JP5502572B2 - 保温容器及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、保温機能を有する保温食器等に用いて好適な保温容器及びその製造方法に関する。
従来、内側容器材と外側容器材を所定間隔の空間層を介して組付けるとともに、当該空間層に断熱部材を設けた容器部を備える保温容器としては、特許文献1で開示される食器および食器の蓋が知られている。
同文献1で開示される食器(蓋)は、口元部からの伝熱ロスが小さく、製造コストが小さく、軽量で、しかも断熱性能に優れた食器および食器の蓋を得ることを目的としたものであり、合成樹脂製の内容器と外容器とをそれぞれ口部で連結して内容器を外容器に空間部を隔てて収容して二重壁容器となし、内容器の外面と外容器の内面の間の空間部を断熱層としてなる食器において、断熱層に面する表面のうち開口部近傍部以外の部分に金属薄膜層を配してなるとともに、空間部にキセノン,クリプトン,アルゴンからなる群より選択される少なくとも1種の低熱伝導率ガスを封入した構成を備えている。
特開平9−140537号公報
しかし、上述した従来の保温容器(食器および食器の蓋)は、次のような問題点があった。
第一に、金属薄膜層は、金属箔を接着剤や両面テープ等により外容器の内面及び内容器の内面の双方に貼付けることにより形成するため、特に、単純ではない曲面のほぼ全面に金属箔を貼着する必要がある。したがって、製造が大変となり、製造工数の増加、更には製造コスト及び材料コストの双方を含めた大幅なコストアップを招く。
第二に、金属薄膜層は、熱伝導による伝熱ロスと輻射による伝熱ロスを小さくすることを目的に設け、断熱(断熱層)については、外容器と内容器間の空間にキセノン等の低熱伝導率ガスを封入して設ける。したがって、この観点からも製造が大変となり、製造コスト及び材料コストの双方を含めた大幅なコストアップを招く。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した保温容器及びその製造方法の提供を目的とするものである。
本発明に係る保温容器1は、上述した課題を解決するため、内側容器材2iと外側容器材2eを所定間隔Lsの空間層Sを介して組付けるとともに、当該空間層Sに断熱部材を設けた容器部2を備える保温容器であって、内側容器材2iと外側容器材2e間の空間層Sに、所定の厚さLfを有する弾性樹脂シート3の少なくとも片面に鏡面層4を設けるとともに、外郭形状を容器部2の開口縁部2sに対して相似状に形成し、かつ容器部2の凹部における凹底部2dに対応する中心側部位5dから放射方向に複数の切込部C…を所定間隔おきに形成した遮熱シート5を収容してなることを特徴とする。
一方、本発明に係る保温容器1の製造方法は、上述した課題を解決するため、内側容器材2iと外側容器材2eを所定間隔Lsの空間層Sを介して組付けるとともに、空間層Sに断熱部材を設けるに際し、予め、所定の厚さLfを有する弾性樹脂シート3の少なくとも片面に鏡面層4を設けるとともに、外郭形状を容器部2の開口縁部2sに対して相似状に形成し、かつ容器部2の凹部における凹底部2dに対応する中心側部位5dから放射方向に複数の切込部C…を所定間隔おきに形成した遮熱シート5を用意し、内側容器材2iと外側容器材2eを組付ける際に、内側容器材2iと外側容器材2e間の空間層Sに遮熱シート5を収容し、この後、内側容器材2iと外側容器材2eを接合するようにしたことを特徴とする。
また、本発明は、好適な態様により、弾性樹脂シート3の形成素材には、ポリエステル樹脂素材又はポリイミド樹脂素材を含ませることができるとともに、鏡面層4は、アルミニウム蒸着により形成することができる。さらに、空間層Sは、空気層として構成することができる。なお、容器部2には、容器本体部2mとこの容器本体部2mを覆う蓋部2cの一方又は双方が含まれる。
このような本発明に係る保温容器1及びその製造方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 容器部2の凹部における凹底部2dに対応する中心側部位5dから放射方向に複数の切込部C…を所定間隔おきに形成した遮熱シート5を用いるため、この遮熱シート5は、内側容器材2iと外側容器材2e間の空間層Sに単に収容すれば足りる。したがって、従来のように、金属箔を接着剤等により内側容器材2iの内面や外側容器材2eの内面に貼付ける必要がないなど、極めて容易に製造することができ、製造工数の低減、更には製造コスト及び材料コストの双方を含めた大幅なコストダウンを図ることができる。
