以下図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の作業車両を適用したトラクタの全体側面図である。本トラクタは、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2を有する走行機体3と、走行機体3後方に配置されて昇降リンク4によって走行機体3に昇降駆動可能に連結された作業機であるロータリ耕耘装置5とを備えている。
走行機体3の前半部にはエンジン6(図5参照)を収容するボンネット7が設置され、走行機体3におけるボンネット7後方にはキャビン8が立設されている。このキャビン8内に乗り込んだオペレータの操作によって、本トラクタは、圃場を走行しながらロータリ耕耘装置5によって耕耘作業等の作業を行う。
次に、本トラクタの動力伝動構成について説明する。
図2は、本トラクタの動力伝動構造を示すミッションケース内の展開図である。エンジン6の動力は、ミッションケース9内のトランスミッション11を介して、前後輪1,2及びロータリ耕耘装置5に変速伝動される。
トランスミッション11は、走行伝動系への動力を断続させる主クラッチ12と、複数段(図示する例では4段)の走行変速切換を行う第1主変速装置(走行変速装置,主変速装置)13と、前後進切換装置14と、複数段(図示する例では低速、中速、高速の3段)の走行変速切換を行う副変速装置16と、複数段(図示する例では2段)の走行変速切換を行う第2主変速装置(走行変速装置,主変速装置)17と、前輪1への動力の断続及び変速を行う前輪伝動装置18と、ロータリ耕耘装置5に動力を出力するPTO軸19への動力を断続させる油圧クラッチである作業クラッチ21とを備えている。
エンジン6の動力は、第1主変速装置13→前後進切換装置14→副変速装置16→第2主変速装置17の順に伝動される。第2主変速装置17に入力された動力は変速されて前後方向の走行駆動軸22に伝動される。この走行駆動軸22の動力は、後輪2に伝動される他、前輪伝動装置18を介して前輪1に伝動される。
すなわち、第1主変速装置13と前後進切換装置14と副変速装置16と第2主変速装置17とは、エンジン6から前後進1,2への動力伝動経路で、直列的に配置されて4×3×2で計24段の走行変速切換を行うように構成されている。
上記主クラッチ12は、エンジン6動力によって駆動されて作業クラッチ21側(作業伝動系)に動力を伝動する前後方向の伝動軸23の外周に軸回りに回転自在に軸支された筒状の走行伝動軸24へのエンジン6からの動力伝動を断続するように構成されている。オペレータは、キャビン8内の床面側に設置されたクラッチペダル26(図1参照)の踏込みによって主クラッチ12を切断操作する一方で、クラッチペダル26の踏込み解除によって主クラッチ12を接続操作する。
上記第1主変速装置13は、走行伝動軸24に一体的に取付固定されて走行伝動軸24と一体回転する第1主変速装置13の変速段と同数の入力ギヤ27A,27B,27C,27Dと、対応する入力ギヤ27A,27B,27C,27Dと常時噛合う第1主変速装置13の変速段と同数の出力ギヤ28A,28B,28C,28Dと、出力ギヤ28A,28B,28C,28Dのうちで最低速段ギヤ及び最高速段ギヤである1速出力ギヤ28A及4速出力ギヤ28Dを遊転状態で(回転自在に)支持する変速軸である第1変速軸29と、最高速段と最低速段との間の中間速段ギヤである2速出力ギヤ28B及び3速出力ギヤ28Cを遊転状態で支持する変速軸である第2変速軸31と、1速出力ギヤ28Aの動力を第1変速軸29に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである1速クラッチ(油圧クラッチ)32Aと、2速出力ギヤ28Bの動力を第2変速軸31に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである2速クラッチ(油圧クラッチ)32Bと、3速出力ギヤ28Cの動力を第2変速軸31に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである3速クラッチ(油圧クラッチ)32Cと、4速出力ギヤ28Dの動力を第1変速軸29に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである4速クラッチ(油圧クラッチ)32Dと、を備えている。ちなみに、第1変速軸29と第2変速軸31は左右に並列配置されている。
本トラクタは、上記4つの変速クラッチ32A,32B,32C,32D内の何れか1つを入作動させて他の3つを切作動させることにより第1主変速装置13を1速から4速の何れかの変速段に切換える一方で、上記4つの変速クラッチ32A,32B,32C,32D全てを切作動させることによりエンジン動力の第1主変速装置13下流側への伝動を切断するように構成されている。ちなみに、変速段が増加する程、第1主変速装置13下流側に高速で動力が伝動される。
