一般に、IC、LSI等の半導体デバイス、LCD、PDP等のフラットパネルディスプレイ、あるいは、LED等のダイオードを製造するための電子デバイス製造用クリーンルーム(無塵室)施設や、リチウム電池等の二次電池、或いは、太陽電池パネル等を製造するためのクリーンルーム施設においては、高度な空気清浄度の維持・管理、多大な熱負荷の処理、或いは、厳密な温湿度管理等の如く比較的厳格な空調条件が、各室の用途・目的等に相応して要求される。
このような精密部品又は精密機器を清浄環境下に加工・処理するためのクリーンルーム施設の構成は、精密部品・機器の製造技術、製造装置及び製造設備等の進歩と関連して変遷してきた。
例えば、初期の半導体デバイス製造施設おいては、ウェハは、高い清浄度のウェハ搬送室内を搬送され、搬送室に関連して配置された各種加工装置、処理装置等(以下、「製造装置」という。)によって加工されていた。このような構成のクリーンルーム施設が、例えば、実開平4−99828号公報等に記載されている。
図20は、実開平4−99828号公報に記載されたクリーンルーム施設の構成を概念的且つ模式的に示す概略縦断面図である。
クリーンルーム施設は、製造装置Mを収容した加工・処理室101と、作業員等が制御装置等を操作する作業室102と、露出状態のウェハWを搬送装置Tによって搬送するための搬送室103とから構成される。各工程又は各製造装置に相応した多数の加工・処理室101が、搬送室103の搬送経路と関連して設けられる。
クリーンルーム施設は、ダウンフロー形式の空調システムを有し、各室の天井裏空間は、給気プレナムチャンバ104を構成し、各室の床下空間は、還気チャンバ105を構成する。送風機及び冷却コイルを内蔵した空調装置107が機械室108に配置され、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ又はULPA (Ultra Low Penetration Air)フィルタ等の高性能フィルタを備えたフィルタユニット109が天井構造体110に配置される。空調装置107によって調温・調湿された空調空気は、給気プレナムチャンバ104内に給送され、HEPAフィルタユニット109を介して各室の室内に送風される。空調空気は天井面から流下し、通気性床材111及び還気チャンバ105を介して空調装置107に還流する。
クリーンルーム施設は、床版112によって地盤又は下層階から区画され、上階床版又は屋根113によって外界又は上層階から区画され、壁体114によって外界又は隣接施設から区画される。加工・処理室101、作業室102、搬送室103及び機械室108は、隔壁116によって相互に区画される。
このようなクリーンルーム施設においては、ウェハWの搬送室103内の環境は最も高い清浄度(例えば、クラス100)に設定され、加工・処理室101の環境は製造装置Mの設置条件及び製造条件に相応した清浄度(例えば、クラス1000)に設定され、作業室102は比較的低い清浄度(例えば、クラス10000)に設定される。
このようなクリーンルーム施設の構成においては、製造装置のレイアウトや、加工・処理室及び作業室の位置等の設計又は建築計画が搬送室の位置及び搬送経路によって大きく制約されるので、製造装置のレイアウト等に関する所望の設計自由度を確保し難い。
これに対し、近年の半導体デバイス製造施設においては、ウェハは、FOUP(Front-Opening Unified Pod)等の搬送容器内に格納され、密封状態で施設内を搬送される。このため、高い清浄度の搬送室を設けず、隔壁を備えない単一の大空間クリーンルームとして加工・処理領域及び作業領域を設計することが可能となり、この結果、製造装置のレイアウト等の設計自由度は、大幅に向上するに至った。
図21は、加工・処理領域及び作業領域を区画せず、搬送室を備えないクリーンルーム施設の構成を概念的且つ模式的に示す概略縦断面図であり、図22及び図23は、図21に示すクリーンルーム施設の構造を例示する縦断面図及び平面図である。
図21〜図23に示すクリーンルーム120は、個々の加工・処理室及び作業室の区画を有しない単一の大空間からなり、ウェハWは、FOUP等の搬送容器S内に格納され、搬送装置Tによって搬送される。クリーンルーム120内の空間は、特定の工程を実施する一部の空間(図示せず)を除き、間仕切壁、仕切壁又はパーティション等の隔壁を備えない。従って、製造装置Mのレイアウト等に関し、所望の設計自由度が得られる。
このクリーンルーム施設も又、図20に示すクリーンルーム施設と同じく、ダウンフロー形式の空調システムを有し、クリーンルーム120の天井裏空間は、給気プレナムチャンバ124を構成し、クリーンルーム120の床下空間は、還気チャンバ125を構成する。補機設置空間140が還気チャンバ125の下側に更に配設される。補機設置空間140と還気チャンバ125とは、床構造体131によって水平に区画される。製造装置Mと関連した補機Nが補機設置空間140に配置され、製造装置M及び補機Nは、配管・配線Lによって接続される。
送風機及び冷却コイルを内蔵した空調装置127が機械室128に配置される。高性能フィルタ及び送風機を備えたFFU(ファンフィルタユニット)129が天井構造体130に配置される。空調装置127によって調温・調湿(調温及び調湿)された空調空気は、給気プレナムチャンバ124内に給送され、FFU129を介してクリーンルーム120内に送風される。空調空気は天井面から流下し、通気性床材121及び還気チャンバ125を介して空調装置127に還流する。
