JP5496484B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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その問題に対し、特許文献1には、潤滑油を用いた場合の加速性能やブレーキ性能の低下を防止する方法として、加速時または減速時に車輪とレールとの間に砂等の粒子を、車両に取り付けた噴射装置から噴射する方法が提案されている。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、車輪とレールとの間に介在させることにより車輪の摩耗を防止できる上に、加速性能およびブレーキ性能の低下を防止できる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
[1] 鉄道車両の車輪とレールとの間に介在させる潤滑油組成物であって、
下記(A)〜(C)成分からなる群から選ばれる1種以上の成分を含有し、該潤滑油組成物に含まれる(A)〜(C)成分の合計量が、潤滑油組成物全体を100質量%とした際の90〜100質量%であることを特徴とする潤滑油組成物。
(A)下記式(1)で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプタン誘導体
(B)下記式(2)で表される、分子内に脂環構造を有するエステル化合物及び/又は分子内にgem構造を有する脂肪酸エステル化合物
R5-CO-O[-(X1)p-Z-(X2)q-O-CO]r-R6 (2)
式(2)中、Zは、炭素数3〜12のいずれかのシクロアルキレン基、R5,R6は、それぞれ独立に炭素数3〜20のいずれかの鎖状炭化水素基、X1,X2は、それぞれ独立に炭素数1〜5のいずれかの直鎖又は分岐を有するアルキレン基を示し、p,q,rは0又は1である(ただし、rが0のとき、R 5 はgem構造を有する。)。
(C)数平均分子量が200〜3000のポリブテン
[2] 40℃における動粘度が10〜600mm2/秒である[1]に記載の潤滑油組成物。
(A)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン誘導体
(B)分子内に脂環構造を有するエステル化合物及び/又は分子内にgem構造を有する脂肪酸エステル化合物
(C)質量平均分子量が200〜3000のポリブテン
以下、各成分について説明する。
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン誘導体は、少なくともビシクロ[2.2.1]ヘプタンの骨格を有する化合物である。
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン誘導体としては、加速性能およびブレーキ性能がより向上することから、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
式(1)におけるR3,R4は、それぞれ独立して、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)である。
式(1)におけるn1,n2,n3は、それぞれ独立して、0〜3のいずれかの整数である。
なかでも、本発明の効果がより発揮されることから、3−メチル−2−〔(3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)メチル〕−2−〔(2,3−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)メチル〕ビシクロ[2.2.1]ヘプタンが好ましい。
分子内に脂環構造を有するエステル化合物及び/又は分子内にgem構造を有する脂肪酸エステル化合物は、具体的には、下記式(2)で表される化合物である。
R5-CO-O[-(X1)p-Z-(X2)q-O-CO]r-R6 (2)
ここで、式(2)中、Zは、炭素数3〜12のいずれかのシクロアルキレン基、R5,R6は、それぞれ独立に炭素数3〜20のいずれかの鎖状炭化水素基、X1,X2は、それぞれ独立に炭素数1〜5のいずれかの直鎖又は分岐を有するアルキレン基を示し、p,q,rは0又は1である。rが0のとき、R5はgem構造(ジェミナル構造)を有する。
炭素数3〜12のいずれかのシクロアルキレン基の具体例としては、シクロヘキサンジオールなどシクロアルカンジオールやビシクロ[2.2.1]ヘプタンジオールなどのビシクロアルカンジオール、さらには、シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルカンジアルコールの2個の水酸基を除いた残基に当たるものであり、例えば、シクロプロピレン基、各種シクロブチレン基(1,2−シクロブチレン基、1,3−シクロブチレン基)、各種シクロペンチレン基(1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基など)、各種シクロヘキシレン基(1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基)、各種シクロヘプチレン基(1,2−シクロヘプチレン基、1,3−シクロヘプチレン基、1,4−シクロヘプチレン基など)、各種シクロオクチレン基(1,2−シクロオクチレン基、1,3−シクロオクチレン基、1,4−シクロオクチレン基、1,5−シクロオクチレン基)、各種シクロノニレン基、各種シクロデシレン基、ビシクロヘプチレン基やビシクロヘキシレン基、ナフタレン基、アントラセン基、及びメチレンシクロヘキシレン基などが挙げられる。