上記前後進切換装置14は、第1変速軸29と一体回転する第1前進入力ギヤ33及び後進入力ギヤ34と、第2変速軸31と一体回転する第2前進入力ギヤ36と、前後方向の前後進切換軸37と、前後進切換軸37に遊転状態で支持されて上記2つの前進入力ギヤ33,36と常時噛合う前進出力ギヤ38Aと、前後進切換軸37に遊転状態で支持された後進出力ギヤ38Bと、後進入力ギヤ34及び後進出力ギヤ38Bと常時噛合い後進入力ギヤ34から後進出力ギヤ38Bに逆転動力を伝動する反転ギヤ(図示しない)と、前進出力ギヤ38Aの動力を前後進切換軸37に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである前進クラッチ(油圧クラッチ)41Aと、後進出力ギヤ38Bの動力を前後進切換軸37に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである後進クラッチ(油圧クラッチ)41Bと、を備えている。
本トラクタは、前進クラッチ41Aを接続作動させるとともに後進クラッチ41Bを切断作動させることにより前後進切換装置14(走行機体3)の「前進」状態への切換を行う一方で、前進クラッチ41Aを切断作動させるとともに後進クラッチ32を接続作動させることにより前後進切換装置14(走行機体3)の「後進」状態への切換を行う他、前進クラッチ41Aと後進クラッチ41Bを共に切作動させることによりエンジン動力の前後進切換装置14下流側への伝動を切断する「ニュートラル」状態への切換を行うように構成されている。
すなわち、上記構成から、本トラクタは、上記第1主変速装置13によって前進走行時には1速と2速と3速と4速の計4段の変速切換を行う一方で、後進走行時には1速と4速の計2段の変速切換を行う。
上記副変速装置16は、前後方向の副変速軸42と、副変速軸42に遊転状態で支持された変速ギヤである低速ギヤ43A及び中速ギヤ43Bと、前後進切換軸37に遊転状態で支持された変速ギヤである高速ギヤ43Cと、副変速軸42に軸方向に往復スライド可能に支持された常時噛合い式(コンスタントメッシュ)の変速クラッチである低中速クラッチ44と、前後進切換軸37に軸方向に往復スライド可能に支持されて前後進切換軸37から高速ギヤ43Cに動力を断続伝動する常時噛合い式の変速クラッチである高速クラッチ46と、前後進切換軸37と一体回転して中速ギヤ43Bと常時噛合うことにより前後進切換軸37から中速ギヤ43Bに動力を伝動する伝動ギヤ47と、複数のギヤの噛合いにより中速ギヤ43Bから低速ギヤ43Aに動力を伝動する伝動機構48と、副変速軸42と一体回転して高速ギヤ43Cと常時噛合うことにより高速ギヤ43Cの動力を副変速軸42に伝動する伝動ギヤ49と、を備えている。
低中速クラッチ44は、低速ギヤ43A側位置である「低速位置」に微動スライド作動することにより、低速ギヤ43Aから副変速軸42への動力伝動を接続状態且つ中速ギヤ43Bから副変速軸42への動力伝動を切断状態にし、中速ギヤ43B側位置である「中速位置」に微動スライド作動することにより、低速ギヤ43Aから副変速軸42への動力伝動を切断状態且つ中速ギヤ43Bから副変速軸42への動力伝動を接続状態にし、低速ギヤ43Aと中速ギヤ43Bの中間位置である「ニュートラル位置」に微動スライド作動することにより、低速ギヤ43Aから副変速軸42への動力伝動及び中速ギヤ43Bから副変速軸42への動力伝動を共に切断状態にするように構成されている。
高速クラッチ46は、高速ギヤ43C側位置である「高速位置」に微動スライド作動することにより、前後進切換軸37から高速ギヤ43Cへの動力伝動を接続状態にする一方で、高速ギヤ43Cから離間する側である「ニュートラル位置」に微動スライド作動することにより、前後進切換軸37から高速ギヤ43Cへの動力伝動を切断状態にするように構成されている。
上述の2つの常時噛合い式の変速クラッチ44,46は、キャビン8内に設置された前後及び左右揺動操作可能な副変速レバー51(図3参照)の基端部と、リンクよりなる連動機構(図示しない)を介して機械的に連結されている。そして、副変速レバー51による前後及び左右揺動によって、この2つの変速クラッチ44,46のスライド位置が切換えられる走行変速切換操作が行われる。
すなわち、低中速クラッチ44を低速位置に変位させ高速クラッチ46をニュートラル位置に変位させることにより、低速ギヤ43Aを介して副変速軸42に動力を低速伝動する「低速」に副変速装置16が切換えられ、低中速クラッチ44を中速位置に変位させ高速クラッチ46をニュートラル位置に変位させることにより、中速ギヤ43Bを介して副変速軸42に動力を中速伝動する「中速」に副変速装置16が切換えられ、低中速クラッチ44をニュートラル位置に変位させ高速クラッチ46を高速位置に変位させることにより、高速ギヤ43Cを介して副変速軸42に動力を高速伝動する「高速」に副変速装置16が切換えられ、2つの変速クラッチ44,46を共にニュートラル位置に切換えることによりエンジン動力の副変速装置16下流側への伝動を切断する「ニュートラル」に副変速装置16が切換えられる。
上記第2主変速装置17は、副変速軸42と一体回転する低速入力ギヤ53A及び高速入力ギヤ53Bと、走行駆動軸22に遊転状態で支持されて低速入力ギヤ53Aと常時噛合う低速出力ギヤ54Aと、走行駆動軸22に遊転状態で支持されて高速入力ギヤ53Bと常時噛合う高速出力ギヤ54Bと、低速出力ギヤ54Aから走行駆動軸22に動力を断続伝動させる油圧作動式の変速クラッチである低速クラッチ(油圧クラッチ)56Aと、高速出力ギヤ54Bから走行駆動軸22に動力を断続伝動させる油圧作動式の変速クラッチである高速クラッチ(油圧クラッチ)56Bと、を備えている。
