔H3)は、シフトドラム30がサード位置にあるときに下方に開口してメインサードギヤMG3に対向し、メイントップギヤMG4と軸方向位置を略同一にするもの(トップオイル供給孔H4)は、シフトドラム30がトップ位置にあるときに下方に開口してメイントップギヤMG4に開口する。
サードオイル供給孔H3は、カウンタ変速ギヤ列39に対するシフトフォーク35用のリード溝32内に開口している。なお、図中符号56bは前記ストッパアーム56を係合させる係合凹部を示す。
図12を参照し、左ケース半体2aの側壁2cにおけるシフトドラム30の左軸支部33を支持する支持孔65は左方に開放し、この支持孔65にシフトドラム30の回転位置を検出するドラム回転位置検出器66の右側部が左方から嵌入される。ドラム回転位置検出器66の右側部の先端面は検出面66aとされ、この検出面66aがシフトドラム30(左軸支部33)の左端面33bに所定の間隙をもって対向する。こられ検出面66a及び左端面33b間に形成された空間が前記左端油室33cとなる。
シフトドラム30の左軸支部33における軸線C5からオフセットした部位には、軸線C5と平行に穿設されて左端面33bに開口する有底の収容孔67aが形成され、この収容孔67a内にドラム回転位置検出器66による被検出部であるプランジャ67が収容される。プランジャ67は、その先端側を左端面33bから突出させて検出面66aに摺接するべく、軸方向で左方に向けて付勢される。
前記左端油室33cには、左ケース半体2aの側壁2cに形成された前記油路65aが開口し、この油路65aから左端油室33c内へオイルが流入する。シフトドラム30の左軸支部33には、左端面33bから中空部37まで例えば軸方向に沿って延びる前記給油孔33aが形成される。この給油孔33aを通じて、前記左端油室33c内のオイルが中空部37内に流入して前記オイル溜まり37aを形成すると共に、このオイルが各オイル供給孔H1〜H4を通じてメイン変速ギヤ列38に供給される。なお、ドラム回転位置検出器66の右側部外周と支持孔65内周との間には、左端油室33cを油密にシールするOリング68が介装される。
収容孔67aの底部には、収容孔67aと中空部37とを連通する連通孔69が形成される。連通孔69は、収容孔67a内にオイルを流入可能としてプランジャ67の作動を良好にすると共に、収容孔67aとプランジャ67との間の隙間や給油孔33aと協働して中空部37内のオイルを循環可能とする。
以上説明したように、上記実施形態におけるエンジン用変速機構のオイル供給構造は、多段の変速ギヤ列38,39を具備するトランスミッション4と、前記トランスミッション4の動力伝達ギヤを変更するチェンジ機構50とを備え、前記チェンジ機構50が、前記トランスミッション4の上方に配置されたシフトドラム30の回転に伴ってトランスミッション4の動力伝達ギヤを変更するものであって、前記シフトドラム30内の中空部37がオイル溜まり37aとされ、前記シフトドラム30には前記中空部37から前記シフトドラム30の外周に開口する複数のオイル供給孔H1〜H4が形成され、これら各オイル供給孔H1〜H4の内の対応するものが、前記トランスミッション4の変速段に応じた前記シフトドラム30の回動位置にて、前記シフトドラム30の軸方向で異なる位置で下方に向けて開口するものである。
この構成によれば、トランスミッション4の変速段に応じたシフトドラム30の回動位置にて、シフトドラム30に設けた各オイル供給孔H1〜H4の内の対応するものが異なる軸方向位置で下方に向けて開口することで、トランスミッション4の変速段に応じてオイル供給が必要なギヤに集中的にオイルを供給することが可能となる。すなわち、特別なバルブ等の機構を設けることなく、トランスミッション4の変速段に応じたギヤに集中してオイル供給を行うことができる。
また、上記エンジン用変速機構のオイル供給構造は、前記各オイル供給孔H1〜H4が、前記トランスミッション4の変速段に応じたギヤに対向するように開口するものである。
この構成によれば、トランスミッション4の変速段に応じて特にオイル供給が必要なギヤに集中的にオイルを供給することができる。
また、上記エンジン用変速機構のオイル供給構造は、前記トランスミッション4が、エンジン1のクランクシャフト9から動力が入力されるメインシャフト5と、このメインシャフト5から動力が入力されるカウンタシャフト6とを備え、前記メインシャフト5に支持されたメイン変速ギヤ列38と前記カウンタシャフト6に支持されたカウンタ変速ギヤ列39とが互いに噛合することで、前記メインシャフト5及びカウンタシャフト6間で動力伝達が可能とされ、前記メイン変速ギヤ列38が、前記メインシャフト5の軸方向で並ぶ複数のギヤを有し、前記シフトドラム30が、前記メイン変速ギヤ列38の上方で前記メインシャフト5と平行に配置されるものである。
