以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符合を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
以下に示す第1及び第2実施形態では、インターリーブ処理や、エラー訂正処理が省略されているが、これらの処理が行われても、本発明の本質に影響を与えるものではない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る送受信機を用いて構築された送受信システムの一例を模式的に示した図である。
図1に示されるように、当該送受信システムは、複数の送受信機Aが組み合わされて構成されている。このシステムでは、複数の送受信機Aが相互に伝送線Lを通じて接続されている。当該システムでは、或る送受信機Aから宛先となる送受信機を指定して、伝送線Lを通じてデータを伝送することができる構成とされている。
図2は、第1実施形態に係る送受信機の機能モジュールの一例を示したブロック図である。送受信機Aは、図2に示されるように、CPU(Central Processing Unit)などで構成され送受信機Aを統括的に制御する制御回路100、送信ブロック(送信部)1、及び、受信ブロック(受信部)2を備えている。
送信ブロック1は、変調器10、拡散器11、第1符号系列出力回路12、第2符号系列出力回路13、複数桁の第1符号系列cn、及び、複数桁の第2符号系列cn’を予め記憶した記憶部14、セレクタ15、オーバーサンプル回路160及びフィルタ161を有する波形整形回路16、デジタルアナログ変換回路17、及び、アナログフロントエンド回路18を備える。
この送信ブロック1では、拡散器11及びセレクタ15が、第1拡散変調部及び第2拡散変調部を構成している。また、拡散器11及び第2符号系列出力回路13が、周波数成分反転手段を構成している。
また、受信ブロック2は、アナログフロントエンド回路20、アナログデジタル変換回路21、ダウンサンプル回路220及びフィルタ221を有する波形整形回路22、同期回路(分離部)23、逆拡散器24、第1符号系列出力回路25、第3符号系列出力回路26、第1符号系列cn、及び、第2符号系列cn’とは複素共役な複数桁の第3符号系列cn’*を予め記憶した記憶部27、セレクタ28、平均化回路(平均信号取得部)29、等化器30、及び、復調器31を備える。
この受信ブロック2では、逆拡散器24及びセレクタ28が、第1狭帯域データ取得部及び第2狭帯域データ取得部を構成している。また、逆拡散器24及び第3符号系列出力回路26が、周波数逆反転手段を構成している。
以下、送受信機Aの構成要素の各々の機能を説明する。送信ブロック1において、変調器10は、データのビット列の入力を受け付けて、予め定められた狭帯域変調方式で変調することにより、変調後のデータのビット列を表す狭帯域変調信号xi(但し、0≦i≦n)を得る。
変調器10は、例えば、データをBPSK(Binary phase-shift keying)で変調する。これにより、変調器10から、1ビットの狭帯域変調データが順次出力される。この狭帯域変調データは実軸成分のみからなるため、In−Phase信号の形で出力される。
拡散器11は、変調器10から順次出力される狭帯域変調信号xiを受け付け、各狭帯域変調信号xiを拡散変調して、広帯域の周波数帯に拡散させる。このような拡散器11による拡散変調のために、記憶部14には、第1符号系列cn及び第2符号系列cn’が予め記憶されている。
第1符号系列cnは、例えば、以下の式(1)のような時間領域の符号系列として表すことができる。
cn=[1 −1 1 1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 −1]・・・(1)
但し、nは時間のインデックスを示している。
式(1)に表される第1符号系列cnは、以下の式(2)のように「1」又は「−1」からなる複数の桁が並んでいる。
cn=[c0,c1、c2、c3、c4、・・・、c10、c11]・・・(2)
第2符号系列cn’は、各狭帯域変調信号xiを、第2符号系列cn’を用いて拡散変調したときに得られる複数桁の拡散変調符号(第2拡散変調符号)の各桁が、当該狭帯域変調信号xiを、第1符号系列cnを用いて拡散変調したときに得られる拡散変調符号(第1拡散変調符号)の各桁とは周波数の順が逆の順の拡散変調符号(第2拡散変調符号)が得られる符号系列である。
このような第2符号系列cn’は、例えば、以下の式(3)のような時間領域の符号系列として表すことができる。
cn’=[1(−0.8660+0.5i)(−0.5+0.8661i)i(0.5+0.8660i)(−0.8660−0.5i)−1(−0.8600+0.5i)(0.5−0.8660i)i(0.5+0.8660i)(−0.8660−0.5i)]・・・(3)
但し、nは時間のインデックスを示している。また、iは虚数単位を示す。
ここにおいて、式(1)で表される第1符号系列cn、及び、式(3)で表される第2符号系列cn’は、それぞれ、狭帯域変調されたデータである狭帯域変調データを拡散変調して12桁の拡散変調符号を拡散変調信号として取得する場合の符号系列である。
式(1)で表される第1符号系列cn、及び、式(2)で表される第2符号系列cn’は、それぞれ、以下のようにして取得することができる。まず、第1符号系列cnについて説明する。
IEEE規格802.11bには、[1 -1 1 1 -1 1 1 1 -1 -1 -1]で表される11桁のバーカー符号が記述されている。このような11桁のバーカー符号の最終桁として「−1」を加えると、式(1)で表される12桁の第1符号系列cnを取得することができる。
次に、式(3)で表される第2符号系列cn’は、例えば、式(1)で表される第1符号系列cnから取得することができる。
式(1)で表される第1符号系列cnは、時間領域の符号系列である。そのため、第1符号系列cnに離散フーリエ変換(discrete Fourier transform)を施すと、当該第1符号系列cnは、以下の式(4)のように周波数領域の形Ckで表される。
但し、kは周波数インデックスを示している。
また、式(4)は、以下の式(5)の形でも表すことができる。
Ck=[0(−2.4641−3.7321i)(3−1.7321i)(−2+2i)(3.0000+1.7321i)(4.4641−0.2679i)0(4.4641+0.2679i)(3−1.7321i)(−2−2i)(3+1.7321i)(−2.4641+3.7321i)]・・・(5)
