以下、本発明に係る発泡成形用金型(以下、単に「金型」という)の一実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
図1(a),(b)に示すように、金型11は、向かい合う1組の金型12,13により構成されている。金型12を構成する成形型12Aと、金型13を構成する成形型13Aとを対向させて合わせることによって、発泡性樹脂粒子Sが充填される成形空間を形成するように構成されている。尚、図1(a)に示す金型11は、1組の金型12,13を左右方向(水平方向)に開閉させる横型の金型であるが、上下方向に開閉させる縦型の金型であってもよい。また、図1(a)では、右側の成形型13Aを板状にしているが、左側の成形型12Aと同じ箱型の成形型により成形空間を形成してもよい。
金型12には、成形型12Aの背面側を覆った蒸気室12aが形成されている。この蒸気室12aは、成形型12A及びバックプレート12Bにより構成される。同様に金型13においても、成形型13A及びバックプレート13Bにより蒸気室13aが構成される。
金型12のバックプレート12Bの上板部12bには、蒸気室12aに連通する蒸気供給管21及び冷却水供給管22並びに圧縮空気供給管23の一端(下端)が所定間隔を置いて貫通固定されている。それら蒸気供給管21、冷却水供給管22、圧縮空気供給管23の途中に、開閉バルブ21V、22V、23Vが設けられている。冷却水供給管22は、上板部12bから後述する下板部12cの近傍まで延出された延出部22Aを有している。その延出部22Aには、延出方向に所定間隔を置いて冷却水を供給する開口22aが形成されている。図示していないが、金型13にも金型12と同様に開閉バルブ21V、22V、23Vがそれぞれ設けられた蒸気供給管21、冷却水供給管22、圧縮空気供給管23が設置されている。
また、金型12のバックプレート12Bの下板部12cには、ドレン管24及び真空装置に繋がれた真空供給管25の一端(上端)が所定間隔を置いて貫通固定されている。それらドレン管24及び真空供給管25の途中に、開閉バルブ24V,25Vが設けられている。図示していないが、金型13にも金型12と同様に開閉バルブ21V、22V、23Vがそれぞれ設けられたドレン管24及び真空供給管25が設置されている。
図1(b)は、成形型12Aの成形面を拡大したものであり、成形型12Aの成形面12Kの所定箇所(対象エリア)には、一方向に連続して延びる多数本の第1溝部M1と、該第1溝部M1と同一深さ(高さ)の第1溝部M1と直交するように他方向に連続して延びる多数本の第2溝部M2とが形成されている。
多数本の第1溝部M1は、前後方向に一定間隔P1を置いて整列され、また、多数本の第2溝部M2は、上下方向に一定間隔P2(本実施形態では、P1=P2)を置いて整列されている(図1(a),(b)参照)。上下方向とは、紙面における上下方向と同じであり、前後方向とは、紙面に対して垂直に表面から裏面に向かう方向である。多数本の第1溝部M1及び第2溝部M2のそれぞれの間隔は、冷却効率を向上させるように定められ、全ての溝部間が一定の間隔でなくてもよいのは言うまでもない。また、本実施形態において第1溝部M1と第2溝部M2とが直交しているが、冷却効率等の向上を図るために異なる方向に溝部を走らせればよく、成形品(発泡成形体)の形状等によっては、直交でなく斜めに交わっていてもよい。
ここで、対象エリアは、所望の効果を得たいと思われる範囲に設けられる。即ち、例えば、離型性の向上、冷却効率の向上及び成形性の向上等、ユーザが望む効果を得たい箇所に対象エリアは設定される。従って、図1(a)に示すように、一の金型と他の金型が対向する面にのみを対象エリアと定める必要は無い。即ち、成形型12Aの上壁面、下壁面等に設けても良いことは言うまでもない。また、これらの壁面の全面に設けても良いし、一部に設けてもよく、対象エリアを複数定めても良い。さらに、例えば成形面全面に対象エリアを定めた場合には、各壁部における第1溝部同士の端部がまたは第2溝部同士の端部が連続していてもよいし、連続していなくても良い。このように構成された成形型12A,13A内に発泡性樹脂粒子Sを充填し、充填された発泡性樹脂粒子Sを加熱することにより発泡成形体が成形され、その成形された発泡成形体の表面に、後述する多数の第1突条8T1及び第2突条8T2(図3(a),(b),(c)参照)が突出形成される。