本トラクタでは、低速クラッチ56Aを接続作動させるとともに高速クラッチ56Bを切断作動させることにより、走行駆動軸22に低速動力を伝動する一方で、低速クラッチ56Aを切断作動させるとともに高速クラッチ56Bを接続作動させることにより、走行駆動軸22に高速動力を伝動する他、低速クラッチ56A及び高速クラッチ56Bを共に切断作動させることにより、エンジン動力の副変速装置17下流側への動力伝動を切断するように構成されている。
以上、第1主変速装置13及び第2主変速装置17よりなる主変速装置13,17の計8段の走行変速切換は、上述した6つの油圧作動式の変速クラッチ32A,32B,32C,32D,56A,56Bの断続によって行われ、これらの変速クラッチ32A,32B,32C,32D,56A,56Bの断続は油圧装置(図4参照)57による圧油の排出・供給によって制御される。くわえて、前後進切換装置14の前後進切換も、上述の2つの油圧作動式の変速クラッチ41A,41Bの断続によって行われ、これらの変速クラッチ41A,41Bの断続も油圧装置57による圧油の排出・供給によって制御される。
次に、図3に基づき、油圧装置57の構成について説明する。
図3は、本トラクタが搭載した油圧装置の油圧回路図である。この油圧装置57は、ミッションケース9内に形成された油圧タンク58内の圧油を圧送する油圧ポンプ59を備えている。この油圧ポンプ59はエンジン動力よって駆動される。
油圧ポンプ59からの圧油は、まず、分流弁61によって、ステアリングハンドル62(図1参照)の操作により操向作動する油圧式操向装置であるステアリングユニット63への圧油と、上述の油圧式の変速クラッチ32A,32B,32C,32D,41A,41B,56A,56B側への圧油とに分流される。
変速クラッチ32A,32B,32C,32D,41A,41B,56A,56B側に送られた圧油は、1速クラッチ32A、2速クラッチ32B、3速クラッチ32C及び4速クラッチ32D側と、前進クラッチ41A及び後進クラッチ41B側と、低速クラッチ56A及び高速クラッチ56B側と、にそれぞれ各別に供給される。
上述のようにして第1主変速装置13の4つの変速クラッチ32A,32B,32C,32D側に供給された圧油は、開閉作動によって圧油の供給・排出を行うことにより1速クラッチ32Aを断続(入切)作動させる開度調整可能な電磁比例弁(電磁弁)である1速バルブ(主変速バルブ,変速バルブ)64Aと、開閉作動によって圧油の供給・排出を行うことにより2速クラッチ32Bを断続(入切)作動させる開度調整可能な電磁比例弁(電磁弁)である2速バルブ(主変速バルブ,変速バルブ)64Bと、開閉作動によって圧油の供給・排出を行うことにより3速クラッチ32Cを断続(入切)作動させる開度調整可能な電磁比例弁(電磁弁)である3速バルブ(主変速バルブ,変速バルブ)64Cと、開閉作動によって圧油の供給・排出を行うことにより4速クラッチ32Dを断続(入切)作動させる開度調整可能な電磁比例弁(電磁弁)である4速バルブ(主変速バルブ,変速バルブ)64D、にそれぞれ供給される。
上記各主変速バルブ64A,64B,64C,64Dは、断続制御対象の変速クラッチ32A,32B,32C,32Dを接続(入)作動させて動力伝動制御対象の出力ギヤ28A,28B,28C,28Dの動力を上述した動力伝動対象の変速軸29,31に伝動するように、該変速クラッチ32A,32B,32C,32Dに圧油を供給する流路を形成する「入位置」と、断続制御対象の変速クラッチ32A,32B,32C,32Dを切断(切)作動させて動力伝動制御対象の出力ギヤ28A,28B,28C,28Dから上述した動力伝動対象の変速軸29,31への動力伝動を切断するように、該変速クラッチ32A,32B,32C,32Dから圧油を排出する流路を形成する「切位置」と、を有している。
この各主変速バルブ64A,64B,64C,64Dは、電気的な制御信号のデューティ比等に基づいて開度調整可能なように構成されているため、対応する変速クラッチ32A,32B,32C,32Dに徐々に圧油を供給して内部の圧力を次第に上昇させて変速切換時の変速ショックを低減させる昇圧制御を行うことができる。くわえて、各主変速バルブ64A,64B,64C,64Dから対応する各変速クラッチ32A,32B,32C,32Dへの圧油流路には、変速クラッチ32A,32B,32C,32Dの接続作動側への圧油の流れのみを絞る一方向絞り弁66が設置されており、該4つの一方向絞り弁66によっても、上記各変速クラッチ32A,32B,32C,32Dの瞬時の接続作動が防止される。
上述のようにして前進クラッチ41A及び後進クラッチ41B側に供給された圧油は、手動式の油圧バルブである前後進切換弁67に供給される。この前後進切換弁67は、内部への圧油供給により前進クラッチ41Aを接続(入)作動させて前進出力ギヤ38Aの動力を前後進切換軸37に伝動するとともに油圧タンク58への圧油排出により後進クラッチ41Bを切断(切)作動させて後進出力ギヤ38Bから前後進切換軸37への動力伝動を切断するように圧油流路を形成する「前進位置」と、油圧タンク58への圧油排出により前進クラッチ41Aを切断(切)作動させて前進出力ギヤ38Aから前後進切換軸37への動力伝動を切断するとともに内部への圧油供給により後進クラッチ41Bを接続(入)作動させて後進出力ギヤ38Bの動力を前後進切換軸37に伝動するように圧油流路を形成する「後進位置」と、油圧タンク58への圧油排出により前進クラッチ41A及び後進クラッチ41Bを切断作動させて前後進切換軸37への動力伝動を切断するように圧油流路を形成する「ニュートラル位置」と、を有している。