(2) 所定の厚さLfを有する弾性樹脂シート3の少なくとも片面に鏡面層4を設けた遮熱シート5を用いるため、遮熱シート5に断熱機能と輻射機能の双方を持たせることができる。したがって、空間層Sに低熱伝導率ガスや充填材を充填するなどの他の断熱手段を用いることなく十分な断熱性を確保できるとともに、この観点からも製造コスト及び材料コストの双方を含めた大幅なコストダウンを図ることができる。
(3) 好適な態様により、弾性樹脂シート3の形成素材に、ポリエステル樹脂素材又はポリイミド樹脂素材を含ませれば、良好な断熱性,弾性及び低コスト性を確保する観点から最も望ましいパフォーマンスを得ることができる。
(4) 好適な態様により、鏡面層4を、アルミニウム蒸着により形成すれば、汎用技術を利用することにより容易かつ低コストに実施することができる。
(5) 好適な態様により、空間層Sを、空気層として構成すれば、遮熱シート5との相乗効果により十分な断熱性を確保することができ、従来のような低熱伝導率ガスの充填を不要にすることができる。
本発明の好適実施形態に係る保温食器(保温容器)の断面図、 同保温食器の外側容器材に遮熱シートを収容した状態を示す斜視図、 同保温食器に用いる遮熱シートの斜視図、 同遮熱シートを用いた保温食器の外観斜視図、 同保温食器における容器本体部(容器部)の分解断面図、 同保温食器の常温測定時の保温試験結果を示す棒グラフ、 同保温食器の80℃予熱付与測定時の保温試験結果を示す棒グラフ、 同保温食器の常温測定時と80℃予熱付与測定時における1時間経過時の温度差を示す棒グラフ、
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る保温容器1の構成について、図1〜図5を参照して具体的に説明する。
例示の保温容器1は、図4に示すように、蓋付の保温食器1sであり、容器本体部2mとこの容器本体部2mを覆う蓋部2cを備える。この容器本体部2mと蓋部2cは、いずれも容器部2を構成する。したがって、以下の説明では、容器部2の具体的な構成として容器本体部2mについて説明するが蓋部2cの基本的な構成も同じとなる。
容器部2は、図1及び図5に示すように、内側容器材2iと外側容器材2eを備える。内側容器材2iは、全体をポリプロピレン樹脂,ポリカーボネート樹脂等の食器に適した公知の合成樹脂により一体成形することができるとともに、同様に、外側容器材2eも、内側容器材2iと同一の素材を用いて一体成形することができる。一方、内側容器材2iと外側容器材2eは、各開口縁部2isと2es同士を接合可能に形成するとともに、内側容器材2iと外側容器材2eを組み付けた際には、図1に示すように、内側容器材2iと外側容器材2e間に所定間隔Lsの、密閉される空間層Sが形成されるように、内側容器材2iと外側容器材2eの形状を選定する。この場合、空間層Sは空気層として構成し、後述する遮熱シート5と共に断熱層を構成する。このように、空間層Sを、空気層として構成すれば、後述する遮熱シート5との相乗効果により十分な断熱性を確保でき、従来のような低熱伝導率ガスの充填を不要にできる。
また、内側容器材2iと外側容器材2e間には本発明に従って遮熱シート5を収容するため、図3に示す遮熱シート5を用意する。この遮熱シート5は、所定の厚さLfを有する弾性樹脂シート3の片面に鏡面層4を設けて形成する。弾性樹脂シート3の形成素材には、ポリエステル樹脂素材を用いることが望ましい。なお、ポリエステル樹脂素材が好適であるが、その他、ポリイミド樹脂素材など、所定の弾性を有する合成樹脂素材であれば、素材の種類は特に問わない。このように、弾性樹脂シート3の形成素材として、ポリエステル樹脂素材又はポリイミド樹脂素材を用いれば、良好な断熱性,弾性及び低コスト性を確保する観点から最も望ましいパフォーマンスを得ることができる。他方、鏡面層4は、アルミニウム蒸着により形成し、表面が鏡面となるように蒸着処理する。このように、鏡面層4をアルミニウム蒸着により形成すれば、汎用技術を利用することにより容易かつ低コストに実施できる。