クリーンルーム120は、補機設置空間140の床を構成する床版132によって地盤又は下層階から区画され、上階床版又は屋根133によって外界又は上層階から区画され、壁体134によって外界又は隣接施設から区画される。クリーンルーム120及び機械室128は、隔壁136によって相互に区画される。クリーンルーム施設は、汚染物質、塵埃等を含む空気を外界に排気すべく、送風機及び排気処理装置を備えた除害装置137(図22、図23)を備える。除害装置137は、クリーンルーム120に隣接した機械室138に配設される。機械室138は、隔壁136によってクリーンルーム120から区画される。
図24は、大空間のクリーンルームを備えた他の構成のクリーンルーム施設の構成を概念的且つ模式的に示す概略縦断面図である。
図24に示すクリーンルーム施設は、還気チャンバ125内に補機Nを配置し、前述の補機設置空間140(図21)を省略した点で前述のクリーンルーム施設(図21〜図23)と相違する。図24に示すクリーンルーム施設の他の構成は、前述のクリーンルーム施設(図21〜図23)と実質的に同一であるので、説明を省略する。
図21〜図24に示す構成のクリーンルーム施設は、例えば、特開2004−108693号公報、特開2006−336381号公報、特開2007−212015号公報等に記載されている。
本発明の好適な実施形態によれば、隣接する区画ユニットの間の領域は、製造装置の補機類を配置するための補機配置領域を構成するとともに、製造装置の作動のためのユーティリティ配管・配線を床上に配置するための配管・配線帯域を有する。
好ましくは、ユーティリティ配管・配線を収容する配管・配線ピットが大空間の床構造体に形成される。配管・配線帯域及び配管・配線ピットは、平面視において少なくとも部分的に重なる。配管・配線帯域に配置された配管又は配線は、配管・配線帯域及び配管・配線ピットが重なる領域において配管・配線ピット内に延入し、配管・配線ピット内の配管又は配線に接続又は連続する。更に好ましくは、配管・配線帯域は、配管・配線ピットと直交する方向に延びる。
本発明の他の好適な実施形態によれば、精密部品又は精密機器の素材、中間製品又は完成品を搬送するための搬送装置の軌道又は空間が、空気流通領域の高さ範囲、隣接する区画ユニットの間の領域、或いは、区画ユニットの壁構造体に隣接して設けられる。好ましくは、搬送装置の軌道又は搬送路は、配管・配線ピットと平行に延びるように配向される。
好ましくは、バッファゾーンが軌道の直下に配置され、バッファゾーンは、素材、中間製品又は完成品を搬送装置から受け入れ且つ搬送装置の搬送路に引き渡すとともに、素材、中間製品又は完成品を区画ユニット内空間に引き渡し且つ区画ユニット内空間から受け入れるバッファ装置を有する。所望により、バッファ装置は、素材、中間製品又は完成品を過渡的に保管する保管手段を更に有する。
本発明の好適な実施形態において、補機配置領域は空気流通領域と連続し、区画ユニットの空調機は、補機配置領域を介して空気流通領域の空気を吸引する。
本発明の好ましい実施形態によれば、区画ユニットは、複数のコアユニットを有し、各コアユニットは、天井構造体の荷重を支持する。区画ユニットの空調機は、各コアユニット内に配置される。
本発明の或る好適な実施形態において、各区画ユニットの空調機は、区画ユニット内の環境をクリーンルーム上部空間の清浄度及び空気圧よりも高い清浄度且つ空気圧に制御する。
本発明の他の好適な実施形態において、各区画ユニットの空調機は、区画ユニット内の製造装置の発熱を除去する冷房能力を有する。
本発明の更に他の好適な実施形態において、各区画ユニットは、区画ユニット内の空気を局所的に系外に排気する局所排気装置を有する。
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1(A)及び図2(A)は、本発明の好適な実施形態に係るクリーンルーム施設の構成を概念的且つ模式的に示す概略縦断面図である。
図1(A)及び図2(A)に示すクリーンルーム施設は、ウェハを加工・処理して半導体デバイスを製造するための半導体デバイス製造施設である。クリーンルーム施設は、床7と天井8との間に形成された単一の大空間クリーンルーム1と、加工・処理ブロックを区画する多数のクリーンルーム区画ユニット2(以下、「区画ユニット2」という。)とから構成される。床7は、土間コンクリート又は鉄筋コンクリート床スラブ等の高剛性の床版上に床仕上材を施工した構成を有する。天井8は、鋼構造又は鉄筋コンクリート構造の梁又は横架材の下側に天井下地材及び天井仕上材を施工した構成を有する。天井8は、梁又は横架材が部分的に天井面から下方に突出する梁形露出形態の天井であっても良く、或いは、上階床スラブ等の下面を塗装等によって直仕上げした直仕上面であっても良い。
区画ユニット2は、床7上に配置された壁構造体5と、壁構造体5によって支持された天井構造体6とを有する。区画ユニット2内の空間は、製造装置M(破線で示す)を収容する加工・処理室10を構成する。区画ユニット2は、空調機、配電盤、制御盤、制御弁、配管ヘッダー等の設備(図示せず)を備えた自立可能なコアユニット20と、入室する作業者の人体・衣服等に付着した塵埃等を高速空気流によって除去するためのエアシャワーユニット15とを有する。コアユニット20は、壁構造体5の一部を構成する。複数のコアユニット20が間隔を隔て配置され、天井構造体6の荷重を支持する。コアユニット20内の空調機(図示せず)は、加工・処理室10内の空間を調温・調湿するとともに、加工処理室10内の空気を循環し且つ浄化する。コアユニット20内の空調機は又、清浄度が高い加工・処理室10内の環境を加圧する。
