以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のクラッチ装置を有する一実施形態の自動車用のシートリフターを組み付けた自動車用シートの一部の側面図、図2は、図1のベース部材を省略した自動車用シートの一部の分解斜視図である。尚、図中のX方向を前方側、Y方向を後方側とし、又、Z方向を左側、W方向を右側として説明する。
この実施形態のシートリフター1は、自動車のシート、例えば自動車の運転席、補助席(この実施形態では補助席)に用いられている。この実施形態の自動車のシート100は、第1及び第2ベース部材2a、2bと、第1及び第2シートフレーム3a、3bと、シートリフター1とを備えている。
第1及び第2ベース部材2a、2bは、互いに左右方向に間隔を隔てて左右対称に配設されており(図1では、第1ベース部材2aだけが現れ、第2ベース部材は現れていない)、略同一構成を採っている。以下に、第1ベース部材2aについて説明し、第2ベース部材の説明を省略する。
第1ベース部材2aは、長尺状のロアレール11と、アッパーレール12とを備えている。ロアレール11は、その長手方向を前後方向に沿わせるようにして車体の床面に固定されている。
アッパーレール12は、長尺状のアッパーレール本体13と、アッパーレール本体13に固定されたブラケット14a、14bとを備えている。アッパーレール本体13は、ロアレール11の上方側に長手方向に沿って移動可能に配設されている。
尚、アッパーレール本体13とロアレール11とは、図示しないロック・ロック解除装置によって適宜ロックし、又、シート100の前方下部に設けられたロック解除操作部15の操作によってロック解除してアッパーレール本体13をロアレール11に対して前後方向に移動できるようになっている。
ブラケット14a、14bは、前ブラケット14aと、後ブラケット14bとを備えている。前ブラケット14aは、下部側がアッパーレール本体13の前端部に固定され、上部側に、リンク取付部14cを備えている。
後ブラケット14bは、下部側がアッパーレール本体13の後端部に固定され、上部側に、リンク取付部14dを備えている。
第1シートフレーム3aは、シートフレームの一部をなす左下部シートフレーム片からなり、第1ベース部材2aの上方側に配設された第1フレーム本体31と、後述のシートリフター1の第1リンク部材4aと連結する第1リンク用連結部としての第1リンク用連結片32とを備えている。
第1リンク用連結片32は、図4、図5に示すように、連結凸部33と、第1フレーム内ギア34とを備えている。連結凸部33は、第1リンク用連結片32の右側面から円形状に所定量だけ右方側に突設されている。
第1フレーム内ギア34は、連結凸部33の径内側に設けられている。又、この実施形態では、歯数が38のものから構成されている。
そして、この第1リンク用連結片32は、図1に示すように前後両端側が夫々、第1フレーム本体31にボルト等の固定部材を介して固定されている。
第2シートフレーム3bは、図2に示すように、シートフレームの一部をなす右下部シートフレーム片からなり、第2ベース部材2bの上方側に配設された第2フレーム本体131と、第2リンク部材4bと連結する第2フレーム内ギア134(図4参照)を有する第2リンク用連結部としての第2リンク用連結片132とを備えている。
第2フレーム本体131は、上記第1シートフレーム3の第1フレーム本体31と左右対称な形状を有するものから構成され、第2リンク用連結片132は、上記第1リンク用連結片32と、左右対称な形状を有するものから構成されている。
シートリフター1は、第1リンク部材4a〜第4リンク部材4dと、第1リンク部材4aと第2リンク部材4bとを連結した連結部材6とを備えている。
連結部材6は、図2に示すように連結軸61と、連結軸61の左端(第1端)に固定的に連結された第1太陽ギア62(図4に図示)と、連結軸61の右端(第2端)に固定的に連結された第2太陽ギア162(図4参照)とを備えている。
第1太陽ギア62は、この実施形態では、歯数が16のものから構成されている。そして、この第1太陽ギア62は、図4、図5に示すように第1フレーム内ギア34の内側43に回転自在に配設されている。