また、蒸気供給管21、冷却水供給管22、圧縮空気供給管23、及びドレン管24を介して前記蒸気室12aに導入された蒸気や冷却水(又は冷却風)を成形空間(キャビティ)へ供給するための第1通孔12K1が成形型12Aの第1溝部M1の底面に形成され、同じように第2通孔12K2が成形型12Aの第2溝部M2の底面に形成されている。第1通孔12K1は、各第1溝部M1に設けられることで、第1溝部M1と同様、前後方向に一定間隔P1を置いて形成され、一方、第2通孔12K2は、各第2溝部M2に設けられることで、第2溝部M2と同様、上下方向に一定間隔P2を置いて形成されている。尚、通孔12K1,12K2の形状は、円形の他、楕円形や四角形などでもよいし、縦長のスリット状であってもよい。また、本実施形態では、通孔12K1,12K2は、それぞれの溝部M1,M2に対して1つのみ設けた場合を示しているが、2つ以上設けてもよい。また、第1通孔12K1は、各第1溝部M1に設けられる他、1つ置きの第1溝部M1に1つ以上設けられる、又は2つ置きの第1溝部M1に1つ以上設けられてもよく、ランダムに選択した特定の第1溝部M1に1つ以上設けられてもよい。また、第2通孔12K2も同様に、1つ置きの第2溝部M2に1つ以上の第2通孔12K2が設けられる、又は2つ置きの第2溝部M2に1つ以上の第2通孔12K2が設けられてもよく、ランダムに選択した特定の第2溝部M2に1つ以上の第2通孔12K2が設けられてもよい。勿論、第1溝部M1と第2溝部M2との交差位置に設けられても良い。また、ここで、通孔12K1又は12K2の径が溝部M1又はM2の幅さらには溝部M1又はM2のピッチより大きい場合があり、この場合、通孔12K1又は12K2の一部が少なくとも一方の溝部M1又はM2に設けられているものとする。溝部M1,M2に対する通孔12K1,12K2の位置は、例えば前記のように一定間隔P2を置いて規則性を持って配置してもよいし、ランダムに配置してもよい。もちろん、右側の金型13の成形型13Aには、少なくとも通孔が規則性またはランダムに配置されている。
ここで、第1溝部M1及び第2溝部M2の深さが1mm以下、より好ましくは0.3mm以下である場合、及び/又は、第1溝部M1,M1の間隔P1及び第2溝部M2,M2の間隔P2が、2mm〜50mmである場合に離型性が良く、より好ましくは30mm以下(0を除く)である場合に離型性が更に良い。複数本の溝部M1,M2の深さ及び溝部M1,M2の幅は、全て同じであってもよいし、全て異なる又は一部のみ異なったものであってもよい。
しかも、上記のように、第1溝部M1及び第2溝部M2の深さは浅いことから、金型11としては、エッチング加工により作製することによって、設計の自由度が増すだけでなく、複雑な形状の金型の成形面を精度よく形成することができて好ましいが、切削加工等その他の作製方法を用いてもよく、金型の作製方法については特に限定されない。
次に、前記のように構成された金型11(尚、図1に示す金型11は、第1溝部M1、第2溝部M2、第1通孔12K1及び第2通孔12K2を説明するための概念図であって、以下に説明する発泡成形体と形態が一致するものではない)を用いて発泡成形体を成形する過程を説明する。尚、金型12を中心に説明する。
まず、成形型12A,13Aを合わせることにより形成される成形空間に発泡性合成樹脂粒子Sを図示していない充填装置により充填する。そして、以下の手順で加熱処理を行う。まず。金型12の開閉バルブ21Vを開放状態にすることにより、蒸気供給管21から蒸気を金型12の蒸気室12aに供給する。このとき、金型13のドレン管(図示せず)が開放され、金型12の蒸気室12aに供給された蒸気は、金型12の成形型12Aの外(背)面を加熱すると共に成形型12Aの通孔12K1,12K2を通して成形空間に供給されて金型13の成形型13Aの通孔(図示せず)を通って成形型13Aの蒸気室13aへ導かれ、金型13のドレン管(図示せず)を介して金型13の外部へ排出される。