一方で、第2符号系列cn’は、以下のようにして取得することができる。第2符号系列cn’を用いて、或る狭帯域変調データを拡散変調したときに得られる拡散変調信号の周波数成分を表す第2符号系列cn’の周波数成分Ck’の各桁の順(インデックス)は、当該狭帯域変調データを第1符号系列cnを用いて拡散変調したときに得られる拡散変調信号の周波数成分を表す第1符号系列cn’の周波数成分Ckの各桁の順(インデックス)とは逆の順となることが必要である。
そのため、式(4)で表される第1符号系列cnにおいて、各桁の周波数インデックスkを12−k’に置き換える。つまり、k=12−k’の関係式が満たされるようにする。すると、以下の式(6)が得られる。
但し、jは虚数単位を示している。
次に、第2符号系列cn’を用いて拡散変調すべき狭帯域変調データは時間領域の信号であるため、式(6)で表されるCk’に、離散逆フーリエ逆変換(inverse discrete Fourier transform)を施す。すると、以下の式(7)のように、時間領域の第2符号系列cn’が得られる。
このような式(7)を変形すると、第2符号系列cn’が、先述した式(3)の形で表されることとなる。
以上のように、式(3)で表される第2符号系列cn’は、第1符号系列cnが周波数領域の形で表された状態で周波数インデックスkを、12−k’に置き換え、さらに、時間領域の形で表すことにより取得される。
これにより、第2符号系列cn’を用いて狭帯域変調データxiを拡散変調したときに、第1符号系列cnを用いて狭帯域変調データxiを拡散変調したときに取得される拡散変調信号(第1拡散変調信号α;第1変調信号)の各桁の周波数成分を表すCkとは、周波数インデックスの順が逆の順である複数桁の拡散変調信号(第2拡散変調信号β;第2変調信号)を取得することができる。
送受信機Aにおいて、第1符号系列出力回路12は、記憶部14に記憶されている第1符号系列cnを読み込んでセレクタ15へ向けて出力する。また、第2符号系列出力回路13は、記憶部14に記憶されている第2符号系列cn’を読み込んでセレクタ15へ向けて出力する。
セレクタ15は、接点a及びbを備えており、第1符号系列出力回路12により出力された第1符号系列cnを拡散器15に向けて出力する際には接点a閉じの状態となり、第2符号系列出力回路13により出力される第2符号系列cn’を拡散器15に向けて出力する際には接点b閉じの状態となる。
このセレクタ12は、制御回路100から出力される切り替え信号により接点aと接点bとの間で切り替えられるよう構成されている。
波形整形回路16は、第1拡散変調信号α、及び、第2拡散変調信号βの波形整形を行う。波形整形回路16では、オーバーサンプル回路160が、デジタルアナログ変換回路17によって用いられるサンプリング周波数の少なくとも2倍以上のサンプリング周波数を用いて、第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βのサンプリングを行い、所定の間引き処理や補完処理を行う。
また、波形整形回路16では、フィルタ161がローパスフィルタとして設けられており、このフィルタ161は、一定の周波数よりも小さな成分のみを通過させて、第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βに混入しているオーバーサンプルによるイメージ成分(帯域外の不要成分)を除去する。
デジタルアナログ変換回路17は、デジタル信号として入力される第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βをアナログ信号の形に変換する。アナログフロントエンド回路18は、アナログ信号の形とされた第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βの波形整形及び増幅を行う。このように、アナログフロントエンド回路18により波形整形が施された第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βは、伝送路Lへ送信される。
また、受信ブロック2において、アナログフロントエンド回路20は、伝送路Lを通じて送信されてきた第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βを受信し、当該第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βの波形整形及び増幅を行う。アナログデジタル変換回路21は、アナログ信号の形で入力された第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βをデジタル信号の形に変換する。
波形整形回路22は、デジタル信号の形に変換された第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βの波形整形を行う。波形整形回路22では、ダウンサンプルフィルタ220は、アナログデジタル変換回路21によりオーバーサンプリングされた第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βをデシメーションする。フィルタ221は、ローパスフィルタで構成されており、伝送途中に第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βに混入した帯域外の不要成分(帯域外に存在する妨害波などのノイズ)を除去する。
同期回路23は、パケット(フレーム)の先頭部分を同定すると共に、第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βの各々の先頭部分を同定すると共に、タイミング信号を生成して制御回路100に向けて出力する。
制御回路100は、同期回路23からタイミング信号を受け付ける毎に、セレクタ28の状態を接点a閉じと接点b閉じとの間で交互に切り換える。これにより、逆拡散器24には、第1拡散変調信号αがデジタル信号の形に変換されたときに、当該第1拡散変調データαを逆拡散して第1狭帯域変調信号xriとするための第1符号系列cnが入力され、第2拡散変調データβがデジタル信号の形に変換されたときに、当該第2拡散変調データβを逆拡散して第2狭帯域変調信号xri’とするための第3符号系列cn’*が入力される。