第2太陽ギア162は、第1太陽ギア62と同構成のものから構成されており、第2フレーム内ギア134の内側に、第1太陽ギア62と連動して共に回転するように配設されている。
第1リンク4aは、図1に示すように第1ベース部材2aの後部と第1シートフレーム3aの後部との夫々に回動自在に連結されており、第1リンク本体41と、複数の第1遊星ギア44を有する第1遊星ギア群40(図4、図5参照)と、本発明のクラッチ装置を有する遊星ギア操作部5とを備えている。
第1リンク本体41は、その下端側(第1端)が第1ベース部材2aの後ブラケット14bのリンク取付部14dに回動自在に連結されている。
又、第1リンク本体41は、図4、図5に示すように、その上端側(第2端)に、第1リンク用連結片32の連結凸部33に回動自在に連結された第1フレーム連結部としての連結凹部42と、その連結凹部42の内周に形成された第1リンク内ギア43とを備えている。この実施形態の第1リンク内ギア43は、歯数が35から構成されている。
連結凹部42は、第1リンク本体41の左側面から、上記連結凸部33が回動自在に嵌まり込む程度の大きさの円形状に所定深さで窪まされるようにして形成されている。
そして、この連結凹部42と連結凸部33とが連結された状態で、第1リンク内ギア43と第1フレーム内ギア34とが左右に隣接するように配設される。
第1遊星ギア44は、この実施形態では、同一構成を採る3つから構成されている。各第1遊星ギア44は、ギア部44aと、ギア部44aの両側に設けられた軸部44bとを備えている。
ギア部44aは、軸方向の長さが、左右に並んだ上記第1リンク内ギア43と第1フレーム内ギア34とに同時に噛合可能な長さに形成されている。又、この実施形態では、歯数が10のものから構成されている。
そして、これらの第1遊星ギア44は、第1リンク内ギア43と第1太陽ギア62との間、及び第1フレーム内ギア34と第1太陽ギア62との間に、周方向にほぼ等間隔に並べられるようにしてそれらのギア34、43、62夫々に噛合している。
又、この状態で、第1遊星ギア44の軸部44bが、第1リンク本体41と第1リンク用連結片32との夫々の両側に配設された支持部材45a、45bに支持されている。
詳しくは、第1リンク本体41の右方側(図4では左方側)に円板状の第1支持部材45aが、第1リンク用連結片32の左方側に円板状の第2支持部材45bが、夫々回動自在に配設されている。又、これらの第1支持部材45aと第2支持部材45bとは、夫々、周方向に等間隔に並設された3つの軸挿入孔45cを備えている。
そして、第1遊星ギア44夫々の軸部44bの左端側は、第1支持部材45aの軸挿入孔45cに回動自在に入れられ、その軸部44bの右端側は、第2支持部材45bの軸挿入孔45cに回動自在に入れられている。
又、第1支持部材45aと第2支持部材45bとは、第1遊星ギア44の軸部44bを保持した状態で、3つの連結ピン45dが、隣接する第1遊星ギア44の間に配設されて互いに回転不能に連結されている。
遊星ギア操作部5は、図6に示すようにクラッチ装置51〜55と、操作レバー56とを備えている。クラッチ装置は、円筒部を有するクラッチ部材51と、カム部材53と、複数の係合子としてのローラ52と、ローラ52を保持した保持部材54と、保持部材54を覆ったケーシング55とを備えている。
クラッチ部材51は、図4、図5に示すように、側壁51eを備え、その側壁51eに、第1遊星ギア44の軸部44b夫々を回動自在に入れる3つの軸挿入孔51aが穿設されているとともに、第1リンク本体連結部51bを備えている。
第1リンク本体連結部51bは、この実施形態では、上記側壁51eを、円形状に所定量だけ右方に突出させるようにして形成されている。そして、3つの軸挿入孔51a夫々に、第1遊星ギア44の軸部44bが回動自在に入れられるとともに、第1リンク本体連結部51bが、第1リンク本体の第1リンク用連結片32に設けられた受容凹部35に回動自在に嵌め入れられ、これにより、クラッチ部材51が第1遊星ギア44と連結されているとともに、第1リンク用連結片32に回動自在に連結されている。