上記3位置からなる前後進切換弁67は、ステアリングハンドル62の側方(図示する例では左側方)に前後揺動操作可能に支持された前後進レバー68(図1参照)と連係機構(図示しない)を介して機械的に連結され、この切換レバーの前後揺動操作によって、前進位置と、ニュートラルと、後進位置との切換が行われる。
上述のようにして低速クラッチ56A及び高速クラッチ56B側に供給された圧油は、電磁方向切換弁(電磁弁)である走行変速バルブ(変速バルブ)69に供給される。この走行変速バルブ69は、内部への圧油供給により低速クラッチ56Aを接続(入)作動させて低速出力ギヤ54Aから走行駆動軸22に動力を伝動するとともに油圧タンク58への圧油排出により高速クラッチ56Bを切断(切)作動させて高速出力ギヤ54Bから走行駆動軸22への動力伝動を切断するように圧油流路を形成する「低速位置」と、内部への圧油供給により高速クラッチ56Bを接続(入)作動させて高速出力ギヤ54Bから走行駆動軸22に動力を伝動するとともに油圧タンク58への圧油排出により低速クラッチ56Aを切断(切)作動させて低速出力ギヤ54Aから走行駆動軸22への動力伝動を切断するように圧油流路を形成する「高速位置」と、低速クラッチ56Aからの圧油の排出路と高速クラッチ56Bからの圧油の排出路とを合流させて油圧タンク58に排油する流路を形成して低速クラッチ56A及び高速クラッチ56Bを切断作動させて走行駆動軸22への動力伝動を切断する「ニュートラル位置」と、を有している。そして、3位置からなるこの走行変速バルブ73は、電気的な制御信号によって作動して低速位置、高速位置又はニュートラル位置の何れかに切換わり、低速クラッチ56A及び高速クラッチ56Bの断続(入切)操作を行う。
また、低速クラッチ56A及び高速クラッチ56B側に供給された圧油は、比例電磁弁である駆動制御切換弁71にも供給される。駆動制御切換弁71は、作業クラッチ21に圧油を供給して作業クラッチ21を接続作動させてPTO軸19を回転駆動させる流路を形成する「駆動位置」と、作業クラッチ21から油圧タンク58に圧油を排出して作業クラッチ21を切断作動させてPTO軸19を駆動停止させる流路を形成する「停止位置」と、を有している。そして、電気的な制御信号によって位置切換制御が行われる。
次に、図1,4及び5に基づき、キャビン8内の構成について説明する。
図4は、キャビン内の後半部の構成を示す要部平面図である。キャビン8内の後部にはオペレータが着座する座席72が設置され、座席72の進行方向右(右)側方にはロータリ耕耘装置5の昇降操作を行う昇降レバー73が前後揺動自在に支持され、座席72の左側方には上述の副変速レバー51が前後及び左右揺動操作可能に設けられ、座席72の前方には上記ステアリングハンドル62及び前後進レバー68等が支持される支持体74(図1参照)が立設されている。
上記副変速レバー51は、基端部である下端側が支持されて先端側半部にグリップ51aが形成され、副変速装置16の低中速クラッチ44及び高速クラッチ46をニュートラル位置に切換操作する「ニュートラルポジション」が前後中立位置になり、ニュートラル位置で副変速レバー51が左右揺動可能に支持されている。ニュートラル位置の副変速レバー51を左右の一方側(本例では左側)に傾斜揺動させる低中速姿勢に切換操作することにより前側及び後側に揺動操作可能な状態になり、ニュートラル位置の副変速レバー51を左右の他方側に傾斜揺動させる高速姿勢に切換操作することにより前側に揺動操作可能な状態になる。
副変速レバー51は低中速姿勢状態で後方揺動操作することにより「低速ポジション」位置に変位され、この際、前述の連動機構を介して、低中速クラッチ44が低速位置に切換えられた状態になるとともに高速クラッチ46がニュートラル位置に切換えられた状態になる。また、副変速レバー51は低中速姿勢状態で前方揺動操作することにより「中速ポジション」位置に変位され、この際、前述の連動機構を介して、低中速クラッチ44が高速位置に切換えられた状態になるとともに高速クラッチ46がニュートラル位置に切換えられた状態になる。さらに、副変速レバー51は高速姿勢状態で前方揺動操作することにより「高速ポジション」位置に変位され、この際、前述の連動機構を介して、低中速クラッチ44がニュートラル位置に切換えられた状態になるとともに高速クラッチ46が高速位置に切換えられた状態になる。すなわち、低速ポジション、中速ポジション又は高速ポジションへの変速切換操作では、必ず一旦、ニュートラルポジションに切換操作されるように副変速レバー51が構成されている。
なお、副変速レバー51のグリップ51aの上端部には主変速装置13,17の計8段の変速切換操作を行うシフト操作具76が前後回動操作可能に支持されている。シフト操作具76を前後の一方側に回動させることにより増速操作を行う一方で、前後の他方側に回動させることにより減速操作を行う。
図5(A)は、支持体のメータパネル78の構成を示す要部背面図であり、(B)は、表示部及び表示部周辺の構成を示す背面図である。上記支持体74の上部且つステアリングハンドル62の前方には、メータパネル78が設置されている。メータパネル78内には、座席72に着座したオペレータから視認可能なように各種メータ類及び液晶の表示部であるLCD79が設けられている。