逆拡散器24は、第1拡散変調信号αを、第1符号系列cnを用いて逆拡散して第1狭帯域変調信号xriを元の狭帯域変調データとして取得する。また、逆拡散器24は、第2拡散変調信号βを、第3符号系列cn’*を用いて逆拡散して第2狭帯域変調信号xri’を元の狭帯域変調データとして取得する。
ここにおいて、第3符号系列cn’*は、先述したように、第2符号系列cn’とは複素共役な符号系列である。これにより、逆拡散器24は、第3符号系列cn’*を用いて、第2拡散変調信号βを、当該第2拡散変調信号βの各桁の周波数成分の周波数の順が、第1拡散変調信号αの各桁の周波数成分の周波数の順と同じ順に並び替えられるように逆拡散して、元の狭帯域変調信号を取得する。
第1符号系列出力回路25は、記憶部27に記憶されている第1符号系列cnを読み込んでセレクタ15へ向けて出力する。また、第3符号系列出力回路26は、記憶部14に記憶されている第3符号系列cn’*を読み込んでセレクタ15へ向けて出力する。
セレクタ28は、制御回路100の制御により、接点a閉じの状態と接点b閉じの状態との間で切り換えられる。このセレクタ28は、第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βの各々が、それぞれ、アナログ信号の形からデジタル信号の形に変換されたときに、接点a閉じの状態と接点b閉じの状態との間で切り換えられる。
平均化回路(平均化部)29は、各狭帯域変調データについて、第1狭帯域変調信号xriと第2狭帯域変調データxri’との間の平均を表す平均信号を取得する。平均化回路29は、例えば、第1狭帯域変調信号xriの信号レベルと、第2狭帯域変調信号xri’の信号レベルとを加算して得られた信号レベルを2で除算する。
等化器30は、平均化回路29により得られた平均信号を、予め設定された等化係数で等化処理を行う。復調部30は、等化処理された平均信号を、変調器10における変調方式に対応する復調方式で復調する。
このような構成の送受信機Aは、例えば、以下の基本処理を行う。
(送信側となったときの処理)
以下に、データの送信処理の概要を、図2を用いて説明する。
変調器10により変調されるデータとしては、例えば、映像、音声などの情報をビット化したものが挙げられ、当該データは変調器10に入力される。変調器10は、例えば、先述したようにBPSKで当該データを変調するよう構成されており、データをなすビット列をIQ複素平面上にマッピングする。ここにおいて、BPSKの場合には実軸成分しか持たないため、マッピングされた信号は、先述したように、In−Phase信号である。このようなIn−Phase信号が狭帯域変調信号xiとして拡散器11に出力される。
第1符号系列出力回路12と第2符号系列出力回路13とは、拡散器11との間の接続がセレクタ15により交互に切り換えられる。これにより、第1符号系列cnと第2符号系列cn’とが交互に拡散器11に出力される。
拡散器11には、セレクタ15から第1符号系列cnと第2符号系列cn’とが交互に出力されてくるので、拡散器11は、先述したIn−Phase信号、つまり、狭帯域変調信号xiを1個受け付ける毎に、当該1個の狭帯域変調信号xiに、第1符号系列cnと第2符号系列cn’とを交互に乗算する。
これにより、拡散器11により第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βが得られる。
これらの信号は、オーバーサンプル回路160により、デジタルアナログ変換回路17によって用いられるサンプル数の少なくとも2倍以上のオーバーサンプリングが施され、その後、フィルタ161により所定のフィルタリング処理が施されて、適切な波形整形が施される。その後、これらの信号がデジタルアナログ変換回路17に出力される。
その結果、これらの信号がデジタルアナログ変換回路17によりアナログ信号の形で出力される。
デジタルアナログ変換回路17より出力された信号は、アナログフロントエンド回路18により適切なアナログ信号処理が施され、媒体、つまり、信号線L上に出力される。
本実施形態では、媒体として有線を用いており、有線の媒体において端末、つまり、送受信機Aが開放端であった場合には、伝達特性に深いノッチが形成される(例えば図5(a)参照)。その場合、媒体を介して送信される信号の信号レベルが減衰する。
次に、データの送信処理の具体例について、図2及び図3を用いて説明する。以下の説明において、初期状態とは、セレクタ15及びセレクタ28の双方を接点a閉じにした状態のことを表す。
送受信機Aは、例えば、以下のデータ送信処理を行う。すなわち、初期状態を保持している送受信機Aにおいて、送信先の送受信機を指定したデータの伝送指示があったときには、変調器10は、データを変調して狭帯域変調信号xiを順次取得し、取得した狭帯域変調信号xiを1個ずつ拡散器11に向けて出力する。
拡散器11は、まず、送信先の送受信機Aを指定したデータの伝送指示があった後、最初に変調器10により取得された狭帯域変調信号xiを受け付けて保持する。セレクタ15は、初期状態では接点a閉じの状態とされているため、拡散器11には、第1符号系列出力回路12からの第1符号系列cnが入力される。
これにより、拡散器11は、送信先の送受信機Aを指定したデータの伝送指示があった後、最初に変調器10により取得された狭帯域変調信号xiを、第1符号系列cnを用いて拡散変調して、複数桁の第1拡散変調データを取得する。そして、拡散器11は、取得した第1拡散変調信号αを波形整形回路16へ向けて出力する。
セレクタ15は、第1拡散変調信号αが拡散器11から波形整形回路16へ向けて出力され終わったときに、接点b閉じの状態とされる。そのため、拡散器11には、第2符号系列出力回路13からの第2符号系列cn’が入力される。これにより、拡散器11は、当該拡散器11に保持された狭帯域変調信号xiを、第2符号系列cn’を用いて拡散変調して、複数桁の第2拡散変調信号βを取得する。そして、拡散器11は、取得した第2拡散変調信号βを波形整形回路16へ向けて出力する。
セレクタ15は、第2拡散変調信号βが、拡散器11から波形整形回路16へ向けて出力され終わったときに、接点a閉じの状態とされる。
その後、拡散器11は、以下の処理を、変調器10からの狭帯域変調信号xiの出力が終了するまで、各狭帯域変調信号xiについて繰り返す。すなわち、拡散器11は、変調器10から出力された狭帯域変調信号xiを1個ずつ保持する。
セレクタ15は、第2拡散変調信号βが、拡散器11から波形整形回路16へ向けて出力され終わったときに、接点a閉じの状態とされるため、拡散器11は、当該拡散器11に保持されている狭帯域変調信号xiを、第1符号系列cnを用いて拡散変調して第1拡散変調信号αを取得して、波形整形回路16に向けて出力する。