又、クラッチ部材51は、その左側部に、円筒部を備えている。円筒部の内部には、円形状の内周壁51dと上記側壁51eとによって区画形成された収納凹部51c(図4に図示)を備えている。収納凹部51cは、左側面側から右方に、円形状に所定の深さで窪まされるようにして形成されている。
ローラ52は、この実施形態では、図6、図7に示すように6つから構成され、夫々は、円柱状のものからなる。
保持部材54は、図6、図7に示すように弾性を有する合成樹脂製の円板状部54aを備えている。この実施形態では、円板状部54aは、全体がナイロン(登録商標)から構成されている。
この円板状部54aには、クラッチ部材51の収納凹部51cと対向する右側面側のクラッチ部材対向面54bにおける中心部に、円筒状の保持軸54cが突設されている。この保持軸54cは、弾性変形可能な合成樹脂から構成されている。この実施形態では、保持軸54cと円板状部54aとは、一体的に形成されている。
又、図7に示すように、上記クラッチ部材対向面54bにおける保持軸54cの径外側の6箇所に、ローラ52を夫々回転自在に挟持した挟持部54dを備えている。
これらの挟持部54dは、周方向に沿って、等間隔に配設されており、各挟持部54dは、クラッチ部材対向面54bからクラッチ部材51側に突設された弾性を有する一対の対向片54eを備えている。
一対の対向片54eは、夫々、ローラ52の略直径分の間隔だけ互いに隔てて配設されており、各対向片54eにおける互いに対向する対向面は、夫々、ローラ52の外周面と略同じ大きさの円弧面に形成されている。そして、これらの対向面にローラ52が、夫々と面接触されるようにして弾性によって挟持されている。
又、保持部材54は、図6、図8に示すように円板状部54aから右側方側に突設された第1バネ係止部54gを有する突片54fを備えている。
カム部材53は、図6、図9に示すように外周形状が略6角形状の金属製の板状体からなる。又、カム部材53の中心部には、保持用孔53cが設けられている。そして、この保持用孔53cに保持部材54の保持軸54cが回動自在に挿入され、これにより、カム部材53が保持部材54に回動自在に保持されている。
そして、この保持された状態で、カム部材53は、保持部材54に対して所定位置に配置されるように付勢バネ50によって付勢されている。
詳しくは、保持部材54には、図6、図7に示すようにバネ係止孔54jが設けられており、このバネ係止孔54jに、リング状の付勢バネ50の一端が係止されている。又、付勢バネ50の他端は、カム部材53の非押圧部53dと保持部材54に保持されたローラ52とが位置合わせされた図9に示す状態で、カム部材53に設けられたバネ係止孔53eに係止されている。
この状態から、カム部材53が保持部材54に対して時計方向又は反時計方向に回動操作されると付勢バネ50が付勢力を蓄積し、そのカム部材53に加えられた回動操作力が除去されると、その蓄積された付勢力によって後述の非押圧部53dとローラ52とが位置合わせされた図9に示す状態に戻るようになっている。
そして、上記のようにして保持部材54に保持されたカム部材53は、その保持された保持部材54のクラッチ部材対向面54bがクラッチ部材51の収納凹部51cに合わされる際に収納凹部51cに、その内周壁51dに対して回動自在に収納される。
又、この状態で、カム部材53の外周の6つの辺が夫々、区画壁53aを構成してこれらの区画壁53aとクラッチ部材51の収納凹部51c(円筒部)の内周壁51dとで複数の楔状隙間52aを区画形成しているとともに、各楔状隙間52aに、保持部材54に挟持されたローラ52が配設されている。
このように区画された楔状隙間52aは、その中央部が各区画壁53aの中央と収納凹部51cの内周壁51dとの間隔が最も大きく、その中央部から両側方側に漸次間隔が狭くなるように形成されている。
又、中央部の上記間隔は、ローラ52の径よりも広く、各区画壁53aの中央部は、ローラ52を押圧しない非押圧部53dをなす。又、非押圧部53dの両側方側における上記間隔は、ローラ52の径よりも狭く、各区画壁53aにおける非押圧部53dの両側方部は、夫々、ローラ52を押圧する第1ローラ押圧部53b、第2ローラ押圧部53fをなしている。