天井8と天井構造体6との間の領域は、クリーンルーム1の全域に亘って連続する空気流通・搬送ゾーンAを構成し、天井構造体6のレベルK(以下、「天井構造体レベルK」という。)よりも下方の領域は、製造ゾーンBを構成する。空気流通・搬送ゾーンAには、搬送装置4が配置される。搬送装置4は、ウェハを収容したFOUP等の搬送容器(図示せず)を搬送する。製造ゾーンBには、搬送装置4と加工・処理室10との間で搬送容器の受け渡しを行うためのバッファ装置12が配置される。バッファ装置12は、搬送装置4の直下に位置決めされる。
なお、各区画ユニット2の天井構造体6の高さは、必ずしも均一又は同一でなくとも良く、複数の区画ユニット2に跨がって延在する天井構造体レベルKは、各区画ユニット2の天井構造体6の高さの相違(例えば、4乃至6m)に相応して上下方向に変化する不陸面であっても良い。また、多数の区画ユニット2がクリーンルーム1内に配置される場合、空気流通・搬送ゾーンAの空気流通機能及び搬送機能がクリーンルーム全体として妨げられない限りにおいて、一部の区画ユニット2について、壁構造体5を天井面8まで延長した構成を採用することも可能である。
クリーンルーム施設は、循環空気及び取入れ外気の調温(冷却又は加熱)及び調湿(除湿又は加湿)を行う空調装置40を備える。空調装置40は、HEPAフィルタ等の外気浄化手段を備えるとともに、クリーンルーム1の全体空間1'を外気圧よりも高い圧力に加圧する。空調装置40は、給気ダクト41によって給気SAを全体空間1'に供給するとともに、還気ダクト42によって還気RAを全体空間1'から空調装置40に還流せしめる。所望により、還気RA中の化学汚染物質濃度を低下させる活性炭フィルタ等のケミカルフィルタが空調装置40内に組み込まれる。空調装置40には外気取り入れダクト43が接続され、空調装置40は、排気系47(破線で示す)の排気量に相当する空気量の外気OAを取り込み、循環空気とともに空気流通・搬送ゾーンAに供給する。全体空間1'の空調条件によっては、空気循環系を構成する還気ダクト42を省略することも可能である。なお、排気系47は、排気処理装置及び送風機を有する除害装置46(破線で示す)に接続され、排気処理装置は、スクラバー、ケミカルフィルタ等の排気処理手段を備える。
空調装置40によって浄化され且つ調温・調湿された清浄空気が区画ユニット外のクリーンルーム内空間、即ち、全体空間1'を流通するが、全体空間1'の清浄度は、従来の大空間クリーンルームの室内空気清浄度よりも低く、従来の天井裏給気プレナムチャンバの空気清浄度よりも高い清浄度に設定される。本実施形態において、全体空間1'の環境(一次環境)は以下のとおり設定される。
清浄度:クラス10000
温度:23±2℃
湿度:45±5%
床7には、配管・配線ピット(トレンチ)9が設けられる。給水主管、排水主管、ガス主管、薬液主管、熱媒体主管等の主配管群や、制御配線、動力配線等の主配線群として、主配管・配線群16が配管・配線ピット9内に収容される。主配管・配線群16の配管・配線は、分岐配管・分岐配線17を介して各製造装置Mに接続される。
かくして、クリーンルーム1内の空間は、区画ユニット2の外殻(壁構造体5及び天井構造体6)によって全体空間1'と加工・処理室10とにゾーンニングされるとともに、主配管・配線群16を配管・配線ピット9内に収容した構成を有する。このため、クリーンルーム施設は、天井裏の給気プレナムチャンバや、床下の還気チャンバ又は補機設置空間を備えていない。
図3は、天井構造体レベルKの上方域、即ち、空気流通・搬送ゾーンAの概略平面図であり、図4は、天井構造体レベルKの下方域、即ち、製造ゾーンBの概略平面図である。
区画ユニット2は、Y方向に所定間隔を隔てて整列配置される。各区画ユニット2は、X方向に細長い長方形の平面形態を有する。コアユニット20は、各区画ユニット2の角部に配置される。製造装置Mは、区画ユニット2の長手方向(X方向)に配列され、図4に矢印Jで示す歩行経路が区画ユニット2内に確保される。エアシャワーユニット15は、歩行経路Jと整合するようにコアユニット20の端面中央部に配置される。
バッファ装置12は、エアシャワーユニット15とは反対の側に位置する壁体部分に配置される。ウェハを収容したFOUPを過渡的に保管するウェハストッカをバッファ装置12として好適に使用し得る。バッファ装置12は、搬送容器を搬送装置4から受け入れ且つ搬送装置4に引き渡す第1受け渡し手段と、搬送容器を過渡的に保管する保管手段と、搬送容器を加工・処理室10に引き渡し且つ加工・処理室10から受け入れる第2受け渡し手段とを有する。
バッファ装置12は、搬送装置4と加工・処理室10との間における搬送容器の移動を可能にするとともに、搬送容器の搬送時期と、加工・処理室10内の工程の進捗状況との時間的なずれを過渡的な搬送容器の保管によって調整する。バッファ装置12は又、全体空間1'の空気と加工・処理室10内の空気とが搬送容器の受け渡し時に相互に流出・流入するクロス汚染を防止する機能を有する。なお、ウェハストッカ自体の構造は、例えば、特開2005−203498号公報等に詳細に記載されているので、更なる詳細な説明は、省略する。
図3に示す如く、空気流通・搬送ゾーンAは、Y方向に連続的に延在する搬送帯域Dと、全体空間1'の全域に連続的に延在する空気流通領域Cとから構成される。搬送帯域Dには、搬送装置4が配置される。搬送装置4として、FOUP等の搬送容器を自動搬送するOHTシステム(Overhead Hoist Transfer、天井走行式無人搬送車)又はOHSシステム(Over Head Shuttle、天井走行式シャトル)を好適に使用し得る。