この構成によれば、メイン変速ギヤ列38の各ギヤの軸方向配置に対応して、これら各ギヤのそれぞれに対してシフトドラム30の各オイル供給孔H1〜H4からオイルを供給可能となる。
また、上記エンジン用変速機構のオイル供給構造は、前記シフトドラム30が、複数のシフトフォーク35のシフトピン35bをそれぞれ摺動可能に係合させる複数のリード溝32を有し、前記シフトドラム30の回転により、前記各リード溝32に沿って前記各シフトフォーク35とこれらがそれぞれ係合する前記各シャフト5,6上の各シフターMS,CSとが軸方向移動することで、前記トランスミッション4の変速動作が行われ、かつ前記変速動作の完了後には、前記シフトドラム30がストッパアーム55により所定の回転位置に保持され、前記各シフトピン35bが、前記シフトドラム30の下端を避けた位置で前記各リード溝32に係合すると共に、前記シフトドラム30の前記各オイル供給孔H1〜H4の内の前記トランスミッション4の変速段に対応するものが、前記シフトドラム30の下端位置で開口するものである。
この構成によれば、例えばリード溝32内にオイル供給孔(サードオイル供給孔H3)を設けた場合にも、このオイル供給孔とシフトピン35bとが重ならないので、トランスミッション4の変速段に応じて、特にオイル供給が必要な動力伝達に用いるギヤにのみ集中的にオイルを供給することができる。
また、上記エンジン用変速機構のオイル供給構造は、前記シフトドラム30が、その左端面33bから前記中空部37に至る給油孔33aを有するものである。
この構成によれば、シフトドラム30の左端面33bに中空部37に至る給油孔33aが開口することで、シフトドラム30の回転位置に拠らず必要なオイル量をオイル溜まり37aに確保することができる。
また、上記エンジン用変速機構のオイル供給構造は、前記シフトドラム30の左端面33bに検出面66aを対向させるドラム回転位置検出器66を備え、前記シフトドラム30の左端面33bには、前記検出面66aに摺接するプランジャ67が設けられ、前記プランジャ67が、前記シフトドラム30の左端面33bに形成された収容孔67aに収容されると共に、前記左端面33bから突出するように軸方向で付勢され、前記給油孔33aが、前記シフトドラム30の左端面33bと前記検出面66aとの間の空間(左端油室33c)に開口するものである。
この構成によれば、シフトドラム30の左端面33bと検出面66aとの間をオイルで満たすこととなり、検出面66a及びプランジャ67の磨耗や腐食を防止できる。
また、上記エンジン用変速機構のオイル供給構造は、前記シフトドラム30が、前記中空部37と前記収容孔67aとを連通する連通孔69を有するものである。
この構成によれば、収容孔67aをオイルで満たしてプランジャ67の作動を良好にしつつ、前記給油孔33aと協働してシフトドラム30の左端面33bと検出面66aとの間の空間内のオイルを循環させることができる。
また、上記エンジン用変速機構のオイル供給構造は、前記各オイル供給孔H1〜H4の少なくとも一つ(サードオイル供給孔H3)が、前記リード溝32内に設けられるものである。
この構成によれば、リード溝32内にもオイルを供給可能とし、変速動作をより滑らかにできる。
また、上記エンジン用変速機構のオイル供給構造は、前記メインシャフト5上のメインシフターMSがギヤ(メイントップギヤMG4)を有し、このメインシフターMSが軸方向で他のギヤ(メインセカンドギヤMG2及びメインサードギヤMG3)に挟まれて配置されると共に、前記メインシャフト5に対してスプライン嵌合により軸方向移動可能であることを特徴とする。
この構成によれば、メインシフターMS両側の他のギヤに供給されたオイルがメインシフターMS両側のスプラインにも供給されるので、変速動作をより滑らかにできる。
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、クランクケース上にシリンダを起立させたエンジンに適用してもよく、かつDOHC式のエンジンや並列又はV型等の複数気筒エンジン等、各種形式のレシプロエンジンに適用してもよい。また、当該エンジンを搭載する鞍乗り型車両には、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
1 エンジン
4 トランスミッション(変速機)
5 メインシャフト(メイン軸)
6 カウンタシャフト(カウンタ軸)
9 クランクシャフト(クランク軸)
30 シフトドラム
32 リード溝
33a 給油孔
33b 左端面(端面)
33c 左端油室(空間)
35 シフトフォーク
35b シフトピン
37 中空部
37a オイル溜まり
H1〜H4 オイル供給孔
38 メイン変速ギヤ列(変速ギヤ列)
39 カウンタ変速ギヤ列(変速ギヤ列)
50 チェンジ機構(シフト機構)