尚、ローラ52は、クラッチ部材51の収納凹部51cの内周壁51dと非押圧部53dの間に配設された状態で、実際には両者間に若干の隙間が形成されるが、図9では、説明の都合上、隙間を表していない。
ケーシング55は、図6に示すように第1シートフレーム3aに固定されるフレーム固定部としての固定用孔55aを備えている。この実施形態では、固定用孔55aは、上記第1リンク用連結片32の固定用孔42aと重ね合って連通するように形成されている。
そして、図1に示すようにケーシング55の固定用孔55aと第1リンク用連結片32の固定用孔42aとが連通した状態で、ボルト等の固定部材が通され、その固定部材が第1シートフレーム3aに固定されることにより、第1リンク用連結片32及びケーシング55が第1シートフレーム3aに固定的に取り付けられる。
又、このケーシング55には、図6、図8に示すように第2バネ係止部55bが設けられている。そして、このケーシング55の中心部と上記保持部材54の中心部とが係止軸59を介して回動自在に取り付けられている。
又、この取り付け状態で、図8に示すレバー付勢用バネ55dの両端部が夫々、保持部材54の第1バネ係止部54gとケーシング55の第2バネ係止部55bに係止されている。
これにより、保持部材54がケーシング55に対して時計方向、反時計方向のいずれの方向に回動しても、レバー付勢用バネ55dが付勢力を蓄積してその蓄積された付勢力によってケーシング55に対して所定の位置に戻るようになっている。
操作レバー56は、図6に示すようにレバー本体57と、レバー本体57に固定的に取り付けられたレバー連結片58とを備えている。レバー本体57は、着座者等の操作者が把持する把持部57aを備えている。
レバー連結片58は、2つの係止用突起58aを備えている。これらの係止用突起58aは、ケーシング55に設けられた円弧状の第1遊嵌溝55iに通された後、保持部材54に設けられた第2遊嵌溝54jに通され、更に、その第2遊嵌溝54jから、カム部材53に設けられたレバー係止用孔53dに係止されている。
この第2遊嵌溝54jは、その長さが第1遊嵌溝55iよりも短く、又、レバー連結片58よりも長く、レバー連結片58が第2遊嵌溝54j内を僅かに移動可能とされている。
そして、レバー連結片58がカム部材53に係止された状態で、図1に示すようにレバー本体57の把持部57aがほぼ水平状態になるように設定されている。尚、図1では、説明の都合上、レバー本体57を一点鎖線で表している。
次に、第2リンク4bについて説明する。第2リンク4bは、第2ベース部材2bの後部(図2参照)と第2シートフレーム3bの後部との夫々に回動自在に連結されており、上記第1リンク4aと同様に、第2リンク本体141と、複数(この実施形態では3つ)の第2遊星ギア144を有する第2遊星ギア群とを備えている。ただし、この第2リンク4bには、上記第1リンク4aの遊星ギア操作部5に相当するものは、設けられていない。
第2リンク本体141は、第1リンク4aの第1リンク本体41と同構成を採り、第2遊星ギア144は、第1リンク4aの第1遊星ギア44と同構成を採っている。
詳しくは、第2リンク本体141は、その下端側(第1端)が第2ベース部材3bの後ブラケットに回動自在に連結され、その上端側(第2端)に、連結凹部142と、第2リンク内ギア143とを備えている(図4参照)。
第2遊星ギア144は、夫々、第2リンク内ギア143と第2太陽ギア162との間、及び第2フレーム内ギア134と第2太陽ギア162との間に、周方向にほぼ等間隔に並べられるようにしてそれらのギア34、43、62夫々に噛合している(図4、図5参照)。
従って、第2リンク4bは、連結部材6、より詳しくは、第1太陽ギア62、連結軸61、及び第2太陽ギア162を介して第1リンク4aと連動可能に連結されている。
第3リンク4cは、図1に示すように板状のものから構成され、第1ベース部材2aの前部と第1シートフレーム3の前部との夫々に回動自在に連結され、第3リンク4cと第1リンク4aと第1ベース部材2aと第1シートフレーム3とで平行リンク機構を構成している。