LCD79には、副変速装置16のその時点での変速段と、本トラクタの走行変速段が表示される変速段表示部79aが設けられている。くわえて、メータパネル78内のLCD79の下方には、複数のLED81が左右並列状態で設置されている。そして、後述する異常検出時には、変速段表示部79a及びLED81が点滅し、オペレータ等に異常を報知する報知手段80を構成している。
本トラクタは、上記シフト操作具76の回動操作に基づいて変速バルブ64A,64B,64C,64D,69を介した主変速装置13,17の変速切換制御を行う制御装置82(図6参照)を備えている。くわえて、この制御装置82は、副変速装置16の変速状態を検知可能に構成されている。
次に、図6及び7に基づき本トラクタに搭載された制御装置82の構成について説明する。
図6は、本トラクタに搭載された制御装置のブロック図である。制御装置82は、主に、制御部83と、制御部83の入力側に接続された各種機器と、制御部83の出力側に接続された各種機器とにより構成されている。制御部83は、複数のマイコン等をCAN(Control Area Network)で接続することにより構成される。
制御部83の出力側には、切位置に常時弾性的に付勢されている1速バルブ64Aを入位置に切換作動させる1速ソレノイド(変速ソレノイド)84Aと、切位置に常時弾性的に付勢されている2速バルブ64Bを入位置に切換作動させる2速ソレノイド(変速ソレノイド)84Bと、切位置に常時弾性的に付勢されている3速バルブ64Cを入位置に切換作動させる3速ソレノイド(変速ソレノイド)84Cと、切位置に常時弾性的に付勢されている4速バルブ64Dを入位置に切換作動させる4速ソレノイド(変速ソレノイド)84Dと、ニュートラル位置に常時弾性的に付勢されている走行変速バルブ69を低速位置に切換作動させる低速ソレノイド(変速ソレノイド)86Lと、走行変速バルブ69を高速位置に切換作動させる高速ソレノイド(変速ソレノイド)86Hと、上述のLCD79と、が接続されている。
制御部83の入力側には、副変速レバー51の上記4つの変速切換位置を検知することにより副変速装置16の変速段を検出する4つの変速切換検出手段であるレバースイッチ87N,87L,87M,87Hと、前後進レバー68による連係機構を介した前後進切換装置14の切換操作を検出する3つの前後進切換検出手段であるシャトルスイッチ88N,88R,88Fと、シフト操作具76の変速切換操作を検出する2つの変速操作検出手段である主変速スイッチ89D,89Uと、第2主変速装置17の動力伝動状態を検出する状態検出手段である圧力スイッチ91と、上述の報知手段80と、が接続されている。
くわえて、制御部83には、上記6つの変速ソレノイド84A,84B,84C,84D,86L,86Hの回路の断線や短絡を検知することにより、上記5つの変速バルブ64A,64B,64C,64D,69の異常を検出する異常検出手段が設けられている。
上記2つの各主変速スイッチ89D,89Uは、シフト操作具76と副変速レバー51の上端部との間に設けられ、その内、主変速装置13,17の減速側への変速切換操作を入作動によって検出する主変速スイッチが減速スイッチ89Dになり、主変速装置13,17の増速側への変速切換操作を入作動によって検出する主変速スイッチが増速スイッチ89Uになる。ちなみに、シフト操作具76は、両主変速スイッチ89D,89Uを共に非検出状態である切状態にする前後中立位置に常時弾性的に付勢されている。
上記圧力スイッチ91は、走行変速バルブ69への圧油供給路に設置されており、第2主変速装置17の変速クラッチ56A,56Bを接続作動させる該圧油供給路内の圧力上昇を入作動によって検知することにより、第2主変速装置17が行う動力伝動の断続状態を検出可能に構成されている。
この制御装置82は、2つの主変速スイッチ89D,89U及び4つのレバースイッチ87N,87L,87M,87Hの入切を検出し、6つの変速ソレノイド84A,84B,84C,84D,86L,87Hに電気的な制御信号を出力することにより、主変速装置13,17の変速段を1〜8速の間で切換える。具体的には、第2主変速装置17を低速に切換えた状態で、第1主変速装置13を1速→2速→3速→4速の順に切換えることにより、主変速装置13,17の変速段が1速→2速→3速→4速の順に切換えられ、第2主変速装置17を高速に切換えた状態で、第1主変速装置13を1速→2速→3速→4速の順に切換えることにより、主変速装置13,17の変速段を5速→6速→7速→8速の順に切換えられる一方で、主変速装置13,17の変速段を8速→7速→6速→5速→4速→3速→2速→1速の順に切換えるには、上記順序の逆の手順により行う。
副変速レバー51による副変速装置16の変速切換操作は、変速クラッチ44,46が常時噛合い式であることから、走行機体3を一旦完全に停止させた状態で行う。具体的には、副変速装置16の低速切換時におけるシフト操作具76による主変速装置13,17の計8段の変速切換によって本トラクタの走行変速段を1〜8速の間で切換え、副変速装置16の中速切換時におけるシフト操作具76による主変速装置13,17の計8段の変速切換によって本トラクタの走行変速段を9〜16速の間で切換え、副変速装置16の高速切換時におけるシフト操作具76による主変速装置13,17の計8段の変速切換によって本トラクタの走行変速段を17〜24速段の間で切換える。