さらに、遮熱シート5は、図3に示すように、外郭形状を容器部2の縁部2sに対して相似状に形成し、かつ容器部2の凹部における凹底部2dに対応する中心側部位5dから放射方向に複数の切込部C…を所定間隔おきに形成する。例示の場合、八つの切込部C…を周方向に沿って45〔゜〕間隔で形成するとともに、一つの切込部Cの長さは、遮熱シート5の直径の1/3程度に選定した場合を例示する。また、遮熱シート5、即ち、弾性樹脂シート3の厚さLfは、厚いほど断熱性が高まるが、反面、製造時における組付性が低下する。即ち、図5に示すように、組付時には、外側容器材2eの上端開口に、遮熱シート5を載せれば、自重により沈み込み、図2に示すように、外側容器材2eの内部にいわば自動で収容可能となるため、このような自動収容ができるように、弾性樹脂シート3の厚さを選定する。したがって、弾性樹脂シート3の厚さは、収容する容器部2の大きさ(種類)に対応させ、最適な厚さとなるように変更することができる。
次に、本実施形態に係る保温容器1を構成する蓋付の保温食器1sの製造方法について、図1〜図5を参照して説明する。
保温食器1sは、図4に示すように、容器本体部2mと蓋部2cを備える。まず、容器本体部2m(容器部2)を製造するに際しては、予め、図5に示す三つの部品、即ち、内側容器材2i,外側容器材2e及び遮熱シート5を製造する。この場合、内側容器材2iと外側容器材2eは、それぞれポリプロピレン樹脂等の成形材料を使用し、射出成形機等を用いた金型成形により公知の製造法により製造することができる。また、遮熱シート5は、ポリエステル樹脂素材により形成した一枚のシート材料を用意し、片面にアルミニウム蒸着処理を行うことにより鏡面層4を形成するとともに、この後、図3に示す形状となるようにカッティング処理する。このように、遮熱シート5は、極めて容易に製造することができる。
そして、組立に際しては、図5に示すように、外側容器材2eの上端に遮熱シート5を載せれば、図2に示すように、遮熱シート5は自動的に(自重により)外側容器材2eの内部に沈み込むとともに、この際、複数の切込部C…の部位は、外側容器材2eの内面の湾曲面にフィットするようにオーバーラップする。
次いで、図5に示すように、内側容器材2iを、上から外側容器材2eの上端開口に重ね、図1に示すように、外側容器材2eの開口縁部2esに、内側容器材2iの開口縁部2isを位置決めして突き合わせる。そして、この状態で開口縁部2esと開口縁部2isを溶着により接合すれば、内側容器材2iを外側容器材2eに組付けることができる。これにより、外側容器材2eと内側容器材2i間の空間層4は密閉され、また、内側容器材2iと外側容器材2e間の空間層S(空気層)には遮熱シート5が収容される。このように、容器本体部2mは極めて容易に製造することができる。
他方、蓋部2cについても、上述した容器本体部2mと同様に製造することができる。蓋部2cの場合、容器本体部2mに対して、内側容器材2iと外側容器材2eの上下の位置関係が反対となり、凹底部2dは天面側に位置することになるが、製造時には、容器本体部2mと同様の位置関係で製造することができる。
次に、このように製造した本実施形態に係る蓋付の保温食器1sの保温性能について、図6〜図8を参照して説明する。
図6及び図7は、保温食器1sの保温試験結果を示す棒グラフであり、図6は常温測定時、図7は80〔℃〕予熱付与測定時をそれぞれ示す。この場合、常温測定時とは、22〔℃〕の常温環境に置いた試料(保温食器1s)の中に、97〔℃〕のお湯(熱湯)を標準的な湯量だけ収容し、1〔時間〕放置した後のお湯の温度を測定したものである。また、80〔℃〕予熱付与測定時とは、加熱槽の中に収容した試料(蓋付食器1s)の表面温度を測定し、80〔℃〕まで昇温したなら加熱槽から取り出すとともに、直ちに、97〔℃〕のお湯(熱湯)を標準的な湯量だけ収容し、1〔時間〕放置した後のお湯の温度を測定したものである。なお、80〔℃〕の予熱を付与する理由は、通常、学校や病院等では、食器を洗浄した後、乾燥及び殺菌のため、80〔℃〕に加熱保管するとともに、使用する際には、できるだけ冷めないように、加熱された食器をそのまま使用することが多いためである。
試料(保温食器1s)としては、四種類の食器、即ち、飯丼1,汁椀,吸椀,飯丼2を用いた。この場合、いずれも蓋付の食器であり、収容した湯量は、飯丼1及び飯丼2が300〔mL〕、汁椀が220〔mL〕、吸椀が170〔mL〕である。なお、飯丼1と飯丼2は、蓋の形状が異なる。また、比較例として、遮熱シート5を使用しない場合、即ち、空間層4が空気層のみの場合についても同様の試験を行った。
図6及び図7に示すように、各試料とも、遮熱シート5を収容した場合の保温性能向上を確認できた。また、本実施形態に係る保温食器と比較例に係る保温食器の測定結果の温度差〔℃〕を表1に示すとともに、この温度差〔℃〕を図8に棒グラフにより示した。