また、第4リンク4dは、第3リンク4cと左右対称形状のものから構成され、第2ベース部材2aの前部と第2シートフレーム3bの前部との夫々に回動自在に連結され、第4リンク4dと第2リンク4bと第2ベース部材2aと第2シートフレーム3bとで平行リンク機構を構成している。
次に、この実施形態のクラッチ装置を有するシートリフターの動作について説明する。まず、設定基準位置にある水平状態のレバー本体57の把持部57aを、図1の時計方向に回動操作する。これにより、図10に示すように、カム部材53がケーシング55及びクラッチ部材51に対して僅かに時計方向に回動し、その回動によって、カム部材53の第1ローラ押圧部53bとクラッチ部材51の内周壁51dとに挟まれてカム部材53がクラッチ部材51に対してロック状態になる。
その際、例えば図11に示すように、6つのローラ52の内の2つ(図の最上方のものと右上側のもの)だけが他のローラ52に先立って第1ローラ押圧部53bとクラッチ部材51の内周壁51dとに挟まれた場合でも、保持軸54cが弾性変形するため、例えば図12に示すように、カム部材53の回動操作に伴い保持軸54cの右上部側を押圧変形させて収納凹部51c内を左下方側に相対移動する。
これにより、カム部材53の第1ローラ押圧部53bが、図の最下方のローラ52と左下側のローラ52に当接し、それらのローラ52が第1ローラ押圧部53bとクラッチ部材51の内周壁51dとに挟まれてロック状態になる。尚、保持軸54cの弾性変形は、実際には僅かであるが、図12では、説明の都合上、大きく現している。
従って、クラッチ部材51とカム部材53とをロックする力が弱くなるのを抑えることができ、操作レバー56を回動操作した場合に、カム部材53がクラッチ部材51に対して回転してしまうようなことを確実に防止できる。
また、このロック状態で、更に、レバー本体57を同方向に回動操作すると、クラッチ部材51が同方向に回動し、そのクラッチ部材51の回動に伴って、第1遊星ギア44夫々が第1太陽ギア62、第1リンク内ギア43及び第1フレーム内ギア34を周回する。
この第1リンク内ギア43と第1フレーム内ギア34との周回に際して、第1リンク内ギア43が第1フレーム内ギア34よりも歯数が少ないため、第1リンク本体41の連結凹部42が第1リンク用連結片32の連結凸部33を反時計方向に回動する。これにより、第1リンク本体41は、下端を軸に反時計方向に揺動する。
又、上記第1遊星ギア44夫々が第1太陽ギア62を周回するに際し、第1太陽ギア62が回転(自転)し、これに伴い第2太陽ギア162も回転する。そして、この第2太陽ギア162の回転に際して第2遊星ギア144夫々が回転して、第2リンク内ギア143及び第2フレーム内ギア134を周回する。
そして、この周回に際して、同様に、第2リンク内ギア143が第2フレーム内ギア134よりも歯数が少ないため、第2リンク本体141の連結凹部142が第2リンク用連結片132の連結凸部133を、第1リンク本体41と連動して同方向に回動する。
又、この第1リンク本体41と第2リンク本体141との揺動によって、第3リンク部材4cと第4リンク部材4dとが連動して揺動する。これにより、第1及び第2シートフレーム3a、3bが第1及び第2ベース部材2a、2bに対して所定量だけ上昇する。
第1及び第2シートフレーム3a、3bを、更に上昇させる場合は、一旦、回動操作しているレバー本体57から手を離す。これにより、カム部材53が保持部材54を介してレバー付勢用バネ55dの付勢力によって図10の反時計方向に付勢される。
その付勢力によって、カム部材53が反時計方向に回動し始めると、カム部材53の第1ローラ押圧部53bとクラッチ部材51の内周壁51dとに挟まれていたローラ52がロック解除状態になる。
これにより、クラッチ部材51はカム部材53と共に回動せずに、カム部材53だけが反時計方向に回動する。従って、クラッチ部材51とカム部材53とローラ52とがワンウェイ(一方向)クラッチを構成し、クラッチ部材51が回動せず、又、第1遊星ギア44、第1リンク本体41も可動することがなく、第1及び第2シートフレーム3a、3bは第1及び第2ベース部材2a、2bに対して移動しない。