また、副変速レバー51により副変速装置16の増速操作が行われると主変速装置13,17が最低速段である1速に減速される一方で、副変速レバー51により副変速装置16の減速操作が行われると、主変速装置の最高速段である8速に増速される変速切換制御が制御装置82によって行われる。このため、副変速レバー51による走行変速切換時の車速差が最小限に抑制される。
図7(A)は、異常検出手段の構成を示す回路図であり、(B)は、異常検出手段による変速ソレノイドの検出状態の一覧表である。本トラクタでは、6つの変速ソレノイド84A,84B,84C,84D,86L,86Hの作動異常検知は、それぞれ略同一の手段により行うため、高速ソレノイド86Hを例に、異常検出手段の構成を説明する。
制御部83の出力側にはFET等のトランジスタからなるドライバ92を介してサーマルFET等からなる過電流防止手段付ドライバ93が接続されている。この過電流防止手段付ドライバ93は、過電流が流されると電流供給を遮断する素子であり、電源94及び変速ソレノイド86Hに接続され、制御部83から出力される制御信号によって作動する上記ドライバ92によって入切され、変速ソレノイド86Hへの電流供給を断続するように構成されている。すなわち、制御部83が、ドライバ92及び過電流防止手段付ドライバ93を介して、変速ソレノイド86Hの作動を制御する。
また、制御部83の入力側には検出回路96が設けられ、該検出回路96によって、過電流防止手段付ドライバ93から変速ソレノイド86Hへの電流供給の有無が検出される。そして、制御部83の出力側から変速ソレノイド86Hに制御信号を出力する該出力側のON時、電流防止手段付ドライバ93から変速ソレノイド86Hへの電流供給により、検出回路96がHI状態になり、制御部83のフィードバンク入力がON状態になる。一方、制御部83の出力側から変速ソレノイド86Hに制御信号を出力しない該出力側のOFF時に、電流防止手段付ドライバ93を介した電源94から変速ソレノイド86Hへの電流供給が遮断され、検出回路96がLOW状態になり、制御部83のフィードバンク入力がOFF状態になる。
これに対して、変速ソレノイド86Hが短絡(過電流防止手段付ドライバ93から変速ソレノイド86Hへの電流供給経路がアース)した異常時には、制御部83の出力側のON・OFF状態に関わらず、検出回路96が常時LOW状態になって制御部83のフィードバンク入力がOFF状態で保持される。
また、変速ソレノイド86Hが断線(過電流防止手段付ドライバ93から変速ソレノイド86Hへの電流供給経路が断線)した異常時には、電源94からの電流供給路が遮断され、制御部83の出力側のON・OFF状態に関わらず、検出回路96が常時HI状態になって制御部83のフィードバンク入力側がON状態で保持される。
すなわち、短絡や断線等が生じていない変速バルブ69の正常時には、制御部83の出力側がONされるとフィードバック入力側もONされるとともに、制御部83の出力側がOFFされるとフィードバック入力側もOFFされる一方で、短絡が生じた変速バルブ69の異常時には、制御部83の出力側がONされても入力側がOFF状態で保持され、断線が生じた変速バルブ69の異常時には、制御部83の出力側がOFFされても入力側がON状態で保持される。このようにして、各変速ソレノイド84A,84B,84C,84D,86L,86H、すなわち、各変速バルブ64A,64B,64C,64D,69の異常検出手段を構成している。
次に、図8乃至11に基づき制御装置82が行う走行変速処理について説明する。
図8は、制御部83が行う走行変速制御のメインフロー図である。制御部83は、処理が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、「変速操作処理」のサブルーチンを実行し、ステップS2に進む。ステップS2では、変速操作処理に基づきセットされた変速段に主変速装置13,17が切換えられるように、変速バルブ64A,64B,64C,64D,69に制御信号を出力し、ステップS3に進む。上述の異常検出手段によって、ステップS3では、各変速バルブ64A,64B,64C,64D,69の異常検出を行う自己診断処理を実行し、ステップS4に進む。ステップS4では、ステップS3の自己診断によって異常が検出されている場合には、報知手段80を介して、その異常を報知する報知処理を実行し、ステップS1に処理を戻す。
図9は、制御部83が行う変速操作処理のフロー図である。制御部83は8段の走行変速段を有する主変速装置13,17の変速段を記録する整数変数として変数sと変速nをメモリー上に確保する。前述したようにして、変速操作処理のサブルーチンを実行されると、制御部83は、ステップS11から処理を開始する。ちなみに、変数nは、上述のセットされた変速段に該当し、この変数nの値によってステップS2で変速切換される主変速装置13,17の変速段が決定される。
ステップS11では、増速スイッチ89Uを介してシフト操作具76の増速操作検出を行い、増速操作がされている場合にはステップS12に進み、増速操作がされていない場合にはステップS13に進む。ステップS12では、「増速処理」のサブルーチンを実行し、図8に示すメインフローに処理を戻す。
ステップS13では、減速スイッチ89Dを介してシフト操作具76の減速操作検出を行い、減速操作がされている場合にはステップS14に進み、増速処理がされていない場合にはステップS15に進む。ステップS14では、「減速処理」のサブルーチンを実行し、図8に示すメインフローに処理を戻す。