これらのシクロアルキレン基は、1以上の炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい。
これらのシクロアルキレン基のうち、入手が容易でブレーキ性能を高める点で、炭素数4〜10のいずれかのシクロアルキレン基が好ましく、炭素数6〜8のいずれかのシクロアルキレン基がより好ましい。中でも低粘度でありながらブレーキ性能を高め、かつ引火点を高める点で1,2−シクロヘキシレン基や1,2−シクロヘキサンジメタノールの水酸基を除いた残基が好適である。
鎖状炭化水素基のうち、分岐鎖を有する鎖状炭化水素基の代表例としては、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、1−エチルペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソエイコシル基などの分岐鎖を有するアルキル基が挙げられる。
また、直鎖鎖状炭化水素基の代表例としては、上記分岐鎖を有する鎖状炭化水素基に対応する炭素数を有する直鎖アルキル基が挙げられる。
R5,R6は、これら鎖状炭化水素基から選択した1種であってもよいし、2種以上であってもよい。R5,R6は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
鎖状炭化水素基の中でも、ブレーキ性能を高める作用が顕著である点で、R5,R6の少なくとも一方が、分岐鎖を有する炭素数3〜12のいずれかのアルキル基であることが好ましく、R5,R6が共に分岐鎖を有する炭素数3〜12のいずれかのアルキル基であることがより好ましい。また、分岐鎖を有するアルキル基は炭素数が6〜10のいずれかの分岐鎖を有するアルキル基であることが特に好ましく、2,4,4−トリメチルペンチル基であることが最も好ましい。
分子内にgem構造を有する脂肪酸エステル化合物は、分子内にgem構造を有する脂肪酸化合物と、アルコールとの反応によって得られる。
ここで、分子内にgem構造を有する脂肪酸化合物としては、例えば、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、3,5,5,7,7−ペンタメチルオクタン酸等が挙げられ、なかでも、3,5,5−トリメチルヘキサン酸が好ましい。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。なお、アルコールがジオールの場合、該脂肪酸エステル化合物はモノエステルであってもよいし、ジエステルであってもよい。
該脂肪酸エステル化合物の全炭素数は、ブレーキ性能を高める作用が顕著である点で、18〜30であることが好ましい。
本発明におけるポリブテンの数平均分子量は200〜3000である。このような数平均分子量であるポリブテンは、ブレーキ性能が高い。
好ましい数平均分子量は、軌道への噴射、塗布等の操作性およびレールへの付着性に優れることから、300〜600である。
潤滑油組成物に含まれる(A)〜(C)成分の合計量は、潤滑油組成物全体を100質量%とした際の90〜100質量%であることが好ましい。(A)〜(C)成分の合計量が90質量%以上であれば、加速性能およびブレーキ性能を充分に向上させることができる。
本発明の潤滑油組成物は、車輪およびレールの摩耗防止の点から、摩耗防止剤を含有することが好ましい。
摩耗防止剤としては、例えば、付着性および錆び発生防止性に優れることから、トリフェニルホスホロチオエート等の不活性なイオウ系摩耗防止剤が好ましい。
摩耗防止剤の含有量は、潤滑油組成物全体を100質量%とした際の0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5.0質量%であることがより好ましい。摩耗防止剤の含有量が0.1質量%以上であれば、摩耗防止剤を含有させる効果が充分に発揮される。しかし、10質量%を超えて含有させても含有量に比して摩耗防止の向上効果が発揮されることはないため、無益である。
酸化防止剤の含有量は、潤滑油組成物全体を100質量%とした際の0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.1〜3.0質量%であることがより好ましい。
フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤との混合物の場合には、フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤との割合は、アミン系酸化防止剤の質量を1とした際に、フェノール系酸化防止剤の質量が50〜500であることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、40℃における動粘度が10〜600mm2/秒であることが好ましく、16〜300mm2/秒であることがより好ましい。40℃における動粘度が10mm2/秒以上、かつ、600mm2/秒以下であれば、レールへの塗布性、噴射性、レールへの付着性を充分に確保できる。