図4に示す如く、製造ゾーンBは、区画ユニット2内の加工・処理領域Eと、区画ユニット2の間の補機帯域Fと、Y方向に延在する通路帯域Pとに平面的にゾーンニングされる。補機帯域Fには、区画ユニット2内の製造装置Mと関連した補機類(図示せず)が配置されるとともに、配管・配線帯域GがX方向に配置される。製造装置Mに接続された分岐配管・分岐配線17(図1)は配管・配線帯域Gにおいて床上に配置される。通路帯域Pは、作業員、操作員等が歩行可能な通路を構成する。製造装置Mと関連した補機類(図示せず)が、必要に応じて通路帯域Pに配置される。作業員、操作員等は、エアシャワーユニット15を介して通路帯域Pから加工・処理室10に入退室することができる。
床下の配管・配線ピット9(破線で示す)は、区画ユニット2の配列に沿ってY方向に延在する。配管・配線帯域Gの端部Ga(ハッチングで示す)は、配管・配線ピット9の上方に位置する。即ち、配管・配線帯域Gは、平面視において少なくとも部分的に配管・配線ピット9と重なる。配管・配線帯域Gに配置された分岐配管・分岐配線17(図1)は、端部Gaにおいて配管・配線ピット9内に延入し、配管・配線ピット9内の主配管・配線群16(図1)に接続される。
空気流通・搬送ゾーンA、補機帯域F及び通路帯域Pは連続する一体的な空間、即ち、全体空間1'を構成し、空気流通・搬送ゾーンA、補機帯域F及び通路帯域Pの環境は実質的に同一である。これに対し、区画ユニット2内の空間は、区画ユニット2内に配置された製造装置Mの製造工程及び設置条件や、区画ユニット2内で実施される作業の環境に適合した環境に任意に設定することができる。即ち、区画ユニット2内の空間は、全体空間1'の環境(一次環境)と異なる環境(二次環境)に設定することができる。
図1(B)及び図2(B)には、このようなクリーンルーム施設のゾーンニングが概念的且つ模式的に示されている。
クリーンルーム1内の空間は、天井構造体レベルKによって空気流通・搬送ゾーンA及び製造ゾーンBに上下にゾーンニングされる。空気流通・搬送ゾーンAは、空気流通領域C及び搬送帯域Dに更にゾーンニングされ、製造ゾーンBは、加工・処理領域E、補機帯域F、通路帯域P及びバッファゾーンVに更にゾーンニングされる。空気流通領域Cの清浄空気は、図2(B)に矢印で示す如く、空気流通領域Cと連続する区画ユニット2の周囲空間(補機帯域F又は通路帯域P)を介して区画ユニット2内の空間(加工・処理領域E)に供給される。補機帯域F内には、配管・配線帯域Gが配置される。搬送帯域Dと加工・処理領域Eとの間の搬送容器の受け渡しは、図1(B)に矢印で示す如く、バッファ装置12を有するバッファゾーンVを介して行われる。変形例として、搬送帯域Dを空気流通・搬送ゾーンAからバッファゾーンV内に下方に拡大しても良く、或いは、搬送帯域Dと区画ユニット2とを平面的に分離して相互干渉をなくし、バッファゾーンVの位置に搬送帯域Dを配置しても良い。
図5は、図1〜図4に示す区画ユニット2を備えたクリーンルーム施設の空調システムを概念的且つ模式的に示す概略縦断面図である。
図5には、コアユニット20を備えた3つの区画ユニット2(2a:2b:2c)が例示されている。空気流通・搬送ゾーンAに配置された搬送装置4は、ウェハWを収容したFOUP等の搬送容器Sを軌道13によって移送する。搬送容器Sは、バッファ装置12(図1)を介して搬送装置4から区画ユニット2(2a:2b:2c)内の加工・処理室10に受け渡され、或いは、加工・処理室10から搬送装置4に受け渡される。
各コアユニット20の空調機90は、HEPAフィルタ又はULPAフィルタ等の高性能フィルタ91と、区画ユニット内空間の空気を循環するための送風機92と、熱媒体流体が循環する冷却コイル93とを備える。所望により、加熱コイル、加湿装置及び/又は再熱ヒータ等が空調機90内に組み込まれ、或いは、還気中の化学汚染物質濃度を低下させるケミカルフィルタが空調機90内に組み込まれる。
空調機90は、空調装置40の制御系とは異なる制御系によって個別に制御される。熱媒体流体を搬送する熱媒体管は、配管・配線帯域Gに配置され、主配管・配線群16(図1)を構成する熱媒体主管に接続される。例えば、空調機90は、水冷ヒートポンプ式空調機からなり、熱源水が熱媒体管によって空調機90に供給される。空調機90として、空冷ヒートポンプ式空調機を採用し、屋外機(図示せず)を循環した熱媒体ガス又は熱媒体液を熱媒体管によって空調機90に供給しても良く、或いは、空調機90として、冷水循環式の空調機を採用し、冷水を熱媒体管によって冷却コイル93に供給しても良い。所望により、温水を循環可能な温水循環式加熱コイルを空調機90に更に組み込んでも良く、或いは、加熱コイル及び再熱コイルとして電気ヒータを空調機90に更に組み込み、加熱コイル及び再熱コイルに給電することも可能である。
図5において右側に位置する区画ユニット2aの空調機90は、区画ユニット2a内の環境を極めて高い清浄度に維持する。例えば、区画ユニット2a内の環境は、以下のとおり設定される。
清浄度:クラス1000、100又は10
温度:23±2℃
湿度:45±5%