ステップS15では、レバースイッチ87N,87L,87M,87Hを介した副変速レバー51の変速切換操作検出を行い、変速切換操作がされている場合にはステップS16に進み、されてない場合には図8に示すメインフローに処理を戻す。図8のメインフローに処理をステップS16では、副変速レバー51によって副変速装置16の増速操作が行われているか、減速操作が行われているかを判断し、増速操作が行われている場合にはステップS17に進み、減速操作が行われている場合にはステップS18に進む。
ステップS17では変数nに8の値を入力してステップS19に進み、ステップS18では変数nに1の値を入力してステップS19に進む。このステップS17とステップS18の処理が、副変速レバー51による走行変速切換時の車速差を最小限に抑制させるための上述の制御に該当する。ステップS19では、副変速レバー51の増速操作が検出されている場合にはステップS12に処理を進め、副変速レバー51の減速操作が検出されている場合にはステップS14に処理を進める。
図10は、制御部83が行う増速処理のフロー図である。制御部83は、増速処理が実行されると、ステップS21が処理を進める。ステップS21では、現状の主変速装置13,17の変速段が変速n及び変速sに入力され、ステップS22に進む。ちなみに、ステップS16を経て、ステップS17又はステップS18から、このサブルーチンが実行されている場合には、変数nに既に値が入力されているため、変数nへの値入力は省略される。
ステップS22では、シフト操作具76の操作検出によってこのサブルーチンが実行されているか、副変速レバー51の操作検出によってこのサブルーチンが実行されているかの検出(ステップS16を経ているか否かの検出)を行い、シフト操作具76の操作検出によってこのサブルーチンが実行されている場合には、ステップS23に進み、副変速レバー51の操作検出によってこのサブルーチンが実行されている場合には、ステップS24に進む。ステップS23では、変数nの値を1増加させ、ステップS24に進む
ステップS24では、変数nの値が1〜4の何れかになっているか否かの検出を行い、1〜4になっていれば、ステップS25に進む。ステップS25では、走行変速バルブ69の低速ソレノイド86Lの異常を上記異常検出手段により検出し、正常であればステップS26に進む。ステップS26では、第1主変速装置の変数段をn速に切換えるための
変速ソレノイド84A,84B,84C,84D(変速バルブ64A,64B,64C,64D)の異常検出を行い、正常である場合にはステップS27に進み、異常である場合にはステップS28に進む。
ステップS27では、変数nの値を確定されて、変速操作処理フローを経て図8に示すメインフローに処理を戻す。そして、メインフローのステップS2の処理によって、主変速装置13,17の変速段がn速に変速切換えされる。
ステップS28では、変数nの値が4未満であるか否かの判断し、4未満であればステップS29に進み、4以上であればステップS30に処理を進める。ステップS29では、変数nの値を1増加させ、ステップS26に処理を戻す。
すなわち、ステップS26→ステップS28→ステップS29→ステップS26→・・・と続くループ処理によって、前述したように副変速レバー51の操作検出に対応して制御部82から変速ソレノイド84A,84B,84C,84D,86L,86Hに出力される制御信号(変速指令)と、シフト操作具76による変速操作(変速指令)との何れか一方に基づいて、第1主変速装置13を現変速段から次変速段に変速するにあたり、該次変速段への変速切換を行う変速ソレノイド84A,84B,84C,84Dに異常がある場合には(ステップS26の処理)、該次変速段をスキップして、該次変速段の次の変速段(増速の場合には1を加算した変速段で、減速の場合には1を減算した変速段)を次変速段として(ステップS29の処理)、再び、上記異常検出処理を行い、正常な変速ソレノイド84A,84B,84C,84Dによって変速切換可能な次変速段が判明するまで、上記処理を繰返す。
ステップS28→ステップS30と進む場合とは、正常な変速ソレノイド84A,84B,84C,84Dによって変速切換可能な次変速段が、主変速装置13,17の変速段が1〜4速の範囲では、検出されなかったことを意味する。このため、ステップS30では、変数nの値に5が入力され、ステップS31に進む。また、ステップS25において、低速ソレノイド86Lが異常であれば、第2主変速装置17を低速で保持するのは適当ではないため、ステップS30に進み、第2主変速装置17が高速に切換えられる可能性がある状態にする。
ステップS24において、変数nの値が1〜4の何れかになっていない場合にも、ステップS31に進む。
ステップS31には、変数nの値が5〜8の何れかになっているかの検出を行い、変速nの値が5〜8の何れかになっていればステップS32に進み、なっていなければステップS33に進む。ステップS31→ステップS33の進む場合、nの値が9になっている場合と考えられるため、ステップS33では、変数nに0の値を入力し、変速操作処理フローを経て図8に示すメインフローに処理を戻す。変数nの値が0の場合には、ステップS2の処理において、主変速装置13,17がニュートラルに切換えられ、前後進1,2への動力伝動が遮断される。