次に、金型12の開閉バルブ21Vを閉じてドレン管24を開放し、金型13のドレン管(図示せず)を閉じ、金型13の開閉バルブ(図示せず)を開放し、金型13の蒸気供給管(図示せず)から蒸気室13aに蒸気を供給する。供給された蒸気は、成形型13Aの背面を加熱すると共に成形型13Aの通孔(図示せず)を通して成形空間に供給されて成形型12Aの通孔12K1,12K2を通って成形型12Aの蒸気室12aへ導かれ、金型12のドレン管24を介して金型12の外部へ排出される。最後に、金型12のドレン管24を閉じてから、即ち両方の金型12,13のドレン管24(金型13のドレン管は図示せず)を閉じた状態で、両方の金型12,13の開閉バルブ21V(金型13の開閉バルブは図示せず)を開放して加熱する。
加熱が終了すると、両方の金型12,13の開閉バルブ22V(金型13の開閉バルブは図示せず)を開放状態にして延出部22Aの開口22aから冷却水を成形型12A,13Aに吹き掛けて成形型12A,13Aを冷却する。このとき、冷却水の一部が通孔12K1,12K2を通して成形型12A,13Aの内部に入り込んで冷却を促進させる。発泡成形体は冷却されることにより収縮を始める。これにより、発泡成形体と成形型12A,13Aとの間に間隙が形成される。この間隙を介して、冷却水は溝を伝わりやすくなり、冷却効率が上がる。
冷却水による冷却が終了すると、続いて、両方の金型12,13の開閉バルブ23V(金型13の開閉バルブは図示せず)を開放状態にして圧縮空気供給管23から圧縮空気を蒸気室12a,13aに供給することによって、通孔12K1,12K2を通して成形型12A,13A内に供給することで、発泡成形体と成形型12A,13Aとの間隙を通して成形型12A内に溜まっている冷却水を通孔12K1,12K2に案内し、通孔12K1,12K2を通して成形型12A,13Aの蒸気室12a,13aへ排出し、排出された冷却水を左右のドレン管24を介して金型12,13の外へそれぞれ排出する。この圧縮空気は、成形型12A,13Aと発泡成形体とを離す役目もある。
続いて、減圧冷却工程に移り、両方の金型12,13のドレン管24の開閉バルブ24V(金型13の開閉バルブは図示せず)を閉じてから、開閉バルブ25V(金型13の開閉バルブは図示せず)を開放して真空供給管25で蒸気室12a,13a内を減圧することにより蒸気室12a,13a内の残存水分や成形された発泡成形体に付着もしくは内部に含有されている水分を蒸発させるとともに蒸発潜熱を利用して冷却を促進させて、減圧冷却工程を終了する。こののち、成形型12A,13Aを開くと共に金型12,13の開閉バルブ23V(金型13の開閉バルブは図示せず)を開放状態にして金型12,13の圧縮空気供給管23(金型13の圧縮空気供給管は図示せず)から離型するための圧縮空気(エア)を蒸気室12a,13aに供給することによって、通孔12K1,12K2(成形型13Aの通孔は図示せず)を通して成形型12A,13A内に圧縮空気(エア)が供給され、発泡成形体を成形型12A,13Aから取り出して作業が完了する。もちろん、金型に離型ピンを設けて、圧縮空気(エア)と併用してもよいし、離型ピンのみで発泡成形体を取り出してもよい。
以上のように、本実施形態の金型11によれば、通孔12K1,12K2は、発泡性樹脂粒子を加熱するための蒸気や発泡成形された直後の発泡成形体を冷却するための冷却水(又は冷却風)を金型内部に供給するための出入口用の孔として用いられるため、第1通孔12K1及び第2通孔12K2を通して供給される蒸気や冷却水が連続形成された溝部M1,M2を伝って成形面の対象エリアに広がり易く、しかもどの方向からも蒸気や冷却水が均一に供給され、成形性及び冷却効率を向上させることができるようになっている。
また、金型内部に供給された蒸気は、冷却工程で冷却されて水になり、金型内部に溜まることになるが、この溜った水や冷却水は、第1溝部M1及び第2溝部M2に対応させて設けられた第1通孔12K1及び第2通孔12K2を通して迅速かつ確実に成形空間から排出することができる。このことから、金型内に水が溜まるのを防止することができ、その結果、次回の発泡成形工程時の発泡性樹脂粒子の充填が金型内に溜まった水により阻害されることがないから、充填作業を確実に行って成形性の向上を図ることができる。そして、金型内に水が溜まるという問題を生じないため、水冷水による水冷プロセスを積極的に採用することができ、その結果、冷却効率が向上して時間短縮によるサイクルアップを図ることができる。