コアユニット20の空調機90は、区画ユニット内環境の清浄度を維持すべく、区画ユニット2a内の空気を循環する。空調機90は又、区画ユニット2a内の空気圧を全体空間1'の空気圧よりも高い圧力に制御すべく、区画ユニット内空気の還気流路にダンパ等の抵抗体(図示せず)を備え、或いは、給気押込み用の送風機(図示せず)を備える。区画ユニット2a内の環境と全体空間1'との差圧により、区画ユニット2a内の空気は、区画ユニット2aの隙間、或いは、区画ユニット2の適所に配設された差圧ダンパ等(図示せず)を介して全体空間1'に漏出する。このような差圧維持手段により、区画ユニット2a内環境を高い清浄度を確実に維持することができる。コアユニット20の空調機90は、漏出した空気量に相当する空気量の空気を区画ユニット2aの周囲空間、即ち、全体空間1'(補機帯域F又は通路帯域P)から吸引する。
図5において中央に位置する区画ユニット2bは、高い発熱量を有する製造装置を収容する領域を区画する。空調機90は、製造装置の顕熱負荷に相応した冷房能力を備える。所望により、区画ユニット2bは、排気系47によって高温の室内空気を系外に排気する局所排気系48(破線で示す)を備える。製造装置の発熱は、空調機90の除熱作用(及び局所排気系48の局所排気)によって完全に除去され又は部分的に除去される。空調機90(及び局所排気系48)によって系外に排熱される製造装置の発熱は、空調装置40の調温・調湿空気による除熱を要しないことから、空調装置40の冷房負荷は軽減する。なお、区画ユニット2b内の環境を全体空間1'の清浄度よりも低い清浄度に設定する場合、空調機90(及び局所排気系48)は、区画ユニット2a内の空気圧を全体空間1'の空気圧よりも低い圧力に制御する。全体空間1'の空気は、実線矢印で示す如く、区画ユニット2cの隙間、差圧ダンパ等を介して区画ユニット2c内に流入する。他方、区画ユニット2b内の環境を全体空間1'の清浄度よりも高い清浄度に設定する場合、空調機90は、区画ユニット2a内の空気圧を全体空間1'の空気圧よりも高い圧力に制御する。区画ユニット2aの空気は、破線矢印で示す如く、区画ユニット2aの隙間、差圧ダンパ等を介して全体空間1'に漏出する。
図5において左側に位置する区画ユニット2cは、発塵、或いは、汚染物質発生又は汚染ガス発生を伴う工程を実施する空間を区画する。区画ユニット2c内の環境は、全体空間1'の空気清浄度よりも低い清浄度、例えば、クラス100000に設定される。
区画ユニット2c内の局所的な発塵領域又は汚染領域は、排気系47を介して除害装置46に通じており、排気系47は、塵埃及び汚染物質等を含む室内空気を系外に排気する。空調機90及び排気系47は、区画ユニット2c内の空気圧を全体空間1'の空気圧よりも低い圧力に制御する。区画ユニット2c内の空気圧と全体空間1'の空気圧との差圧により、全体空間1'の空気が区画ユニット2cの隙間、差圧ダンパ等を介して区画ユニット2c内に流入するので、全体空間1'の清浄度を維持することができる。
所望により、区画ユニット2内の環境を全体空間から遮光し、区画ユニット2内の照明を制御することも可能である。この場合、区画ユニット2の壁構造体5及び天井構造体6は、遮光性材料によって構築される。
図6及び図7は、区画ユニット2の全体構成を示す斜視図及び分解斜視図であり、図8(A)及び図8(B)は、区画ユニット2の部分縦断面図及び部分横断面図である。
前述の如く、区画ユニット2は、壁構造体5、天井構造体6及びエアシャワーユニット15、バッファ装置12(図7)とから構成され、天井構造体6の荷重は、壁構造体5を構成するコアユニット20によって支持される。不燃性素材で製作された透明な帯電防止ビニールカーテン等の気密性可撓膜材50が壁面構成材としてコアユニット20の間の開口部、コアユニット20とエアシャワーユニット15との間の開口部、更には、コアユニット20とバッファ装置12との間の開口部に張設される。可撓膜材50は、コアユニット20とともに壁構造体5を構成する。
各コアユニット20は、分岐配管・分岐配線17の末端部を接続可能な多数のポート、管継手等を有する配管・配線接続盤21と、クリーンルーム1の室内空気を吸引する給気口(空気取入れ口)22とを有する。図7に示す如く、空調空気を加工・処理室10に送風する送風口26と、加工・処理室10の室内空気を吸い込む還気口27とが、加工・処理室10側のコアユニット20の壁面に配設される。コアユニット20は区画ユニット2の角部に配置され、床7上に自立するとともに、天井構造体6を支持する支柱として機能する。
エアシャワーユニット15は、鋼構造フレーム(図示せず)、壁面材15a及び天板15bからなる自立構造体内にエアシャワー装置を組み込んだ構成を有し、エアシャワー装置の外側ドア15c及び内側ドア(図示せず)がエアシャワーユニット15の壁面に配置される。作業員等は、エアシャワー装置の外側ドア15c及び内側ドアを介して区画ユニット2内の加工・処理室10に入室し又は加工・処理室10から退室することができる。なお、エアシャワーユニット15の鋼構造フレーム(図示せず)の上端部は、天井構造体6に連結される。
図7及び図8(A)に示す如く、天井構造体6は、外周に配置された鋼構造トラス梁30と、梁30の外側面及び内側面に取付けられた外側面材31及び内側面材32(図8(A))と、梁30によって支持された格子状の金属製T形バー材33と、バー材33の支承部35(図8(A))によって支承された天井面材34とから構成される。所望により、面材又は可撓膜材等の被覆材36(図8(A)に破線で示す)によって天井構造体6の上面を被覆しても良い。