一方、カム部材53の反時計方向への回動に際し、それに係止されたレバー本体57が共に同方向に回動し、把持部57aが水平状態の図1の元の状態に戻る。この状態から、再度、上記のように、レバー本体57が図1の時計方向に回動操作する。
これにより、第1及び第2シートフレーム3a、3bを第1及び第2ベース部材2a、2bに対して更に所定量だけ上昇させることができる。更に第1及び第2シートフレーム3a、3bを第1及び第2ベース部材2a、2bに対して更に所定量だけ上昇させる場合は、上記操作を繰り返すことにより行なうことができる。
この上昇した状態で、第1及び第2シートフレーム3a、3bに外部から荷重がかかった場合でも、その力によって第1遊星ギア44夫々が所定の方向に回転することがなく、第1及び第2シートフレーム3a、3bが下降するようなことがない。
一方、上昇した第1及び第2シートフレーム3a、3bを下ろす場合は、水平状態のレバー本体57の把持部57aを、上記の上昇の場合とは逆に、図1の反時計方向に回動操作することにより行なうことができる。
より詳しくは、レバー本体57の反時計方向への回動によって、カム部材53がケーシング55及びクラッチ部材51に対して僅かに同方向に回動し、その回動によって、ローラ52がカム部材53の第2ローラ押圧部53fとクラッチ部材51の内周壁51dとに挟まれてカム部材53がクラッチ部材51に対してロック状態になる(図9参照)。
この状態で、レバー本体57を更に同方向に回動操作すると、クラッチ部材51も同方向に回動し、そのクラッチ部材51の回動に伴って、第1遊星ギア44夫々が第1太陽ギア62、第1リンク内ギア43及び第1フレーム内ギア34を、上記の上昇の場合と反対方向に周回する。
これにより、上述したと同様に、第1リンク本体41は、下端を軸に時計方向に揺動すし、又、上記第1遊星ギア44夫々が第1太陽ギア62を周回するに際し、第1太陽ギア62が回転(自転)し、これに伴い第2太陽ギア162も回転する。そして、この第2太陽ギア162の回転に際して第2遊星ギア144夫々が回転して、第2リンク内ギア143及び第2フレーム内ギア134を、上記の上昇の場合と反対方向に周回する。
そして、この周回に際して、同様に、第1リンク本体41と連動して同方向に回動する。又、この第1リンク本体41と第2リンク本体141との揺動によって、第3リンク部材4cと第4リンク部材4dとが連動して揺動する。これにより、第1及び第2シートフレーム3a、3bを第1及び第2ベース部材2a、2bに対して所定量だけ下降させることができる。
以上のように構成されることにより、例えばローラの内のいくつかのみがクラッチ部材の内周壁とカム部材の外周壁とで挟み付けられた場合でも、カム部材を保持した保持軸が弾性変形して、クラッチ部材の内周壁に対するカム部材の位置を変えることができる。これにより、挟み付けられずに遊んでいる係合子をカム部材の外周壁とクラッチ部材の内周壁とで挟み付けることができる。従って、クラッチ部材とカム部材とをロックする力が弱くなるのを抑えることができ、操作レバーを回動操作した場合に、カム部材がクラッチ部材に対して回転してしまうようなことを防止できる。
又、保持軸は、ローラ夫々を挟持する挟持部を有する保持部材の中心部に、保持部材と一体的に形成されているため、保持部材の挟持部に係合子を挟持した状態で組み付けでき、組み付けを容易且つ短時間で行うことができる。又、組み付け途中で係合子が保持部材から外れて落下するようなことのないものにできる。又、この保持部材と保持軸とを一体的に形成できるため、製作を容易に行なうことができる。
又、一対の弾性を有する対向片夫々の対向面に、係合子の外周面に面接触し得るように形成された円弧面から構成されているため、挟持した係合子を挟持部から外れにくいものにでき、係合子を確実に挟持しておくことができる。
尚、本発明のシートリフターのクラッチ装置は、上記実施形態のように、自動車のシートに用いられる形態のものに限らず、例えば航空機、電車等の車両のシートに用いることができ、適宜変更できる。