その後、拡散器11には、接点b閉じの状態に切り替わっているセレクタ15を通じて第2符号系列cn’が入力されるため、拡散器11は、当該拡散器11に保持されている狭帯域変調信号xiを、第2符号系列cn’を用いて拡散変調して第2拡散変調信号βを取得して、波形整形回路16に向けて出力する。
以上により、拡散器11からは、第1拡散変調信号αと第2拡散変調信号βとが交互に出力されることになる。そのため、伝送路Lには、波形整形、デジタル信号の形への変換、及び、増幅が行われた状態の第1拡散変調信号αと第2拡散変調信号βとが交互に出力される。
図3は、第1拡散変調信号α、及び、第2拡散変調信号βの伝送路Lへの出力態様の一例を示した図である。
図3において、c0、c1、及びcnは、第1符号系列cnの各桁を示し、c0’、c1’、及びcn’は、第2符号系列cn’の各桁を示している。
第1符号系列cnは、当該第1符号系列cnの各桁を狭帯域変調信号xi(1または−1)に乗算したときに、当該第1符号系列cnの各桁の周波数成分CkがC0からCn−1の順にインデックスが大きくなる複数桁の拡散変調信号が第1拡散変調信号αとして得られるように設定された符号系列である。
一方、第2符号系列cn’は、当該第2符号系列cn’の各桁を狭帯域変調信号xiに乗算したときに、当該第2符号系列cn’の各桁の周波数成分Ck’がCk−1からC0の順にインデックスが小さくなる複数桁の拡散変調信号が第2拡散変調信号βとして得られるように設定された符号系列である。
図3に示すように、アナログフロントエンド18から伝送路Lへは、時間の経過に伴って、狭帯域変調信号x0を、[c0x0,c1x0,・・・cnx0]の形で表す第1拡散変調信号α0、狭帯域変調信号x0を、[c0’x0,c1’x0,・・・cn’x0]の形で表す第2拡散変調信号β0、狭帯域変調信号x1を、[c0x1,c1x1,・・・cnx1]の形で表す第1拡散変調信号α1、及び、狭帯域変調信号x1を、[c0’x1,c1’x1,・・・cn’x1]の形で表す第2拡散変調信号β1が順次出力される。
そして、最終的には、狭帯域変調信号xnを、[c0xn,c1xn,・・・cnxn]の形で表す第1拡散変調信号αn、及び、狭帯域変調信号xnを、[c0’xn,c1’xn,・・・cn’xn]の形で表す第2拡散変調信号βnが順次出力される。
(受信側となったときの処理)
以下に、データの受信処理の概要を、図2を用いて説明する。
信号レベルが減衰した信号はアナログフロントエンド回路20により適切なアナログ信号処理により増幅、フィルタリングなどが施された後、アナログデジタル変換回路21によりデジタル信号の形に変換される。
同期回路23は同期タイミングを生成する。アナログデジタル変換回路21によりオーバーサンプルされた信号は、ダウンサンプル回路220によりデシメーションされ、その後、フィルタ221によりフィルタリングされる。これにより、適切なデジタル信号が得られる。
当該デジタル信号は逆変換器24に入力される。そして、同期回路23により生成された同期タイミングに従って、逆拡散器24により用いられる逆拡散系列が切り換えられる。
第1符号系列cnに対する逆拡散系列は第1符号系列cnそのものであり、受信した信号に対して、送信ブロックAで掛け合わされた順番と同じ順番で乗算することにより、第1狭帯域変調信号xriが、送信側となった送受信機Aから送信された狭帯域変調信号として復調される。
一方で、第2符号系列cn’に対する逆拡散系列は、第2符号系列cn’の複素共役である。つまり、第2符号系列cn’に対する逆拡散系列は、第3符号系列cn’*である。このような第2符号系列cn’に対する逆拡散系列である第3符号系列cn’*を、受信した信号に対して、送信ブロックAで掛け合わされた順番と同じ順番で乗算することにより、第2狭帯域変調信号xri’が、送信側となった送受信機Aから送信された狭帯域変調信号として復調される。
復調された狭帯域変調信号、つまり、第1狭帯域変調信号xri及び第2狭帯域変調信号xri’は平均化回路29に入力され、平均化される。平均化された狭帯域変調信号は、等化器30において、あらかじめ既知信号の送受信で決定された等化係数によって等化処理を受け、復調器31に入力される。本実施形態では、変調方式としてBPSKを用いているため、1、−1の尤度判定により、情報ビット、つまり、データ(ビット列)が復元される。
次に、データの受信処理の具体例について、図1及び図3を用いて説明する。初期状態の送受信機Aが、送信元の送受信機Aから、第1拡散変調信号α0を受信したときには、アナログフロントエンド回路20、アナログデジタル変換回路21、及び、波形整形回路22により波形整形及びデジタル信号の形への変換が施された第1拡散変調信号α0(図3参照)が逆拡散器24に入力される。
セレクタ28は、初期状態では接点a閉じの状態とされている。これにより、逆拡散器28には、第1符号系列出力回路25からの第1符号系列cnが入力される。そのため、逆拡散器28は、入力された第1拡散変調信号α0を、第1符号系列cnを用いて逆拡散して、第1狭帯域変調信号xr0を取得する。
次に、送受信機Aは、送信元の送受信機Aから、第2拡散変調信号β0(図3参照)を受け付ける。第2拡散変調信号β0は、アナログフロントエンド回路20、アナログデジタル変換回路21、及び、波形整形回路22により波形整形及びデジタル信号の形への変換が施されて、逆拡散器24に入力される。
セレクタ28は、第2拡散変調信号βがデジタル信号の形への変換が施されたときに、制御回路100の制御を受けて、接点b閉じの状態に切り換えられる。これにより、逆拡散器24は、セレクタ28を通じて入力された第2拡散変調信号β0を、第3符号系列cn’*を用いて逆拡散して、第2狭帯域変調信号xr0’を取得する。
その後、送受信機Aには、第1拡散変調信号α1、第2拡散変調信号β1、第1拡散変調信号αn、及び、第2拡散変調信号βnが順次入力されるので、逆拡散器24は、上記と同様の処理を行う。
これにより、逆拡散器24は、第1拡散変調信号α1を逆拡散して狭帯域変調信号xr1を取得する。次に、逆拡散器24は、第2拡散変調信号β1を逆拡散して狭帯域変調信号xr1’を取得する。
最後に、逆拡散器24は、第1拡散変調信号αnを逆拡散して狭帯域変調信号xrnを取得し、第2拡散変調信号βnを逆拡散して狭帯域変調信号xrn’を取得する。