図8に示す如く、可撓膜材50の上縁部を係止可能な水平レール形態の上部係止具51(図8(A))が、梁30の下面に固定され、可撓膜材50の側縁部を係止可能な垂直レール形態の側部係止具52(図8(B))が、コアユニット20の角部に配置される。可撓膜材50は、上部係止具51によって懸吊され、側部係止具52によって側縁部を拘束される。可撓膜材50の下端部には、鎖形又は線材形の錘53が取付けられる。錘53の重量が可撓膜材50に常時作用するので、可撓膜材50の位置は安定する。両側の側部係止具52の下端部近傍と可撓膜材50の両側縁下端部とを係止具等によって解放可能に緊締し、可撓膜材50の位置を張力下に安定させるようにしても良い。
加工・処理室10の室内空気圧と全体空間1'の空気圧との差圧により、可撓膜材50の下端と床面7aとの間に形成された僅かな隙間を介して加工・処理室10の室内空気が全体空間1'に流出し、或いは、全体空間1'の室内空気が加工・処理室10に流入する。即ち、可撓膜材50は、加工・処理室10の内圧(陽圧又は陰圧)を維持する差圧維持手段として機能する。
図8(B)に示す如く、コアユニット20の片側半部には、空調機90が配置され、コアユニット20の他方の側の半部には、配管・配線等の設備領域28が配置される。設備領域28には、ガス中継設備、薬液中継設備、給排水中継設備、動力配線中継設備、制御系配線中継設備、熱媒体制御設備等を構成する制御弁、貯蔵容器、配管ヘッダー、配電盤、制御盤等が配設される。防災設備、特殊ガス源等を設備領域28に配置しても良い。所望により、クラス1程度の極めて高い清浄度を有する局所クリーンブースを設備領域28の位置に組み込み、或いは、設備領域28の一部又は全部を開放空間として加工・処理室10の室内側又は室外側に開放することも可能である。
図9は、区画ユニット2の変形例を示す部分縦断面図及び部分横断面図である。
区画ユニット2の開口部は、比較高剛性の面材、例えば、樹脂成形板、ガラス板、金属板、石膏ボード、珪酸カルシウム板等の硬質板、或いは、複数の面材や、断熱材等を積層してなる複合パネルによって閉塞しても良い。好ましくは、面材の周囲や、面材同士の継目等には、シーリング材、弾性パッキン又はガスケット等によって気密処理が施される。所望により、差圧維持機能を有する差圧ダンパが面材の適所に配設される。
図9(A)及び図9(B)には、パネル54によってコアユニット20の間の開口部を閉塞した構成が示されている。パネル54は、硬質ウレタンフォーム等の硬質樹脂発泡体の芯材を塗装鋼板等の金属板によってサンドイッチ構造に挟んだ金属サンドイッチパネルである。レール状の下枠55a、上枠55b、縦枠55c、55dが開口部の縁に沿って床7、梁30及びコアユニット20に固定される。パネル54は、450〜900mm程度の幅寸法を有し、開口部の高さに相応する高さ寸法を有する。パネル54は、下枠55a、上枠55b、縦枠55c、55dのレール内に挿入され、上下の枠55a、55bに沿ってスライド式に垂直に建込まれる。所望により、差圧ダンパ56(破線で示す)がパネル54の適所に配設される。図9(B)に示すように、各パネル54は、突条54a及び凹溝54bを嵌合する実継ぎ構造の縦継目によって互いに連接される。ウレタンゴム、EDPM等の気密処理材(図示せず)がパネル54間の継目に介挿されるとともに、パネル54と枠55a、55b、55c、55dとの間に介挿される。更なる変形例として、パネル54を横張りに施工することも可能である。
図9(C)に示す如く、支柱55hを上下の枠55a、55bの間に垂直に立設し、実継ぎ構造の継目を備えない金属サンドイッチパネル57を建込んでも良い。支柱55h及びパネル57は、上下の枠55a、55bに沿ってスライド式に建込まれる。パネル57と枠55a、55b、55c、55d及び支柱55hとの間には、気密処理材(図示せず)が介挿される。
図9(D)には、アクリル樹脂製又はガラス製の板材58によって開口部を閉塞する構成が他の変形例として示されている。下枠55eが床に固定され、横桟55f及び上枠55gが開口部の縦枠(図示せず)の間に架設され、或いは、開口部に所定間隔を隔てて立設された支柱(図示せず)の間に架設される。板材58は、支柱又は縦枠に沿ってスライド式に順次落し込まれ、枠55e、55f、55gの間に挿入される。板材58と枠55e、55f、55gとの間には気密処理材(図示せず)が介挿される。板材58と縦枠(及び支柱)との間にも又、気密処理材(図示せず)が介挿される。
図9(E)には、アルミニウム合金製のパネル59によってコアユニット20の間の開口部を閉塞する構成が更に他の変形例として示されている。パネル59は、手指で握持可能な把手59aを取付けた長方形のアルミニウム合金板からなり、パネル59の4辺には、板体縁部を直角に屈曲してなる連接部59bが形成される。パネル59は、図9(E)に示すようにコアユニット20に突付けられ、順次連接される。連接部59bは、ボルト、ビス等の係止具59cによって一体的に相互連結され、或いは、コアユニット20、床7又は梁30に固定される。好ましくは、パネル59の周囲に気密処理材(図示せず)が介挿され、或いは、シーリング材等がパネル59の周囲の目地部に充填される。所望により、上枠、下枠及び縦枠が開口部の周囲に配設される。
図10及び図11は、コアユニット20の構造を示すコアユニット20の縦断面図及び分解斜視図であり、図12は、コアユニット20の鋼製骨組の構成を示す斜視図である。
コアユニット20の外殻は、鋼製骨組23の側面に壁面材24を取付け、鋼製骨組23の上面に天板25を取付けた構造を有する。鋼製骨組23は、所定間隔を隔てて配置された垂直な支柱23aと、支柱23aの頂部及び下部に架設された水平な横架材23bとから構成される。鋼製ベースプレート23cが支柱23aの下端に固定される。ベースプレート23cは、アンカーボルト23dによって床7に固定される。