55 ストッパアーム(ドラムストッパ)
MG1 メインローギヤ(ギヤ)
MG2 メインセカンドギヤ(ギヤ)
MG3 メインサードギヤ(ギヤ)
MG4 メイントップギヤ(ギヤ)
MS メインシフター(シフター)
CS カウンタシフター(シフター)
66 ドラム回転位置検出器
66a 検出面
67 プランジャ(被検出部)
67a 収容孔
69 連通孔

Claims (7)

  1. 多段の変速ギヤ列(38,39)を具備する変速機(4)と、前記変速機(4)の動力伝達ギヤを変更するシフト機構(50)とを備え、前記シフト機構(50)が、前記変速機(4)の上方に配置されたシフトドラム(30)の回転に伴って変速機(4)の動力伝達ギヤを変更するエンジン用変速機構のオイル供給構造であって、
    前記シフトドラム(30)内の中空部(37)がオイル溜まり(37a)とされ、前記シフトドラム(30)には前記中空部(37)から前記シフトドラム(30)の外周に開口する複数のオイル供給孔(H1〜H4)が形成され、これら各オイル供給孔(H1〜H4)が、前記変速機(4)の変速段に応じた前記シフトドラム(30)の回動位置にて、前記シフトドラム(30)の軸方向で異なる位置で下方に向けて開口するとともに、
    前記シフトドラム(30)が、その端面(33b)から前記中空部(37)に至る給油孔(33a)を有し、
    前記シフトドラム(30)の端面(33b)に検出面(66a)を対向させるドラム回転位置検出器(66)を備え、前記シフトドラム(30)の端面(33b)には、前記検出面(66a)に摺接する被検出部(67)が設けられ、前記被検出部(67)が、前記シフトドラム(30)の端面(33b)に形成された収容孔(67a)に収容されると共に、前記端面(33b)から突出するように軸方向で付勢され、前記給油孔(33a)が、前記シフトドラム(30)の端面(33b)と前記検出面(66a)との間の空間(33c)に連通することを特徴とするエンジン用変速機構のオイル供給構造。
  2. 前記各オイル供給孔(H1〜H4)が、前記変速機(4)の変速段に応じたギヤに対向するように開口することを特徴とする請求項1に記載のエンジン用変速機構のオイル供給構造。
  3. 前記変速機(4)が、エンジン(1)のクランク軸(9)から動力が入力されるメイン軸(5)と、このメイン軸(5)から動力が入力されるカウンタ軸(6)とを備え、前記メイン軸(5)に支持されたメイン変速ギヤ列(38)と前記カウンタ軸(6)に支持されたカウンタ変速ギヤ列(39)とが互いに噛合することで、前記メイン軸(5)及びカウンタ軸(6)間で動力伝達が可能とされ、前記メイン変速ギヤ列(38)が、前記メイン軸(5)の軸方向で並ぶ複数のギヤ(MG1〜MG4)を有し、前記シフトドラム(30)が、前記メイン変速ギヤ列(38)の上方で前記メイン軸(5)と平行に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン用変速機構のオイル供給構造。
  4. 前記シフトドラム(30)が、シフトフォーク(35)のシフトピン(35b)を摺動可能に係合させるリード溝(32)を有し、前記シフトドラム(30)の回転により、前記リード溝(32)に沿って前記シフトフォーク(35)と前記メイン軸(5)上及びカウンタ軸(6)上の各シフター(MS,CS)とが軸方向移動することで、前記変速機(4)の変速動作が行われ、かつ前記変速動作の完了後には、前記シフトドラム(30)がドラムストッパ(55)により所定の回転位置に保持され、前記シフトピン(35b)が、前記シフトドラム(30)の下端を避けた位置で前記リード溝(32)に係合すると共に、前記シフトドラム(30)の前記各オイル供給孔(H1〜H4)の内の前記変速機(4)の変速段に対応するものが、前記シフトドラム(30)の下端位置で開口することを特徴とする請求項3に記載のエンジン用変速機構のオイル供給構造。
  5. 前記シフトドラム(30)が、前記中空部(37)と前記収容孔(67a)とを連通する連通孔(69)を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のエンジン用変速機構のオイル供給構造。
  6. 前記各オイル供給孔(H1〜H4)の少なくとも一つが、前記リード溝(32)内に設けられることを特徴とする請求項4に記載のエンジン用変速機構のオイル供給構造。
  7. 前記メイン軸(5)上のシフター(MS)がギヤ(MG4)を有し、このシフター(MS)が軸方向で他のギヤ(MG2,MG3)に挟まれて配置されると共に、前記メイン軸(5)に対してスプライン嵌合により軸方向移動可能であることを特徴とする請求項3又は4に記載のエンジン用変速機構のオイル供給構造。
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