以上のように、逆拡散器24により、狭帯域変調データが、狭帯域変調データxr0、狭帯域変調データxr0’、狭帯域変調データxr1、狭帯域変調データxr1’、狭帯域変調データxrn、狭帯域変調データxrn’の順に取得される。
尚、以下の説明において、狭帯域変調受信データxr0、xr1、・・・、xrnを狭帯域変調受信データxri(但し、0≦i≦n)とする。一方で、狭帯域変調受信データxr0’、xr1’、・・・、xrn’を狭帯域変調受信データxri’(但し、0≦i≦n)とする。
平均化回路29は、逆拡散器24により取得された狭帯域変調信号xri及び狭帯域変調データxri’を受け付けて、両者の平均である平均信号(図2では、「(xri+xri’)/2」で表されている)を取得する。この平均信号が、等化器30による等化処理がされた後、復調器31により復調される。これにより、送信元の送受信機Aより受け付けたビット列が復元される。
以上の送受信機Aの基本処理についてさらに説明する。図4は、送受信機Aの基本処理の一例を概念的に示した図である。図5は、図4の基本処理により奏される効果を、伝送路LのSN特性を用いて説明するための図である。
尚、図5において、f0〜f11はそれぞれ伝送路L上を伝送される信号が持つ周波数を識別するための周波数識別情報を表しており、f0からf11の順に周波数が大きくなるものとする。
図4に示すように、狭帯域変調信号xiが、第1符号系列cnを用いて拡散処理されて、図4の(1)に示される第1拡散変調信号αが得られる。第1拡散変調信号αの周波数スペクトラムが、図5(a)で示されている。
先述したように、第1符号系列cnは、当該第1符号系列cnの各桁を狭帯域変調信号xiに乗算したときに得られる第1拡散変調信号αの各桁の周波数成分である、第1符号系列cnの周波数成分CkがC0からCnの順にインデックスが大きくなる符号系列である。
そのため、図5(a)に示すように、第1拡散変調信号αの各桁の周波数成分C0〜C11の各々において、C0が最小の周波数f0を有し、C11に向かって周波数が大きくなる。
そして、伝送路Lの状態が反映された伝達関数により、各桁のSN比が、例えば、周波数f4で低下して谷となっている。
一方で、第2符号系列cn’は、当該第2符号系列cn’の各桁を狭帯域変調信号xiに乗算したときに得られる第2拡散変調信号βの各桁の周波数成分である、第2符号系列cn’の周波数成分Ck’がCn-1からC0の順にインデックスが大きくなる符号系列である。
狭帯域変調信号xiが、第2符号系列cn’を用いて拡散変調されて、図4の(2)に示される第2拡散変調信号βが得られる。第2拡散変調信号βの周波数スペクトラムが、図5(b)で示されている。この第2拡散変調信号βは、第1拡散変調信号αと同様に、伝送路Lの状態が反映された伝達関数により、各桁のSN比が、周波数f4で低下して谷となっている。
先述したように、第2符号系列cn’は、当該第2符号系列cn’の各桁を狭帯域変調信号xiに乗算したときに得られる第2拡散変調信号βの周波数成分が、C0で最大の周波数を有し、Cnに向かうにつれて周波数が小さくなる符号系列である。
そのため、図5(b)に示すように、第2拡散変調信号βの周波数成分C11〜C0の各々は、C0が最大の周波数f11を有し、C11に向かって周波数が小さくなる。
以上のように、狭帯域変調信号xiを第2符号系列cn’を用いて拡散変調したときには、狭帯域変調信号xiを第1符号系列cnを用いて拡散変調したときに取得される第1拡散変調信号αの周波数成分が反転した第2拡散変調信号βが得られる。
そうすると、第1拡散変調信号αと第2拡散変調信号βとは、同じ伝送路Lによって伝送されるため、SN比の低下度合いは同じとなる。
例えば、第1拡散変調信号αのSN比の谷がf4であれば、第2拡散変調信号βのSN比の谷もf4となる。ところが第1拡散変調信号αでf4に割り当てた周波数成分はC4であるのに対し、第2拡散変調信号βでf4に割り当てた周波数成分はC7となる。
第1拡散変調信号αは、第1符号系列cnにより逆拡散される。これにより、図4の(4)に示すように、拡散変調が施される前の元の狭帯域変調信号xiに相当する第1狭帯域変調信号xriが得られる。
第2拡散変調信号βは、第2符号系列cn’とは複素共役な第3符号系列cn’*により、逆拡散される。逆拡散後に得られた信号は図5(b)に示すように、成分C7の振幅が落ち込んだ信号として得られるが、図5(a)との比較をわかりやすくするため、第2拡散変調信号βの受信後の周波数成分を周波数インデックスが小さいほうから大きいほうへ並べなおすと、図5(c)に示すようになる。狭帯域変調信号xri’(例えば、図4の(3)参照)はこのように、狭帯域変調信号xriの有する周波数成分の振幅情報を周波数軸上で反転した周波数成分を有する信号となっている。
このような狭帯域変調信号xri’は、狭帯域変調データxriとともに平均化回路29に入力されて平均化処理が施される。
すなわち、平均化回路29により、狭帯域変調信号xriの信号レベルと、狭帯域変調信号xri’の信号レベルとの間の平均である信号レベルが平均信号(例えば、図4の(5)参照)として取得される。
図5(d)は、平均化回路29が、狭帯域変調信号xriの信号レベルと、狭帯域変調信号xri’の信号レベルとの間の平均信号を取得することにより奏される効果を説明するための図である。
狭帯域変調信号xiは、先述したように、第1符号系列cnを用いて拡散変調されることにより、周波数成分C0〜C11を有する第1拡散変調信号αとされる。また、狭帯域変調信号xiは、先述したように、第2符号系列cn’を用いて拡散変調されることにより、周波数成分が反転したC11〜C0を有する第2拡散変調信号βとされる。
そのため、狭帯域変調信号xiは、第1拡散変調信号αの場合、周波数が小さいほうから周波数成分C0〜C11を有する状態で、一方、第2拡散変調信号βの場合、周波数が小さいほうから周波数成分C11〜C0を有する状態で、伝送路Lに出力されることとなる。
平均化回路29が狭帯域変調信号xriと狭帯域変調信号xri’との間の平均信号を取得すると、図5(d)における太い実線で示すように、狭帯域変調信号について、第1拡散変調信号αの或る周波数成分として伝送路L上を伝送された部分と、当該部分と同じ部分であって第2拡散変調信号βの各周波数成分のうち当該第1拡散変調信号αの周波数成分とは異なる周波数成分として伝送された部分と、の間の平均が取得される。