本実施形態において、支柱23a及び横架材23bは角形鋼管からなる。支柱23a及び横架材23bとして、H形鋼、円形鋼管、アングル形鋼材等を使用し、或いは、アルミニウム合金等の合金製部材を使用しても良い。
骨組23内には、空調機90が配置される。前述のとおり、空調機90は、高性能フィルタ91、送風機92及び冷却コイル93を備える。所望により、空調機90は加熱コイル、加湿装置、再熱ヒータ等を備える。空調機90は、給気ダクト(空気取入れダクト)96を介して給気口22に接続され、送風ダクト94を介して送風口26に接続され、還気ダクト95を介して還気口27に接続される。例えば、給気口22及び還気口27には、HS型吸込口等が取付けられ、送風口26には、VHS形吹出口等が取付けられる。
図13は、鋼製骨組23の移設方法又は設置方法を示す斜視図である。
鋼製骨組23は、アンカーボルト23dの打込み又は撤去により、比較的容易に床7に固定し、或いは、床7から撤去することができる。上側の横架材23bには、揚重機又は荷役機器によって移動するために丸環フック等の係留具86を取付け可能な移送手段、例えば、係留具86を固定可能なボルト孔、螺子孔等(図示せず)が所定位置に設けられており、横架材23bに取付けた係留具86には、索条87の端部が係留される。索条87は、クレーン等の揚重機のフック85に係止される。鋼製骨組87は、揚重機の操作により、床7上に降下され、或いは、床7から撤去される。
下側の横架材23bは、床7から間隔を隔てており、フォークリフト又はリフタ付き台車のフォーク部分又はリフタ部分88(破線で示す)を横架材23bの下側に挿入することができる。鋼製骨組23は、フォークリフト又はリフタ付き台車の操作により、移送することができる。
鋼製骨組23は、輸送トラック等の輸送車両又は輸送機関によって輸送可能な寸法を有し、施設建設時の輸送・搬送が容易である。また、不使用の鋼製骨組23を他のクリーンルーム施設に比較的容易に移設し又は転用することができる。
以上説明したとおり、本実施形態のクリーンルーム施設は、壁構造体5及び天井構造体6を有する区画ユニット2をクリーンルーム1内に配置し、天井構造体レベルKによってクリーンルーム1内の空間を空気流通・搬送ゾーンA及び製造ゾーンBに上下にゾーンニングするとともに、空気流通・搬送ゾーンA内に搬送帯域Dをゾーンニングし、製造ゾーンBを加工・処理領域E、補機帯域F、通路帯域P及びバッファゾーンVに平面的にゾーンニングした構成を有する。クリーンルーム1は、このような立体的又は三次元的ゾーンニングにより、従来の給気プレナムチャンバ及び還気チャンバを実質的に大空間クリーンルームの空間に組み込んだ構成を有する。また、本実施形態のクリーンルーム施設は、製造装置Mの補機類を補機帯域F(及び通路帯域P)に配置するとともに、配管・配線ピット9を区画ユニット2の配列に沿ってY方向に配設し、補機帯域Fの配管・配線帯域Gと配管・配線ピット9とを部分的に上下に重ねたことにより、従来の床下補機空間を実質的に大空間クリーンルームの空間に組み込んだ構成を有する。かくして、このようなクリーンルーム施設の構成によれば、天井裏の給気プレナムチャンバ及び床下の還気チャンバ及び床下補機空間を省略し、クリーンルーム施設の階高を大幅に低減することができる。
また、本実施形態のクリーンルーム施設は、高い清浄度を要する環境、或いは、発塵環境又は汚染環境等を区画ユニット2によって区画することにより、クリーンルーム1の全体空間1'の環境を従来のクリーンルーム全体の清浄度(クラス1000又は100)よりも低い清浄度(クラス10000)に設定した構成を有する。これにより、空調装置40を含む空調システムの循環空気量を低減し、空調装置40の空気搬送動力又は送風動力を軽減するとともに、空気搬送路の断面を大幅に縮小することができる。
更には、排気系47及び局所排気系48によって区画ユニット2内の塵埃、汚染物質、高温室内空気等を系外に排気することにより、塵埃、汚染物質、高温室内空気等がクリーンルーム全体(全体空間1')に拡散するのを防止するとともに、空調装置40の熱負荷等を軽減することができる。
加えて、上記構成の区画ユニット2は、比較的容易に輸送・搬送することができ、しかも、比較的簡易な作業によって施設内に設置し又は施設から撤去し得る構造のものであるので、極めて施工性が良い。
図14は、コアユニット20の配置に関する各種パターンを例示する概略平面図である。
前述のとおり、本実施形態の区画ユニット2は、壁構造体5及び天井構造体6によって形成され、壁構造体5は、コアユニット20及び可撓膜材50(又は面材54、57、58、59)によって構成される。コアユニット20は、図14(A)〜図14(G)に例示する如く、任意のパターンに配置することができる。従って、上記構成の区画ユニット2によれば、製造装置Mのレイアウトに相応した平面寸法・平面形状の加工・処理室10を区画し、或いは、製造装置Mのレイアウト変更又は機種変更等に相応して加工・処理室10の平面寸法・平面形状を比較的容易に変更することができる。但し、このような区画ユニット2のパターンは、区画ユニット2の間に配置される配管・配線帯域Gと配管・配線ピット9とが少なくとも部分的に上下に重なる位置に配置し得ることを条件としたものである。
図15は、区画ユニット2の変形例を示す縦断面図である。