さらに、溝部M1,M2に通孔12K1,12K2が通っていることから、溝部M1,M2に圧縮空気(エア)を直接供給することによって、圧縮空気(エア)が溝部M1,M2を通して成形面の対象エリアに均一に伝わり易くなり、離型がスムーズに行える。しかも、異なる方向の2つの溝部M1,M2内に圧縮空気(エア)が通る構成であることから、発泡成形後の発泡成形体の離型時に、圧縮空気(エア)を均一に分散させることができ、よりスムーズな離型を行うことができる。
このような金型11により発泡成形した発泡成形体を図2及び図3に示している。尚、発泡倍率は、使用目的に応じて適宜変更することができる。図2では、発泡成形体の一例として、車両に搭載されるツールボックス1を示している。このツールボックス1は、3個の収納部2,3,4を備えた長方形状のボックス本体5と、ボックス本体5の上端に設けられた環状のフランジ部6とを備え、このフランジ部6を車体側のほぼU字状の金属製の枠部材9の上面9Aに載置支持させている。また、前記ボックス本体5の上面に被せることによって、該上面を覆うための板状の蓋7を備え、該蓋7の外周縁にボックス本体5の上面に接触する板状で環状の当接部材7Aを備えている。
また、発泡成形体は、任意の発泡性樹脂材料で作ることができるが、発泡性樹脂材料の中でも熱可塑性樹脂で成形された発泡成形体であることが好ましい。前記熱可塑性樹脂には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリスチレンとポリエチレンとを含む複合樹脂を用いることが好ましい。
前記ツールボックス1の水平な上面のうちの(矩形状の)外周縁の上面8Aは、前記金型11の成形面の対象エリアに対応する箇所であり、該上面8Aには、図2及び図3(a),(b),(c)に示すように、該上面8Aよりも上方に突出すると共に左右方向に一直線状に延びる多数の第1突条8T1と、第1突条8T1と同一高さになるように上面8Aよりも上方に突出すると共に第1突条8T1と直交するように前後方向に一直線状に延びる多数の第2突条8T2とが形成されている。多数の第1突条8T1は、前後方向に一定間隔P1を置いて整列され、また、多数の第2突条8T2は、左右方向に一定間隔P2を置いて整列されている。また、第1突条8T1及び第2突条8T2の断面が先端側に先細り形状、具体的には鋭角な外形線によって構成された略三角形状となっている。
従って、前記蓋7を閉じたときに、蓋7の当接部材7Aがツールボックス1の上面8Aに蓋7の重量で押し付けられることになるが、当接部材7Aを第1突条8T1及び第2突条8T2で安定よく支持することができるだけでなく、第1突条8T1及び第2突条8T2の断面が三角形となっていることから、第1突条8T1及び第2突条8T2と当接部材7Aとの接触面積を少なくして、当接部材7Aに第1突条8T1及び第2突条8T2を適切に接触させることができる。これによりアンカー効果が発生し、ツールボックス1に対して上側の蓋7が移動しにくくなり、当接部材7Aとツールボックス1とが擦れて異音が発生することも防止することができるようになっている。
一般的に、異音が発生するメカニズム(音鳴りのメカニズム)については、スティックスリップ現象により異音(音鳴り)が発生するものと考えられる。このスティックスリップ現象は、2つの物体が、荷重を受け押し付けられている状態で接触を保ちながら相対的に移動する時、これらの物体表面で付着と滑りが交互に発生して2つの物体の円滑な相対移動が阻害される現象であり、これにより物体内に振動(摩擦振動)が起こり、音が鳴る現象が現れる。すなわち、一方側の物体が、他方(相手)側の物体に対して滑っては付着し、付着しては滑るといった小刻みな移動を繰り返し行うことにより音鳴りが発生すると考えられる。かかる現象に対し、第1突条8T1及び第2突条8T2は非常に効果的である。
特に、前記のように多数の第1突条8T1と直交するように多数の第2突条8T2を設けることによって、四方が囲まれた環状(矩形状)の枠部が前後左右方向に連なる状態で形成されることによって、第1突条8T1及び第2突条8T2の保形強度を高めることができ、異音防止及び位置ずれ防止に効果的である。