ここで、動粘度は、JIS K 2283に基づいて測定した値である。
また、本発明の潤滑油組成物は、引火点が150℃以上であることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物を構成する(A)〜(C)成分は液状物質であるため、軌道に噴射しても軌道への付着および堆積を防止できる。また、(A)〜(C)成分を、鉄道車両の車輪とレールとの間に介在させることにより、車輪の摩耗を防止できる上に、車輪とレールとの粘着力を高めることができるため、加速性能およびブレーキ性能の低下を防止できる。
下記の成分を表1に示すように配合して潤滑油組成物を得た。
(A−1):2−メチル−3−メチル−2−[(3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン
(A−2):3−メチル−2−〔(3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)メチル〕−2−〔(2,3−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)メチル〕ビシクロ[2.2.1]ヘプタン
(B)1,4−シクロヘキサンジオール3,5,5−トリメチルヘキサン酸ジエステル
(C)ポリブテン(数平均分子量350)
(D−1)2,6−t−ブチルパラクレゾール
(D−2)N−フェニル−α−ナフチルアミン
(D−3)トリフェニルホスホロチオエート
なお、表1には、各潤滑油組成物の動粘度(40℃、100℃)、粘度指数、密度および引火点も示す。
密度は、JIS K 2249に基づいて測定した値である。
引火点は、JIS K 2265−4(COC)に基づいて測定した値である。
また、比較例として、従来、鉄道の車輪とレールとの間に介在させていた市販の潤滑油(日本礦油社製商品名:RCS−T)を用いた。
1.摩耗
ASTM D2783に従い、摩耗試験を行って摩耗痕径を測定した。その際、荷重を32kgf、試験時間を60分、回転数を1200rpmとし、試験開始時の温度は室温で、その後の温度は調整しなかった。
2.ブレーキ性能
潤滑油組成物を用いた際のブレーキ性能を調べるために、図1に示すブレーキ性能試験機によりブレーキ距離を測定した。
測定に使用したブレーキ性能試験機10は、主軸11に取り付けられた、レールの役割を果たす軌条輪12(直径1000mm)と、主軸11の回転に慣性力を付与するためのフライホイール13と、主軸11を回転させる主電動機14とを備える。また、従軸15に取り付けられた、軌条輪12に接する車輪16と、ディスクブレーキ17とを備える。
このブレーキ性能試験機10を用いたブレーキ距離の測定では、まず、測定開始前に車輪16に実施例1〜4および比較例のいずれかの潤滑油組成物を塗布した。この車輪16に軌条輪12を接触させ、油圧により、車輪1個あたりにかかる車両の質量に相当する38.8kNの荷重を付与した。
そして、主電動機14により主軸11を回転させて、ブレーキ開始速度である130km/時間走行相当まで加速し、次いで、ディスクブレーキ17により従軸15に制動力を作用させて、90km/時間走行程度まで減速させた。
この減速の際に要した時間または軌条輪12・車輪16の回転数から、130km/時間から90km/時間まで減速した際のブレーキ距離を求めた。また、このブレーキ距離の測定は、潤滑油組成物の塗布量を変えて数回行った。
図2に、潤滑油組成物を付着させなかったときのブレーキ距離を1とした際のブレーキ距離の測定結果を示す。
また、表1に示すように、実施例の潤滑油組成物は摩耗防止性を有していた。
11 主軸
12 軌条輪
13 フライホイール
14 主電動機
15 従軸
16 車輪
17 ディスクブレーキ
Claims (2)
- 鉄道車両の車輪とレールとの間に介在させる潤滑油組成物であって、
下記(A)〜(C)成分からなる群から選ばれる1種以上の成分を含有し、該潤滑油組成物に含まれる(A)〜(C)成分の合計量が、潤滑油組成物全体を100質量%とした際の90〜100質量%であることを特徴とする潤滑油組成物。
(A)下記式(1)で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプタン誘導体
(B)下記式(2)で表される、分子内に脂環構造を有するエステル化合物及び/又は分子内にgem構造を有する脂肪酸エステル化合物
R5-CO-O[-(X1)p-Z-(X2)q-O-CO]r-R6 (2)
式(2)中、Zは、炭素数3〜12のいずれかのシクロアルキレン基、R5,R6は、それぞれ独立に炭素数3〜20のいずれかの鎖状炭化水素基、X1,X2は、それぞれ独立に炭素数1〜5のいずれかの直鎖又は分岐を有するアルキレン基を示し、p,q,rは0又は1である(ただし、rが0のとき、R 5 はgem構造を有する。)。
(C)数平均分子量が200〜3000のポリブテン - 40℃における動粘度が10〜600mm2/秒である請求項1に記載の潤滑油組成物。
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