前述の実施形態においては、コアユニット20は、加工・処理室10側の壁面に送風口26及び還気口27の双方を備えており、区画ユニット2は、壁吹出形の気流循環系を有するが、本実施形態の区画ユニット2は、図15に示すように天井吹出形の気流循環系を備えた構成のものである。
図15に示す区画ユニット2は、コアユニット20の上面に配置された送風ダクト又は送風チャンバ97と、送風ダクト97に接続した送風ダクト98とを備え、送風ダクト98は、間隔を隔てて配置され且つ下方に空気を吹出す多数の吹出口99を有する。送風ダクト又は送風チャンバ97は、コアユニット20の全長に亘って連続し、所望より、複数のコアユニット20に跨がって延在する。
送風ダクト98は、天井部分に平行に配置された円形断面又は矩形断面の管体等からなる。多数の送風ダクト98を隙間なく天井面全域に配設することにより、天井構造体6を送風ダクト98によって形成することができる。
天井全域に延在し且つ上下に間隔を隔てた平板等によって給気チャンバ形態の送風ダクト98を形成し、このような送風ダクト98によって天井構造体6を形成しても良い。
なお、コアユニット20の他の構成は、前述の実施形態のものと実質的に同一である。
図16は、本発明の好適な実施例に係るクリーンルーム施設の構成を示す平面図である。図17及び図18は、図16のI−I線及びII−II線における断面図であり、図19は、クリーンルーム内の構成を示す斜視図である。
図16に示す如く、クリーンルーム施設は、クリーンルーム1を囲む内壁61と、内壁61の外側に配置された外壁62とから構成された二重構造且つ高剛性の外殻60を有する。内壁61及び外壁62の間に配置された機械室45、49がクリーンルーム1の両側に対向配置される。機械室45には、空調装置40が配置され、機械室49には、除害装置46が配置される。搬送装置4の位置が、搬送方向を示す実線矢印によって図16に示され、床下の配管・配線ピット9が、図16に破線で示されている。搬送装置4及び配管・配線ピット9は、いずれもY方向に延び、実質的に平行である。所望により、クリーンルーム1は、搬送装置4と関連して搬送容器を移送する搬送装置65、66(搬送方向を示す破線矢印を図16に示す)を更に有する。
多数の区画ユニット2がX方向及びY方向に整列配置される。製造装置Mは各区画ユニット2内に配置される。
図17及び図18に示す如く、X方向に延びる鋼製トラス構造の梁80が、内壁61と中央の柱64との間に架設される。梁80は、屋根材81を支持するとともに、天井8を構成する天井下地材及び天井仕上材を支持する。クリーンルーム施設は、天井裏の給気プレナムチャンバを備えておらず、従って、天井下地材及び天井仕上材は、FFU等を組み込むことができる高価なシステム天井形式のものではなく、野縁によって天井仕上材を支持する従来構造のものである。このため、天井工事の工事費を低廉化することができる。
クリーンルーム1は、床7及び天井8の間に形成される。クリーンルーム施設は、床下の還気チャンバ又は補機設置空間を備えていない。従って、床7は、図17及び図18に部分拡大して示すように、表層の床仕上材71と、床版又は床下地を構成する土間コンクリート72とによって形成される。土間コンクリート72は、捨てコンクリート73及び割栗74を介して地盤75に支持される。製造装置Mには、振動伝達、振動増幅、地震挙動等を極めて厳密に規制する必要がある精密機器が含まれるが、床7は、床構造体自体の剛性が低い従来のフリーアクセスフロア又は鉄骨二重床構造の床ではなく、地盤75に直に支持された土間コンクリート72によって形成されるので、このような精密機器に伝達する振動又は地震挙動等を防振装置等によって確実に絶縁することができる。
クリーンルーム施設の階高Hは約11mであり、クリーンルーム1の天井高H1は約7mである。また、区画ユニット2の高さH2は約4mであり、空気流通・搬送ゾーンAの高さは約3mである。従って、従来の同等規模のクリーンルーム施設が約15mの階高H(図22)を要していたことと対比すると、本発明に係るクリーンルーム施設の優位性は、顕著である。
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において種々の変更又は変形が可能であり、かかる変更又は変形例も又、本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態及び実施例は、本発明を単一階のクリーンルーム施設に適用した構成のものであるが、重層又は多層階構造のクリーンルーム施設に本発明を適用しても良い。この場合、クリーンルーム施設の床は、鉄筋コンクリート床スラブ等の高剛性の床版からなる。
また、上記実施形態及び実施例では、空調装置の給気ダクト及び還気ダクトの給気口及び還気口は、クリーンルームの壁面に開口しているが、給気ダクト及び/又は還気ダクトをクリーンルーム内に延長し、クリーンルームの中央領域等に給気口及び/又は還気口を配置しても良い。所望により、還気ダクト及び還気口を含む空気循環系を省略することも可能である。
更に、上記実施例に係るクリーンルーム施設は、鉄骨トラス構造の梁によって天井及び屋根を支持した構造のものであるが、他の構造の梁によって天井及び屋根を支持するように設計しても良い。
加えて、上記実施形態においては、区画ユニットの設置によって区画ユニット外の空間(即ち、全体空間)の空気清浄度をクラス10000程度の清浄度まで低下させているが、区画ユニット外の空間(全体空間)の清浄度を更に低下させ、例えば、クラス100000又はそれ以下の清浄度に設定することも可能である。