これにより、図5(a)に示すように、周波数識別情報f1〜f7で表される周波数の帯域で生じているノッチにより、狭帯域変調信号において、第1拡散変調信号αの周波数成分C1〜C7としてf1〜f7の周波数帯に拡散されて伝送される部分の信号レベルが減衰しても、当該部分は、図5(b)に示すように、第2拡散変調信号βの周波数成分C7〜C1として、ノッチ帯域の幅がf1〜f7よりも小さなf4〜f10の周波数帯に拡散されて伝送される。
そして、狭帯域変調信号について、第1拡散変調信号αの周波数成分C1〜C7として伝送路Lを伝送された部分の信号レベルが、第2拡散変調信号βの桁C7〜C1 として伝送された部分の信号レベルとの間で平均化される。
これにより、狭帯域変調信号について、伝送路Lにおいて生じたノッチにより、ノッチが生じている周波数帯に拡散された部分は、他の周波数帯に拡散された当該部分の信号レベルにより補完される。
そのため、伝送路Lを通じてデータを送信するに際し、当該伝送路Lの状態を評価したり当該評価の結果に応じた特別な処理を行わなくても、高品質なデータ伝送を実現することができる。
以下、第1実施形態に係る送受信機Aの効果を、計算式を用いて説明する。
ここで、変調データxiは1、−1のDBPSK変調信号であるとしているので、拡散後データcixiは−ciあるいは+ciとなる。簡単のため、ここでは+符号のデータの場合であるとする。また、受信データに与えられる歪は符号に乗算され、ひずみを受けた受信データを拡散符号の記号を変形して、cnrと表す。
cnrはcnの受信信号であり、cnr’はcn’の受信信号である。
まず、第1拡散変調信号αが第1拡散系列cnで逆拡散されることにより得られた信号S1は、以下の式(8)のように表すことができる。
但し、フーリエ変換を用いる都合により、cnは実数データであるが、受信側で乗算する逆拡散符号は共役複素数表示cn*とする。
そして、cn*及びcnrは、それぞれ、以下の式(9)、(10)のように表すことができる。
したがって、S1は、式(11)のように表される。
そして、式(11)では、kk=kのときに、実数が得られるため、kkをkに置き換える。式(11)において、kkをkに置き換えると、以下の式(12)のようになる。
その一方で、第1拡散変調信号αから信号S1を取得する上記処理と同様の処理を行うことにより、以下の式(13)の形で表される信号S2が取得される。信号S2は、第2拡散変調信号βが第3拡散変調符号cn’*で逆拡散されて取得された信号である。
但し、cn’rは伝送路Lを通じて送受信機Aに流れてきた後の第2拡散変調信号βを示す。
そして、式(12)で表される信号S1と、式(13)で表される信号S2とを加算すると、以下の式(14)が得られる。
ここで、Ck’=CN−kである(但し、Nは第1符号系列cn及び第2符号系列cn’の桁数)。また、第1拡散変調信号α及び第2拡散変調信号βは、同じ伝送路L上を通るため、受ける利得は同じである。そのため、gk’=gkである。
これにより、以下の式(15)が得られる。
そして、式(15)の両辺を2で除算すると、信号S1と信号S2との間の平均信号を取得することができる。
式(15)より、狭帯域変調信号について、第1拡散変調信号αの各桁において、周波数のインデックスがkである桁Ckとして伝送路Lを伝送された部分の信号レベルが、当該部分と同じ部分であって、周波数のインデックスがN−kである桁SN−kとして伝送路Lを伝送された部分の信号レベルにより補完されることが判る。
これにより、図7に示すように、狭帯域変調信号について、図7に示すようにノッチで大きく減衰していた部分は比較的SN比の大きな周波数の部分と平均化されるため、互いに異なる周波数に拡散された部分のSN比が向上する。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る送受信機について、図6〜図13を用いて説明する。本発明の第2実施形態に係る送受信機Bは、第1対応データ32A及び第2対応データ32Bを記憶した記憶部32、平均化回路(平均信号取得部)29A、第1拡散変調部30、第2拡散変調部31、セレクタ33、FFT回路(第1変換部)34、並び替え部35、IFFT回路(第2変換部)36、セレクタ37、データ取得部38、及び、第1対応データ32Aを記憶した記憶部41を備えた点が、第1実施形態に係る送受信機Aとは異なる。
その他の構成については、第1実施形態に係る送受信機Aと同一であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
図6は、第2実施形態に係る送受信機Bの機能モジュールの一例を示したブロック図である。
本実施形態に係る送受信機Bによれば、情報ビット列(ビットデータ)は、例えば、映像、音声、データなどの情報をビット化したものであり、第1の変調器、第2の変調器のそれぞれに入力される。
第1の変調器では、例えば、IEEE規格802.15.4のスタンダードドキュメントに示される方法で、4ビットのシーケンスがユニークな拡散符号にマッピングされる。
一方、第2の変調器では、第1の変調器で用いられた拡散系列に対して、周波数領域で反転した系列に対して、4ビットのシーケンスがマッピングされる。
そして、第1、第2の変調器の出力はセレクタに入力され、第1、第2の変調器の出力が時系列に交互に出力される。
かかる送受信機Bにおいて、第1対応データ32Aは、互いに異なる値を表す複数のビットデータの各々と、当該ビットデータに対応する複数桁の第1拡散変調符号との間の対応関係を表す。
第2対応データ32Bは、互いに異なる値を表す複数のビットデータの各々と、当該ビットデータに対応し、且つ、当該ビットデータに対応する第1拡散変調符号とは周波数成分の順が周波数軸上で逆となる複数桁の第2拡散変調符号との間の対応関係を表す。
第1の変調器、例えば、第1拡散変調部30は、第1対応データ32Aを用いて、各ビットデータを複数桁の第1拡散変調符号に変換して、当該複数桁の第1拡散変調符号を第1拡散変調信号(第1変調信号)αとして取得する。すなわち、本実施形態では、第1拡散変調部30は、第1実施形態における変調器10、拡散器11、及び第1符号系列出力回路12の機能を兼ね備えた構成とされている。
また、第2の変調器、例えば、第2拡散変調部31は、第2対応データ32Bを用いて、各ビットデータを、第1拡散変調符号の周波数成分とは周波数軸上で逆の順の周波数成分を有する複数桁の第2拡散変調符号に変換して、当該複数桁の第2拡散変調符号を第2拡散変調信号(第2変調信号)βとして取得する。すなわち、本実施形態では、第2拡散変調部30は、第1実施形態における変調器10、拡散器11、及び第2符号系列出力回路13の機能を兼ね備えた構成とされている。