また、フランジ部6の下面6Aにも第1突条8T1及び第2突条8T2を設けておけば、例えば車両の走行中に、金属製の枠部材9に対してツールボックス1が振動などにより移動するのを防止することができ、フランジ部6の下面6Aと枠部材9の上面9Aとが擦れて異音が発生するのを防止することができる。また、図2の2点鎖線で示す車体構成部材10に接触するボックス本体5の下面5Aにも第1突条8T1及び第2突条8T2を設けておけば、車両の走行中に、車体構成部材10に対してツールボックス1が振動などにより移動するのを防止することができ、ボックス本体5の下面5Aと車体構成部材10とが擦れて異音が発生するのを防止することができる。
尚、第1突条8T1及び第2突条8T2の高さが1mm以下となる背の低い突条であるため、図2では、第1突条8T1及び第2突条8T2を線で示しているが、第1突条8T1及び第2突条8T2の形状を明確にするため、図3(a),(b),(c)の拡大図で大きく示している。
ところで、充填された発泡性樹脂粒子を加熱して成形されたツールボックス1の表面には、発泡粒子の粒径や発泡密度のバラツキ等に起因して亀甲模様が発生することがある。このように亀甲模様が発生した場合でも、前述したように、ツールボックス1の上面に形成された第1突条8T1及び第2突条8T2によって、目立ちにくくすることができ、意匠性に優れたツールボックス1にすることができ、商品価値を高めることができる。また、ツールボックス1(発泡成形体)に例えキズが付いたとしても、第1突条8T1及び第2突条8T2によってキズを打ち消してキズを目立ちにくくすることができる、というのも第1突条8T1及び第2突条8T2が奏する効果である。尚、これらの効果を目的として、ツールボックス1の第1突条8T1及び第2突条8T2を設けていない他の箇所にも第1突条8T1及び第2突条8T2を形成するようにしてもよい。
発泡成形体としては、図4に示す車両の前部座席足元に設けられるティビアパット14であってもよい(又は車両の後部座席足元に設けられるフロアスペーサであってもよい)。このティビアパット14は、フロアパネル15とそれの上に配置される内装材としてのフロアカーペット16との間に配置され、乗員の足17に対する緩衝性を高めて乗り心地を高めることを目的としている。
前記ティビアパット14は、発泡性樹脂粒子を加熱して板状に発泡成形され、その上面14Aには、その上面14Aから上方に突出すると共に左右方向に一直線状に延びる多数の第1突条14T1と、第1突条14T1と同一高さとなるように上面14Aよりも上方に突出すると共に第1突条14T1と直交するように前後方向に一直線状に延びる多数の第2突条14T2とが形成されている。多数の第1突条14T1は、前後方向に一定間隔P3(図3(b)の一定間隔P1と同一であってもよいし、異なっていてもよい)を置いて整列され、また、多数の第2突条14T2は、左右方向に一定間隔(図示していないが、第1突条14T1の一定間隔P3と同一であってもよいし、異なる間隔であってもよい)を置いて整列されている。また、第1突条14T1及び第2突条14T2の断面が先端側に先細り形状、具体的には略三角形状となっている。
このように形成されたティビアパット14を設けることによって、例えば乗員が車内に乗り込む際にフロアカーペット16が足17の荷重を受けても、その荷重を第1突条14T1及び第2突条14T2で安定よく支持することによって、フロアカーペット16に第1突条14T1及び第2突条14T2が適切に接触し、そのため、異音が発生するのを効果的に防止することができる。しかも、フロアカーペット16がティビアパット14に対して移動しにくいことから、フロアカーペット16がティビアパット14に対して位置ずれするのも防止することができる。尚、図4では、ティビアパット14の表面にのみ第1突条14T1及び第2突条14T2を設けたが、ティビアパット14の裏面にも第1突条14T1及び第2突条14T2を設けてもよい。
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