ステップS32では、走行変速バルブ69の高速ソレノイド86Hの異常を上記異常検出手段により検出し、正常であればステップS34に進む。ステップS34では、第1主変速装置の変数段を(n−4)速に切換えるための変速ソレノイド84A,84B,84C,84D(変速バルブ64A,64B,64C,64D)の異常検出を行い、正常である場合にはステップS27に進み、異常である場合にはステップS35に進む。
ステップS35では、変数nの値が8未満であるか否かの判断し、8未満であればステップS36に進む。ちなみに、ステップS35において、変数nが8未満のケースとしては、変数nが8になっている場合が想定される。ステップS36では、変数nの値に1を加算し、ステップS34に処理を戻す。
すなわち、ステップS34→ステップS35→ステップS36→ステップS34→・・・と続くループ処理によって、前述したように副変速レバー51の操作検出に対応して制御部82から変速ソレノイド84A,84B,84C,84D,86L,86Hに出力される制御信号(変速指令)と、シフト操作具76による変速操作(変速指令)との何れか一方に基づいて、第1主変速装置13を現変速段から次変速段に変速するにあたり、該次変速段への変速切換を行う変速ソレノイド84A,84B,84C,84Dに異常がある場合には(ステップS34の処理)、該次変速段をスキップして、該次変速段の次の変速段を次変速段として(ステップS36の処理)、再び、上記異常検出処理を行い、正常な変速ソレノイド84A,84B,84C,84Dによって変速切換可能な次変速段が判明するまで、上記処理を繰返す。
ステップS35において、変数nの値が8になっている場合とは、正常な変速ソレノイド84A,84B,84C,84Dによって変速切換可能な次変速段が、主変速装置13,17の変速段数が1〜8速の範囲では検出されなかったことを意味するため、ステップS37に進む。ステップS37では、現状の主変速装置13,17の変速段数である変速sの値を変数nに入力し、変速操作処理フローを経て図8に示すメインフローに処理を戻す。変数nに変数sの値を入力することにより、メインフローのステップS2では、主変速装置13,17の変速切換を行われずに、現状の変速段で保持される。
ステップS32において、高速ソレノイド86Hが異常である場合には、第2主変速装置17を高速に切換える必要があるにもかかわらず、それができない状況であるため、この場合にもステップS37に処理を進める。
図11は、制御部83が行う減速処理のフロー図である。この処理では、図10と略同様の処理がなされるが、以下、図10のフローと異なる点を説明する。同図に示すように、減速処理フローは、増速処理フローにおける変数nに1を加算するステップS23、ステップS29、ステップS36の処理を、1を減算する処理に置換える。くわえて、ステップS24→ステップS25→ステップS26→ステップS28→ステップS29→ステップS26→・・・の一連の処理手順と、ステップS31→ステップS32→ステップS34→ステップS35→ステップS36→ステップS34→・・・の一連の処理手順と、が相互に入替えられる。
また、ステップS31において変数nが5〜8の範囲内にない場合には、ステップS24に進み、ステップS24において変数nが1〜4の範囲内にない場合には、ステップS33に進む。ステップS32において高速ソレノイド86Hの異常が検出された場合にはステップS30に進む。ステップS35では、変数nが5より大きいか否かの検出を行い、大きい場合には、ステップS36に進み、大きくない場合(n=5の場合が想定)には、ステップS30に進む。ステップS30では、変数nに4の値を入力し、ステップS24に進む。
さらに、ステップS25において、低速ソレノイド86Lの異常が検出された場合には、ステップS37に進む。ステップS28では、変数nが1よりも大きいな否かの検出を行い、大きい場合にはステップS29に進み、大きくない場合(n=1の場合が想定)には、ステップS37に進む。減速処理フローにおいて、ステップS33に進む場合、変数nの値が0又は−1であると考えられる。このため、変数nが値が−1の場合には変数nの値に0を入力し、変数nの値が0の場合にはそのままで、上述のステップS2で、主変速装置13,17をニュートラル状態に切換える。
以上のように構成される本トラクタは、上述の通り、変速バルブ64A,64B,64C,64D,69により断続される油圧作動式の変速クラッチ32A,32B,32C,32D,56A,56Bによって変速切換が行われる主変速装置13,17を用いて走行変速切換を実効する。この際、上記変速指令に基づいて、全8段の主変速装置13,17を現変速段から次変速段に変速するにあたり、該次変速段への変速切換を行う変速ソレノイド84A,84B,84C,84D,86L,86Hに異常がある場合には、該次変速段をスキップして、該次変速段の次の変速段を次変速段として、再び、上記異常検出処理を行い、正常な変速ソレノイド84A,84B,84C,84D,86L,86Hによって変速切換可能な次変速段が判明するまで、1〜8速の範囲で、上記処理を繰返し、判明した次変速段で変速切換処理を行う。
また、この主変速装置13,17の変速切換処理は、図9に示すように上記変速指令があって初めて行われるものであるため、異常検出手段により変速ソレノイド84A,84B,84C,84D,86L,86Hの異常が検出された場合でも、次回の変速指令があるまでは、主変速装置13,17の変速段を該異常検出時の状態で保持する。これによって、オペレータが意図しない走行変速切換が防止される。