セレクタ33及び37は、初期状態では接点a状態となるよう構成されている。また、セレクタ33及び37は、制御回路100による制御を受け付けて駆動して、受信信号として受け付けられた第1受信信号である第1拡散変調信号αがデジタル信号の形に変換されたときに接点a閉じ状態となり、受信信号として受け付けられた第2受信信号である第2拡散変調信号βがデジタル信号の形に変換されたときに接点b閉じの状態となるよう構成されている。
FFT(Fast Fourier Transform)回路34は、第2拡散変調信号βを受け付けて、当該第2拡散変調信号βに高速フーリエ変換を施す。これにより、時間領域の第2拡散変調信号βを周波数領域の信号に変換する。
並び替え部35は、FFT回路34により取得された周波数領域の第2拡散変調信号βについて、当該第2拡散変調信号βをなす第2拡散変調符号の周波数成分を、周波軸上で逆の順に並び替える。たとえば、並び替え部35は、第2拡散変調信号βの周波数成分が周波数が小さいほうから順にCk〜C0であるとすると、並び替えでは、C0〜Ckに並び替える。
ここにおいて、並び替え部35は、例えば、上記並び替えのために第2拡散変調符号と同じ長さのデータ長のFIFOバッファを備えており、当該FIFOバッファの入力側から順次第2拡散変調符号を入力させる。そして、並び替え部35は、当該FIFOバッファの容量がフルとなったときに、当該FIFOバッファの入力側から順次当該FIFOバッファに記憶されている第2拡散変調符号を取り出す。これにより、並び替え部35が、上記並び替えを行うことができる。
IFFT(Inverse FFT)回路36は、並び替え部35により周波数成分の順が並び替えられた第2拡散変調信号βに逆高速フーリエ変換を施して時間領域の信号にする。
平均化回路29Aは、第1拡散変調信号αと、FFT/IFFTによって、周波数成分の順が並び替えられた第2拡散変調信号βとについて、平均化する。そして、第2拡散変調信号βは第1の拡散変調信号αと同じ情報を元にしているため、平均化により取得された平均信号は、第1の拡散変調信号αに相当する符号となる。
データ取得部38は、平均化回路29Aにより取得された平均信号、つまり、第1の拡散変調信号αに相当する符号を、第1対応データ32Aを用いてデータに変換することにより、拡散変調される前の元のデータを取得する。つまり、データ取得部38は、平均化回路29Aにより取得された平均信号から、元のビット列を復調する復調器としての機能を備えている。
この送受信機Bにおいては、平均化回路29Aは、平均信号取得部を構成する他、第1取得部も構成している。そして、当該第1取得部が、第1実施形態における逆拡散器24及び第1符号系列出力回路25の機能を兼ね備えた構成とされている。
また、送受信機Bにおいては、FFT回路34、並び替え部35、及び、IFFT回路36は、第2取得部を構成している。そして、当該第2取得部が、第1実施形態における逆反転器24及び第3符号系列出力回路26の機能を兼ね備えた構成とされている。
図7は、第1対応データ32Aの一例を示した図である。この第1対応データ32Aは、IEEE規格802.15.4で定められたデータである。第1対応データ32Aでは、10進数で表したときに0〜15のいずれかとなる4ビットのデータに対応して、32桁(桁c0〜c31)の第1拡散変調符号が定められている。尚、図7において、4ビットのデータのうち、各ビットの値は、第1拡散変調部30及びデータ取得部38への入力順に示されている。
図8〜図10は、第2対応データ32Bの一例を示した図である。この第2対応データ32Bは、第1対応データ32Aと同様に、IEEE規格802.15.4で定められたデータである。
第2対応データ32Bでは、10進数で表したときに0〜10のいずれかとなる4ビットのデータに対応して、32桁(桁c0’〜c31 ’)の第2拡散変調符号が定められている。尚、図8〜図10において、4ビットのデータのうち、各ビットの値は、第2拡散変調部31への入力順に示されている。
このような構成の送受信機Bは、以下の基本動作を行う。尚、以下の説明において、セレクタ37は、初期状態では接点a閉じの状態とされているものとする。
(送信側となった場合の基本動作)
初期状態の送受信機Bにおいて、送信先の送受信機を指定したデータの伝送指示があったときには、第1拡散変調部30及び第2拡散変調部31が、データを4ビットずつ受け付ける。
第1拡散変調部30は、4ビットのデータ(ビット列)Yiを、第1対応データを参照して、当該4ビットのデータYiに対応する第1拡散変調符号を第1拡散変調信号αとして取得する。
第1拡散変調部30は、例えば、10進数で表したときに3となる4ビットのデータYiを受け付けたときには、図7の行N1で表される第1拡散変調符号を第1拡散変調信号αとして取得する。
一方で、第2拡散変調部31は、4ビットのデータ(ビット列)Yiを、第2対応データを参照して、当該4ビットのデータYiに対応する第2拡散変調符号を第2拡散変調信号βとして取得する。
第2拡散変調部31は、例えば、10進数で表したときに3となる4ビットのデータYiを受け付けたときには、図8〜図10の行N2で表される第2拡散変調符号を第2拡散変調信号βとして取得する。
セレクタ15は、初期状態では接点a閉じの状態とされているため、第1拡散変調部12により取得された第1拡散変調信号αが波形整形回路16に向けて出力される。これにより、波形整形及びデジタル信号の形への変換が施された第1拡散変調信号αが伝送路Lへ出力される。
その後、セレクタ15は、接点b閉じの状態に切り換えられるため、第2拡散変調部31により取得された第2拡散変調信号βが波形整形回路16に向けて出力される。これにより、波形整形及びデジタル信号の形への変換が施された第2拡散変調信号βが伝送路Lへ出力される。
その後、第1拡散変調部30及び第2拡散変調部31は上記と同じ処理を繰り返し行う。ここにおいて、セレクタ15は、第1拡散変調部30により取得された第1拡散変調信号αが波形整形回路16に向けて出力されると、接点b閉じの状態に切り替わり、第2拡散変調部31により取得された第2拡散変調信号βが波形整形回路16に向けて出力されると、接点a閉じの状態に切り替わる。
これにより、伝送路Lには、波形整形及びデジタル信号の形への変換が施された第1拡散変調信号αと、波形整形及びデジタル信号の形への変換が施された第2拡散変調信号βとが交互に出力されることになる。