前記実施形態では、車両における内装材を成形するための金型を示したが、車両における内装材以外のもの、例えば部屋の中に置いておく装飾品やソファーやベッドあるいは床下の中に入れるクッション材等を本発明の金型で成形してもよい。
また、前記実施形態では、発泡成形体の第1突条及び第2突条の断面形状を三角形になるように金型本体12に断面形状がV型の溝部M1,M2を形成したが、図5(a)に示すように半円形状の溝部M3,M4や、図5(b)に示すように小判形状の上半分の形状の溝部M5,M6や、図5(c)に示すように楕円形状の上半分の形状の溝部M7,M8などであってもよい。このように溝部を深さ方向に向かうに連れて先細りとなる先細り形状とすることによって、離型時において成形された発泡成形体の突条が引っ掛かって大きな抵抗になるようなことがなく、好ましい。
図5(a),(b),(c)で示した成形型12Aにより成形した発泡成形体を、図6(a),(b),(c)に示している。つまり、図5(a)の成形型12Aにより成形した発泡成形体を、図6(a)に示し、表面から上方に突出した断面形状が半円状の突条18T1,18T2を示している。一方の突条18T1が左右方向に一直線状に延び、他方の突条18T2が前後方向に一直線状に延びている。また、図5(b)の成形型12Aにより成形した発泡成形体を、図6(b)に示し、表面から上方に突出した断面形状が小判形状の上半分の形状にした突条19T1,19T2を示している。一方の突条19T1が左右方向に一直線状に延び、他方の突条19T2が前後方向に一直線状に延びている。また、図5(c)の成形型12Aにより成形した発泡成形体を、図6(c)に示し、表面から上方に突出した断面形状が楕円形状の上半分の形状にした突条20T1,20T2を示している。一方の突条20T1が左右方向に一直線状に延び、他方の突条20T2が前後方向に一直線状に延びている。突条の先端は、先細り形状であれば、どのような形状であってもよいが、先端部には角のない丸い形状であることが好ましい。
また、前記実施形態では、第1溝部M1及び第2溝部M2のいずれも一定間隔で整列したが、一方の第1溝部M1又は第2溝部M2を一定でない不定間隔に設定して実施してもよい。
また、前記実施形態では、発泡成形体の第1突条及び第2突条を一直線状に構成したが、連続するジグザグ状に構成してもよいし、連続する曲線状に構成してもよい。また、第1突条と第2突条とを直交させる他、90度以外の所定角度で交わるように第1突条と第2突条とを形成してもよい。
また、前記実施形態では、第1溝部M1に第1通孔12K1を形成し、第2溝部M2に第2通孔12K2を形成したが、図7(a),(b)に示すように、第1溝部M1及び第2溝部M2でない部分、つまり並設された第1溝部M1,M1同士間の中間部(中間部でなくてもよい)及び並設された第2溝部M2,M2同士間の中間部(中間部でなくてもよい)、具体的には、第1溝部M1及び第2溝部M2で四方が囲まれて形成された平面部分12Hの中心部(中心部でなくてもよい)に通孔12K3を形成してもよい。図7(a)では、四方が囲まれた平面部分12Hの全てに通孔12K3を形成しているが、特定の平面部分12Hのみに形成して実施してもよい。このように最も肉厚のある平面部分12Hに通孔12Kを形成することによって、図1(a)に示したように厚みが薄くなった溝部M1,M2に通孔12K1,12K2を形成する構成の場合に比べて、成形型12Aの肉厚を薄くすることができ、金型本体の小型化を図ることができる。また、図1で示した第1通孔12K1及び第2通孔12K2だけでなく、図7(a),(b)で示した通孔12K3をも備えた金型であってもよい。
また、前記実施形態では、方向の異なる一直線状の複数の第1溝部M1と、第2溝部M2とを直交するように(交差でもよい)設けたが、一方のみの溝部M1又はM2のみを設けて実施してもよい。一方のみの溝部M1又はM2を設けた金型により成形した発泡成形体を、例えば図8(a),(b),(c)に示している。この発泡成形体は、上面8Aよりも上方に突出すると共に前後方向に一直線状に延びる多数の突条8T3が形成されている。多数の突条8T3は、左右方向に一定間隔P2を置いて整列されている。また、突条8T3の断面が先端側に先細り形状、具体的には鋭角な外形線によって構成された略三角形状となっているが、形状は自由に変更できる。