Figure 0005502572
表1から各試料全体における温度差の平均値は、常温測定時では、2.51〔℃〕、80〔℃〕予熱付与測定時では、2.92〔℃〕となり、遮熱シート5を収容した場合、1時間経過した時点でも、遮熱シート5を収容しない場合に比べ、概ね、2.5〜3.0〔℃〕冷めにくくなる。
このように、本実施形態に係る保温食器1sによれば、所定の厚さLfを有する弾性樹脂シート3の少なくとも片面に鏡面層4を設けた遮熱シート5を用いるため、遮熱シート5に断熱機能と輻射機能の双方を持たせることができる。したがって、空間層Sに低熱伝導率ガスや充填材を充填するなどの他の断熱手段を用いることなく十分な断熱性を確保できるとともに、製造コスト及び材料コストの双方を含めた大幅なコストダウンを図ることができる。
また、容器部2(容器本体部2m,蓋部2c)の凹部における凹底部2dに対応する中心側部位5dから放射方向に複数の切込部C…を所定間隔おきに形成した遮熱シート5を用いるため、この遮熱シート5は、内側容器材2iと外側容器材2e間の空間層Sに単に収容すれば足りる。したがって、従来のように、金属箔を接着剤等により内側容器材2iの内面や外側容器材2eの内面に貼付ける必要がないなど、極めて容易に製造することができ、この観点からも、製造工数の低減、更には製造コスト及び材料コストの双方を含めた大幅なコストダウンを図ることができる。
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、具体的な弾性樹脂シート3の形成素材として、ポリエステル樹脂素材とポリイミド樹脂素材を挙げたが他の樹脂素材であってもよい。また、鏡面層4は、アルミニウム蒸着により形成した場合を示したが、銀メッキ等の他の処理手段により形成する場合を排除するものではない。さらに、空間層Sは、空気層として構成したが、不活性ガス等を封入したり、発泡ウレタン樹脂等の発泡断熱材を充填するなど、他の断熱手段の追加を排除するものではない。
本発明に係る保温容器及びその製造方法は、例示した保温食器をはじめ、保温が必要とされる各種の容器に利用できる。
1:保温容器,2:容器部,2m:容器本体部,2c:蓋部,2i:内側容器材,2e:外側容器材,2s:開口縁部,2d:凹底部,3:弾性樹脂シート,4:鏡面層,5:遮熱シート,5d:中心側部位,Ls:所定間隔,Ls:所定の厚さ,S:空間層,C…:切込部

Claims (6)

  1. 内側容器材と外側容器材を所定間隔の空間層を介して組付けるとともに、当該空間層に断熱部材を設けた容器部を備える保温容器であって、内側容器材と外側容器材間の空間層に、所定の厚さを有する弾性樹脂シートの少なくとも片面に鏡面層を設けるとともに、外郭形状を前記容器部の開口縁部に対して相似状に形成し、かつ前記容器部の凹部における凹底部に対応する中心側部位から放射方向に複数の切込部を所定間隔おきに形成した遮熱シートを収容してなることを特徴とする保温容器。
  2. 前記弾性樹脂シートの形成素材には、ポリエステル樹脂素材又はポリイミド樹脂素材を含むことを特徴とする請求項1記載の保温容器。
  3. 前記鏡面層は、アルミニウム蒸着により形成することを特徴とする請求項1又は2記載の保温容器。
  4. 前記空間層は、空気層であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の保温容器。
  5. 前記容器部には、被収容物を収容する容器本体部と当該容器本体部を覆う蓋部の一方又は双方を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の保温容器。
  6. 内側容器材と外側容器材を所定間隔の空間層を介して組付けるとともに、前記空間層に断熱部材を設ける保温容器の製造方法であって、予め、所定の厚さを有する弾性樹脂シートの少なくとも片面に鏡面層を設けるとともに、外郭形状を前記容器部の開口縁部に対して相似状に形成し、かつ前記容器部の凹部における凹底部に対応する中心側部位から放射方向に複数の切込部を所定間隔おきに形成した遮熱シートを用意し、内側容器材と外側容器材を組付ける際に、前記内側容器材と前記外側容器材間の空間層に前記遮熱シートを収容し、この後、前記内側容器材と前記外側容器材を接合することを特徴とする保温容器の製造方法。
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