図11は、第1拡散変調信号α、及び、第2拡散変調信号βの伝送路Lへの出力態様の一例を示した図である。図11に示すように、伝送路Lには、4ビットのデータY0に対応する第1拡散変調信号α0、4ビットのデータY0に対応する第2拡散変調信号β0、4ビットのデータY1に対応する第1拡散変調信号α1、4ビットのデータY1に対応する第2拡散変調信号β1、4ビットのデータYnに対応する第1拡散変調信号αn、及び、4ビットのデータYnに対応する第2拡散変調信号βnが順次伝送路Lに出力される。
(受信側となったときの基本処理)
以下、送受信機Bが受信側となったときの基本処理について、図6、図7、及び図11を用いて説明する。
初期状態の送受信機Bが、送信元の送受信機から、第1拡散変調信号α0を受信したときには、波形整形及びデジタル信号の形への変換が施された第1拡散変調信号α0がセレクタ33に入力される。
セレクタ33及び37は、初期状態では接点a閉じの状態とされている。これにより、平均化回路29Aには、第1拡散変調信号α0が入力される。
その後、送受信機Bが、第2拡散変調信号β0を受信したときには、当該第2拡散変調信号β0が波形整形及びデジタル信号の形への変換が施される。このとき、セレクタ33及び37は、接点b閉じの状態に切り替わる。
これにより、セレクタ33を通じて、第2拡散変調信号βがFFT回路34に入力されて周波数領域の信号に変換され、並び替え部35により周波軸上で周波数成分の順が並び替えられ、IFFT回路36により時間領域の信号に戻される。そして、IFFT回路36により取得された時間領域の第2拡散変調信号βが、セレクタ37を通じて平均化回路29Aに入力される。
その後、セレクタ33及び37、FFT回路34、並び替え部35、及び、IFFT回路36は、上記と同じ処理を繰り返し行う。これにより、平均化回路29Aには、第1拡散変調信号α0、周波数成分の順が並び替えられた第2拡散変調信号β0、第1拡散変調信号α1、周波数成分の順が並び替えられた第2拡散変調信号β1、第1拡散変調信号αn、及び、周波数成分の順が並び替えられた第2拡散変調信号βnが順次入力されることになる。
平均化回路29Aは、第1拡散変調信号αと第2拡散変調データβとの組み合わせを受信する毎に、第1拡散変調信号αと、周波数成分の順が並び替えられた第2拡散変調信号β(逆反転信号)との間の平均、つまり、第1の拡散変調信号αに相当する符号を取得する。
そして、第1の拡散変調信号αに相当する符号は、データ取得部38に入力される。データ取得部38は、入力された第1の拡散変調信号α、つまり、第1拡散変調符号に対応する4ビットのデータ(ビット列)Yiを、第1対応データ32Aを参照して取得する。
データ取得部38は、例えば、入力された第1拡散変調符号が、図7の行N1で示される第1拡散変調符号であるときには、対応する4ビットのデータ(ビット列)Yiとして、「0011」を取得する。
以上の送受信機Bの基本処理についてさらに説明する。図12は、送受信機Bの基本処理の一例を概念的に示した図である。図13は、図12の基本処理により奏される効果を、伝送路LのSN特性を用いて説明するための図である。
尚、図13において、f0〜f11はそれぞれ伝送路L上を伝送される信号が持つ周波数を識別するための周波数識別情報を表しており、f0からf11の順に周波数が大きくなるものとする。
図12に示すように、4ビットのデータ「1100」(図12の(1)参照)は、第1拡散変調部30により、図12の(2)のように、[c0,c1,・・・,c31]で表される32桁の第1拡散変調信号αに変換される。第1拡散変調信号αの周波数スペクトラムが、図13(a)で示されている。
一方で、4ビットのデータ「1100」(図12の(1)参照)は、第2拡散変調部31により、図12の(3)のように、[co’,c1’,・・・,c31’]で表される32桁の第2拡散変調信号βに変換される。第2拡散変調信号βの周波数スペクトラムが、図13(b)で示されている。ここでC0〜C31はc0〜c31の周波数成分であり、c0’〜c31’の周波数成分は、C31〜C0となっている。
そして、第2拡散変調信号βでは、周波数成分の周波数の順が、当該第2拡散変調信号βの周波数成分の周波数の順とは逆の順に並び替えられる。このように周波数成分の周波数の順が並び替えられた状態が、図13(c)の周波数スペクトラム図に示されている。尚、図13(c)では、平均化回路29Aによる平均化処理の説明のため、第1拡散変調信号αの周波数スペクトラムも示されている。
そして、第1拡散変調信号αと、周波数の順が並び替えられた第2拡散変調信号βとの間の平均信号(例えば、図12の(4)参照)、つまり、第1拡散変調信号αに相当する符号に対応する、拡散変換される前の元の4ビットのデータ「1100」が、データ取得部38により、例えば、図12の(5)に表されるように取得される。
以上のように、4ビットのデータYiを表す第1拡散変調信号αと、4ビットのデータYiを表し、第1拡散変調信号αの周波数成分の周波数の順とは逆の順の周波数成分を有する第2拡散変調信号βとが、受信側の送受信機Bに入力される。
そして、受信側の送受信機Bは、第1拡散変調信号αをそのままの状態で受け付ける一方で、第2拡散変調信号βを、当該第2拡散変調信号βの周波数成分の周波数の順が第1拡散変調信号αの周波数成分の周波数の順と同じとなるように処理する。
そして、受信側の送受信機Bは、第1拡散変調信号αと、当該第1拡散変調信号αの周波数成分のインデックスの順と同じとなるように処理された第2拡散変調信号βとについて平均信号を取得し、当該平均信号から、拡散変調される前の元の4ビットのデータYiを取得する。
これにより、図13(a)に示すように、周波数識別情報f1〜f7で表される周波数の帯域で生じているノッチにより、各データについて、第1拡散変調信号αの周波数成分C1〜C7として伝送される部分の信号レベルが減衰しても、当該部分は、図13(b)に示すように、第2拡散変調信号βの周波数成分C7〜C1としても、ノッチ帯域の幅がf1〜f7よりも小さなf4〜f10の周波数を有した状態で、伝送路L上を伝送される。
そして、各データについて、第1拡散変調信号βの周波数成分C1〜C7として伝送路Lを伝送された部分の信号レベルが、当該部分と同じ部分であって、第2拡散変調信号βの周波数成分C7〜C1として伝送された部分の信号レベルとの間で平均化される。
これにより、伝送路Lにおいて生じたノッチにより、第1拡散変調信号αが或る周波数の部分で減衰しても、減衰した部分の信号レベルを補完することができる。そのため、伝送路Lを通じてデータを送信するに際し、当該伝送路Lの状態を評価したり当該評価の結果に応じた特別な処理を行わなくても、高品質なデータ伝送を実現することができる。